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特許異議申立

2022-700484

含フッ素エーテル組成物およびその製造方法

審判番号
2022-700484
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-509261外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6977767
請求日
2022年06月06日
審決日
2023年12月21日
公報発行日
2024年03月29日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6977767号発明「含フッ素エーテル組成物およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6977767号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~11〕について訂正することを認める。
特許第6977767号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 20項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6977767号についての出願(特願2019-509261号)は、平成30年3月15日(優先権主張 平成29年3月27日)を国際出願日とし、令和3年11月15日にその特許権の設定登録(請求項数11)がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行され、その後、特許異議申立人(以下「申立人」という。)より、請求項1~11に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。

以後の主な手続の経緯は、次のとおりである。

令和4年 6月 6日 特許異議申立書の提出

同年 8月29日付け 取消理由通知書

同年10月28日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)

同年12月14日 意見書の提出(申立人)

令和5年 3月16日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年 5月22日 意見書の提出(特許権者)

同年 6月 5日 上申書の提出(特許権者)

同年 6月29日 応対記録

同年 6月29日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年 9月 1日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)

同年10月23日 意見書の提出(申立人)

なお、令和4年10月28日提出の訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

令和5年9月1日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、一群の請求項である、請求項1~8及び請求項9~11について訂正するものであって、次の訂正事項からなるものである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。

(1)一群の請求項1~8に係る訂正

ア 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1における「化合物(A)と、遷移金属化合物」と記載されているのを、「化合物(A)と、遷移金属化合物(但し、ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物を除く)」と訂正する(請求項1の記載を直接的に引用する請求項2~8も同様の訂正を行う)。

イ 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項1における「下式(A1)で表される化合物であり、」の後に、行を変えて、「前記遷移金属化合物が、(i)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(ii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物であり、」との記載を追加する訂正を行う(請求項1の記載を直接的に引用する請求項2~8も同様の訂正を行う。)。

(2)一群の請求項9~11に係る訂正

ア 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項9における「下式(AX1)で表される化合物であり、」の後に、行を変えて、「前記遷移金属化合物が、(i)ヒドロシリル化反応、(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物であり、」との記載を追加する訂正を行う(請求項9の記載を直接的に引用する請求項11も同様の訂正を行う)。

イ 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項10における「下式(AX1)で表される化合物であり、」の後に、行を変えて、「前記遷移金属化合物が、(i)ヒドロシリル化反応、(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物であり、」との記載を追加する訂正を行う(請求項10の記載を直接的に引用する請求項11も同様の訂正を行う。)。

ウ 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項10に「前記化合物(AH)に対する遷移金属化合物の質量割合が…となるように、反応生成物に遷移金属化合物を添加する」と記載されているのを、「前記化合物(AH)に対する遷移金属化合物の質量割合が…となるように、反応生成物に前記遷移金属化合物を添加する」と訂正する(請求項10の記載を直接的に引用する請求項11も同様の訂正を行う。)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)一群の請求項1~8に係る訂正

ア 訂正事項1について

訂正事項1は、訂正前の請求項1における「遷移金属化合物」から、甲第1号証(特開2016-20407号公報)の請求項1に記載された「ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物」を除くことにより、「遷移金属化合物」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものではない。

イ 訂正事項2について

訂正事項2は、訂正前の請求項1における「遷移金属化合物」について、本件明細書の【0074】及び【0203】などの記載に基づいて、「(i)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(ii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものではない。

(2)一群の請求項9~11に係る訂正

ア 訂正事項3について

訂正事項3は、訂正前の請求項9における「遷移金属化合物」について、本件明細書の【0074】及び【0203】などの記載に基づいて、「(i)ヒドロシリル化反応、(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものではない。

イ 訂正事項4について

訂正事項4は、訂正前の請求項10における「遷移金属化合物」について、本件明細書の【0074】及び【0203】などの記載に基づいて、「(i)ヒドロシリル化反応、(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものではない。

