特許異議申立
2022-700478
X線検査装置
- 審判番号
- 2022-700478
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-240603
- 登録番号
- 6979185
- 請求日
- 2022年06月01日
- 審決日
- 2023年08月09日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社 システムスクエア
- 【権利者代理人】折坂 茂樹
- 【異議申立人】末吉 直子
- 【異議申立人代理人】加藤 圭
- 審判長/審判官
- 審判長 樋口 宗彦
- 審判官 櫃本 研太郎
- 審判官 石井 哲
- 分類
- P1651.121-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6979185号発明「X線検査装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6979185号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔3-4〕、7について訂正することを認める。
特許第6979185号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6979185号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成28年12月12日に出願され、令和3年11月17日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 6月 1日 :特許異議申立人 末吉直子(以下「申立人」 という。)による請求項1~7に係る特許異 議の申立て
同年 9月 7日付け :取消理由通知書
同年11月 8日 :特許権者との面接
同年11月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 1月12日 :申立人による意見書の提出
同年 2月22日付け :取消理由通知書(決定の予告)
同年 3月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下 「本件訂正請求書」という。)の提出
同年 5月25日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4、7について訂正することを求めるものであって、本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし訂正事項3からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3の「前記X線照射手段によるX線の照射強度を入力する照射強度入力手段と、」と記載されているのを、「被測定物にX線を照射するX線照射手段と、載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面を備える搬送手段と、前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりデジタルデータであるX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記被測定物の略同一の領域を透過したX線が前記所定の2以上の段の前記検出素子により順次検出されるタイミングの都度、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを順次足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段と、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け、それぞれの前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する段特定手段と、を備え、前記X線照射手段によるX線の照射強度を入力する照射強度入力手段と、」に訂正する。あわせて、請求項3の「ことを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。」と記載されているのを「ことを特徴とするX線検査装置。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3の「前記段特定手段は、前記記憶手段を参照し、前記照射強度検出手段に入力された照射強度に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付ける」と記載されているのを、「前記段特定手段は、前記記憶手段を参照し、前記照射強度入力手段に入力された照射強度に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付ける」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7の「前記被測定物に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段を更に備え、前記段特定手段は、前記被測定物を示す情報の入力に基づき、前記記憶手段を参照し、前記被測定物に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。」と記載されているのを、「被測定物にX線を照射するX線照射手段と、載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面を備える搬送手段と、前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりデジタルデータであるX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記被測定物の略同一の領域を透過したX線が前記所定の2以上の段の前記検出素子により順次検出されるタイミングの都度、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを順次足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段と、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け、それぞれの前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する段特定手段と、を備え、前記被測定物に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段を更に備え、前記情報は、前記被測定物と前記所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの形式で記憶され、前記段特定手段は、前記被測定物を示す情報の入力に基づき、前記記憶手段を参照し、前記被測定物に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付け、前記被測定物を示す情報は、前記被測定物の名称、前記被測定物の種類、又は前記被測定物の商品番号であることを特徴とするX線検査装置。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項3について、請求項1又は2との引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないことから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」という記載は、「前記」という記載を伴うものである。しかしながら、訂正前の請求項3の当該記載以前の部分、訂正前の請求項3が引用する訂正前の請求項1又は2のいずれにも、「照射強度検出手段」という記載がないことから、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」という記載は、特許請求の範囲中の他の記載との関係において、不合理を生じているものであるといえる。したがって、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」という記載は、明瞭でない記載であるといえる。
(イ)「照射強度検出手段」という記載自体は、「照射強度」を「検出」する手段を意味するものであり、「照射強度」を「検出」する手段が、「検出」した「照射強度」を信号として「出力」するものでもあることは明らかであるといえることから、「照射強度検出手段」という記載自体は、検出した「照射強度」を「出力」するものを意味しているといえる。
これに対し、訂正前の請求項3における「前記照射強度検出手段に入力された照射強度」という記載自体は、「前記照射強度検出手段」に「照射強度」が「入力」されるものであるという内容を意味しているといえる。
そうすると、「照射強度検出手段」という記載自体は、検出した「照射強度」を「出力」するものを意味しているのに対し、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段に入力された照射強度」における「照射強度検出手段」は、「照射強度」を「入力」するものを意味しているといえる。
以上のことから、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」という記載は、当該記載の直後に続く「に入力された照射強度」という記載との関係において、不合理を生じているものであるといえるので、明瞭でない記載であるといえる。
(ウ)訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」は、
a 当該記載直後の「に入力された照射強度」という記載との関係において、本来、「照射強度」を「入力」するものを意味しているといえること、
b 「前記」という記載を伴う当該記載以前の部分に、「照射強度」を「入力」するものに関する記載として、「照射強度を入力する照射強度入力手段」という記載があること、
を考え合わせると、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」は、本来、「前記照射強度入力手段」を意味しているといえる。
そうすると、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」なる記載を、「前記照射強度入力手段」とする訂正は、「前記照射強度検出手段」、という、それ自体の記載内容が特許請求の範囲中の他の記載との関係において不合理を生じている記載、を正すものであるといえる。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア(ウ)のとおり、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」は、本来、「前記照射強度入力手段」を意味しているといえるから、訂正前の請求項3の「前記照射強度検出手段」なる記載を、「前記照射強度入力手段」とする訂正は、「前記照射強度検出手段」を、その本来の意味を表す表現にするものであるといえるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項の有無
訂正事項2は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の段落【0049】における「X線照射手段110によるX線の照射強度を入力する照射強度入力手段170と、照射強度に応じた所定の2以上の段を記憶する記憶手段191と、を更に備え、段特定手段140が、記憶手段191を参照し照射強度入力手段170に入力された照射強度に対応する所定の2以上の段を特定するように構成する。」との記載に基づく訂正である。
したがって、訂正事項2は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、以下の各訂正事項に細分される。
・訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項7について、請求項1又は2との引用関係を解消する訂正。
・訂正事項3-2
訂正前の請求項7の「前記被測定物に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段を更に備え、」なる記載を、「前記被測定物に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段を更に備え、前記情報は、前記被測定物と前記所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの形式で記憶され、」とする訂正。
・訂正事項3-3
訂正前の請求項7の「前記段特定手段は、前記被測定物を示す情報の入力に基づき、前記記憶手段を参照し、前記被測定物に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付ける」なる記載を、「前記段特定手段は、前記被測定物を示す情報の入力に基づき、前記記憶手段を参照し、前記被測定物に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付け、前記被測定物を示す情報は、前記被測定物の名称、前記被測定物の種類、又は前記被測定物の商品番号である」とする訂正。
ア 訂正事項3-1について
訂正事項3-1は、特許請求の範囲の請求項7について、請求項1又は2との引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とするものである。
そして、訂正事項3-1は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないことから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
イ 訂正事項3-2について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項3-2は、訂正前の請求項7に係る発明の「前記被測定物に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段」を特定するための事項として、「前記情報は、前記被測定物と前記所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの形式で記憶され」るという事項を、直列的に付加するものである。
したがって、訂正事項3-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3-2は、訂正前の請求項7に係る発明の「前記被測定物に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段」での前記情報の記憶の仕方として、「前記情報は、前記被測定物と前記所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの形式で記憶され」るという仕方に限定するものであり、訂正前の請求項7の記載について、訂正前の請求項7に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項7に記載された発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項の有無
訂正事項3-2は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の段落【0053】における「第3の方法として、被測定物Wに基づく方法が挙げられる。例えば、図14に示すように、被測定物Wに応じた所定の2以上の段を記憶する記憶手段193を更に備え、段特定手段140が、被測定物Wを示す情報の入力に基づき記憶手段193を参照して、被測定物Wに対応する所定の2以上の段を特定するように構成する。記憶手段193に予め記憶しておく、被測定物Wと所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの一例を図15(a)に示す。」との記載に基づく訂正である。
したがって、訂正事項3-2は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 訂正事項3-3について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項3-3は、訂正前の請求項7に係る発明の「被測定物を示す情報」を特定するための事項として、「前記被測定物を示す情報は、前記被測定物の名称、前記被測定物の種類、又は前記被測定物の商品番号である」という事項を、直列的に付加するものである。
したがって、訂正事項3-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3-3は、訂正前の請求項7に係る発明の「被測定物を示す情報」を「前記被測定物の名称、前記被測定物の種類、又は前記被測定物の商品番号」に具体的に特定して限定するものであり、訂正前の請求項7の記載について、訂正前の請求項7に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項7に記載された発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項3-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項の有無
訂正事項3-3は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の段落【0054】における「なお、第3の方法でいう被測定物Wは、特定の被測定物W(例えば鯖)である場合のほか、被測定物Wを含む分類(例えば魚)である場合も含む。被測定物Wを含む分類である場合、記憶手段193は被測定物Wを含む分類に応じた所定の2以上の段を記憶する。記憶手段193に予め記憶しておく、被測定物Wを含む分類と所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの一例を図15(b)に示す。この例では分類が魚と肉の2種類であるが、分類の個数は任意である。」との記載や、段落【0059】~【0060】における「被測定物Wを示す情報の入力方法は任意である。例えば、段特定手段140が入力インタフェースを任意の表示手段151に表示し、装置利用者が表示された入力インタフェースにキーボードやマウスなどの任意の入力手段152から入力する。」「入力インタフェースの構成は任意である。例えば、被測定物Wの名称や分類を、文字や提示された選択肢の選択により入力可能とする構成や、図17(a)に示すような被測定物Wの商品番号の入力を受け付ける構成などが挙げられる。商品番号の入力を受け付ける構成にする場合には、例えば、図17(b)に示すような商品番号と所定の2以上の段とを対応付けるテーブルを記憶手段193に予め記憶しておけばよい。」との記載に基づく訂正である。
したがって、訂正事項3-3は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 上記ア、イ及びウのとおりであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1ないし3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3、又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項3、4、7は、特許異議の申立てがなされた請求項であるから、当該各請求項についての訂正には、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
