2022-700601
前面板、光学積層体および画像表示装置
- 審判番号
- 2022-700601
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-032614外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6991378
- 請求日
- 2022年07月08日
- 審決日
- 2023年06月29日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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1 本件特許の出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯
特許第6991378号(以下「本件特許」という。)について、出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯は、以下のとおりである。なお、令和2年3月11日を以下「優先日」という。
(優先権主張 令和 2年 3月11日)
同年12月 9日 :特許権の設定登録
2 本件特許異議申立ての手続の経緯
本件特許異議申立ての手続の経緯は、以下のとおりである。
(特許異議申立人:尾坂道義、請求項1-5に対して)
同年 9月26日付け:取消理由通知書
同年 3月 2日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月28日 :訂正請求書及び意見書の提出
以下、令和5年4月28日に提出された訂正請求書及び意見書を「本件訂正請求書」及び「意見書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
なお、本件訂正に係る請求により、令和4年11月25日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正について
1 本件訂正の請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-5について訂正することを求める、というものである。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前(設定登録時)の特許請求の範囲の請求項1-5の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】保護樹脂層と、ハードコート層とを厚み方向に向かって順に備え、前記保護樹脂層の屈折率と、前記ハードコート層の屈折率との差が、0.04以下であり、前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下であることを特徴とする、前面板。続きを表示(全18行)【請求項2】前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であり、前記ハードコート層の材料が、アクリル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の前面板。【請求項3】さらに、基板と、粘着層とを備え、前記基板と、前記粘着層と、前記保護樹脂層と、前記ハードコート層とが、厚み方向に順に配置され、前記基板が、薄ガラス板を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の前面板。【請求項4】偏光フィルムと、請求項1~3のいずれか一項に記載の前面板とを視認側に向かって順に備えることを特徴とする、光学積層体。【請求項5】画像表示部材と、請求項4に記載の光学積層体とを視認側に向かって順に備えることを特徴とする、画像表示装置。」
3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1-5の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所である。
「【請求項1】保護樹脂層と、ハードコート層とを厚み方向に向かって順に備え、前記保護樹脂層の屈折率と、前記ハードコート層の屈折率との差が、0.04以下であり、前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下であり、続きを表示(全20行)前記ハードコート層は、硬化性アクリル組成物の硬化体からなり、前記硬化性アクリル組成物は、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、これらのオリゴマーまたはプレポリマーを単独、または組み合わせである、ことを特徴とする、前面板。【請求項2】前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の前面板。【請求項3】さらに、基板と、粘着層とを備え、前記基板と、前記粘着層と、前記保護樹脂層と、前記ハードコート層とが、厚み方向に順に配置され、前記基板が、薄ガラス板を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の前面板。【請求項4】偏光フィルムと、請求項1~3のいずれか一項に記載の前面板とを視認側に向かって順に備えることを特徴とする、光学積層体。【請求項5】画像表示部材と、請求項4に記載の光学積層体とを視認側に向かって順に備えることを特徴とする、画像表示装置。」
4 本件訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項である請求項〔1-5〕を訂正するものであって、本件訂正の内容は、次の(1)及び(2)にそれぞれ示す訂正事項1及び訂正事項2からなる。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下であることを特徴とする、前面板。」との記載を、次の記載に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-5についても請求項1と同様に訂正する。)。
「前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下であり、前記ハードコート層は、硬化性アクリル組成物の硬化体からなり、前記硬化性アクリル組成物は、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、これらのオリゴマーまたはプレポリマーを単独、または組み合わせである、ことを特徴とする、前面板。」
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2における「前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であり、前記ハードコート層の材料が、アクリル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の前面板。」との記載(下線は当合議体が付した。)を、次の記載に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3-5についても請求項2と同様に訂正する。)。
「前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の前面板。」
第3 本件訂正の適否についての当審の判断
1 訂正事項1について
(1) 訂正の目的について
訂正事項1は、「ハードコート層」が、「硬化性アクリル組成物の硬化体からな[る]」ことを限定するとともに、さらに、当該「前記硬化性アクリル組成物」が次のものであることを限定するものである。
「トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、これらのオリゴマーまたはプレポリマーを単独、または組み合わせ」
したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許の登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面を以下「本件明細書等」という。訂正事項1は、次に摘記して示す、本件明細書等の【0060】から【0069】の記載(下線は当合議体が付したものである。)を根拠とするものであるから、訂正事項1は特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
「【0060】[ハードコート層]ハードコート層13は、有機EL表示装置1の表面における、摺擦に起因する損傷を抑制する保護部材である。例えば、光学積層体2をロール-トゥ-ロールで製造する場合には、光学積層体2がロールの径方向に積層されるときに、積層におけるプレスまたは摺擦に起因する損傷を抑制する。【0061】続きを表示(全21行)ハードコート層13は、保護部材6の表面を形成する。また、ハードコート層13は、保護樹脂層12の厚み方向一方側に配置されている。具体的には、ハードコート層13は、保護樹脂層12の表面(厚み方向一方面)に接触している。ハードコート層13は、面方向に延びる。【0062】ハードコート層13は、例えば、硬化性組成物の硬化体、熱可塑性組成物の成形体からなる。つまり、ハードコート層13の材料としては、例えば、硬化性組成物、熱可塑性組成物が挙げられる。ハードコート層13の材料としては、好ましくは、硬化性組成物、より好ましくは、活性エネルギー線硬化型組成物、さらに好ましくは、紫外線硬化型組成物が挙げられる。【0063】また、ハードコート層13の材料の主成分は、例えば、芳香環を有さない。主成分は、ハードコート層13のうち最も多く含まれる成分、もしくは、ハードコート層13において25%以上を占める成分である。【0064】具体的には、ハードコート層13は、好ましくは、硬化性組成物の硬化体(硬化樹脂)からなり、より好ましくは、硬化性アクリル組成物の硬化体(硬化アクリル樹脂)からなる。【0065】硬化性組成物は、紫外線硬化型の硬化性化合物を含む。硬化性化合物は、モノマー、オリゴマーおよびプレポリマーのいずれであってもよい。【0066】具体的には、硬化性化合物としては、例えば、紫外線重合性の官能基を複数有するアクリル系化合物(モノマーおよび/またはオリゴマー)が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリロイル基を複数有する硬化性化合物が挙げられる。硬化性化合物における官能基((メタ)アクリロイル基)の数は、例えば、3以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、30以下、好ましくは、20以下である。【0067】さらに、硬化性化合物は、好ましくは、さらに、分子内に水酸基を含む。【0068】モノマーである硬化性化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、これらのオリゴマーまたはプレポリマーなどが挙げられる。これらは、単独使用または複数併用できる。【0069】モノマーまたはオリゴマーである硬化性化合物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーが有する(メタ)アクリロイル基の数は、例えば、3以上、好ましくは、4以上、より好ましくは、6以上であり、また、例えば、25以下、好ましくは、20以下である。」
(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
前記ア及びイにおいて検討したとおり、訂正事項1は本件明細書等に記載された事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであるから、訂正事項1による訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
2 訂正事項2について
(1) 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正事項1による訂正により「ハードコート層」が「硬化性アクリル組成物の硬化体からな[る]」ことを限定するのに伴い、訂正前の請求項2の「前記ハードコート層の材料が、アクリル樹脂である」という事項が訂正事項1で限定された内容に完全に包含されることになるため、重複を排除するために上記事項を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(2) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2は、訂正に伴って生じる重複を排除するためだけのものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
前記ア及びイの検討結果を踏まえると、訂正事項2が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
3 本件訂正の適否についてのまとめ
したがって、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり同条2項の規定に適合し、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。なお、訂正後の請求項1-5は、特許異議申立てがなされた請求項であることから、当該各請求項についての訂正には、同法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
よって、本件特許の特許請求の範囲の請求項〔1-5〕を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第4 取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の要旨
令和5年3月2日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、本件特許登録時の請求項1-5に係る特許について、次を要旨とする取消理由を通知した。
進歩性の欠如
本件特許登録時の請求項1-5に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において発行された下記の甲1号証、甲2号証及び甲3号証に記載された発明に基づいて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許登録時の請求項1-5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
第5 取消理由についての当審の判断
1 当審における判断の概要
本件訂正後の請求項1-5に係る特許は、前記第4に示した取消理由が解消していない。
2 本件発明について
前記第3に示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1-5に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項(前記第2の3参照)により特定されるとおりのものと認める。
3 各甲号証に記載された発明及び技術事項の認定
(1) 甲2号証の記載事項及び甲2発明の認定
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ア 甲2号証の記載事項
取消理由(決定の予告)で引用された甲2号証には、以下の記載事項がある。下線は当審において付したものであり、他の甲号証及び文献についても同様である。
(ア) 【0001】-【0012】
