特許異議申立
2022-700460
床材
- 審判番号
- 2022-700460
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-086375
- 登録番号
- 7016029
- 請求日
- 2022年05月27日
- 審決日
- 2022年10月17日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【異議申立人】岩谷 幸祐
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 佐藤 美紗子
- 分類
- P1651.113-Y (E04F) / P1651.121-Y (E04F) / P1651.537-Y (E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7016029号発明「床材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7016029号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7016029号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成30年4月27日に出願され、令和4年1月27日にその特許権の設定登録がされ、同年2月4日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年5月27日に、特許異議申立人 岩谷 幸祐(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし5に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7016029号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」などといい、本件発明1ないし5をまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
一方向に長尺状とされた基材層の表面側に表面化粧層を設けた床材であって、
前記基材層には、幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ、該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられており、
前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さいことを特徴とする床材。
【請求項2】
請求項1において、
前記幅方向の一端部に設けた雄実部は、厚み方向中央部において上下面が近づくようにテーパー状に突出した形状とされ、前記幅方向の他端部に設けた雌実部は、厚み方向中央部において上下面が近づくようにテーパー状に凹んだ形状とされることを特徴とする床材。
【請求項3】
請求項2において、
前記幅方向の一端部に設けた雄実部の下側に、底面に対し略垂直とされた垂直面が形成され、前記幅方向の他端部に設けた雌実部の下側に、底面に対し略垂直とされた垂直面が形成されていることを特徴とする床材。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記幅方向の一端部に設けた雄実部の先端の角度が鈍角とされることを特徴とする床材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記幅方向一端部の雄実部は、長手方向に沿って所定間隔ごとに形成されていることを特徴とする床材。」
第3 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び証拠の記載
1 証拠一覧
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ「甲1」、「甲2」等という。
甲1: 実願平2-84156号(実開平4-42544号)
のマイクロフィルム
(平成4年4月10日公開)
甲2: 実願昭63-66211号(実開平1-168748号)
のマイクロフィルム
(平成1年11月28日公開)
甲3: 特開2018-16958号公報
(平成30年2月1日公開)
甲4: 特開2017-101499号公報
(平成29年6月8日公開)
甲5: 特開2003-286769号公報
(平成15年10月10日公開)
甲6: 特開平9-88302号公報
(平成9年3月31日公開)
甲7: 特開2011-80262号公報
(平成23年4月21日公開)
甲8: 登録実用新案第3071836号公報
(平成12年9月22日発行)
甲9: 特開2000-17814号公報
(平成12年1月18日公開)
甲10:特開2008-240349号公報
(平成20年10月9日公開)
2 特許異議申立理由の要旨
申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)新規性欠如
本件特許の請求項1に係る発明は、甲1、甲2または甲3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものである。
(2)進歩性欠如
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲1ないし甲8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)明確性要件違反
