特許異議申立
2022-700547
柑橘果汁飲料、その製造方法、及び柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法
- 審判番号
- 2022-700547
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-043879
- 登録番号
- 6985539
- 請求日
- 2022年06月21日
- 審決日
- 2023年04月27日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】新井 誠一
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第6985539号発明「柑橘果汁飲料、その製造方法、及び柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6985539号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4及び5について訂正することを認める。
特許第6985539号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6985539号(以下、この通知において「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和3年3月17日の出願であって、同年11月29日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年12月22日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和4年6月21日に特許異議申立人 新井 誠一(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年10月14日付けで取消理由が通知されたところ、同年12月14日に特許権者 ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書の提出がされ、同年同月26日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、令和5年2月6日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の請求の趣旨は、訂正請求書の第2頁にあるように、「特許第6985539号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
と記載されているのを、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁がレモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
と記載されているのを、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁がレモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすよう調製する柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
と記載されているのを、
「柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法であって、前記柑橘果汁がレモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすよう調製する柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
に訂正する。
エ 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3は請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、香酸柑橘類が「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の【0015】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び3についても同様である。
イ 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項4の訂正は、香酸柑橘類が「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項4の訂正は、本件特許の明細書の【0015】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項5の訂正は、香酸柑橘類が「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3に係る請求項5の訂正は、本件特許の明細書の【0015】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4及び5について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4及び5について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和4年12月14日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁がレモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)
【請求項2】
前記柑橘果汁飲料の糖酸比が2.0以下である請求項1の柑橘果汁飲料。
【請求項3】
前記香酸柑橘類がレモンである請求項1又は2に記載の柑橘果汁飲料。
【請求項4】
オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁がレモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)
【請求項5】
柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法であって、前記柑橘果汁がレモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすよう調製する柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし5に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨(下記1ないし9)は、次のとおりである。
1 申立理由1-1(新規性)
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(新規性)
