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特許異議申立

2022-700641

固体酸化物形セル用電極及びそれを用いた固体酸化物形セル

審判番号
2022-700641
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-527513
登録番号
7055473
請求日
2022年07月13日
審決日
2023年09月04日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 【権利者代理人】小野 悠樹
  • 【権利者代理人】西澤 利夫
  • 【異議申立人】鶴亀 國康
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 佐藤 陽一
  • 審判官 土屋 知久
分類
P1651.537-YAA(H01M) / P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7055473号発明「固体酸化物形セル用電極及びそれを用いた固体酸化物形セル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7055473号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7055473号の請求項1~5に係る特許を維持する。 特許第7055473号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7055473号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2019年(令和 1年) 6月24日(優先権主張 平成30年 6月27日)を国際出願日とする出願(特願2020-527513号。以下、「本願」という。)であって、令和 4年 4月 8日にその特許権の設定登録がなされ、同年 4月18日にその特許掲載公報が発行されたものである。 その後、同年 7月13日差出で、特許異議申立人 鶴亀 國康(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~6(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがなされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年 7月13日差出:特許異議の申立て 令和 5年 1月26日付け:取消理由通知 3月13日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提 出 4月14日差出:申立人による意見書の提出 第2 訂正請求について 1 訂正請求の趣旨 令和 5年 3月13日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第7055473号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を表す。(1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における一次粒子の平均粒子径が1nm~1μmであり」と記載されているのを、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μmであり」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「電子伝導性材料及びイオン伝導性材料を含有し」と記載されているのを、「空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有し」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に、「電子伝導性材料は、A1-xBxCyO3-z(AはSmおよびGdの少なくとも一方)である」と記載されているのを、「電子伝導性材料は、A1-xBxCyO3-zで表されるペロブスカイト型酸化物材料(式中、AはSmおよびGdの少なくとも一方であり、BはSr、Ca及びBaのうちの1種以上であり、CはCr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuのうちの1種以上であり、xは0.20~0.60、yは0.95~1.15、zは-1.00~1.00である)である」に訂正する。 請求項2の記載を引用する請求項3~5も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0019】、【0040】、【0041】、【0047】、【0070】、【0080】、【0081】、【0085】及び【0086】に、それぞれ「一次粒子の平均粒子径」と記載されているのを、「平均結晶子径」に訂正する。同様に、明細書の段落【0083】(表1)に、「一次粒子径」と記載されているのを、「平均結晶子径」に訂正する。 3 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 本件訂正前の請求項1には、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における一次粒子の平均粒子径が1nm~1μmであり」との記載があるが、前記一次粒子の平均粒子径の導出に関し、本件訂正前の明細書の段落【0041】には、「X線回折(例:リガク製、SmartLab)とシェラーの式(シェラー定数:0.9)により計算される。」ことが記載されている。 一方、X線回折とシェラーの式により計算されるのは、一次粒子の粒子径ではなく、「結晶子径」であることが技術常識である(例えば、甲第10号証の段落【0043】、【0044】)。 そうすると、訂正事項1に係る訂正は、上記本件訂正前の請求項1の記載と、本件訂正前の明細書の記載との不整合を正す訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて 訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の明細書の段落【0041】の上記記載と技術常識に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて 上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 エ 申立人の主張について 申立人は、令和 5年 4月14日差出の意見書において、請求項1の記載と本件訂正前の明細書の段落【0041】、【0081】の記載のどちらが誤記であるかは一義的には定まらないから、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を変更する訂正であり、また、X線回折とシェラーの式により計算されるのは、「結晶子径」であって、「平均結晶子径」ではなく、本件訂正前の明細書には、平均結晶子径を求める方法について何ら記載されていないから、訂正事項1に係る訂正は訂正要件に適合しない旨主張する。 しかしながら、上記アで述べたとおり、X線回折とシェラーの式により計算されるのは、一次粒子の粒子径ではなく、「結晶子径」であることが技術常識であるから、請求項1の記載を「(平均)結晶子径」と訂正することで、実質上特許請求の範囲を変更することにはならない。また、本件明細書の段落【0081】には、X線回折の測定対象が電極であることが記載されており、上記電極を構成する酸化物粉体材料の結晶子径に分布があることは明らかである。そうすると、上記電極をX線回折測定して得られるのは、分布を有する結晶子の集合体の回折パターンとなるから、ここから得られる結晶子径を、「平均結晶子径」と表現することに格別不合理なところはない。よって、本件訂正前の明細書に、平均結晶子径を求める方法について何ら記載されていないからといって、訂正事項1に係る訂正が訂正要件に適合しないことにはならない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (2)訂正事項2に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 本件訂正前の請求項1には、「電子伝導性材料及びイオン伝導性材料を含有し」との記載があるが、ここでは、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料の用途は特定されていない。 これに対して、本件訂正後の請求項1に係る発明では、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料が、空気極用であること(空気極用の材料を用いて構成されること)を特定している。 そうすると、訂正事項2に係る訂正は、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料を、空気極用に限定して特定する訂正であることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて 本件訂正前の明細書の段落【0031】には、 「空気極用の電子伝導性材料としては、下記一般式(1): A1-xBxCyO3-z (1) で表されるペロブスカイト型酸化物材料が好ましい。」ことが記載され、本件訂正前の明細書の段落【0032】には、「前記一般式(1)中、AはY、La、Ce、Pr、Sm、及びGdのうちの1種以上が含まれており、好ましくはLa、Sm、及びGdのうちの1種以上が含まれている。また、BはSr、Ca及びBaのうちの1種以上が含まれており、好ましくはSrが含まれている。CはCr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuのうちの1種以上が含まれており、好ましくはMn、Fe及びCoのうちの1種以上が含まれている。」ことが記載され、本件訂正前の明細書の段落【0034】には、「イオン伝導性材料とは、空気極で酸化又は還元されるイオンを伝導する性質を持つ材料を指す。イオン伝導性材料としては、特に制限されず、例えば、Al、Ca、Sc、Y、Ce等の金属元素がドープされている安定化ジルコニア;Sc、Y、La、Sm、Gd、Yb等の金属元素がドープされているセリア・・・などの酸化物が挙げられる。イオン伝導性材料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。」ことが記載されている。また、本件訂正前の明細書の段落【0083】の表1には、電子伝導性材料として、SSC(SmSrCoO)が、イオン伝導性材料として、SDC(CeSmO)が記載されている。 そうすると、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料が、空気極用であることを特定する、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて 上記アのとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (3)訂正事項3に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 本件訂正前の請求項2では、電子伝導性材料の化学組成について、「A1-xBxCyO3-z(AはSmおよびGdの少なくとも一方)である」と記載されていたが、B、Cが意味するもの、また、x、y、zの取り得る数値範囲については記載されていなかった。 これに対して、本件訂正後の請求項2では、B、Cが意味するもの、及び、x、y、zの取り得る数値範囲が特定されている。 そうすると、訂正事項3に係る訂正は、B、Cが意味するもの、及び、x、y、zの取り得る数値範囲を明らかにする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて 本件訂正前の明細書の段落【0031】には、上記(2)イで摘記した事項に加え、「また、xは0.20~0.60、・・・yは0.95~1.15、・・・zは-1.00~1.00・・・である。」ことが記載されているから、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて 上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (4)訂正事項4に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項4に係る訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて 訂正事項4に係る訂正は、請求項6を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて 上記アのとおり、訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (5)訂正事項5に係る訂正について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項5に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正と整合させるために明細書の対応箇所を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 明細書の訂正と関係する請求項について 上記アのとおり、訂正事項5に係る訂正は、本件訂正後の請求項1の記載と段落【0019】、【0040】、【0041】、【0047】、【0070】、【0080】、【0081】、【0083】、【0085】及び【0086】の記載とを整合させようとするものであるところ、下記(7)アのとおり、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項であるから、訂正事項5に係る訂正は、一群の請求項である請求項1~6について行うものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて 訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の明細書の段落【0041】の記載と技術常識に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 エ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて 上記アのとおり、訂正事項5に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (6)独立特許要件について 本件特許についてはすべての請求項が特許異議の申立ての対象とされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)一群の請求項について ア 本件訂正前の請求項2~6は、それぞれ請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。 イ そして、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 ウ また、本件訂正請求は、請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に係るものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1~6〕を訂正単位とする訂正を請求するものである。 4 訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。下線は訂正箇所を表す。 「【請求項1】 固体酸化物形セル用電極であって、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有し、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μmであり、 電極の膜厚が0.5μm~50μmであり、 電極の気孔率が1~30体積%であり、 0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合には、前記電極の気孔率が1~15体積%であり、 1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合には、前記電極の気孔率が5~20体積%であり、 5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり、 25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合には、前記電極の気孔率が10~30体積%である ことを特徴とする固体酸化物形セル用電極。 【請求項2】 電子伝導性材料は、A1-xBxCyO3-zで表されるペロブスカイト型酸化物材料(式中、AはSmおよびGdの少なくとも一方であり、BはSr、Ca及びBaのうちの1種以上であり、CはCr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuのうちの1種以上であり、xは0.20~0.60、yは0.95~1.15、zは-1.00~1.00である)であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形セル用電極。 【請求項3】 積層構造体であって、電解質上又は電解質上に形成されたイオン伝導性材料中間層上に、請求項1または2に記載の固体酸化物形セル用電極が形成されたことを特徴とする積層構造体。 【請求項4】 積層構造体であって、請求項3に記載の積層構造体の固体酸化物形セル用電極上に、該固体酸化物形セル用電極よりも高い気孔率を有する多孔質層を積層したことを特徴とする積層構造体。 【請求項5】 固体酸化物形セルであって、電解質と、該電解質を挟み込む空気極と燃料極から構成され、該空気極側に、請求項3又は4に記載の積層構造体を有することを特徴とする固体酸化物形セル。 【請求項6】 (削除)」 第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第10号証を提出し、以下の申立理由1~6により、本件訂正前の本件特許の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(明確性要件)(取消理由として採用) 本件訂正前の請求項1~6の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定に適合しないものであるから、本件訂正前の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(サポート要件)(取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1~6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定に適合しないものであるから、本件訂正前の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(新規性、進歩性)(取消理由として採用) 本件訂正前の請求項1、3、4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。また、本件訂正前の請求項1、3、4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された事項、あるいは、甲第1号証に記載された発明と周知技術とに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1、3、4、6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(新規性、進歩性)(取消理由として採用) 本件訂正前の請求項1、3、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。また、本件訂正前の請求項1、3、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と甲第8号証又は甲第9号証に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1、3、6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)申立理由5(進歩性)(取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1、3、6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された事項、あるいは、甲第3号証に記載された発明と周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1、3、6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (6)申立理由6(新規性、進歩性)(取消理由として採用) 本件訂正前の請求項1、3、4、6に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。