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、「雄実部の突出寸法」を明確に定義しておらず、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、これらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)サポート要件違反
本件特許の請求項1に係る発明は、「幅方向の端部の雄実部」自体の突出寸法及び形状を特定しておらず、「施工後の一部の床材の取り外しや再取り付けが簡単にできる」という課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えているため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、この発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠の記載
事案に鑑み、甲1ないし甲5の記載についてみる。
(1)甲1
ア 記載事項
甲1には、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
(ア)明細書第5頁第2行-第15行
「本発明は上記従来技術の不利欠点を解消すべく創案されたものであって、床板の長手方向と略平行な繊維方向を有する中芯単板と、床板の表裏両面において該中芯単板の繊維方向と略平行な繊維方向を有する表単板及び裏単板と、該中芯単板と該表単板及び該裏単板との間において該中芯単板の繊維方向と略直交する繊維方向を有する一対の中単板とが夫々積層接着一体化された床板であって、上記中単板の繊維方向と略平行に延長する溝が複数上記裏単板から該裏単板の上面側に積層される上記中単板の途中にまで達する深さに刻設され、更に上記表単板の上面に化粧単板が接着されると共に上記裏単板の下面に緩衝材が接着されて成ることを特徴とする床板である。」
(イ)明細書第6頁下から3行-第7頁第13行
「この床板1は、いわゆる5プライの合板2と、その表面に貼着された化粧薄単板3と、合板の裏面に貼着された緩衝材4とから成る。合板2は、床板1の長手方向に繊維方向が一致した中芯単板2cと、その表裏両面に夫々位置して中芯単板2cと繊維方向が一致する表単板2a及び裏単板2eと、中芯単板2cと表単板2a及び裏単板2eとの間に夫々位置してこれらとは繊維方向が直交する中単板2b及び2dより成る5層の単板が積層接着して一体化されたものである。
合板2の裏面側には、中単板2dの繊維方向即ち床板1の幅方向と略一致する方向に延長する横溝8,8・・・が複数本略等間隔に形成されている。横溝8,8・・・は合板2の裏面から中単板2dの中途に達する深さまで刻設されている。」
(ウ)明細書第9頁第10行-同頁第15行
「床板1の隣接する二側端には夫々突起5がこれら側端に沿って延長形成されると共に、他の二側端には夫々凹溝6がこれら側端に沿って延長形成され、これら突起と凹溝との嵌合を介して床板1がその長手方向及び幅方向に複数連接施工可能とされている。」
(エ)図面の図示
第1図ないし第3図には、次の図示がある。
「
[図:0001390587000001.jpg]
[図:0001390587000002.jpg]
」
イ 記載される発明
上記アより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「長手方向を有し、5プライの合板2と、その表面に貼着された化粧薄単板3とを備えた床板1であって、
合板2の裏面側には、床板1の幅方向と略一致する方向に延長する横溝8,8・・・が複数本略等間隔に形成されており、
床板1の隣接する二側端には夫々突起5がこれら側端に沿って延長形成されると共に、他の二側端には夫々凹溝6がこれら側端に沿って延長形成され、これら突起と凹溝との嵌合を介して床板1がその長手方向及び幅方向に複数連接施工可能とされている、
床板1。」
(2)甲2
ア 記載事項
甲2には、次の記載がある。
(ア)明細書第4頁下から4行-第5頁第9行
「第1図及び第2図において、1は床材本体を示し、この床材本体1は、複数の単板2a,2b,2c,2d,2eを繊維方向が交叉するように順次積層し、その上面に化粧板3を繊維方向が第1層単板2aと同じになるように接着したもので、該床材本体1の裏面には、可撓性を付与するための溝4a,4bが一定間隔で斜め交叉状に形成され、床材本体1の両側端部においては、逆傾斜する溝4a,4bの端部間の間隔x,yが少なくとも30mm以上となるように設定されている。また、該床材本体1の裏面には、上記溝4a,4bを覆い隠す緩衝材兼用の防水材5が貼着されている。なお、図中6は雄実、7は雌実を示している。」
(イ)図面の図示
第1図ないし第3図には、次の図示がある。
「
[図:0001390587000003.jpg]
」
(ウ)図より看取される事項
床材本体1は、一方向に長尺状であり、雄実6は、床材本体1の長手方向の一端部と幅方向の一端部とに設けられ、雌実7は、床材本体1の長手方向の他端部と幅方向の他端部とに設けられ、隣接して設置される床材本体1の雄実6と雌実7とが本実接合される様子が、看取される。
イ 記載される発明
上記アより、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「一方向に長尺状である床材本体1は、複数の単板2a,2b,2c,2d,2eを繊維方向が交叉するように順次積層し、その上面に化粧板3を繊維方向が第1層単板2aと同じになるように接着したもので、
床材本体1の裏面には、可撓性を付与するための溝4a,4bが一定間隔で斜め交叉状に形成され、
床材本体1には、雄実6及び雌実7が設けられ、
雄実6は、床材本体1の長手方向の一端部と幅方向の一端部とに設けられ、
雌実7は、床材本体1の長手方向の他端部と幅方向の他端部とに設けられ、
隣接して設置される床材本体1の雄実6と雌実7とが本実接合される、
床材本体1。」
(3)甲3
ア 記載事項