本件特許の請求項1、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由2-1(進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由2-2(進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由2-3(進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由2-4(進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 申立理由2-5(進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第16号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
(1) 申立理由3-1(柑橘類果汁を含む飲料一般に拡張できるか否か)
本件特許発明1では、「前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たす柑橘果汁飲料。」として、
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)
という特殊パラメータを用いた特定が行われている。
オクタナールの含有量とデカナールの含有量を調整した実施例としては、以下の内容が示されているが、比較例として示されているのは、オクタナール又はデカナールのいずれかを含んでいない飲料に過ぎない。
【表1】
[図:0001399358000001.jpg]
【表2】
[図:0001399358000002.jpg]
表1及び表2を用いてグラフを記載すると以下のとおりになるが、そもそも柑橘果汁由来の変化臭の軽減との関係で、オクタナールとデカナールとの含有量が直線的に影響しているかが技術常識を鑑みても不明である。別件で異議を申し立てている特許第6985538号でも酸味の軽減に関して直線的なグラフとなっているが、変化臭の軽減と酸味の軽減の両方において、オクタナールとデカナールとの関係が直線的に影響するとは考え難い。
[図:0001399358000003.jpg]
「レモン」の場合は、シトラールが変化したp-シメン-8-オールに変化したものが悪臭の原因であり、「ユズ」は新鮮果汁に含まれるビシクロゲルマクレンが貯蔵中に変化したスパツレノールが貯蔵臭であることが知られている。(甲9の1、頁番号26)
また、本件特許明細書(【0003】【0027】)に記載の果汁の「加熱臭」「ムレ臭」「イモ臭」の本体はS-メチルメチオニンスルフォニウム(MMS)が加熱により変化したジメチルスルフィド(DMS)であることも分かっている。
このDMSはS-メチルメチオニンスルフォニウム(MMS)が加熱により変化したものであるが、このMMSは果汁によって含有量が異なり、MMSを多く含む果汁からは加熱臭を感じるが、MMSをほとんど含まない果汁(レモン、グレープフルーツなど)からは加熱臭が感じられないことも知られている。(甲9の1、頁番号319)
また、同じ香酸柑橘である「レモン」(甲9の2、表1においてMMS1.8μM)と「カボス」(甲9の2、表1においてMMS9.2μM)であっても、S-メチルメチオニンスルフォニウム(MMS)の含有量は大きく異なるため、イモ臭(DMS)の発生の程度や強度も異なる(甲9の2、頁番号1220-1221)。
このように同じ香酸柑橘である「レモン」と「ユズ」であっても、悪臭・貯蔵臭といわれる成分は果汁の主成分によって全く異なる成分であること、また、イモ臭の原因物質であるDMSは果汁中のMMS濃度に依存しており、同じ香酸柑橘である「カボス」は「レモン」の5倍以上のMMS濃度であり、イモ臭の発生はレモンよりも大きくなることは示されている。
このような技術常識がある中、本件特許明細書で開示されている実施例ではレモンについての結果しか示していないことから、本件特許発明1、4及び5で示されている数式が仮に有効であったとしても、レモンに対してのみ機能するものであり、当該実施例での内容をその他の柑橘果汁まで拡大し、一般化することはできない。
よって、表1及び表2で示されているような実施例から、
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)
という数値範囲によれば、香酸柑橘類果汁を含む飲料一般に関して、柑橘果汁由来の変化臭を軽減できるという点で優れているということは理解できるものではなく、サポート要件を満たすものとはなっていない。
(2) 申立理由3-2(糖酸比について)
独立請求項である本件特許発明1、4及び5では糖酸比についての限定は存在していない。
本件特許発明2においても、糖酸比の上限値が規定されるのみであり、下限値についての規定はない。
また、本件特許明細書を見ても糖酸比が1.23、1.35及び1.55についての結果が示されているだけである。
糖度及び酸度は飲料の香味に影響を与える要素であり、その含有量(絶対値)によって味は大きく左右される。
具体的には、糖酸比が同等であっても、糖度又は酸度の含有量によって、最適値が変わることは知られている(甲10の1:図7)。しかも、フルーツの糖度を指標にする場合、糖度は固形分量を表すものであり、果物の品種によっては固形分の組成や比率が異なることから、「同じ種類の果物の間で比べることしか使えない」という記載も甲10の2ではなされている。
よって、どのような酸度・糖度であったとしても、柑橘果汁飲料の変化臭軽減が得られるとする効果は理解できず、明細書の記載の内容を拡大ないし一般化できない。
9 申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由4の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
表4(【0049】)では、果汁率が10%~150%の果汁に対し、オクタナール0.25ppm、デカナール0.5ppmを添加した際の不快臭の軽減効果について評価している。
しかしながら、果汁10%の場合と果汁150%の場合では、そもそも濃度が異なることから変化臭の原因となる物質も果汁率に依存して異なるのが普通である。単純計算でも、果汁150%の場合、果汁10%よりも15倍の変化臭が生じているはずであるが、試験例3(表4)では10%の場合と同量のデカナール、オクタナールで果汁150%の場合の変化臭が軽減された結果となっている。
当業者の技術常識では果汁率10%の場合と果汁率150%の場合の効果が同等であると理解することができない。
