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特許異議申立

2023-701100

ほうじ茶飲料、ほうじ茶飲料の製造方法、及び、ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる方法

審判番号
2023-701100
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-037980
登録番号
7260338
請求日
2023年10月16日
審決日
2024年10月31日
公報発行日
2025年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】坂西 俊明
  • 【権利者代理人】田村 明照
  • 【権利者代理人】吉川 絵美
  • 【異議申立人】新井 誠一
  • 【異議申立人】松本 晃子
  • 【異議申立人】田中 亜実
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 植前 充司
  • 審判官 松本 陶子
分類
P1651.112-YAA(A23F) / P1651.113-YAA(A23F) / P1651.121-YAA(A23F) / P1651.536-YAA(A23F) / P1651.537-YAA(A23F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7260338号発明「ほうじ茶飲料、ほうじ茶飲料の製造方法、及び、ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7260338号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、5について訂正することを認める。 特許第7260338号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7260338号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成31年3月1日を出願日とする出願であって、令和5年4月10日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月16日に特許異議申立人 新井 誠一(以下「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年同月18日に特許異議申立人 松本 晃子(以下「特許異議申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年同月同日に特許異議申立人 田中 亜実(以下「特許異議申立人C」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものであり、令和6年2月19日付けで取消理由が通知され、同年4月23日に特許権者 ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年6月24日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)が通知され、同年7月26日に特許異議申立人Aから意見書が提出され、同年同月29日に特許異議申立人Bから意見書が提出され、同年8月23日に特許異議申立人Aから意見書に対する手続補正書が提出されたものである。 なお、訂正請求があった旨の通知に対して、特許異議申立人Cからは、何ら応答がなかった。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和6年4月23日にされた訂正請求項における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「没食子酸含量が110ppm以下」とあるのを、「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下」と訂正する。 併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に、「没食子酸含量が110ppm以下」とあるのを、「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に、「没食子酸含量が110ppm以下」とあるのを、「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下」と訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1~3の訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1に係る発明における没食子酸含量の下限を、「10ppm以上」と特定して限定するもので、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項1の訂正は、本件特許明細書の【0018】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3についての訂正も同様である。 (2)請求項4の訂正について 訂正事項2による請求項4についての訂正は、訂正前の請求項1に係る発明における没食子酸含量の下限を、「10ppm以上」と特定して限定するもので、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1による請求項1についての訂正と同旨である。 そして、訂正事項2による請求項4についての訂正は、上記(1)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3)請求項5の訂正について 訂正事項3による請求項5についての訂正は、訂正前の請求項5に係る発明における没食子酸含量の下限を、「10ppm以上」と特定して限定するもので、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1による請求項1についての訂正と同旨である。 したがって、訂正事項3による請求項5についての訂正は、上記(1)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおり、訂正事項1~3による請求項1~5についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1~3について、請求項2~3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 以上のことから、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、5について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、5について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件特許発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上であり、没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下であり、ブリックスが0.20以上であるほうじ茶飲料。 【請求項2】 カフェイン含量が90~150ppmである、請求項1に記載のほうじ茶飲料。 【請求項3】 ブリックスが0.60以下である、請求項1又は2に記載のほうじ茶飲料。 【請求項4】 タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整することと、 没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整することと、 ブリックスを0.20以上に顆整することとを含む、ほうじ茶飲料の製造方法。 【請求項5】 タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整することと、没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整することと、 ブリックスを0.20以上に調整することとを含む、ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 1 令和5年10月16日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書A」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由A-1(甲第A1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1及び3~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由A-2(甲第A4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由A-3(実施可能要件) 本件特許の請求項1~5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許発明の課題は、苦味が抑えられ、かつ後切れが良好なほうじ茶飲料を得ることであると認められる(本件特許明細書の【0005】)。