甲3には、次の記載がある。
(ア)明細書
「【0010】
図1及び図2は、第1実施形態に係る床材の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る床材1は、図1に示すように、一方向に長尺状とされた基材層10の表面(上面)側に表面化粧層20を設けた構成とされている。
・・・・
【0013】
この基材層10の長手方向一端部には、図1(a)、(c)及び図2(b)に示すように、雄実部12が設けられている。また、基材層10の長手方向他端部には、長手方向に隣接して設置される床材1の雄実部12と本実接合される雌実部13が設けられている。
雄実部12は、基材層10の長手方向一端部の厚さ方向略中央部位から長手方向外方側に向けて突出するように設けられている。また、雄実部12は、床材幅方向に延びるように床材幅方向の略全体に亘って突片状に設けられている。図例では、雄実部12を、床材厚さ方向に沿う寸法(厚さ寸法)が先端側に向かうに従い小とされた先細突片状としている。
雌実部13は、基材層10の長手方向他端部の厚さ方向略中央部位に長手方向外方側に向けて開口するように設けられている。また、雌実部13は、床材幅方向に延びるように床材幅方向の略全体に亘って凹溝状に設けられている。図例では、雌実部13を、雄実部12に対応させて床材厚さ方向に沿う寸法(溝幅寸法)が開口側に向かうに従い大とされた拡開凹溝状としている。なお、雄実部12及び雌実部13としては、図例のようなものに限られず、種々の変形が可能である。
【0014】
また、基材層10の幅方向一端部には、図1(a)、(b)及び図2(a)に示すように、表面側を突出させた合じゃくり状の実部としての第1実部14が設けられている。また、基材層10の幅方向他端部には、幅方向に隣接して設置される床材1の幅方向一端部の第1実部14と実接合される裏面側を突出させた合じゃくり状の実部としての第2実部17が設けられている。
・・・・
【0016】
また、基材層10には、幅方向の全体に亘って延びるように裏面側において開口する複数本の溝11が長手方向に間隔を空けて設けられている。
・・・・
【0023】
また、本実施形態では、基材層10の裏面側に、複数本の溝11によって長手方向に区分される当該床材1の長手方向に間隔を空けた部位同士の相対的な厚さ方向への変位に追従可能な裏面材21を設けた構成としている。
また、本実施形態では、裏面材21を、シート状としている。・・・・
・・・・
【0031】
また、本実施形態では、裏面材21を、基材層10の幅方向一端部の表面側を突出させた合じゃくり状の実部としての第1実部14の裏面側端面16aから突出する突出部22が形成されるように基材層10の裏面側に設けた構成としている。従って、裏面材21の突出部22が幅方向に隣接して設置される床材1の第2実部17の裏面側突片部18の裏面側(下方側)に配されることとなり、幅方向一端部側の浮き上がりを効果的に抑制することができる。換言すれば、床材1の幅方向一端部に、裏面材21の突出部22と表面側突片部15とによって雌実状の凹溝部が形成され、この凹溝部に、幅方向に隣接して設置される床材1の幅方向他端部の裏面側突片部18を本実接合状に接合することができる。また、このように接合した場合にも、裏面材21の突出部22は、柔軟性があるので、上述のように、床材1を取り外す際には、裏面材21の突出部22の変形を伴って床材1を一枚単位で取り外すことができる。」
(イ)図面の図示
【図1】及び【図2】には、次の図示がある。
「
[図:0001390587000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001390587000005.jpg]
」
イ 記載される発明
上記アより、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「一方向に長尺状とされた基材層10の表面(上面)側に表面化粧層20を設けた床材1であって、
基材層10の長手方向一端部には、雄実部12が設けられ、基材層10の長手方向他端部には、長手方向に隣接して設置される床材1の雄実部12と本実接合される雌実部13が設けられ、
基材層10の幅方向一端部には、表面側を突出させた合じゃくり状の第1実部14が設けられ、基材層10の幅方向他端部には、幅方向に隣接して設置される床材1の幅方向一端部の第1実部14と実接合される裏面側を突出させた合じゃくり状の第2実部17が設けられ、
基材層10には、幅方向の全体に亘って延びるように裏面側において開口する複数本の溝11が長手方向に間隔を空けて設けられ、
厚さ方向への変位に追従可能なシート状の裏面材21を、基材層10の幅方向一端部の表面側を突出させた合じゃくり状の実部としての第1実部14の裏面側端面16aから突出する突出部22が形成されるように基材層10の裏面側に設け、床材1の幅方向一端部に、裏面材21の突出部22と表面側突片部15とによって雌実状の凹溝部が形成され、この凹溝部に、幅方向に隣接して設置される床材1の幅方向他端部の裏面側突片部18を本実接合状に接合することができ、裏面材21の突出部22は、柔軟性があるので、床材1を取り外す際には、裏面材21の突出部22の変形を伴って床材1を一枚単位で取り外すことができる、
床材1。」
(4)甲4
甲4には、次の記載がある。
「【0011】
例えば、雄実の実長さを短くしたり、床材の厚さを薄くしたりするなど、構造上の変更を行えば、一部床材の抜き取りを容易にすることはできる。しかし、本実形状や厚さなどの基本構造を誤って変更すれば、強度不足、段違い、床鳴りなど、床材としての基本的な性能に悪影響を及ぼすことがある。
」
(5)甲5
甲5には、次の記載がある。