また、本件訂正前の請求項1、3、4、6に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された事項、あるいは、甲第4号証に記載された発明と周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正前の請求項1、3、4、6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (7)証拠方法 ・甲第1号証:特開2013-77409号公報 ・甲第2号証:A.C. Nascimento、外6名、"Correlation between yttria stabilized zirconia particle size and morphological properties of NiO?YSZ films prepared by spray coating process"、Ceramics International、2009年7月、第35巻、p.3421-3425 ・甲第3号証:特開2006-59611号公報 ・甲第4号証:特開2015-207487号公報 ・甲第5号証:特開2009-266713号公報 ・甲第6号証:特開2003-157857号公報 ・甲第7号証:特許第4211254号公報 ・甲第8号証:特開2014-129185号公報 ・甲第9号証:特開2000-260415号公報 ・甲第10号証:特開2007-268470号公報 2 令和 5年 1月26日付けで通知した取消理由の概要 (1)取消理由1(明確性要件) 本件訂正前の請求項1における「一次粒子の平均粒子径」は、その文言どおり「一次粒子の平均粒子径」を意味するのか、それとも、「(平均)結晶子径」を意味するのか不明である。 なお、取消理由1は、上記1(1)の申立理由1と同旨のものである。 (2)取消理由2(明確性要件) 本件訂正前の請求項2における、B、C及びOが、硼素、炭素及び酸素を意味するのか、あるいは他の意味であるのか不明である。また、添字のx、y及びzについても、それぞれが取り得る数値範囲が不明である。 なお、取消理由2は、職権により発見した取消理由である。 (3)取消理由3(新規性、進歩性) 取消理由3は、上記1(3)の申立理由3と同旨のものである。 (4)取消理由4(新規性、進歩性) 取消理由4は、上記1(4)の申立理由4と同旨のものである。 (5)取消理由5(新規性、進歩性) 取消理由5は、上記1(6)の申立理由6と同旨のものである。 第5 本件訂正後の本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の記載事項 1 本件明細書には、以下の事項が記載されている。なお、「・・・」は記載の省略を表すものであって、以下同様である。 (1)「【発明が解決しようとする課題】 【0015】 以上のように、固体酸化物形セルのコスト低減のためには、電極抵抗を従来技術と比較し飛躍的に低減させることが必要である。しかし、上記の従来技術では、電極抵抗の低減には成功しているが、固体酸化物形セルの早期普及と商用化のためには、さらに電極抵抗を低減させ、より高い電流密度を実現することが求められている。 【0016】 従って、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電極抵抗が低い固体酸化物形セル用電極及びそれを用いた固体酸化物形セルと、その製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0017】 本発明者らは、上記従来技術における課題、つまり、「電極抵抗を低減するためには電極反応場の拡大とガス拡散経路の確保が必要であるが、両者のトレードオフの関係から両立することが困難」という課題を解決すべく、電極の材料と構造を制御することにより多くの電極試料を試作し、その性能評価を重ねた結果、電極材料として、異なる結晶構造を有する複数の酸化物又は金属材料が特定の粒子径であり、特定の含有割合で複合化され、電極が特定膜厚である場合に、気孔率を従来よりも低い値にすることができ、気孔率を特定の範囲とすることにより、電極抵抗を飛躍的に低減できることを見出し、本発明を開発するに至った。」 (2)「【0034】 イオン伝導性材料とは、空気極で酸化又は還元されるイオンを伝導する性質を持つ材料を指す。イオン伝導性材料としては、特に制限されず、例えば、Al、Ca、Sc、Y、Ce等の金属元素がドープされている安定化ジルコニア;Sc、Y、La、Sm、Gd、Yb等の金属元素がドープされているセリア;Mg、Al、Ca、Sr、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属元素がドープされているランタンガレート;Mg、Al、Ca、Sr、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属元素がドープされているランタンアルミネート;Mg、Al、Ca、Sr、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属元素がドープされているランタンスカンジネート;Y、Nb、Gd、W等の金属元素がドープされている酸化ビスマス:ランタンジルコネート、サマリウムジルコネート、ガドリニウムジルコネート等のパイロクロール型酸化物;Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、In、La、Pr、Nd、Sm、Gd、Yb等の金属元素がドープされているストロンチウムジルコネート、ストロンチウムセレート、ストロンチウムジルコネートセレート、バリウムジルコネート、バリウムセレート、バリウムジルコネートセレート等のペロブスカイト型酸化物;などの酸化物が挙げられる。イオン伝導性材料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。 【0035】 イオン伝導性材料としては、安定化ジルコニア、ドープセリア、ドープバリウムジルコネート、ドープバリウムジルコネートセレートが好ましい。 【0036】 燃料極用の電子伝導性材料とは、高温還元雰囲気で使用が可能であり、燃料極側ガスの酸化又は還元反応に対する触媒活性を有し、且つ電子を伝導する性質を持つ材料を指し、作動時には還元され金属となるような酸化物を含む。燃料極用の電子伝導性材料としては、特に制限されず、例えば、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅等の酸化物が挙げられる。燃料極用の電子伝導性材料は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。 【0037】 燃料極用の電子伝導性材料としては、酸化ニッケルが好ましい。」 (3)「【0038】 本発明の電極は電子伝導性材料とイオン伝導性材料が複合化された多孔質体である。電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比(電子伝導性材料:イオン伝導性材料)は、75:25~25:75、好ましくは70:30~30:70、特に好ましくは60:40~40:60である。電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が上記範囲内にあることにより、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の接触点が増加することにより反応場が拡大され、電極抵抗が低くなる。 【0039】 本発明の電極中に含まれる電子伝導性材料とイオン伝導性材料以外の他材料成分は、電子伝導性材料とイオン伝導性材料を合せた質量を100質量部としたとき、該他材料成分が0~20質量部の範囲である。 【0040】 本発明の電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料における平均結晶子径は、1nm~1μm、好ましくは5nm~0.5μm、特に好ましくは10nm~0.2μmである。電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料における平均結晶子径が上記範囲内にあることにより、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の接触点が増加すること及び電極内比表面積が増加することにより反応場が拡大され、電極抵抗が低くなる。 【0041】 なお、本発明において、上記平均結晶子径は、X線回折(例:リガク製、SmartLab)とシェラーの式(シェラー定数:0.9)により計算される。」 (4)「【0042】 本発明の電極の膜厚は、0.5μm~50μm、好ましくは0.5μm~25μm、特に好ましくは0.5μm~5μmである。電極の膜厚が上記範囲内にあることにより、ガス拡散抵抗が低減されるため電極抵抗が低くなる。 【0043】 本発明の電極の気孔率は、1~30体積%であり、好ましくは2~25体積%、特に好ましくは3~20体積%である。電極の気孔率が上記範囲に内にあることにより、電極内の電子伝導性材料とイオン伝導性材料の空間あたりの占有率が高くなり反応場が拡大されるため、電極抵抗が低くなる。 【0044】 本発明の電極では、その膜厚と気孔率が以下の範囲にあることにより、より電極抵抗が低くなる。 (I)0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合、前記電極の気孔率が1~15体積%、好ましくは2~13体積%、特に好ましくは3~10体積%である。 (II)1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合、前記電極の気孔率が5~20体積%、好ましくは7~18体積%、特に好ましくは10~15体積%である。 (III)5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合、前記電極の気孔率が7~25体積%、好ましくは8~20体積%、特に好ましくは12~18体積%である。 (IV)25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合、前記電極の気孔率が10~30体積%、好ましくは12~25体積%、特に好ましくは15~20体積%である。」 (5)「【実施例】 【0069】 つぎに、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明を制限するものではない。 【0070】 以下の手順に従って、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の比、平均結晶子径、膜厚、そして気孔率の異なる空気極を作製した。ここでは、空気極の原材料となる酸化物粉体材料は噴霧熱分解法により作製した。 【0071】 <噴霧熱分解法による酸化物粉体材料の合成> 噴霧熱分解法は、ナノサイズの酸化物粉体材料を合成できる手法の一つである。単一の酸化物粉体材料を合成することもできるが、2種類以上の酸化物が複合化された酸化物粉体材料を合成することもできる。この際、複合化された2種類以上の酸化物において良好な分散状態を得ることができる。また、一次粒子径を広い範囲で制御することができることも特徴である。以下、実施例における噴霧熱分解法による酸化物粉体材料の合成について記載する。 【0072】 噴霧熱分解法の工程は、空気極用の電子伝導性材料源の金属塩と、イオン伝導性材料源の金属塩とを含有する噴霧用水溶液を調製し、噴霧用水溶液を超音波振動により霧化させ、次いで、霧化した該噴霧用水溶液を加熱炉に導入することで、空気極用の酸化物粉体材料を得るものである。 【0073】 噴霧用水溶液中に含有される各金属元素の濃度比を適宜選択することにより、空気極用の電子伝導性材料の一次粒子及びイオン伝導性材料の一次粒子を構成する各種の金属元素の組成比を調節した。 【0074】 噴霧装置内の噴霧用水溶液を超音波振動(1.75MHz)により霧化させ、次いで、キャリアーガスの空気でフローすることにより霧化した該噴霧用水溶液を噴霧装置に接続された配管を通して加熱炉に導入した。噴霧用水溶液中の該空気極用の電子伝導性材料源の金属塩やイオン伝導性材料源の金属塩を、熱分解及び酸化して、空気極用の酸化物粉体材料を得た。加熱炉としては、4段式電気炉(炉内温度は前段から300、500、700、900℃、炉内加熱時間は前段から8秒、8秒、8秒、8秒)を用いた。 <噴霧用水溶液の作製> (1)噴霧用水溶液s1 硝酸サマリウム六水和物18.98g、硝酸ストロンチウム8.01g、硝酸コバルト六水和物22.02g、及び硝酸セリウム六水和物8.45gを秤量し、純水に溶解させ、次いで、水溶液量が1000mlになるようにさらに純水を加え、噴霧用水溶液s1を調製した。該噴霧用水溶液s1を噴霧熱分解することにより、1Lあたり0.1molの80質量部Sm0.5Sr0.5Co3(以下、SSC)-20質量部Ce0.8Sm0.2O1.9(以下、SDC)を合成できる。 ・・・ 【0075】 <酸化物粉体材料の作製> (1)酸化物粉体材料p1 前記噴霧水溶液s1を用いて、超音波方式の噴霧熱分解法により、噴霧熱分解を行い、SSC-SDCの酸化物粉体材料p1を得た。 ・・・ 【0076】 該7種のSSC-SDCの酸化物粉体材料のX線回折分析を行ったところ、いずれのSSC-SDCの酸化物粉体材料も、SSCとSDCと同定できる回折ピークが観察され、結晶性のSSCとSDCを含む粉体材料であると確認できた。また、該GSC-GDCの酸化物粉体材料のX線回折分析を行ったところ、GSCとGDCと同定できる回折ピークが観察され、結晶性のGSCとGDCを含む粉体材料であると確認できた。また、該LSM-GDCの酸化物粉体材料のX線回折分析を行ったところ、LSMとGDCと同定できる回折ピークが観察され、結晶性のLSMとGDCを含む粉体材料であると確認できた。また、該LSCFの酸化物粉体材料のX線回折分析を行ったところ、LSCFと同定できる回折ピークが観察され、結晶性のLSCFを含む粉体材料であると確認できた。 【0077】 <市販品の酸化物粉体材料> 市販品のGDCとしてCe0.9Gd0.1O1.95(CGO90/10、UHSA、ソルベイ・スペシャルケム・ジャパン製)を使用した。 【0078】 <電極の作製> 上記の酸化物粉体材料に、エチルセルロース、可塑剤、分散剤、α-テレピネオールを混合したものを、混錬器にて、室温で1分30秒間混錬することにより、電極用スラリーを得た。次いで、該電極用スラリーを、スクリーン印刷法にて、CGO90/10焼結体ペレット上の両面に成形した。なお、前記CGO90/10焼結体ペレットは、CGO90/10粉末2.2gを、26mm径の超硬ダイスを使用し20MPaで一軸プレス成形した後、1350℃で3時間焼成することで得た。次いで、所定の焼成条件で焼成することにより、電極を得た。ここで、電極膜厚の制御は、スクリーン印刷に用いるメッシュ厚さを変えることにより行った。また、気孔率の制御は、酸化物粉体材料の質量に対するエチルセルロースの質量を変えることにより行った。 【0079】 <実施例としての電極の作製> (1)実施例1 前記酸化物粉体材料p2を用いた。酸化物粉体材料100質量部に対して、エチルセルロースを1質量部とした。20μm用メッシュによるスクリーン印刷法にてCGO90/10焼結体ペレット上の両面に成形後、950℃で1時間焼成することで実施例1の電極を得た。 ・・・ <平均結晶子径測定> 【0081】 実施例1~12及び比較例1~10の電極の平均結晶子径を、X線回折(例:SmartLab、リガク製)のピーク半値幅とシェラーの式(シェラー定数:0.9)により求めた。その結果を表1に示す。 <電極の膜厚の測定> 実施例1~12及び比較例1~10の電極の膜厚を、電極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM-5600、日本電子製)で観察することで求めた。その結果を表1に示す。また、例として、実施例3の電極部分のSEM像を図4に示す。 <電極の気孔率測定> 実施例1~12及び比較例1~10の電極断面を、クロスセクションポリッシャ(例:Arイオンビーム、IB-09020CP型、日本電子製)により平滑化した後、SEM(JSM-5600、日本電子製)で観察し、SEM画像のコントラストを画像処理することにより、電極の気孔率を得た。その結果を表1に示す。また、例として、実施例3の画像処理結果を図5に示す。 【0082】 <電極の性能評価> 実施例1~12及び比較例1~10の電極について、交流インピーダンス法(1287、1255B、ソーラトロン製)により、空気雰囲気下、700℃における単位面積あたりの電極抵抗を測定した。その結果を表1に示す。なお、電極抵抗は、交流インピーダンス法より得られる測定対象のセルのコール・コール・プロット、すなわち、周波数を変化させた時の周波数毎の実数部抵抗値Z’(Ω)及び虚数部抵抗値Z”(Ω)を、横軸を実数部抵抗値Z’、縦軸を虚数部抵抗値Z”として、プロットして得られるグラフにおいて、該グラフの横軸との2つの切片の実数部抵抗値の差である。 【0083】 【表1】 [図:0001404748000001.jpg] 【0084】 表1において、電子伝導性材料のSSC及びGSCは一般的に700℃付近の温度域で使用される材料である。また、電子伝導性材料のLSCFも、SSC及びGSCには電極活性が劣るが、700℃付近の温度域で使用することができる材料である。一方、電子伝導性材料のLSMは一般的に800℃以上の比較的高い温度域で使用される材料である。そのため、ここでは、SSC及びGSCを用いた実施例1~7、実施例11と12、比較例1~5、及び比較例8~10における比較と、LSCFを用いた実施例9と10、比較例7との比較と、LSMを用いた実施例8と比較例6における比較に分けて説明する。 【0085】 電子伝導性材料にSSC、GSC、及びLSCFを用いた際に、比較例1~5及び比較例7~10に対し、実施例1~7及び実施例9~10は低い電極抵抗を示した。これは、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径、電極の膜厚、及び電極の気孔率を特定の範囲内とすることにより、電極内の反応場を拡大することによる反応抵抗低減効果と、良好なガス拡散性によるガス拡散抵抗低減効果を、同時に得ることができ、低い電極抵抗を実現したものである。 【0086】 電子伝導性材料にLSMを用いた際に、比較例6に対し、実施例8は低い電極抵抗を示した。これは、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径、電極の膜厚、及び電極の気孔率を特定の範囲内とすることにより、電極内の反応場を拡大することによる反応抵抗低減効果と、良好なガス拡散性によるガス拡散抵抗低減効果を、同時に得ることができ、低い電極抵抗を実現したものである。」 第6 甲第1号証~甲第10号証の記載事項 1 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「燃料電池用単セル」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 金属酸化物及び固体電解質によって多孔質に形成された第1燃料極層(A)と、金属酸化物及び固体電解質によって多孔質に形成され、第1燃料極層(A)より気孔率が小さい第2燃料極層(B)と、固体電解質によって形成された固体電解質層(C)と、空気極層(D)とが、(A)/(B)/(C)/(D)の順に積層されていることを特徴とする燃料電池用単セル。 【請求項2】 固体電解質層(C)を形成する固体電解質と、第2燃料極層(B)に含まれる固体電解質とが同一であり、且つ、第1燃料極層(A)に含まれる固体電解質とは異なる特徴とする請求項1に記載の燃料電池用単セル。 【請求項3】 第1燃料極層(A)に含まれる固体電解質がイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)であって、固体電解質層(C)及び第2燃料極層(B)に含まれる固体電解質がスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用単セル。 【請求項4】 第2燃料極層(B)を形成する金属酸化物及び固体電解質の一部が、第1燃料極層(A)の孔内に侵入していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の燃料電池用単セル。 【請求項5】 第1燃料極層(A)の気孔率が25~60容量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の燃料電池用単セル。 【請求項6】 第1燃料極層(A)の厚みが50~2000μm、第2燃料極層(B) の厚みが1~80、固体電解質層(C)の厚みが1~30μmであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の燃料電池用単セル。」 (2)「【技術分野】 【0001】 この発明は、固体酸化物形燃料電池の単セルに関する。特に、還元炎を生成可能な燃料を燃焼させ、燃焼によって形成される火炎を単セルの燃料極にあてて単セルを加熱すると共に、火炎中の燃料種を燃料として発電を行う直接火炎型燃料電池用の単セルに関する。 【背景技術】 【0002】 固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCともいう)は、電解質として固体酸化物を使用すること、動作環境(発電可能温度)が高温であることに特徴がある。 【0003】 SOFCは、電解質を挟んで一方の側に燃料極を備え、他方の側に空気極を備え、燃料極側には燃料ガスを、空気極側には酸化剤ガスを供給し、電解質を介して燃料と酸化剤を電気化学的に反応させることにより発電する発電装置である。固体電解質を発電可能温度まで昇温した上で、燃料極側に燃料ガスを、空気極側に酸化剤ガスを供給し、燃料極と空気極を電気回路で接続することで、該電気回路に電流が流れる。 【0004】 燃料極と空気極を備えた電解質は単セルと呼ばれ、この単セルとして、平板型、筒型、又はハニカム型など様々な形状のものが考案され、実用化が図られている。 【0005】 SOFCのひとつの形態として、直接火炎型燃料電池がある(例えば、特許文献1)。直接火炎型燃料電池とは、還元炎を生成可能な燃料を燃焼させ、燃焼によって形成される火炎を燃料極にあてて燃料電池単セルを加熱すると共に、火炎中の燃料種を燃料として発電を行うSOFCである。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0013】 本発明者は、直接火炎型燃料電池の単セルとして使用でき、出力密度に優れた単セルの構成を検討し、引用文献2に記載された単セル等とは異なる4層の構成の単セルによって、高出力の単セルが得られることを見出し、本発明に至った。 【0014】 本発明は、出力密度に優れ、直接火炎型燃料電池に適した燃料電池用単セルを提供することを目的とする。」 (4)「【0029】 また、単セル10を直接火炎型燃料電池の単セルとして使用する場合においては、火炎によって単セルを加熱する際や、火炎を消火して単セルを冷却する際の急激な温度変化によって熱衝撃が発生し単セルが破損する恐れがあるが、第1燃料極層(A)を利用した燃料極支持型の単セルにすることによって、温度変化による熱衝撃を緩和することができ、耐久性に優れた単セルが得られる。 構造の主体を第1燃料極層(A)にすることにより、火炎を受けた際に金属酸化物が還元され金属化し、固体酸化物が混合したサーメットを形成することになる。このことにより熱伝導率が上がり、単セル内の温度分布の均一化が図られ、耐熱衝撃性が向上すると思われる。勿論、予め単セルの焼成時に還元雰囲気で焼成しておいても良い。」 (5)「【0041】 (第2燃料極層) 第2燃料極層(B)を形成する材料は、第1燃料極層(A)と同様なものを使用できる。また、第1燃料極層(A)と同様に、固体電解質層(C)との熱膨張係数の差や導電性を考慮して、金属酸化物:固体電解質材料を5:5~7:3の混合比とすることが好ましい。 【0042】 なお、第2燃料極層(B)に使用する固体電解質材料は、固体電解質層(C)と同一のものを用いることが好ましい。そうすることで、発電時に反応が起こる三相界面を増大させることができ、高出力の燃料電池用単セルが得られる。 【0043】 更に、第2燃料極層(B)及び固体電解質層(C)の固体電解質と第1燃料極層(A)の固体電解質は異なるものであることが好ましい。 固体電解質層(C)に好ましいく使用されるScSZ、特にCeがドープされたScSZは、低温でも酸化物イオンを透過できて安定した出力を得られるが、電子導電性が出る傾向があり、その分電圧を損する。そのため、高出力の単セルを得るためには、第1燃料極層(A)には8YSZなど、第2燃料極層(B)及び固体電解質層(C)の固体電解質とは異なるものを使用することが好ましい。 【0044】 第2燃料極層(B)は、三相界面を増大させるだけでなく、固体電解質層(C)と第1燃料極層(A)の緩衝材としても作用する。多孔質な第1燃料極層(A)に接して薄膜の固体電解質層(C)を形成すると、製造時に固体電解質層(C)に微小な穴などの欠陥が生じ易い。固体電解質層(C)に欠陥があると発電時に電流やガスのリークが発生して安定した出力が得られない。 第2燃料極層(B)を設けることで、このような欠陥が生じ難くなり、固体電解質層(C)の薄膜化が容易になり、高出力の燃料電池単セルが得られる。 【0045】 このような緩衝作用を効率よく得るには、第2燃料極層(B)の気孔率は第1燃料極層(A)の気孔率より小さくしすることが好ましい。また、第2燃料極層(B)の気孔の平均径は第1燃料極層(A)の気孔の平均径より小さいことが特に好ましい。 前記した微小な穴などの欠陥は、多孔質層の表層の気孔部分に発生し易いため、気孔率を小さくすることで欠損の発生を抑制できる。また、表層の気孔を小さくすると欠損の発生をさらに抑制できる。第2燃料極層(B)の気孔を小さくするためには、材料となる金属酸化物と固体電解質材料として粒子径が比較的小さなものを用いることが好ましい。 このように、第1燃料極層(A)より気孔率や気孔径が小さき第2燃料極層(B)を設けると、加熱時の固体電解質層(C)への熱の伝わりを均一にしやすくなり、固体電解質層(C)の熱衝撃を緩和する効果も得られる。 【0046】 更には、図3に示す21B部分のように、第2燃料極層(B)を形成する金属酸化物及び固体電解質の一部が、第1燃料極層(A)の孔内に侵入していることが好ましい。このような構造は第2燃料極層(B)に粒子径の小さい粒子径の材料を使用することで容易に形成することができる。こうすることで、加熱や冷却時に第1燃料極層(A)と第2燃料極層(B)の界面での層間剥離が生じ難くなることに加え、製造時の固体電解質層(C)の欠陥がより生じにくくなり、固体電解質層(C)の薄膜化が容易になる。 【0047】 金属酸化物として0.1~0.8μmの粒子径のものを80質量%以上含有しているものを用いることが好ましい。 また、固体電解質として0.05~0.8μmの粒子径のものを80質量%以上含有しているものを用いることが好ましい。 特に好ましくは、金属酸化物と固体電解質共に0.8μm以下のもののみを使用することである。 【0048】 また、気孔率は、好ましくは40容量%以下であり、且つ第1燃料極層(A)の気孔率との差が10容量%以上あることが好ましい。更には、気孔率は10容量%以上(より好ましくは15容量%以上)あることが好ましい。また、第2燃料極層(B)の厚みは、好ましくは1~80μm(より好ましくは5~50μm)である。この範囲であれば、出力密度に優れた単セルが容易に得られる。気孔率が大きすぎると第2燃料極層(B)を形成することによる効果が小さくなる。また、気孔率が第1燃料極層(A)に比べて10容量%以上小さいと、第2燃料極層(B)による効果がより顕著に発揮される。厚みが厚すぎたり、気孔率が小さ過ぎたりすると第2燃料極層(A)のガス透過性が低下する恐れがある。ガス透過性が低下すると発電時に、固体電解質層に十分な燃料ガスが供給し難くなるので、燃料電池用単セルの出力が低下する。 なお、第2燃料極層(B)を形成する金属酸化物及び固体電解質の一部が、第1燃料極層(A)の孔内に侵入している場合、第2燃料極層(B)の厚みは、図2に示すAの厚みであって、侵入している部分の厚み(図2のB、図3の21B)は加えない。」 (6)「【実施例】 【0060】 実施例及び比較例として、図1に示す形状の燃料電池単セルを作製した。燃料電池単セルのサイズは1cm×1cm×厚みとした。各燃料電池単セルの厚みは表に記す。 【0061】 各燃料電池用単セルは、まず、第1燃料極層(A)を焼成した後に、その表面に、第2燃料極層の材料粉末を溶媒に分散させた分散液をディッピング塗装して焼成し、その表面に固体電解質層の材料粉末を溶媒に分散させた分散液をディッピング塗装して焼成し、最後に空気極層の材料粉末を溶媒に分散させた分散液をディッピング塗装して焼成することで、第1燃料極層(A)から順に第2燃料極層(B)、固体電解質層(C)、空気極層(D)を積層した。 【0062】 なお、第1燃料極層(A)では、各燃料電池単セルとも以下の粒径の材料粉末を使用した。 固体電解質:粒子径が1~10μmの範囲にある粗粒粉末(平均粒子径5μm)と、粒子径が0.1~0.8μmの範囲にある細粒粉末(平均粒子径0.5μm)の混合物。混合比(粗粒子/細粒粉末)は、6/4。 金属酸化物:粒子径が1~5μmの範囲にある粗粒粉末(平均粒子径2μm)と、粒子径が0.1~0.8μmの範囲にある細粒粉末(平均粒子径0.3μm)の混合物。混合比(粗粒子/細粒粉末)は、5/5。 【0063】 また、第2燃料極層(B)では、各燃料電池単セルとも以下の粒径の材料粉末を使用した。 固体電解質:粒子径が0.1~0.8μmの範囲にある細粒粉末(平均粒子径0.5μm)。 金属酸化物:粒子径が0.1~0.8μmの範囲にある細粒粉末(平均粒子径0.3μm)。 【0064】 また、固体電解質層(C)では、各燃料電池単セルとも粒子径が0.1~0.8μmの範囲にある細粒粉末(平均粒子径0.3μm)を使用した。 【0065】 なお、第1燃料極層(A)と第2燃料極層(B)の気孔率は、主に造孔材などの有機高分子の分散液への添加量によって調整した。また、厚みは、主にディッピングの方法と分散液の粘性によって調整した。 【0066】 各燃料電池単セルの第1燃料極層(A)、第2燃料極層(B)、固体電解質層(C)、空気極層(D)の組成、厚み、及び気孔率を表に示す。 ・・・ 【0070】 【表4】 [図:0001404748000002.jpg] 【0071】 【表5】 [図:0001404748000003.jpg] 」 2 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「Correlation between yttria stabilized zirconia particle size and morphological properties of NiO?YSZ films prepared by spray coating process」(表題)(仮訳:イットリア安定化ジルコニアの粒子サイズとスプレーコーティングプロセスにより形成されたNiO-YSZフィルムの形態学的特性との関係)に関して、以下の記載がある。なお、仮訳は、特許異議申立書に記載のものを用いた。 (1)「However, the performance of SOFCs depends on both the electrodes and electrolyte materials and their processing, besides another factors.」(第3421ページ左欄第8~10行) (仮訳:しかしながら、SOFCの性能は、他の要因に加えて、両電極および電解質の材料および処理に依存する。) (2)「Ni-yttria stabilized zirconia (Ni/YSZ) is the most widely used anode material for SOFC in which YSZ is used as the electrolyte [12,13]. The utilization of this composite instead of pure Ni improves the electrolyte/anode contact area by minimizing the differences of thermal dilatation coefficients of metallic and ceramic materials and by increasing the number of sites where the electrochemical reaction can occur [14].」(第3421ページ左欄第16行~右欄第6行) (仮訳:ニッケル-イットリア安定化ジルコニア(Ni/YSZ)は、YSZが電解質として用いられているSOFCのために最も広く用いられているアノード材料である。純Niに代えてこの複合材料を使用すると、金属およびセラミックス材料の熱膨張係数の差が最小化されることによって、および、電気化学反応が起こりうるサイトの数が増加することによって、電解質/アノードの接触領域が改善される。」 (3)「YSZ (8 mol% yttria) powders were prepared by a coprecipitation method [30,31] using zirconium (IV) butoxide (Fluka) and yttrium oxide (Sigma) as starting materials. After this first step, the powder was separated into two aliquots which were calcined at 800 and 1000 ℃ (YSZ800 and YSZ1000), in order to obtain YSZ powders with different particle sizes. YSZ/NiO composites were prepared by an impregnation method [32,33] using the previously prepared YSZ800 and YSZ1000 powders and nickel (II) nitrate hexahydrate (Sigma?Aldrich). The two composites obtained were named as NiOYZS800 and NiOYSZ1000.」(第3422ページ左欄第19~29行) (当審仮訳:(ジルコニウム(IV)ブトキシド(Fluka)と酸化イットリウム(Sigma)を出発物質として、共沈法[30,31]によりYSZ(8mol%イットリア)粉末を調製した。この第一工程の後、粒径の異なるYSZ粉末を得るために、粉末を2つのアリコートに分離し、800および1000℃で焼成した(YSZ800およびYSZ1000)。 先に調製したYSZ800およびYSZ1000粉末と硝酸ニッケル(II)六水和物(Sigma-Aldrich)を用いて含浸法[32,33]によりYSZ/NiOコンポジットを調製した。得られた2つのコンポジットをNiOYSZ800およびNiOYSZ1000と命名した。) (4)「The nominal weight ratio of NiO/YSZ was 56/44.」(第3422ページ左欄第29~30行) (仮訳:NiO/YSZの名目質量比は、56/44であった。) (5)「The thickness of the layer deposited was about 10 μm for all films.」(第3422ページ左欄下から第6~5行) (仮訳:すべてのフィルムについて、堆積された層の厚さは約10μmであった。) (6)「Table 1 Symbols used to characterize the films as a function of milling time. Starting powder Milling time (h) Films NiO/YSZ800 5 F1 10 F2 20 F3 40 F4 NiO/YSZ1000 5 L1 10 L2 20 L3 40 L4」(第3422ページ右欄) (当審仮訳:表1 ミリング時間の関数として膜の特徴を示すために使用される記号 以下、省略) (7)「 [図:0001404748000004.jpg] Fig. 1. SEM of the L2 anode film deposited on a YSZ substrate.」(第3422ページ右欄) (仮訳:図1 YSZ基板上に堆積されたL2アノードフィルムのSEM) (8)「YSZ and NiO crystallite sizes for YSZ and YSZ/NiO samples estimated from XRD patterns are given in Table 2.」(第3423ページ左欄第14~15行) (仮訳:YSZおよびYSZ/NiOサンプルにおける、XRDパターンから推測されるYSZおよびNiOの結晶サイズが表2に示される。) (9)「Table 2 YSZ and NiO crystallite sizes on YSZ and NiO/YSZ samples. Samples Crystallite sizes, D (nm) YSZ NiO YSZ800 14 - YSZ1000 34 - NiO/YSZ800 16 56 NiO/YSZ1000 35 72」(第3423ページ左欄) (仮訳:表2 YSZおよびNiO/YSZサンプルにおけるYSZおよびNiOの結晶サイズ 以下、省略) 3 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、「セリア系固体電解質型燃料電池及びその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 燃料極と空気極と両者の間に配置される固体電解質膜とを備えた固体電解質型燃料電池において、 固体電解質膜が、希土類酸化物をドープしたセリアからなり、 燃料極と固体電解質膜とが同時焼成によって形成されており、焼成後の燃料極の気孔率が10~50%で、相対密度が50~90%であることを特徴とするセリア系固体電解質型燃料電池。 【請求項2】 燃料極が、酸化ニッケルと、希土類酸化物をドープしたセリアとを含む焼結体からなる請求項1記載のセリア系固体電解質型燃料電池。 【請求項3】 燃料極と固体電解質膜との間に、以下の式で表される還元防止膜が形成されている請求項1又は2記載のセリア系固体電解質型燃料電池。 MCe(1-x)R(x)O(3-α) (式中、Mはアルカリ土類元素を表し、Rは希土類元素又はZn、Mn又はInを表す。また0.05≦x≦0.20である。αは組成式中のM、Ce及びRとOとの化学量論比を整合させる数である。) 【請求項4】 固体電解質膜及び還元防止膜の厚さがそれぞれ1~50μmであり、且つ還元防止膜の厚さが固体電解質膜の厚さよりも小さい請求項1ないし3の何れかに記載のセリア系固体電解質型燃料電池。 ・・・」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、セリア系固体電解質型燃料電池及びその製造方法に関する。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得るセリア系固体電解質型燃料電池及びその製造方法を提供することにある。」 (4)「【0016】 燃料極としては、後述する固体電解質膜の材料との関係で適切なものが用いられる。例えば酸化ニッケルと、希土類酸化物をドープしたセリアとを含む焼結体を用いることができる。希土類酸化物をドープしたセリアとしては、例えばCe0.9Gd0.1O1.95などが挙げられる。酸化ニッケルと、希土類酸化物をドープしたセリアとを含む焼結体においては、セリアによるイオン伝導と電子伝導との混合伝導、及び酸化ニッケルが還元されたニッケルの電子伝導によって電極反応が促進されると考えられる。酸化ニッケルとセリアの重量比に特に制限はなく適宜選択できる。一般的な範囲としては、前者:後者=30:70~70:30程度である。燃料極の厚さは本発明において臨界的ではないが、1~10mm、特に2~5mmであることが好ましい。」 (5)「【0028】 本製造方法においては、燃料極用グリーンにおける原料粉末と気孔形成剤との配合割合も重要である。具体的には、原料粉末は60~99重量%、特に70~80重量%配合されることが好ましく、気孔形成剤は1~40重量%、特に5~30重量%配合されることが好ましい。両者の配合割合をこの範囲にすることで、ガスの流通性の高い多孔質の燃料極及び緻密な固体電解質膜を同時に形成することができる。 【0029】 また、燃料極用グリーンにおける原料粉末と気孔形成剤との配合割合を前記範囲内にすることによって、原料粉末の粒径範囲の選択範囲が拡大し、電池特性に良好な粒径を幅広く選択できる。例えば原料粉末の一種である酸化ニッケルの平均粒径は0.5~10μmの範囲から選択することができる。セリアやジルコニアの平均粒径も0.5~10μmの範囲から選択することができる。 【0030】 原料粉末の粒径と気孔形成剤の配合量とをバランスさせることで、焼成により得られる燃料極の気孔率を制御することが可能となる。具体的には、原料粉末として微粒子を用いた場合には気孔形成剤を多く添加し、粗粒子を用いた場合には気孔形成材を少なくすればよい。特に、原料粉末として平均粒径が5~10μmの粗粒子を用い、且つ燃料極用グリーンにおける気孔形成剤の配合割合を5~20重量%とすることで、ガスの流通性の高い多孔質の燃料極及び緻密な固体電解質膜を一層容易に形成することができる。 【0031】 燃料極用グリーンの一面には、希土類酸化物をドープしたセリアの原料粉末を含む固体電解質膜用グリーンが成膜される。固体電解質膜用グリーンは、原料粉末、エチルセルロース、フェノール樹脂などのバインダ、テルピネオール、カルビトール、エタノールなどの有機溶媒を含むペーストから形成される。