ウ 訂正事項5について

訂正事項5は、訂正前の請求項10における「遷移金属化合物」は、前出の遷移金属化合物と同じものであることを示すために、「前記遷移金属化合物」としたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものではない。

なお、特許異議の申立てがされた請求項1~11については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は課されない。

4 まとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる要件を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~11〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

本件訂正は、上記第2のとおり認められるので、請求項1~11に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および下式(I)で表される基を有する化合物(A)と、遷移金属化合物(但し、ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物を除く)とを含む含フッ素エーテル組成物であって、
前記化合物(A)が、下式(A1)で表される化合物であり、
前記遷移金属化合物が、(i)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(ii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物であり、
続きを表示(全84行)
前記化合物(A)に対する前記遷移金属化合物の質量割合が遷移金属換算で300~4,000ppmであることを特徴とする含フッ素エーテル組成物。
-SiRnL3-n・・・(I)
ただし、Lは水酸基または加水分解性基であり、
Rは水素原子または1価の炭化水素基であり、
nは0~2の整数であり、
nが0または1のとき(3-n)個のLは、同一であっても異なっていてもよく、
nが2のときn個のRは、同一であっても異なっていてもよい。
[Rf1-O-Q-Rfe-]aZ1[-SiRnL3-n]b・・・(A1)
ただし、L、Rおよびnはそれぞれ前記と同義であり、
Rf1は、ペルフルオロアルキル基であり、
Qは、単結合、1個以上の水素原子を含むオキシフルオロアルキレン基、または該オキシフルオロアルキレン基の2~5個が結合してなるポリオキシフルオロアルキレン基であり、該基を構成するオキシフルオロアルキレン基は全てが同一であっても異なっていてもよく、
Rfeは、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であり、
Z1は、(a+b)価の連結基であり、
aは、1以上の整数であり、
bは、2~5の整数であり、
aが2以上のときa個の[Rf1-O-Q-Rfe-]は、同一であっても異なっていてもよく、
b個の[-SiRnL3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が、{(CF2O)m11(CF2CF2O)m12}、{(CF2O)m11(CF2CF2CF2O)m12}、{(CF2O)m11(CF2CF2CF2CF2O)m12}または(CF2CF2O-CF2CF2CF2CF2O)m15である(ただし、m11は1以上の整数であり、m12は1以上の整数であって(m11+m12)は2~200の整数であり、m15は1~100の整数である。)、請求項1に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項3】
前記aが1~3の整数であって、aが2または3の場合a個の[Rf1-O-Q-Rfe-]は同一であり、b個の[-SiRnL3-n]は、同一である、請求項1または2に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項4】
前記化合物(A)の数平均分子量(Mn)が、2,000~20,000である、請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項5】
前記遷移金属化合物が、ヒドロシリル化反応の触媒として作用する遷移金属化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項6】
前記遷移金属化合物が白金化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物と、液状媒体とを含むことを特徴とするコーティング液。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を有することを特徴とする物品。
【請求項9】
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および下式(IX)で表される基を有する化合物(AH)と、遷移金属化合物とを含み、前記化合物(AH)に対する前記遷移金属化合物の質量割合が遷移金属換算で300~4,000ppmである含フッ素エーテル組成物を製造する方法であって、