そして、訂正前の請求項3、4は、請求項4が請求項3を引用していることから、一群の請求項であり、訂正事項1及び2は、その一群の請求項についてされたものである。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3~4〕、7について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、当審が令和4年9月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 進歩性(特許法第29条第2項)
請求項1、5、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証と甲第3号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証と甲第3号証に記載された周知技術、甲第5号証と甲第6号証と甲第8号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証と甲第3号証に記載された周知技術、及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、請求項1、2、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 明確性(特許法第36条第6項第2号)
請求項3~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3 各甲号証
甲第1号証:特開2011-242374号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開2014-22987号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開2001-208694号公報(以下、「甲3」という。)
甲第5号証:特開平7-128696号公報(以下、「甲5」という。)
甲第6号証:特開平11-88784号公報(以下、「甲6」という。)
甲第8号証:特開2000-270269号公報(以下、「甲8」という。)
第4 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による、請求項3、4、7についての訂正が認められた。訂正後の本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
被測定物にX線を照射するX線照射手段と、
載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面を備える搬送手段と、
前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりデジタルデータであるX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記被測定物の略同一の領域を透過したX線が前記所定の2以上の段の前記検出素子により順次検出されるタイミングの都度、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを順次足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段と、
前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け、それぞれの前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する段特定手段と、
を備えるX線検査装置。
【請求項2】
任意の入力手段から入力された情報に基づき、いずれの前記検出素子が検出したX線検出データに対して補正を施すかを特定する補正内容特定手段を更に備え、
前記X線検出手段は、X線検出データの足し合わせに先立ち前記補正内容特定手段で特定された前記検出素子のX線検出データに対して所定の補正を施す
ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
被測定物にX線を照射するX線照射手段と、
載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面を備える搬送手段と、
前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりデジタルデータであるX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記被測定物の略同一の領域を透過したX線が前記所定の2以上の段の前記検出素子により順次検出されるタイミングの都度、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを順次足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段と、
前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け、それぞれの前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する段特定手段と、
を備え、
前記X線照射手段によるX線の照射強度を入力する照射強度入力手段と、 前記照射強度に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段と、
を更に備え、
前記段特定手段は、前記記憶手段を参照し、前記照射強度入力手段に入力された照射強度に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付ける
ことを特徴とするX線検査装置。
【請求項4】
前記X線照射手段によるX線の照射強度を検出する照射強度検出手段を更に備え、
前記照射強度検出手段で検出された照射強度が前記照射強度入力手段に入力される
ことを特徴とする請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記被測定物の厚さを入力する厚さ入力手段と、
前記厚さに応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段と、
を更に備え、
前記段特定手段は、前記記憶手段を参照し、前記厚さ入力手段に入力された厚さに対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付ける
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記被測定物の厚さを検出する厚さ検出手段を更に備え、
前記厚さ検出手段で検出された厚さが前記厚さ入力手段に入力される
ことを特徴とする請求項5に記載のX線検査装置。
【請求項7】
被測定物にX線を照射するX線照射手段と、
載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面を備える搬送手段と、
前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりデジタルデータであるX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記被測定物の略同一の領域を透過したX線が前記所定の2以上の段の前記検出素子により順次検出されるタイミングの都度、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを順次足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段と、
前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け、それぞれの前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する段特定手段と、
を備え、
前記被測定物に応じた、前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとの、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報を記憶する記憶手段を更に備え、
前記情報は、前記被測定物と前記所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの形式で記憶され、
前記段特定手段は、前記被測定物を示す情報の入力に基づき、前記記憶手段を参照し、前記被測定物に対応するそれぞれの検出素子ごとの前記情報の入力を受け付け、
前記被測定物を示す情報は、前記被測定物の名称、前記被測定物の種類、又は前記被測定物の商品番号である
ことを特徴とするX線検査装置。」
第5 進歩性(特許法第29条第2項)について
1 各証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様である。)。
(ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚、加工食品、医薬品等の被検査物中に混入した異物を検出するX線検査装置に関し、特に、X線発生器から照射されて被検査物を透過したX線を検出するX線検査装置に関するものである。」
(イ)
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたものは、異物を高感度に検出することができるが、X線発生部が発生するX線の出力が従来のX線検査装置と同等の強度またはそれ以上であった。このため、例えば、X線の出力が小さい場合と比較して、被検査物が受けるX線の被爆量が高いという問題、動作時のX線発生部の発熱が大きいために冷却手段が必要となったり食品の検査には不向きであるという問題があった。また、X線発生部の寿命が短いという問題、X線漏洩防止のための遮蔽構造を強固にするために装置が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
すなわち、X線発生部が発生するX線の出力を低下させるとX線検出器の検出出力が低下して異物を高感度に検出することが困難になるという問題があり、一方、異物を高感度に検出するためにはX線の出力を維持または増加することに伴う上記のような問題が発生してしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、X線発生部が発生するX線の出力が低くても高感度に異物を検出することができるX線検査装置を提供することを目的とする。」
(ウ)
「【0020】
図1に示すように、X線検査装置1は、搬送部2と検出部3とを筐体4の内部に備え、表示部5を筐体4の前面上部に備えている。
【0021】
搬送部2は、被検査物Wを所定間隔をおいて順次搬送するものである。この搬送部2は、例えば筐体4の内部に水平に配置されたベルトコンベアにより構成されている。搬送部2は、図1に示す駆動モータ6の駆動により予め設定された搬送速度で搬入口7から搬入された被検査物Wを搬出口8側(図中X方向)に向けて搬送面としてのベルト面2a上を搬送させるようになっている。筐体4の内部においてベルト面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は搬送路21を形成している。
【0022】
検出部3は、順次搬送される被検査物Wに対し、搬送路21の途中の検査空間22においてX線を照射するとともに被検査物Wを透過するX線を検出するものであり、搬送路21途中の検査空間22の上方に所定高さ離隔して配置されたX線発生部9と、搬送部2内にX線発生部9と対向して配置されたX線検出器10を備えている。
【0023】
X線発生源としてのX線発生部9は、金属製の箱体11の内部に設けられた円筒状のX線管12を図示しない絶縁油に浸漬した構成を有しており、X線管12の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成している。X線管12は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(X方向)となるよう配置されている。X線管12により生成されたX線は、下方のX線検出器10に向けて、図示しないスリットにより略三角形状のスクリーン状(図3参照)となって搬送方向(X方向)を横切るように照射されるようになっている。」
(エ)
「【0025】
X線検査装置1は、X線検出器10からのX線透過データが入力されるとともに被検査物W中の異物の有無を検査する制御部40と、制御部40による検査結果等を表示出力する表示部5と、制御部40への各種パラメータ等の設定入力を行う設定部45とを備えている。
【0026】
制御部40は、CPUやメモリなどを備えて構成されており、X線検出器10から受け取ったデータを記憶する記憶部42と、記憶部42から読み出したデータに対して合成や各種フィルタ等の画像処理を施す画像処理部43と、画像処理されたデータに対して被検査物Wと異物との判別を行って異物の混入の有無を判定する判定部44と、を備えている。
【0027】
設定部45は、ユーザが操作する複数のキーやスイッチ等で構成され、制御部40への各種パラメータ等の設定入力や動作モードの選択を行うものである。また、設定部45からは利用者の操作により、被検査物Wの厚さ情報が入力されるようになっている。また、設定部45には、後述する厚さ検出センサ60が検出した被検査物Wの厚さ情報が入力されるようになっている。
【0028】
また、制御部40は、X線検出器10により行われる時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108(図3参照)の段数を、設定部45に入力された被検査物Wの厚さ情報に基づいて設定する段数設定部46を備えている。
【0029】
表示部5は、平面ディスプレイ等から構成されており、制御部40による検査結果の表示を行うようになっている。また、表示部5は、被検査物Wの良否判定結果を「OK」や「NG」等の文字または記号で表示するとともに、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を、既定設定として、または、設定部45からの所定のキー操作による要求に基づいて表示するようになっている。」
(オ)
「【0030】
また、X線検査装置1は、被検査物Wの厚さを検出する厚さ検出センサ60を搬送路21内に備えており、厚さ検出センサ60が検出した被検査物Wの厚さ情報は設定部45に出力されるようになっている。厚さ検出センサ60は、被検査物Wの厚さを光学的に検出したり、音波を用いて検出するようになっている。
【0031】
X線検出器10は、図3に示すように、幅方向、すなわち搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)の平面上で搬送方向と直交するY方向に複数の検出素子101a、101b、101c、・・・、102a、102b、102c、・・・、が一直線上に配置されてなる検出素子列101~108を、搬送方向に複数段並べたものであり、ラインセンサとして構成されている。
【0032】
X線検出器10には、被検査物Wを透過したX線が入射するようになっており、X線検出器10の検出素子101a、101b、101c、・・・、102a、102b、102c、・・・、は、入射するX線の強度に基づいて、X線透過データを出力するようになっている。
【0033】
具体的には、一例として、各検出素子は、図示しないシンチレータとフォトダイオード等の受光素子とを密着したものから構成されており、X線をシンチレータで光に変換し、この光を受光素子で受光して電気信号に変換し、X線透過データとして出力するようになっている。また、他の例として、テルル化カドミウム(CdTe)のような半導体を用いて、X線を直接的に効率良く電気信号に変換するようになっていてもよい。
【0034】
また、X線検出器10は、検出素子列101~108から出力されるX線透過データを時間遅延積分により所定の段数分合成して合成データとして出力する合成部100a(図2参照)を備えている。
【0035】
具体的には、合成部100aは、図4において、例えば、時間遅延積分を行う段数が3段で検出素子列101、102、103からのX線透過データを時間遅延積分により合成するときは、検出素子列101が時刻T1に検出したX線透過データと、検出素子列102が時刻T2に検出したX線透過データと、検出素子列102(当審注:「102」は前後の文脈からみて「103」の誤記と認める。)が時刻T3に検出したX線透過データとを、被検査物Wの下面における位置が一致するように遅延させて合成するようになっている。合成部100aは、各検出素子列101~108のうち所定の段数分のX線透過データを時間遅延積分により合成する。
【0036】
このように、X線検出器10が、合成部100aにより、各検出素子列101~108のうち所定の段数分のX線透過データを時間遅延積分により合成することによって、X線の検出感度およびS/N比を向上することができる。したがって、X線発生部9のX線出力を減少させても十分な感度で被検査物W中の異物を検出することができるため、X線発生部9のX線出力を減少させることにより、被検査物が受けるX線の被爆量を減少することができ、動作時のX線発生部の発熱を減少できるので冷却手段を別途設けることを不要にすることができ、食品の検査に適したX線検査装置とすることができる。また、X線発生部9のX線出力を減少させることにより、X線発生部9の寿命を長くすることができ、X線漏洩防止のための遮蔽構造を簡易にすることにより装置を小型化することができる。」
(カ)
「【0038】
ここで、X線検出器10の上を搬送される被検査物WをX線が透過する角度は、例えば、図5に示すように、X線発生部9の直下を被検査物Wが通過するときと、図5の状態から所定時間経過後(例えば、4秒後)の状態である図6に示すように、X線発生部9の直下よりも搬送方向下流の位置を被検査物Wが通過するときとで異なる。
【0039】
被検査物W内を透過するX線の角度が異なると、図7に示すように、搬送される被検査物Wを横から見たときに、被検査物Wの下面を基準にした場合、被検査物Wの下面の中央を透過するX線は、被検査物Wの上面においては、X線検出器10の上を被検査物Wが搬送されて移動するのに伴いその位置が変化することになる。
【0040】
また、図7で、被検査物WがX線発生部9の直下を通過するときは、X線が被検査物Wの下面を透過する水平方向の位置と上面を透過する水平方向の位置が等しいが、被検査物WがX線発生部9の直下以外の位置を通過するときは、X線が被検査物Wの下面を透過する水平方向の位置と上面を透過する水平方向の位置が異なり、この透過位置の差異は、被検査物WがX線発生部9の直下から離れるほど大きくなる。
【0041】
このため、X線検出器10から得られた合成データの画像は、時間遅延積分により合成する検出素子列の段数を増やすと、高感度化できてS/N比が向上する一方で空間分解能は低下する。また、X線検出器10から得られた合成データの画像は、被検査物Wの厚さが大きいほど、空間分解能が低いものとなってしまう。換言すると、被検査物Wの厚さが大きいほど、X線検出器10から得られた画像のコントラストが低下してぼやけた状態となってしまう。コントラストは、例えば、MTF(Modulation Transfer Function)の値として客観的に計測される。
【0042】
そこで、本実施の形態では、空間分解能の低下を抑制するために、8段の検出素子列101~108(図3参照)のうち時間遅延積分を行う段数を、被検査物Wの厚さ情報に基づいて段数設定部46により設定するようになっている。
【0043】 具体的には、図8に示すように、被検査物Wの厚さをh、X線発生部9から被検査物Wまでの距離をL、検出素子列101~108の片側段数をn、検出素子列101~108のピッチをp、画像ズレをΔxとすると、画像ズレΔxと片側段数nの関係は、Δx=hnp/Ldの数式で表される。例えば、許容する最大の画像ズレ2Δxをピッチpの25%以下にする場合は、2Δx=2hnp/L≦0.25pの数式を解き、片側段数nは、n≦L/8hとなる。すなわち、n≦L/8hとなるように、片側段数nを設定することにより、最大の画像ズレ2Δxをピッチpの25%以下にすることができる。