このペーストをスピンコーティングやディップコーティング、スクリーン印刷、ドクターブレード法などによって燃料極用グリーンの一面に施して固体電解質膜用グリーンを成膜する。原料粉末の平均粒径は0.1~10μmの範囲から選択することが好ましい。」 (6)「【0044】 〔実施例1ないし7及び比較例1ないし3〕 (1)固体電解質用ペーストの作製 固体電解質の原料粉末として、Sm2O3を20モル%ドープしたCe0.8Sm0.2O1.9(SDC)を用いた。SDCは通常の固相反応法で調製した。SDCの粉末をボールミルで12~24時間粉砕した。粉砕条件を変えて、三種類の平均粒径(0.5μm、2μm、5μm)を有する粉末を得た。粉砕後の各原料粉末にバインダとしてのエチルセルロースを加え、更に溶媒としてのカルビトールを加えて粘度を調整した。この混合物を遊星ボールミル及び混練機を用いて0.5~3時間混練し、原料粉末の平均粒径が異なる三種類のペーストを得た。 【0045】 (2)燃料極用グリーンの作製 表1に示す平均粒径の酸化ニッケル(NiO)粉末と、前記の(1)で用いたSDCの粉末(平均粒径は表1に示す)とを、重量比50:50で混合した。この混合物にカーボンブラック(平均粒径~1μm)を加え、ボールミルを用いて1~12時間混合した。この混合物にバインダとしてポリビニルアルコールを添加しペーストを得た。このペーストを、直径20mmの金型を用いて10~20MPaの加圧力でプレス成形し、円盤型の燃料極用グリーンを得た。グリーンにおける気孔形成剤の配合割合は表1に示す通りであった。グリーンを約100℃で1時間乾燥させた後、乾燥後のグリーンの重量、直径及び厚さを測定し、グリーンの相対密度を求めた。また電池特性の評価用に直径16mm、高さ5mmの円筒型の燃料極用グリーンを同様に成形した。 ・・・ 【0047】 (4)燃料極グリーン上への固体電解質膜用グリーンの成膜 前記の(2)で作製した円盤型の燃料極グリーン上に、前記の(1)で作製した固体電解質ペーストを、スピンコート法で成膜した。実施例5では還元防止膜用グリーン上に固体電解質ペーストを成膜した。また円筒型の燃料極グリーンの場合には、前記の(1)で作製した固体電解質ペーストの粘度を調整して、ディップコート法で成膜した。但し、実施例6では、燃料極グリーンを1000℃で5時間仮焼した後に、固体電解質膜用グリーンを成膜した。実施例1、3、4、6及び7においては、燃料極グリーン上に、原料粉末の平均粒径が5μmの固体電解質ペーストを用いて下層グリーンを成膜した後に、原料粉末の平均粒径が0.5μmの固体電解質ペーストを用いて上層グリーンを成膜した。実施例2及び5並びに比較例1ないし3においては、原料粉末の平均粒径が2μmの固体電解質ペーストのみを用いた。 【0048】 (5)同時焼成 このようにして作製した燃料極グリーン/固体電解質膜用グリーン(実施例5においては燃料極グリーン/還元防止膜用グリーン/固体電解質膜用グリーン)を、約100℃で1時間乾燥後、電気炉を用いて1450℃で5時間焼成し、多孔質燃料極/固体電解質膜(実施例5においては燃料極/還元防止膜/固体電解質膜)の焼結体を得た。得られた焼結体の重量、直径、厚さを測定した。この場合、固体電解質膜の相対密度を100%として電解質膜の厚さの実測値から電解質膜の重量を計算で求め、これらの値で補正して燃料極のみの相対密度と気孔率を求めた。燃料極の厚さは4μm、固体電解質膜の厚さは30μmであった。実施例5においては、燃料極と固体電解質膜との間にBaCe(1-x)Sm(x)O(3-α)のペロブスカイト型結晶からなる還元防止膜が形成されていることが分かった。ここで、xは0.2であった。還元防止膜の厚さは7μmであった。 ・・・ 【0051】 【表1】 [図:0001404748000005.jpg] 」 4 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、「低温作動型の固体酸化物形燃料電池およびその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 アノード支持体と、アノードアクティブ層と、固体電解質層と、カソードとがこの順に積層されてなる固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、 アノード支持体グリーンシートの表面に、アノードアクティブ層グリーンシートと固体電解質層グリーンシートとをこの順に形成して積層グリーンシートを得ること、ここで、前記固体電解質層グリーンシートは前記カソードと対向する側の表面に反応抑止層グリーンシートを包含するか若しくは包含しない;および、 前記積層グリーンシートを焼成してハーフセルを得ること; を包含し、 ここで、前記ハーフセルは、前記アノードアクティブ層の平均厚みをA(μm)とし、前記アノードアクティブ層の気孔率をB(体積%)とし、前記固体電解質層の平均厚みをC(μm)とし、前記固体電解質層の気孔率をD(体積%)としたときに、以下の条件: (1)前記アノードアクティブ層の平均厚みAが、20μm≦A≦80μm; (2)次式:P=A÷C×B÷Dにより算出される制御パラメータPが、20≦P≦120; を満たすよう構築する、製造方法。 ・・・ 【請求項7】 請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法により得られた固体酸化物形燃料電池。 ・・・」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、アノードアクティブ層を備える低温作動型の固体酸化物形燃料電池に関する。詳しくは該電池の製造方法に関する。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、従来、この高活性なアクティブ層をSOFCの積層構造の中でどのように制御したら良いのか、明らかになっていなかった。このため、例えば生産性や使用用途等を考慮して、ある層の設計パラメータ(例えば厚みや気孔率)を変更する場合に、かかる変更に柔軟に対処することが困難であった。 本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アノードアクティブ層を備えるアノード支持型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)であって、優れた発電性能を発揮し得る低温(例えば500℃~700℃程度)作動型の該電池を提供することにある。関連する他の目的は、かかるSOFCの製造方法を提供することにある。」 (4)「【0019】 ≪固体酸化物形燃料電池(SOFC)≫ 図1(a),(b)に、一実施形態に係るSOFC(単セル)を模式的に示す。ここに開示されるSOFCの単セルはアノード支持型である。図1(a)に示す態様において、SOFC50aは、アノード支持体10と、アノードアクティブ層20と、固体電解質層30と、カソード40と、がこの順に積層されてなる。また、図1(b)に示す態様において、固体電解質層30bは、カソード40と対向する側の表面に反応抑止層34を包含する。換言すれば、SOFC50bは、アノード支持体10と、アノードアクティブ層20と、固体電解質層(主体層)32と、反応抑止層34と、カソード40とがこの順に積層されてなる。そして、ここに開示されるSOFCは、以下の特徴: (1)アノードアクティブ層20の平均厚みAが、20μm以上80μm以下である; (2)制御パラメータPが、20以上120以下である(ただし、P=A÷C×B÷Dであり、Aはアノードアクティブ層20の平均厚み(μm)、Bはアノードアクティブ層20の気孔率(体積%)、Cは固体電解質層30(または、固体電解質層(主体層)32および反応抑止層34)の平均厚み(μm)、Dは固体電解質層30(または、固体電解質層(主体層)32および反応抑止層34)の気孔率(体積%)を、それぞれ表す。); をいずれも具備することによって特徴づけられる。したがって、その他の構成については特に限定されず、種々の用途に応じて任意に決定することができる。 【0020】 アノード支持体10は、電極(アノード)として機能と、SOFC50a,50bを支持する基体としての機能とを兼ね備える。かかるアノード支持体10の平均厚み(すなわち、積層方向の長さ)は特に限定されないが、ガス拡散性を向上する観点や抵抗を低減する観点から、通常凡そ2mm以下であり、典型的には1.5mm以下であり、例えば1mm以下であり得る。また、強度保持の観点から、平均厚みは、通常凡そ0.1mm以上であるとよい。 アノード支持体10はまた、ガス拡散性や還元反応性の向上のために多孔質構造を有している。かかるアノード支持体10の気孔率は特に限定されないが、通常20体積%以上(典型的には30%体積以上、例えば30体積%以上50体積%以下)であるとよい。 【0021】 アノード支持体10の構成材料は、従来この種のSOFCのアノードに用いられる導電性材料(触媒活性を有する材料)と同様でよい。一好適例として、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)等の金属、若しくはこれらの金属酸化物が挙げられる。かかる材料は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合せて用いることができる。なかでもニッケルは、他の金属に比べて安価であり、且つ高い反応活性を示す(燃料ガスとの反応性が十分に大きい)ことから、特に好適な金属種である。 あるいは、上述のような金属若しくは金属酸化物と、後述する固体電解質層の構成材料(典型的には酸化物イオン伝導体)とを任意の割合で混合した複合材料を用いることもできる。一好適例として、ニッケル系金属材料(例えばNiO)と安定化ジルコニア(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ;Yttria stabilized zirconia))とのサーメットが挙げられる。これらの混合比(質量比)は特に限定されないが、通常90:10~40:60程度であり、例えば80:20~45:55であるとよい。これにより、電気伝導性と耐久性とをより高いレベルで両立することができる。 【0022】 アノードアクティブ層20は、アノード支持体10の表面に配置され、アノード支持体10よりも高い電極活性を示す。本発明において、かかるアノードアクティブ層20の平均厚みAは、抵抗を低減する観点から80μm以下が適当であり、典型的には70μm以下、例えば50μm以下であり得る。また、十分な触媒活性点を得て、当該層を備える効果をより高いレベルで発揮する観点から、平均厚みAは20μm以上が適当であり、例えば25μm以上であり得る。 アノードアクティブ層20はまた、アノード支持体10と同様に多孔質構造である。かかるアノードアクティブ層20の気孔率Bは、後述する制御パラメータPを満たす限りにおいて特に限定されないが、ガスとの接触面積を十分に確保する観点や、ガス拡散性を向上する観点から、通常は1体積%以上であり、例えば5%体積以上であるとよい。また、導電性や機械的強度を高いレベルで維持する観点から、気孔率Bは通常凡そ30体積%以下であり、典型的には20体積%以下であり、例えば15体積%以下であるとよい。 【0023】 アノードアクティブ層20の構成材料は、従来この種のSOFCのアノードに用いられる導電性材料と同様でよい。一好適例として、アノード支持体10の構成材料として例示する金属酸化物と酸化物イオン伝導体との複合材料が挙げられる。なかでも、アノードアクティブ層20と固体電解質層30,30bとに同種の酸化物イオン伝導体を含むことが好ましい。これによって、アノードアクティブ層20と固体電解質層30,30bとの整合性(例えば熱膨張係数の調和)を向上することができ、ハーフセルの密着性(接合性)やSOFCとしての一体性を高めることができる。したがって、界面剥離等の不具合を高いレベルで抑制することができ、信頼性に優れたSOFCを実現することができる。 また、アノード支持体10の構成材料と、アノードアクティブ層20の構成材料とは同じであってもよく、一部または全部の構成材料が異なっていてもよい。SOFCの一体性を高める観点からは、少なくとも同種の金属若しくは金属酸化物を含むとよい。」 (5)「【0032】 <アノード支持体グリーンシートの準備> まず、アノード支持体グリーンシートを準備する。アノード支持体グリーンシートとしては、市販品を購入してもよく、従来公知の方法で成形してもよい。 アノード支持体グリーンシートの成形にあたっては、まずアノード支持体形成用の原料混合物を調製し、かかる原料混合物をシート状に形づくるとよい。 【0033】 原料混合物の調製は、例えば、電気触媒的作用を有する第1の導電性材料と、第1のバインダと、第1の溶剤と、必要に応じて用いられる他の成分(典型的には溶剤や各種添加剤)と、を任意の撹拌・混合装置に投入し、撹拌混合することによって行うことができる。かかる撹拌混合には、ボールミル、ミキサー、ディスパー、ニーダ等の従来公知の種々の装置を用いることができる。 【0034】 第1の導電性材料としては、上述のような金属材料等を用いることができ、なかでも電気触媒的作用(触媒活性)に優れるニッケル系金属材料(例えば酸化ニッケル)を好ましく用いることができる。導電性材料の性状は特に限定されないが、ガス拡散性や導電性を考慮して、通常、平均粒径が0.01μm~5μm(典型的には0.1μm~2μm、例えば0.5μm~1μm)程度の粉末状(粒子状)のものを好ましく用いることができる。また、上述のような複合材料(サーメット)を調製し使用する場合には、通常、平均粒径が凡そ0.1μm~2μmの金属酸化物(例えば酸化ニッケル)と、平均粒径が凡そ0.1μm~2μmの酸化物イオン伝導体(例えばYSZ)とを混合して用いることが好ましい。なお、本明細書において「平均粒径」とは、一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側からの累積50%に相当する粒径(D50粒径、メジアン径ともいう。)をいう。 【0035】 第1のバインダとしては、脱バインダ処理(典型的には、500℃以上で加熱焼成すること)によって蒸発除去し得るものであればよく、特に限定なく用いることができる。好適例として、ポリビニルブチラール等のブチラール系ポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系ポリマー;メタクリル酸エステル等のエステル系ポリマー;ポリエチレンオキサイド等のエチレン系ポリマー;ポリイミド等のイミド系ポリマー;等が例示される。なかでもブチラール系ポリマーを好ましく用いることができる。 【0036】 第1の溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブチルアルコール等の鎖状アルコール系溶剤;α-テルピネオール等の環状アルコール系溶剤;ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;等の有機溶剤を好ましく用いることができ、なかでもイソプロピルアルコール等の鎖状アルコール系溶剤が好適である。 【0037】 原料混合物には、必要に応じて、造孔材(気孔形成材)、可塑剤、酸化防止剤、増粘剤、分散剤等の各種添加剤や溶剤等を含ませることができる。なかでも、ガス拡散性を向上させる観点から造孔材を用いることが好ましい。造孔材としては、例えばカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、澱粉等を好ましく用いることができる。可塑剤としては、例えばグリセリンやフタル酸エステル等を好ましく用いることができる。分散剤としては、例えばポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩等のアニオン系の高分子界面活性剤を好ましく用いることができる。 【0038】 原料混合物の固形分全体に占める導電性材料(金属または金属酸化物)の割合は、通常凡そ30質量%以上(典型的には40質量%~60質量%)とすることができ、例えば45質量%~55質量%とするとよい。酸化物イオン伝導体を使用する場合、原料混合物の固形分全体に占める該酸化物イオン伝導体の割合は、通常凡そ10質量%~50質量%とすることができ、例えば20質量%~40質量%とするとよい。また、原料混合物の固形分全体に占めるバインダの割合は、通常凡そ1質量%~20質量%とすることができ、例えば2質量%~10質量%とするとよい。各種添加剤(例えば造孔材や分散剤)を使用する場合、原料混合物の固形分全体に占める添加剤の割合は、通常凡そ1質量%~30質量%とすることができ、例えば5質量%~20質量%とするとよい。 また、原料混合物が溶剤を含む場合において、該原料混合物の固形分濃度(NV値)は、例えば50質量%~70質量%(典型的には55質量%~65質量%)程度に調整するとよい。これにより、作業性や成形性を向上することができる。 【0039】 次に、上記原料混合物を任意の成形手法によって所望のサイズや厚みに成形する。後の焼成による熱収縮を考慮して、典型的には所望のアノード支持体のサイズ・厚みよりやや大きめ(例えば、所望の厚みの1.1倍程度)に成形するとよい。アノード支持体の成形には、ドクターブレード法等のシート成形法、スクリーン印刷法等の印刷法、ロール成形等の各種成形手法を用いることができる。なお、原料混合物の成形に際して、一般的な流体材料の塗工または印刷技術、例えば上記ドクターブレード法を採用する場合には、原料混合物に任意の液状媒体(例えば上記溶剤)を添加して、塗工に適した粘度となるよう調整するとよい。 このようにして、アノード支持体グリーンシートを得ることができる。」 (6)「【0040】 <アノードアクティブ層グリーンシートの形成> 次に、上記アノード支持体グリーンシートの表面に、アノードアクティブ層グリーンシートを形成する。アノードアクティブ層グリーンシートの形成にあたっては、例えば、まず、第2の導電性材料と、第2のバインダと、第2の溶剤と、必要に応じて用いられる他の成分と、を用いてアノードアクティブ層形成用の原料混合物を調製し、かかる原料混合物をアノード支持体グリーンシートの一方の表面(典型的には表面全体)に所望の厚みで付与するとよい。なお、原料混合物の調製やその付与は、上記アノード支持体グリーンシートを成形する場合と同様に行うことができる。 【0041】 第2の導電性材料、第2のバインダ、第2の溶剤、各種添加剤等は、上記アノード支持体の形成用として例示した材料の中から適宜選択して用いることができる。 好適な一態様では、導電性材料として上記アノード支持体の形成に用いるものよりも平均粒径が小さいものを使用する。具体的には、平均粒径が、通常0.01μm~3μm程度であり、典型的には0.05μm~2μmであり、例えば0.1μm~0.5μmの粉末状のものを用いるとよい。これにより、アノード支持体に比べて触媒活性点(比表面積)を増加させることができ、安定的に高い電極活性を実現することができる。 【0042】 また、好適な他の一態様では、上述のような金属酸化物と酸化物イオン伝導体との複合材料(サーメット)を使用する。これにより、アノードアクティブ層と固体電解質層との整合性(例えば熱膨張係数の調和)をとることができる。なかでも、上記アノード支持体の形成に用いるものと同程度か若しくはより微粒な(より平均粒径の小さい)酸化物イオン伝導体を好ましく使用することができる。 【0043】 また、好適な他の一態様では、第2のバインダとして、上記アノード支持体の形成に用いる第1のバインダと異なる系統(系)のものを用いる。例えば第1のバインダとしてポリビニルブチラール等のブチラール系ポリマーを用いる場合には、第2のバインダとして、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系ポリマーを用いるとよい。 【0044】 また、好適な他の一態様では、第2の溶剤として、上記アノード支持体の形成に用いる第1の溶剤と異なる系統(系)のものを用いる。例えば第1の溶剤としてイソプロピルアルコール等のアルコール類を用いる場合には、第2の溶剤としてα-テルピネオール等の環状アルコール系溶剤を用いるとよい。これにより、シートアタック現象が生じることを高度に抑制することができる。 特に好適な一態様では、第2の溶剤として、上記アノード支持体の形成に用いる第1のバインダを溶解しない若しくは溶解し難いものを用いる。一好適例を挙げると、第1のバインダとしてブチラール系ポリマーを用いる場合に、第2の溶剤としてα-テルピネオール等の環状アルコール系溶剤を用いるとよい。これにより、より一層的確にシートアタックを防止することができる。なお、ここで「溶解しない」とは、第2の溶剤に対する第1のバインダの溶解性が凡そ0.01g/L以下であることをいい、「溶解し難い」とは、第2の溶剤に対する第1のバインダの溶解性が凡そ0.1g/L以下であることをいう。 【0045】 また、好適な他の一態様では、添加剤としての造孔材を用いる。これにより、アノードアクティブ層の多孔性を安定的に高めることができ、一層優れたガス拡散性や電極活性を実現することができる。 