しかしながら、本件特許明細書の実施例において、上記課題を解決できることが具体的に記載されているのは、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.31~0.37の範囲にあるほうじ茶飲料のみである。 本件特許明細書には、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比は、ほうじ茶抽出物をタンナーゼ処理することによって増加させることができることが記載されているが(【0017】)、当該質量比を、0.31~0.37の範囲を超えるあらゆる範囲に設定した場合においても、上記課題を解決できると推認できないことから、本件特許は実施可能要件を充足しない。 (4)申立理由A-4(サポート要件) 本件特許の請求項1~5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許発明の課題は、苦味が抑えられ、かつ後切れが良好なほうじ茶飲料を得ることであると認められる(本件特許明細書の【0005】)。しかしながら、本件特許明細書の実施例において、上記課題を解決できることが具体的に記載されているのは、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.31~0.37の範囲にあるほうじ茶飲料のみである。 本件特許明細書には、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比は、ほうじ茶抽出物をタンナーゼ処理することによって増加させることができることが記載されているが(【0017】)、当該質量比を、0.31~0.37の範囲を超えるあらゆる範囲に設定した場合においても、上記課題を解決できると推認できないことから、本件特許はサポート要件を充足しない。 (5)証拠方法 甲第A1号証:特開2011-155878号公報 甲第A2号証:特開2004-313189号公報 甲第A3-1号証:「茶の公定分析法」、化学研究室、茶業試験場研究報告、農林省茶業試験場、第6号、167-172頁、1970年3月 甲第A3-2号証:「茶の分析法」、池ヶ谷賢次郎他、茶業研究報告、日本茶業学会、第71号、43-74頁、1990年6月10日 甲第A4号証:国際公開第2010/098391号 甲第A5号証:「焙煎程度とほうじ茶の品質」、農業技術センター茶業試験場(合議体注:甲第A5号証には発行(公開)日の記載はないが、甲第A6号証によれば、2018年4月4日以前に発行(公開)されたことは明らかである。) 甲第A6号証:農業技術センター茶業試験場の2018年12月5日時点のホームページ 甲第A7号証:「Interrelation between the tannin value and phenolic components in green tea.緑茶中のフェノール性化合物とタンニン量測定値の相関について」、鈴木壯幸他、Proceedings of the 2001 International Conference on 0-CHA(tea) Culture and Science、Session IV、93-96頁、2001年 なお、証拠の表記は、特許異議申立書A及び特許異議申立人Aが提出した意見書等の記載におおむね従った。 2 令和5年10月18日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書B」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由B-1(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるか、公然実施された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由B-2(甲第B2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)証拠方法 甲第B1号証:お茶のあずま園「特上加賀棒ほうじ茶」200g×1袋(アマゾンジャパン合同会社が運営する通信販売サイトのAmazon.co.jpのお茶のあずま園「特上加賀棒ほうじ茶」のwebページ) 甲第B1-1号証:試験検査成績書(第MB30900144-002号)(抽出条件:茶葉15g、沸騰水(約98℃)650mL、30秒侵出)、株式会社静環検査センター 甲第B1-2号証:試験検査成績書(第MB30900144-003号)(抽出条件:茶葉15g、熱湯(約85℃)650mL、30秒侵出)、株式会社静環検査センター 甲第B1-3号証:世界緑茶協会webページ、URL:https://www.o-cha.net/omotenashi/houjicha.html 甲第B1-4号証:お茶のあずま園webページ、URL:http://www.azumaen.jp/tea/how_to.html 甲第B1-5号証:試験検査成績書(第MB30900144-001号)(抽出条件:茶葉15g、常温(20℃)650mL、30秒侵出)、株式会社静環検査センター 甲第B2号証:「各種緑茶の総合的理化学分析」、茶業研究報告第45号(1997)、p.85-92 甲第B3号証:国際公開第2010/098391号(甲第A4号証と同じ文献である。) 甲第B4号証:特開2011-155878号公報(甲第A1号証と同じ文献である。) 甲第B5号証:特開2010-246484号公報 甲第B6号証:特開2013-94081号公報 甲第B7号証:特開2018-108031号公報 甲第B8号証:「緑茶の味と化学成分」、茶業研究報告、第40号(1973)、中川致之 甲第B9号証:キッコーマンバイオケミファ株式会社「食品加工用酵素タンナーゼ」カタログ、<https://biochemifa.kikkoman.co.jp/products/detail/?id=12110>、2011年、キッコーマンバイオケミファ株式会社 甲第B10の1号証:高知県農業技術センターニュース第75号「ほうじ茶の焙煎程度と内容成分」、<https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/download/?t=LD&id=6467&fid=34240>、濱田倫哉(高知県農業技術センター茶業試験場)(合議体注:甲第B10の1号証には発行(公開)日の記載はないが、甲第B10の2号証によれば、2014年3月25日以前に発行(公開)されたことは明らかである。) 甲第B10の2号証:高知県農業技術センターニュース第75号webページ、<https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=6467>、令和6年7月25日出力 なお、証拠の表記は、特許異議申立書B及び特許異議申立人Bが提出した意見書の記載におおむね従った。 3 令和5年10月18日に特許異議申立人Cが提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書C」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由C-1(甲第C1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項2及び5に係る発明は、甲第C1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由C-2(サポート要件) 本件特許の請求項1~5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件特許明細書において、実施例9は、後切れの評価が△、すなわち、「△:飲用後にわずかに酸味を感じ、やや後切れが悪い。」であるから、後切れが良好であることが実証されていない。また、本件特許明細書には、実施例の測定項目のうち後切れ(酸味)に影響するのは、没食子酸含量(本件特許明細書の【0018】)とカフェイン含量(本件特許明細書の【0022】)であることが記載されている。よって、カフェイン含量を規定していない本件特許発明1は、効果を奏しない範囲を含むものであり、サポート要件を満たしていない。 イ ほうじ茶飲料に一般に含有される成分のうち、苦味や後切れ(酸味)を呈する原因となる成分は、数多く存在し、また、このことは技術常識である。例えば、甲第C4号証には、ほうじ茶のヘッドスペースと浸出液に含まれる香気寄与成分として、50種もの成分が記載されている。これらの香気寄与成分は、ほうじ茶を飲用する際に、口や鼻を通じて呈味や風味として知覚され、苦味や後切れ(酸味)に影響することは明らかである。