【0044】
なお、ピッチpは、各検出素子列101~108の中心間の間隔であり、画像ズレΔxは、被検査物Wの上面のX線透過位置と下面のX線透過位置の水平方向の距離である。
【0045】
このように、許容する最大の画像ズレ2Δxを予め定めておき、これを満足するように片側段数nを設定することにより、X線検出器10から得られる画像のコントラストの低下を抑制することができる。」
(キ)
「【0047】
被検査物Wが搬送部2によって搬送される途中位置で被検査物WにX線発生部9からX線が照射される。このX線の照射に伴って被検査物Wを透過してくるX線は、X線検出器10において、各検出素子列101~108によって検出され、合成部100aにより時間遅延積分される。
【0048】
被検査物Wの厚さ情報は、利用者により計測された被検査物Wの高さ方向の寸法(h)が予め設定部45から入力されるか、または、搬送時に厚さ検出センサ60が検出した被検査物Wの高さ方向の寸法(h)が設定部45から入力される。
【0049】
段数設定部46は、設定部45から取得した被検査物Wの厚さに基づいて、上記のΔx=hnp/Ldの数式から時間遅延積分の段数を算出し、この段数をX線検出器10の合成部100aに設定する。
【0050】
X線検出器10の合成部100aは、各検出素子列101~108が検出したX線透過データのうち、段数設定部46により設定された段数分のX線透過データを時間遅延積分により合成する。」
(ク)
「【0053】
また、厚さ検出センサ60により被検査物Wの厚さ段階(h[n]:h[1]~h[5])が検出されるようになっていてもよい。このとき、段数設定部46は、検出された厚さレベル(h[n])に予め対応付けられた時間遅延積分の段数を設定する。」
(ケ)
「図1
[図:0001403624000001.jpg]
」
(コ)
「図2
[図:0001403624000002.jpg]
」
(サ)
「図3
[図:0001403624000003.jpg]
」
(シ)
「図4
[図:0001403624000004.jpg]
」
(ス)
「図8
[図:0001403624000005.jpg]
」
イ 上記アから認定した事項
(ア)上記ア(ウ)の段落【0022】における「搬送部2内にX線発生部9と対向して配置されたX線検出器10」との記載、及び、上記ア(コ)における図2の記載から、X線検出器10が、ベルト面2aを挟んでX線発生部9と対向して配置されるものであることがみてとれる。
(イ)上記ア(カ)の段落【0043】における「X線発生部9から被検査物Wまでの距離をL」との記載、及び上記ア(ス)における図8の「L」によって示される両矢印の記載からみて、Δx=hnp/Ldの数式におけるLの値は、X線発生部9と検出素子列101~108の位置によって予め定められる定数であると認められる。
(ウ)上記ア(カ)の段落【0044】における「ピッチpは、各検出素子列101~108の中心間の間隔」という記載からみて、Δx=hnp/Ldの数式におけるpの値は、各検出素子列101~108の位置によって予め定められる定数であると認められる。
(エ)上記ア(カ)の段落【0043】~【0045】の画像ズレΔxに関する 記載からみて、Δx=hnp/Ldの数式におけるΔxの値は、許容する最大の画像ずれ2Δxをピッチpを基準とした値に予め定めておくことによって、予め定められた定数であると認められる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイによれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「搬送部2と検出部3とを筐体4の内部に備えたX線検査装置であって、
搬送部2は、筐体4の内部に水平に配置されたベルトコンベアにより構成され、搬入口7から搬入された被検査物Wを搬出口8側(X方向)に向けて搬送面としてのベルト面2a上を搬送させるようになっており、筐体4の内部においてベルト面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は搬送路21を形成しており、
検出部3は、搬送路21途中の検査空間22の上方に所定高さ離隔して配置されたX線発生部9と、搬送部2内にベルト面2aを挟んでX線発生部9と対向して配置されたX線検出器10を備え、
X線検出器10は、搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)の平面上で搬送方向と直交するY方向に複数の検出素子101a、101b、101c、・・・、102a、102b、102c、・・・、が一直線上に配置されてなる検出素子列101~108を、搬送方向に複数段並べたものであり、
X線検出器10には、被検査物Wを透過したX線が入射するようになっており、X線検出器10の検出素子101a、101b、101c、・・・、102a、102b、102c、・・・、は、入射するX線を電気信号に変換し、X線透過データを出力するようになっており、
X線検出器10は、検出素子列101~108から出力されるX線透過データのうち、段数設定部46により設定された段数分のX線透過データを時間遅延積分により合成して合成データとして出力する合成部100aを備え、
合成部100aは、例えば、時間遅延積分を行う段数が3段で検出素子列101、102、103からのX線透過データを時間遅延積分により合成するときは、検出素子列101が時刻T1に検出したX線透過データと、検出素子列102が時刻T2に検出したX線透過データと、検出素子列103が時刻T3に検出したX線透過データとを、被検査物Wの下面における位置が一致するように遅延させて合成するようになっており、
被検査物Wの厚さ段階(h[n]:h[1]~h[5])を検出する厚さ検出センサ60を搬送路21内に備えており、
厚さ検出センサ60が検出した被検査物Wの厚さ段階(h[n]:h[1]~h[5])が入力される設定部45と、
X線検出器10からのX線透過データが入力されるとともに被検査物W中の異物の有無を検査する制御部40と、制御部40による検査結果等を表示出力する表示部5と、制御部40への各種パラメータ等の設定入力を行う設定部45とを備え、
設定部45は、ユーザが操作する複数のキーやスイッチ等で構成され、制御部40への各種パラメータ等の設定入力や動作モードの選択を行うものであり、被検査物Wの厚さ情報は、利用者により計測された被検査物Wの高さ方向の寸法(h)が予め設定部45から入力されるか、または、搬送時に厚さ検出センサ60が検出した被検査物Wの厚さ段階(h[n]:h[1]~h[5])が設定部45から入力され、
制御部40は、空間分解能の低下を抑制するために、X線検出器10により行われる時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数を、設定部45に入力された被検査物Wの厚さ情報に基づいて設定する段数設定部46を備え、
被検査物Wの厚さをh、X線発生部9から被検査物Wまでの距離をL、検出素子列101~108の片側段数をn、各検出素子列101~108の中心間の間隔であるピッチをp、被検査物Wの上面のX線透過位置と下面のX線透過位置の水平方向の距離である画像ズレをΔxとしたときの、画像ズレΔxと片側段数nの関係を表した数式である、Δx=hnp/Ldの数式において、Lの値は、X線発生部9と検出素子列101~108の位置によって予め定められる定数であり、pの値は、各検出素子列101~108の位置によって予め定められる定数であり、Δxの値は、許容する最大の画像ずれ2Δxをピッチpを基準とした値に予め定めておくことによって、予め定められた定数であり、
段数設定部46は、設定部45から取得した被検査物Wの厚さに基づいて、上記のΔx=hnp/Ldの数式から片側段数nを設定して時間遅延積分の段数を算出し、この段数をX線検出器10の合成部100aに設定するか、または、検出された厚さレベル(h[n])に予め対応付けられた時間遅延積分の段数を設定する、
X線検査装置。」
(2)甲2
ア 甲2の記載
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【0018】
(TDI駆動が可能なCCDラインセンサを用いた顕微鏡装置)
図5にTDI駆動が可能なCCDラインセンサを用いたディジタル顕微鏡装置を模式的に示す。図5において、1aはTDI駆動が可能な撮像ブロック、1a-1、1a-2、1a-3は撮像ブロック1aの3本のラインセンサ、100は検体を有するプレパラート、100aは検体上の注目する部分、101は対物レンズ等の光学系を示す。プレパラート100とは、スライドグラス上に検体(試料)を載置し、マウント液やカバーグラスにより検体を固定したものであり、スライドとも呼ばれる。図5において、紙面に垂直な方向(紙の厚み方向)が、ラインセンサ1a-1、1a-2、1a-3の主走査方向である。主走査方向に対し垂直な方向である紙面の左右方向が、ラインセンサ1a-1、1a-2、1a-3の副走査方向である。ラインセンサ1a-1、1a-2、1a-3はTDI駆動可能なCCDラインセンサで実現されている。
【0019】
図5において、TDI駆動が可能なCCDラインセンサを用いたディジタル顕微鏡装置による検体の撮像は、以下の様に行う。プレパラート100は不図示のステージ上に保持されており、プレパラート100を保持したステージと、撮像ブロック1a及び光学系101とが副走査方向(図5の矢印)に相対移動しながら、検体の撮像が行われる。説明を簡単にするため、以下、検体上の注目部分100aの像の処理についてのみ説明するが、検体上のその他の部分も同様に撮像され、撮像ブロック1aからは2次元の撮像データが得られる。」
(イ)
「【0022】
(TDI駆動が可能なCCDラインセンサを用いた被写界深度の拡大)
図6(a)~図6(c)にTDI駆動が可能なCCDラインセンサを利用して被写界深度を拡大する方法を模式的な図を示す。図6(a)~図6(c)において、図5で使用した同じ符号については、説明を省略する。図6(c)の符号102はガラス等の材料からなる真空(空気)より大きな屈折率を持つ透明部材である。」
(ウ)
「【0033】
図1は、本発明の第1の実施形態の顕微鏡装置に適用される撮像ブロックを構成する回路ブロックを模式的に示す図である。図1は、n個(以降、n段とも記す。nは2以上の整数。)のラインセンサを有する撮像ブロック1aを構成する回路ブロックを示している。
【0034】
図1に示すように、半導体素子には、第1段~第n段のn個のラインセンサ1a-1~1a-nと、各ラインセンサ1a-1~1a-nの出力をディジタル信号に変換するn個のアナログディジタル変換器(A/D変換器)2-1~2-nが設けられている。A/D変換器2-1~2-nの後段には、A/D変換器2-1~2-nからそれぞれ出力されるディジタル信号に対して演算処理を施すディジタル演算器が形成されている。本実施形態では、ディジタル演算器は次のように構成される。すなわち、第1段~第n段のそれぞれに、各A/D変換器の出力に対し第1の係数を乗算するn個の乗算器(演算器)3-1~3-nと、各乗算器からの出力を1ライン分のパラレルデータに変換するn個のシフトレジスタ5-1~5-nが設けられる。第1段~第n-1段のそれぞれには、パラレルデータを記憶し次の段へと(つまり、副走査方向に)パラレルデータを転送するn-1個のパラレルラッチ回路6-1~6-(n-1)が設けられる。第2段~第n段のそれぞれには、各シフトレジスタから出力されるパラレルデータと前の段のパラレルラッチ回路から転送されるパラレルデータとを加算するn-1個の加算器7-2~7-nが設けられる。第n段の加算器7-nの後段には、加算器7-nから出力されるパラレルデータをシリアルデータに変換して出力する出力段シフトレジスタ8が設けられている。また、9は除算器、10は除算に用いる第3の係数を記憶する第3のレジスタ、11は出力端子である。4-1~4-nは、各ラインに乗算する第1の係数を格納する第1のレジスタである。例えば、撮像ブロック1aは、1つの半導体チップに実現されている。すなわち、主走査方向に平行に形成される複数のラインセンサ、A/D変換器を初めとする他の回路も1つの半導体チップに実装されている半導体素子である。
【0035】
図1の構成の撮像ブロック1aに形成されたラインセンサ1a-1~1a-nは、図6(a)で説明した様に、光軸に垂直な平面に対して副走査方向に斜めに実装されている。前述したように、副走査方向のプレパラート100の相対移動に同期して各ラインセンサ1a-1~1a-nが各々電荷を発生し、電流または電圧のアナログ信号を出力する。各レジスタは不図示の制御用コンピュータに接続され、制御用コンピュータから書き込みができる。各レジスタの値は、後述する所望の特性になるように制御用コンピュータから設定される。」
(エ)
「【0037】
本発明の第1の実施形態の動作の説明を以降に記す。
第1の時刻に、検体上の注目部分100aの像がラインセンサ1a-1で受光されたとする。ラインセンサ1a-1は光電変換を行い、前述した様に注目部分100aの像(の明るさ)に対応する電流または電圧のアナログ信号を出力する。出力されたアナログ信号はA/D変換器2-1により例えば12bit幅のディジタルデータに変換される。変換されたディジタルデータには、乗算器3-1において、第1のレジスタ4-1に記憶されている係数K1が乗じられる。乗算器3-1の出力はシフトレジスタ5-1にシリアル入力される。シフトレジスタ5-1は、主走査方向にデータをシフトし、1ライン分のデータをパラレル出力する。そして次のラインセンサ1a-2が注目部分100aの撮像を行う時刻(第2の時刻)より前に、パラレルラッチ回路6-1はシフトレジスタ5-1のパラレル出力をラッチする。
【0038】
第2の時刻では、プレパラート100が副走査方向に相対移動し、検体上の注目部分100aの像がラインセンサ1a-2により光電変換され、対応するアナログ信号が出力される。出力されたアナログ信号はA/D変換器2-2により例えば12bit幅のディジタルデータに変換される。変換されたディジタルデータには、乗算器3-2において、第1のレジスタ4-2に記憶されている係数K2が乗じられる。乗算器3-2の出力はシフトレジスタ5-2にシリアル入力される。シフトレジスタ5-2は、主走査方向にデータをシフトし、1ライン分のデータをパラレル出力する。加算器7-2は、シフトレジスタ5-2のパラレル出力と、第2の時刻より前にパラレルラッチ回路6-1にラッチされたシフトレジスタ5-1のパラレル出力とを加算する。そして第3の時刻より前に、パラレルラッチ回路6-2は加算器7-2のパラレル出力をラッチする。
【0039】
同様に、第iの時刻では(2≦i≦n-1)、注目部分100aの像がラインセンサ1a-iにより光電変換され、対応するアナログ信号が出力される。出力されたアナログ信号はA/D変換器2-iにより例えば12bit幅のディジタルデータに変換される。変換されたディジタルデータには、乗算器3-iにより第1のレジスタ4-iに記憶されている係数Kiが乗じられる。乗算器3-iの出力はシフトレジスタ5-iにシリアル入力される。シフトレジスタ5-iは、主走査方向にデータをシフトし、1ライン分のデータをパラレル出力する。加算器7-iは、シフトレジスタ5-iのパラレル出力と、第iの時刻より前にパラレルラッチ回路6-(i-1)にラッチされたシフトレジスタ5-(i-1)のパラレル出力とを加算する。そして第i+1の時刻より前に、パラレルラッチ回路6-iは加算器7-iのパラレル出力をラッチする。
【0040】
第nの時刻では、注目部分100aの像がラインセンサ1a-nにより光電変換され、対応するアナログ信号が出力される。出力されたアナログ信号はA/D変換器2-nにより例えば12bit幅のディジタルデータに変換される。変換されたディジタルデータには、乗算器3-nにより第1のレジスタ4-nに記憶されている係数Knが乗じられる。乗算器3-nの出力はシフトレジスタ5-nにシリアル入力される。シフトレジスタ5-nは、主走査方向にデータをシフトし、1ライン分のデータをパラレル出力する。加算器7-nは、シフトレジスタ5-nのパラレル出力と、第nの時刻より前にパラレルラッチ回路6-(n-1)にラッチされたシフトレジスタ5-(n-1)のパラレル出力とを加算する。そして第n+1の時刻より前に、出力段シフトレジスタ8は加算器7-nの出力をパラレル入力し、各ピクセルのデータをシリアル出力する。出力段シフトレジスタ8の出力は除算器9に順次入力される。除算器9において各ピクセルの値が第3のレジスタ10に記憶されている係数D1nで除算され、注目部分100aを含む1ライン分(主走査1回分)の画像データSoutとして出力端子11に出力される。」
(オ)「【0047】
図2(a)~図2(e)は、第1のレジスタ4-1~4-nに記憶されている係数K1~Knの具体的な例を示す表である。より詳しくは、図2(a)~図2(e)は、n=7すなわち7段のラインセンサを用いた場合の係数値の一例を示している。例えば、深い被写界深度を実現する場合は、図2(a)に示すような係数を第1のレジスタ4-1~4-7に記憶することにより実現できる。また、やや浅い被写界深度を実現するためには、図2(b)や図2(c)に示すような係数を第1のレジスタ4-1~4-7に記憶することにより実現できる。図2(b)の特性は、図2(c)の特性に比べ、Z方向の変化が急峻な特性になる。さらに、光学系101の特性で決まる浅い被写界深度を実現するためには、図2(d)に示すような係数を第1のレジスタ4-1~4-7に記憶することにより実現できる。また、図2(e)に示すような係数を第1のレジスタ4-1~4-7に記憶することによって、Z方向の輝度変化の高い周波数成分を強調することが可能である。例えば、Z方向の輝度変化のエッジ成分等を強調したい場合に好適である。
【0048】
以上まとめると、被写界深度の浅い画像を要求された場合は、係数Kiの変化が激しい、すなわち分散が大きい係数Kiを設定すると好適である。また被写界深度が深い画像を要求された場合は、係数Kiの変化がなだらか、すなわち分散が小さい係数Kiを設定すると好適である。このように、本実施形態によれば、第1のレジスタの係数Kiを書き換えるだけで、撮像装置の光学系の特性、特に被写界深度を、ユーザ(観察者)の望む特性に簡単に変更することができるようになる。
【0049】
また、本発明の第1の実施形態を用いることによって、異なる顕微鏡装置の光学特性(被写界深度など)を、第1のレジスタの係数Kiを書き換えることで、容易に一致させることができるという利点もある。例えば、図6(a)の構成において、撮像ブロック1aの傾斜角度が異なる2つの撮像装置があったと仮定する。それぞれ256段のラインセンサを有しており、装置1の傾斜角度が装置2の傾斜角度の半分であるとする。例えば、装置1において、256段全ての係数K1~256を1に設定した場合には、装置2では、1~128段の係数K1~K128を1に設定し、残りの係数K129~256を0に設定することで、装置1と2の被写界深度を同等にできる。係数を0に設定するということは、対応するラインセンサの稼働をオフにする(撮像を行わない)ことに相当する。」
(カ)
「【0067】
また、本発明の第1~第3の実施形態で説明した用途以外の使い方も本発明の半導体素子は可能である。このような用途を増やすことによって、更に半導体素子のコストを下げることができる。例えば、本発明の半導体素子は、図5のように、複数のラインセンサを焦点面に平行に配置する構成のディジタル顕微鏡装置へも適用できる。このような、ディジタル顕微鏡装置では、係数を選ぶことにより明るさの調整も可能である。例えば、256段のラインセンサを持つ半導体素子について説明する。光量が非常に大きい場合、例えば、第1段の第1のレジスタの係数を1とし、以降の段の第1のレジスタの係数を0とすれば、一つのラインセンサの出力から画像が生成される。もし光量が少ない場合(例えば1/265の光量の場合)は、例えば第1のレジスタの係数は全て1とすることによって、256個のラインセンサの出力が加算されるので、光量が少ない場合であっても同等の出力レベルを得ることができる。」