【0046】 原料混合物の固形分全体に占める導電性材料(金属または金属酸化物)の割合は、通常凡そ30質量%以上(典型的には40質量%~80質量%)とすることができ、例えば45質量%~70質量%とするとよい。酸化物イオン伝導体を使用する場合、原料混合物の固形分全体に占める該酸化物イオン伝導体の割合は、通常凡そ10質量%~50質量%とすることができ、例えば20質量%~40質量%とするとよい。また、原料混合物の固形分全体に占めるバインダの割合は、通常凡そ0.5質量%~10質量%とすることができ、例えば1質量%~5質量%とするとよい。各種添加剤(例えば造孔材や分散剤)を使用する場合、原料混合物の固形分全体に占める添加剤の割合は、通常凡そ0.1質量%~20質量%とすることができ、例えば0.5質量%~10質量%とするとよい。 また、原料混合物が溶剤を含む場合において、該原料混合物の固形分濃度(NV値)は、例えば60質量%~80質量%(典型的には65質量%~75質量%)程度に調整するとよい。これにより、作業性(塗工性)や優れた触媒活性を実現することができる。 【0047】 原料混合物の性状は、焼成後のアノードアクティブ層20の気孔率Bが5体積%以上15体積%以下となるよう調整するとよい。かかる気孔率に大きな影響を与え得る条件としては、例えば、導電性材料の性状(例えば上記平均粒径)、バインダや造孔材の含有割合、NV値等が考えられる。 また、原料混合物を付与する厚みは、焼成後のアノードアクティブ層20の平均厚みAが20μm以上80μm以下を満たすよう調整する。具体的には、アノード支持体グリーンシート上に、20μm以上(例えば22μm以上)であって、150μm以下(典型的には100μm以下、例えば80μm以下)の厚みでアノードアクティブ層形成用の原料混合物を付与するとよい。 このようにして、アノード支持体-アノードアクティブ層グリーンシートを得ることができる。」 (7)「【0060】 以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。 【0061】 ここでは、アノードアクティブ層の平均厚みA、および、制御パラメータPを異ならせた時の発電性能を比較した。 まず、平均粒径0.8μmの酸化ニッケル(NiO)粉末と、平均粒径0.5μmのイットリア安定化ジルコニア(8mol%Y2O3-ZrO2、以下「8YSZ」と略称することがある。)粉末と、造孔材(カーボン)とを、54:36:10の質量比率で混ぜ合わせ、混合粉末を得た。かかる混合粉末と、バインダ(ブチラール系ポリマー)と、可塑剤(フタル酸エステル)とを、100:7:6の質量比率になるよう秤量し、溶剤(イソプロピルアルコール)中で混練することによって、NV値が凡そ60質量%のスラリー状のアノード支持体形成用組成物を調製した。これをシート成形して、厚みが凡そ0.6mmのアノード支持体グリーンシートを得た。 【0062】 次に、平均粒径0.2μmのNiO粉末と、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と、造孔材(カーボン)とを、57:38:5の質量比率で混ぜ合わせ、混合粉末を得た。かかる混合粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、分散剤(アニオン系の高分子界面活性剤)とを、100:2:2の質量比率になるよう秤量し、溶剤(α-テルピネオール)中で混練することによって、NV値が凡そ70質量%のスラリー状のアノードアクティブ層形成用組成物を調製した。これを、上記アノード支持体グリーンシートの表面に凡そ5μm~130μmの厚みでスクリーン印刷した後、120℃で乾燥させた。このようにして、アノード支持体-アノードアクティブ層グリーンシートを得た。 【0063】 次に、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、分散剤(カルボン酸系の高分子界面活性剤)とを、100:3:3の質量比率になるよう秤量し、溶剤(α-テルピネオール)中で混練することによって、NV値が凡そ65質量%のスラリー状の固体電解質層形成用組成物を調製した。これを、上記アノードアクティブ層グリーンシートの表面に凡そ1μm~20μmの厚みでスクリーン印刷した。このようにして、アノード支持体-アノードアクティブ層-固体電解質層(主体層)グリーンシートを得た。 【0064】 次に、平均粒径0.2μmのガドリニアドープセリア(10mol%Gd2O3-CeO2、10GDC。)粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、分散剤(カルボン酸系の高分子界面活性剤)とを、100:3:3の質量比率になるよう秤量し、溶剤(α-テルピネオール)中で混練することによって、NV値が凡そ65質量%のスラリー状の反応抑止層形成用組成物を調製した。これを、上記固体電解質層グリーンシートの表面に凡そ5μmの厚みでスクリーン印刷した後、120℃で乾燥させた。このようにして、アノード支持体-アノードアクティブ層-固体電解質層(主体層)-反応抑止層の4層構造からなる積層グリーンシートを得た。 【0065】 次に、この積層グリーンシートを、大気雰囲気中において1450℃の温度で凡そ3時間焼成した。これにより、ハーフセル(例1~例9)を得た。得られたハーフセルの性状(各層の平均厚みおよび気孔率)を表1に示す。表1において、Aはアノードアクティブ層の平均厚み(μm)を、Bはアノードアクティブ層の気孔率(体積%)を、Cは固体電解質層および反応抑止層の平均厚み(μm)を、Dは固体電解質層(主体層)および反応抑止層をあわせた全層における平均気孔率(体積%)を、表している。また、制御パラメータPは、次式:P=A(μm)÷C(μm)×B(体積%)÷D(体積%);により算出した。 【0066】 このハーフセルの反応抑止層の表面にカソードを形成し、SOFCの単セルを作製した。具体的には、まず、平均粒径1.0μmのLaCoO3系酸化物(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、溶剤(αーテルピネオール)とを、80:4:16の質量比率で混練することにより、スラリー状のカソード形成用組成物を調製した。次に、このカソード層形成用スラリーを、上記反応抑止層の上に凡そ30μmの厚みでスクリーン印刷した後、1100℃の温度で1時間焼成することによって、セルを作製した。 上記SOFCを温度500℃~700℃で動作させ、発電特性評価を行った。代表値として、作動温度600℃における最大電力密度(W/cm2)の値を表1の「発電性能」の欄に示す。また、図3に制御パラメータPと発電性能との関係を示す。 【0067】 【表1】 [図:0001404748000006.jpg] 【0068】 表1および図3に示すように、以下の条件: (1)20μm≦A≦50μm; (2)20≦P≦120; を満たす例1~例4では、相対的に高い発電性能を示した。なかでも、75≦Pを満たす例1および例3では、600℃における発電性能が0.25W/cm2以上と高く、特に、100≦P(100≦P≦120)を満たす例4では、600℃における発電性能が0.3W/cm2と最も高い発電性能を示した。 以上の結果より、ここに開示される製造方法によれば、アノードアクティブ層を備えるSOFC全体の最適化を図ることができ、低温環境下でも発電性能の高いSOFCを安定的に実現することができるとわかった。」 5 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、「固体酸化物形燃料電池用燃料極」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、固体酸化物形燃料電池に用いられる燃料極に関する。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、固体酸化物形燃料電池には、更なる性能向上が求められている。そのため、固体酸化物形燃料電池の内部抵抗を低減することが必要となっており、その1つとして、燃料極と電解質間の界面抵抗の低減が求められている。 【0007】 従って、本発明の課題は、燃料極と電解質間の界面抵抗が低い固体酸化物形燃料電池用燃料極を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、燃料極材料として、酸化ニッケルと電解質物質とを用い、且つ、酸化ニッケルと電解質物質の含有割合及び粒径を制御することにより、燃料極と電解質間の界面抵抗を極めて低くできることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (3)「【0042】 本発明の第三の形態の固体酸化物形燃料電池用燃料極(以下、本発明の燃料極(3)とも記載する。)は、電解質物質と酸化ニッケルとからなる平均粒径D50が0.2~1.5μmの複合粒子であり、且つ、該電解質物質の含有量と該酸化ニッケルの含有量との割合が35:65~50:50である複合粒子を、焼成して得られることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用燃料極である。 【0043】 本発明の燃料極(3)に係る該複合粒子は、一粒子が、電解質物質と酸化ニッケル(NiO)とで構成されている粒子である。つまり、該複合粒子は、該電解質物質と酸化ニッケルとを含有する粒子である。該複合粒子について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の燃料極(3)に係る該複合粒子の模式図である。図3中、複合粒子11は、電解質物質の一次粒子12と酸化ニッケルの一次粒子13とが凝集した凝集体である。つまり、該複合粒子11は、一次粒子の凝集体である二次粒子である。 【0044】 本発明の燃料極(3)に係る該電解質物質は、本発明の燃料極(1)に係る該電解質物質粒子を構成する電解質物質と同様である。 【0045】 本発明の燃料極(3)に係る該複合粒子の平均粒径D50(二次粒子の平均粒径)は、0.2~1.5μm、好ましくは0.3~1.2μm、特に好ましくは0.4~1.0μmである。 【0046】 本発明の燃料極(3)に係る該複合粒子中の該電解質物質の一次粒子の平均粒径は、0.01~0.5μm、好ましくは0.02~0.2μm、特に好ましくは0.02~0.1μmである。 【0047】 本発明の燃料極(3)に係る該複合粒子中の酸化ニッケルの一次粒子の平均粒径は、0.01~0.5μm、好ましくは0.02~0.2μm、特に好ましくは0.02~0.1μmである。 【0048】 なお、本発明において、該複合粒子中の該電解質物質の一次粒子の平均粒径及び該複合粒子中の該酸化ニッケルの一次粒子の平均粒径は、該複合粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、TEM観察から元素分析を実施し、その元素分布から電解質物質及び酸化ニッケルの一次粒子の粒径を測定して、得られた粒径の平均値を算出することによって、求められた値である。」 (4)「【0072】 <性能評価> 該燃料極が形成されている電解質基板Jについて、燃料極と電解質間の界面抵抗を、交流インピーダンス法により求めた。その結果を表3に示す。 【0073】 【表3】 [図:0001404748000007.jpg] 」 6 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、「燃料電池用電極触媒体、それを用いた燃料電池用空気極、およびその触媒活性評価方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池用電極触媒体、それを用いた燃料電池用空気極、およびその酸素還元活性を評価する触媒活性評価方法に関する。 【0002】 【従来の技術】ガスの電気化学的反応を利用して、化学エネルギを直接電気エネルギに変換する燃料電池は、カルノー効率の制約を受けないため発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。」 (2)「【0011】本発明の燃料電池用電極触媒体は、触媒粒子の平均結晶子径が5nm以下と小さいため、触媒として作用する表面積が大きく、触媒活性の高い触媒体となる。さらに、触媒粒子の(111)結晶面に垂直な方向の結晶子径の平均値D111と(100)結晶面に垂直な方向の結晶子径の平均値D100との比がD100/D111<1であるため、表面に(100)結晶面が表れている触媒粒子の割合が大きく、酸素還元活性の高い触媒体となる。 【0012】また、本発明の燃料電池用空気極は、白金を含む触媒粒子と、該触媒粒子を担持する導電性担体とからなる粉末状の電極触媒体を備えた燃料電池用空気極であって、前記触媒粒子の(111)結晶面に垂直な方向の結晶子径の平均値D111と(100)結晶面に垂直な方向の結晶子径の平均値D100との比がD100/D111<1であり、前記触媒粒子の平均結晶子径が5nm以下であることを特徴とする電極触媒体を備えることを特徴とする。すなわち、本発明の燃料電池用空気極は、上記電極触媒体を触媒として用いた空気極である。上記電極触媒体を用いることで、酸素還元活性は高くなり、過電圧の小さな空気極となる。その結果、出力の大きな燃料電池を構成することができる。また、触媒活性の高い上記電極触媒体を用いているため、より少ない触媒量で良好な電池性能を得ることができ、高価な白金を含む触媒体の使用量を低減可能な、より安価な空気極となる。 【0013】さらに、本発明の電極触媒体の触媒活性評価方法は、白金を含む触媒粒子と、該触媒粒子を担持する導電性担体とからなる粉末状の燃料電池用電極触媒体の酸素還元活性を評価する電極触媒体の触媒活性評価方法であって、前記触媒粒子の(111)結晶面に垂直な方向の結晶子径の平均値D111と(100)結晶面に垂直な方向の結晶子径の平均値D100との比の値と、前記触媒粒子の平均結晶子径とに基づいて、酸素還元活性を評価することを特徴とする。上述したように、電極触媒体の酸素還元活性は、触媒粒子表面に表れる結晶面に依存する。また、触媒粒子の大きさが小さくその比表面積が大きいほど活性は高くなる。したがって、触媒粒子の結晶子径を調査することにより、その平均結晶子径を得るとともに、酸素還元活性の高い(100)結晶面の表面への出現度合いを推測することができ、これらの値に基づいて電極触媒体の酸素還元活性を正確かつ簡便に評価できる。」 (3)「【0019】触媒粒子の平均結晶子径は、反応に寄与する表面積を大きくし、触媒活性を高めるという観点から5nm以下とする。より触媒活性を高めるためには、3nm以下とすることが望ましい。平均結晶子径を求める方法は、特に限定されるものではなく、例えば上記同様、粉末X線回折法により求めることができ、また、透過型電子顕微鏡(TEM)を利用して求めることもできる。例えば、電極触媒体をTEMで観察し、識別できる触媒粒子の最長および最短の結晶子径を測定する。そして、それらの平均値をその触媒粒子の結晶子径とみなし、各触媒粒子の結晶子径を触媒粒子全体で平均した値を平均結晶子径とすればよい。なお、本明細書においては、上記TEM観察による方法により求めた値を平均結晶子径として採用するものとする。」 7 甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、「固体酸化物形燃料電池」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、固体電解質層の一方の面に燃料極層を配し、他方の面に空気極層を配して成る発電セルを備えた固体酸化物形燃料電池に関し、特に、発電セルにおける電極過電圧(分極)の低減に関するものである。」 (2)「【0018】 【実施例】 次に、上記した本発明の効果を確認するため、以下(1)~(3)の工程にて実施例(本発明)と比較例(従来例)の発電セルを製造し、各々の発電特性を比較した。 【0019】 [実施例] 工程1:固体電解質層の製造 原材料としてLa2O3、SrCO3、Ga2O3、MgO、CoOを用意し、これらを所定量秤量してボールミル混合した後、空気中で1200℃に加熱して仮焼し、さらにボールミルで粉砕してランタンガレート系酸化物粉末を製造した。こうして得られたランタンガレート系酸化物粉末をドクターブレード法等の公知の方法で薄板形状に成形した後、空気中で1450℃に加熱し、表1に示す成分組成および厚さの板状固体電解質材料(実施例1~4)を製造した。 工程2:燃料極層の製造 本実施例では、以下に示す噴霧熱分解法により製造した。 硝酸ニッケル、硝酸セリウム、硝酸サマリウムを用意し、これらを所定量秤量し、水に溶解して水溶液とし、これを超音波霧化器で霧状にし、空気をキャリヤーガスとして管状電気炉に導入し、1000℃の酸化雰囲気中でこの霧状の水溶液を乾燥して硝酸塩を熱分解すると共に反応させて、主として酸化ニッケルの微細粒子の周囲に酸化セリウムと酸化サマリウムの複合酸化物が付着した粒子構造を有する表1に示す配合比率の混合物粉末(高分散複合微粒子)を製造した。尚、前記酸化ニッケル粒子の平均粒子径は0.9μm以下とし、本実施例では0.2~0.5μmのものを使用した。 この高分散複合微粒子を前記行程1で製造した固体電解質材料の一方の面にスクリーン印刷法等の公知の方法で所定の厚さに成形し、空気中で焼付けした。 尚、燃料極層は、この焼付け段階では酸化ニッケルと酸化セリウムと酸化サマリウムの複合酸化物の混合物であるが、発電時に導入される還元性の燃料ガスによって酸化ニッケルが還元して金属ニッケルとなる。 工程3:空気極層の製造 炭酸ストロンチウム、酸化サマリウムを用意し、これらを所定量秤量し、ボールミル混合した後、空気中で1000℃で仮焼し、ボールミルで粉砕して表1に示す組成のサマリウム-ストロンチウム-コバルタイト粉末を製造し、これを前記固体電解質材料の他方の面にスクリーン印刷法等で所定の厚さに成形し、空気中で焼付けした。 【0020】 [比較例] 固体電解質層は、従来通りの安定化ジルコニア(YSZ)(具体的には8%Y2O3-ZrO2)を用い、また、空気極層はペロブスカイト型酸化物材料(具体的にはLa0.9Sr0.1CoO3)を用いた。尚、燃料極層については前記実施例の場合と同様とした。 【0021】 前記実施例1~4および比較例1の発電セルを800℃および660℃の動作温度で作動した時の各々発電特性を測定し、表2および表3に示した。尚、表2は動作温度800℃における電流密度2000mA/cm2時の特性を示し、表3は動作温度660℃における電流密度1000mA/cm2時の特性を示している。 【0022】 【表1】 [図:0001404748000008.jpg] 」 8 甲第8号証の記載事項 甲第8号証には、「セラミックスラリーおよびその製造方法ならびに固体酸化物形燃料電池」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【0066】 燃料極層3中の安定化ZrO2または安定化CeO2の含有量は、燃料極層3全体に対して、35~65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNiあるいはNiOの含有量は、65~35体積%であるのが好ましい。さらに、この燃料極層3の気孔率は、15%以上であり、特に20~40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1~30μmである。気孔率は、断面のSEM写真を2値化処理し、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて、画像解析により算出できる。」 9 甲第9号証の記載事項 甲第9号証には、「非水電解質二次電池」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、非水電解質二次電池に関し、さらに詳しくは、例えばリチウムイオン二次電池のように、正極と負極とがセパレータを介して積層された電極体を非水系の有機電解液中に浸漬し、充放電の繰り返しにより電池出力が得られる非水電解質二次電池に関するものである。」 (2)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電気自動車、とりわけハイブリッド車のようにガソリンエンジンによる動力出力と二次電池による電気出力とを併用する電気自動車のように、二次電池としての充電・放電の両特性が従来の二次電池以上に要求されるものでは、特に回生(充電)特性が不足しているという問題があった。 【0006】そこで本発明者は、種々検討した結果、正極と負極との間に介在されるセパレータの厚み寸法を更に薄くすることが必要であり、これにより回生特性が向上することを見い出した。図2は回生特性を評価するため電流(A)-電圧(V)特性の関係を示したものである。 【0007】この図において回生特性は、O(A)の縦軸直線と、カットオフ電圧(点線にて示す)、および電流/電圧直線により囲まれた部分の面積で表せる。そこでセパレータの厚みが薄くなると、電流O(A)時の電流/電圧直線の接点の電圧(Vo)の位置が変わらず、電流/電圧直線の傾きが小さくなって回生特性が向上するとの考えに至ったものである。 