「【0001】本発明は、イミド樹脂からなる、コーティング層を有するフィルムに関するものであり、更に詳しくは、イミド化されたアクリル系樹脂フィルムに、コーティング層が付与された偏光子保護フィルム、及び、その偏光子保護フィルムを用いてなる偏光板に関するものである。【背景技術】…(中略)…続きを表示(全11行)【0008】さらに、偏光子保護フィルムは、液晶パネルの最表面に用いられことがあるが、この場合、例えば、テレビやパソコンのように、表面に触れられたり、硬いものと接触した場合に、傷が付きやすくなるのを防止するため、あるいは、室内で使用される場合の蛍光灯等の映りこみを防止するため、また、液晶パネルの弱点である横側から見た場合に色が反転する、いわゆる視野角が低いという問題を解決するため、偏光子保護フィルムの表面にコーティングを施す方法が検討されている。また、傷付き防止の観点から、テレビやパソコンなど、パネル自身が透明保護材(ガラスや透明プラスチック板)で保護されていないような剥き出しの場合、傷付きを改善するために偏光子保護フィルムの表面にハードコート層をコーティングする方法が検討されている。しかしながら、その際、偏光子保護フィルムとしてトリアセチルセルロース樹脂を用いた場合、耐溶剤性が悪く、さらに、低沸点の溶剤を用いてコーティング塗工した場合には、フィルムが破れる等の不具合が起こる。これを改善するため、特許文献1、特許文献2、特許文献3では、メチルイソブチルケトン(MIBK)のような高沸点溶剤が用いられている。しかし、高沸点溶剤は、塗工後の乾燥性が悪く、生産性の低下を引き起こす。さらに、特許文献4では、偏光板のアンカー層の目的で、アクリル系樹脂フィルムにMIBKで希釈したものが用いられているが、アクリル系樹脂に対しては、アンカー効果が不十分である。さらに、環状ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムはアンカー効果が得られず、コーティング層が貼り付かないという欠点がある。…(中略)…【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0012】本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、透湿性に優れ偏光子の劣化を抑制することができ、コーティング時のフィルムの破れや白化等がなく、コーティング層の密着性に優れたコーティング積層フィルムを得ることにある。」
(イ) 【0013】-【0014】
「【0013】本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のアクリル系樹脂に溶剤を使用した希釈剤を用いたコーティングにより、課題が解決できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は以下に関する。(i)下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であり、イミド化率が2.5~5.0%、酸価が0.10~0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満であるイミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有するコーティング積層フィルム。【0014】【化1】[図:0001403630000001.jpg]」
(ウ) 【0022】
「【0022】本発明により、イミド化された単位を含むアクリル樹脂に溶剤で希釈されたコーティング剤を塗工することによって、透湿性に優れ偏光子の劣化を抑制することができる上に、コーティング時にフィルムの破れ等がなく、コーティング層の密着性に優れたコーティング積層フィルム、及び、それを用いた偏光板を得ることができる。」
(エ) 【0068】
「【0068】このように、本発明にかかるイミド樹脂によれば、光学用フィルムとして利用可能なフィルムを製造することができる。つまり、本発明にかかるフィルムの好ましい一実施形態として、本発明にかかるイミド樹脂を成形してなる光学用フィルムを挙げることができる。そこで、以下、本発明の一実施形態としては、本発明にかかる光学用フィルムについて、説明するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明にかかるフィルムは、本発明にかかるイミド樹脂を成形してなるフィルムであれば、いかなる用途に用いられるフィルムであってもよい。」
(オ) 【0082】
「【0082】このような光学特性を有する構成とすれば、本発明にかかる光学用フィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いることができる。」
(カ) 【0138】
「【0138】本発明は、本発明にかかるイミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有することを特徴とする。該コーティング層を形成する方法は、具体的には、粘着剤等により別のフィルムをラミネートしたり、表面にハードコート層等のコーティング層を形成させたりする方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。」
(キ) 【0141】
「【0141】上説のハードコート層として、フッ素含有多官能性オリゴマー、シリコン含有多官能性オリゴマー、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマー等が挙げられるが、コストや扱いやすさの面から、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマーが好ましく用いられる。」
(ク) 【0156】
「【0156】(前略)(製造例1)押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いて、樹脂を製造した。タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機(1)、第2押出機(2)共に直径75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機原料供給口に原料樹脂を供給した。又、第1押出機、第2押出機に於ける各ベントの減圧度は-0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂の吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極める為に、第1押出機出口、第1押出機と第2押出機接続部品中央部、第2押出機出口に樹脂圧力計を設けた。続きを表示(全13行)第1押出機に関して、原料の樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とした。又、定流圧力弁は第2押出機原料供給口直前に設置し、第1押出機モノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。第2押出機に関して、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化反応試剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合溶液を添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機各バレル温度を260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して0.8部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザーでペレット化することで、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のイミド化率は3.7%、酸価は0.29mmol/gであった。このペレット状の樹脂組成物を、100℃で5時間乾燥後、40mmφ単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて270℃で押し出すことにより得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅300mm、厚み130μmのフィルムを得た。このフィルムについて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より10℃ 高い温度で同時二軸延伸(株式会社東洋精機製 二軸延伸装置 X4HD)を行ない、二軸延伸フィルムを作製した。この二軸延伸フィルムの面内位相差は0.1nm、厚み方向位相差は3.4nmであった。(実施例1)ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品であるUV-1700B(日本合成化学社製)を33%の濃度で酢酸エチルに溶解し、UV-1700Bを100重量部に対して、イルガキュア184(チバ社製、光重合開始剤)5部を添加し溶解し、塗工液(a)を得た。製造例1で得た二軸延伸フィルム(A)をA4サイズにカットして静置し、その上にバーコーター#6を用い、濡れベースで15μm厚さで塗工液(a)を塗工した。当該コーティングフィルムを90゜Cに調整した乾燥オーブンの中に1分間放置し、溶剤を乾燥させた。メタルハライドランプを擁した紫外線照射機を用い、この乾燥品を300mJ/cm2の照射エネルギーで光硬化させ、コーティング層が5μmのコーティングフィルム(B-1)を得た。得られたコーティングフィルム(B-1)の塗工性能、鉛筆硬度、密着性、偏光板の劣化を上記方法にて評価した。結果を表1に示した。(後略)」