(キ)
「図1
[図:0001403624000006.jpg]
」
(ク)
「図2
[図:0001403624000007.jpg]
」
(ケ)
「図5
[図:0001403624000008.jpg]
」
(コ)
「図6(a)
[図:0001403624000009.jpg]
」
イ 甲2に記載された技術的事項
上記アによれば、甲2には、次の事項(以下、「甲2記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
「主走査方向に平行に形成される、第1段~第n段のn個(nは2以上の整数。)のラインセンサ1a-1~1a-nと、各ラインセンサ1a-1~1a-nの出力をディジタル信号に変換するn個のアナログディジタル変換器(A/D変換器)2-1~2-nが設けられ、第1段~第n段のそれぞれに、各A/D変換器の出力に対し第1の係数を乗算するn個の乗算器(演算器)3-1~3-nと、各乗算器からの出力を1ライン分のパラレルデータに変換するn個のシフトレジスタ5-1~5-nが設けられ、第1段~第n-1段のそれぞれには、パラレルデータを記憶し次の段へと(つまり、主走査方向に対し垂直な方向である副走査方向に)パラレルデータを転送するn-1個のパラレルラッチ回路6-1~6-(n-1)が設けられ、第2段~第n段のそれぞれには、各シフトレジスタから出力されるパラレルデータと前の段のパラレルラッチ回路から転送されるパラレルデータとを加算するn-1個の加算器7-2~7-nが設けられ、第n段の加算器7-nの後段には、加算器7-nから出力されるパラレルデータをシリアルデータに変換して出力する出力段シフトレジスタ8が設けられ、出力段シフトレジスタ8の出力が順次入力される除算器9、除算器9における除算に用いる第3の係数を記憶する第3のレジスタ、出力端子11、各ラインに乗算する第1の係数を格納する第1のレジスタ4-1~4-n、が設けられた撮像ブロック1aであって、
スライドグラス上に検体(試料)を載置し、マウント液やカバーグラスにより検体を固定したものであるプレパラート100を保持したステージと、撮像ブロック1a及び光学系101とが副走査方向に相対移動しながら、検体の撮像が行われ、
第1の時刻に、検体上の注目部分100aの像がラインセンサ1a-1で受光され、ラインセンサ1a-1は光電変換を行い、注目部分100aの像(の明るさ)に対応する電流または電圧のアナログ信号を出力し、出力されたアナログ信号はA/D変換器2-1によりディジタルデータに変換され、変換されたディジタルデータには、乗算器3-1において、第1のレジスタ4-1に記憶されている係数K1が乗じられ、乗算器3-1の出力はシフトレジスタ5-1にシリアル入力され、シフトレジスタ5-1は、主走査方向にデータをシフトし、1ライン分のデータをパラレル出力し、次のラインセンサ1a-2が注目部分100aの撮像を行う時刻(第2の時刻)より前に、パラレルラッチ回路6-1はシフトレジスタ5-1のパラレル出力をラッチし、
第iの時刻では(2≦i≦n-1)、プレパラート100が副走査方向に相対移動し、注目部分100aの像がラインセンサ1a-iにより光電変換され、対応するアナログ信号が出力され、出力されたアナログ信号はA/D変換器2-iによりディジタルデータに変換され、変換されたディジタルデータには、乗算器3-iにより第1のレジスタ4-iに記憶されている係数Kiが乗じられ、乗算器3-iの出力はシフトレジスタ5-iにシリアル入力され、シフトレジスタ5-iは、主走査方向にデータをシフトし、1ライン分のデータをパラレル出力し、加算器7-iは、シフトレジスタ5-iのパラレル出力と、第iの時刻より前にパラレルラッチ回路6-(i-1)にラッチされたシフトレジスタ5-(i-1)のパラレル出力とを加算し、第i+1の時刻より前に、パラレルラッチ回路6-iは加算器7-iのパラレル出力をラッチし、
第nの時刻では、プレパラート100が副走査方向に相対移動し、注目部分100aの像がラインセンサ1a-nにより光電変換され、対応するアナログ信号が出力される。出力されたアナログ信号はA/D変換器2-nによりディジタルデータに変換され、変換されたディジタルデータには、乗算器3-nにより第1のレジスタ4-nに記憶されている係数Knが乗じられ、乗算器3-nの出力はシフトレジスタ5-nにシリアル入力され、シフトレジスタ5-nは、主走査方向にデータをシフトし、1ライン分のデータをパラレル出力し、加算器7-nは、シフトレジスタ5-nのパラレル出力と、第nの時刻より前にパラレルラッチ回路6-(n-1)にラッチされたシフトレジスタ5-(n-1)のパラレル出力とを加算し、第n+1の時刻より前に、出力段シフトレジスタ8は加算器7-nの出力をパラレル入力し、各ピクセルのデータをシリアル出力し、出力段シフトレジスタ8の出力は除算器9に順次入力され、除算器9において各ピクセルの値が第3のレジスタ10に記憶されている係数D1nで除算され、注目部分100aを含む1ライン分(主走査1回分)の画像データSoutとして出力端子11に出力され、
第1のレジスタの係数Kiを書き換えるだけで、被写界深度や明るさを、ユーザ(観察者)の望む特性に簡単に変更することができ、係数を0に設定するということは、対応するラインセンサの稼働をオフにする(撮像を行わない)ことに相当する、
顕微鏡装置の撮像ブロック1a。」
(3)甲3
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲3には、次の事項が記載されている。
ア
「【0010】TDI(Time Delay and Integration)センサとは、時間遅延積分方式のセンサを意味する。
【0011】TDIセンサは、図5に示すように複数の光電変換素子112の配列(以下ラインという)が、平行に数ライン配置された光電変換素子群と、TDI回路113から構成されている。
【0012】今、1ライン10個の光電変換素子の配列が、5ライン構成されているとする。
【0013】図6においてTDIセンサ108の撮像領域に入った測定対象の黒点に注目すると、黒点像が最初のラインに撮像されている状態が図6に相当する。
【0014】さらに時間が経過すると、XYΘテーブル105の移動のため、測定対象である黒点像は第2番目のラインに撮像される。この状態が図7に相当する。この像の移動と同じタイミングで、TDIセンサ108の各ライン上の光電変換素子112に蓄積された電荷を順次次のラインの対応する光電変換素子112に移動させる。この走査をラインシフトと呼ぶ。例えば、第1ラインに蓄積された電荷は、第2ラインの光電変換素子112に移動される。同様に第2ラインに蓄積されていた電荷は、第3ラインに移動される。
【0015】TDI回路113はこのように各ライン上の光電変換素子112に蓄積された電荷を順次次のラインの対応する光電変換素子112に移動させる機能を有する。
【0016】このようにして、ラインシフトをTDIセンサ108の撮像領域内で順次繰返し、最終ラインに到達した時点で(図8)、最終ラインの電荷を出力する。従って黒点の像の信号電荷は、各ラインでそれぞれ足し合わされて大レベルになる。それに対してノイズ等はランダムな変化をするので、このような足しあわせによっても必ずしも大レベルにならない。よって従来に比べて、信号に対するノイズ比であるS/N比の改善された信号を得ることができるという特長がある。」
イ
「【0026】本発明は、試料の倍率に基づいて、TDI処理における加算ライン数を決定するものである。そのため、低倍率で変倍させ、入射する光量が大きいときは、加算ライン数を少なくして試料の処理に好適な測定データを得ることができる。また、高倍率で変倍させ、入射する光量が小さいときは、加算ライン数を多くしてやればよい。このように本発明にかかる試料処理装置を用いることによって、従来必要であったフィルタ等を用いた入射光量の調整が不要となる効果があった。」
ウ
「【0033】図1は第1の実施の形態の構成図である。
【0034】光源であるArレーザ6から発せられた光は照明光学系1によって、マスクパターンが形成されているフォトマスク2を照明する。そして、フォトマスク2の像である透過光は対物レンズ系3で拡大された後、TDIセンサ4により検出され、このTDIセンサ4の出力信号は、測定データとして、データ比較回路5に送信され、マスクパターンの設計に用いた設計データと比較される。測定データと設計データの相違点を欠陥として、この欠陥があるかないかでフォトマスク2の検査を行うというのが本発明の実施の形態の検査装置である。」
エ
「【0039】移動手段であるXYテーブル7は検査対象であるフォトマスク2を保持し、このフォトマスク2を任意のXY方向に駆動する。このXYテーブル7は操作部8に内蔵されているXYテーブル駆動ドライバ9によって動作制御される。また、XYテーブル7の位置情報は位置データとしてデータ比較回路5に送信される。
【0040】変倍手段である対物レンズ系3はフォトマスク2の鉛直下方に配設され、前記照射手段によりフォトマスク2に照射された光の透過光を拡大するとともに、TDIセンサ4の光電変換素子16に結像させる機能を有する。また、対物レンズ10は倍率ごとに複数枚備わっていて、操作部8に内蔵されている倍率設定回路11からの倍率信号を受信したレンズ切替え装置12によって、設定された倍率の対物レンズに切り替えられる。
【0041】TDIセンサ4は、撮像手段である光電変換素子16と、TDI処理手段であるTDI回路25とから構成される。この光電変換素子16は、図2に示されるように、直線上に等間隔で配列された1024個の光電変換素子16の列(以下ラインという)が、平行に64本配置された構成となっている。一つの光電変換素子16が一つの画素を構成している。
【0042】この光電変換素子16により、前記変倍手段で拡大された透過光によるフォトマスク2の像は撮像され、光量および光電変換素子16の検知時間に応じた電気的信号に変換された後、A/D変換回路によってデジタル化された信号(以下光強度出力信号という)に変換される。このようにして、光電変換素子16から構成される画素は、画素値を得ることができる。
【0043】TDI回路25は1ラインからの光強度出力信号と隣のラインからの光強度出力信号とを、XYテーブル7の駆動に同期させて順次足しあわせるというTDI処理を行う。このとき足しあわせるライン数は、倍率設定回路11からの倍率信号によって決定される。すなわち倍率設定回路は、足し合せるライン数を決定する決定手段としての機能も有する。
【0044】こうして光強度出力信号を足し合せて得られたデータ(以下測定データという)は、処理手段であるデータ比較回路5に送信される。このデータ比較回路5は操作部8に内蔵されている。」
オ
「【0051】また、TDIセンサ4は倍率設定回路11からの倍率信号に応じて、光強度出力信号を足しあわせるライン数を変更する。例えば足しあわせるライン数を32ラインとする。
【0052】以後検査が開始される。
【0053】光源からの光は照明光学系1を介して、フォトマスク2上に照射される。照射された光の透過光は対物レンズ10によって所定の倍率に拡大された後、TDIセンサ4の光電変換素子16によって撮像される。
【0054】光電変換素子16は撮像した光を電気的信号に変換する。
【0055】この電気的信号はアンプで増幅された後、A/D変換されデジタル化された信号(以下光強度出力信号という)となる。この動作とともに、XYテーブル7は、ラインの方向と略直角方向に移動する。従って、対物レンズ系3により拡大された像と、撮像手段であるTDIセンサの相対位置は移動することとなる。また、その移動方向は、ラインの方向と略直角方向なので、拡大された像の同一の部位は、この移動方向と同じ方向にある画素によって順次撮像されることになる。TDI回路25によって画素値である前記光強度出力信号のうち、像の同一の部位に対する画素値を足し合わされる。いま、32ライン分の画素値がTDI回路25によって足し合わされることになる。」
カ
「図1
[図:0001403624000010.jpg]
」
キ
「図2
[図:0001403624000011.jpg]
」
(4)甲第4号証
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって特許異議申立書において証拠方法として提示された甲第4号証(特開平10-197463号公報;以下、「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア
「【0007】本発明の請求項2は、請求項1に付け加え、前記電子検出器は、TDIアレイCCDとした。本発明の請求項3では、請求項2に付け加え、前記TDIアレイCCDは積算ライン可変型であり、前記積算ライン数は検査対象試料の状態に応じて設定を可変とした。」
イ
「【0012】まず始めに、積算ライン可変型TDIアレイCCDについて簡単に説明する。第2図は、積算ライン可変型96段TDI(Time-Delay-Integration)アレイCCDのブロック図である。C1~C2048の2048個のCCD画素が水平方向に並んでいるライン状のCCDステージが、Row1~Row96の96個だけ垂直方向に並べられている。各CCDステージ上の蓄積電荷は、外部から供給される1垂直クロック信号により、一度に垂直方向へ1ステージ分だけ転送されるしくみになっている。
【0013】積算ライン数が外部からの信号により最大の96ラインに設定されている場合、例えばある時点でRow96に撮像された2048画素の画像が、垂直方向に1ステージ分だけ移動し、それと同期して垂直クロック信号が与えられると、Row96に撮像されたライン画像はRow95に転送される。そこで同じ画像を撮像し続けるので、蓄積される画像の電荷は2倍になる。続けて画像が垂直方向にさらに1ステージ分移動し、同期クロック信号が与えられると、蓄積画像はRow94に転送され、そこで3倍の画像電荷を蓄積する。
【0014】以下順々に、画像の移動に追随してRow1まで電荷の転送と撮像を繰り返し終わると、96倍の画像電荷を蓄積した結果が水平出力レジスタからシリアルに画像データとして取り出される。以上のような動作が、各ステージRow1~Row96で同時に行われ、2次元の画像(2048画素×96画素)を垂直方向に送りながら、96倍の画像電荷を蓄積した画像を、1ラインずつ同期して取り出していくことが可能となる。
【0015】外部制御により、積算ライン数を可変にする場合は、以下のようになる。このカメラの場合、積算ラインは、96、48、24、12、6段の5通りが選択可能になっている。例えば、48段に設定された場合は、CSS48で図示されているライン状の箇所で、転送電荷はカットされる構造になっている。つまり48段設定の場合、実際に撮像に寄与するのはRow1~Row48までに限定される。他の段数設定の場合は、その段数に応じて、CSS24、CSS12、CSS6、の箇所で転送電荷がカットされるようになる。」
ウ
「【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、TDIカメラでの積算ライン数を選択可能とできるので、1次ビーム電流量をある程度、試料の表面状態や表面材質に合わせて最適化することが可能となる。従って、試料の1次ビーム照射によるチャージアップや、汚染などのダメージを、最小限に抑えることが可能となる。」
エ
「図2
[図:0001403624000012.jpg]
」
(5)甲5
ア 甲5の記載
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【請求項1】赤外信号処理のための焦点面アレイ・プロセッサにおいて、
赤外信号を受信する焦点面アレイと、
前記焦点面アレイからデータを受信しかつ信号を出力するアナログ・マルチプレクサと、
前記焦点面アレイからの多重化された信号をデジタル化するアナログ・デジタル変換器とを有し、
前記焦点面アレイ、前記アナログ・マルチプレクサ及び前記アナログ・デジタル変換器が液体窒素温度以下において動作し、
さらに、前記焦点面アレイからのデジタル化された出力を受信し、かつ該焦点面アレイにおいて生じる不均一性とガンマ線スパイクについて補正された前記受信された赤外信号を示す信号を出力する、単一基板上に形成された時間依存信号プロセッサを有する、
焦点面アレイ・プロセッサ。」
(イ)
「【0004】焦点面アレイ(FPA)16は、個々の検知素子又はピクセル(pixel:画素)のマトリクスであり、入射フォトンがあたることにより電子を放出する。「ピクセル」という用語は「ピクチャ・エレメント」(picture element)の略語であって、情景の中で最小単位の独自に規定できる素子である。各ピクセルの値は、検知器上に入射する赤外エネルギーの量を表している。検知器により放出される電子は、各ピクセル下において捕獲され、そして捕獲された電子の量は、そのピクセルの直視視野(immediate field of view:IFOV)内の物体の強度に直接的に比例する。典型的な焦点面アレイは、128×128の素子のマトリクスとして配置された16384個のピクセルからなる。アレイ内の全てのピクセルからのデータは、その情景のスナップショットとして読取ることができる。このスナップショットは、赤外データのフレームと呼ばれる。」
(ウ)
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の信号プロセッサは、アナログからデジタルへの変換、不均一性補正及びガンマ線スパイク補償を、デュワびん内部の単一のシリコン基板上で全てデジタル的に行う。信号プロセッサは、FPAデータの信号対雑音比を向上させるための時間遅延の積分や空間フィルタリング等の付加的なアルゴリズムをサポートする。このプロセッサはプログラム可能であって、システム稼働中は信号プロセッサのアルゴリズムにより用いられる係数を変更することができ、もし不要であれば除くこともできる。このプロセッサは、赤外データ中の目標物の信号対ノイズ比を向上させ、赤外FPAからの出力データの帯域幅を2桁程低減させる。」
(エ)
「【0011】プログラム可能焦点面上信号プロセッサ
このタスクには、2段階のデュワびん又は冷却器が必要である。A/D変換器は4°Kにおいて動作しなければならず、かつシリコン上のCMOS VLSIチップ(VCOS)は77°Kにおいて動作しなければならない。図1は、第1段目のデュワびんに取付けられた冷却片突起上の1つのシリコン基板(19)にある焦点面アレイ(1)とそのマルチプレクサ回路(2)を示している。FPAは、最大フレーム速度が400フレーム/秒(fps)である256×256のピクセルと同じ大きさとする。
【0012】FPAからのアナログ出力は、アナログ・マルチプレクサ(2)により多重化され、単一の直列ワイヤを介してアナログ・デジタル(A/D)変換器(3)へ転送される。A/D変換器は、別のシリコン基板(20)へ接続されているが、FPA基板(19)と同じ冷却片上に設置されるか又はそのデュワびん内部に設置することもできる。A/D変換器は、アナログ・マルチプレクサの出力に対し毎秒2620万回の変換を行ないかつ16ビットの精度がなければならない。いくつかのA/D変換器は、これらの特徴を備えている。例えば、Hypress(商標)のA/D変換器は、フラックス定量化技術を用いており、窒化ニオブによる超伝導量子干渉素子(SQUID)から製造される。現在、Hypressは、200MHzにおいて動作する16ビットのビット分解能をもつA/D変換器を製造している。データのフォーマットは交互配置されたフレームとなる。すなわち、4個の連続するフレームにより最初のピクセルに対する4個のサンプルが出力され、続いて第2のピクセルの4個のサンプルが出力される、等々である。これらのデータは、並列のビットとして第2段目のデュワびんに渡される。」
(オ)