つまり、審査基準(第1章 第1節 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号))によれば「どのようにすれば実施できるかを見いだすために、当業者に記載しうる程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要がある場合も、当業者がどのように実施するかを理解できるとはいえないので、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないことになる。」と記載されているところ、果汁率10%の場合と果汁率150%の場合において、同じオクタナール及びデカナールの量で効果があるとは考え難く、本件特許明細書で記載されているような効果を得ることを確認するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤が必要となる。
10 証拠方法
・甲第1号証:Food Chemistry,134,696-703(2012)
・甲第2号証:Food Sci. Technol. Res.,19(5),843-848(2013)
・甲第3号証:特許庁標準技術集(平成18年度)
・甲第4号証:カラマンシー/四季橘 https://www.kudamononavi.com/gallervs/view/id=7322
・甲第5号証:果実飲料の日本農林規格 https://www.maff.go.jp/j/jas_kikaku/attach/pdf/kikaku_itiran2-265.pdf
・甲第6号証:シークワーサージュースおすすめランキング3選! https://corollia.com/shikuwasa-juice/
・甲第7号証の1:特開2020-174848号公報
・甲第7号証の2:特開2020-36588号公報
・甲第7号証の3:2013年2月20日 ニュースリリース https://www.pokkasapporo-fb.jp/company/news/release/130220_01.html
・甲第7号証の4:2014年8月19日 ニュースリリース https://www.pokkasapporo-fb.jp/company/news/release/140819_01.html#:~:text=%E3%82%92%E4%B8%80%E6%96%B0%EF%BC%81-,%E3%80%8E%E3%82%AD%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%A2%E3%83%B3%20155ml%E3%83%93%E3%83%B3%E3%80%8F,%E3%81%A7%E6%96%B0%E7%99%BA%E5%A3%B2%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・甲第7号証の5:ポッカサッポロ「キレートレモン Wレモン(500ml)」実飲レビュー https://engiinc.jp/blog/pokkas-klwl
・甲第7号証の6:Pokka Kire-To Sparkling Lemon Drink (Mintel記録番号(ID#):2039382)
・甲第7号証の7:Pokka Sapporo Chelate Lemon Carbonated Lemon Drink (Mintel記録番号(ID#):2671213)
・甲第8号証の1:最新・ソフトドリンクス(平成15年9月30日発行)
・甲第8号証の2:中国特許出願公開第107568690号明細書
・甲第8号証の3:国際公開第2019/216412号
・甲第8号証の4:特許第6724268号公報
・甲第9号証の1:最新 果汁・果実飲料事典(1997年10月1日発行)
・甲第9号証の2:日本農芸化学会誌,58(12),1217-1223(1984)
・甲第10号証の1:日本食品工業学会誌,25(3),147-152(1978) 温州ミカン果汁の糖度及び酸含量と嗜好の関係
・甲第10号証の2:フルーツのおいしさの指標となる糖度。https://www.olive-hitomawashi.com/column/2019/08/post-5924.html
・甲第11号証:Fenaroli's Handbook Flavor Ingredients Sixth Edition
・甲第12号証:Kirin Honshibori Orange FAB (Mintel記録番号(ID#):4853283)
・甲第13号証:2012年11月28日 ニュースリリース https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2012/1128c_01.html
・甲第14号証:Innovative Food Science and Emerging Technologies 6 (2005) 372-387
・甲第15号証:Volatile Compounds in Foods and Beverages, p.305-327(1991)
・甲第16号証:特開2016-146825号公報
・甲第17号証:特開2018-126115号公報
・甲第18号証:特開2019-140924号公報
・甲第19号証:特開2019-135990号公報
また、特許異議申立人は、令和5年2月6日提出の意見書に添付し、次の証拠を提出している。
・甲第20号証:日本食品工業学会誌、第11巻、第10号、1964年10月、第447頁ないし第458頁
・甲第21号証:Food Sci. Technol. Res.,19(1),39-49,2013
なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書及び上記意見書の記載にしたがった。
第5 令和4年10月14日付けで特許権者に通知した取消理由の概要
請求項1、2、4及び5に係る特許に対して、当審が令和4年10月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
なお、申立理由のうち、申立理由1-1のうち本件特許発明1、2及び4に係る部分、申立理由1-2のうち本件特許発明1及び4に係る部分、申立理由2-1のうち本件特許発明1、2及び4に係る部分、申立理由2-2のうち本件特許発明1、2及び4に係る部分、及び、申立理由3-1は、取消理由に包含される。
取消理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、取消理由3の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
本件特許発明の課題は「柑橘果汁飲料を保存した際の変化臭のさらなる軽減」(【0005】)であり、課題を解決するための手段として「柑橘果汁飲料において所定量のオクタナール及びデカナールを含有する」(【0006】)ものである旨記載されているものの、具体的に実施例等において検証しているのは「レモン果汁」を用いたものに限られる。
この点について、甲第9号証の1の、
「
[図:0001399358000004.jpg]
」(第26頁)
との記載によれば、レモンとユズでは変化臭(貯蔵臭)の原因物質は異なるし、また、甲第9号証の2の、
「
[図:0001399358000005.jpg]