【0008】本発明の解決しようとする課題は、正極と負極との間に介在されるセパレータの厚みと気孔率とを適正に選択することにより、回生(充電)特性に優れ、しかも電極間の短絡(ショート)も回避されて安全性の高い非水電解質二次電池を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】この課題を解決するために本発明は、請求項1に記載したように正極と負極とがセパレータを介して積層された電極体を非水電解液に浸漬した非水電解質二次電池において、前記セパレータの厚み寸法を10μm~30μmの範囲、望ましくは15μm以上25μm以下の範囲とすると共に、該セパレータの気孔率を30%~65%の範囲としたことを要旨としたものである。 【0010】セパレータの厚みが薄いと電極間の短絡(ショート)が起き易くなり、逆にセパレータの厚みが厚いと正極および負極の活物質の体積が相対的に低下し、全体としての充放電容量の低下を招くことになり好ましくない。またセパレータの気孔率が小さいと抵抗が増加し、レート特性が悪くなり、逆にセパレータの気孔率が大きいと電極間のショートが起き易くなる。 【0011】このようなことから、セパレータの厚みを5μm~30μmの範囲で薄くした時にはその気孔率も35%~65%の範囲で低目とし、逆にセパレータの厚みを厚くした時にはその気孔率を高目とするのがよい。これにより電極間のショートが回避されると共に、抵抗の抑制により優れた回生特性および出力特性が得られることとなる。セパレータの孔径は、0.01μm以上0.4μm以下が望ましい。0.01μm未満では、内部抵抗が大きく効率的な充放電が容易でない。また、0.4μmより大きいと電極間ショートが生じ易くなる。」 10 甲第10号証の記載事項 甲第10号証には、「触媒材の製造方法、触媒材及びそれを用いた排気ガス浄化用触媒」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 複数の結晶子が凝集して一次粒子を形成しているアルミナ粒子と、前記アルミナ粒子の表面の少なくとも一部を被覆するセリウムを含有する酸化物粒子とが複合化された触媒材の製造方法であって、 ベーマイトアルミナの酸性コロイド溶液を調製する工程と、 セリウムイオンを含有する酸性溶液を調製する工程と、 pHが略一致した前記酸性コロイド溶液と前記酸性溶液を混合する工程と、を有する触媒材の製造方法。 ・・・」 (2)「【0043】 得られたX線回折パターンを用いて、酸化物粒子の結晶子径を測定したところ、本発明の触媒材は高温熱処理後でも酸化物粒子は結晶子径が5~20nmの範囲にあり、粒子の粒成長が抑制されていた。また、この結晶子径は図2で観察された酸化物粒子の結晶子径と略一致していた。これに対し、図3の比較例1の触媒の結晶子径は、20~30nmまで粒成長していた。従って、本発明の触媒材は高温に長時間晒されても酸化物粒子の粒成長が抑えられ、長期の耐熱性に優れた触媒が得られることが確認された。なお、酸化物粒子の結晶子径はX線回折パターンのピークの線幅から以下のシェラーの式により求められる。 【0044】 L=Kλ/β・cosθ [ただし、Lは結晶子径、Kはシェラー定数(0.9)、λは測定X線波長(1.54Å)、βはピークの線幅、θは回折線のブラック角である。] 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。」 第7 当審の判断 以下に述べるように、特許異議申立書の申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1、取消理由1(明確性要件) (1)本件発明1~5について 本件訂正により、本件訂正前の請求項1における「一次粒子の平均粒子径」が「平均結晶子径」と訂正されたため、請求項1の記載と本件明細書の段落【0041】、【0081】の記載との間の不整合は解消した。 したがって、本件特許の請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえる。 (2)請求項6について 上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項6が削除されたため、請求項6に係る特許に対する申立理由1及び取消理由1は、それらの対象となる請求項が存在しないものとなった。 (3)申立理由1、取消理由1のまとめ 以上のとおり、申立理由1、取消理由1によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(明確性要件)(職権により発見した理由) (1)請求項2~5について 本件訂正により、請求項2において、B、Cが意味するもの、及び、x、y、zの取り得る数値範囲が特定された。また、特許権者が、令和 5年 3月13日提出の意見書において、「式中のOは、酸素を示すことが明らかです。」と述べるとおり、Oが酸素を示すことも明らかとなった。 したがって、本件特許の請求項2及び請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~5の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえる。 (2)請求項6について 上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項6が削除されたため、請求項6に係る特許に対する取消理由2は、その対象となる請求項が存在しないものとなった。 (3)取消理由2のまとめ 以上のとおり、取消理由2によっては、本件特許の請求項2~5に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由2(サポート要件) (1)ア 本件発明が解決しようとする課題は、「電極抵抗が低い固体酸化物形セル用電極及びそれを用いた固体酸化物形セル」「を提供すること」であると認められる(段落【0016】)。 イ 上記本件発明が解決しようとする課題に対し、本件発明1の固体酸化物形セル用電極は、「固体酸化物形セル用電極であって、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有し、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μmであり、 電極の膜厚が0.5μm~50μmであり、 電極の気孔率が1~30体積%であり、 0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合には、前記電極の気孔率が1~15体積%であり、 1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合には、前記電極の気孔率が5~20体積%であり、 5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり、 25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合には、前記電極の気孔率が10~30体積%である ことを特徴とする固体酸化物形セル用電極。」との技術的事項で特定されている。 ウ そして、本件明細書には、上記課題を解決するための手段として、以下の事項が記載されている。 (ア)「本発明者らは、上記従来技術における課題、つまり、「電極抵抗を低減するためには電極反応場の拡大とガス拡散経路の確保が必要であるが、両者のトレードオフの関係から両立することが困難」という課題を解決すべく、電極の材料と構造を制御することにより多くの電極試料を試作し、その性能評価を重ねた結果、電極材料として、異なる結晶構造を有する複数の酸化物又は金属材料が特定の粒子径であり、特定の含有割合で複合化され、電極が特定膜厚である場合に、気孔率を従来よりも低い値にすることができ、気孔率を特定の範囲とすることにより、電極抵抗を飛躍的に低減できることを見出し、本発明を開発するに至った。」(段落【0017】) (イ)「本発明の電極は電子伝導性材料とイオン伝導性材料が複合化された多孔質体である。電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比(電子伝導性材料:イオン伝導性材料)は、75:25~25:75、好ましくは70:30~30:70、特に好ましくは60:40~40:60である。電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が上記範囲内にあることにより、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の接触点が増加することにより反応場が拡大され、電極抵抗が低くなる。(段落【0038】) (ウ)「本発明の電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料における平均結晶子径は、1nm~1μm、好ましくは5nm~0.5μm、特に好ましくは10nm~0.2μmである。電極中の電子伝導性材料とイオン伝導性材料における平均結晶子径が上記範囲内にあることにより、電子伝導性材料とイオン伝導性材料の接触点が増加すること及び電極内比表面積が増加することにより反応場が拡大され、電極抵抗が低くなる。」(段落【0040】) (エ)「本発明の電極の膜厚は、0.5μm~50μm、好ましくは0.5μm~25μm、特に好ましくは0.5μm~5μmである。電極の膜厚が上記範囲内にあることにより、ガス拡散抵抗が低減されるため電極抵抗が低くなる。」(段落【0042】) (オ)「本発明の電極の気孔率は、1~30体積%であり、好ましくは2~25体積%、特に好ましくは3~20体積%である。電極の気孔率が上記範囲に内にあることにより、電極内の電子伝導性材料とイオン伝導性材料の空間あたりの占有率が高くなり反応場が拡大されるため、電極抵抗が低くなる。(段落【0043】) (カ)「本発明の電極では、その膜厚と気孔率が以下の範囲にあることにより、より電極抵抗が低くなる。 (I)0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合、前記電極の気孔率が1~15体積%、好ましくは2~13体積%、特に好ましくは3~10体積%である。 (II)1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合、前記電極の気孔率が5~20体積%、好ましくは7~18体積%、特に好ましくは10~15体積%である。 (III)5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合、前記電極の気孔率が7~25体積%、好ましくは8~20体積%、特に好ましくは12~18体積%である。 (IV)25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合、前記電極の気孔率が10~30体積%、好ましくは12~25体積%、特に好ましくは15~20体積%である。」(段落【0044】) エ 上記ウの記載事項からすると、上記アに記載の課題において、固体酸化物形セル用電極及びそれを用いた固体酸化物形セルの電極抵抗を低減することは、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比」、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径」、「電極の膜厚」、「電極の気孔率」及び「前記「電極の膜厚」と前記「電極の気孔率」との関係」を本件発明1のとおりに適正化することで解決するものと認められる。 オ そして、本件明細書の段落【0083】の表1には、本件発明1で特定される条件を満たす実施例1~12は、電極抵抗が低く、本件発明1のいずれかの条件を満たさない比較例1~10は、電気伝導性材料とイオン導電性材料の組み合わせが同じ実施例と比較して電極抵抗が大きくなっていることから、本件発明1及び本件発明1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2~5は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 カ 申立人は特許異議申立書の第16~20ページの「(ウ)電極の膜厚および気孔率の数値範囲について」において、本件発明1の発明特定事項に規定された電極の膜厚および気孔率の数値範囲は、実施例及び比較例の分布に鑑みて広すぎるため、出願時の技術常識に照らしても、その数値範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できない旨主張する。 しかしながら、申立人の主張は、単に、本件発明1の発明特定事項に規定された電極の膜厚および気孔率の数値範囲が広いことを主張するにとどまり、当該数値範囲に包含されるものの、実施例ではない態様では上記アの課題を解決できないことについて、具体的な根拠を何ら示していない。また、参照すべき技術常識すら提示していない。 よって、申立人の主張は採用できない。 キ 申立人は特許異議申立書の第20~23ページの「(エ)電極を構成する材料の粒径の数値範囲について」において、本件特許発明1の発明特定事項に規定された電極の構成材料の一次粒子の平均粒子径の数値範囲は、実施例および比較例の分布に鑑みて広すぎるため、出願時の技術常識に照らしても、その数値範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できない旨主張する。 しかしながら、申立人の主張は、単に、本件発明1の発明特定事項に規定された電極の構成材料の一次粒子の平均粒子径(平均結晶子径)の数値範囲が広いことを主張するにとどまり、当該数値範囲に包含されるものの、実施例ではない態様では上記アの課題を解決できないことについて、具体的な根拠を何ら示していない。また、参照すべき技術常識すら提示していない。 よって、申立人の主張は採用できない。 ク また、申立人は特許異議申立書の第23~27ページの「(オ)固体酸化物形セル用電極における電子伝導性材料及びイオン伝導性材料の含有形態について」において、電極における電子伝導性材料及びイオン伝導性材料の含有形態が、合成粉体材料としての含有形態以外の形態である場合に課題を解決できることの具体的根拠は一切記載されておらず、そのような形態で課題が解決できることは、出願時の技術常識に照らしても当業者に理解できるものではない旨主張する。 しかしながら、申立人は、電極における電子伝導性材料及びイオン伝導性材料の含有形態が、合成粉体材料としての含有形態以外の形態である場合に上記アの課題を解決できないことについて、具体的な根拠を何ら示していない。また、参照すべき技術常識すら提示していない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (2)請求項6について 上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項6が削除されたため、請求項6に係る特許に対する申立理由2は、その対象となる請求項が存在しないものとなった。 (3)申立理由2のまとめ 以上のとおり、申立理由2によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3、取消理由3(新規性、進歩性) (1)甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には、「金属酸化物及び固体電解質によって多孔質に形成された第1燃料極層(A)と、金属酸化物及び固体電解質によって多孔質に形成され、第1燃料極層(A)より気孔率が小さい第2燃料極層(B)と、固体電解質によって形成された固体電解質層(C)と、空気極層(D)とが、(A)/(B)/(C)/(D)の順に積層されていることを特徴とする燃料電池用単セル。」に関する発明が記載されている(請求項1)。 イ 甲第1号証には、上記アの発明に関し、実施例4として、第1燃料極層(A)が、NiO:55質量%、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア):45質量%の組成を有し、厚みが500μm、気孔率が40容量%であり、第2燃料極層(B)が、NiO:60質量%、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア):40質量%の組成を有し、厚みが20μm、気孔率が12容量%であり、固体電解質層(C)が、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア):100質量%の組成を有し、厚みが8μmであり、空気極層(D)が、LSM((La,Sr)MnO3):100質量%の組成を有し、厚みが50μmである燃料電池用単セルが記載されている。 ウ また、実施例5として、第1燃料極層(A)が、NiO:55質量%、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア):45質量%の組成を有し、厚みが500μm、気孔率が40容量%であり、第2燃料極層(B)が、NiO:60質量%、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア):40質量%の組成を有し、厚みが7μm、気孔率が25容量%であり、固体電解質層(C)が、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア):100質量%の組成を有し、厚みが8μmであり、空気極層(D)が、LSM((La,Sr)MnO3):100質量%の組成を有し、厚みが50μmである燃料電池用単セルが記載されている。 エ ここで、第2燃料極層(B)では、以下の粒径の材料粉末が使用されている(段落【0063】)。 固体電解質:粒子径が0.1~0.8μmの範囲にある細粒粉末(平均粒子径0.5μm)。 金属酸化物:粒子径が0.1~0.8μmの範囲にある細粒粉末(平均粒子径0.3μm)。 オ そして、実施例4、5の「第2燃料極層(B)」、「前記(B)と固体電解質層(C)とが、(B)/(C)の順に積層されている」積層体、「第1燃料極層(A)と前記(B)と前記(C)とが、(A)/(B)/(C)の順に積層されている」積層体、及び「燃料電池用単セル」に着目すると、甲第1号証には、以下の8つの発明(以下、「甲1発明1A」、「甲1発明1B」~「甲1発明4A」、「甲1発明4B」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明1A> 燃料電池用単セルにおける、第2燃料極層(B)であって、 平均粒子径0.3μmのNiOと平均粒子径0.5μmのScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)から製造され、 NiO:60質量%、ScSZ:40質量%の組成を有し、厚みが20μm、気孔率が12容量%である、第2燃料極層(B)。 <甲1発明1B> 燃料電池用単セルにおける、第2燃料極層(B)であって、 平均粒子径0.3μmのNiOと平均粒子径0.5μmのScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)から製造され、 NiO:60質量%、ScSZ:40質量%の組成を有し、厚みが7μm、気孔率が25容量%である、第2燃料極層(B)。 <甲1発明2A> 甲1発明1Aの第2燃料極層(B)と、ScSZ:100質量%の組成を有し、厚みが8μmである固体電解質層(C)とが、この順に積層されている積層体。 <甲1発明2B> 甲1発明1Bの第2燃料極層(B)と、ScSZ:100質量%の組成を有し、厚みが8μmである固体電解質層(C)とが、この順に積層されている積層体。 <甲1発明3A> NiO:55質量%、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア):45質量%の組成を有し、厚みが500μm、気孔率が40容量%である第1燃料極層(A)と、甲1発明1Aの第2燃料極層(B)と、ScSZ:100質量%の組成を有し、厚みが8μmである固体電解質層(C)とが、この順に積層されている積層体。 <甲1発明3B> NiO:55質量%、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア):45質量%の組成を有し、厚みが500μm、気孔率が40容量%である第1燃料極層(A)と、甲1発明1Bの第2燃料極層(B)と、ScSZ:100質量%の組成を有し、厚みが8μmである固体電解質層(C)とが、この順に積層されている積層体。 <甲1発明4A> 甲1発明3Aの第1燃料極層(A)と甲1発明1Aの第2燃料極層(B)と固体電解質層(C)と、空気極層(D)とが、この順に積層されている燃料電池用単セル。 <甲1発明4B> 甲1発明3Bの第1燃料極層(A)と甲1発明1Bの第2燃料極層(B)と固体電解質層(C)と、空気極層(D)とが、この順に積層されている燃料電池用単セル。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明1Aとの対比・判断 (ア)対比 a 甲1発明1Aにおいて、燃料電池用単セルは、固体酸化物形燃料電池用の単セルであり(段落【0001】)、第2燃料極層(B)は電極であるから、甲1発明1Aの「燃料電池用単セルにおける、第2燃料極層(B)」は、本件発明1の「固体酸化物形セル用電極」に相当する。 