「【0018】図1は、VCOSパッケージ内の12個の論理チップの配置を示している。VCOS内の補正回路素子(8)へのデータ入力は、16ビット幅である。図1の補正回路素子は、ガンマ線の回避、不良ピクセルの検知、不良ピクセルの補正、不均一性の補正並びに時間遅延及び積分を実行する。この素子は、いくつかのメモリ素子(4、5、12、13)とのインターフェースを行い、そしてその結果を空間フィルタ素子(9、10)へ送る。空間フィルタ素子は、補正回路素子からの整数データをフローティング・ポイントへ変換し、データに対して別々のフィルタ処理を行い、空間フィルタリングされたデータをしきい値素子、平均素子及び標準偏差素子(11、14、15、6、7)へ渡す。空間フィルタリング及びしきい値処理は、IEEE32ビット・フローティング・ポイント・フォーマットを用いて行われる。VCOS内の全ての論理チップは、0.5μの外形サイズをもち、100Mzで動作する。」
(カ)
「【0023】アルゴリズムのインプリメンテーション
次に、後述の時間依存処理アルゴリズムのインプリメンテーション(実動化)を詳述する。各アルゴリズムのインプリメンテーションを、処理が発生する順に説明する。図2は、この信号プロセッサについてのハイレベルのアルゴリズムの流れを示している。」
(キ)
「【0027】応答性の補正
応答性の補正は、2つのステージで実行される。すなわち、不良ピクセル処理及び不均一性補正である。
【0028】不良ピクセルの処理
不良ピクセル処理の2つの要素は、不良ピクセルの検知と不良ピクセルの補正である。これらについては次に詳述する。
【0029】不良ピクセルの検知
不良ピクセルの検知は、ゼロ又は65535に対する各ピクセルからのデータを検査する。これらの条件のいずれかが当てはまれば、そのピクセルは不良ピクセルとしてリストに挙げられ、このピクセルの位置が不良ピクセル・リストに送られる。
【0030】図4は、不良ピクセル検知回路を示している。各ピクセル値についての16ビット全てが、16個の入力をもつNANDゲート40とORゲート42へ同時に入力する。もし、NANDゲート又はORゲートのいずれかの出力がゼロであれば、それぞれ、そのピクセルの値が65536又はゼロのいずれかであること意味しており、そのピクセルは不良であるとされる。NANDゲート及びORゲートからの出力は、2個の入力をもつANDゲート44へ入力される。ANDゲート44は、もしピクセルが不良であればゼロを出力し、そしてこの値によりラッチ46は16ビット・バイナリ・カウンタの値を保持する。さらにこの信号は、不良ピクセル補正回路において不良ピクセル・インジケータとして用いられる。このカウンタは、データのフレーム内のピクセルの位置を含む。
【0031】カウンタは、各フレームの初期にリセットされ、ピクセル・クロック信号によりクロックを与えられる。ピクセル・クロックは、新しいピクセル値が不良ピクセル検知回路へ入力される毎に、カウンタを増分させる。カウンタの出力は、16ビット・ラッチへ入力される。ラッチがANDゲート出力によりストローブされるとき、フレーム内の最初のピクセルに対して相対的なピクセルの位置がラッチに記憶され、不良ピクセルリストに含めるべくプロセス・コントローラ素子へ送る。
【0032】不良ピクセルの補正
不良ピクセルの補正アルゴリズムは、不良ピクセルをその左隣り(前のピクセル)と右隣り(次のピクセル)の平均で置換えることである。図5に、不良ピクセル補正回路を示す。この回路への入力は、入力データと、不良ピクセル検知回路からの不良ピクセル・インジケータ信号である。不良ピクセル・インジケータ信号がロー(low)になる(すなわち、現ピクセルが不良であることを示す)とき、図5のレジスタ50、52、54の内容は、現ピクセルと前の2つのピクセルの値を含んでいる。アルゴリズムを実行するためには、直前のピクセルと現ピクセルと次のピクセルが3つのレジスタ内に捕捉される必要がある。しかしながら、左隣りと右隣りの値を第1及び第3のレジスタに捕捉するためには、不良ピクセル・インジケータ信号を1クロック周期分だけ遅延する必要がある。不良ピクセル・インジケータ信号は1ビットのフリップ・フロップ56にラッチされ、そして次のクロック周期がアクティブとなるとき、左隣りと右隣りの値同士が加算され、平均化されて不良ピクセルの代りに出力される。もし現ピクセルが不良でなければ、この回路はそのピクセル値を変えることなく通過させる。」
(ク)
「【0041】時間遅延及び積分
図8は、時間遅延及び積分(TDI)ステージは、和演算及びダンプ積分器として実行される。多数の連続するフレーム、N個が平均化され、その結果が空間フィルタ素子へ出力される。集積されたフレーム数Nはまた、スケーリング定数でもあり、プロセス・コントローラ素子により与えられる。この設計では、Nとして0、2、4、又は8の値をとることができる。」
(ケ)
「図1
[図:0001403624000013.jpg]
」
(コ)
「図2
[図:0001403624000014.jpg]
」
(サ)
「図4
[図:0001403624000015.jpg]
」
(シ)
「図5
[図:0001403624000016.jpg]
」
イ 甲5に記載された技術的事項
上記アによれば、甲5には、次の事項(以下、「甲5記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
「個々のピクセルのマトリクスであり、赤外信号を受信する焦点面アレイからのデジタル化された出力を受信する時間依存信号プロセッサが、不良ピクセル処理の後に時間遅延及び積分(TDI)ステージを実行し、不良ピクセル処理の2つの要素は、不良ピクセルの検知と不良ピクセルの補正であり、不良ピクセル検知回路による不良ピクセルの検知は、ゼロ又は65535に対する各ピクセルからのデータを検査するものであり、各ピクセル値についての16ビット全てが、16個の入力をもつNANDゲート40とORゲート42へ同時に入力され、もし、NANDゲート又はORゲートのいずれかの出力がゼロであれば、それぞれ、そのピクセルの値が65536又はゼロのいずれかであること意味しており、そのピクセルは不良であるとされ、NANDゲート及びORゲートからの出力は、2個の入力をもつANDゲート44へ入力され、ANDゲート44は、もしピクセルが不良であればゼロを出力し、そしてこの値によりラッチ46は16ビット・バイナリ・カウンタの値を保持し、このカウンタは、データのフレーム内のピクセルの位置を含み、さらに、ANDゲート44から出力されるゼロの信号は、不良ピクセル補正回路において不良ピクセル・インジケータとして用いられ、不良ピクセル補正回路への入力は、入力データと、不良ピクセル検知回路からの不良ピクセル・インジケータ信号であり、不良ピクセル補正回路において、不良ピクセル・インジケータ信号が1クロック周期分だけ遅延されており、不良ピクセル・インジケータ信号は1ビットのフリップ・フロップ56にラッチされ、そして次のクロック周期がアクティブとなるとき、左隣りと右隣りの値同士が加算され、平均化されて不良ピクセルの代りに出力される。」
(6)甲6
ア 甲6の記載
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【請求項1】光学系の走査方向に配列されたn個(但し、nは2以上の整数である。)の受光素子から出力される画素信号を時間遅延積分するTDI回路であって、p個(但し、pはp=knを満足する整数であり、kは正の整数である。)の積分容量と、同一撮像点の画素信号は、同一の積分容量に供給されるように、前記n個の受光素子から出力される画素信号を前記p個の積分容量に供給するスイッチング回路網とを備えていることを特徴とするTDI回路。」
(イ)
「【請求項5】前記n個の受光素子のそれぞれに対応させて設けられ、対応する受光素子から出力される画素信号を入力するためのn個の入力端子と、
前記n個の入力端子のそれぞれに対応させて設けられ、第1の電流入出力電極を対応する入力端子に接続され、制御電極に一定電圧が印加されるn個の入力トランジスタと、
前記n個の入力トランジスタのそれぞれに対応させて設けられ、第1の電流入出力電極を対応する入力トランジスタの第2の電流入出力電極に接続され、第2の電流入出力電極を前記スイッチング回路網に接続されたn個の画素選択トランジスタと、
欠陥画素情報に基づいて、前記n個の画素選択トランジスタのそれぞれのオン、オフを制御する画素選択制御回路とを備えていることを特徴とする請求項1記載のTDI回路。」
(ウ)
「【請求項8】画素選択制御回路は、前記n個の画素選択トランジスタのそれぞれに対応させて設けられたn個のRSフリップフロップ回路と、
前記n個のRSフリップフロップ回路のそれぞれに対応させて設けられ、欠陥画素情報を記憶させるレジスタと、
前記n個のRSフリップフロップ回路のそれぞれに対応させて設けられ、一端を対応するレジスタの出力端に接続され、他端を対応するRSフリップフロップ回路のリセット信号入力端子に接続され、書込み信号によりオン、オフが制御されるn個の第1のスイッチ素子と、
前記n個のRSフリップフロップ回路のそれぞれに対応させて設けられ、一端を高電位側の電源線に接続され、他端を対応するRSフリップフロップ回路のリセット信号入力端子に接続され、リセット信号によりオン、オフが制御されるn個の第2のスイッチ素子とを備えていることを特徴とする請求項5、6又は7記載のTDI回路。」
(エ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撮像センサから得られる画素信号のS/N比を向上させる時間遅延積分回路、いわゆる、TDI(time delay and integration)回路、画像信号読出回路及び撮像デバイスに関する。
【0002】例えば、赤外線ラインセンサのように、被写体に対して相対的に機械走査する撮像センサにおいて、高いS/N比を得るためには、複数の画素を撮像センサの被写体に対する相対的走査方向に配列し、TDI回路を使用して同一の撮像点の画素信号を時間遅延積分する必要がある。
【0003】
【従来の技術】従来、TDI回路として、例えば、撮像センサから出力される信号電荷をCCD(charge coupled device)からなる電荷転送路を転送させながら積分していくTDI回路が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、CCDを使用したTDI回路は、撮像センサの欠陥画素を非選択にすることが困難であり、全ての走査チャネルで高いS/N比を実現することが困難であるという問題点を有していた。
【0005】本発明は、かかる点に鑑み、欠陥画素からの画素信号を遮断できるようにし、高いS/N比を得ることができるようにしたTDI回路、画像信号読出回路及び撮像デバイスを提供することを目的とする。」
(オ)
「【0023】第1実施形態・・図1~図9
図1は本発明のTDI回路の第1実施形態を赤外線ラインセンサに形成された受光素子の一部と共に示す回路図であり、図1中、1-1、1-2、1-3、1-4は赤外線ラインセンサの走査方向に一列に配列された受光素子、2は本発明のTDI回路の第1実施形態である。
【0024】本発明のTDI回路の第1実施形態2において、3-1、3-2、3-3、3-4は受光素子1-1、1-2、1-3、1-4から出力される画素信号G1、G2、G3、G4を入力するための入力端子、4は入力回路である。」
(カ)
「【0029】図2は入力回路4の構成を示す回路図であり、図2中、13-1、13-2、13-3、13-4は入力トランジスタをなすnMOSトランジスタ、VIGはnMOSトランジスタ13-1、13-2、13-3、13-4のゲートに印加するゲートバイアス電圧である。
【0030】また、14-1、14-2、14-3、14-4は欠陥画素からの画素信号を遮断するための画素選択トランジスタをなすnMOSトランジスタ、15はnMOSトランジスタ14-1、14-2、14-3、14-4のオン、オフを制御する画素選択制御回路、DS1、DS2、DS3、DS4は画素選択制御回路15から出力される画素選択制御信号である。
【0031】図3は画素選択制御回路15の構成を示す回路図であり、図3中、16はシフトレジスタ、17-1、17-2、17-3、17-4はシフトレジスタ16を構成する1ビットのレジスタ、18-1、18-2、18-3、18-4はRSフリップフロップ回路である。
【0032】また、19-1、19-2、19-3、19-4は書込み信号Wによりオン、オフが制御されるpMOSトランジスタ、20-1、20-2、20-3、20-4はリセット信号Rによりオン、オフが制御されるpMOSトランジスタ、21は電源電圧Vddを供給する電源線である。」
(キ)
「【0087】このようにすると、受光素子1-1~1-4が出力する画素信号G1~G4を個別に得ることができるので、この状態で、欠陥の画素(欠陥の受光素子)の判定を行う欠陥画素情報を得て、この欠陥画素情報を外部メモリ等に記憶させるようにする。
【0088】そして、TDI走査を開始する前に、外部メモリ等に記憶させた欠陥画素情報をシフトレジスタ16に記憶させるようにする。この場合、シフトレジスタ16の欠陥のない画素に対応するレジスタにはLレベル、シフトレジスタ16の欠陥画素に対応するレジスタにはHレベルを記憶させるようにする。
【0089】次に、セット信号S=Hレベルとし、画素選択制御信号DS1~DS4=Hレベルとした後、書込み信号W=Lレベルとし、レジスタ17-1~17-4の記憶レベルをRSフリップフロップ回路18-1~18-4のリセット信号入力端子に印加する。
【0090】このようにすると、RSフリップフロップ回路18-1~18-4のうち、リセット信号入力端子にHレベルが印加されたRSフリップフロップ回路から出力される画素選択制御信号はLレベルとなるので、nMOSトランジスタ14-1~14-4のうち、欠陥画素に対応して設けられているnMOSトランジスタはOFFとされ、欠陥画素からの画素信号はスイッチング回路網5には供給されないことになる。
【0091】このように、本発明のTDI回路の第1実施形態2によれば、受光素子1-1~1-4から出力される画素信号G1~G4をスイッチング回路網5を介して積分容量40-1~40-4に供給することによってTDI機能を達成するようにしたことにより、入力回路4に画素選択トランジスタをなすnMOSトランジスタ14-1~14-4を備えてなる回路構成の簡単な画素選択回路を設け、欠陥画素からの画素信号を遮断することができるので、S/N比の向上を図ることができ、これを4個の画素を走査方向に配列してなる赤外線ラインセンサに使用する場合には、全ての走査チャネルで高いS/N比を得ることができる。」
(キ)
「図1
[図:0001403624000017.jpg]
」
(ク)
「図2
[図:0001403624000018.jpg]
」
(ケ)
「図3
[図:0001403624000019.jpg]
」
イ 甲6に記載された技術的事項
上記アによれば、甲6には、次の事項(以下、「甲6記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
「光学系の走査方向に配列されたn個(但し、nは2以上の整数である。)の受光素子から出力される画素信号を時間遅延積分するTDI回路であって、
p個(但し、pはp=knを満足する整数であり、kは正の整数である。)の積分容量と、
同一撮像点の画素信号は、同一の積分容量に供給されるように、前記n個の受光素子から出力される画素信号を前記p個の積分容量に供給するスイッチング回路網と、
前記n個の受光素子のそれぞれに対応させて設けられ、対応する受光素子から出力される画素信号を入力するためのn個の入力端子と、
前記n個の入力端子のそれぞれに対応させて設けられ、第1の電流入出力電極を対応する入力端子に接続され、制御電極に一定電圧が印加されるn個の入力トランジスタと、
前記n個の入力トランジスタのそれぞれに対応させて設けられ、第1の電流入出力電極を対応する入力トランジスタの第2の電流入出力電極に接続され、第2の電流入出力電極を前記スイッチング回路網に接続されたn個の画素選択トランジスタと、
欠陥画素情報に基づいて、前記n個の画素選択トランジスタのそれぞれのオン、オフを制御する画素選択制御回路と、を備え、
画素選択制御回路は、前記n個の画素選択トランジスタのそれぞれに対応させて設けられたn個のRSフリップフロップ回路と、
前記n個のRSフリップフロップ回路のそれぞれに対応させて設けられ、欠陥画素情報を記憶させるレジスタと、
前記n個のRSフリップフロップ回路のそれぞれに対応させて設けられ、一端を対応するレジスタの出力端に接続され、他端を対応するRSフリップフロップ回路のリセット信号入力端子に接続され、書込み信号によりオン、オフが制御されるn個の第1のスイッチ素子と、
前記n個のRSフリップフロップ回路のそれぞれに対応させて設けられ、一端を高電位側の電源線に接続され、他端を対応するRSフリップフロップ回路のリセット信号入力端子に接続され、リセット信号によりオン、オフが制御されるn個の第2のスイッチ素子とを備え、
前記n個の受光素子は、赤外線ラインセンサの走査方向に一列に配列された受光素子1-1、1-2、1-3、1-4、
前記n個の入力端子は、受光素子1-1、1-2、1-3、1-4から出力される画素信号G1、G2、G3、G4を入力するための入力端子3-1、3-2、3-3、3-4、
前記n個の入力トランジスタは、入力トランジスタをなすnMOSトランジスタ13-1、13-2、13-3、13-4、
前記n個の画素選択トランジスタは、欠陥画素からの画素信号を遮断するための画素選択トランジスタをなすnMOSトランジスタ14-1、14-2、14-3、14-4、
前記n個のRSフリップフロップ回路は、RSフリップフロップ回路18-1、18-2、18-3、18-4、
前記レジスタは、シフトレジスタ16を構成する1ビットのレジスタ17-1、17-2、17-3、17-4、
前記n個の第1のスイッチ素子は、書込み信号Wによりオン、オフが制御されるpMOSトランジスタ19-1、19-2、19-3、19-4、
前記n個の第2のスイッチ素子は、リセット信号Rによりオン、オフが制御されるpMOSトランジスタ20-1、20-2、20-3、20-4、であり、
TDI走査を開始する前に、外部メモリ等に記憶させた、欠陥の画素(欠陥の受光素子)の判定を行う欠陥画素情報をシフトレジスタ16に記憶させるようにし、この場合、シフトレジスタ16の欠陥のない画素に対応するレジスタにはLレベル、シフトレジスタ16の欠陥画素に対応するレジスタにはHレベルを記憶させるようにし、
セット信号S=Hレベルとし、画素選択制御回路15から出力される画素選択制御信号DS1~DS4=Hレベルとした後、書込み信号W=Lレベルとし、レジスタ17-1~17-4の記憶レベルをRSフリップフロップ回路18-1~18-4のリセット信号入力端子に印加すると、
RSフリップフロップ回路18-1~18-4のうち、リセット信号入力端子にHレベルが印加されたRSフリップフロップ回路から出力される画素選択制御信号はLレベルとなるので、nMOSトランジスタ14-1~14-4のうち、欠陥画素に対応して設けられているnMOSトランジスタはOFFとされ、欠陥画素からの画素信号はスイッチング回路網5には供給されない、
TDI回路。」
(7)甲第7号証
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって特許異議申立書における証拠方法として提示された甲第7号証(特開2009-222624号公報;以下、「甲7」という。)には、次の事項が記載されている。
ア
「【0010】
(測定画像生成部)
測定画像生成部14は、受光装置30と偽像除去部40などを備えている。受光装置30は、図4に示すように、時間遅延積分センサ32を複数個つなげた受光部を備えている。時間遅延積分センサ(TDIセンサ)32は、フォトダイオードアレイ、CCD受光素子などが使用され、走行方向に積分段数だけキャリア(電荷)を積分するセンサである。時間遅延積分センサ32は、段数に比例する感度向上が得られ、素子のばらつきや照明の明るさの変動等のノイズを低減することができる。偽像除去部40は、各時間遅延積分センサ32で受像した画像の出力値について、基準値との比較、平均値の算出などの演算処理をして、光の強さなどから通常検出しない異常に大きな出力値、即ち基準値を超える異常な画素値、即ち偽像を除去するものである。ここで、基準値は、通常検出しない大きな出力値を考慮して、又は、すべての出力値の平均値などの種々の演算処理で得られた値を考慮して求められる。」