してみると、「非ガレート型カテキン/タンニン」「ブリックス」「没食子酸」「カフェイン」以外の苦味や後切れ(酸味)を呈する原因となる成分の含量を特定していない本件特許発明1~5は、発明の範囲全体に亘って課題を解決できるものであるかを理解することができない。 (3)証拠方法 甲第C1号証:特開2011-155878号公報(甲第A1及びB4号証と同じ文献である。) 甲第C2-1号証:北海道立消費生活センターホームページ、“商品テスト”、[online]、[検索年月日:2023年8月27日]、インターネット<URL:https://www.do-syouhi-c.jp/top_test.html> 甲第C2-2号証:北海道立消費生活センターホームページ、“お茶のカフェインテスト”、[online]、2017年1月、[検索年月日:2023年8月27日]、インターネット<URL:https://www.do-syouhi-c.jp/test/kira101otyanokafein.pdfhi-c.jp/top_test.html> 甲第C3号証:宮川弘之、外8名、「市販飲料中のカフェイン含有量とその摂取量 -乳幼児の茶飲料接種を中心にして-」、東京都健康安全研究センター研究年報(Ann.Rep.TokyoMetr.Inst.Pub.Health)、2015年、66、p.133-145 甲第C4号証:水上裕造、「ほうじ茶のヘッドスペースと浸出液に含まれる香気寄与成分」、茶研報、2012年、114、p.65-72 なお、証拠の表記は、特許異議申立書Cの記載におおむね従った。 第5 令和6年2月19日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由について 令和6年2月19日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由は、次の1~3のとおりである。なお、取消理由通知で特許権者に通知した取消理由には、申立理由のうち、申立理由A-1、申立理由A-2、申立理由B-1、申立理由C-1のうちの請求項1及び3~5に係る部分が包含される。 1 取消理由1(甲第A1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1及び3ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由2(甲第A4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 取消理由3(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるか、公然実施された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 当審の判断 以下のとおり、当審は、取消理由及び申立理由は何れもその理由がないものと判断する。 1 取消理由1、申立理由A-1及び申立理由C-1(甲第A1号証(甲第C1号証)に基づく新規性・進歩性)についての判断 甲第A1号証と甲第C1号証は同じ文献であるから、便宜上、主引用文献が同証拠の申立理由A-1と申立理由C-1を、まとめて検討する。 (1)甲第A1号証(甲第C1号証。以下、単に「甲第A1号証」と表記する。)に記載された事項等 ア 甲第A1号証に記載された事項 甲第A1号証には、「容器詰ほうじ茶飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 カフェイン濃度が90ppm未満であり、還元糖と非還元糖とを合わせた糖類の濃度が60ppm~220ppmであり、還元糖の濃度に対する非還元糖の濃度の比率(非還元糖/還元糖)が5.0~15.0であり、没食子酸の濃度が20ppm~80ppmであり、pHが5.5~6.3である容器詰ほうじ茶飲料。 【請求項2】 ほうじ茶飲料中のカフェイン濃度を90ppm未満に調整し、還元糖と非還元糖とを合わせた糖類の濃度を60ppm~220ppmに調整し、還元糖の濃度に対する非還元糖の濃度の比率(非還元糖/還元糖)を5.0~15.0に調整し、没食子酸の濃度を20ppm~80ppmに調整し、且つ、pHを5.5~6.3に調整することを特徴とする、容器詰ほうじ茶飲料の製造方法。 【請求項3】 ほうじ茶飲料中のカフェイン濃度を90ppm未満に調整し、還元糖と非還元糖とを合わせた糖類の濃度を60ppm~220ppmに調整し、還元糖の濃度に対する非還元糖の濃度の比率(非還元糖/還元糖)を5.0~15.0に調整し、没食子酸の濃度を20ppm~80ppmに調整し、且つ、pHを5.5~6.3に調整することを特徴とする、容器詰ほうじ茶飲料の香味改善方法。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明者は、容器詰ほうじ茶飲料が普及してきた状況の中で、特有の味と香りを備えた飲料を鋭意検討した結果、単糖と二糖を合わせた濃度と、単糖濃度に対する二糖の濃度の比率、没食子酸の濃度に対する糖類濃度の比率を一定条件に調整することで、該ほうじ茶飲料の後味をあっさりさせつつも、焙煎香が強く、すっきりした後味を有する容器詰飲料を提供することを見出した(特願2009-47420)。一方、近年飲用シーンの多様化などにより低カフェインの茶飲料が求められるようになったが、カフェイン含有量を低減させると、にが渋味に関与する成分が低減し、濃度感を感じにくくなるという問題があった。 【0008】 本発明者は、さらに鋭意検討したところ、飲料中のpHと没食子酸濃度とを主に調整することで、渋味のコクと焙煎香を際立たせることができ、カフェインを低減した容器詰ほうじ茶飲料であっても、焙煎香と適度な渋味による濃度感があり、あっさりした味わいの飲料を提供できることを見出した。 【0009】 そこで、本発明は、ほうじ茶飲料の成分バランスを調整して、焙煎香が際立ち、渋味のコクがありながらもあっさりとした味わいを備え、特に冷えた状態でもおいしく飲用できる、カフェイン量を低減した容器詰ほうじ茶飲料を提供せんとするものである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の容器詰ほうじ茶飲料は、カフェイン濃度が90ppm未満であり、還元糖と非還元糖とを合わせた糖類の濃度が60ppm~220ppmであり、還元糖の濃度に対する非還元糖の濃度の比率(非還元糖/還元糖)が5.0~15.0であり、没食子酸の濃度が20ppm~80ppmであり、pHが5.5~6.3であることを特徴とする。 【0011】 このように、還元糖と非還元糖との糖類濃度、還元糖と非還元糖との濃度比、没食子酸の濃度、飲料のpHを調整することにより、焙煎香が際立ち、渋味がありながらもあっさりとした味わいを備え、特に冷えた状態でもおいしく飲用できる、新たな容器詰ほうじ茶飲料になる。」 ・「【0018】 還元糖と非還元糖とを合わせた糖類の濃度(以下、糖類濃度という。)が60ppm~220ppmであることにより、常温で長期間保存した状態や冷めた状態で飲用しても、味と香りのバランスが保たれ、甘味やコクを有し、後味に苦渋味や雑味等の少ないあっさりした飲料になる。」 ・「【0050】 (実施例及び比較例の分析) 実施例1~7及び比較例1~5のほうじ茶飲料の成分及びpHを以下に示したとおり測定した。その結果を下記表3に示す。 【0051】 【表3】 [図:0001418219000001.jpg] 」 ・「【0059】 (考察) 比較例1,2の結果から、pHが高くなると、嗜好性が悪くなり、pHが低くなると、嗜好性だけでなく後味が悪く、酸味が強くなることが確認された。 また、比較例3,4の結果から、没食子酸の濃度が高くなると、嫌味な渋味があり官能評価全体が悪くなり、没食子酸の濃度が低くなると、トップの香り立ち、後味、嗜好性が悪くなることが確認された。 さらに、比較例4,5の結果から、非還元糖/還元糖の値が高く又は低くなると、後味に感じる香りが乏しく、官能評価全体が悪くなることが確認された。 これら結果から、カフェイン濃度が90ppm未満であり、還元糖と非還元糖とを合わせた糖類の濃度が60ppm~220ppmであり、還元糖の濃度に対する非還元糖の濃度の比率(非還元糖/還元糖)が5.0~15.0であり、没食子酸の濃度が20ppm~80ppmであり、pHが5.5~6.3であると、トップの香り立ち、後味に感じる香り、後味、酸味、濃度感、嗜好性(香りと味のバランス)の評価が良好になる範囲であると想定され、これらがこの範囲にあるほうじ茶飲料は、焙煎香が際立ち、渋味のコクがありながらも、あっさりとした味わいを備え、冷えた状態でもおいしく飲用できるものになることが見出せた。」 イ 甲第A1号証に記載された発明 甲第A1号証に記載された事項を、特に請求項1~3及び実施例1、3~7に関して整理すると、甲第A1号証には次の発明(以下、順に「甲A1発明」「甲A1製法発明」「甲A1方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A1発明> 「下記実施例1、3~7のいずれかであるほうじ茶飲料。 [図:0001418219000002.jpg] 」 <甲A1製法発明> 「甲A1発明の製造方法。」 <甲A1方法発明> 「甲A1発明の香味改善方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A1発明を対比する。 甲A1発明における「没食子酸含量(ppm)」は、24.3~78.8であるから、本件特許発明1における「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下」との特定事項を満たす。 甲A1発明における「茶葉由来可溶性固形分(%)」は、0.20~0.29であるから、本件特許発明1における「ブリックスが0.20以上」との特定事項を満たす。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下であり、ブリックスが0.20以上であるほうじ茶飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点A1-1> 本件特許発明1は、「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上」とあるのに対して、甲A1発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A1-1について検討する。 甲第A1号証には、甲A1発明におけるタンニン含量について何ら記載も示唆もされておらず、タンニン含量が不明であるから、甲A1発明におけるタンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比も不明である。したがって、上記相違点A1-1は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は、甲A1発明ではない。 また、甲第A1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲A1発明において、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比に着目し、その指数が0.30以上となるように、タンニン含量及びガレート型カテキン含量を調整する、すなわち、相違点A1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。 そして、本件特許発明は、本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることで、「苦味が抑えられ、かつ好ましい後切れを有するほうじ茶飲料が得られる。」という効果を得るものである(【0011】)。 この点について、特許異議申立人A及びBは、それぞれ、令和5年7月26日提出の意見書及び令和5年7月29日提出の意見書において、カテキン量からタンニン含量を推定するための新たな計算手法を主張しているが、これらの計算手法は、それぞれ緑茶や茶芽におけるものであり、ほうじ茶飲料の発明である甲A1発明に適用できるものではない。なお、特許異議申立人Aは、「緑茶」には、「煎茶、まっ茶、てん茶、かまいり茶、番茶、ほうじ茶」も含まれることが技術常識であるとの主張をするが、甲第7A号証のタンニン含量の推定計算手法についてまで、上記全ての茶に適用できるとの記載はなく、また、技術常識であるとも認められない。(実際に、甲第B1-1号証、甲第B1-2号証及び甲第B1-5号証のほうじ茶を用いた試験検査結果におけるタンニン含量の酒石酸鉄法による実測値と、これらの試験検査結果におけるカテキン総量に基づいて甲第7A号証の計算手法で算出した推定タンニン含量とを比較すると、63~100ppm程度の差があるから、甲第7A号証がほうじ茶にも適用できるものとは認められない。) また、特許異議申立人Bは、甲A1発明の苦渋味を低減するために甲第B8号証及び甲第B9号証に記載された技術事項を適用して、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上することは容易であると主張している。しかしながら、甲A1発明は、甲第A1号証の【0018】にも記載されているとおり、既に「苦渋味や雑味等の少ないあっさりした飲料」であるから、さらなる苦渋味を低減するために甲第B8号証及び甲第B9号証に記載された技術事項を適用する動機付けがあるとは認められない。 してみると、甲A1発明において、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上とする記載または動機付けがあるとは言えないから、上記特許異議申立人A及びBの主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A1発明ではないし、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明2、3について 本件特許発明2、3は請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものである。 したがって、本件特許発明2、3は甲A1発明ではないし、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4と甲A1製法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、本件特許発明4は甲A1製法発明ではないし、甲A1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明5について ア 対比 本件特許発明5と甲A1方法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整することと、 ブリックスを0.20以上に調整することとを含む、方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点A1-2> 本件特許発明5は、「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整する」とあるのに対して、甲A1方法発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点A1-3> 本件特許発明5は、「ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる」とあるのに対して、甲A1方法発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、相違点A1-2について検討する。 相違点A1-2は、相違点A1-1と同旨であるから、上記(2)と同様に判断される。 したがって、本件特許発明5は、他の相違点を検討するまでもなく、甲A1方法発明ではないし、甲A1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明5は甲A1方法発明ではないし、甲A1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)取消理由1、申立理由A-1及び申立理由C-1についてのむすび したがって、本件特許発明1~5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 2 取消理由2及び申立理由A-2(甲第A4号証に基づく進歩性・進歩性)について (1)甲第A4号証に記載された事項等 ア 甲第A4号証に記載された事項 甲第A4号証には、「容器詰ほうじ茶飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求項1] 単糖と二糖とを合わせた糖類の濃度が60ppm~220ppmであり、単糖の濃度に対する二糖の濃度の比率(二糖/単糖)が5.0~15.0であり、没食子酸の濃度に対する前記糖類の濃度の比率(糖類/没食子酸)が2.0~5.0である容器詰ほうじ茶飲料。 [請求項2] 茶葉由来可溶性固形分の濃度に対する電子局在カテキンの濃度の比率(電子局在カテキン/(茶葉由来可溶性固形分×100))が5.0~9.0である請求項1に記載の容器詰ほうじ茶飲料。 [請求項3] 前記糖類の濃度に対する電子局在カテキンの濃度の比率(電子局在カテキン/糖類)が0.8~1.8である請求項1又は2に記載の容器詰ほうじ茶飲料。 [請求項4] ほうじ茶飲料中の単糖と二糖とを合わせた糖類の濃度が60ppm~220ppmに調整し、単糖の濃度に対する二糖の濃度の比率(二糖/単糖)を5.0~15.0に調整し、且つ、没食子酸の濃度に対する前記糖類の濃度の比率(糖類/没食子酸)を2.0~5.0に調整することを特徴とする容器詰ほうじ茶飲料の製造方法。 [請求項5] ほうじ茶飲料中の単糖と二糖とを合わせた糖類の濃度が60ppm~220ppmに調整し、単糖の濃度に対する二糖の濃度の比率(二糖/単糖)を5.0~15.0に調整し、且つ、没食子酸の濃度に対する前記糖類の濃度の比率(糖類/没食子酸)を2.0~5.0に調整することを特徴とする、容器詰ほうじ茶飲料の香味改善方法。」 ・「発明が解決しようとする課題 [0006] ほうじ茶飲料、特に容器詰ほうじ茶飲料が普及するにつれて、消費者の嗜好も、飲用されるシチュエーションも多様化して来ており、特有の味と香りを備えた個性ある容器詰ほうじ茶飲料が求められている。 [0007] ほうじ茶飲料の焙煎香を強くするためには、茶葉の焙煎を強くすればよいが、このようにすると、苦味、雑味、嫌味等が発生し、すっきり感が抑えられてしまう。特に、ほうじ茶飲料は、冷めた状態では、ほうじ茶特有の香りが感じられにくいことがあった。 本発明は、このような課題を解決して、焙煎香が強く、あっさりしていて、しかもすっきりとした後味を備えており、冷めた状態でもおいしく飲用できる、新たな容器詰ほうじ茶飲料を提供せんとするものである。」 ・「課題を解決するための手段 [0008] 本発明の容器詰ほうじ茶飲料は、単糖と二糖とを合わせた糖類の濃度が60ppm~220ppmであり、単糖の濃度に対する二糖の濃度の比率(二糖/単糖)が5.0~15.0であり、没食子酸の濃度に対する前記糖類の濃度の比率(糖類/没食子酸)が2.0~5.0であることを特徴とする。 [0009] 本発明の容器詰ほうじ茶飲料は、単糖と二糖とを合わせた糖類濃度、二糖と単糖との濃度比や糖類と没食子酸との濃度比を調整することにより、焙煎香が強く、あっさりしていて、しかもすっきりとした後味を備えており、冷めた状態でもおいしく飲用できる、新たな容器詰ほうじ茶飲料を得ることができた。」 ・「[0016] 単糖と二糖とを合わせた糖類の濃度(以下、糖類濃度という。)が60ppm~220ppmであることにより、常温で長期間保存した状態や冷めた状態で飲用しても、味と香りのバランスが保たれ、甘味やコクを有し、後味に苦渋味や雑味等の少ないものになる。」 ・「[0045](配合) 各抽出液A~Eを、以下の表2に示す割合で配合し、アスコルビン酸を400ppm添加した後、重曹を添加してpH6.2に調整し、イオン交換水を加えて全量を1000mlに調整し、この液を耐熱性の透明容器(ビン)に充填して蓋をし、30秒間転倒殺菌し、レトルト殺菌F0値9以上(121℃、9分)を行い、直ちに20℃まで冷却し、実施例1~4及び比較例1~4のほうじ茶飲料を作製した。」 ・「[表3] [図:0001418219000003.jpg] 」 ・「[0055](総合評価) 上記3つの評価試験の平均点を算出し、平均点が3.5以上を「◎」、3以上3.5未満を「○」、2以上3未満を「△」、1以上2未満を「×」として総合評価した。 実施例1~4は、いずれも総合評価「○」以上の評価であり好適な結果が得られた。 一方、比較例1,4は「△」、比較例2,3は「×」の評価であり、好ましくない結果であった。 [0056] 比較例2の結果から、二糖/単糖の値が低くなると、苦味やエグ味が生じ、さらには、経時的に劣化して俗にいわれる、油臭と呼ばれる不快臭を感じるようになり、比較例1,4の結果から、二糖/単糖の値が高くなると、焙煎香が弱く、口の中で広がらないことが確認された。 また、比較例2の結果から、糖類/没食子酸の値が低くなると、香りが広がらなくなり、比較例1,3の結果から、糖類/没食子酸の値が高くなると、焙煎香が弱く、口の中で広がらないことが確認された。 これら結果から、単糖の濃度に対する二糖の濃度の比率(二糖/単糖)は5.0~15の範囲、且つ、没食子酸濃度に対する糖類濃度の比率(糖類/没食子酸)は2.0~5.0の範囲が、焙煎香の強さ、焙煎香の広がり、劣化臭の評価が良好になる範囲であると想定され、これらがこの範囲にあるほうじ茶飲料は、焙煎香が強く、あっさりしていて、しかもすっきりとした後味を備えており、冷めた状態でもおいしく飲用できるものになることが見出せた。」 イ 甲第A4号証に記載された発明 甲第A4号証に記載された事項を、特に請求項1、4、5及び実施例1~4に関して整理すると、甲第A4号証には次の発明(以下、順に「甲A4発明」「甲A4製法発明」「甲A4方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A4発明> 「下記実施例1~4のいずれかであるほうじ茶飲料。 [図:0001418219000004.jpg] 」 <甲A4製法発明> 「甲A4発明の製造方法。」 <甲A4方法発明> 「甲A4発明の香味改善方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A4発明を対比する。 甲A4発明における「没食子酸」の濃度は、計算すると36.4~58.1ppmであるから、本件特許発明1における「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下」との特定事項を満たす。 甲A4発明における「Brix(%)」は、0.31~0.37であるから、本件特許発明1における「ブリックスが0.20以上」との特定事項を満たす。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下であり、ブリックスが0.20以上であるほうじ茶飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点A4-1> 本件特許発明1は、「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上」とあるのに対して、甲A4発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A4-1について検討する。 甲第A4号証には、甲A4発明におけるタンニン含量について何ら記載も示唆もされておらず、タンニン含量が不明であるから、甲A4発明におけるタンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比も不明である。したがって、上記相違点A1-1は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は、甲A4発明ではない。 また、甲第A4号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲A4発明において、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比に着目し、その指数が0.30以上となるように、タンニン含量及びガレート型カテキン含量を調整する、すなわち、相違点A4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。 そして、本件特許発明は、本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることで、「苦味が抑えられ、かつ好ましい後切れを有するほうじ茶飲料が得られる。」という効果を得るものである(【0011】)。 この点について、特許異議申立人Bは、甲A4発明の苦渋味を低減するために甲第B8号証及び甲第B9号証に記載された技術事項を適用して、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上することは容易であると主張している。しかしながら、甲A4発明は、甲第A4号証の[0016]にも記載されているとおり、既に「後味に苦渋味や雑味等の少ないもの」であるから、さらなる苦渋味を低減するために甲第B8号証及び甲第B9号証に記載された技術事項を適用する動機付けがあるとは認められない。 してみると、甲A4発明において、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上とする動機付けがあるとは言えないから、上記特許異議申立人Bの主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A4発明ではないし、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。 (3)本件特許発明2、3について 本件特許発明2、3は請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものである。 したがって、本件特許発明2、3は甲A4発明ではないし、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4と甲A4製法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、本件特許発明4は甲A4製法発明ではないし、甲A4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明5について ア 対比 本件特許発明5と甲A4方法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整することと、 ブリックスを0.20以上に調整することとを含む、方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点A4-2> 本件特許発明5は、「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整する」とあるのに対して、甲A4方法発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点A4-3> 本件特許発明5は、「ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる」とあるのに対して、甲A4方法発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、相違点A4-2について検討する。 