特許異議申立
2019-700308
床材の製造方法及び床材
- 審判番号
- 2019-700308
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-119191
- 登録番号
- 特許第6416044号(P6416044)
- 請求日
- 2019年04月18日
- 審決日
- 2020年03月24日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東リ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人まこと国際特許事務所
- 【異議申立人】内田 照和
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 俊久
- 審判官 秋田 将行
- 審判官 大塚 裕一
- 分類
- P1651.113-YAA(E04F) / P1651.121-YAA(E04F) / P1651.537-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6416044号発明「床材の製造方法及び床材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6416044号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。
特許第6416044号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6416044号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年6月12日に出願され、平成30年10月12日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月31日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成31年 4月18日 :特許異議申立人内田照和による請求項1な いし4に係る特許に対する特許異議の申立 て
令和 1年 6月28日付け:取消理由通知書
令和 1年 8月29日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出
令和 1年10月 8日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和 1年10月31日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 1年12月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出
令和 2年 2月10日 :特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)一群の請求項1ないし3に係る訂正
訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおりに訂正する。
「【請求項1】
アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされているガラスシートを準備する工程、
前記ガラスシートにペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させることにより、前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された前記接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシートであって上下面に略直線的に連通した無数の開口を有し且つ通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secである樹脂付きガラスシートを準備する工程、
前記樹脂付きガラスシートの上面に上側樹脂層を積層し、前記樹脂付きガラスシートの下面に下側樹脂層を積層し、加熱加圧して上側樹脂層、ガラスシート及び下側樹脂層を一体化する工程、を有する床材の製造方法。」
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3の記載を以下のとおりに訂正する。
「【請求項3】
前記上側樹脂層及び下側樹脂層の少なくとも一方が、サスペンション塩化ビニル系樹脂を含む、請求項1または2に記載の床材の製造方法。」
ウ 訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0005】の記載を以下のとおりに訂正する。
「【0005】
本発明の床材の製造方法は、アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされているガラスシートを準備する工程、前記ガラスシートにペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させることにより、前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された前記接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシートであって上下面に略直線的に連通した無数の開口を有し且つ通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secである樹脂付きガラスシートを準備する工程、前記樹脂付きガラスシートの上面に上側樹脂層を積層し、前記樹脂付きガラスシートの下面に下側樹脂層を積層し、加熱加圧して上側樹脂層、ガラスシート及び下側樹脂層を一体化する工程を有する。」
エ 訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0006】の記載を以下のとおりに訂正する。
「【0006】
本発明の好ましい床材の製造方法は、前記接合樹脂の目付量が、5g/m2~105g/m2である。
本発明の好ましい床材の製造方法は、前記上側樹脂層及び下側樹脂層の少なくとも一方が、サスペンション塩化ビニル系樹脂を含む。」
オ 訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0009】の記載を以下のとおりに訂正する。
「【0009】
本発明の製造方法によれば、ガラスシートと樹脂層の層間で剥離を生じ難い床材を得ることができる。また、本発明の方法によれば、加工温度を高める必要がなく、樹脂層の劣化が生じることもない。
本発明の好ましい製造方法によれば、上側樹脂層及び下側樹脂層の少なくとも一方がサスペンション塩化ビニル系樹脂を含んでいるので、より層間剥離が生じ難い床材を得ることができる。
また、本発明の床材は、ガラスシートと樹脂層の層間で剥離を生じ難いので、その敷設時に床材縁部が捲れることがなく、また、床材貼り替え時には、層間剥離を生じることなく既設の床材を床面から容易に引き剥がすことができる。」
(2)請求項4に係る訂正
ア 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4の記載を以下のとおりに訂正する。
「上側樹脂層と、
下側樹脂層と、
前記上側樹脂層と下側樹脂層の間に積層されたガラスシートであって、アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされていると共に、前記ガラス繊維間に開口を有するガラスシートと、前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着されたペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂と、を有する樹脂付きガラスシートと、を有し、
前記樹脂付きガラスシートには、その上下面に略直線的に連通した無数の開口が形成され、前記樹脂付きガラスシートの通気度が、80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであり、
前記上側樹脂層及び下側樹脂層が、前記接合樹脂を介して前記ガラス繊維に接合されていると共に、前記樹脂付きガラスシートの開口を通じて直接的に接合されている、床材。」
イ 訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0007】の記載を以下のとおりに訂正する。
「【0007】
本発明の別の局面によれば、床材を提供する。
本発明の床材は、上側樹脂層と、下側樹脂層と、前記上側樹脂層と下側樹脂層の間に積層されたガラスシートであって、アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされていると共に、前記ガラス繊維間に開口を有するガラスシートと、前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着されたペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂と、を有する樹脂付きガラスシートと、を有し、前記樹脂付きガラスシートには、その上下面に略直線的に連通した無数の開口が形成され、前記樹脂付きガラスシートの通気度が、80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであり、前記上側樹脂層及び下側樹脂層が、前記接合樹脂を介して前記ガラス繊維に接合されていると共に、前記樹脂付きガラスシートの開口を通じて直接的に接合されている。」
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1の「樹脂付きガラスシートを準備する工程」において用いられる「複数のガラス繊維を含むガラスシート」について「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされているガラスシートを準備する工程」により準備することを限定し、
訂正前のガラスシートに付着された「接合樹脂」について、「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む」ことを限定し、