イ
「【0024】
詳しくは、偽像除去部40において、第1の時間遅延積分センサ32aの各画素36の出力値(画素値)は、基準値と比較され、基準値を超える場合、偽像と判断して、廃棄される。同様に、第2~第Nの時間遅延積分センサ(TDI2~TDIN)32b~32nについても、それぞれの出力値が基準値以下か否か判断される(ステップS10)。基準値以下でない画素値は、偽像として廃棄される(ステップS11)。基準値以下の画素値は、合計されて平均値として算出される(ステップS12)。平均値は、偽像を含まない測定画像として、比較部24に送られて、基準画像と比較されて、欠陥の有無が検査される(ステップS13)。」
(8)甲8
ア 甲8の記載
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲8には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【請求項1】 TDI型の赤外線検知器を用いた赤外線撮像装置において、
前記赤外線検知器内に複数の列を成すように並べられており、赤外線の強度を検知する検知素子と、
欠陥のある検知素子に関する情報を保持する、書き替え可能な記憶手段と、
前記記憶手段内の情報において欠陥ありと示された検知素子の出力信号を除外して、各検知素子からの検知信号を出力する取捨選択手段と、
赤外線を前記検知素子に集光する赤外線集光手段と、
前記検知素子が前記赤外線集光手段からの赤外線を見込んだ際の検知素子出力を解析し、欠陥素子を検出する欠陥素子検出手段と、
前記欠陥素子検出手段にて検出された欠陥素子の出力信号を使用しないように、前記記憶手段の内容を書き換える欠陥素子情報更新手段と、
を有することを特徴とする赤外線撮像装置。」
(イ)
「【請求項3】 前記欠陥素子検出手段は、電源投入時に欠陥素子の検出を行うことを特徴とする請求項1記載の赤外線撮像装置。」
(ウ)
「【0014】図72は、従来のTDI回路の内部構成を示す図である。TDI回路340には、欠陥素子置き換え情報保持部341が設けられている。欠陥素子置き換え情報保持部341はROM(Read Only Memory)であり、赤外線検知機内の欠陥素子アドレス等の情報が設定されている。また、A/D変換器331~334から送られてきた信号は、セレクタ342で受け取られる。セレクタ342は、欠陥素子置き換え情報保持部341の内容を参照し、欠陥素子からの信号を、隣接する別の素子の信号に置き換える。それらの信号は、加算器343に送られる。加算器343では、入力された各列の信号を加算し、除算器344に送る。除算器344は、入力された信号を列の数(図の例では4)で除算し、基準熱源制御部351や感度補正回路353へ出力する。
【0015】このような赤外線撮像装置によれば、赤外線検知器内の検知素子の一部に欠陥素子が含まれていても、その欠陥素子の情報を予め欠陥素子置き換え情報保持部341に設定しておくことで、欠陥素子からの信号を取り除くことができる。その結果、生成された画像に欠陥素子の影響がでず、モニタ上にきれいな画像を表示することができる。」
(エ)
「【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の原理構成図である。本発明の赤外線撮像装置は、TDI型の赤外線検知器1を用いている。TDI型の赤外線検知器1では、多数の検知素子1aが複数の列に並べられている。図の例では4列に並べられている。検知素子1aは、赤外線の強度を検知し、電気信号に変換する機能を有する。また、赤外線検知器1a内には記憶手段1bが設けられている。この記憶手段1bは、書き換え可能であり、各検知素子1aの良不良に関する情報を保持する。取捨選択手段1cは、記憶手段1b内の情報に基づいて、検知素子1a毎の信号を取捨選択して出力する。
【0023】赤外線集光手段2は、外部から入射した赤外線を赤外線検知器1へ走査するとともに、一定量の赤外線を検知素子に向かって照射する機能を有する。そのために、光学系2a,2c及び走査系2bを有する。光学系2aは、外部からの赤外線を走査系2bに送る。
【0024】また、赤外線集光手段2の両側に基準熱源5,6が設けられている。基準熱源5は、撮像対象物の置かれた環境より高温の一定の温度を保っている。基準熱源6は、撮像対象物の置かれた環境と同程度の温度を保っている。そして、赤外線集光手段2の走査系2bは、外部からの赤外線や基準熱源5,6からの赤外線を、走査させながら光学系2cの方向へ導く。光学系2cは、走査系2bから送られた赤外線を検知素子1a上に集光させる。
【0025】欠陥素子検出手段3は、検知素子1aが赤外線集光手段2からの赤外線を見込んだ際の検知素子出力を解析し、欠陥素子を検出する。欠陥素子情報更新手段4は、欠陥素子検出手段3が検出した欠陥素子の出力信号が使用されないように、記憶手段1bの内容を書き換える。
【0026】このような赤外線撮像装置によれば、赤外線集光手段2の基準熱源5,6から発せられた赤外線は、走査系2b、光学系2cを介して赤外線検知器1の検知素子1a上に照射する。すると、各検知素子1aの検知信号が欠陥素子検出手段3に送られ、欠陥素子の判別が行われる。すると、欠陥素子情報更新手段4によって、欠陥素子の検知信号が使用されないように記憶手段1bの内容が更新される。一方、外部から入射した赤外線は、光学系2a、走査系2b、光学系2cを介して、赤外線検知器1の検知素子1a上に走査される。図の例では、撮像対象物の像が、検知素子1aの配列上を水平方向に移動することになる。これにより、各列の同じ段(図中の検知素子の上から数えた場合の順番)に位置する検知素子には、時間差を持って同じ像が結像することになる。これらの検知素子1aで検知された信号は、取捨選択手段1cに送られる。すると、取捨選択手段1cが記憶手段1bの内容を参照することで、欠陥素子を認識し、その欠陥素子からの出力信号を除外し、正常な検知素子からの信号のみをTDI回路へ送信する。その後は、通常のTDI処理が施され、画像が表示される。
【0027】これにより、赤外線撮像装置の運用中においても、即座に欠陥素子に関する情報を更新し、欠陥素子に関する最新の情報を用いて赤外線撮像を行うことが可能となる。その結果、運用中に検知素子に一部が破壊されても常に正常な素子のみの出力が得られるようになり、表示される画像の劣化が低く押さえられる。
【0028】次に、本実施の形態を具体的に説明する。以下の説明では、3つの実施の形態を示す。全実施の形態は、感度補正モードとオンチップメモリ更新モードの2つを持つ。感度補正モードは感度補正係数算出、感度補正をリアルタイムに行うモードであり、最新のフィールドを含む過去16フィールド分(1フィールドは32ライン)の取得データを用いて感度補正係数を算出し、常に最新の係数を常に用いてリアルタイムに感度補正を行う。オンチップメモリ更新モードは素子判定、TDI素子選択情報生成、ゲイン設定値生成、オンチップメモリへのシリアル送信を行うモードであり、このモードでは16フィールド分(1フィードは16ライン)の取得データを用いて情報値を生成し、オンチップメモリ更新処理を行う。装置を起動し、赤外線検知器信号が出力可能になった直後と、装置運用中にて外部からのトリガ信号を受信したときの両方についてオンチップメモリ更新モードとなる。オンチップメモリ更新モードでは、赤外線画像撮像化処理を停止し、赤外線検知器内にある検知器出力情報格納メモリであるオンチップメモリにアクセスし、TDI素子選択情報と検知器出力ゲイン値を更新する。更新完了後、オンチップメモリ更新モードを終了して感度補正モードに移ることで赤外線画像撮像化処理を開始し、画像信号を外部へ出力する動作を行う。」
(オ)
「【0037】赤外線検知器20は、赤外線をアナログの電気信号に変換する機能を有する。検知素子が4列に配置されている。図5は、検知素子の配列を示す図である。検知素子は、4列に並べられている。以後、各列をa列、b列、c列、d列とする。この場合、a列側からd列側に向かって走査が行われる。1つの列には、180個の検知素子が一直線に並べられている。各検知素子には、列毎に1~180の素子番号が付与されている。
【0038】図2に戻り、赤外線検知器20の出力は、アンプ31~34に送られる。また、赤外線検知器20内にはオンチップメモリ21が搭載されている。オンチップメモリ21は、検知器出力情報を格納するのに利用される。オンチップメモリ21には全素子分(素子番号×TDI段数列)のTDI素子選択情報と検知出力ゲイン設定値が格納される。TDI素子選択情報と検知出力ゲイン設定値はDSP(Digital Signal Processor)回路によって生成され、ドライバ42を介してオンチップメモリ21へと送信される。
【0039】アンプ31~34は、1列毎に設けられている。各アンプ31~34は、微小な赤外検知出力を増幅する。増幅した信号は、ドライバ41を介して制御部に送られる。
【0040】図3は、第1の実施の形態の制御部を示す図である。ドライバ43は、赤外線検知部のドライバ41に接続されており、ドライバ41からの信号を受け取る。受け取った信号は、A/D変換器51~54に入力する。A/D変換器51~54は、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換する。変換されたディジタル信号は、TDI回路60とDSP回路100とのいずれかへ送出される。感度補正モードで動作させるときにはTDI回路60経由でDSP回路100へ送られ、オンチップメモリ更新モードで動作させるときには直接DSP回路100へ送られる。
【0041】なお、赤外線検知器20からはTDIを行うために検知番号数×TDI段数のデータが出力されるため、アンプ31~34(図2に示す)やA/D変換器51~54は、TDI段数分の系が必要となる。実施の形態では検知素子数=180素子、TDI段数=4段と想定しているため、アンプ31~34(図2に示す)やA/D変換器51~54は各4系統必要となる。
【0042】TDI回路60は、加算器61と除算器62とで構成されている。加算器61は、A/D変換器51~54から出力されるa~d列の4系統の信号を加算する。除算器62は、加算結果を1/4し、4列の平均を算出する。その結果、TDI回路60による演算結果は、基準熱源制御回路72とDSP回路100とへ出される。」
(カ)
「【0100】図27は、オンチップメモリ更新時のDSPへのデータ入力順序を示す図である。A/D変換器51~54で生成された画像データは、1ライン目のデータから順にDSP回路100に転送される。1つのラインのデータには、a列~d列の各検知素子列で検知されたデータが含まれる。
【0101】オンチップメモリ更新時においてTDI回路60からの高温データ及び常温データを受け取ったDSP回路100は、画像データの感度補正を行う。図28は、DSP回路のオンチップメモリ更新機能を示すブロック図である。DSP回路100のオンチップメモリ更新機能は、データ取得部160、差信号判定部170、雑音値判定部180、及び素子判定部190で構成される。
【0102】データ取得部160は、無効走査期間中にA/D変換器51~54から直接送られてくる検知素子毎の高温データと常温データとを、フィールド毎にnラインずつ取得する。取得した高温データと常温データとは、差信号判定部170に送られる。また、常温データは、雑音値判定部180にも送られる。
【0103】差信号判定部170は、高温データの1ラインあたりの平均値と、常温データの1ラインあたりの平均値との差を求める。そして、その差がしきい値を超えていた場合には、その検知素子を異常と判断し、その旨の出力を行う。
【0104】雑音値判定部180は、常温データを受け取り、信号の最大値と最小値との差をとる。その値がしきい値を超えていた場合には、その検知素子を異常と判断し、その旨の出力を行う。
【0105】素子判定部190は、差信号判定部170と雑音値判定部180との論理和をとり、いずれかにおいて異常と判断された検知素子に関しては、異常と判定する。判定結果は、赤外線検知器20のオンチップメモリ21に転送する。素子判定方法としては、最新のフィールドを含む過去mフィールド分のm×nサンプルのデータから素子別にS/N値を求め、S/N値が設定値より小さい素子を異常と判断して選別することもできる。
【0106】図29は、データ取得部の内部構成を示す図である。データ取得部160には、高温熱源用のデータ記憶部161~163と、常温熱源用のデータ記憶部164~166が設けられている。各データ記憶部161~166には、1つのフィールド分(16ライン)のデータが格納される。高温熱源用のデータ記憶部161~163に格納された値は、差信号判定部170へ送られる。また、常温熱源用のデータ記憶部164~166に格納された値は、差信号判定部170と雑音値判定部180との双方に送られる。
【0107】図30は、差信号判定部の内部構成を示す図である。差信号判定部170に入力されたデータは、加算部171a~171fに入力される。加算部171a~171fは、データ取得部160から送られたデータを、加算値記憶部172a~172fに格納された値に加算していく。加算した値は、その都度、加算値記憶部172a~172fに格納する。加算値記憶部172a~172fは、加算部171a~171fで加算された値を記憶する。加算値記憶部172a~172fに記憶された値は、加算部171a~171fと加算部173a,173bとに送られる。加算部173aは、高温データのフィールド毎の加算値を合計する。加算部173bは、常温データのフィールド毎の加算値を合計する。
【0108】加算部173a,173bで加算された値は、それぞれ高温加算値記憶部174aと常温加算値記憶部174bとの格納される。格納されたデータは、平均値算出部175a,175bに渡される。平均値算出部175a,175bは、渡されたデータを256で割ることにより、平均値を算出する。算出した平均値は、高温平均値記憶部176a,常温平均値記憶部176bに格納される。それぞれに格納された平均値は、差信号算出部177に渡される。差信号算出部177は、高温平均値記憶部176aに記憶されたデータから、常温平均値記憶部176bに記憶されたデータを減算することで、差を計算する。算出された差の値は、差信号記憶部178に格納される。差信号記憶部178は、格納された値を、比較器179に渡す。比較器179には、予めしきい値が設定されている。そして、差信号記憶部178に格納された値がしきい値を超えていないかどうかを判定する。しきい値を超えていれば正常と判定し、判定結果を「0」とする。しきい値を超えていない場合には異常と判定し、判定結果を「1」とする。判定結果は、素子判定値記憶部170aに格納する。素子判定値記憶部170aの値は、差信号判定部170の判定結果として素子判定部190に送られる。
【0109】図31は、雑音値判定部と素子判定部との内部構成を示す図である。雑音値判定部180に対してデータ取得部160より入力された常温データは、2つの比較器181a,181bに入力される。比較器181aは、入力されたデータの中の最大値を抽出する。一方、比較器181bは、入力されたデータの中の最小値を抽出する。各比較器181a,181bで抽出されたデータは、それぞれ最大値記憶部182a、最小値記憶部182bに格納される。最大値記憶部182aと最小値記憶部182bとは、記憶したデータを雑音値算出部183に渡す。雑音値算出部183は、最大値記憶部182aに格納されたデータから最小値記憶部182bに格納されたデータを減算し、差を求める。求められた差は、差信号記憶部184に格納する。差信号記憶部184は、記憶したデータを比較器185に渡す。比較器185は、予め設定されているしきい値と差信号記憶部184の値とを比較する。差信号記憶部184の値がしきい値を超えていなければ正常と判断し、判定結果を「0」とする。しきい値を超えていれば異常と判断し、判定結果を「1」とする。判定結果は、素子判定値記憶部186に格納する。素子判定値記憶部186は、記憶したデータを素子判定部190に対して出力する。
【0110】素子判定部190では、論理和演算部191が、差信号判定部170からの素子判定値と雑音値判定部180からの判定値とを受け取り、その論理和(OR)を求める。すなわち、いずれか一方で異常(値が「1」)と判定された検知素子の値は「1」となる。論理和演算部191の演算結果は、素子判定値記憶部192に格納される。素子判定値記憶部192に格納されたデータは、赤外線探知器20のオンチップメモリ21に送信される。
【0111】以上のような機能をDSP回路100が有することによって、無効走査期間に取得された高温データと常温データとに基づいて、有効走査期間にそのフィールドでの素子判定値が算出される。すなわち、データ取得部160にて、走査系の無効走査期間にて高温、常温熱源データを各々1フィールド分の16ライン、加算値記憶部161~166に格納し、フィールド毎に高温と常温データを差信号判定部170へ、常温データを雑音値判定部180へ渡す。
【0112】差信号判定部170では高温と常温ともそれぞれ全素子についてフィールド毎に加算していき、第mフィールド目に16フィールドでの平均値を算出する。次に、平均後のデータから高温-常温を算出し、比較器179にてしきい値との比較を行う。ここで、しきい値より小さい値の素子を差信号での欠陥として判定を行い、判定結果を差信号判定値として素子判定値記憶部170aに格納する。
【0113】雑音値算判定部180では常温データのみを使用して、比較器181a,181bにて全素子についてmフィールド×nラインでのDC値の最大値、最小値を抽出後、減算器により雑音値(=最大値-最小値)を算出する。この雑音値を、比較器185にてしきい値と比較する。ここで、しきい値より大きい値の素子を欠陥として判定を行い、判定結果を雑音判定値として素子判定値記憶部186に格納する。
【0114】差信号判定値と雑音判定値が確定した後、素子判定部190において両者の論理和を取り、結果をS/N判定値として素子判定値記憶部192に格納する。その後、判定結果からTDI素子選択情報、ゲイン設定値を生成し、赤外線検知器20のオンチップメモリ21へ出力する。」
(キ)
「【0120】TDI素子選択情報は「0」が選択(対応する検知素子を使用する)、「1」が非選択(対応する検知素子を使用しない)を表し、全素子について使用するかしないかを設定する。検知出力ゲイン設定値は「0」が非設定、「1」が設定を表し、検知電荷を検知出力電圧に変換する際のコンデンサの容量値設定に使用する。検知出力ゲイン設定値によって、SW1~SW3が制御されることにより、3種のコンデンサC1(静電容量C0)、コンデンサC2(静電容量2C0)、コンデンサC3(静電容量4C0)の接続状態が変化する。このようにして、素子番号別の欠陥数の違いによる出力依存をなくしている。
【0121】次に、オンチップメモリ更新処理の詳細について説明する。図34は、オンチップメモリ更新のDSP回路の動作シーケンスを示す図である。Nフィールド~N+15フィールドの無効走査期間にデータを取り込む。取り込むデータは、高温データと常温データとである。これらのデータは、TDI処理を行う前のデータ、すなわち、A/D変換器51~54から直接送られたデータである。各データは全ての検知素子に対応するデータであり、その数は、180素子×4列×16ラインとなる。Nフィールド~N+15フィールドの有効走査期間に各素子の判定値を算出する。N+15フィールドにおいては、さらに次の処理を行う。まず、Nフィールド~N+15フィールドで算出された判定値により、TDI素子選択情報を生成する。次に、ゲイン設定情報を生成する。そして、シリアル出力を行う。以下図35~図52に、メモリ更新時の処理手順をフローチャートで示す。なお、この処理は全てDSP回路100で行われる処理である。
【0122】図35は、メモリ更新時のDSPのメインのフローチャートである。
[S101]初期値を設定する。例えば、メモリのクリアなどを行う。
[S102]フィールドNの無効走査期間において、TDI前の高温データ、常温データを全素子について、16ライン分取り込む(データ取り込みNo.1)。