「【0026】また、床材主体1の両側端面の中央部に雄実部7aと雌実部6aとを設けている床材Aにおいては、雄実部7aの突出長を2mm程度の極めて短い突出長としておき、新設の床材Aを上記のようにその雄実部7a側が下傾端側となるように傾斜させた状態にして既設の床材Aの雌実部6aに突き合わせ、この状態から新設の床材Aを徐々に伏動させて雄実部7aを雌実部6aに嵌入させながらその下面両側部に貼着している両面粘着テープ4の下側粘着剤層4bを床下地材Bの樹脂コーティング層8に全面的に密着させることによって敷設させるものである。こうして、床下地材Bの樹脂コーティング層8上に床材Aを順次、雌雄実部6、7を介して面一状に連結させながら施工することにより床を形成する。」
第4 当審の判断
1 本件発明1の新規性について
(1)甲1発明との対比及び判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明において、「長手方向を有し、5プライの合板2と、その表面に貼着された化粧薄単板3とを備えた床板1」は、本件発明1において、「一方向に長尺状とされた基材層の表面側に表面化粧層を設けた床材」に相当する。
甲1発明において、「合板2の裏面側には、床板1の幅方向と略一致する方向に延長する横溝8,8・・・が複数本略等間隔に形成されて」いる構成は、本件発明1において、「前記基材層には、幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ」ている構成とは、「前記基材層には、幅方向に延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ」という点で共通する。
甲1発明において、「床板1の隣接する二側端には夫々突起5がこれら側端に沿って延長形成され、これら突起と凹溝との嵌合を介して床板1がその長手方向及び幅方向に複数連接施工可能とされている」構成は、本件発明1において、「該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられて」いる構成に相当する。
整理すると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
「一方向に長尺状とされた基材層の表面側に表面化粧層を設けた床材であって、
前記基材層には、幅方向に延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ、該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられている、
床材。」
そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「幅方向」に設けられた「溝」に関し、
本件発明1においては、幅方向の「全長にわたって」延びることが特定されているのに対し、
甲1発明においては、「溝8」が幅方向の「全長にわたって」いるか否か明らかでない点。
<相違点2>
「雄実部の突出寸法」に関し、
本件発明1においては、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「幅方向」の端部で「凹溝との嵌合」がされる「突起5」の突出寸法が、「長手方向」の端部で「凹溝との嵌合」がされる「突起5」の突出寸法より小さいとは特定されていない点。
イ 判断
上記相違点2に係る構成に関し、明細書の段落【0032】には、次のとおり記載されている。
「【0032】
床材1の幅方向の本実接合については、床材1の幅方向の長さ寸法が長手方向の長さ寸法よりも十分に小さく、かつ溝11も形成されていないため、床材1を幅方向の中央部が凸湾曲するように撓ませることはほとんどできない。しかし、長手辺縁部に設けた雄実部15の突出寸法L1、L3は、短手辺縁部に設けた雄実部12の突出寸法Lよりも小さいため、床材1の交換の際にも、幅方向の両端部において本実接合および本実接合の解除が容易に行える。」
上記段落【0032】の記載より、本件発明1は、上記相違点2に係る構成を有することによって、幅方向の中央部を凸湾曲するように撓ませにくい床材1を交換する際、幅方向の両端部において本実接合および本実接合の解除が容易に行える、という技術的効果を奏することが理解される。
そうすると、上記相違点2は、段落【0032】に記載される効果を得るために本件発明1において採用された技術的構成であり、かつ、甲1発明は有さない構成であるから、実質的な相違点である。
そして、上記相違点2が実質的な相違点であるから、その余の相違点1について判断するまでもなく、本件発明1は甲1発明と同一ではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書において、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1の第3図に示されている旨を主張している(申立書第5頁第12行-第16行)。
しかしながら、甲1の第3図は上記第3の3(1)ア(エ)に摘記したとおりであり、同第3図から、幅方向の端部に設けた突起5の突出寸法を、長手方向の端部に設けられた突起5の突出寸法より、小さくすることは、看取されない。
したがって、申立人の上記主張について検討しても、本件発明1と甲1発明との同一性については、上記ア及びイのとおり対比・判断されるべきものである。
(2)甲2発明との対比及び判断
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明において、「一方向に長尺状である床材本体1は、複数の単板2a,2b,2c,2d,2eを繊維方向が交叉するように順次積層し、その上面に化粧板3を繊維方向が第1層単板2aと同じになるように接着した」構成は、本件発明1において、「一方向に長尺状とされた基材層の表面側に表面化粧層を設けた床材」に相当する。