訂正前の「樹脂付きガラスシートを準備する工程」において用いられる「ガラスシートと前記ガラスシートに付着された接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシート」について「前記ガラスシートと前記ガラスシートにペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させることにより」準備することを限定し、
訂正前の「前記ガラスシートに付着された接合樹脂」について「前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面」に付着されたことを限定し、
訂正前の「上下面に略直線的に連通した無数の開口を有する樹脂付きガラスシート」について、「通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・sec」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
願書に添付された明細書の【0017】、【0025】、【0028】、【0033】、【0035】には次の記載がある。
「【0017】
各実施形態の床材1において、ガラスシート4は、複数のガラス繊維を含むガラス不織布又はガラス織布が用いられている。
ガラス不織布4aは、図8及び図9に示すように、複数のガラス繊維41が無秩序に上下方向に重なり又は絡み合い且つそれらが接着剤などのバインダーにてバインドされて又はそれら自身がバインドし合って層を成しているもの、或いは、特に図示しないが、複数のガラス繊維41がある程度の規則性を以て上下方向に重なり又は絡み合い且つそれらが接着剤などのバインダーにてバインドされて又はそれら自身がバインドし合って層を成しているものである。
前記バインダーとしては、ガラス繊維に対する接合性の高いものが好ましく、さらに、ガラス繊維及び接合樹脂5に対する接合性の高いものがより好ましい。このようなバインダーとしては、公知の樹脂を主成分とする接着剤を使用することができ、例えば、1液型接着剤、2液型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤、紫外線硬化型接着剤などの電子線硬化型接着剤などが挙げられる。具体的には、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合系、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物が例示される。」
「【0025】
本発明においては、前記ガラス不織布4a及びガラス織布4bなどのガラスシート4に接合樹脂5が付着されることにより、樹脂付きガラスシート6が構成されている。なお、接合樹脂5は、ガラス不織布などを構成する上記バインダーとは異なるものであることに留意されたい。
具体的には、図3に示すように、前記ガラスシート4のガラス繊維41には、接合樹脂5が付着されている。ただし、図3においては、ガラスシートとしてガラス不織布を用いた場合を示している。」
「【0028】
前記接合樹脂5は、ガラス繊維41の表面全体に付着されてもよく、或いは、多くのガラス繊維41の表面全体に付着され且つ残るガラス繊維41の表面の一部分に付着されていてもよい。なお、ガラス繊維41の表面とは、ガラスシート4を構成するガラス繊維41そのものの表面、及び、前記ガラス繊維41にバインダーが接合している場合にはそのバインダーの表面を含む意味である。
図示例では、接合樹脂5は、複数のガラス繊維41のうち多くのガラス繊維41の表面全体に付着され且つ残るガラス繊維41の表面の一部分に付着されている。」
「【0033】
樹脂付きガラスシート6の通気度は、ガラスシート4の通気度より小さい。具体的数値では、樹脂付きガラスシート6の通気度は、好ましくは80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであり、より好ましくは100cc/cm2・sec~400cc/cm2・secである。上側樹脂層2と下側樹脂層3の接合性の向上させるためには、樹脂付きガラスシート6の開口率が大きいことが好ましいが、上述のように、強度や反り防止効果などを考慮すると、余りに大きな開口率を有するガラスシート4を用いることは適切ではない。それ故、上記のような通気度の範囲を有するガラスシート4を用いた場合には、樹脂付きガラスシート6の通気度は、80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secの範囲となるように設定することが好ましい。
このような通気度を有する樹脂付きガラスシート6は、その開口B内に上側樹脂層2及び下側樹脂層3を構成する樹脂材料が入り込み易く、開口Bを通じて上側樹脂層2と下側樹脂層3が直接的に接合し易くなる。
ただし、前記樹脂付きガラスシート6の通気度は、JIS L 1096通気性試験方法に準じて、株式会社東洋精器製作所製のフラジール型通気性試験機を用いて、測定対象の樹脂付きガラスシートを3枚重ねた状態で測定される値である。」
「【0035】
本発明の床材1は、ガラスシート4と上側樹脂層2の間及びガラスシート4と下側樹脂層3の間において層間剥離を生じ難い。
これは、ガラスシート4のガラス繊維41に接合樹脂5が付着されているので、その接合樹脂5がガラス繊維41と上側樹脂層2及び下側樹脂層3との間に介在し、上側樹脂層2及び下側樹脂層3が強固にガラスシート4に接合するためと推定される。
特に、接合樹脂5がペースト塩化ビニル系樹脂を含み、上側樹脂層2及び下側樹脂層3の少なくとも一方がサスペンション塩化ビニル系樹脂を含む場合、上側樹脂層2及び下側樹脂層3が接合樹脂5を介してより強固にガラスシート4に接合し得る。
また、サスペンション塩化ビニル系樹脂は、ペースト塩化ビニル系樹脂に比して硬く且つ強度に優れているので、上側樹脂層2及び下側樹脂層3の厚みを比較的小さくしても(つまり、床材1の厚みを小さくしても)、機械的強度に優れた床材1を得ることができる。例えば、上側樹脂層2及び下側樹脂層3の双方がサスペンション塩化ビニル系樹脂を含み、接合樹脂5がペースト塩化ビニル系樹脂を含む場合、層間接合力を維持したまま床材1の厚みを比較的小さくすることもできる。」
上記の記載からみて【0017】には、「複数のガラス繊維を含むガラスシート」について、「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー」を含み、前記「複数のガラス繊維」が前記「バインダー」にて「バインドされている」ことが記載されているといえる。
また、【0035】には、「接合樹脂」を「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」とすることが記載されているといえる。
また、【0025】及び【0028】には、接合樹脂が付着される対象について「ガラスシート4を構成するガラス繊維41そのものの表面」、及び、「前記ガラス繊維41にバインダーが接合している場合にはそのバインダーの表面」を含むことが記載されているから、接合樹脂は「前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面」に付着されることが記載されているといえる。
また、【0033】には、「樹脂付きガラスシートの通気度」を「樹脂付きガラスシート6の通気度」が「80cc/cm2・sec~500cc/cm2・sec」であることが記載されているといえる。
よって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る請求項3についての訂正は、訂正事項1に係る請求項1が「接合樹脂」を「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」とする訂正がされたことにより重複する記載を削除したものであって、訂正後の請求項1の記載と請求項3の記載との関連性の不備を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
上記アのとおり、訂正事項2に係る請求項3についての訂正は、訂正後の請求項1の記載と請求項3の記載の関連性の不備を整合させるものであり、発明の内容に変更を加えていないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2は、上記アのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、発明の内容に変更を加えていないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正は、明細書の発明の詳細な説明の記載と訂正事項1に係る訂正による訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、発明の詳細な説明の記載と訂正事項1に係る訂正による訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であり、上記(1)イに示したように、訂正事項1は新規事項を追加するものではないから、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項3は、上記アのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正は、明細書の発明の詳細な説明の記載と訂正事項2に係る訂正による訂正後の請求項3の記載とを整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
上記アのとおり、訂正事項4に係る訂正は、発明の詳細な説明の記載と訂正事項2に係る訂正による訂正後の請求項3の記載とを整合させるための訂正であり、上記(2)イに示したように、訂正事項2は新規事項を追加するものではないから、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項4は、上記アのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5に係る訂正は、明細書の発明の詳細な説明の記載と訂正事項2に係る訂正による訂正後の請求項3の記載とを整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