b NiOは、本件明細書の段落【0037】において、燃料極用の電子伝導性材料として例示されているから、甲1発明1Aの「NiO」は、本件発明1の「電子伝導性材料」に相当する。 c ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)は、本件明細書の段落【0034】において、イオン伝導性材料として例示されているから、甲1発明1Aの「ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)」は、本件発明1の「イオン伝導性材料」に相当する。 d 甲1発明1Aにおいて、NiOとScSZの質量比は60:40であり、これは、本件発明1の「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり」を満たすものである。 e 甲1発明1Aにおいて、第2燃料極層(B)の厚みは20μm、気孔率は12容量%であり、通常、容積%と体積%は等しい値となるから、甲1発明1Aの第2燃料極層(B)の「厚みが20μm」であること、第2燃料極層(B)の「気孔率が12容量%」であることは、それぞれ、本件発明1の「電極の膜厚が0.5μm~50μmであり」、「電極の気孔率が1~30体積%であり」に相当し、甲1発明1Aにおける、「厚みが20μm」、「気孔率が12容量%」との関係は、本件発明1の「5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり」との関係を満たすものである。 f 一方、甲1発明1Aの第2燃料極層(B)は、平均粒子径0.3μmのNiOと平均粒子径0.5μmのScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)から製造されるものであるが、本件発明1における、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径」は、本件明細書の段落【0079】の「950℃で1時間焼成することで実施例1の電極を得た。」との記載、段落【0081】の「実施例1~12及び比較例1~10の電極の一次粒子の平均粒子径を、X線回折(例:SmartLab、リガク製)のピーク半値幅とシェラーの式(シェラー定数:0.9)により求めた。その結果を表1に示す。」との記載を踏まえると、作製した電極における平均結晶子径を意味すると解されるから、甲1発明1Aの平均粒子径は、本件発明1の平均結晶子径に相当しない。 g そうすると、本件発明1と甲1発明1Aとは、以下の一致点1-1において一致するとともに、以下の相違点1-1、相違点1-2において相違する。 <一致点1-1> 固体酸化物形セル用電極であって、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料を含有し、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり、 電極の膜厚が0.5μm~50μmであり、 電極の気孔率が1~30体積%であり、 0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合には、前記電極の気孔率が1~15体積%であり、 1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合には、前記電極の気孔率が5~20体積%であり、 5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり、 25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合には、前記電極の気孔率が10~30体積%である 固体酸化物形セル用電極。」である点。 <相違点1-1> 固体酸化物形セル用電極について、本件発明1は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるに対し、甲1発明1Aは、燃料電池用単セルの第2燃料極層である点。 <相違点1-2> 本件発明1は、作製した電極における「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μmであ」るのに対し、甲1発明1Aでは、第2燃料極層(B)が「平均粒子径0.3μmのNiOと平均粒子径0.5μmのScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)から製造され」るものの、第2燃料極層(B)における平均結晶子径が不明である点。 (イ)判断 a 相違点1-1について (a)本件発明1の固体酸化物形セル用電極は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるから、空気極であると認められる。一方、甲1発明1Aは、燃料電池用単セルの燃料極であると認められる。ここで、空気極と燃料極とは異なる極であるから、相違点1-1は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲1発明1Aであるとはいえない。 (b)甲第1号証には、燃料電池単位セルの空気極層(D)に対して、第2燃料極層(B)である甲1発明1Aを適用することが何ら記載されていないから、甲1発明1Aにおいて、NiO及びScSZを空気極層用の材料とすることが動機付けられるとはいえない。 b よって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明1と甲1発明1Bとの対比・判断 (ア)対比・判断 本件発明1と甲1発明1Bとを対比すると、本件発明1と甲1発明1Aとの対比に係る上記ア(ア)a~fについてと同様であることから、両者は、上記一致点1-1において一致するとともに、上記相違点1-1、相違点1-2において相違する。 そして、相違点1-1に対する判断は、上記ア(イ)aで検討したとおりである。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明3、4について 本件発明3、4は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明3、4についても同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明3、4についても同様に、甲第1号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明6について 上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項6が削除されたため、請求項6に係る特許に対する申立理由3及び取消理由3は、それらの対象となる請求項が存在しないものとなった。 (5)申立理由3、取消理由3のまとめ 以上のとおり、申立理由3、取消理由3によっては、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由4、取消理由4(新規性、進歩性) (1)甲第2号証に記載された発明 ア 甲第2号証には、「イットリア安定化ジルコニアの粒子サイズとスプレーコーティングプロセスにより形成されたNiO-YSZフィルムの形態学的特性との関係」に関する発明が記載されている(表題)。 イ また、甲第2号証には、「ニッケル-イットリア安定化ジルコニア(Ni/YSZ)は、YSZが電解質として用いられているSOFCのために最も広く用いられているアノード材料である。」(第3421ページ左欄第16行~右欄2行)との記載もあり、この記載によれば、上記アのNiO-YSZフィルムは、固体酸化物形燃料電池のアノード材料であると認められる。 ウ そして、甲第2号証の「2.1 出発材料」には、「NiO/YSZの名目質量比は、56/44であった」こと(第3422ページ左欄第29~30行)、「すべてのフィルムについて、堆積された層の厚さは約10μmであった」こと(第3422ページ左欄下から第6~5行)が記載されている。 エ ここで、甲第2号証の図1(第3422ページ右欄)には、YSZ上に堆積されたL2アノードフィルムの断面写真が示されており、図1から、NiO及びYSZの一次粒子の平均粒子径がそれぞれ1μm以下であり、1nm未満でないことが読み取れる。また、図1を画像処理することにより、気孔率を算出すると20.1体積%となる(特許異議申立書の第33ページを参照。なお、気孔率をSEM写真を2値化処理することにより求める手法は、甲第8号証により公知であり、本件明細書においても、SEM画像のコントラストを画像処理することで気孔率を求めている(段落【0081】)。)。 オ 一方、図1のアノードフィルムL2に用いられた粉末である、NiO/YSZ1000(表1参照)の結晶サイズに関して、表2には、YSZの結晶サイズが35nm、NiOの結晶サイズが72nmであることが記載されている。そして、上記結晶サイズは、XRDパターンから推測されることから、結晶子径であるといえる。 カ 以上から、甲第2号証には、「NiO-YSZフィルム」、「YSZ上に堆積されたアノードフィルム」及び「NiO-YSZフィルムをアノードに用いた固体酸化物形燃料電池」に関する、以下の4つの発明(以下、「甲2発明1A」、「甲2発明1B」、「甲2発明2」、「甲2発明3」という。)が記載されていると認められる。 <甲2発明1A> 固体酸化物形燃料電池のアノード材料であるNiO-YSZフィルムであって、 NiOとYSZの質量比が56:44であり、 NiOとYSZの各材料における一次粒子の平均粒子径が1nm~1μmであり、 NiO-YSZフィルムの層の厚さが約10μmであって、 NiO-YSZフィルムの気孔率が20.1体積%である 固体酸化物形燃料電池のアノード材料であるNiO-YSZフィルム。 <甲2発明1B> 固体酸化物形燃料電池のアノード材料であるNiO-YSZフィルムであって、 結晶子径が72nmのNiO粉末と、結晶子径が35nmYSZ粉末から製造され、 NiOとYSZの質量比が56:44であり、 NiO-YSZフィルムの層の厚さが約10μmであって、 NiO-YSZフィルムの気孔率が20.1体積%である 固体酸化物形燃料電池のアノード材料であるNiO-YSZフィルム。 <甲2発明2> YSZ上に甲2発明1AのNiO-YSZフィルム又は甲2発明1BのNiO-YSZフィルムが堆積された積層体。 <甲2発明3> 甲2発明2の積層体を有する固体酸化物形燃料電池。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明1Aとの対比・判断 (ア)対比 a 甲2発明1Aにおいて、アノードは、固体酸化物形燃料電池の燃料極であるから、甲2発明1の「固体酸化物形燃料電池のアノード材料であるNiO-YSZフィルム」は、本件発明1の「固体酸化物形セル用電極」に相当する。 b NiOは、本件明細書の段落【0037】において、燃料極用の電子伝導性材料として例示されているから、甲2発明1Aの「NiO」は、本件発明1の「電子伝導性材料」に相当する。 c YSZ(イットリア安定化ジルコニア)は、本件明細書の段落【0034】において、イオン伝導性材料として例示されているから、甲2発明1Aの「YSZ」は、本件発明1の「イオン伝導性材料」に相当する。 d 甲2発明1Aにおいて、NiOとYSZの質量比は56:44であり、これは、本件発明1の「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり」を満たすものである。 e 甲2発明1Aの「NiO-YSZフィルムの層の厚みが約10μm」であること、「NiO-YSZフィルムの気孔率が20.1体積%」であることは、それぞれ、本件発明1の「電極の膜厚が0.5μm~50μmであり」、「電極の気孔率が1~30体積%であり」に相当し、甲2発明1Aにおける、「厚みが約10μm」、「20.1体積%」との関係は、本件発明1の「5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり」との関係を満たすものである。 f そうすると、本件発明1と甲2発明1Aとは、以下の一致点2-1において一致するとともに、以下の相違点2-1、相違点2-2において相違する。 <一致点2-1> 固体酸化物形セル用電極であって、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料を含有し、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり、 電極の膜厚が0.5μm~50μmであり、 電極の気孔率が1~30体積%であり、 0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合には、前記電極の気孔率が1~15体積%であり、 1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合には、前記電極の気孔率が5~20体積%であり、 5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり、 25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合には、前記電極の気孔率が10~30体積%である 固体酸化物形セル用電極。」である点。 <相違点2-1> 固体酸化物形セル用電極について、本件発明1は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるに対し、甲2発明1Aは、固体酸化物形燃料電池のアノード材料であるNiO-YSZフィルムである点。 <相違点2-2> 本件発明1は、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μm」であるのに対し、甲2発明1Aでは、「NiOとYSZの各材料における一次粒子の平均粒子径が1nm~1μm」である点。 (イ)判断 a 相違点2-1について (a)本件発明1の固体酸化物形セル用電極は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるから、空気極であると認められる。一方、甲2発明1Aは、固体酸化物形燃料電池の燃料極であると認められる。ここで、空気極と燃料極とは異なる極であるから、相違点2-1は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲2発明1Aであるとはいえない。 (b)甲第2号証には、固体酸化物形燃料電池のカソードに対して、アノード材料である甲1発明2Aを適用することが何ら記載されていないから、甲1発明2Aにおいて、NiO-YSZフィルムをカソード用の材料とすることが動機付けられるとはいえない。 b よって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明1と甲2発明1Bとの対比・判断 (ア)対比 a 甲2発明1Bにおいて、アノードは、固体酸化物形燃料電池の燃料極であるから、甲2発明1Bの「固体酸化物形燃料電池のアノード材料であるNiO-YSZフィルム」は、本件発明1の「固体酸化物形セル用電極」に相当する。 b NiOは、本件明細書の段落【0037】において、燃料極用の電子伝導性材料として例示されているから、甲2発明1Bの「NiO」は、本件発明1の「電子伝導性材料」に相当する。 c YSZ(イットリア安定化ジルコニア)は、本件明細書の段落【0034】において、イオン伝導性材料として例示されているから、甲2発明1Bの「YSZ」は、本件発明1の「イオン伝導性材料」に相当する。 d 甲2発明1Bにおいて、NiOとYSZの質量比は56:44であり、これは、本件発明1の「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり」を満たすものである。 e 甲2発明1Bの「NiO-YSZフィルムの層の厚みが約10μm」であること、「NiO-YSZフィルムの気孔率が20.1体積%」であることは、それぞれ、本件発明1の「電極の膜厚が0.5μm~50μmであり」、「電極の気孔率が1~30体積%であり」に相当し、甲2発明1Bにおける、「厚みが約10μm」、「20.1体積%」との関係は、本件発明1の「5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり」との関係を満たすものである。 f 一方、甲2発明1BのNiO-YSZフィルムは、結晶子径が72nmのNiO粉末と結晶子径が35nmYSZ粉末から製造されるものであるが、本件発明1における、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径」は、本件明細書の段落【0079】の「950℃で1時間焼成することで実施例1の電極を得た。」との記載、段落【0081】の「実施例1~12及び比較例1~10の電極の一次粒子の平均粒子径を、X線回折(例:SmartLab、リガク製)のピーク半値幅とシェラーの式(シェラー定数:0.9)により求めた。その結果を表1に示す。」との記載を踏まえると、作製した電極における平均結晶子径を意味すると解されるから、甲2発明1Bの結晶子径は、本件発明1の平均結晶子径に相当しない。 g そうすると、本件発明1と甲2発明1Bとは、上記一致点2-1において一致するとともに、上記相違点2-1と以下の相違点2-3において相違する。 <相違点2-3> 本件発明1は、作製した電極における「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μmであ」るのに対し、甲2発明1Bでは、NiO-YSZフィルムが「結晶子径が72nmのNiO粉末と結晶子径が35nmYSZ粉末から製造され」るものの、NiO-YSZフィルムにおける平均結晶子径が不明である点。 (イ)判断 a 相違点2-1について 相違点2-1に対する判断は、上記ア(イ)aで検討したとおりである。 b よって、相違点2-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明と甲第8号証又は甲第9号証に記載された気孔率に係る事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明3についても同様に、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明と甲第8号証又は甲第9号証に記載された気孔率に係る事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明3についても同様に、甲第2号証に記載された発明と甲第8号証又は甲第9号証に記載された気孔率に係る事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明6について 上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項6が削除されたため、請求項6に係る特許に対する申立理由4及び取消理由4は、それらの対象となる請求項が存在しないものとなった。 (5)申立理由4、取消理由4のまとめ 以上のとおり、申立理由4、取消理由4によっては、本件特許の請求項1、3に係る特許を取り消すことはできない。 6 申立理由5(進歩性) (1)甲第3号証に記載された発明 ア 甲第3号証には、「燃料極と空気極と両者の間に配置される固体電解質膜とを備えた固体電解質型燃料電池において、 固体電解質膜が、希土類酸化物をドープしたセリアからなり、 燃料極と固体電解質膜とが同時焼成によって形成されており、焼成後の燃料極の気孔率が10~50%で、相対密度が50~90%であることを特徴とするセリア系固体電解質型燃料電池。」に関する発明が記載されている(請求項1)。 イ 甲第3号証には、上記アの発明に関し、実施例3として、平均粒径1μmの酸化ニッケル(NiO)粉末と、平均粒径2μmSDCの粉末とを、重量比50:50で混合し、この混合物にカーボンブラック(平均粒径~1μm)を加え、ボールミルを用いて1~12時間混合し、この混合物にバインダとしてポリビニルアルコールを添加しペーストを得て、このペーストと気孔形成剤とを配合し、直径20mmの金型を用いて10~20MPaの加圧力でプレス成形し、円盤型の燃料極用グリーンを得て、燃料極用グリーンを約100℃で1時間乾燥させ、次いで、燃料極用グリーン上に固体電解質ペーストを成膜し、このようにして作製した燃料極グリーン/固体電解質膜用グリーンを、約100℃で1時間乾燥後、電気炉を用いて1450℃で5時間焼成し、多孔質燃料極/固体電解質膜の焼結体を得たことが記載されている(段落【0044】~【0048】)。 ウ ここで、得られた燃料極は、その厚さが4μmで、その気孔率が、固体電解質膜の相対密度を100%として電解質膜の厚さの実測値から電解質膜の重量を計算で求め、これらの値で補正した結果13%である(段落【0048】、【0051】の表1)。 エ そして、甲第3号証には、多孔質燃料極/固体電解質膜/空気極の焼結体も記載されている(段落【0049】) オ そうすると、甲第3号証には、特に、実施例3に着目すると、以下の3つの発明(以下、「甲3発明1」~「甲3発明3」という。)