甲2発明において、「床材本体1の裏面には、可撓性を付与するための溝4a,4bが一定間隔で斜め交叉状に形成され」た構成と、本件発明1において、「前記基材層には、幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ」た構成とは、「前記基材層には、裏面側において複数の溝が間隔を空けて設けられ」ている点で、共通する。
甲2発明において、「床材本体1には、雄実6及び雌実7が設けられ、雄実6は、床材本体1の長手方向の一端部と幅方向の一端部とに設けられ、雌実7は、床材本体1の長手方向の他端部と幅方向の他端部とに設けられ、隣接して設置される床材本体1の雄実6と雌実7とが本実接合される」構成は、本件発明1において、「該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられて」いる構成に相当する。
整理すると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致する。
「一方向に長尺状とされた基材層の表面側に表面化粧層を設けた床材であって、
前記基材層には、裏面側において複数の溝が間隔を空けて設けられ、該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられている、
床材。」
そして、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。
<相違点3>
「裏面側」の「溝」に関し、
本件発明1においては、「幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて」設けられるのに対し、
甲2発明においては、「溝4a,4bが一定間隔で斜め交叉状に」形成される点。
<相違点4>
「雄実部の突出寸法」に関し、
本件発明1においては、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」と特定されているのに対し、
甲2発明においては、「幅方向の一端部」の「雄実6」の突出寸法が、「長手方向の一端部」の「雄実6」の突出寸法より小さいとは特定されていない点。
イ 判断
上記相違点4に係る本件発明1の構成は、上記(1)イにおいて検討した甲1発明との相違点2に係る本件発明1の構成と同様に、実質的な相違点である。
そして、上記相違点4が実質的な相違点であるから、その余の相違点3について判断するまでもなく、本件発明1は甲2発明と同一ではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書において、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、甲2の第1図に示されている旨を主張している(申立書第6頁第8行-第12行)。
しかしながら、甲2の第1図は上記第3の3(2)ア(イ)に摘記したとおりであり、同第1図から、幅方向の端部に設けた雄実6の突出寸法を、長手方向の端部に設けられた雄実6の突出寸法より、小さくすることは、看取されない。
したがって、申立人の上記主張について検討しても、本件発明1と甲2発明との同一性については、上記ア及びイのとおり対比・判断されるべきものである。
(3)甲3発明との対比及び判断
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明において、「一方向に長尺状とされた基材層10の表面(上面)側に表面化粧層20を設けた床材1」は、本件発明1において、「一方向に長尺状とされた基材層の表面側に表面化粧層を設けた床材」に相当する。
甲3発明において、「基材層10には、幅方向の全体に亘って延びるように裏面側において開口する複数本の溝11が長手方向に間隔を空けて設けられ」た構成は、本件発明1において、「前記基材層には、幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ」た構成に相当する。
甲3発明において、「基材層10の長手方向一端部には、雄実部12が設けられ、基材層10の長手方向他端部には、長手方向に隣接して設置される床材1の雄実部12と本実接合される雌実部13が設けられ」た構成と、本件発明1において、「該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられて」いる構成とは、「該基材層の長手方向の一端部には雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部には、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられて」いる構成という点で、共通する。
整理すると、本件発明1と甲3発明とは、次の点で一致する。
「一方向に長尺状とされた基材層の表面側に表面化粧層を設けた床材であって、
前記基材層には、幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ、該基材層の長手方向の一端部には雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部には、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられている、
床材。」
そして、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で相違する。
<相違点5>
「幅方向」の「接合」に関し、
本件発明1においては、長手方向と同様に「幅方向の一端部」には「雄実部」が設けられ、「幅方向の他端部」には「隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部」が設けられるのに対し、