上記アのとおり、訂正事項5に係る訂正は、発明の詳細な説明の記載と訂正事項2に係る訂正による訂正後の請求項3の記載とを整合させるための訂正であり、上記(2)イに示したように、訂正事項2は新規事項を追加するものではないから、訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項5は、上記アのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6に係る請求項4についての訂正は、訂正前の請求項4の「複数のガラス繊維を含み且つガラス繊維間に開口を有するガラスシート」について、「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされている」ことを限定し、
訂正前の「前記ガラス繊維の表面に付着された接合樹脂」について「前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着されたペースト塩化ビニル系樹脂を含む」ことを限定し、
訂正前の「前記樹脂付きガラスシート」について、「前記樹脂付きガラスシートの通気度が、80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであ」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
上記(1)イに摘記した本件特許明細書の記載からみて、【0017】には、「複数のガラス繊維を含むガラスシート」について、「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー」を含み、前記「複数のガラス繊維」が前記「バインダー」にて「バインドされている」ことが記載されているといえる。
また、【0035】には、「接合樹脂」を「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」とすることが記載されているといえる。
また、【0025】及び【0028】には、接合樹脂が付着される対象について「ガラスシート4を構成するガラス繊維41そのものの表面」、及び、「前記ガラス繊維41にバインダーが接合している場合にはそのバインダーの表面」を含むことが記載されているから、接合樹脂は「前記バインダーを含む」ガラス繊維の表面に付着されることが記載されているといえる。
また、【0033】には、「樹脂付きガラスシートの通気度」を「樹脂付きガラスシート6の通気度は、好ましくは80cc/cm2・sec~500cc/cm2・sec」とすることが記載されているといえる。
よって、訂正事項6に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項6は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7に係る訂正は、明細書の発明の詳細な説明の記載と訂正事項6に係る訂正による訂正後の請求項4の記載とを整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
上記アのとおり、訂正事項7に係る訂正は、発明の詳細な説明の記載と訂正事項1に係る訂正による訂正後の請求項4の記載とを整合させるための訂正であり、上記(6)イに示したように、訂正事項6は新規事項を追加するものではないから、訂正事項7に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項7は、上記アのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
4 一群の請求項、及び独立特許要件について
訂正前の請求項2は請求項1を引用し、請求項3は請求項1又は2を引用しているから、請求項2及び3は、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正がされるものである。そのため、請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
よって、訂正事項1ないし5の訂正は、一群の請求項〔1-3〕に対して請求されたものであり、訂正事項6及び7の訂正は、請求項4に対して請求されたものである。
そして、本件においては、訂正前の請求項1ないし4について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1ないし7の訂正は、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、訂正事項1ないし7により特許請求の範囲の限定的減縮が行われていても、訂正後の請求項1~4に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 まとめ
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕及び請求項4について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1ないし4に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件訂正発明1
「【請求項1】
アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされているガラスシートを準備する工程、
前記ガラスシートにペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させることにより、前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された前記接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシートであって上下面に略直線的に連通した無数の開口を有し且つ通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secである樹脂付きガラスシートを準備する工程、
前記樹脂付きガラスシートの上面に上側樹脂層を積層し、前記樹脂付きガラスシートの下面に下側樹脂層を積層し、加熱加圧して上側樹脂層、ガラスシート及び下側樹脂層を一体化する工程、を有する床材の製造方法。」
本件訂正発明2
「【請求項2】
前記接合樹脂の目付量が、5g/m2~105g/m2である、請求項1に記載の床材の製造方法。」
本件訂正発明3
「【請求項3】
前記上側樹脂層及び下側樹脂層の少なくとも一方が、サスペンション塩化ビニル系樹脂を含む、請求項1または2に記載の床材の製造方法。」
本件訂正発明4
「【請求項4】
上側樹脂層と、
下側樹脂層と、
前記上側樹脂層と下側樹脂層の間に積層されたガラスシートであって、アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされていると共に、前記ガラス繊維間に開口を有するガラスシートと、前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着されたペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂と、を有する樹脂付きガラスシートと、を有し、
前記樹脂付きガラスシートには、その上下面に略直線的に連通した無数の開口が形成され、前記樹脂付きガラスシートの通気度が、80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであり、
前記上側樹脂層及び下側樹脂層が、前記接合樹脂を介して前記ガラス繊維に接合されていると共に、前記樹脂付きガラスシートの開口を通じて直接的に接合されている、床材。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和1年10月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
訂正前の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第19号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 甲号証の記載
(1)甲第1号証(特開平02-025328号公報)の記載
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
ア 「2.特許請求の範囲
(1)塩化ビニル樹脂シートの層間にガラス繊維不織布が挟持されてなる塩化ビニル樹脂積層材において、該ガラス繊維不織布が塩化ビニル系樹脂エマルジョンにより結合されており、かつ単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下であって、塩化ビニル樹脂シートに対するガラス繊維の重量比が0.7%以上であることを特徴とする塩化ビニル樹脂積層材。
(2)ガラス繊維不織布に結合材としてポリビニルアルコール繊維が使用されている請求項1に記載の塩化ビニル樹脂積層材。」(第1頁左下欄第4~15行)
イ 「[産業上の利用分野]
本発明は、塩化ビニル樹脂積層材に関し、とくにガラス繊維不織布により寸法安定性を付与された、タイル床材、防水シートなどに使用される塩化ビニル樹脂積層材に関する。」(第1頁左下欄下から3行~右下欄第2行)
ウ 「[課題を解決するための手段]
本発明は、塩化ビニル樹脂シートの層間にガラス繊維不織布が挟持されてなる塩化ビニル樹脂積層材において、該ガラス繊維不織布が塩化ビニル系樹脂エマルジョンにより結合されており、かつ単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下であって、塩化ビニル樹脂シートに対するガラス繊維の重量比が0.7%以上であることを特徴とする塩化ビニル樹脂積層材に関する。
[作用]