相違点A4-2は、相違点A4-1と同旨であるから、上記(2)と同様に判断される。 したがって、本件特許発明5は、他の相違点を検討するまでもなく、甲A4方法発明ではないし、甲A4方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明5は甲A4方法発明ではないし、甲A4方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)取消理由2及び申立理由A-2についてのむすび したがって、本件特許発明1~5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 3 取消理由3及び申立理由B-1(甲第B1号証に基づく進歩性・進歩性)について (1)甲第B1号証及び甲第B1-2号証に記載された事項等 ア 甲第B1号証に記載された事項 甲第B1号証には、「お茶のあずま園「特上加賀棒ほうじ茶」200g×1袋」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001418219000005.jpg] 」 ・「 [図:0001418219000006.jpg] 」 イ 甲第B1-2号証に記載された事項 甲第B1-2号証には、甲第B1号証の「ほうじ茶」について、甲第1-4号証に記載の抽出条件に基づき、茶葉15g、熱湯を650ml、30秒の浸出の条件で実施したところ、その成分は、非ガレート型カテキン合計量が173.5ppm、タンニン量が410ppm、没食子酸量が4.0ppm、Brixが0.3、カフェイン量が130ppmであったことが記載されている。 ウ 甲第B1号証及び甲第B1-2号証から把握される発明 甲第B1号証及び甲第B1-2号証に記載された事項を整理すると、甲第B1号証及び甲第B1-2号証から把握される発明は次のとおりである(以下、順に「甲B1発明」「甲B1製法発明」「甲B1方法発明」という。)。 <甲B1発明> 「非ガレート型カテキン合計量が173.5ppm、タンニン量が410ppm、没食子酸量が4.0ppm、Brixが0.3、カフェイン量が130ppmであるほうじ茶飲料。」 <甲B1製法発明> 「甲B1発明の製造方法。」 <甲B1方法発明> 「甲B1発明の方法。」 (2)本件特許発明1について ア 甲B1発明の公然実施について 甲第B1号証より、甲B1発明の「ほうじ茶飲料」は、Amazon.co.jpにおいて、2012年4月4日より取り扱われていたことが示されている。 してみれば、甲B1発明の「ほうじ茶飲料」は、本件特許の出願日である平成31年(2019年)3月1日よりも前において既に販売されていたものであるといえるから、本件特許出願前において公然実施されていたものであるといえる。 イ 対比・判断 本件特許発明1と甲B1発明を対比する。 甲B1発明における「ほうじ茶飲料」は、タンニン量に対する非ガレート型カテキン合計量の比を計算すると約0.42であるから、本件特許発明1における「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上」との特定事項を満たす。 甲B1発明における「ほうじ茶飲料」は、「Brixが0.3」であるから、本件特許発明1における「ブリックスが0.20以上」との特定事項を満たす。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上であり、ブリックスが0.20以上であるほうじ茶飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点B1-1> 本件特許発明1は、「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下」とあるのに対して、甲B1発明は、没食子酸含量が4.0ppmである点。 イ 判断 相違点B1-1について検討する。 甲B1発明における没食子酸量は4.0ppmであるから、上記相違点B1-1は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は、甲B1発明ではない。 なお、甲第B1号証の「ほうじ茶」について、甲第B1-3号証に記載の抽出条件に基づき、茶葉15g、沸騰水を650ml、30秒の浸出の条件で実施した発明(甲第B1-1号証を参照)及び茶葉15g、常温水650ml、3時間の浸出の条件で実施した発明(甲第B1-5号証を参照)も、没食子酸含量が10ppm以下であり、上記相違点B1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものではない。 また、甲第B1号証の及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B1発明において、没食子酸含量を調整する、すなわち、相違点B1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。 そして、本件特許発明は、本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることで、「苦味が抑えられ、かつ好ましい後切れを有するほうじ茶飲料が得られる。」という効果を得るものである(【0011】)。 この点について、特許異議申立人Bは、甲B1発明の苦渋味を低減するために甲第B8号証及び甲第B9号証に記載された技術事項を適用して、没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下にすることは容易であると主張しているが、茶葉製品である甲B1発明に対して、甲第B8号証及び甲第B9号証に記載された技術事項を適用する動機付けがあるとは認められない。 してみると、甲B1発明において、没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下とする動機付けがあるとは言えないから、上記特許異議申立人Bの主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲B1発明ではないし、甲B1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。 (3)本件特許発明2、3について 本件特許発明2、3は請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものである。 したがって、本件特許発明2、3は甲B1発明ではないし、甲B1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4と甲B1製法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、本件特許発明4は甲B1製法発明ではないし、甲B1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明5について ア 対比 本件特許発明5と甲B1方法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整することと、 ブリックスを0.20以上に調整することとを含む、方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点B1-2> 本件特許発明5は、「没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整する」とあるのに対して、甲B1方法発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点B1-3> 本件特許発明5は、「ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる」とあるのに対して、甲B1方法発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、相違点B1-2について検討する。 相違点B1-2は、相違点B1-1と同旨であるから、上記(2)と同様に判断される。 