甲3発明においては、「基材層10の幅方向一端部には、表面側を突出させた合じゃくり状の第1実部14が設けられ、基材層10の幅方向他端部には、幅方向に隣接して設置される床材1の幅方向一端部の第1実部14と実接合される裏面側を突出させた合じゃくり状の第2実部17が設けられ」たうえで、「厚さ方向への変位に追従可能なシート状の裏面材21」が「突出部22」を有することで、「裏面材21の突出部22と表面側突片部15とによって雌実状の凹溝部が形成」されており、「この凹溝部に、幅方向に隣接して設置される床材1の幅方向他端部の裏面側突片部18を本実接合状に接合することができ、裏面材21の突出部22は、柔軟性があるので、床材1を取り外す際には、裏面材21の突出部22の変形を伴って床材1を一枚単位で取り外すことができる」ものとなっている点。
<相違点6>
「雄実部の突出寸法」に関し、
本件発明1においては、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」と特定されているのに対し、
甲3発明においては、そのように特定されていない点。
イ 判断
本件発明1においては、上記相違点5に係る構成により、「幅方向」の接合においても「雄実部」と「雌実部」とを用いた「本実接合」を行いつつ、上記相違点6に係る構成を採用することで、上記(1)イに指摘したとおり、本件明細書の段落【0032】に記載される効果を得るものであるから、上記相違点5及び上記相違点6は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲3発明と同一ではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書において、甲3における図番17は、雌実部と本実接合される幅方向の端部の雄実部であり、甲3の図1より、幅方向の端部の雄実部17の突出寸法は長手方向の端部の雄実部12の突出寸法より明らかに小さいから、上記相違点5及び6に係る本件発明1の構成は、甲3に示されている旨を主張している(申立書第6頁下から第8行-第7頁最終行)。
しかしながら、甲3発明における幅方向の端部の「第2実部17」は、「表面側を突出させた合じゃくり状の第1実部14」と「実接合される裏面側を突出させた合じゃくり状の第2実部17」であり、「厚さ方向への変位に追従可能なシート状の裏面材21」を考慮すれば「裏面材21の突出部22と表面側突片部15と」により形成される「雌実状の凹溝部」に「本実接合状に接合」されるものであっても、「床材1を取り外す際には、裏面材21の突出部22の変形を伴って」取り外されるから、結局のところ「合じゃくり状の第2実部17」であることに変わりは無く、上記相違点5に係る本件発明1における「雌実部」に「本実接合」される「雄実部」には相当しない。そして、甲3の図1を参照しても、「第1実部14」と「第2実部17」の突出寸法について、申立人が主張するような明らかな大小関係は看取されないから、甲3発明は、上記相違点6に係る本件発明1の構成に相当する構成を有するものでもない。
したがって、申立人の上記主張について検討しても、本件発明1と甲3発明との同一性については、上記ア及びイのとおり対比・判断されるべきものである。
(4)小括
上記(1)ないし(3)のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明とは同一でない。
したがって、本件発明1に係る特許は、申立人が申立てる新規性欠如の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。
2 本件発明1ないし5の進歩性
(1)本件発明1の進歩性について
ア 相違点2、4、6の容易想到性
上記1(1)ア、上記1(2)ア及び上記1(3)アに認定したとおり、本件発明1と甲1発明とは、上記相違点1及び2を有し、本件発明1と甲2発明とは、上記相違点3及び4を有し、本件発明1と甲3発明とは、上記相違点5及び6を有する。
上記相違点2、相違点4及び相違点6は、上記1(1)イ、上記1(2)イ及び上記1(3)イに示したとおり、実質的な相違点であり、甲1ないし甲3には開示されない構成である。
また、当該相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成である、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」ものとする構成は、その余の証拠である甲4ないし甲10にも、開示されていない構成である。
そして、上記相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成は、上記1(1)イに説示したように、幅方向の中央部を凸湾曲するように撓ませにくい床材1を交換する際、幅方向の両端部において本実接合および本実接合の解除が容易に行える、という技術的効果を得るために採用された技術的構成であると解されるところ、甲1ないし甲10には当該構成について開示がないから、相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成は、甲1ないし甲10の記載を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。
イ 申立人の主張について
上記相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成に関し、申立人は申立書において、以下の旨を主張している。
(ア)雄実部の突出寸法は、製造時の公差により大小が生じ得るから、相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に発明し得たものである(第8頁下から8行-第9頁第1行)。