すなわち、本発明の塩化ビニル樹脂積層材では、ガラス繊維不織布の結合剤として、塩化ビニル系樹脂エマルジョンを用いており、これは同時に塩化ビニル樹脂シートとガラス繊維不織布との接着剤としても働くため、塩化ビニルゾルを含浸するなどの特別な処理工程を経ずに、寸法安定性と良好な剥離強度とを有する塩化ビニル樹脂積層材が製造できる。これは、塩化ビニル系樹脂エマルジョンが繊維表面を被覆するようにして付着するため、単にガラス繊維同士を結合するだけでなく、上下の塩化ビニル樹脂シートが接着する際にガラス繊維との親和性を高くするからだと考えられる。
なお、この場合、ガラス繊維不織布内に塩化ビニル樹脂シートが十分に入り込んでいないと、必要とする剥離強度が得られないので、ガラス繊維不織布にはある程度の空隙がなければならない。この空隙部は、ガラス繊維不織布の単位面積当たりのガラス繊維の総表面積の値で規定される。本発明では、塩化ビニル樹脂シートがガラス繊維不織布の層内に入り込み、十分な剥離強度が得られるように、単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下となるようなガラス繊維不織布が使用されている。また、これと同時に本発明の塩化ビニル樹脂積層材においては、塩化ビニル樹脂シートに対するガラス繊維の重量比を0.7%以上としているため、良好な寸法安定性も満足することができる。」(第2頁左上欄下から6行~左下欄第12行)
エ 「本発明の塩化ビニル樹脂積層材は、塩化ビニル樹脂シートの層間にガラス繊維不織布が挟持された構造となっている。
塩化ビニル樹脂シートには、塩化ビニル樹脂を主体とするコンパウンドをシート状にしたものが使用され、用途に応じてDOP(ジオクチルフタレート)、DBP(ジブチルフタレート)などの可塑剤や炭酸カルシウム、クレーなどの充填剤が添加される。
本発明のガラス繊維不織布には、ガラス繊維を塩化ビニル系樹脂エマルジョンで接着したものが使用される。この塩化ビニル系樹脂エマルジョンとしては、塩化ビニル樹脂、エチレン-塩化ビニル重合体、アクリル-塩化ビニル重合体、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、及びこれらの変成体を主体とするエマルジョンが好適に使用される。ガラス繊維不織布に必要な強度を持たせ、かつ塩化ビニル樹脂シートとの接着力を高めるために、塩化ビニル系樹脂の付着量はガラス繊維不織布の少なくとも3重量%以上必要であるが、樹脂の付着量の割合があまり大きくなると相対的に繊維の量が減って寸法安定性が低下するため50重量%は超えない方がよい。とくに好ましい塩化ビニル系樹脂の付着量は15~35重量%である。
塩化ビニル樹脂系エマルジョンは、浸漬法、スプレー法などの公知の接着剤の付与手段により、ガラス繊維ウェブに付与される。この内とくに、湿式抄造により得られたガラス繊維ウェブに、ウェブが湿潤状態にある間にスプレー法によって付与する手段が望ましく、この様な手段によれば、ウェブ上の水分を利用して、エマルジョンをウェブ表面に速やかに拡散させ、塩化ビニル系樹脂をできるだけ均一に繊維表面に被膜状に付着できるのでよい。
また、本発明に使用するガラス繊維不織布は、単位面積当たりに含まれるガラス繊維の総表面積が5以下でなければならない。これは、上記の値がガラス繊維不織布の空隙部、とくに不織布面を垂直な方向からみた場合に貫通している空隙部の量を示す指標となっており、この値が5を超えると、この空隙部が非常に少なくなっているということを示すからである。すなわち、不織布に空隙部が少ないと、塩化ビニル樹脂シートは不織布内へ入り込みにくくなるため、いかに塩化ビニル樹脂系エマルジョンを繊維表面に付着せしめて親和性を高めても、ガラス繊維不織布層で剥離が起こり、十分な剥離強度が得られなくなるのである。」(第2頁左下欄下から5行~第3頁右上欄第2行)
オ 「なお、ガラス繊維ウェブ中には、湿潤時のシート強度を高め、製造時の取り扱い性を良くするために、ポリビニルアルコール繊維を加えてもよい。これらの繊維状接着剤は、塩化ビニル樹脂シートとガラス繊維不織布とを接着する際に影響をうけないので、貼り合わせ時の寸法変化を押える働きもする。」(第3頁右下欄第11~17行)
カ 「(実施例1)
ポリエチレンオキサイドを0.2%含む水溶液に、抄紙用ガラス繊維(平均繊維径17μm、繊維長25mm)を分散して、ガラス繊維分散液を作成した。このガラス繊維分散液を20cm×25cmの角型手抄きマシンで抄紙してガラス繊維ウェブを得た。
次いで、このガラス繊維ウェブに、ポリ塩化ビニル樹脂(可塑剤としてDOPを35重量部含む)エマルジョンをスプレー法により付着させ、乾燥して、目付52g/m2、ガラス繊維重量41.6g/m2、樹脂重量10.4g/m2のガラス繊維不織布を得た。
このようにして得られたガラス繊維不織布を、ポリ塩化ビニル100重量部、DOP20重量部、炭酸カルシウム150重量部とからなる重量800g/m2の塩化ビニル樹脂シートを6枚積層したものの3層目と4層目の間に挟み込み、温度160℃、圧力8kg/cm2の条件で、5分間プレスし、厚さ約3mmの塩化ビニル樹脂積層材を得た。」(第3頁右下欄下から3行~第4頁左上欄第15行)
キ 「(比較例2)
ポリエチレンオキサイドを0.2%含む水溶液に、抄紙用ガラス繊維(平均繊維径17μm、繊維長25mm)を分散して、ガラス繊維分散液を作成した。このガラス繊維ウェブ20cm × 25cmの角型手抄きマシンで抄紙してガラス繊維ウェブを得た。
次いで、このガラス繊維ウェブに、酢酸ビニル樹脂エマルジョンをスプレー法により付着させ、乾燥して、目付51.6g/m2、ガラス繊維重量41.6g/m2、樹脂重量10.0g/m2のガラス繊維不織布を得た。
・・・(中略)・・・
(比較例3)
ポリエチレンオキサイドを0.2%含む水溶液液に、抄紙用ガラス繊維(平均繊維径17μm、繊維長25mm)を分散して、ガラス繊維分散液を作成した。このガラス繊維分散液を20cm × 25cmの角型手抄きマシンで抄紙してガラス繊維ウェブを得た。
次いで、このガラス繊維ウェブに、尿素樹脂エマルジョンをスプレー法により付着させ、乾燥して、目付52.7g/m2、ガラス繊維重量41.6g/m2、樹脂重量11.1g/m2のガラス繊維不織布を得た。
・・・(中略)・・・
第1表から明らかなように、ガラス繊維不織布を用いない比較例1と、用いる実施例1との間には寸法安定性に大きな差が見られる。また、ガラス繊維不織布の接着剤のみを変更した、比較例2,3では、寸法安定性では大きな差は見られないが、剥離強度の点で劣り、実用に耐えないものであった。」(第4頁右下欄第6行~第5頁右上欄第8行)
ク 「(実施例2)
抄紙用ガラス繊維に、平均繊維径23μm、繊維長25mmを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、目付46.6g/m2、ガラス繊維重量38.2g/m2、樹脂重量8.4g/m2のガラス繊維不織布を得た。
この後、実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂積層材を作成した。」(第5頁左下欄第1~7行)
ケ 「(実施例3)
抄紙用ガラス繊維に、平均繊維径13μm、繊維長25mmを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、目付49.4g/m2、ガラス繊維重量39.5g/m2、樹脂重量9.9g/m2のガラス繊維不織布を得た。
この後、実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂積層材を作成した。」(第5頁左下欄下から7行~同欄最下行)
コ 「[発明の効果]
本発明の塩化ビニル樹脂積層材は、上述のごとき構成からなるため、以下のような効果を有する。
○1(当審注:○1は○の中に1。)ガラス繊維不織布の結合剤に塩化ビニル樹脂エマルジョンを用いているため、塩化ビニル樹脂シートとガラス繊維不織布との接着性がよくなっており、かつガラス繊維不織布の単位面積当たりのガラス繊維の総表面積は5以下であるため、ガラス繊維不織布には塩化ビニルシートが食い込むための十分な空隙があるので、塩化ビニル樹脂積層材は良好な剥離強度を有する。」(第6頁左下欄第3~13行)
サ 甲第1号証に記載された発明
(ア)上記ア~コからみて、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「ポリエチレンオキサイドを0.2%含む水溶液に、抄紙用ガラス繊維(平均繊維径17μm、繊維長25mm)を分散して、ガラス繊維分散液を作成し、当該ガラス繊維分散液を20cm×25cmの角型手抄きマシンで抄紙してガラス繊維ウェブを得て、
ガラス繊維ウェブ中には、湿潤時のシート強度を高め、製造時の取り扱い性を良くするために、結合材として、繊維状接着剤であるポリビニルアルコール繊維を加え、
ガラス繊維不織布に必要な強度を持たせ、かつ塩化ビニル樹脂シートとの接着力を高めるために、前記ガラス繊維ウェブに、ポリ塩化ビニル樹脂(可塑剤としてDOPを35重量部含む)エマルジョンをスプレー法により付着させ、乾燥して、目付52g/m2、ガラス繊維重量41.6g/m2、樹脂重量10.4g/m2であり、不織布面を垂直な方向からみた場合に貫通している空隙部が、塩化ビニル樹脂シートがガラス繊維不織布の層内に入り込みにくく、十分な剥離強度が得られなくならないように、単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下となる空隙を有しているガラス繊維不織布を得て、
前記得られたガラス繊維不織布を、ポリ塩化ビニル100重量部、DOP20重量部、炭酸カルシウム150重量部とからなる重量800g/m2の塩化ビニル樹脂シートを6枚積層したものの3層目と4層目の間に挟み込み、温度160℃、圧力8kg/cm2の条件で、5分間プレスし、厚さ約3mmの塩化ビニル樹脂積層材を得て、
前記ガラス繊維不織布の結合剤として、塩化ビニル系樹脂エマルジョンを用いており、当該塩化ビニル系樹脂エマルジョンは同時に塩化ビニル樹脂シートとガラス繊維不織布との接着剤としても働くため、寸法安定性と良好な剥離強度とを有する塩化ビニル樹脂積層材が製造できる、
タイル床材に使用される塩化ビニル樹脂積層材を得る方法。」
(イ)上記ア~コからみて、甲第1号証には以下の物の発明(以下「甲1物発明」という。)が記載されている。