が記載されていると認められる。 <甲3発明1> セリア系固体電解質型燃料電池の燃料極であって、 平均粒径1μmの酸化ニッケル(NiO)粉末と、平均粒径2μmSDC(CeSmO)の粉末から製造され、 NiOとSDCの重量比が50:50であり、 燃料極の厚さが4μmであり、 燃料極の気孔率が、固体電解質膜の相対密度を100%として電解質膜の厚さの実測値から電解質膜の重量を計算で求め、これらの値で補正した結果13%である、 セリア系固体電解質型燃料電池の燃料極。 <甲3発明2> 固体電解質膜上に甲3発明1の燃料極が形成された積層体。 <甲3発明3> 甲3発明2の積層体を有するセリア系固体電解質型燃料電池。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲3発明1との対比・判断 (ア)対比 a 甲3発明1において、燃料極は、セリア系固体電解質型燃料電池の燃料極であるから、甲3発明1の「セリア系固体電解質型燃料電池の燃料極」は、本件発明1の「固体酸化物形セル用電極」に相当する。 b NiOは、本件明細書の段落【0037】において、燃料極用の電子伝導性材料として例示されているから、甲3発明1の「NiO」は、本件発明1の「電子伝導性材料」に相当する。 c SDC(CeSmO)は、本件明細書の段落【0034】において、イオン伝導性材料として例示されているから、甲3発明1の「SDC」は、本件発明1の「イオン伝導性材料」に相当する。 d 甲3発明1において、NiOとSDCの重量比は50:50であり、これは、本件発明1の「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり」を満たすものである。 e 甲3発明1の「燃料極の厚さが4μm」であること、「燃料極の気孔率が13%」であることは、気孔率が通常体積%であることを踏まえると、それぞれ、本件発明1の「電極の膜厚が0.5μm~50μmであり」、「電極の気孔率が1~30体積%であり」に相当し、甲3発明1における、厚さが4μm」、「気孔率が13%」との関係は、本件発明1の「5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり」との関係を満たすものである。 f そうすると、本件発明1と甲3発明1とは、以下の一致点3-1において一致するとともに、以下の相違点3-1~相違点3-3において相違する。 <一致点3-1> 固体酸化物形セル用電極であって、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料を含有し、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり、 電極の膜厚が0.5μm~50μmであり、 電極の気孔率が1~30体積%であり、 0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合には、前記電極の気孔率が1~15体積%であり、 1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合には、前記電極の気孔率が5~20体積%であり、 5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり、 25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合には、前記電極の気孔率が10~30体積%である 固体酸化物形セル用電極。」である点。 <相違点3-1> 固体酸化物形セル用電極について、本件発明1は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるに対し、甲3発明1は、セリア系固体電解質型燃料電池の燃料極である点。 <相違点3-2> 本件発明1は、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μm」であるのに対し、甲3発明1では、燃料極が「平均粒径1μmの酸化ニッケル(NiO)粉末と、平均粒径2μmSDC(CeSmO)の粉末から製造され」るものの、燃料極における平均結晶子径が不明である点。 <相違点3-3> 気孔率の求め方について、本件発明1は、「電極断面を、クロスセクションポリッシャ(例:Arイオンビーム、IB-09020CP型、日本電子製)により平滑化した後、SEM(JSM-5600、日本電子製)で観察し、SEM画像のコントラストを画像処理することにより、電極の気孔率を得」るのに対し、甲3発明1は、「固体電解質膜の相対密度を100%として電解質膜の厚さの実測値から電解質膜の重量を計算で求め、これらの値で補正した結果」である点。 (イ)判断 a 相違点3-1について (a)本件発明1の固体酸化物形セル用電極は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるから、空気極であると認められる。一方、甲3発明1は、セリア系固体酸化物型燃料電池の燃料極であると認められる。ここで、空気極と燃料極とは異なる極であるから、相違点3-1は実質的な相違点である。 (b)甲第3号証には、セリア系固体酸化物型燃料電池の空気極に対して、燃料極である甲3発明1を適用することが何ら記載されていないから、甲3発明において、酸化ニッケル(NiO)及びSDC(CeSmO)を空気極用とすることが動機付けられるとはいえない。 b よって、相違点3-2、相違点3-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第3号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1が、甲第3号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第3号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明3についても同様に、甲第3号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第3号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明6について 上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項6が削除されたため、請求項6に係る特許に対する申立理由5は、その対象となる請求項が存在しないものとなった。 (5)申立理由5のまとめ 以上のとおり、申立理由5によっては、本件特許の請求項1、3に係る特許を取り消すことはできない。 7 申立理由6、取消理由5(新規性、進歩性) (1)甲第4号証に記載された発明 ア 甲第4号証には、「アノード支持体と、アノードアクティブ層と、固体電解質層と、カソードとがこの順に積層されてなる固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、 アノード支持体グリーンシートの表面に、アノードアクティブ層グリーンシートと固体電解質層グリーンシートとをこの順に形成して積層グリーンシートを得ること、ここで、前記固体電解質層グリーンシートは前記カソードと対向する側の表面に反応抑止層グリーンシートを包含するか若しくは包含しない;および、 前記積層グリーンシートを焼成してハーフセルを得ること; を包含し、 ここで、前記ハーフセルは、前記アノードアクティブ層の平均厚みをA(μm)とし、前記アノードアクティブ層の気孔率をB(体積%)とし、前記固体電解質層の平均厚みをC(μm)とし、前記固体電解質層の気孔率をD(体積%)としたときに、以下の条件: (1)前記アノードアクティブ層の平均厚みAが、20μm≦A≦80μm; (2)次式:P=A÷C×B÷Dにより算出される制御パラメータPが、20≦P≦120; を満たすよう構築する、製造方法」「により得られた固体酸化物形燃料電池。」に関する発明が記載されている(請求項7)。 イ 上記アの発明に関し、実施例として、アノード支持体と、アノードアクティブ層と、固体電解質層と、反応抑止層と、カソードとをこの順に積層する工程が以下のように記載されている。 (ア)「平均粒径0.8μmの酸化ニッケル(NiO)粉末と、平均粒径0.5μmのイットリア安定化ジルコニア(8mol%Y2O3-ZrO2、以下「8YSZ」と略称することがある。)粉末と、造孔材(カーボン)とを、54:36:10の質量比率で混ぜ合わせ、混合粉末を得た。かかる混合粉末と、バインダ(ブチラール系ポリマー)と、可塑剤(フタル酸エステル)とを、100:7:6の質量比率になるよう秤量し、溶剤(イソプロピルアルコール)中で混練することによって、NV値が凡そ60質量%のスラリー状のアノード支持体形成用組成物を調製した。これをシート成形して、厚みが凡そ0.6mmのアノード支持体グリーンシートを得た。」(段落【0061】) (イ)「平均粒径0.2μmのNiO粉末と、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と、造孔材(カーボン)とを、57:38:5の質量比率で混ぜ合わせ、混合粉末を得た。かかる混合粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、分散剤(アニオン系の高分子界面活性剤)とを、100:2:2の質量比率になるよう秤量し、溶剤(α-テルピネオール)中で混練することによって、NV値が凡そ70質量%のスラリー状のアノードアクティブ層形成用組成物を調製した。これを、上記アノード支持体グリーンシートの表面に凡そ5μm~130μmの厚みでスクリーン印刷した後、120℃で乾燥させた。このようにして、アノード支持体-アノードアクティブ層グリーンシートを得た。」(段落【0062】) (ウ)「平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、分散剤(カルボン酸系の高分子界面活性剤)とを、100:3:3の質量比率になるよう秤量し、溶剤(α-テルピネオール)中で混練することによって、NV値が凡そ65質量%のスラリー状の固体電解質層形成用組成物を調製した。これを、上記アノードアクティブ層グリーンシートの表面に凡そ1μm~20μmの厚みでスクリーン印刷した。このようにして、アノード支持体-アノードアクティブ層-固体電解質層(主体層)グリーンシートを得た。」(段落【0063】) (エ)「平均粒径0.2μmのガドリニアドープセリア(10mol%Gd2O3-CeO2、10GDC。)粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、分散剤(カルボン酸系の高分子界面活性剤)とを、100:3:3の質量比率になるよう秤量し、溶剤(α-テルピネオール)中で混練することによって、NV値が凡そ65質量%のスラリー状の反応抑止層形成用組成物を調製した。これを、上記固体電解質層グリーンシートの表面に凡そ5μmの厚みでスクリーン印刷した後、120℃で乾燥させた。このようにして、アノード支持体-アノードアクティブ層-固体電解質層(主体層)-反応抑止層の4層構造からなる積層グリーンシートを得た。」(段落【0064】) (オ)「この積層グリーンシートを、大気雰囲気中において1450℃の温度で凡そ3時間焼成した。これにより、ハーフセル(例1~例9)を得た。得られたハーフセルの性状(各層の平均厚みおよび気孔率)を表1に示す。表1において、Aはアノードアクティブ層の平均厚み(μm)を、Bはアノードアクティブ層の気孔率(体積%)を、Cは固体電解質層および反応抑止層の平均厚み(μm)を、Dは固体電解質層(主体層)および反応抑止層をあわせた全層における平均気孔率(体積%)を、表している。・・・このハーフセルの反応抑止層の表面にカソードを形成し、SOFCの単セルを作製した。」(段落【0065】、【0066】) ウ また、上記イの工程で製造されたハーフセルの性状として、表1の例2には、アノードアクティブ層の平均厚みが50μm、アノードアクティブ層の気孔率が15体積%であることが記載されている。 エ そして、上記SOFCの単セル(例2)における「アノードアクティブ層」、「前記アノードアクティブ層」と「固体電解質層(主体層)」とが、この順に積層されている積層体、「アノード支持体」、「前記アノードアクティブ層」、「前記固体電解質層(主体層))とが、この順に積層されている積層体、及び「SOFCの単セル」に着目すると、甲第4号証には、以下の4つの発明(以下、「甲4発明1」~「甲4発明4」という。)が記載されていると認められる。 <甲4発明1> SOFCの単セルにおけるアノードアクティブ層であって、 平均粒径0.2μmのNiO粉末と、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と、造孔材(カーボン)とを、57:38:5の質量比率で混ぜ合わせた混合粉末から製造され、 アノードアクティブ層の平均厚みが50μmであり、 アノードアクティブ層の気孔率が15体積%である アノードアクティブ層。 <甲4発明2> 甲4発明1のアノードアクティブ層と固体電解質層(主体層)とが、この順に積層されている積層体。 <甲4発明3> アノード支持体と甲4発明1のアノードアクティブ層と固体電解質層(主体層)とが、この順に積層されている積層体。 <甲4発明4> 甲4発明3のアノード支持体と甲4発明1のアノードアクティブ層と固体電解質層(主体層)と、カソードとが、この順に積層されているSOFCの単セル。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲4発明1との対比・判断 (ア)対比 a 甲4発明1において、SOFCの単セルにおけるアノードアクティブ層は固体酸化物形燃料電池の単セルにおける燃料極であるから、甲4発明1の「SOFCの単セルにおけるアノードアクティブ層」は、本件発明1の「固体酸化物形セル用電極」に相当する。 b NiOは、本件明細書の段落【0037】において、燃料極用の電子伝導性材料として例示されているから、甲4発明1の「NiO」は、本件発明1の「電子伝導性材料」に相当する。 c 8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)は、本件明細書の段落【0034】において、イオン伝導性材料として例示されているから、甲4発明1の「8YSZ」は、本件発明1の「イオン伝導性材料」に相当する。 d 甲4発明1において、NiOと8YSZの質量比は57:38(おおよそ「60:40」に対応)であり、これは、本件発明1の「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり」を満たすものである。 e 甲4発明1の「アノードアクティブ層の平均厚みが50μm」であること、「アノードアクティブ層の気孔率が15体積%」であることは、それぞれ、本件発明1の「電極の膜厚が0.5μm~50μmであり」、「電極の気孔率が1~30体積%であり」に相当し、甲4発明1における、「平均厚みが50μm」、「気孔率が15体積%」との関係は、本件発明1の「25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合には、前記電極の気孔率が10~30体積%であり」との関係を満たすものである。 f 一方、甲4発明1のアノードアクティブ層は、平均粒径0.2μmのNiO粉末と、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末から製造されるものであるが、本件発明1における、「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径」は、本件明細書の段落【0079】の「950℃で1時間焼成することで実施例1の電極を得た。」との記載、段落【0081】の「実施例1~12及び比較例1~10の電極の一次粒子の平均粒子径を、X線回折(例:SmartLab、リガク製)のピーク半値幅とシェラーの式(シェラー定数:0.9)により求めた。その結果を表1に示す。」との記載を踏まえると、作製した電極における平均結晶子径を意味すると解されるから、甲4発明1の平均粒子径は、本件発明1の平均結晶子径に相当しない。 g そうすると、本件発明1と甲4発明1とは、以下の一致点4-1において一致するとともに、以下の相違点4-1、相違点4-2において相違する。 <一致点4-1> 固体酸化物形セル用電極であって、電子伝導性材料及びイオン伝導性材料を含有し、 電子伝導性材料とイオン伝導性材料の質量比が75:25~25:75であり、 電極の膜厚が0.5μm~50μmであり、 電極の気孔率が1~30体積%であり、 0.5μm≦前記電極の膜厚≦1μmの場合には、前記電極の気孔率が1~15体積%であり、 1μm<前記電極の膜厚≦5μmの場合には、前記電極の気孔率が5~20体積%であり、 5μm<前記電極の膜厚≦25μmの場合には、前記電極の気孔率が7~25体積%であり、 25μm<前記電極の膜厚≦50μmの場合には、前記電極の気孔率が10~30体積%である 固体酸化物形セル用電極。」である点。 <相違点4-1> 固体酸化物形セル用電極について、本件発明1は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるに対し、甲4発明1は、SOFCの単セルにおけるアノードアクティブ層である点。 <相違点4-2> 本件発明1は、作製した電極における「電子伝導性材料とイオン伝導性材料の各材料における平均結晶子径が1nm~1μmであ」るのに対し、甲4発明1では、アノードアクティブ層が「平均粒径0.2μmのNiO粉末と、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と」から製造されるものの、アノードアクティブ層における平均結晶子径が不明である点。 (イ)判断 a 相違点4-1について (a)本件発明1の固体酸化物形セル用電極は、空気極用の電子伝導性材料及び空気極用のイオン伝導性材料を含有するものであるから、空気極であると認められる。一方、甲4発明1は、SOFCの単セルの燃料極であると認められる。ここで、空気極と燃料極とは異なる極であるから、相違点4-1は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲4発明1であるとはいえない。 (b)甲第4号証には、SOFCの単セルのカソードに対して、アノードアクティブ層である甲4発明1を適用することが何ら記載されていないから、甲4発明1において、NiO及び8YSZをカソード用の材料とすることが動機付けられるとはいえない。 b よって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 したがって、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第4号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明3、4について 本件発明3、4は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1が、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明3、4についても同様に、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1が、甲第4号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第4号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明3、4についても同様に、甲第4号証に記載された発明と甲第5号証又は甲第6号証に記載された一次粒子の粒径に係る事項、あるいは、甲第4号証に記載された発明と甲第2号証又は甲第7号証に記載された一次粒子の粒径に係る周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明6について 上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項6が削除されたため、請求項6に係る特許に対する申立理由6及び取消理由5は、それらの対象となる請求項が存在しないものとなった。 (5)申立理由6、取消理由5のまとめ 以上のとおり、申立理由6、取消理由5によっては、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を取り消すことはできない。 第8 まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立書の申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項6が本件訂正により削除されたことにより、申立人による請求項6に係る特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700641

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