したがって、本件特許発明5は、他の相違点を検討するまでもなく、甲B1方法発明ではないし、甲B1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明5は甲B1方法発明ではないし、甲B1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)取消理由3及び申立理由B-1についてのむすび したがって、本件特許発明1~5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 4 申立理由B-2(甲第B2号証に基づく進歩性)について (1)甲第B2号証に記載された事項等 ア 甲第B2号証に記載された事項 甲第B2号証には、「各種緑茶の総合的理化学分析」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「1 まえがき 製茶の種類によって成分に相違があることは,よく知られており,茶業関係者にとって大変興味ある問題であるが,各種製茶を同時に分析比較した報告は少ない。現在,しばしば引用される代表的な分析データは50年以上前のもので,茶の品質にとって重要な成分であるアミノ酸,遊離還元糖などの分析値がなく,また,各茶種ごとに一点の分析値を示しただけである。 そこで,ここでは,玉露,3点,煎茶,6点,番茶,3点,かまいり茶,3点,ほうじ茶,3点,計18点の市販茶を試料として使用し,総合的な理化学的測定と官能検査を行ったので報告する。 2 実験方法 2.1実験材料 表1に示すように,昭和50年産の玉露(上,中,下)3点,煎茶(上,中,下)各2点ずつ6点,番茶3点,かまいり茶(上,中,下)3点,ほうじ茶(上,中,下)3点を昭和51年4月に静岡県と長崎県の茶商より購入し使用した。」(第85頁左欄) ・「 [図:0001418219000007.jpg] 」(第85頁右欄) ・「 [図:0001418219000008.jpg] 」(第87頁上欄) ・「 [図:0001418219000009.jpg] 」(第88頁下欄) イ 甲第B2号証に記載された発明 甲第B2号証に記載された事項を、特に試料番号18の「ほうじ茶 下」に関して整理すると、甲第B2号証には次の発明(以下、順に「甲B2発明」「甲B2製法発明」「甲B2方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B2発明> 「カフェイン1.85%、タンニン8.46%含有し、(-)-エピカテキン0.32%、(-)-エピガロカテキン1.01%、(±)-ガロカテキン1.46%、(±)-カテキン0.01%、茶葉カテキン合計値8.42%含有する、ほうじ茶。」 <甲B2製法発明> 「甲B2発明の製造方法。」 <甲B2方法発明> 「甲B2発明の方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B2発明を対比する。 甲B2発明における「非ガレート型カテキン」の含有量は、計算すると2.80%(=0.32%+1.01%+1.46%+0.01%)であるから、甲B2発明におけるタンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比は、2.80%/8.46%=約0.33であり、本件特許発明1における「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上」との特定事項を満たす。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上である、ほうじ茶飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点B2-1> 本件特許発明1は、「没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下」とあるのに対して、甲B2発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点B2-2> 本件特許発明1は、「ブリックスが0.20以上」とあるのに対して、甲B2発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、相違点B2-2について検討する。 甲第B2号証には、甲B2発明におけるブリックスについては何ら記載されておらず、ブリックスを0.20以上に調整する示唆も動機付けもない。 そして、甲第B3号証を見ても、甲B2発明におけるほうじ茶と、甲第B3号証におけるほうじ茶とが、同一の茶葉から同一浸出条件で抽出されたものであるかは不明であるから、甲第B3号証におけるブリックス値は甲B2発明に対して採用できるものではない。 また、本件特許発明は、本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることで、「苦味が抑えられ、かつ好ましい後切れを有するほうじ茶飲料が得られる。」という効果を得るものである(【0011】)。 。 したがって、本件特許発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲B2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲B2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。 (3)本件特許発明2、3について 本件特許発明2、3は請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものである。 したがって、本件特許発明2、3は、甲B2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4と甲B2製法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、本件特許発明4は、甲B2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明5について ア 対比 本件特許発明5と甲B2方法発明を対比すると、上記(2)と同様のことがいえるから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整することを含む、方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点B2-3> 本件特許発明5は、「没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整する」とあるのに対して、甲B2方法発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点B2-4> 本件特許発明5は、「ブリックスを0.20以上に調整する」とあるのに対して、甲B2方法発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点B2-5> 本件特許発明5は、「ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる」とあるのに対して、甲B2方法発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、相違点B2-4について検討する。 相違点B2-4は、相違点B2-2と同旨であるから、上記(2)と同様に判断される。 したがって、本件特許発明5は、他の相違点を検討するまでもなく、甲B2方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明5は、甲B2方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)申立理由B-2についてのむすび したがって、本件特許発明1~5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 5 申立理由A-3(実施可能要件)についての判断 (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1~3は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 また、本件特許発明4は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 本件特許発明5は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)実施可能要件の判断 本件特許の明細書の詳細な説明には、「ほうじ茶飲料、ほうじ茶飲料の製造方法、及び、ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる方法に関する」(【0001】)ものであって、「本発明に係るほうじ茶飲料は、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上であり、没食子酸含量が110ppm以下であり、ブリックスが0.20以上である。本発明に係るほうじ茶飲料は、当該組成を有することにより、苦味及び酸味が抑制され、後切れが良好であり、ほうじ茶飲料としての十分な味わいを有することができる」(【0013】)ことを特徴とするものが記載されている。