「ポリ塩化ビニル100重量部、DOP20重量部、炭酸カルシウム150重量部とからなる重量800g/m2の塩化ビニル樹脂シートを6枚積層したものの3層目と4層目の間に挟み込まれたガラス繊維ウェブであって、当該ガラス繊維ウェブには、湿潤時のシート強度を高め、製造時の取り扱い性を良くするために、結合材として、繊維状接着剤であるポリビニルアルコール繊維が加えられており、不織布面を垂直な方向からみた場合に貫通している空隙部を有しているガラス繊維ウェブと、前記ガラス繊維ウェブに付着させるポリ塩化ビニル樹脂(可塑剤としてDOPを35重量部含む)エマルジョンと、を有するガラス繊維不織布と、を有し、
前記ポリ塩化ビニル樹脂エマルジョンが付着したガラス繊維不織布は、不織布面を垂直な方向からみた場合に貫通している空隙部が、塩化ビニル樹脂シートがガラス繊維不織布の層内に入り込みにくく、十分な剥離強度が得られなくならないように、単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下となる空隙を有しており、
上記塩化ビニル樹脂シートを6枚積層したものの3層目と4層目は、温度160℃、圧力8kg/cm2の条件で、5分間プレスして、ガラス繊維不織布の層内に入り込んでいる、床材に使用される塩化ビニル樹脂積層材。」
(2)甲第19号証(特開平05-163824号公報)の記載
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第19号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【技術分野】本発明は、ガラス繊維層を含む塩化ビニル系樹脂床材に関する。」
イ 「【0004】
【構成】本発明の第1は、塩化ビニル系樹脂シートの少なくとも片面に、ガラス繊維層を含む架橋塩化ビニル系樹脂層を有することを特徴とする床材に関する。本発明の第2は、架橋剤を配合した塩化ビニル系樹脂ペーストを合浸したガラス繊維層を塩化ビニル系樹脂シートと重ね合せた後、加熱加圧することを特徴とする請求項1記載の床材を製造する方法に関する。
【0005】本発明における塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル重合体、塩化ビニルと塩化ビニリデン、酢酸ビニルなどとの共重合体など各種の塩化ビニルを主成分とする共重合体を包含する。塩化ビニル系樹脂ペーストとしては、たとえば、昭和52年12月20日日刊工業新聞社発行、「プラスチック加工技術便覧(新版)」ペースト加工の項に記載されているように公知のペーストを使用することができる。」
ウ 「【0007】ガラス繊維層としては、ガラス繊維不織布、織布等を例示することができる。ガラス繊維は、公知のシラン系あるいはチタン系カップリング剤であらかじめ処理しておくこともできる。本発明は、通常長尺物を意図するものであるが、これを所定の大きさに打抜いてタイルとして使用することもできる。」
エ 「【0008】
【実施例】
実施例1
配合表1の組成よりなる架橋塩化ビニル系樹脂ペーストをリバースコーター、ディップコーター、あるいはグラビアコーターなど適宜のコーターを用いてガラス繊維不織布に塗布処理した。塗布量は300g/m2とした。この状態での不織布の厚さは約0.4mmであった。配合表2の組成よりなる厚さ約0.8mmのポリ塩化ビニルシートを前記架橋塩化ビニル系樹脂ペースト含浸ガラス繊維不織布2の上下両面重ね合せ、全体の厚さ約2mmの長尺床材を得た。
【表1】
配合表1 架橋性PVCペースト
┏━━━━━━━━━━━━┳━━━━━┓
┃PVCペーストレジン ┃ 100┃
┃可塑剤DHP ┃ 50┃
┃パッケージ安定剤 ┃ 2┃
┃DB ┃ 5┃
┗━━━━━━━━━━━━┻━━━━━┛
【表2】
配合表2 積層用PVCシート
┏━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┓
┃PVCサスペンジョンレジン┃ 100┃
┃可塑剤DOP ┃ 36┃
┃安定剤 ┃ 3┃
┃炭酸カルシウム ┃ 20┃
┗━━━━━━━━━━━━━┻━━━━┛
具体的製造方法は、図1に示すようにガラス不織布2はコーター4により架橋性PVCペーストで処理されラミネータへと入って行く。PVCシート1、2はそれぞれの赤外ヒータ5、6によりプレヒートされ中間に架橋性PVCペースト含浸ガラスシートを挾み込んだ後、ラミネータ7、8へと送られ、製品となる。従って架橋反応は7で開始されドラム8で完結する。」
オ 甲第19号証に記載された発明
上記ア~エからみて、甲第19号証には以下の発明(以下「甲19発明」という。)が記載されている。
「ガラス繊維不織布と、前記ガラス繊維不織布に塗布処理した架橋塩化ビニル系樹脂ペーストとを有する架橋塩化ビニル系樹脂ペースト含浸ガラス繊維不織布を得て、
前記架橋塩化ビニル系樹脂ペースト含浸ガラス繊維不織布の上下両面に、赤外ヒータによりプレヒートされたポリ塩化ビニルシートを重ね合せ、ラミネータへと送られてガラス繊維層を含む塩化ビニル系樹脂床材の製品を製造する方法において、
前記架橋塩化ビニル系樹脂ペーストが、PVCペーストレジンを含む組成であり、
前記ポリ塩化ビニルシートが、PVCサスペンジョンレジンを含む組成である、
ガラス繊維層を含む塩化ビニル系樹脂床材の製品を製造する方法」
3 当審の判断
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「分散」される「抄紙用ガラス繊維」、「ガラス繊維ウェブ」は、本件訂正発明1における「複数のガラス繊維」、「ガラスシート」に相当する。
(イ)甲1発明における「ガラス繊維ウェブ中」に、「湿潤時のシート強度を高め、製造時の取り扱い性を良くするために」、「結合材」として加えられる「繊維状接着剤であるポリビニルアルコール繊維」と、本件訂正発明1における「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー」とは、「バインダー」である点で共通する。
なお、甲1発明においては、「ポリビニルアルコール繊維」について、上記2(1)アに摘記したように「結合材」として記載されているとともに、上記2(1)オに摘記したように「繊維状接着剤」として記載されている。
このことは、「ポリ塩化ビニル樹脂エマルジョン」について、上記2(1)ウに摘記したように「ガラス繊維不織布の結合剤」と記載されるとともに、上記2(1)エに摘記したように「ガラス繊維不織布」は「ガラス繊維を塩化ビニル系樹脂エマルジョンで接着したもの」と記載され、また、上記2(1)キに摘記したように、比較例2及び比較例3において変更したものが「ガラス繊維不織布の接着剤」として記載されているように、「結合」と「接着」の用語を併用していることと同様であり、「ポリビニルアルコール繊維」はガラス繊維を結合するものであると解することが自然である。
そうすると、甲1発明における「ポリビニルアルコール繊維」は、「ポリ塩化ビニル樹脂エマルジョン」と同様に、ガラス繊維を結合する結合剤、すなわちガラス繊維を「バインド」する「バインダー」である。
(ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、甲1発明における「ポリエチレンオキサイドを0.2%含む水溶液に、抄紙用ガラス繊維(平均繊維径17μm、繊維長25mm)を分散して、ガラス繊維分散液を作成し、当該ガラス繊維分散液を20cm×25cmの角型手抄きマシンで抄紙してガラス繊維ウェブを得て、
ガラス繊維ウェブ中には、湿潤時のシート強度を高め、製造時の取り扱い性を良くするために、結合材として、繊維状接着剤であるポリビニルアルコール繊維を加え」ることと、
本件訂正発明1における「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされているガラスシートを準備する工程」とは、
「バインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされているガラスシートを準備する工程」である点で共通する。
(エ)甲1発明における「ポリ塩化ビニル樹脂(可塑剤としてDOPを35重量部含む)エマルジョン」と、本件訂正発明1における「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」とは、「塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」である点で共通する。
(オ)甲1発明における「ガラス繊維不織布に必要な強度を持たせ、かつ塩化ビニル樹脂シートとの接着力を高めるため」に「ガラス繊維ウェブに、ポリ塩化ビニル樹脂(可塑剤としてDOPを35重量部含む)エマルジョンをスプレー法により付着させ」ることと、本件訂正発明1における「前記ガラスシートにペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させる」こととは、「前記ガラスシートに塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させる」点で共通する。
(カ)甲1発明において、上記(ウ)のようにして得られた「結合材として、繊維状接着剤であるポリビニルアルコール繊維を加え」られた「ガラス繊維ウェブ」に、上記(オ)のように「ポリ塩化ビニル樹脂エマルジョンをスプレー法により付着させ」ることによって、「結合材」が加えられた「ガラス繊維ウェブ」に「塩化ビニル樹脂が付着」した「塩化ビニル樹脂付きガラス繊維ウェブ」が得られる。
このようにして得られた「塩化ビニル樹脂付きガラス繊維ウェブ」は、本件訂正発明1における「前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された前記接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシート」に相当する。
(キ)甲1発明における「樹脂重量10.4g/m2であり、不織布面を垂直な方向からみた場合に貫通している空隙部が、塩化ビニル樹脂シートがガラス繊維不織布の層内に入り込みにくく、十分な剥離強度が得られなくならないように、単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下となる空隙を有しているガラス繊維不織布」と、