イ 甲2号証から読み取れる事項の認定
前記ア(ア)で摘記した【0008】には、背景技術として、「偏光子保護フィルムは、液晶パネルの最表面に用いられ[る]」ことが記載されているところ、当該記載から、前記(オ)で摘記した【0082】における「液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルム」についてもまた、液晶パネルの最表面に用いられることは、甲2号証に記載されているに等しい事項である。
ウ 甲2発明の認定
前記アの摘記事項を総合すると、甲2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲2発明>
「下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有するイミド樹脂であり、イミド化率が2.5~5.0%、酸価が0.10~0.50mmol/gの範囲であり、かつ、アクリル酸エステル単位が1重量%未満であるイミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有するコーティング積層フィルムであって、(【0013】)[図:0001403630000002.jpg](【0014】)イミド化された単位を含むアクリル樹脂に溶剤で希釈されたコーティング剤を塗工したコーティング積層フィルムであり、(【0022】)続きを表示(全12行)光学用フィルムとして利用可能であり、(【0068】)光学フィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いることができるものであり、(【0082】)偏光子保護フィルムは、液晶パネルの最表面に用いられ、(前記イの認定事項)イミド樹脂からなるフィルムの少なくとも一方の面にコーティング層を有し、コーティング層を形成する方法は、表面にハードコート層等のコーティング層を形成させる方法であり、(【0138】)ハードコート層として、フッ素含有多官能性オリゴマー、シリコン含有多官能性オリゴマー、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマー等が用いられ、(【0141】)押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いて、樹脂を製造し、第1押出機に関して、原料の樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造し、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とし、第2押出機に関して、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化反応試剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合溶液を添加しイミド樹脂中間体2を製造し、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して0.8部とし、更に、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザーでペレット化することで、樹脂組成物を得、このペレット状の樹脂組成物を、押し出すことにより得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却してフィルムを得て、このフィルムについて、同時二軸延伸を行ない、二軸延伸フィルムを作製し、(【0156】)ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品であるUV-1700B(日本合成化学社製)を33%の濃度で酢酸エチルに溶解し、UV-1700Bを100重量部に対して、イルガキュア184(チバ社製、光重合開始剤)5部を添加し溶解し、塗工液を得て、二軸延伸フィルムの上に塗工し、当該コーティングフィルムを乾燥オーブンの中に放置し、溶剤を乾燥させ、この乾燥品を光硬化させ、コーティング層が5μmのコーティングフィルムとして得た、(【0156】)コーティング積層フィルム」
(2) 甲1号証の記載事項及び甲1技術事項の認定
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ア 甲1号証の記載事項
取消理由(決定の予告)で引用された甲1号証には、以下の記載事項がある。
(ア) 【0001】
「【0001】本発明は、光学積層体に関する。」
(イ) 【0010】、【図1】
「【発明を実施するための形態】【0010】以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。A.光学積層体の全体構成図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による光学積層体の概略断面図であり、図1(b)は、従来の一般的なハードコート層を有する光学積層体の概略断面図である。図1(a)に示す光学積層体100は、樹脂フィルムから形成される基材層10と、浸透層20と、ハードコート層30とをこの順に備える。ハードコート層30は、樹脂フィルムにハードコート層形成用組成物を塗工して形成される。浸透層20は、ハードコート層形成用組成物が樹脂フィルムに浸透して形成される。すなわち、浸透層20とは、樹脂フィルムにおいて、ハードコート層成分が存在している部分である。基材層10は、上記のようにハードコート層形成用組成物が樹脂フィルムに浸透した際に、樹脂フィルムにおいてハードコート層形成用組成物が到達(浸透)しなかった部分である。一方、図1(b)に示す光学積層体200は、浸透層が形成されていない。図1(a)および(b)に示す境界Aは、樹脂フィルムのハードコート層形成用組成物塗工面により規定される境界である。したがって、境界Aは、光学積層体100においては浸透層20とハードコート層30との境界であり、浸透層が形成されていない光学積層体200においては基材層10’(すなわち、樹脂フィルム)とハードコート層30’との境界である。」
「【図1】[図:0001403630000003.jpg]」
(ウ) 【0017】
「【0017】本発明においては、厚みが1.2μm以上の浸透層が形成されていることにより、樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れ、かつ、干渉ムラの抑制された光学積層体を得ることができる。また、本発明においては、樹脂フィルムおよびハードコート層の形成材料として屈折率差の大きい材料を選択しても、干渉ムラの発生を防止することができる。本発明の光学積層体は、例えば、基材層(樹脂フィルム)の屈折率とハードコート層の屈折率との差の絶対値を0.01~0.15とすることができる。もちろん、当該屈折率の差の絶対値を0.01未満に設定することも可能である。」
(エ) 【0022】