」(第1221頁左欄)
との記載からも明らかなように、果汁の加熱臭などの原因物質にあたる(この点、必要であれば甲第9号証の1の第319頁を参照されたい)メチルメチオニンスルフォニウム(MMS)の含有量は、柑橘の種類により大きく異なることも見てとれる(例えば、香酸柑橘類であるレモン(1.8μM)とカボス(9.2μM)ではMMSの含有量は5倍以上異なる。)。
このように、香酸柑橘類であっても、果汁に含まれる変化臭の原因物質やその濃度が大きく異なるものであるとの技術常識を踏まえると、レモン果汁において課題を解決できる条件であるからといって、レモン果汁の場合と同じ条件で、香酸柑橘類全体において同じ効果を奏するものと当業者が認識するものということはできない。
よって、本件特許発明1、2、4及び5に関して、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているとはいえない。
第6 当審の判断
1 令和4年10月14日付けで特許権者に通知した取消理由についての判断
当審は、次のとおり、令和4年10月14日付けで特許権者に通知した取消理由は、何れもその理由がないものと判断する。
(1) 取消理由1-1及び取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 主な証拠の記載事項等
(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「Characterisation of calamansi(Citrus macrocarpa). Part II: Volatiles, physicochemical properties and non-volatiles in the juice」に関し、次の記載がある。(なお、甲第1号証は外国文献のため、日本語仮訳のみ摘記する。以下、他の外国語文献についても同様。)
「2. 材料と方法
2.1.植物原料及び化学物質
予備的スクリーニング(物理的品質、例えば果実の大きさ、成熟日、香りの比較官能分析)に基づき、本研究では3カ所(マレーシア・ジョホールバル、フィリピン・ケソンシティ、ベトナム・ハノイ)からカラマンシー(C. microcarpa)を選び、それぞれの場所から3バッチを2010年9月30日、同年11月26日、2011年2月20日に採取した。
搾汁前に、カラマンシー果実を脱イオン水で洗浄し、紙製のセルフィーで水分を拭き取り、カラマンシー果実の皮と目に見える内果皮を慎重に剥がした。その後、ステンレス製のふるいを使って手作業で搾汁し、カラマンシー果汁を得た。搾りたての果汁の一部を直ちに揮発成分の抽出に使用し、残りを17000g、4℃で15分間の遠心分離にかけた(Sigma 3-18K, Sartorius Mechatronics, T&H GmbH, Hamburg, Germany)。上清の一部は物理化学的特性の測定に直接使用し、残りは0.2lm再生セルロース(RC)フィルター(Minisart RC15, Sartorius Stedim Biotech, S.A., Aubagne, France)でろ過し、さらに糖と有機酸を分析するまで30℃で保存した。」
「
[図:0001399358000006.jpg]
」(Table 1から抜粋しまとめたもの)
「
[図:0001399358000007.jpg]
」(Table 2から抜粋しまとめたもの)
(イ) 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、及び、カラマンシーが「香酸柑橘類」に分類される柑橘類であること(甲第4号証)、甲第1号証の分析が、果実を搾汁し得られたカラマンシー果汁(すなわち、果汁率100%)を分析したものであることを踏まえまとめると、甲第1号証には次の発明が記載されていると認める。
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、
香酸柑橘果汁であるカラマンシー果汁であり、
カラマンシー果汁の果汁率が100%であり、
カラマンシー果汁飲料中のオクタナールの含有量が0.63(ppm)であって、デカナールの含有量が0.52(ppm)である柑橘果汁飲料。」(以下、「甲1果汁飲料発明」という。)
「甲1果汁飲料発明の製造方法。」(以下、「甲1製造方法発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1果汁飲料発明とを対比する。
甲1果汁飲料発明のオクタナールの含有量及びデカナールの含有量はそれぞれ、0.63ppm,0.52ppmであるから、本件特許発明1のデカナールの含有量の範囲である「0.1以上2.5以下」との条件を満たすとともに、次のとおり、本件特許発明1の式(2)の条件を満たす。
・ 0.52≧-0.125×0.63+0.225=0.14625
してみると、両者は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-1
柑橘果汁に関し、本件特許発明1は「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁」と特定されるのに対し、甲1果汁飲料発明は「カラマンシー果汁」である点。
上記相違点1-1について検討する。
カラマンシーとレモン、ライムは別の品種であるから、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲1果汁飲料発明ではない。
また、甲第1号証及び他の全ての証拠をみても、甲1果汁飲料発明において「カラマンシー果汁」に代えて「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁」とする動機付けはないから、甲1果汁飲料発明において相違点1-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
なお、特許異議申立人は、令和5年2月6日提出の意見書において、本件特許発明1は実施例で検討されていないライムを含むものであってサポート要件を満たさないものであるから、甲1果汁飲料発明に比して進歩性が認められるものではない旨主張するが、そもそも、上記のとおり、甲1果汁飲料発明において「カラマンシー果汁」に代えて「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁」とする動機付けはないから、当該主張は採用できない。
したがって、本件特許発明1は甲1果汁飲料発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2は本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1が甲1果汁飲料発明ではなく、甲1果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2もまた、甲1果汁飲料発明ではなく、甲1果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1製造方法発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-2