前記化合物(AH)が、下式(AX1)で表される化合物であり、
前記遷移金属化合物が、(i)ヒドロシリル化反応、(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物であり、
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および下式(III)で表される基を有する化合物(B)と、下式(S)で表される化合物とを、前記化合物(B)に対する前記遷移金属化合物の質量割合が遷移金属換算で300~4,000ppmである量の前記遷移金属化合物の存在下に反応を行って、前記化合物(AH)を生成させることを特徴とする含フッ素エーテル組成物の製造方法。
-CH=CH2 ・・・(III)
HSiRnL3-n ・・・(S)
-CH2CH2-SiRnL3-n ・・・(IX)
ただし、Lは水酸基または加水分解性基であり、
Rは水素原子または1価の炭化水素基であり、
nは0~2の整数であり、
nが0または1のとき(3-n)個のLは、同一であっても異なっていてもよく、
nが2のときn個のRは、同一であっても異なっていてもよい。
[Rf1-O-Q-Rfe-]aZ1X[-SiRnL3-n]b・・・(AX1)
ただし、L、Rおよびnはそれぞれ前記と同義であり、
Rf1は、ペルフルオロアルキル基であり、
Qは、単結合、1個以上の水素原子を含むオキシフルオロアルキレン基、または該オキシフルオロアルキレン基の2~5個が結合してなるポリオキシフルオロアルキレン基であり、該基を構成するオキシフルオロアルキレン基は全てが同一であっても異なっていてもよく、
Rfeは、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であり、
Z1Xは、(a+b)価の連結基であり、-SiRnL3-nとの結合末端に-CH2CH2-を有し、
aは、1以上の整数であり、
bは、2~5の整数であり、
aが2以上のときa個の[Rf1-O-Q-Rfe-]は、同一であっても異なっていてもよく、
b個の[-SiRnL3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【請求項10】
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および下式(IX)で表される基を有する化合物(AH)と、遷移金属化合物とを含み、前記化合物(AH)に対する前記遷移金属化合物の質量割合が遷移金属換算で300~4,000ppmである含フッ素エーテル組成物を製造する方法であって、
前記化合物(AH)が、下式(AX1)で表される化合物であり、
前記遷移金属化合物が、(i)ヒドロシリル化反応、(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物であり、
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および下式(III)で表される基を有する化合物(B)と、下式(S)で表される化合物とを、前記化合物(B)に対する前記遷移金属化合物の質量割合が遷移金属換算で1ppm以上300ppm未満である量の前記遷移金属化合物の存在下に反応を行って前記化合物(AH)を生成させ、
次いで、前記化合物(AH)に対する遷移金属化合物の質量割合が遷移金属換算で300~4,000ppmとなるように、反応生成物に前記遷移金属化合物を添加することを特徴とする含フッ素エーテル組成物の製造方法。
-CH=CH2 ・・・(III)
HSiRnL3-n ・・・(S)
-CH2CH2-SiRnL3-n ・・・(IX)
ただし、Lは水酸基または加水分解性基であり、
Rは水素原子または1価の炭化水素基であり、
nは0~2の整数であり、
nが0または1のとき(3-n)個のLは、同一であっても異なっていてもよく、
nが2のときn個のRは、同一であっても異なっていてもよい。
[Rf1-O-Q-Rfe-]aZ1X[-SiRnL3-n]b ・・・(AX1)
ただし、L、Rおよびnはそれぞれ前記と同義であり、
Rf1は、ペルフルオロアルキル基であり、
Qは、単結合、1個以上の水素原子を含むオキシフルオロアルキレン基、または該オキシフルオロアルキレン基の2~5個が結合してなるポリオキシフルオロアルキレン基であり、該基を構成するオキシフルオロアルキレン基は全てが同一であっても異なっていてもよく、
Rfeは、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であり、
Z1Xは、(a+b)価の連結基であり、-SiRnL3-nとの結合末端に-CH2CH2-を有し、
aは、1以上の整数であり、
bは、2~5の整数であり、
aが2以上のときa個の[Rf1-O-Q-Rfe-]は、同一であっても異なっていてもよく、
b個の[-SiRnL3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【請求項11】
前記遷移金属化合物が白金化合物である、請求項9または10に記載の含フッ素エーテル組成物の製造方法。」