「【0022】本発明の光学積層体は、例えば、偏光フィルム(偏光板とも称される)に適用される。具体的には、本発明の光学積層体は、偏光フィルムにおいて、偏光子の片面または両面に設けられ、偏光子の保護材料として好適に用いられ得る。」
(オ) 【0065】
「【0065】上記浸透層において、樹脂フィルム成分の濃度が、ハードコート層側から基材層側にかけて連続的に高くなることが好ましい。樹脂フィルム成分の濃度が連続的に変化すること、すなわち樹脂フィルム成分の濃度変化に起因する界面が形成されていないことにより界面反射を抑制することができ、干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができるからである。」
イ 甲1技術事項の認定
(ア) 甲1号証においては、「基材層10」と「ハードコート層30」について、密着性が高いこと、両者の間に屈折率差がある場合に樹脂フィルム成分の濃度変化に起因する界面が形成されていないことにより、「界面反射を抑制することができ、干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができる」ことが記載されている(【0017】、【0065】)。
(イ) また、甲1号証には、「本発明においては、樹脂フィルムおよびハードコート層の形成材料として屈折率差の大きい材料を選択しても、干渉ムラの発生を防止することができる。本発明の光学積層体は、例えば、基材層(樹脂フィルム)の屈折率とハードコート層の屈折率との差の絶対値を0.01~0.15とすることができる。もちろん、当該屈折率の差の絶対値を0.01未満に設定することも可能である。」と記載されている(【0017】)。
(ウ) 前記(ア)のように、甲1号証では基材層とハードコート層との間の界面反射に起因する干渉ムラが解決すべき技術課題とされており、界面反射は屈折率の異なる界面で生じるという技術常識を考慮すれば、前記(イ)の基材層の屈折率とハードコート層の屈折率の差の絶対値を0.01未満に設定することが、光学積層体の干渉ムラを少なくすることに寄与することは当業者には明らかである。
(エ) したがって、前記アの摘記事項及び前記(ア)-(ウ)で検討した事項を総合すると、甲1号証には、次の技術事項(以下「甲1技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲1技術事項>
「偏光子の保護材料として用いられ得る光学積層体であって、(【0022】)光学積層体100は、樹脂フィルムから形成される基材層10と、浸透層20と、ハードコート層30とをこの順に備え、(【0010】)互いに密着する基材層とハードコート層において、屈折率差が小さいほど干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができ、例えば、当該屈折率の差の絶対値を0.01未満に設定することにより、干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができること(前記(ア)~(ウ)の検討事項)」
(3) 甲3号証の記載事項及び甲3技術事項の認定
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ア 甲3号証の記載事項
取消理由(決定の予告)で引用された甲3号証には、以下の記載事項がある。
(ア) 【0002】
「【0002】本開示は一般に、折畳式電子デバイス組立体、これらの組立体のためのカバー要素、並びにこれらの要素及び組立体を作製するための様々な方法に関する。より詳細には、本開示は、これらの要素及び組立体の、曲げ可能な、耐衝撃性かつ耐反り性のバージョン、並びにこれらを作製するための方法に関する。」
(イ) 【0030】
「【0030】複数の特徴及び便益の中でも特に、本開示の折畳式電子デバイスのためのカバー要素及び折畳式電子デバイス組立体(及びこれらの作製方法)は、小さな曲げ半径における(例えば静止状態での張力及び疲労についての)機械的信頼性、高い耐穿刺及び衝撃性、並びに/又は永久的な反り及び変形に対する耐性を提供する。この小さな曲げ半径、高い耐穿刺及び衝撃性、並びに永久的な反りに対する耐性は、本開示のカバー要素及び折畳式電子デバイス組立体を、折畳式ディスプレイ、例えばディスプレイのある部分がディスプレイの別の部分の上部に(例えばデバイスを折り畳んだ後でディスプレイが内側又は外側となる「谷折り(in‐fold)」又は「山折り(out‐fold)」構成で)折り重ねられるディスプレイに使用する場合に有益である。更に、本明細書に記載の折畳式電子デバイスのためのカバー要素及び折畳式電子デバイス組立体は、三つ折りの又は複数回折り畳まれる構成で使用してよく、ここでは上記デバイスの2つ以上の部分が互いの上に折り重ねられる。」
(ウ) 【0033】、【図1】、【図1A】
「【0033】図1及び1Bを参照すると、折畳式電子デバイス基板150と、基板150上に配置されたカバー要素100とを含む、折畳式電子デバイス組立体200が示されている。カバー要素100は折畳式ガラス要素50を含む。ガラス要素50は、厚さ52、第1の主表面54及び第2の主表面56を含む。更にカバー要素100は、折畳式ガラス要素50の第1の主表面54上に配置された厚さ72を有するポリマー層70も含む。」
「【図1】[図:0001403630000004.jpg]」
「【図1A】[図:0001403630000005.jpg]」
(エ) 【0034】
「【0034】更に折畳式ガラス要素50に関して、厚さ52は、いくつかの実施形態では約25μm~約200μmとすることができる。他の実施形態では、厚さ52は、約25μm~約125μm、約50μm~約100μm、又は約60μm~約80μmとすることができる。厚さ52は、これらの範囲の間の他の厚さに設定することもできる。」
(オ) 【0044】
「【0044】再び図1及び1Bを参照すると、折畳式電子デバイス組立体200及びカバー要素100は、厚さ72を有するポリマー層70を含む。これらの構成では、ポリマー層70は、折畳式ガラス要素50の第1の主表面54上に配置される。例えばポリマー層70は、いくつかの実施形態では、折畳式ガラス要素の第1の主表面54上に直接配置できる。他の実施形態では、図1及び1Bの例示的形態に示されているように、ポリマー層70を接着剤80で折畳式ガラス要素50に接着できる。ポリマー層70の厚さ72は、いくつかの実施形態では約1マイクロメートル(μm)~約200μm以下に設定できる。他の実施形態では、ポリマー層70の厚さ72は約10μm~約100μmに設定できる。当業者には明らかであるように、ポリマー層70の厚さ72は、約1μm~約200μm、並びに上述の値の間の他の範囲及び部分範囲のいずれのレベルとなるようにも構成できる。」
(カ) 【0066】
「【0066】いくつかの実施形態によると、図1及び1Bに示す折畳式電子デバイス組立体200及びカバー要素100は、ポリマー層70の上に配置された耐引掻きコーティング90を含んでよい。コーティング90は、いくつかの実施形態では1μm以下に設定された厚さ92で構成できる。他の実施形態では、コーティング90の厚さ92は、コーティング90の特定の組成物に関して、500nm以下、又は10nm以下もの小ささ、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲に設定できる。他の実施形態では、コーティング90は、約1μm~約100μmの厚さ92を有し、これらの境界の間の全ての厚さレベルを含む。より一般的には、耐引掻きコーティング90は、これを採用する折畳式電子デバイス組立体200及びカバー要素100に、(例えば少なくとも750gの荷重を用いて、ASTM試験法D3363に従って試験した場合の鉛筆硬度の改善によって表されるような)更なる耐引掻き性を提供する役割を果たすことができる。更に耐引掻きコーティング90は、本明細書に記載の落下試験1によって定量化されるように、折畳式電子デバイス組立体200及びカバー要素100の耐衝撃性を増強することもできる。追加の耐引掻き性(及びいくつかの実施形態では更なる耐衝撃性)は、デバイス組立体200及びカバー要素100にとって、ポリマー層70によって供給される耐穿刺及び衝撃性の有意な増大が、(例えばポリマー層70を備えないデバイス組立体及び/又はカバー要素と比較して)低減された耐引掻き性によって相殺されないことを保証するために有利となり得る。」