本件訂正発明1における「上下面に略直線的に連通した無数の開口を有し且つ通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secである樹脂付きガラスシート」とは、
「上下面に略直線的に連通した無数の開口を有する樹脂付きガラスシート」である点で共通する。
(ク)上記(ウ)~(キ)からみて、甲1発明における「ガラス繊維不織布に必要な強度を持たせ、かつ塩化ビニル樹脂シートとの接着力を高めるために、前記ガラス繊維ウェブに、ポリ塩化ビニル樹脂(可塑剤としてDOPを35重量部含む)エマルジョンをスプレー法により付着させ、乾燥して、目付52g/m2、ガラス繊維重量41.6g/m2、樹脂重量10.4g/m2であり、不織布面を垂直な方向からみた場合に貫通している空隙部が、塩化ビニル樹脂シートがガラス繊維不織布の層内に入り込みにくく、十分な剥離強度が得られなくならないように、単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下となる空隙を有しているガラス繊維不織布を得」ることと、
本件訂正発明1における「前記ガラスシートにペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させることにより、前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された前記接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシートであって上下面に略直線的に連通した無数の開口を有し且つ通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secである樹脂付きガラスシートを準備する工程」とは、
「前記ガラスシートに塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させることにより、前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された前記接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシートであって上下面に略直線的に連通した無数の開口を有する樹脂付きガラスシートを準備する工程」である点で共通する。
(ケ)甲1発明における「塩化ビニル樹脂シートを6枚積層したものの3層目と4層目の間に挟み込」むことは、本件訂正発明1における「前記樹脂付きガラスシートの上面に上側樹脂層を積層し、前記樹脂付きガラスシートの下面に下側樹脂層を積層」することに相当する。
(コ)上記(ケ)からみて、甲1発明における「前記得られたガラス繊維不織布を、ポリ塩化ビニル100重量部、DOP20重量部、炭酸カルシウム150重量部とからなる重量800g/m2の塩化ビニル樹脂シートを6枚積層したものの3層目と4層目の間に挟み込み、温度160℃、圧力8kg/cm2の条件で、5分間プレスし、厚さ約3mmの塩化ビニル樹脂積層材を得」ることは、
本件訂正発明1における「前記樹脂付きガラスシートの上面に上側樹脂層を積層し、前記樹脂付きガラスシートの下面に下側樹脂層を積層し、加熱加圧して上側樹脂層、ガラスシート及び下側樹脂層を一体化する工程」に相当する。
(サ)甲1発明における「タイル床材に使用される塩化ビニル樹脂積層材を得る方法」は、本件訂正発明1における「床材の製造方法」に相当する。
(シ)以上(ア)~(サ)を踏まえると、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「バインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされているガラスシートを準備する工程と、
前記ガラスシートに塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂を付着させることにより、前記ガラスシートと前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された前記接合樹脂とを有する樹脂付きガラスシートであって上下面に略直線的に連通した無数の開口を有する樹脂付きガラスシートを準備する工程と、
前記樹脂付きガラスシートの上面に上側樹脂層を積層し、前記樹脂付きガラスシートの下面に下側樹脂層を積層し、加熱加圧して上側樹脂層、ガラスシート及び下側樹脂層を一体化する工程、を有する床材の製造方法。」
・相違点1
ガラスシートのガラス繊維が、本件訂正発明1においては、アクリル系樹脂を主成分とするバインダーにてバインドされているのに対して、甲1発明においては、「結合材」として加えられる「繊維状接着剤であるポリビニルアルコール繊維」によってバインドされている点。
・相違点2
塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂が、本件訂正発明1においては「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」であるのに対して、甲1発明においては「塩化ビニル樹脂エマルジョン」であり、当該塩化ビニル樹脂エマルジョンがペーストであることは特定していない点。
・相違点3
樹脂付きガラスシートが、本件訂正発明1においては、通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであるのに対し、甲1発明においては、通気度は特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず上記相違点3について検討する。
甲1発明においては、ガラス繊維ウェブに、ポリ塩化ビニル樹脂エマルジョンをスプレー法により付着させて、不織布面を垂直な方向からみた場合に貫通している空隙部が、塩化ビニル樹脂シートがガラス繊維不織布の層内に入り込み、十分な剥離強度が得られるように、単位面積当たりのガラス繊維の総表面積が5以下となる空隙を有しているガラス繊維不織布を得ているものの、前記空隙部として、通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secとすることは記載されておらず、示唆もされていない。
また、甲19号証にも、架橋塩化ビニル系樹脂ペースト含浸ガラス繊維不織布の通気度を80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secとすることは記載も示唆もされていない。
他に、甲1発明における空隙部として、通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secとすることを示唆する証拠はない。
そうすると、甲1発明における空隙部として、通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secとすることに動機付けがあるといえないから、当業者であっても容易に想到し得たことであるということはできない。
他に、本件訂正発明1が、甲1発明、甲19発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めるべき特段の事情もない。
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明、甲19発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件訂正発明2及び3について
本件訂正発明2及び3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定する事項を含むものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、甲1発明、甲19発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3)本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明4と甲1物発明を対比する。
上記(1)アにおける本件訂正発明1と甲1発明との対比を踏まえると、本件訂正発明4と甲1物発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「上側樹脂層と、
下側樹脂層と、
前記上側樹脂層と下側樹脂層の間に積層されたガラスシートであって、バインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされていると共に、前記ガラス繊維間に開口を有するガラスシートと、前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着された塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂と、を有する樹脂付きガラスシートと、を有し、
前記樹脂付きガラスシートには、その上下面に略直線的に連通した無数の開口が形成され、前記樹脂付きガラスシートの通気度が、80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであり、
前記上側樹脂層及び下側樹脂層が、前記接合樹脂を介して前記ガラス繊維に接合されている床材。」
・相違点A
ガラスシートのガラス繊維が、本件訂正発明4においては、アクリル系樹脂を主成分とするバインダーにてバインドされているのに対して、甲1物発明1においては、「結合材」として加えられる「繊維状接着剤であるポリビニルアルコール繊維」によってバインドされている点。
・相違点B
樹脂付きガラスシートが、本件訂正発明4においては、通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであるのに対し、甲1物発明においては、通気度は特定されていない点。
・相違点C