柑橘果汁に関し、本件特許発明4は「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁」と特定されるのに対し、甲1製造方法発明は「カラマンシー果汁」である点。
上記相違点1-2について検討するに、相違点1-2は上記(ア)における相違点1-1と同旨であり、上記(ア)における検討と同様に判断される。
したがって、本件特許発明4は甲1製造方法発明ではなく、甲1製造方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-1及び取消理由2-1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-1及び取消理由2-1は、その理由がない。
(2) 取消理由1-2及び取消理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 主な証拠の記載事項等
(ア) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「Detection of Adulterated Shiikuwasha Juice by Sensory Evaluation, Colorimetric Value and Volatile Components」に関し、次の記載がある。
「材料および方法
材料 工業的に調製されたシークワーサー果汁と濃縮カラマンシー果汁は、それぞれ日本と台湾の会社から入手した。濃縮カラマンシー果汁を9.0°±0.2° Brixに希釈し、シークワーサー果汁の濃度を調整した。モデル混合果汁を調製するために、カラマンシー果汁に、0.1、0.5、1,5、10、20、25、50、75、および90% (v/v)の濃度でシークワーサー果汁を添加した。」
「
[図:0001399358000008.jpg]
」(Table 4から抜粋しまとめたもの)
(イ) 甲第2号証に記載された発明
上記アの記載、特に、表4におけるシークワーサーの濃度が0%(すなわち、カラマンシーの濃度が100%)の例を中心に、かつ、カラマンシーが「香酸柑橘類」に分類される柑橘類であることを踏まえまとめると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、
香酸柑橘果汁であるカラマンシー果汁であり、
カラマンシー果汁の果汁率が100%であり、
カラマンシー果汁飲料中のオクタナールの含有量が0.43(ppm)であって、デカナールの含有量が0.46(ppm)である柑橘果汁飲料。」(以下、「甲2果汁飲料発明」という。)
「甲2果汁飲料発明の製造方法。」(以下、「甲2製造方法発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2果汁飲料発明とを対比する。
甲2果汁飲料発明のオクタナールの含有量及びデカナールの含有量はそれぞれ、0.43ppm,0.46ppmであるから、本件特許発明1のデカナールの含有量の範囲である「0.1以上2.5以下」との条件を満たすとともに、次のとおり、本件特許発明1の式(2)の条件を満たす。
・ 0.46≧-0.125×0.43+0.225=0.17125
してみると、両者は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-1
柑橘果汁に関し、本件特許発明1は「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁」と特定されるのに対し、甲2果汁飲料発明は「カラマンシー果汁」である点。
上記相違点2-1について検討するに、相違点2-1は、上記(1)イ(ア)の相違点1-1と同旨であり、上記(1)イ(ア)における検討と同様に判断される。
したがって、本件特許発明1は甲2果汁飲料発明ではなく、甲2果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2は本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1が甲2果汁飲料発明ではなく、甲2果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2もまた、甲2果汁飲料発明ではなく、甲2果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2製造方法発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類の果汁であり、前記柑橘果汁飲料の果汁率が10%以上200%未満であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-2
柑橘果汁に関し、本件特許発明4は「レモン及びライムから選ばれる少なくとも一種の香酸柑橘類の果汁」と特定されるのに対し、甲2製造方法発明は「カラマンシー果汁」である点。
上記相違点2-2について検討するに、相違点2-2は上記(1)イ(ア)における相違点1-1と同旨であり、上記(1)イ(ア)における検討と同様に判断される。
したがって、本件特許発明4は甲2製造方法発明ではなく、甲2製造方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-2及び取消理由2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-2及び取消理由2-2は、その理由がない。
(3) 取消理由3(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ サポート要件についての判断
本件特許発明における発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「柑橘果汁飲料を保存した際の変化臭のさらなる軽減」(【0005】)であると認める。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、柑橘果汁飲料において所定量のオクタナール及びデカナールを含有することにより、柑橘果汁飲料を保存した際の変化臭を軽減できることを見出したことに基づくもの」(【0006】)であること、「オクタナール及びデカナールは、柑橘果汁飲料に所定量含有することにより、保存した際の変化臭を軽減させる」(【0016】)こと、柑橘果汁飲料中において、オクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合に0.1≦y≦2.5において、関係式(1)、(2)を満たすものとすることで変化臭軽減効果を示すこと(【0016】及び【0017】)が記載され、さらに、具体的な実施例・比較例を通じた検討も示されている。