(キ) 【0130】-【0146】
「【0130】耐衝撃性既に記載したように、本開示の折畳式電子デバイス組立体及びカバー要素の耐穿刺性(及び/又は耐久性)を更に向上させるために、有利には、ガラス要素50の荷重を受承する側にポリマー層70を設けてよい。理論によって束縛されることを望むものではないが、層70がカバー要素100~100fの荷重を受承する側にある場合、層70は、荷重によるエネルギの放散を支援でき、これによりガラス要素は、荷重の増大に耐えることができる。これは特に、ステンレス鋼製チップ及びタングステンカーバイドボール試験に関連して上述した静的荷重とは反対に、荷重が動的なものである場合に当てはまり得る。動的荷重試験の一例は、「落下試験1」に関連して上述したようなペン落下試験である。…(中略)…【0145】落下試験3では、カバー要素の、(ポリマー層70がカバー要素の一部である場合に)ポリマー層70をその上に有する側に付与された荷重を用いて、試料を試験し、ここで上記カバー要素の反対側は、アルミニウムプレートによって支持されていた。ガラス要素の、アルミニウムプレート上に静置される側には、テープは使用しなかった。ペンを試料へと案内するためにチューブを使用し、このチューブを、試料の上部表面上に、チューブの長手方向軸が試料の上部表面に対して略垂直となるように載置した。チューブの外径は2.54cm(1インチ)であり、内径は1.4cm(9/16インチ)であった。各落下後、チューブを試料に対して再配置して、ペンを試料上の異なる衝突位置へと案内した。ペンは、直径0.7mmのボールポイントと、4.68gの重量とを有する、Easy‐Glide System(登録商標)を備えたBIC(細字)であった。ボールポイントが試験用試料と相互作用できるよう、キャップを上端部に取り付けてペンを落下させた。ペンは、まず1cmの高さから落下させ、落下がガラス破断を引き起こすまで、高さを落下毎に1cm増加させた。そして、破断を引き起こす落下高さを記録した。ペンは、5回の落下毎に、及び試験される新しい試料それぞれに対して、新しいペンに変更した。【0146】以下の表3は、落下試験3による、ペン落下試験を用いた様々なガラス要素の試験の結果を示す。このデータセットのためのガラス要素は、本開示の他の試料と同様の調製方法で調製した。具体的には、Corning Gorilla Glass 2.0と一致する組成を有するガラス試料を、深掘りエッチングに供して、所望の厚さである約75マイクロメートルを達成し、続いてIOX、及びIOX後のライトエッチングに供した。得られたガラス片は、75マイクロメートルの厚さを有し、また本明細書に記載の他の試料と同様の圧縮応力及びDOLを有していた。ポリマー層を、圧力感受性接着剤を用いてガラス要素に積層した。次にペンを、ポリマー層が落下してくるペンの方を向くようにして、試料上に落下させた。ポリマー層厚さと接着剤厚さとの様々な組み合わせを使用し、ここでは各試料セットにおいて、ポリマー層及び接着剤それぞれに関して同一の材料を使用した。この試験のセットに関して:セットEではガラス要素を単独で試験し;セットFに関しては、ガラス要素を、50マイクロメートル厚のPSA層を備えた80マイクロメートル厚のPI+HC層と積層させ、HCが落下してくるペンの方を向くようにし;セットGに関しては、ガラス要素を、50マイクロメートル厚のPSA層を備えた50マイクロメートル厚のPI+HC層に積層させ、HCが落下してくるペンの方を向くようにし;セットHに関しては、ガラス要素を、30マイクロメートル厚のPSA層を備えた80マイクロメートル厚のPI+HC層に積層させ、HCが落下してくるペンの方を向くようにした。表3から分かるように、セットEをセットF~Hのうちのいずれかと比較することにより、ガラス要素は、追加の層が存在しない場合よりも、追加の層が存在する場合に、ペン落下高さの増大に耐えることができ、即ちより多くの荷重エネルギを吸収できた。更に、追加の層の特性(例えば層の厚さ及び接着剤の厚さ)は、破断を起こすことなくエネルギを吸収する、(例えば折畳式電子デバイス組立体に採用されるような)カバー要素の能力に影響を及ぼす。セットFをセットGと比較することにより、一般に、層70の厚さを増大させることによって、カバー要素がより多くの荷重エネルギを吸収できるようになり、即ちカバー要素が、80マイクロメートル厚の層の場合は32cmという比較的高いペン落下高さに耐えることができる一方で、50マイクロメートル厚の同一材料の層の場合は18cmのペン落下高さにしか耐えることができないことが分かる。また、層をガラス要素と連結するために使用される接着剤の厚さが、カバー要素の、エネルギを吸収する能力に影響を及ぼす。セットFをセットHと比較することにより、セットFのような接着剤層の厚さが50マイクロメートルのカバー要素は、接着剤層の厚さが30マイクロメートルしかない(ガラス厚さ及び追加層の厚さ/材料は同一である)カバー要素(これは9cmのペン落下高さにしか耐えられなかった)よりも高いペン落下高さ(32cm)に耐えることができたことが分かる。ここでもまた理論によって束縛されることを望むものではないが、いくつかの例では、接着剤が厚いほど、同一材料のより薄い接着剤に比べて、落下するペンによって付与される荷重エネルギをより多く吸収及び/又は放散及び/又は分散でき、従って、接着剤が厚いほど、(例えば折畳式電子デバイス組立体に採用されるような)カバー要素のガラス要素がより良好に保護される。」
イ 甲3技術事項の認定
前記アの摘記事項を総合すると、甲3号証には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲3技術事項>
「折畳式電子デバイス組立体のためのカバー要素であって、(【0002】)カバー要素を、折畳式ディスプレイに使用する場合に有益であり、(【0030】)カバー要素100は折畳式ガラス要素50を含み、さらにカバー要素100は、折畳式ガラス要素50の第1の主表面上に配置されたポリマー層70を含み、(【0033】)折畳式ガラス要素50に関して、厚さは約60μm~約80μmとすることができ、(【0034】)ポリマー層70を接着剤80で折畳式ガラス要素50に接着でき、(【0044】)接着剤は圧力感受性接着剤であり、(【0146】)ポリマー層70の上に配置された耐引掻きコーティング90を含む、(【0066】)カバー要素」
(4) 周知技術を示す文献の記載事項及び周知技術の認定
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ア 周知技術を示す文献の記載事項
(ア) 国際公開第2006/98383号の記載事項
本決定において新たに引用する、本件特許出願の優先日前に発行された国際公開第2006/98383号(以下「周知例1」という。)には、次の記載がある。
「[0008] 従って、本発明による光学積層体は、光透過性基材と、該光透過性基材の上に、光学調整層と、ハードコート層とをこれらの順で備えてなるものであって、前記光学調整層が、前記光透過性基材の成分と前記ハードコート層の成分とを含んでなるものである。」
「[0078] 光学積層体の用途本発明による光学積層体は、ハードコート積層体として、好ましくは反射防止積層体として利用される。また、本発明による光学積層体は、透過型画像表示装置に利用される。特に、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用される。とりわけ、CRT,PDP,LED、液晶パネルなどのディスプレイの表面に用いられる。[0079] 偏光板偏光板は、偏光膜を両面力挟む2枚の保護積層体により主として構成される。本発明の反射防止積層体は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護積層体のうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の光学積層体が保護積層体を兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の光学積層体を最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐擦傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。偏光膜は、公知の偏光膜、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。」