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0015】にはほうじ茶のタンニン含量の測定法が、【0017】にはほうじ茶飲料のタンニンに対する非がレード型カテキンの質量比の調整法が、【0018】にはほうじ茶飲料の没食子酸含量の調整法が、【0019】にはほうじ茶飲料のブリックスの調整法が、【0030】にはほうじ茶飲料の苦みを抑え、かつ後切れを向上させる方法が、【0031】にはほうじ茶飲料の製造方法が記載されており、本件特許発明1~5の各発明特定事項について、どのように調整すれば良いかが具体的に記載されている。 また、発明の詳細な説明の【0032】~【0048】には、具体的な実施例が記載されており、表1のサンプル1~4の評価結果より、タンニンに対する非ガレートカテキンの質量比が大きいほど旨味、コクがあり、すっきりとした味わいとなることが示されており、その物を生産し、使用することができることが示されており、また、その物を生産する方法により生産した物の使用をすること、その方法を使用することができることが記載されている。 したがって、発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1~3を生産及び使用し、本件特許発明4により生産した物の使用をし、また、本件特許発明5の方法を使用することができる程度の記載があるといえ、本件特許発明1~5に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人Aの上記第4 1(3)の主張について検討する。 特許異議申立人Aは、発明の詳細な説明において、タンニンに対する非ガレートカテキンの質量比として、実施例に具体的に記載されている0.31~0.37以外の範囲については、実施可能な程度に開示されているとはいえないと主張している。 しかしながら、タンニンに対する非ガレートカテキンの質量比を調整する方法については、上記(2)のとおり、【0017】、【0030】等に記載されており、ほうじ茶飲料のタンニンに対する非がレード型カテキンの質量比を調整した具体的な実施例も記載されている。 また、実施例に示されたタンニンに対する非ガレートカテキンの質量比が0.31~0.37の範囲以外では、本件特許発明1~5を実施することができないといった当業者の技術常識はないし、そのことを示す具体的な証拠がある訳でもない。 したがって、本件特許発明1~5におけるタンニンに対する非ガレートカテキンの質量比の範囲として、実施例に記載されている以外の数値範囲が含まれているとしても、当業者が実施することができない態様が含まれているとはいえない。 よって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。 (4)申立理由A-3についてのむすび したがって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 6 申立理由A-4及び申立理由C-2(サポート要件)についての判断 判断の便宜上、サポート要件に関する申立理由A-4及び申立理由C-2については、まとめて申立理由を整理した。 (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)サポート要件の判断 発明の詳細な説明の【0005】によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「苦味が抑えられ、かつ後切れが良好なほうじ茶飲料を得ること」である。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0006】~【0010】には特許請求の範囲に対応する記載があり、【0014】にはほうじ茶飲料について、【0015】~【0017】にはタンニンの総量に対する非ガレートカテキンの質量比を0.30以上とすることでほうじ茶の苦味を抑制できることについて、【0018】には没食子酸含量を110ppm以下とすることで、酸味を抑制し飲料の後切れを良好にすることができることについて、【0019】~【0021】にはブリックスを0.20以上とすることでほうじ茶としての味わいを十分に保つことについて、【0022】~【0023】にはカフェイン含量を90ppm以上とすることでほうじ茶飲料の味わいにより厚みを持たせることができることと、カフェイン含量を150ppm以下とすることでほうじ茶飲料の苦味をより抑制し、後味をより良好にできることについて、【0030】にはほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる方法について、【0031】にはほうじ茶飲料の製造方法について記載されている。 また、【0032】~【0048】の実施例では、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上であり、没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下であり、ブリックスが0.20以上である、サンプル2~11におけるほうじ茶飲料の苦味及び後切れの評価結果が合格であることが示されている。 そうすると、当業者は、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上であり、没食子酸含量が10ppm以上110ppm以下であり、ブリックスが0.20以上であるほうじ茶飲料とすることで、本件発明の課題を解決することができると認識でき、また、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整することと、没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整することと、ブリックスを0.20以上に顆整することとを含む、ほうじ茶飲料の製造方法とすることにより、本件発明の課題を解決することができると認識でき、さらに、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比を0.30以上に調整することと、没食子酸含量を10ppm以上110ppm以下に調整することと、ブリックスを0.20以上に調整することとを含む、ほうじ茶飲料の苦味を抑え、かつ後切れを向上させる方法とすることで、本件発明の課題を解決することができると認識できる。 そして、本件特許発明1~5は、上記発明の課題を解決することができる特定事項を全て含み、これをさらに限定するものであるから、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件特許発明1~5はいずれも、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。 (4)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人Aは、上記第4 1(4)のように、タンニンに対する非ガレートカテキンの質量比について、実施例に具体的に記載されている0.31~0.37の範囲を超えて、特許請求の範囲に記載された数値範囲にまで広げることはできないことを主張する。 しかしながら、本件特許発明が発明の課題を解決できると認識できることは、上記(3)の検討のとおりであり、当業者であれば、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載から、発明の課題を解決できることを認識することができるといえる。また、当該主張は、具体的に発明の課題を解決し得ないとする具体的な証拠を提示するものでもない。したがって、特許異議申立人Aの上記第4 1(4)における主張は採用できない。 また、特許異議申立人Cは、上記第4 3(2)のように、ア 後切れに影響を及ぼすカフェイン含量を規定していない本件特許発明1は効果を奏しないこと、イ ほうじ茶飲料の苦味や後切れを呈する成分である多くの香気寄与成分の含量が特定されていないことから、本件特許発明は発明の課題を解決し得ないものを含んでいると主張する。 しかしながら、上記アについては、実施例を参照すれば、タンニンに対する非ガレート型カテキンの質量比が0.30以上、没食子酸含量が110ppm以下、ブリックスが0.20以上であるほうじ茶とすることで、これらの数値範囲外の成分含量からなるサンプル1及び12のほうじ茶よりも、少なくとも苦味及び後切れが向上することが確認でき、本件特許発明が発明の課題を解決できると認識できる。また、上記イについても、具体的に発明の課題を解決し得ないとする具体的な証拠を提示するものでもない。したがって、特許異議申立人Cの上記第4 3(2)の主張はいずれも採用できない。 (5)申立理由A-4及び申立理由C-2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701100

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