第4 特許異議申立書に記載された申立理由、及び、令和5年6月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由

1 特許異議申立書に記載された申立理由

申立人は、特許異議申立書において、以下の申立理由を主張し、甲第1~8号証(以下「甲1」などという。)を提示している。

(1)申立理由1(新規性)

請求項1~4、7、8に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)

請求項1~4、7、8に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件)

請求項1~11に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

<甲号証>

・甲1:特開2016-20407号公報
・甲2:特開2017-31347号公報
・甲3:特表2013-510931号公報
・甲4:特開2007-196162号公報
・甲5:特開2017-39782号公報
・甲6:講演会資料「有機チタン・ジルコニウム化合物~特性と応用展開~」,マツモトファインケミカル株式会社 橋本隆治 平成21年2月20日URL:https://www.m-chem.co.jp/documents/.assets/2009_convertech.pdf
・甲7:技術文献「オルガノポリシロキサンの湿気硬化に及ぼす触媒の影響」,DNTコーティング技法,2003(10),p.6-12

URL:https://www.dnt.co.jp/technology/technique/pdf/giho3-06.pdf

書誌情報 URL:https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I6738771-00

・甲8:特開2021-17581号公報

甲1~甲3は、申立理由1及び2(新規性及び進歩性)に関して提出されたものであり、甲4~甲8は、申立理由3(サポート要件)に関して令和5年10月23日提出の意見書に添付して提出されたものである。

<乙号証>

・乙1:国際公開第2021/125062号
・乙2:国際公開第2021/125058号
・乙3:国際公開第2021/125059号
・乙4:国際公開第2021/125061号
・乙5:国際公開第2021/125060号
・乙6:国際公開第2020/148799号
・乙7:国際公開第2019/088129号
・乙8:国際公開第2019/088126号
・乙9:実験成績証明書,令和4年10月21日 AGC株式会社従業員 多田雅子氏作成
・乙10:Organometallics,2005,Vol.24,p.5802-5806
・乙11:Journal of Organometallic Chemistry,2011,Vol.696,p.368-372

乙1~乙11は、特許権者が提出した乙第1~11号証であり、乙1~乙9は令和4年10月28日提出の意見書に添付して、また、乙10及び乙11は、令和5年5月22日提出の意見書に添付して、提出されたものである。

2 令和5年6月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由

令和5年6月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。

請求項1~5、7~10に係る特許は、下記の点において、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

記

請求項1~5、7~10に係る発明において、「(i)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、(ii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応」、又は、それに加えて「(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応」の触媒として作用しない「遷移金属化合物」を用いた場合については、当該発明の課題を解決できるとはいえない。

第5 当審の判断

1 令和5年6月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について

この取消理由は、請求項1~11を対象とする申立理由3(サポート要件違反)と同旨であるから、上記取消理由の対象であった請求項1~5、7~10以外の、請求項6及び11についても検討する。

上記取消理由通知書(決定の予告)の後に提出された訂正請求書により、請求項1~11における「遷移金属化合物」が所定の触媒作用を有することが特定された。これにより、上記取消理由は解消したと判断する。以下、詳述する。

(1)サポート要件の判断手法及び本件発明の課題

特許請求の範囲の記載が、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを比較し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。

本件発明の課題は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0007】)からみて、基材の透明性を損なうことなく、耐久性に優れる表面層を形成できる含フッ素エーテル組成物及び含フッ素エーテル組成物の製造方法を提供することであると解される。

そこで、本件発明は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるかについて、以下、検討する。

(2)本件発明1について

ア 本件明細書の発明の詳細な説明においては、遷移金属化合物の質量割合が化合物(A)に対して遷移金属換算で4,000ppmを超えると、基材が着色することを見出し、また、化合物(A)に対して遷移金属換算で300ppm以上の遷移金属化合物を含むと、化合物(A)中の加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、及び、該シラノール基と基材の表面の水酸基(基材-OH)との脱水縮合反応が充分に進行し、その結果、基材の表面の水酸基とシラノール基との化学結合の数が増え、耐久性の向上に寄与すると考えられることが記載され(【0203】【0204】)、「(本組成物の組成) 本組成物において、化合物(A)に対する遷移金属化合物の質量割合は遷移金属換算で、300~4,000ppmである。遷移金属化合物の質量割合が前記範囲内であれば、基材の透明性を損なうことなく、表面層の耐久性を向上できる。化合物(A)に対する遷移金属化合物の質量割合は遷移金属換算で、400~2,000ppmが好ましく、500~1,000ppmが特に好ましい。」(【0079】)と記載されている。