「[0089] ハードコート層用組成物4ジペンタエリスリトールへキサアタリレート 100重量部光開始剤:イルガキュアー184 3重量部(商品名:チバスべシャリティーケミカルズ社製)トルエン 100重量部」
(イ) 特開2002-40209号公報の記載事項
本決定において新たに引用する、本件特許出願の優先日前に発行された特開2002-40209号公報(以下「周知例2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、CRT、EL等の画像表示体等に好適に用いられ、特に、反射防止性、耐摩耗性、帯電防止性に優れた帯電防止性反射防止フィルムに関する。」
「【0020】C.その他の層本発明においては、上記基体および低反射層を基本構成とするものであるが、必要に応じてさらにハードコート層、防眩層などを基体と低反射層の間に積層して設けることができる。以下、これらについて説明する。」
「【0043】【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。<実施例1>開裂型光開始剤(商品名:ダロキュア1173、チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ製)を5%含有した6官能アクリレート:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPE-6A、新中村化学社製)を、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:富士タックUVD-80、富士写真フィルム社製)の片面上に、膜厚3μmとなるように塗工し、出力120W/cmの集光型高圧水銀灯1灯を用いて、照射距離10cm、処理速度5m/分で紫外線照射を行い、塗工膜を重合、硬化させ、高屈折率ハードコート層を形成した。」
(ウ) 特開2009-67862号公報の記載事項
本決定において新たに引用する、本件特許出願の優先日前に発行された特開2009-67862号公報(以下「周知例3」という。)には、次の記載がある。
「【0001】本発明は密着性、硬度、平面性に優れたアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有する積層体の製造方法に関する。」
「【0003】例えば、液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料からなる偏光子の両面に、トリアセチルセルロースなどを用いた偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せたものが用いられている(特許文献1)。【0004】表示装置の保護フィルムには耐引っ掻き性、耐擦り傷性等が求められることから、一般的にトリアセチルセルロースフィルムの表面にハードコート層を設けたものや(特許文献2)、PETフィルムにハードコート層を設けたものが用いられてきたが(特許文献3)、トリアセチルセルロースフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高温または高湿下において使用すると、偏光度や色相等の偏光板の性能が低下するという欠点があり、PETフィルムは使用中にオリゴマーが析出するなどの欠点があった。」
「【0083】(5)ハードコート層形成材料溶液(B1-1)の調製溶液(B1)の主成分(B2)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート47.5質量部、光開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製“イルガキュア184”(登録商標)を2.5質量部、溶剤(C)を50質量部の割合で混合し溶液(B1-1)を得た。」
イ 周知技術の認定
前記アで摘記した周知例1から周知例3の記載事項を踏まえると、次の技術事項は、本件特許出願の優先日前において周知技術であったと認められる。
<周知技術>
「光学部材のハードコート層に用いられる硬化性アクリル組成物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いること。」
4 取消理由(進歩性の欠如)についての判断
(1) 本件発明1について
ア 対比分析
本件発明1と甲2発明を対比する。
(ア)a 甲2発明の「イミド樹脂からなるフィルム」は、本件発明1の「保護樹脂層」に相当する。
b また、甲2発明の「ハードコート層」である「コーティング層」は、本件発明1の「ハードコート層」に相当する。
c そして、甲2発明の「液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いることができる」「光学フィルムとして利用可能であ[る]」、「コーティング積層フィルム」は、「偏光子保護フィルムは、液晶パネルの最表面に用いられ[る]」ことも考慮すると、本件発明1の「前面板」に相当する。
d 前記aからcを踏まえると、甲2発明の「イミド樹脂からなるフィルム」である「二軸延伸フィルム」に「ウレタンアクリレートオリゴマー」を用いて「コーティング層」を形成した「コーティングフィルム」は、本件発明の「保護樹脂層と、ハードコート層とを厚み方向に向かって順に備え[る]」「前面板」に相当する。
(イ)a 甲2発明の「コーティングフィルム」における「二軸延伸フィルム」の製造では、原料として芳香族化合物は用いられておらず、製造過程において芳香族化合物が合成されていると解すべき事情もないから、甲2発明の「コーティングフィルム」における「二軸延伸フィルム」の材料の主成分には芳香族化合物に由来する構造単位は含まれていないものと認められる。
b したがって、本件発明1と甲2発明は、「前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下である」点で一致する。
(ウ)a 甲2発明の「ウレタンアクリレートオリゴマー」を用いて光硬化させて得られる「コーティング層」は、本件発明1の「硬化性アクリル組成物の硬化体からな[る]」「ハードコート層」に相当する。
b よって、本件発明1と甲2発明は、「前記ハードコート層は、硬化性アクリル組成物の硬化体からな[る]」点で一致する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析を踏まえると、本件発明1と甲2発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び2について相違する。
<一致点>
「保護樹脂層と、ハードコート層とを厚み方向に向かって順に備え、前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下であり、前記ハードコート層は、硬化性アクリル組成物の硬化体からなる、前面板」である点。
<相違点1>
本件発明1においては、「前記保護樹脂層の屈折率と、前記ハードコート層の屈折率との差が、0.04以下」であるのに対して、
甲2発明においては、イミド樹脂からなるフィルムの屈折率と、ハードコート層であるコーティング層の屈折率との差が不明である点。
<相違点2>
硬化性アクリル組成物が、
本件発明1は、「トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、これらのオリゴマーまたはプレポリマーを単独、または組み合わせである」のに対して、
甲2発明は、「ウレタンアクリレートオリゴマー」である点。
ウ 相違点についての判断