本件訂正発明4においては、上側樹脂層及び下側樹脂層が、樹脂付きガラスシートの開口を通じて直接的に接合されているのに対し、甲1物発明においては、塩化ビニル樹脂シートの3層目及び塩化ビニル樹脂シートの4層目が、ガラス繊維不織布の空隙部を通じて直接的に接合されていることを特定していない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず上記相違点Bについて検討する。
相違点Bは、上記相違点3と同様の相違点であり、相違点3については、上記(1)イに示したとおりである。
そうすると、甲1物発明における空隙部として、通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secとすることは、当業者であっても容易に想到し得たことであるということはできない。
他に、本件訂正発明4が、甲1物発明、甲19発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めるべき特段の事情もない。
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1物発明、甲19発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(4)特許異議申立人の意見について
ア 特許異議申立人は、令和2年2月10日付け意見書において、「しかしながら、「通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secである樹脂付きガラスシート」については、平成31年4月18日付け特許異議申立書に添付して提出した甲第14号証(特開平11-193620号公報)に開示されているように、これも本件出願の出願日前から公知の周知慣用技術であり、当該事項を単に適用したものに過ぎない。」との意見を述べている(意見書第5頁第9~13行)。
イ 甲第14号証には、下記の記載がある。
「【0019】また、上記したように、補強材は、クッション層中(クッション層の表面近傍中)もしくは表面化粧層とクッション層とを接着する作用を有する合成樹脂層中に埋没している状態としたものの方が、表面化粧層の強度が高い床材を得ることができるので、クッション層を構成する合成樹脂組成物等もしくは表面化粧層とクッション層とを接着する作用を有する合成樹脂組成物が通り抜け可能な補強材が好適である。このような補強材として具体的には、6枚重ねた状態で測定した通気度が150cc/cm2以上の織布、不織布、編布、紙、等が使用できる。特に、30~1000デニールの繊維からなる織布のように、クッション層を構成する合成樹脂組成物等もしくは表面化粧層とクッション層とを接着する作用を有する合成樹脂組成物が容易に通り抜け可能なものが好適である。このような補強材であれば、クッション層を構成する合成樹脂組成物もしくは表面化粧層とクッション層とを接着する作用を有する合成樹脂組成物が、加熱溶融状態の合成樹脂組成物、合成樹脂ペースト、合成樹脂エマルジョン、ゴムラテックスのいずれであっても通り抜け可能であり、表面化粧層の強度が高い床材を得ることが可能となる。」
「【0024】〔実施例2〕補強材を、坪量20g/cm2のポリエステル不織布(6枚重ねた状態で測定した通気度が約170cc/cm2、引張強度4.6kg/5cm)に代える以外は、実施例1と同様にしてクッション性床材を得た。」
ウ 甲第14号証には、6枚重ねた状態で測定した通気度が150cc/cm2以上の織布、不織布、編布、紙、等や、6枚重ねた状態で測定した通気度が約170cc/cm2のポリエステル不織布を使用して補強材とすることは記載されているものの、上記の通気度は、樹脂が付着していない補強剤の通気度であって、樹脂付きガラスシートの通気度を示唆するものではない。
また、上記補強材は、合成樹脂層中に埋没しているから、補強材が通気度を有するとしても、合成樹脂層に埋没した補強材が開口を有するということはないから、樹脂付きガラスシートが上記の通気度を有することを示唆するものであるということはできない。
そして一般に、樹脂付きガラスシートの通気度は、付着する樹脂の量により異なるものであるから、補強材の通気度が開示されているとしても、樹脂付きガラスシートの通気度が開示または示唆されているとはいえない。
エ 以上のようであるから、特許異議申立人の上記意見は採用できない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし4について、概略、以下の申立理由があることを主張している。(特許異議申立書第11頁下から9行~第12頁第2行、第31頁下から13行~第33頁第4行参照)
(1)特許法第29条第1項第3号について
ア 請求項1及び4に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明と同一である。
イ 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一である。
(2)特許法第29条第2項について
ア 請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明~甲第3号証に記載された発明の少なくとも一に基づいて、又はこれらと周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求項1及び4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明~甲第3号証に記載された発明の少なくとも一と、甲第4号証に記載された発明~甲第7号証に記載された発明の少なくとも一と、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明~甲第3号証に記載された発明の少なくとも一と、甲第7号証に記載された発明、甲第9号証に記載された発明又は甲第18号証に記載された発明の少なくとも一と、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明~甲第3号証に記載された発明の少なくとも一と、甲19発明と、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)特許法第36条第6項第2号について
請求項1及び4における「樹脂付きガラスシート」が如何なる物を意味するのかが明らかでないから、請求項1ないし4に係る発明は不明確である。
(4)特許法第36条第6項第1号について
請求項1及び4について、本件特許明細書には塩化ビニル樹脂で構成されている実施例しか記載されておらず、したがって、本件特許発明1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
2.証拠
本件特許異議申立において提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証 :特開平02-025328号公報
甲第2号証 :実願昭61-101996号(実開昭63-008938号
)のマイクロフィルム
甲第3号証 :特開2001-323646号公報
甲第4号証 :実願昭51-018609号(実開昭52-115780号
)のマイクロフィルム
甲第5号証 :実願昭52-080928号(実開昭54-007271号
)のマイクロフィルム
甲第6号証 :特開昭58-199140号公報
甲第7号証 :実願昭57-131466号(実開昭59-035032号
)のマイクロフィルム
甲第8号証 :実願昭60-022520号(実開昭61-139681号
)のマイクロフィルム
甲第9号証 :特開平04-120361号公報
甲第10号証:特開平05-051879号公報
甲第11号証:実願平04-056219号(実開平06-009998号
)のCD-ROM
甲第12号証:特開平07-279384号公報
甲第13号証:特開平09-151595号公報
甲第14号証:特開平11-193620号公報
甲第15号証:特開2001-012066号公報
甲第16号証:特開2004-332417号公報
甲第17号証:特開2015-013471号公報
甲第18号証:特開2010-059611号公報
甲第19号証:特開平05-163824号公報
参考資料(申立人が令和1年10月8日付け意見書に添えて提出)
参考資料1 :特開2002-200702号公報
参考資料2 :特開昭54-129073号公報
参考資料3 :特開平10-180961号公報
参考資料4 :特開2002-200703号公報
参考資料5 :特開2004-084092号公報
参考資料6 :特開平10-046485号公報
参考資料7 :特開昭55-016901号公報
参考資料8 :特開2013-007145号公報
参考資料9 :特開2013-099936号公報
3.上記申立理由について
請求項1ないし4は、令和1年12月27日付け訂正請求書による訂正の請求により訂正されており、本件訂正発明1ないし4は、上記第3に示したとおりである。
(1)上記1(1)について
甲第1号証~甲第3号証には、床材において、樹脂付きガラスシートの通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secであることは記載も示唆もされていない。
よって、本件訂正発明1及び4は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明2は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(2)上記1(2)について
甲第1号証~甲第19号証及び参考資料1~9のいずれにも、床材において、樹脂付きガラスシートの通気度を80cc/cm2・sec~500cc/cm2・secとすることは記載も示唆もされていない。
よって、請求項1ないし4に係る発明は、甲1発明~甲3発明の少なくとも一に基づいて、又はこれらと周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、請求項1及び4に係る発明は、甲1発明~甲3発明の少なくとも一と、甲4発明~甲17発明の少なくとも一と、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、請求項2に係る発明は、甲1発明~甲3発明の少なくとも一と、甲7発明、甲9発明又は甲18発明の少なくとも一と、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、請求項3に係る発明は、甲1発明~甲3発明の少なくとも一と、甲19発明と、に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)上記1(3)について