また、遷移金属化合物が有する触媒活性については、「ヒドロシリル化反応、加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、該シラノール基と基材の表面の水酸基(基材-OH)との脱水縮合反応等において触媒として作用するものが挙げられる。」と記載されている(【0074】)。

遷移金属化合物の具体例として、ルテニウム(Ru)化合物などの第8~10族の遷移金属を含む化合物が挙げられ、加水分解反応及び脱水縮合反応に対し高い触媒作用を示す点から、白金化合物が特に好ましく、なかでも、白金/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び、白金/テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体が好ましいことが記載されている(【0074】~【0075】)。

イ 本件明細書の【実施例】においては、遷移金属化合物である「白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体」又は「塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体」の化合物(A)に対する質量割合を、5~5,000ppmとした含フッ素エーテル組成物を、化学強化ガラス基材に対しウェットコーティングを行って表面層を形成し、耐久性及び基材の着色を評価した結果が記載されている。

本件発明1に対応する「例4」「例5」は、それぞれ、化合物(A)に対して、上記白金化合物を500ppm、2,000ppm含む組成物であり、耐久性が3,000回、2,500回、外観評価が無色、淡黄色となり、「基材の透明性を損なうことなく、耐久性に優れる表面層を形成できる含フッ素エーテル組成物を提供する」という課題を解決できていることが示されている。

そして、「例1~例3」「例6~8」は、本件発明1の式(A1)におけるb=1である化合物(以下「化合物(A’)」という。)を用いている点で、b=2~5である化合物(A)を用いる本件発明1とは異なるものの、化合物(A’)に対する上記白金化合物の質量割合について、400ppm、1,000ppm、2,000ppmである「例1~例3」は耐久性と外観評価(着色)が優れるが、5,000ppm、100ppm、5ppmである「例6~8」は耐久性と外観評価(着色)のいずれかが劣ることが示されていることからすれば、「例4」「例5」は、化合物(A)に対する上記白金化合物の質量割合を、本件発明1の範囲外の300ppm未満又は4,000ppm超とした場合に比べて、基材の透明性を損なうことなく耐久性に優れる表面層を形成できるものと解するのが相当である。

ウ 上記ア及びイを踏まえると、所定の触媒作用を有する遷移金属化合物による透明性(着色)と耐久性とのバランスを考慮して、上記遷移金属化合の質量割合を、化合物(A)に対して300ppm~4,000ppmと設定していることが理解できる。

そうすると、本件発明1における所定の触媒作用を有する遷移金属化合物は、遷移金属の種類やその他の化学構造によって、実施例における白金化合物とは、着色の程度、及び、耐久性を向上させるための触媒活性の程度が異なることが想定されるものの、化合物(A)に対して300ppm~4,000ppmの範囲内の質量割合であれば、当該範囲外よりも、着色と耐久性の向上とのバランスに優れ、「基材の透明性を損なうことなく、耐久性に優れる表面層を形成できる含フッ素エーテル組成物を提供する」という課題を解決できることを、当業者であれば認識することができる。

エ したがって、本件発明1について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できることを認識することができる。

(3)本件発明2~8について

本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(2)に説示した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~8についても、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できることを認識することができる。

(4)本件発明9~11について

ア 本件発明9~11は、式(III)―CH=CH2を有する化合物(B)と、式(S)HSRnL3-nで表される化合物を反応させる、ヒドロシリル化反応を行う工程を含む、含フッ素エーテル組成物の製造方法の発明であり、これらの製造方法で製造される含フッ素エーテル組成物は、本件発明1に係る含フッ素エーテル組成物と同様に、化合物(AH)(本件発明1の化合物(A)に対応)に対する遷移金属化合物の質量割合が、遷移金属換算で300~4,000ppmであるものである。