前記相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
甲2発明と甲1技術事項は、樹脂フィルムからなる基材層にハードコート層を形成した、偏光子の保護材料として用いることができる光学積層体である点で共通するものであることころ、甲1技術事項は基材層の屈折率とハードコート層の屈折率との差の絶対値を0.01未満に設定することにより、干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができるものである。
したがって、甲2発明において甲1技術事項を参酌して、干渉ムラの少ない光学積層体を得るために、イミド樹脂からなるフィルムの屈折率と、ハードコート層であるコーティング層との屈折率との差を、ハードコート層の材料を適宜調整するなどの手段により0.01未満とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点2について
a 甲2発明は、「ハードコート層」に用いられる硬化性アクリル組成物として、その具体例としての「ウレタンアクリレートオリゴマー」に限らず、「フッ素含有多官能性オリゴマー、シリコン含有多官能性オリゴマー、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマー等が用いられ[る]」ものである。
b ここで、光学部材のハードコート層に用いられる硬化性アクリル組成物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いることは、前記3(4)で認定したとおり、本件特許出願の優先日前において周知技術である。
c そして、本件発明1において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の硬化性アクリル組成物を採用することの技術上の意義について、本件訂正後の明細書の記載を参酌すると、前記第3の1に摘記した【0067】-【0068】の記載のとおりであり、光学部材のハードコート層として一般に求められる機能を果たすこと以外格別技術上の意義は認められない。また、同【0069】には、甲2発明と同じ「ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー」が挙げられてもいる。
d 以上aからcの事項を総合的に判断すると、甲2発明の「ハードコート層」に用いられる硬化性アクリル組成物として、光学部材のハードコート層に用いられる硬化性アクリル組成物として周知のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いることは、格別技術上の意義を伴わない周知の材料の選択にすぎず、当業者が適宜なし得る設計事項である。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、相違点1及び相違点2は格別ものでなく、甲2発明、甲1技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件発明1の奏する効果としては、甲2発明及び甲1技術事項並びに周知技術から当業者が予測することが困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲1技術事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ) 特許権者の主張について
a 特許権者の主張内容
特許権者は意見書において、次の主張をしている。
甲2号証には、【0141】に「ハードコート層として、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマー」が記載されており、この点で、本願発明は甲2号証と明確に異なる。
b 特許権者の主張についての検討
甲2号証には、ハードコート層について、請求人の主張するウレタンアクリレート系多官能性オリゴマーのみならず、「ハードコート層として、フッ素含有多官能性オリゴマー、シリコン含有多官能性オリゴマー、ウレタンアクリレート系多官能性オリゴマー等が挙げられる」と記載されているところ、甲2号証の全記載を精査しても、甲2発明のハードコート層に、光学部材のハードコート層に用いられている他の材料を用いることを妨げる事情は存在しない。
そして、甲2発明の「ハードコート層」に用いられる硬化性アクリル組成物として、光学部材のハードコート層に用いられる硬化性アクリル組成物として周知のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いることは、格別技術上の意義を伴わない周知の材料の選択にすぎず、当業者が適宜なし得る設計事項であることは、前記4(1)ウ(イ)で検討したとおりである。
したがって、特許権者の主張は、前記(ウ)の結論を左右するものではない。
(2) 本件発明2について
甲2発明の「イミド樹脂からなるフィルム」の「イミド樹脂」が「イミド化された単位を含むアクリル樹脂」であることは、本件発明2の「前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂[である]」ことに相当する。
そうすると、本件発明2は、本件発明1と同様に、甲2発明及び甲1技術事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明3について
甲2発明の「イミド樹脂からなるフィルム」及び「ハードコート層であるコーティング層」を、甲3技術事項のような、折畳式ディスプレイに用いられるカバー要素における、接着剤80で折畳式ガラス要素に接着された「ポリマー層70」及び「耐引掻きコーティング層90」として用いることは、当業者が適宜なし得る設計変更である。
このとき、「接着剤80」が本件発明3の「粘着層」に相当し、同様に、「厚さは約60μm~約80μm」である「折畳式ガラス要素50」が「薄板ガラス板」である「基板」に相当する。
よって、本件発明3は、甲2発明、甲1技術事項及び甲3技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
(4) 本件発明4について
甲2発明の「偏光子」は、本件発明4の「偏光フィルム」に相当する。
そして、甲2発明は、偏光子保護フィルムは、液晶パネルの最表面に用いられるものであるし、偏光子を保護するという目的からみて、偏光子、光学フィルムを視認側に向かって順に備えるようにすることは、ごく当然のことである。
よって、本件発明4は、甲2発明及び甲1技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
(5) 本件発明5について
甲2発明のコーティング積層フィルムは液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いられるものであって、偏光子保護フィルムは、液晶パネルの最表面に用いられるものであるところ、甲2発明の「液晶パネル」は、本件発明5の「画像表示部材」に相当する。
よって本件発明5は、甲2発明及び甲1技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
(6) 取消理由(進歩性の欠如)についての判断のまとめ
以上検討したとおり、本件発明1、2、4、5は、甲2発明及び甲1技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、本件発明3は、甲2発明、甲1技術事項及び甲3技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件発明1-5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第6 むすび
以上検討のとおり、本件発明1-5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1-5に係る特許は同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700601