ア 特許異議申立人は特許異議申立書において、「本件特許発明1及び4における「樹脂付きガラスシート」が、バインダーでバインドされたのみのガラスシート及びガラス繊維と樹脂繊維とを組合わせたガラスシートを意味するのか、それとも、上記段落【0017】で例示されたバインダーを用いたうえでさらに接合樹脂を付着させた樹脂付きガラスシートのみを意味するのか、不明である。」との意見を述べている(特許異議申立書第29頁第17~21行)。
しかしながら、本件訂正発明1及び4は、「ガラスシート」は、「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー及び複数のガラス繊維を含み且つ前記ガラス繊維が前記バインダーにてバインドされている」ことを特定し、「樹脂付きガラスシート」は、「前記バインダーを含むガラス繊維の表面に付着」されることを特定しているから、特許異議申立人が主張する上記意見は採用できない。
イ 特許異議申立人は特許異議申立書において、「上記段落【0017】においては、「バインダー」の樹脂種として「塩化ビニル系樹脂」が例示されており、「樹脂付きガラスシート」とバインダー付ガラスシートとの区別ができず、本件特許発明1及び4の範囲の外縁不明である。」との意見を述べている(特許異議申立書第29頁第22~25行)。
しかしながら、本件訂正発明1ないし4は、「バインダー」は、「アクリル系樹脂を主成分とするバインダー」であることを特定しているから、特許異議申立人が主張する上記意見は採用できない。
ウ 特許異議申立人は令和2年2月10日付け意見書において、「上記訂正請求書に添付の訂正明細書の【0024】には、ガラスシート4の通気度は、JIS L 1096の通気性試験方法に準じて、株式会社東洋精器製作所製のフラジール型通気性試験機を用いて、測定対象のガラスシートを3枚重ねた状態で測定される値であるとの記載がある。一方、本件発明1~4では「樹脂付きガラスシート」の「通気度が80cc/cm2・sec~500cc/cm2・sec」と特定されており、床材を構成する「樹脂付きガラスシート」が1枚の「樹脂付きガラスシート」であるのか、それとも複数枚(例えば3枚)の「樹脂付きガラスシート」であるのか明らかでない。よって、本件発明1~4は、不明確である。」との意見を述べている(意見書第1頁下から7行~第2頁第2行)。
しかしながら、本件訂正発明1ないし4において「樹脂付きガラスシート」を有することは明確であるから、特許異議申立人が主張する上記意見は採用できない。
(4)上記1(4)について
ア 特許異議申立人は特許異議申立書において、「本件特許発明1及び4における「接合樹脂」、「上側樹脂層」及び「下側樹脂層」を構成する樹脂について、本件特許明細書では、塩化ビニル樹脂を用いた実施例しか記載されておらず、したがって、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」との意見を述べている(特許異議申立書第30頁第10~14行)。
本件訂正発明1ないし4は、本件特許明細書の【0002】にあるように「樹脂層とガラス繊維を含むガラスシートは、接合し難いので、樹脂層とガラスシートの層間で剥離しないようにする必要がある。」ことを背景とし、発明が解決しようとする課題は、【0004】の記載のように、「ガラスシートと樹脂層の層間で剥離を生じ難い床材の製造方法及び床材を提供すること」である。
本件訂正発明1ないし4において、「接合樹脂」は「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」であることが特定されており、また、「上側樹脂層」及び「下側樹脂層」については、本件特許明細書【0039】には「樹脂層(上側樹脂層2及び下側樹脂層3)の樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。」と記載され、【0040】には、「前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。」と記載されている。
そして、上記「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」と上記各種の樹脂成分を有する「上側樹脂層」及び「下側樹脂層」とが、塩化ビニル樹脂を用いた実施例以外の場合には、当該樹脂層とガラス繊維を含むガラスシートとが接合し難いと解すべき理由はみあたらない。
そうすると、当業者は、本件特許発明1ないし4の「ペースト塩化ビニル系樹脂を含む接合樹脂」が付着した「樹脂付きガラスシート」と上記各種の樹脂成分を有する「上側樹脂層」及び「下側樹脂層」とにより、ガラスシートと樹脂層の層間で剥離を生じ難いと解することができる。
よって、実施例に用いられた塩化ビニル樹脂以外の樹脂層であっても、発明の課題を解決することを当業者が理解できるから、特許異議申立人が主張する上記意見は採用できない。
イ 特許異議申立人は特許異議申立書において、「本件特許明細書の実施例に着目すると、実施例1には、「厚み方向に開口を有し」とある(段落【0078】)が、その他の実施例2~6においては、「上下面に略直線状に連通した無数の開口」については何らの記載もなく、その存否は不明であり、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」との意見を述べている(特許異議申立書第30頁下から6行~下から2行)。
しかしながら、本件特許明細書【0021】には、「前記ガラス不織布4a及びガラス織布4bなどのガラスシート4は、ガラス繊維41の間に無数の開口Aを有する。この各開口は、概念的には、隣接するガラス繊維の間の隙間がガラスシート4の厚み方向に連続して繋がったものである。前記各開口は、ガラスシート4の厚み方向と略平行にガラス繊維の隙間が連続し、略直線的にガラスシート4の上下面に連通した態様、或いは、ガラス繊維の隙間がガラスシート4の厚み方向に対して傾斜、湾曲、屈曲又は蛇行などしつつ連続して配置されながらガラスシート4の上下面に連通した態様などが含まれる。前者の態様の開口は、通常、ガラスシート4の上面側から拡大して見た場合に、ガラスシート4の下面側に存在する事物を視認できるような態様であり、後者の態様の開口は、通常、それを視認できないような態様である。」と記載されている。
そうすると、上記ガラスシートに接合樹脂が付着した「樹脂付きガラスシート」は、上記ガラスシートの、ガラスシート4の上面側から拡大して見た場合に、ガラスシート4の下面側に存在する事物を視認できるような態様の開口に対応した開口を有する以上、「上下面に略直線的に連通した無数の開口を有」するといえる。
よって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許異議申立人が主張する上記意見は採用できない。
ウ 特許異議申立人は特許異議申立書において、「さらに、本件特許発明2の「前記接合樹脂の目付量が、5g/m2~105g/m2」について、本件特許明細書の実施例1~6及び比較例2においてはそれぞれ10~90g/m2及び120g/m2の目付量の場合しか記載がなく、「上下面に略直線的に連通した無数の開口」と「接合樹脂」の目付量との関係を明らかにしておらず、「前記接合樹脂の目付量が、5g/m2~105g/m2」の下限5g/m2及び上限105g/m2の臨界的意義が定かでなく、よって本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。」との意見を述べている(特許異議申立書第31頁第7~13行)。
本件特許明細書【0030】には「樹脂付きガラスシート6において、接合樹脂5の目付量は、特に限定されないが、例えば、5g/m2~105g/m2であり、好ましくは10g/m2~80g/m2、より好ましくは15g/m2~60g/m2である。接合樹脂5の目付量は、ガラス繊維41と上側樹脂層2又は下側樹脂層3の接合性を向上させる観点から、大きい方が好ましいが、一般的には、接合樹脂5の目付量に比例して樹脂付きガラスシート6の通気度、すなわち、開口率が小さくなる。」と記載されている。
そして、本件訂正発明2は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに接合樹脂の目付量を限定するものであり、本件特許発明1により発明が解決しようとする課題を解決することができると当業者が理解できることは、上記アに示したとおりであるから、上記例示の目付量を発明特定事項として有していても、発明が解決しようとする課題を解決することができると当業者は理解することができる。
よって、本件訂正発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
エ 特許異議申立人は令和2年2月10日付け意見書において、「特許権者による令和1年12月27日付け訂正請求書による訂正後の請求項1~4に係る発明(本件発明1~4)は、「通気度」と規定するが、上記訂正明細書においては特定の方法で測定した「通気度」しか記載されておらず、したがって本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。」との意見を述べている(意見書第2頁第4~8行)。
しかしながら、樹脂付きガラスシートの通気度については、本件特許明細書【0033】に「ただし、前記樹脂付きガラスシート6の通気度は、JIS L 1096通気性試験方法に準じて、株式会社東洋精器製作所製のフラジール型通気性試験機を用いて、測定対象の樹脂付きガラスシートを3枚重ねた状態で測定される値である。」と記載されており、本件訂正発明1ないし4における「樹脂付きガラスシート」の「通気度」を上記のように測定することが理解できる。
よって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許異議申立人が主張する上記意見は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700308