これらの記載に接した当業者であれば、柑橘果汁飲料において、オクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合に0.1≦y≦2.5において、関係式(1)、(2)を満たすとの特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明は、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然に、発明の課題を解決できると認識できる。
したがって、本件特許発明1ないし5に関する請求項1ないし5の記載は、サポート要件に適合するものといえる。
ウ 令和5年2月6日に特許異議申立人が提出した意見書における主張について
特許異議申立人は、令和5年2月6日提出の意見書において、特許権者が提示した乙第1号証は果汁の成分に関するものではないこと、及び、甲第20号証ないし甲第21号証を提示しつつ、レモンとライムは香気成分が異なるから、レモンを用いた実施例を根拠にライムにも同様の効果が奏されるものとすることはできない旨主張する。
しかしながら、特許異議申立人は、ライムの場合において具体的に発明の課題を解決し得ないことを具体的に示すものではない。
そして、サポート要件については上記イのとおりに判断されるから、特許異議申立人の上記主張はいずれも採用しない。
エ 取消理由3についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、取消理由3は、その理由がない。
2 令和4年10月14日付けで特許権者に通知した取消理由として採用しなかった特許異議申立理由について
令和4年10月14日付けで特許権者に通知した取消理由として採用しなかった特許異議申立理由は次のとおりである。
・申立理由1-1のうち本件特許発明5に係る部分
・申立理由1-2のうち本件特許発明5に係る部分
・申立理由2-1のうち本件特許発明3及び5に係る部分
・申立理由2-2のうち本件特許発明3及び5に係る部分
・申立理由2-3
・申立理由2-4
・申立理由2-5
・申立理由3-2
・申立理由4
以下、順に検討する。
(1) 申立理由1-1及び申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)のうち、本件特許発明3及び5に係る部分について
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明について
上記1(1)アのとおりである。
なお、甲第1号証の記載からは、本件特許発明5に対応する「柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法」に関する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明3について
本件特許発明3は本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、上記1(1)イ(ア)で検討したとおり、本件特許発明1が甲1果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3もまた、甲1果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明5について
上記アで述べたとおり、甲第1号証の記載からは、本件特許発明5に対応する「柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法」に関する発明を認定することはできない。
よって、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-1及び申立理由2-1のうち、本件特許発明3及び5に係る部分についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-1及び申立理由2-1のうち、本件特許発明3及び5に係る部分については、その理由がない。
(2) 申立理由1-2及び申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)のうち、本件特許発明3及び5に係る部分について
ア 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明について
上記1(2)アのとおりである。
なお、甲第2号証の記載からは、本件特許発明5に対応する「柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法」に関する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明3について
本件特許発明3は本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、上記1(2)イ(ア)で検討したとおり、本件特許発明1が甲2果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3もまた、甲2果汁飲料発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明5について
上記アで述べたとおり、甲第2号証の記載からは、本件特許発明5に対応する「柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法」に関する発明を認定することはできない。
よって、本件特許発明5は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-2及び申立理由2-2のうち、本件特許発明3及び5に係る部分についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-2及び申立理由2-2のうち、本件特許発明3及び5に係る部分については、その理由がない。
(3) 申立理由2-3ないし申立理由2-5(甲第3号証、甲第12号証及び甲第16号証をそれぞれ主たる証拠とする進歩性)について
ア 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明とを対比すると、いずれも、少なくとも次の点で相違する。
・相違点3
本件特許発明1は「柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.1≦y≦2.5において、以下の関係式(1),(2)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-23x+4.8(0.1≦X<0.2)
(2)y≧-0.125x+0.225(0.2≦X≦1.5)」と特定するのに対し、甲第3号証、甲第12号証及び甲第16号証に記載された発明にはいずれもそのような特定がない点。