本件発明9~11は、ヒドロシリル化工程を含むことから、遷移金属化合物が、本件発明1において特定された「(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応」に加えて、更に「(i)ヒドロシリル化反応」の触媒として作用することが特定されている。

イ 本件明細書の実施例の例1~例5においては、いずれも白金化合物を用いてヒドロシリル化反応を行っており、当該白金化合物は、「(i)ヒドロシリル化反応、(ii)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(iii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応」の触媒として作用するものと解される。

上記(2)の本件発明1についての説示を踏まえれば、本件発明9~11における所定の触媒作用を有する遷移金属化合物は、遷移金属の種類やその他の化学構造によって、実施例における白金化合物とは、着色の程度、及び、耐久性を向上させるための触媒活性の程度が異なることが想定されるものの、化合物(AH)に対して300ppm~4,000ppmの質量割合とすれば、当該範囲外よりも、着色と耐久性の向上とのバランスに優れ、「基材の透明性を損なうことなく、耐久性に優れる表面層を形成できる含フッ素エーテル組成物の製造方法の提供」という課題を解決できることを、当業者であれば認識することができる。

エ したがって、本件発明9~11について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できることを認識することができる。

(5)申立人の主張について

ア 申立人は、本件発明1~5、7~10で規定される遷移金属化合物に該当し得るものであっても、これらが加水分解、脱水縮合の触媒作用に関し「同等の活性」を有することが技術常識であるとまではいえず、本件明細書の実施例で立証されている2種の白金化合物と同様の作用効果(基材の透明性を損なうことなく、耐久性に優れる表面層を形成できる)を奏しないものが含まれている蓋然性が高いから、本件発明1~5、7~10はサポート要件違反に該当する旨を主張する(令和5年10月23日提出の意見書)。

しかしながら、本件明細書には、本件発明の課題を解決するための手段は、所定の触媒作用を有する遷移金属化合物の質量割合を、化合物(A)に対して300~4,000ppmとすることであると記載され(【0008】~【0012】)、所定の作用効果を奏する遷移金属化合物の種類を特定したことが上記の手段であると記載されているわけではない。

また、実施例においては、加水分解反応及び脱水縮合反応に対し高い触媒作用を示す点から、白金化合物が用いられているものの、実施例と「同程度以上」の透明性と耐久性を達成することが、本件発明の課題であると限定解釈すべき根拠は見いだせない。

以上によれば、本件発明の課題を解決できるというためには、所定の触媒作用を有する遷移金属化合物を用いた場合に、化合物(A)に対する質量割合を300~4,000ppmとしたことにより、当該範囲外よりも、透明性(着色)と耐久性のバランスがよく、「基材の透明性を損なうことなく、耐久性に優れる表面層を形成できる」といえるものであればよいのであって、実施例の白金化合物と同等の透明性(着色)と耐久性が得られることまでが要求されるとはいえない。

そうすると、申立人が主張するように、本件明細書の実施例の白金化合物と同程度の作用効果を奏しない遷移金属化合物が本件発明に含まれるとしても、そのような遷移金属化合物を用いた場合においても、化合物(A)に対する質量割合を300~4,000ppmとすることにより、当該範囲外よりも、透明性(着色)と耐久性のバランスがよくなり、本件発明の課題が解決できることを、当業者であれば認識できるといえる。

したがって、申立人の上記主張は採用できない。

イ 申立人は、甲8の記載に基づいて、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物に対するTa(OCH2CH3)5の質量割合が、13,932ppmの表面処理剤3(実施例3)の摩擦耐久性の結果は、0ppmの表面処理剤4(比較例1)とほぼ同程度であることなどを指摘して、本件発明1で規定される遷移金属化合物に該当し得るものであっても、本件明細書の実施例の白金化合物と同等の活性を有するとはいえないことを主張し、甲4~甲7についても同旨の主張をしている(令和5年10月23日提出の意見書)。