(イ)甲4の段落【0011】には、雄実の実長さを短くすれば床材の抜き取りが容易となることが記載され、甲5の【0026】には、雄実部の突出長さを2mm程度の極めて短い突出長とすることが記載されているから、床材の貼り替えを容易とするために雄実部の突出寸法を小さくすることは周知技術に過ぎず、相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に発明し得たものである(第9頁第2行-第10頁下から7行)。
しかしながら、製造時の公差があり得るとしても、技術思想として「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」ものとする構成を採用する動機があったということはできず、当該構成を採用することによって、本件発明1は段落【0032】に示される技術的効果を得るものと理解されるから、申立人による上記(ア)の主張は採用することができない。
また、雄実部の突出寸法に関する甲4や甲5の記載は、長手方向の雄実部の突出寸法と幅方向の雄実部の突出寸法との大小関係とは関係の無い一般論に過ぎず、かような一般論から、長手方向の雄実部の突出寸法と幅方向の雄実部の突出寸法との大小関係に関する本件発明1の構成が示唆されたということはできないから、申立人による上記(イ)の主張も採用することができない。
したがって、申立人による上記主張について検討しても、上記相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成の容易想到性について、上記アと異なる判断をすべき事情は見いだせない。
ウ 小括
上記ア及びイのとおり、相違点2、相違点4及び相違点6に係る本件発明1の構成は、甲1ないし甲10の記載を考慮しても、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、その余の構成について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ないし甲3発明において、甲4ないし甲10の記載を考慮したとしても、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明1に係る特許は、申立人が申立てる進歩性欠如の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。
(2)本件発明2ないし5の進歩性について
本件発明2ないし5は、本件発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものであるところ、上記(1)のとおり、本件発明2ないし5が有する本件発明1の構成は、甲1発明ないし甲3発明において、甲4ないし甲10の記載を考慮したとしても、当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件発明2ないし5における付加的構成について検討するまでもなく、本件発明2ないし5は、甲1発明ないし甲3発明において、甲4ないし甲10の記載を考慮したとしても、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明2ないし5に係る特許は、申立人が申立てる進歩性欠如の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。
3 本件発明1ないし5の明確性要件について
(1)申立人の具体的主張
申立人は申立書において、本件発明が有する「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」という構成に関し、雄実部の上方の垂直面と下方の垂直面の位置が異なっている場合に、特許請求の範囲の請求項1ないし5においては、「雄実部の突出寸法」をどの部分の寸法とするのか明確に定義していないから、本件発明1ないし5は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない旨を主張している(申立書第12頁下から2行-第14頁最終行)。
(2)当審の判断
ア 判断基準
特許法第36条第6項第2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合に、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となることにより生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 判断基準に基づく判断
上記アの判断基準に基づいて、判断する。
本件発明1が有する、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」という構成は、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法」と「前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法」とについて、前者の「突出寸法」が後者の「突出寸法」より小さいことを特定したものである。
本件発明1において、上記「突出寸法」の大小関係の特定に先立ち、「幅方向の一端部に設けた雄実部」及び「長手方向の一端部に設けた雄実部」について、いずれも「隣接して設置される床材」の「雌実部」と「本実接合」されると特定されていることをふまえると、本件発明1における上記「雄実部の突出寸法」の大小関係の特定は、隣接する「雌実部」と「本実接合」される「雄実部の突出寸法」について、「幅方向の一端部に設けた雄実部」の方が「長手方向の一端部に設けた雄実部」よりも「小さい」ことを特定したものと理解される。