[S103]フィールドNの有効走査期間において、このフィールドでの取得データから判定値を算出する(素子判定No.1)。
[S104]フィールドN+1の無効走査期間において、TDI前の高温データ、常温データを全素子について、16ライン分取り込む(データ取り込みNo.2)。
[S105]フィールドN+1の有効走査期間において、このフィールドでの取得データから判定値を算出する(素子判定No.2)。
[S106]フィールドN+2の無効走査期間において、TDI前の高温データ、常温データを全素子について、16ライン分取り込む(データ取り込みNo.3)。
[S107]フィールドN+2の有効走査期間において、このフィールドでの取得データから判定値を算出する(素子判定No.3)。
【0123】以後、フィールドN+14まで同様の処理が繰り返される。
[S108]フィールドN+15の無効走査期間において、TDI前の高温データ、常温データを全素子について、16ライン分取り込む(データ取り込みNo.16)。
[S109]フィールドN+15の有効走査期間において、素子判定を行う。具体的には、本フィールドでの高温データから全素子の平均値を算出し、同様に、本フィールドでの常温データから全素子の平均値を算出する。次に、全素子の差信号(高温-常温)を算出する。そして、設定値より小さい値を持つ素子を選別する(差信号での素子選別)。さらに本フィールドを含む16フィールド分の常温データ(256ライン)での雑音値を全素子について算出し、設定値より大きい値を持つ素子を選別する(雑音での素子判別)。最後に、差信号での選別素子と雑音値での選別素子との論理和をとることにより、素子判定を行う。
[S110]TDI素子選択情報を生成する。すなわち、素子判定値をもとに素子別の値を設定する。正常なら「0」、異常なら「1」である。それらの値の集合が選択情報である。
[S111]ゲイン設定情報を生成する。すなわち、素子判定値をもとに素子番号別の検知器出力ゲイン値(コンデンサ容量)を設定する。
[S112]オンチップメモリへのシリアル送信を行う。」
(ク)
「【0259】以上のように本発明の赤外線撮像装置によれば、装置を起動し、赤外線検知器信号が出力可能になった直後と、装置運用中にてレーザの照射などによって損傷素子が発生したことに起因する外部からのトリガ信号を受信したときに両方について、赤外線画像撮像化処理に先立って、素子判定、TDI素子選択情報生成、検知器出力ゲイン設定を行い、赤外線検知器内にある検知器出力情報格納メモリであるオンチップメモリの素子選択情報と検知器出力ゲイン値を更新する。これにより、最新のオンチップメモリデータに基づいて出力される検知信号を使用して赤外線画像撮像化処理を行うことができ、レーザの照射などによる損傷素子を使用することなく、正常な素子の出力のみから画像を生成することができる。その結果、検知素子の損傷が発生しても画像の劣化を最低限に押さえることができる。また、赤外線検知器内で、使用すべき検知素子の選択や、ゲイン制御などを行うことにより、装置全体の小型化を図ることもできる。」
(ケ)
「図1
[図:0001403624000020.jpg]
」
(コ)
「図2
[図:0001403624000021.jpg]
」
(サ)
「図3
[図:0001403624000022.jpg]
」
(シ)
上記(イ)における「前記欠陥素子検出手段は、電源投入時に欠陥素子の検出を行う」との記載、上記(エ)における「装置を起動し、赤外線検知器信号が出力可能になった直後と、装置運用中にて外部からのトリガ信号を受信したときの両方についてオンチップメモリ更新モードとなる。オンチップメモリ更新モードでは、赤外線画像撮像化処理を停止し、赤外線検知器内にある検知器出力情報格納メモリであるオンチップメモリにアクセスし、TDI素子選択情報と検知器出力ゲイン値を更新する」との記載、上記(ク)における「装置を起動し、赤外線検知器信号が出力可能になった直後と、装置運用中にてレーザの照射などによって損傷素子が発生したことに起因する外部からのトリガ信号を受信したときに両方について、赤外線画像撮像化処理に先立って、素子判定、TDI素子選択情報生成、検知器出力ゲイン設定を行い、赤外線検知器内にある検知器出力情報格納メモリであるオンチップメモリの素子選択情報と検知器出力ゲイン値を更新する。」との記載、及び、撮像装置が電源を入れることで起動されるものであることが技術常識であることを考慮すると、電源を投入して装置を起動していると認められる。
イ 甲8に記載された技術的事項
上記アによれば、甲8には、次の事項(以下、「甲8記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
「TDI型の赤外線検知器20を用いている赤外線撮像装置であって、
赤外線検知器20では、多数の検知素子が、4列に並べられており、以後、各列をa列、b列、c列、d列とし、
赤外線検知器20の出力は、1列毎に設けられているアンプ31~34に送られ、各アンプ31~34は、微小な赤外検知出力を増幅し、増幅した信号は、ドライバ41を介して制御部に送られ、制御部のドライバ43は、ドライバ41からの信号を受け取り、受け取った信号は、A/D変換器51~54に入力し、A/D変換器51~54は、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換し、変換されたディジタル信号は、感度補正モードで動作させるときにはTDI回路60経由でDSP回路100へ送られ、オンチップメモリ更新モードで動作させるときには直接DSP回路100へ送られ、
TDI回路60は、加算器61と除算器62とで構成されており、加算器61は、A/D変換器51~54から出力されるa~d列の4系統の信号を加算し、除算器62は、加算結果を1/4し、4列の平均を算出し、
赤外線検知器20内には、全素子分(素子番号×TDI段数列)のTDI素子選択情報と検知出力ゲイン設定値が格納されるオンチップメモリ21が搭載されており、
電源を投入して装置を起動し、赤外線検知器信号が出力可能になった直後と、装置運用中にてレーザの照射などによって損傷素子が発生したことに起因する外部からのトリガ信号を受信したときに両方についてオンチップメモリ更新モードとなり、オンチップメモリ更新モードでは、赤外線画像撮像化処理を停止し、DSP回路100によって、素子判定、TDI素子選択情報生成、検知器出力ゲイン設定を行い、赤外線検知器内にあるオンチップメモリのTDI素子選択情報と検知器出力ゲイン設定値を更新し、
DSP回路100のオンチップメモリ更新機能は、データ取得部160、差信号判定部170、雑音値判定部180、及び素子判定部190で構成され、
データ取得部160にて、走査系の無効走査期間にて、TDI処理を行う前のデータ、すなわち、A/D変換器51~54から直接送られたデータである、高温データと常温データとを各々1フィールド分の16ライン、加算値記憶部161~166に格納し、フィールド毎に高温データと常温データを差信号判定部170へ、常温データを雑音値判定部180へ渡し、
差信号判定部170では高温データと常温データともそれぞれ全素子についてフィールド毎に加算していき、第mフィールド目に16フィールドでの平均値を算出し、平均後のデータから高温-常温を算出し、比較器179にてしきい値との比較を行い、しきい値を超えていれば正常と判定し、判定結果を「0」とし、しきい値を超えていない場合には異常と判定し、判定結果を「1」とし、判定結果は、素子判定値記憶部170aに格納し、素子判定値記憶部170aの値は、差信号判定部170の判定結果として素子判定部190に送られ、
雑音値判定部180では常温データのみを使用して、比較器181a,181bにて全素子についてmフィールド×nラインでのDC値の最大値、最小値を抽出後、減算器により雑音値(=最大値-最小値)を算出し、この雑音値を、比較器185にてしきい値と比較し、しきい値を超えていなければ正常と判断し、判定結果を「0」とし、しきい値を超えていれば異常と判断し、判定結果を「1」とし、判定結果は、素子判定値記憶部186に格納し、素子判定値記憶部186は、記憶したデータを素子判定部190に対して出力し、
素子判定部190では、論理和演算部191が、差信号判定部170からの素子判定値と雑音値判定部180からの判定値とを受け取り、その論理和(OR)を求め、いずれか一方で異常(値が「1」)と判定された検知素子の値は「1」となり、論理和をとることにより、素子判定を行い、論理和演算部191の演算結果から、TDI素子選択情報、検知器出力ゲイン設定値を生成し、赤外線検知器20のオンチップメモリ21へ出力してTDI素子選択情報と検知器出力ゲイン設定値を更新し、
TDI素子選択情報は、「0」が選択(対応する検知素子を使用する)、「1」が非選択(対応する検知素子を使用しない)を表し、全素子について使用するかしないかを設定するものであり、
更新完了後、オンチップメモリ更新モードを終了して感度補正モードに移ることで赤外線画像撮像化処理を開始し、画像信号を外部へ出力する動作を行い、
検知素子で検知された信号は、取捨選択手段に送られ、取捨選択手段がオンチップメモリ21の内容を参照することで、欠陥素子を認識し、その欠陥素子からの出力信号を除外し、正常な検知素子からの信号のみをTDI回路へ送信し、その後、通常のTDI処理が施される、
赤外線撮像装置。」
(9)甲第9号証
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって申立人が令和5年1月12日に提出した意見書において証拠方法として提示した甲第9号証(特開2013-36805号公報;以下、「甲9」という。)には、次の事項が記載されている。
ア
「【0001】
本発明は、時間遅延積分(TDI)方式のセンサを用いて試料の透過X線を測定可能な透過X線分析装置及び方法に関する。」
イ
「【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、TDIセンサの積算段数を容易かつ広い範囲で調整することができるX線分析装置及び方法の提供を目的とする。」
ウ
「【0020】
以上のように、TDIセンサ14の段数を遮蔽板21によって物理的に調整すればよいので、TDIセンサの積算段数をセンサ自身の電気回路や演算ソフトウェアで制御する場合のように専用のTDIセンサを製造しなくてよく、汎用のTDIセンサを利用してコストダウンが図られる。又、専用のTDIセンサで積算段数を調整する場合には、測定者が積算段数を自由に調整することが難しいが、本発明では遮蔽板21の移動量を物理的に調整すればよいので、TDIセンサの積算段数を自由に調整できる。
例えば、厚みの薄い試料を分析する場合はTDIセンサ14の段数を多くし、厚みの厚い試料を分析する場合はTDIセンサ14の段数を少なくすればよい。TDIセンサ14の段数の調整は、例えばコンピュータ(遮蔽手段位置制御手段)60にキーボード等の入力装置61を接続し、測定者が遮蔽板21の任意の移動量(又は移動量に応じたTDIセンサ14の段数)を入力装置61から入力して行うことができる。遮蔽手段位置制御手段60は、測定者の入力した情報に基づいてステッピングモータ32の回転を制御し、遮蔽板21の移動量を調整する。」
(10)甲第10号証~甲第12号証に裏付けられる周知技術
申立人が令和5年1月12日に提出した意見書ににおいて証拠方法として提示した甲第10号証(特開2013-205338号公報;以下、「甲10」という。)の段落【0001】、【0018】、【0027】、【0029】、図2、甲第11号証(特開2008-111747号公報;以下、「甲11」という。)の段落【0001】、【0003】、【0027】~【0028】、【0036】、及び甲第12号証(特開2006-17687号公報;以下、「甲12」という。)の段落【0001】、【0013】により、X線検査装置において検査対象と検査条件とを予め対応づけて記憶手段により記憶しておくことが本件特許に係る出願前に周知技術であったことが裏付けられる。
2 本件訂正発明1について
(1)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「X線検査装置」は本件訂正発明1の「X線検査装置」に相当する。
イ 甲1発明の「被検査物W」は、本件訂正発明1の「被測定物」に相当する。そして、甲1発明において、「X線発生部9と対向して配置されたX線検出器10」「には、被検査物Wを透過したX線が入射するようになって」いるから、甲1発明の「X線発生部9」は、本件訂正発明1の「被測定物にX線を照射するX線照射手段」に相当する。
ウ 甲1発明の「搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)」は、本件訂正発明1の「所定の搬送方向」に相当する。そして、甲1発明において、「搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)」と、「搬入口7から」「搬出口8側(X方向)に向」かう方向とは、同じ方向を意味していると理解できるから、甲1発明における「ベルト面2a上」の「被検査物W」を「搬入口7から」「搬出口8側(X方向)に向けて」搬送する「搬送面としてのベルト面2a」は、本件訂正発明1の「載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面」に相当する。
以上のことから、甲1発明の「搬送面としてのベルト面2a」を備える「ベルトコンベアにより構成され」る「搬送部2」は、本件訂正発明1の「載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面を備える搬送手段」に相当する。
エ 本件訂正発明1の「前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりデジタルデータであるX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群」と甲1発明の「搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)の平面上で搬送方向と直交するY方向に複数の検出素子101a、101b、101c、・・・、102a、102b、102c、・・・、が一直線上に配置されてなる検出素子列101~108を、搬送方向に複数段並べたもの」とを対比する。
甲1発明の上記構成は、本件訂正発明1の上記「検出素子群」と、「前記搬送方向に沿って直線上に配列され」る「複数段の検出素子からなる検出素子群」である点で共通する。
さらに、甲1発明の「検出素子列101~108を、搬送方向に複数段並べたもの」を含む「X線検出器10」が、「ベルト面2aを挟んでX線発生部9と対向して配置され」ているものであることも踏まえると、甲1発明の上記構成は、本件訂正発明1の上記「検出素子群」と、「前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して」配列される検出素子群である点で共通する。
そして、甲1発明の「X線検出器10の検出素子101a、101b、101c、・・・、102a、102b、102c、・・・、は、入射するX線を電気信号に変換し、X線透過データを出力するようになって」いるから、検出素子のそれぞれがX線の検出により「X線透過データ」を出力している。さらに、甲1発明の「X線透過データ」は、X線の検出により出力されるデータであるから、本件訂正発明1の「デジタルデータであるX線検出データ」と「X線検出データ」である点で共通している。そうすると、甲1発明の上記構成は、本件訂正発明1の上記「検出素子群」と、「それぞれがX線の検出によりX線検出データを出力する」検出素子群である点で共通する。
オ 甲1発明は、「例えば、」「段数設定部46により設定された」「時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数」が「3段で検出素子列101、102、103からのX線透過データを時間遅延積分により合成する」ときは、被検査物Wが搬送方向(X方向)に移動する間、時刻T1での検出素子列101に対する被検査物Wの下面における位置と、時刻T2での検出素子列102に対する被検査物Wの下面における位置と、時刻T3での検出素子列103に対する被検査物Wの下面における位置と、が一致するようにして、検出素子列101、102、103が、それぞれ時刻T1、T2、T3に、移動している被検査物Wの略同じ領域を透過したX線を検出してX線透過データを出力し、検出素子列101、102、103から出力されたX線透過データを時間遅延積分により合成するものであるといえるから、検出素子列101、102、103において、移動している被検査物Wの略同じ領域を透過したX線が順々に検出され、それぞれのX線透過データが出力され、出力されたそれぞれのX線透過データが足し合わされるものであるといえる。
カ 上記オのとおり、甲1発明は、被検査物Wが搬送方向(X方向)に移動する間、時刻T1での検出素子列101に対する被検査物Wの下面における位置と、時刻T2での検出素子列102に対する被検査物Wの下面における位置と、時刻T3での検出素子列103に対する被検査物Wの下面における位置と、が一致するようにして、検出素子列101、102、103が、それぞれ時刻T1、T2、T3に、移動している被検査物Wの略同じ領域を透過したX線を検出してX線透過データを出力するものであるといえるから、甲1発明の「検出素子列101が時刻T1に」X線透過データを「検出」することと、「検出素子列102が時刻T2に」X線透過データを「検出」することと、「検出素子列103が時刻T3に」X線透過データを「検出」することとは、本件訂正発明1の「前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出」することに含まれる。
また、甲1発明の「検出素子列101が時刻T1に検出したX線透過データと、検出素子列102が時刻T2に検出したX線透過データと、検出素子列103が時刻T3に検出したX線透過データと」を出力することと、本件訂正発明1の「前記X線検出データをそれぞれ出力」することとは、「前記X線検出データをそれぞれ出力」する点で共通する。
そして、甲1発明の「検出素子列101~108から出力されるX線透過データのうち、」「検出素子列101が時刻T1に検出したX線透過データと、検出素子列102が時刻T2に検出したX線透過データと、検出素子列103が時刻T3に検出したX線透過データとを、」「時間遅延積分により合成」することは、本件訂正発明1の「前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを順次足し合わせ」ることと、「前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを足し合わせ」る点で共通する。
そして、甲1発明の「合成データ」は、被検査物Wの略同じ領域のX線透過データを時間遅延積分により合成したデータであるから、本件訂正発明1の「前記領域のX線検出データ」と、「前記領域のX線検出データ」である点で共通する。
キ 上記エ、オ、及びカをまとめると、甲1発明の「X線検出器10」と、本件訂正発明1の「前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりデジタルデータであるX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記被測定物の略同一の領域を透過したX線が前記所定の2以上の段の前記検出素子により順次検出されるタイミングの都度、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを順次足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段」とは、「前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線データを足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段」である点で共通する。