しかしながら、上記アに説示したように、実施例と「同程度以上」の透明性と耐久性を達成することが、本件発明の課題であると限定解釈すべき根拠は見いだせないから、申立人の上記主張は、その前提において誤りがある。

また、甲8は、透明性と耐久性の両方の観点から、Ta(OCH2CH3)5の質量割合を設定しているわけではないし、甲8と本件明細書の実施例とでは摩擦耐久性の試験条件が同じではないことなどから、甲8に示された試験結果が、本件明細書の実施例の白金化合物以外の遷移金属化合物を用いた場合においては、化合物(A)に対する質量割合を300~4,000ppmとすることにより、当該範囲外よりも、透明性(着色)と耐久性のバランスがよくなるとはいえないことを、具体的に示すものではない。甲4~甲7についても、同様である。

したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(6)小括

以上によれば、本件発明1~11は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できることを認識できるものであり、請求項1~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。

したがって、請求項1~11に係る特許は、上記取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。

2 令和5年6月29日付け取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった申立理由について

申立人が主張した申立理由のうち、令和5年6月29日付け取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった、申立理由1及び2(新規性及び進歩性)について、以下、判断する。

(1)甲1に記載された発明

甲1の【0070】~【0072】、【0080】~【0084】を参照し、実施例5に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「(A)有機ケイ素化合物2 100質量部に対し0.4質量部となるようにジルコニウム含有化合物1:ZA-40(マツモトファインケミカル株式会社製、化学式:Zr(OPr)4で示されるジルコニウム含有化合物、Prはプロピル基)を添加し混合して得られた混合物。
(A)有機ケイ素化合物2:
[図:0001407788000001.jpg]
」

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「(A)有機ケイ素化合物2:

[図:0001407788000002.jpg]

」は、ペルフルオロアルキル基であるCF3が酸素原子Oと結合し、該酸素原子が単結合を介して1本のポリオキシペルフルオロアルキレン鎖である(CF2O)p(CF2CF2O)q鎖と連結しており、さらに該1本のポリオキシペルフルオロアルキレン鎖が-CF2-C(OH)(CH2-CH2-CH2)2-を介して2個のSi(OCH3)3と結合している構造を有するものであるから、本件発明1の「ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および下式(I)で表される基を有する化合物(A)

-SiRnL3-n ・・・(I)

ただし、Lは水酸基または加水分解性基であり、

Rは水素原子または1価の炭化水素基であり、

nは0~2の整数であり、

nが0または1のとき(3-n)個のLは、同一であっても異なっていてもよく、

nが2のときn個のRは、同一であっても異なっていてもよい。」及び

「化合物(A)が、下式(A1)で表される化合物であり、
[Rf1-O-Q-Rfe-]aZ1[-SiRnL3-n]b ・・・(A1)
ただし、L、Rおよびnはそれぞれ前記と同義であり、
Rf1は、ペルフルオロアルキル基であり、
続きを表示(全11行)
Qは、単結合、1個以上の水素原子を含むオキシフルオロアルキレン基、または該オキシフルオロアルキレン基の2~5個が結合してなるポリオキシフルオロアルキレン基であり、該基を構成するオキシフルオロアルキレン基は全てが同一であっても異なっていてもよく、
Rfeは、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であり、
Z1は、(a+b)価の連結基であり、
aは、1以上の整数であり、
bは、2~5の整数であり、
aが2以上のときa個の[Rf1-O-Q-Rfe-]は、同一であっても異なっていてもよく、
b個の[-SiRnL3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。」に相当する。

また、甲1には、「(A)フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種とを含む組成物を提供する。」(【0019】)、「(B)成分の量は特に制限されるものでなく後述する(A)有機ケイ素化合物の加水分解及び縮合反応を促進させる有効量(触媒量)であればよい。」(【0025】)と記載されており、ジルコニウムは遷移金属であることから、甲1発明の「ジルコニウム含有化合物1:ZA-40(マツモトファインケミカル株式会社製、化学式:Zr(OPr)4で示されるジルコニウム含有化合物、Prはプロピル基)」は、本件発明1の「(i)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(ii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物」に相当する。