そして、本件発明1における「雄実部の突出寸法」の大小関係に係る上記構成は、上記1(1)イに摘記した本件明細書の段落【0032】に記載される技術的効果と整合する技術的構成として、明確に理解されるものであり、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確なものではない。
また、本件発明1が有するその余の構成、及び、本件発明2ないし5が有する付加的構成についても、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確な点はない。
したがって、申立人の具体的主張について検討しても、本件発明1ないし5は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
よって、本件発明1ないし5に係る特許は、申立人が申立てる明確性要件違反の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。
4 本件発明1のサポート要件について
(1)申立人の具体的主張
申立人は申立書において、本件発明が解決しようとする課題は、明細書の段落【0006】より、「施工後の床材表面側での浮き上がりや段差の発生を抑制でき、かつ、施工後の一部の床材の取り外しや再取り付けが簡単にできる床材を提供すること」であるところ、本件特許の請求項1においては、「該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられており、前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」ことが特定されているものの、「幅方向の一端部に設けた雄実部」の形状や突出寸法自体は特定されていない旨を主張している。
そして申立人は、「幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」ものであっても、雄実部の形状によっては、あるいは雄実部の突出寸法自体が極端に大きい場合等には、施工後の一部の床材の取り外しや再取り付けが簡単にはできず、明細書に記載される課題を解決できないことが明らかであるから、本件発明1は、課題を解決することができると当業者が認識できる範囲を超えて拡張されており、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない旨を主張している(申立書第15頁第1行-第16頁下から4行)。
(2)当審の判断
ア 判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
イ 判断基準に基づく判断
上記アの判断基準に基づいて、判断する。
本件発明1は、「前記基材層には、幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ」ている構成、「該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられて」いる構成、及び、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」構成を有している。
本件明細書の段落【0006】に記載される課題のうち、「施工後の床材表面側での浮き上がりや段差の発生を抑制」できるという課題は、本件発明1が有する、「該基材層の長手方向の一端部と幅方向の一端部とには雄実部が設けられ、かつ長手方向の他端部と幅方向の他端部とには、隣接して設置される床材の雄実部と本実接合される雌実部が設けられて」いる構成により、合理的に解決できると理解される。
また、本件明細書の段落【0018】に、「床材1は、複数の溝11により、幅方向から見て表面側が凸湾曲することが可能である。したがって、床材1の交換の際に、床材1を撓ませることで、基材層10の長手方向の両端部において、本実接合および本実接合の解除を容易に行える。」と説明されていることから、本件明細書の段落【0006】に記載される「施工後の一部の床材の取り外しや再取り付けが簡単にできる」という課題は、長手方向について、本件発明1が有する、「前記基材層には、幅方向の全長にわたって延び裏面側において開口した複数の溝が長手方向に間隔を空けて設けられ」ている構成により、合理的に解決できると理解される。
さらに、上記1(1)イに摘記した本件明細書の段落【0032】の記載より、本件明細書の段落【0006】に記載される「施工後の一部の床材の取り外しや再取り付けが簡単にできる」という課題は、幅方向について、本件発明1が有する、「前記幅方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法が、前記長手方向の一端部に設けた雄実部の突出寸法よりも小さい」構成により、合理的に解決できると理解される。
そうすると、本件発明1は、「施工後の床材表面側での浮き上がりや段差の発生を抑制」できるという課題について、合理的に解決できると認識される構成を有するとともに、「施工後の一部の床材の取り外しや再取り付けが簡単にできる」という課題についても、長手方向及び幅方向においてそれぞれ合理的に解決できると認識される構成を有するものであるから、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、申立人の具体的主張について検討しても、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。
よって、本件発明1に係る特許は、申立人が申立てるサポート要件違反の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び提出された証拠によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700460