そこで相違点3について検討するに、甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証にはいずれも、柑橘果汁飲料におけるオクタナール及びデカナールの含有量に着目するものではないし、また、全ての証拠の記載を見ても、甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明において、柑橘果汁飲料中のオクタナール及びデカナールの含有量を調整する動機付けもない。
してみれば、甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明において、相違点3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件特許発明1は、甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件特許発明2、3及び4について
本件特許発明2及び3は本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1が甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2及び3もまた、甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明4については、上記(ア)と同様に判断されるから、本件特許発明4についても、甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件特許発明5について
甲第3号証、甲第12号証及び甲第16号証のいずれの記載からも、本件特許発明5に対応する「柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法」に関する発明を認定することはできない。
よって、本件特許発明5は、甲第3号証、甲第12号証又は甲第16号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由2-3ないし申立理由2-5についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由2-3ないし申立理由2-5はいずれも、その理由がない。
(3) 申立理由3-2(サポート要件・糖酸比について)について
ア サポート要件の判断基準及びサポート要件についての判断
サポート要件の判断基準については上記1(3)アのとおりであり、サポート要件についての判断は上記1(3)イのとおりである。
イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、糖度及び酸度は飲料の香味に影響を与える要素であり、その含有量(絶対値)によって味は大きく左右されるものであり、どのような酸度・糖度であったとしても、柑橘果汁飲料の変化臭軽減が得られるとする効果は理解できない旨主張する。
しかしながら、上記1(3)イにおける検討のとおり、発明の課題は、柑橘果汁飲料において、オクタナール及びデカナールの含有量が特定の関係式を満たすとの特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
ウ 申立理由3-2についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、申立理由3-2は、その理由がない。
(4) 申立理由4について
ア 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1ないし3は、上記第3のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、本件特許発明4は、上記第3のとおり、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、そのものを生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
さらに、本件特許発明5は、上記第3のとおり「方法」の発明であるところ、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等にその方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
イ 実施可能要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、柑橘果汁飲料を保存した際の変化臭を軽減できる柑橘果汁飲料、その製造方法、及び柑橘果汁飲料の変化臭軽減方法に関する」(【0001】)ものであって、「柑橘果汁飲料を保存した際の変化臭のさらなる軽減」(【0005】)を課題とし、「柑橘果汁飲料において所定量のオクタナール及びデカナールを含有することにより、柑橘果汁飲料を保存した際の変化臭を軽減できることを見出したこと」(【0006】)、柑橘果汁に用いられる柑橘類の原料について(【0015】)、柑橘果汁に含まれるオクタナール及びデカナールについて(【0016】ないし【0019】)、糖酸比について(【0020】ないし【0021】)、果汁濃度について(【0022】ないし【0023】)、製造方法について(【0029】ないし【0031】)、変化臭軽減方法について(【0033】ないし【0035】)がそれぞれ記載され、具体的な実施例の記載もある。
以上の記載を総合すれば、本件特許発明1ないし3、4及び5は、上記アに掲げる実施可能要件における判断基準を充足するものといえる。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、果汁率10%の場合と果汁率150%の場合の効果が同等であると理解することができないことをあげつつ、果汁率10%の場合と果汁率150%の場合において、同じオクタナール及びデカナールの量で効果があるとは考え難く、本件特許明細書で記載されているような効果を得ることを確認するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤が必要となる旨主張する。
しかしながら、実施可能要件の判断は、上記イのとおりに判断されるものであって、効果が定量的に同じであるかどうかは、その判断に影響しない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
エ 申立理由4についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、申立理由4は、その理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、当審で通知した取消理由及び特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700547