ク(ア) 甲1発明は、「利用者により計測された被検査物Wの高さ方向の寸法(h)が予め設定部45から入力されるか、または、搬送時に厚さ検出センサ60が検出した被検査物Wの厚さ段階(h[n]:h[1]~h[5])が設定部45から入力され」た「被検査物Wの厚さ情報」「に基づいて」「X線検出器10により行われる時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数を」「段数設定部46」が「設定する」ものであり、
「被検査物Wの厚さをh」「としたとき」、「段数設定部46」が、p、L、Δxの値が定数である数式Δx=hnp/Ldのhに、「設定部45」から「入力」された「被検査物Wの厚さ」「h」の値を代入して「片側段数n」の値を求めることで、「時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数」を「算出」し、「この段数をX線検出器10の合成部100aに設定する」ものである。
ここで、p、L、Δxの値は、上記のとおり定数であるから、数式Δx=hnp/Ldにhを代入することで、当該hに対応したnが一意に求められるといえるところ、nは、hに対して一意的に対応する値であるということができる。
そして、nが、hに対して一意的に対応する値であるということは、hが、それに一意的に対応するnを表す情報であるということでもあるといえる。
そうすると、「被検査物Wの厚さ情報」又は「片側段数n」は、それに一意的に対応する「時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数」を表す情報であるといえる。
また、甲1発明の「段数設定部46により設定され」た「時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数」は、合成データの画像の空間分解能の低下を抑制する、という課題(特に段落【0041】~【0042】等を参照。)からみて、時間遅延積分を行う段の数とともに対応する各段の位置を示す情報でもあると解される。
そうすると、「被検査物Wの厚さ情報」、「片側段数n」又は「段数」は、検出素子列101~108のいずれの検出素子列が時間遅延積分を行う段となり、いずれの検出素子列が時間遅延積分を行う段とならないかを間接的に表す情報であるといえる。
一方、本件訂正発明1が「複数段の検出素子からなる検出素子群」(下線は当審で付与した。)という事項を特定していることや、特許権者が令和4年11月11日に提出した意見書(5(4)ア)において「請求項1に係る発明は、X線を検出する所定の2以上の段の検出素子の決定を、段特定手段が表示手段に表示させた入カインタフェースを介して入力された情報に基づき行うもの」と説明していることからして、本件訂正発明1の「検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」は、「検出素子群を構成するそれぞれの」「段」に対応する「検出素子」であるから、本件訂正発明1の「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け」における「前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」は、「前記検出素子群を構成するそれぞれの」「段」の「検出素子」が「前記所定の2以上の段に含」まれるか否かを表す情報であると理解される。
さらに、上記オの説示から、甲1発明の「時間遅延積分を行う」「段」は、本件訂正発明1の「所定の2以上の段」に相当する。
よって、甲1発明の「被検査物Wの厚さ情報」、「片側段数n」又は「段数」は、本件訂正発明1の「情報」と、「検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」を「所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」である点で共通する。
(イ)本件訂正発明1の「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け」との事項は、読点の位置からすると、「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに」は「入力を受け付け」に係るものと通常は解されるから、上記事項は、「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」を「前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を」「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに」「受け付け」ることと解される(以下、「解釈1」という。)。
一方、当該事項を、「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す」ことで特徴付けられる「情報」「の入力を受け付け」ることと解し(以下、「解釈2」)、上記(ア)に代えて、令和4年9月7日付け取消理由通知書の第5.2(1)ク(ア)における説示のように、甲1発明の「被検査物Wの厚さ情報」を、本件訂正発明1の「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」に相当するものと解したり、甲1発明の「片側段数n」又は「段数」を本件訂正発明1の「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」に相当するものと解したりすることも一応は可能である。
(ウ)上記(イ)で指摘した本件訂正発明1の特定事項について、本件特許に係る出願の出願人(特許権者)は、本件審査段階における令和2年11月20日提出の意見書において、次のように主張している。
(ウ-1)「2 補正の根拠
・・・
(2)請求項1の『前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け、それぞれの前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する段特定手段』の下線部の補正は、明細書段落[0044]~[0046]及び図7~9の記載に基づきます。」
(ウ-2)「すなわち、引用文献1に記載されているX線検査装置では、被検査物Wの厚さ情報等の入力を受け付け、予め用意された計算式等により自動的に決定された位置及び段数で、足し合わせ対象の段が設定されるのであり、それぞれの検出素子ごとに、足し合わせ対象の段となるか否かを示す情報の入力を受け付け、その受け付けたとおりに、足し合わせ対象となる段が設定される請求項1の発明とは明らかに異なります。」
(エ) 上記(ウ-1)の意見書記載中に指摘される本件特許に係る出願の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0044】~【0046】には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0044】
所定の2以上の段は段特定手段140が特定し、これに基づきX線検出手段130が検査を実行する。段特定手段140は例えば、入力インタフェースを液晶ディスプレイなどの任意の表示手段151に表示し、装置利用者がキーボードやマウスなどの任意の入力手段152から入力インタフェースに直接入力された情報に基づき、所定の2以上の段を特定する。そして、この特定した段を任意のメモリに書き込み、X線検出手段130がこれを読み出して検査を実行する。メモリは必ずしも段特定手段140の構成要素として備える必要はなく、X線検出手段130が備えてもよいし、その他の構成要素として備えてもよい。
【0045】
入力インタフェースの構成は任意である。例えば、図7(a)に示すような直接段番号の入力を受け付けるインタフェースを表示手段に表示する。この入力インタフェース上で、装置利用者がキーボードから例えば6を入力してOKボタンをマウスでクリックすると、図7(b)に示すように6段目が特定される。この例の場合、このような入力操作を、特定する段数分繰り返し行う必要があるため、省力化するために、例えば3段目から2段分と指定して入力する方法を採用してもよい。
【0046】
特定する段をマウス操作のみにより入力できるグラフィカルな入力インタフェースを採用してもよい。一例としては、図8(a)に示す入力インタフェースを表示手段に表示する。この入力インタフェース上で、装置利用者がマウスを操作して例えば6段目をなぞると、図8(b)に示すように6段目が特定される。別の例としては、図9(a)に示す入力インタフェースを表示手段に表示する。この入力インタフェース上で、装置利用者がマウスを操作して例えば1段と6段をクリックすると、図9(b)に示すように1段目と6段目が特定される。なお、このようなグラフィカルなインタフェースを採用した場合には、入力された情報を段番号に変換してメモリに書き込むとよい。」
(オ)上記(エ)によれば、「所定の2以上の段を特定する」ための「情報」が各「段」ごとに「入力され」ることが本件特許明細書の段落【0044】~【0046】に開示されていると認められる。
(カ)してみると、本件訂正発明1の「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに、前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け」る事項は、上記(イ)に説示する文章構成上の観点並びに上記(ウ)~(オ)に示される、審査段階で提出された意見書における出願人(特許権者)の主張及び本件特許明細書の開示の観点を総合的に考慮すると、上記(イ)の「解釈2」のように解することは妥当ではなく、「解釈1」、すなわち、「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」を「前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を」「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに」「受け付け」ることと解するのが相当と認められる。
ケ 甲1発明では、「段数設定部46は、設定部45から取得した被検査物Wの厚さに基づいて、上記のΔx=hnp/Ldの数式から片側段数nを設定して時間遅延積分の段数を算出し、この段数をX線検出器10の合成部100aに設定するか、または、検出された厚さレベル(h[n])に予め対応付けられた時間遅延積分の段数を設定」し、「被検査物Wの厚さ情報は、利用者により計測された被検査物Wの高さ方向の寸法(h)が予め設定部45から入力されるか、または、搬送時に厚さ検出センサ60が検出した被検査物Wの厚さ段階(h[n]:h[1]~h[5])が設定部45から入力され」、「制御部40は、X線検出器10により行われる時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数を、設定部45に入力された被検査物Wの厚さ情報に基づいて設定する段数設定部46を備え」、「X線検出器10の合成部100aは、各検出素子列101~108が検出したX線透過データのうち、段数設定部46により設定された段数分のX線透過データを時間遅延積分により合成する」ものであり、「合成部100a」が、「設定された段数」から「X線透過データを時間遅延積分により合成する」際に「X線透過データを時間遅延積分により合成する」「検出素子列」を特定していることは明らかである。
コ 上記ク(ア)の説示により、「被検査物Wの厚さ情報」は、本件訂正発明1の「情報」と、「検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」を「所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」である点で共通する。
してみると、甲1発明の「設定部45」、「段数設定部46」及び「合成部100a」を合わせたものは、本件訂正発明1の「段特定手段」と、「検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」を「所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」「の入力を受け付け」「前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する」点で共通する。
サ 上記コに代えて、上記ク(ア)に説示したとおり、甲1発明の「段数」は、本件訂正発明1の「情報」と、「検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」を「所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」である点で共通する。また、甲1発明では、「段数設定部46は、」「この段数をX線検出器10の合成部100aに設定する」ことから、「合成部100a」が「段数設定部46」からの「段数」の入力を受け付けているものと認められる。
してみると、甲1発明の「合成部100a」は、本件訂正発明1の「段特定手段」と、「検出素子群を構成するそれぞれの検出素子」を「所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報」「の入力を受け付け」「前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する」点で共通するといえる。
シ 以上から、本件訂正発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「被測定物にX線を照射するX線照射手段と、
載置された前記被測定物を所定の搬送方向に搬送する搬送面を備える搬送手段と、
前記搬送面を挟んで前記X線照射手段に対向して前記搬送方向に沿って直線状に配列され、それぞれがX線の検出によりX線検出データを出力する複数段の検出素子からなる検出素子群を備え、前記検出素子群のうち少なくとも所定の2以上の段の前記検出素子が、前記被測定物の移動に従い前記被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出して前記X線検出データをそれぞれ出力し、前記所定の2以上の段の前記検出素子が出力するそれぞれの前記X線検出データを足し合わせて前記領域のX線検出データとして得るX線検出手段と、
前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子を前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力を受け付け、前記情報に基づき前記所定の2以上の段を特定する段特定手段と、
を備えるX線検査装置。」
<相違点1>
所定の2以上の段の検出素子が出力するそれぞれのX線検出データを足し合わせて被測定物の略同一の領域のX線検出データとして得るX線検出手段が、
本件訂正発明1では、それぞれの検出素子が出力するX線検出データが「デジタルデータ」であり、「被測定物の略同一の領域を透過したX線が」「所定の2以上の段の」「検出素子により順次検出されるタイミングの都度、」「所定の2以上の段の」「検出素子が出力するそれぞれの」「X線検出データを順次足し合わせ」るものであるのに対し、
甲1発明では、それぞれの検出素子が出力するX線検出データが「入射するX線を電気信号に変換し」た「X線透過データ」であり、「検出素子列101~108から出力されるX線透過データのうち、」「検出素子列101が時刻T1に検出したX線透過データと、検出素子列102が時刻T2に検出したX線透過データと、検出素子列103が時刻T3に検出したX線透過データとを、」「時間遅延積分により合成」するものである点。
<相違点2>
「前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力」について、本件訂正発明1では、「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに」「受け付け」るのに対し、甲1発明では、「被検査物Wの厚さ情報」や「段数」の入力を受け付けるだけのもので、個々の段の採否情報を入力として受け付ける手段は備えない(段数入力を受け付けて、「合成部100a」が、それに基づいて利用する「検出素子列」(段)を選択するだけである)点
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
甲2記載の技術事項(上記(1)イ)によれば、0に設定することで、時間遅延積分される第1段~第n段のn個(nは2以上の整数。)のラインセンサ1a-1~1a-nのうちラインセンサ1a-iの稼働をオフにすることができる第1のレジスタの係数Kiを書き換え可能とすることは、本件特許の出願前に公知であったと認められる。しかしながら、甲2記載の技術事項は、顕微鏡装置における被写界深度や明るさを、ユーザ(観察者)の望む特性に簡単に変更するために第1のレジスタの係数Kiを書き換えるものであり、空間分解能の低下を抑制するために、時間遅延積分の対象となる検出素子列101~108の段数を、被検査物Wの厚さ情報に基づいて設定するX線検査装置である甲1発明とは、技術分野及び課題が異なる。してみると、当業者が甲2記載の技術事項を甲1発明に適用する動機付けはない。
また、時間遅延積分を行うX線検査装置において「前記所定の2以上の段に含めるか否かを示す情報の入力」を「前記検出素子群を構成するそれぞれの検出素子ごとに」「受け付け」ることについて、甲3~12のいずれにも記載されていない。
してみると、甲1発明に相違点2に係る本件訂正発明1の構成を具備させることは、甲2記載の技術事項及び甲3~12の記載を参酌しても、当業者が容易になし得たものではない。
(3)小括
したがって、本件訂正発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~12に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
3 本件訂正発明2、5及び6について
請求項2、5は請求項1を引用し、請求項6は請求項5を引用しているから、本件訂正発明2、5及び6は本件訂正発明1の発明特定事項を備える。そして、上記2に説示したとおり、本件訂正発明1は甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~12に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件訂正発明2、5及び6は、甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~12に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
4 本件訂正発明3、4及び7について
(1)上記第2.2(1)及び第2.2(3)アに説示したとおり、請求項3及び7それぞれについて、請求項1又は2との引用関係を解消することを目的とする訂正がなされているから、本件訂正発明3及び7は本件訂正発明1の発明特定事項を備える。そして、上記2に説示したとおり、本件訂正発明1は甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~12に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件訂正発明3及び7は、甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~12に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件訂正発明3を引用する本件訂正発明4についても同様である。
(3)小括
したがって、本件訂正発明3、4及び7は、甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3~12に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700478