甲1発明である「混合物」は含フッ素エーテル化合物である「(A)有機ケイ素化合物2」を含むものであるから、本件発明1の「含フッ素エーテル組成物」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖および下式(I)で表される基を有する化合物(A)と、遷移金属化合物とを含む含フッ素エーテル組成物であって、
前記化合物(A)が、下式(A1)で表される化合物であり、
前記遷移金属化合物が、(i)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(ii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒として作用する遷移金属化合物である、
含フッ素エーテル組成物。
続きを表示(全20行)
-SiRnL3-n ・・・(I)
ただし、Lは水酸基または加水分解性基であり、
Rは水素原子または1価の炭化水素基であり、
nは0~2の整数であり、
nが0または1のとき(3-n)個のLは、同一であっても異なっていてもよく、
nが2のときn個のRは、同一であっても異なっていてもよい。
[Rf1-O-Q-Rfe-]aZ1[-SiRnL3-n]b ・・・(A1)
ただし、L、Rおよびnはそれぞれ前記と同義であり、
Rf1は、ペルフルオロアルキル基であり、
Qは、単結合、1個以上の水素原子を含むオキシフルオロアルキレン基、または該オキシフルオロアルキレン基の2~5個が結合してなるポリオキシフルオロアルキレン基であり、該基を構成するオキシフルオロアルキレン基は全てが同一であっても異なっていてもよく、
Rfeは、前記ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖であり、
Z1は、(a+b)価の連結基であり、
aは、1以上の整数であり、
bは、2~5の整数であり、
aが2以上のときa個の[Rf1-O-Q-Rfe-]は、同一であっても異なっていてもよく、
b個の[-SiRnL3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。」

<相違点1>

遷移金属化合物が、本件発明1においては、「但し、ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物を除く」ものであるのに対し、甲1発明においては、「化学式:Zr(OPr)4で示されるジルコニウム含有化合物、Prはプロピル基」である点。

<相違点2>

本件発明1は、化合物(A)に対する遷移金属化合物の質量割合を、遷移金属換算で「300~4,000ppm」と特定しているのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

イ 新規性についての判断

相違点1は、実質的な相違点であるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。

ウ 進歩性についての判断

相違点1について検討する。

甲1には、「(A)フルオロオキシアルキレン基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を、(B)ジルコニウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物から選ばれる少なくとも1種の存在下で硬化させる方法」の発明が開示され(請求項1)、ジルコニウム含有化合物またはアルミニウム含有化合物を用いることが、課題解決のために必須の事項であると記載されている(【0015】)。

そうすると、甲2(請求項2、【0011】、【0121】【0122】【0128】【0129】及び甲3(請求項1、【0007】【0010】、【0061】、【0062】)に記載されるように、加水分解性基の加水分解及び基材上の水酸基との脱水縮合作用を有するアルコシシシラン加水分解触媒(本件発明1の「(i)加水分解性シリル基のシラノール基への加水分解反応、および(ii)該シラノール基と水酸基との脱水縮合反応の触媒」に相当)として、チタン化合物、鉄化合物などの遷移金属化合物が知られていることを考慮しても、甲1発明において、課題解決のために必須の事項である「ジルコニウム含有化合物またはアルミニウム含有化合物」に代えて、それ以外の遷移金属化合物を用いる動機付けがあるとはいえない。

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2~4、7、8について

本件発明2~4、7、8は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(2)に説示した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4、7、8は、甲1に記載された発明ではないし、また、甲1に記載された発明、及び、甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)小括

以上によれば、本件発明1~4、7、8は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、及び、甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、請求項1~4、7、8に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではない。

したがって、請求項1~4、7、8に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由1及び2によっては、取り消すことはできない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、請求項1~11に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由及び令和5年6月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。

その他に、請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2022-700484

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