特許異議申立
2023-700059
建築板
- 審判番号
- 2023-700059
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-166331
- 登録番号
- 7104498
- 請求日
- 2023年01月20日
- 審決日
- 2023年04月13日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ケイミュー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】杉目 史
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 佐藤 美紗子
- 分類
- P1651.113-Y (E04F) / P1651.121-Y (E04F) / P1651.537-Y (E04F) / P1651.536-Y (E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7104498号発明「建築板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7104498号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7104498号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成29年8月31日に出願され、令和4年7月12日にその特許権の設定登録がされ、令和4年7月21日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年1月20日に特許異議申立人杉目 史(以下「申立人」という。)により請求項1~7に係る発明の特許に対する特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」~「本件発明7」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~7の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
表面に凹凸が形成された建築板であって、
前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有し、
前記一対の凸状部は、少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部を有し、
前記一対の凸状部のうちの第1の凸状部の一側端の内側に第2の凸状部が位置し、前記第1の凸状部に前記下り傾斜面が形成されており、
前記下り傾斜面の上端縁と下端縁とが、前記第1の凸状部の上面から前記凹状部の底面に向かって延び、前記隣り合う一対の凸状部が並ぶ方向に対して傾斜しており、
前記上端縁は、前記第2の凸状部の上面と前記下り傾斜面との境界よりも前記第2の凸状部側に延びている
ことを特徴とする建築板。
【請求項2】
請求項1に記載の建築板において、
前記第1の凸状部の前記上端縁及び前記下端縁は、前記第2の凸状部の上面と前記下り傾斜面との境界よりも前記第2の凸状部側に延びている
ことを特徴とする建築板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建築板において、
前記第2の凸状部は、前記第1の凸状部との連接側に段差部が設けられていることを特徴とする建築板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の建築板において、
前記一対の凸状部の境界がV字状の溝である
ことを特徴とする建築板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建築板において、
前記第2の凸状部は、前記第1の凸状部よりも低い
ことを特徴とする建築板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建築板において、
前記建築板の表面には、前記一対の凸状部のペアがランダムに配置されていることを特徴とする建築板。
【請求項7】
請求項6に記載の建築板において、
前記建築板は、矩形板状をなし、その表面には、複数の矩形凸状部が該建築板の長手方向に帯状に並んで構成される帯状部が、前記建築板の短手方向に複数並列して設けられており、
前記帯状部には、前記ペアが含まれている
ことを特徴とする建築板。」
なお、以下、特許異議申立書の記載にならい、本件発明1の発明特定事項を次のように分説し、順に[構成A]~[構成H]として引用することがある。
[構成A]表面に凹凸が形成された建築板であって、
[構成B]前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間 に一つの前記凹状部が設けられており、
[構成C]前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有し、
[構成D]前記一対の凸状部は、少なくとも一側面が下り傾斜面で形成され て該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部を有し、
[構成E]前記一対の凸状部のうちの第1の凸状部の一側端の内側に第2の 凸状部が位置し、前記第1の凸状部に前記下り傾斜面が形成され ており、
[構成F]前記下り傾斜面の上端縁と下端縁とが、前記第1の凸状部の上面 から前記凹状部の底面に向かって延び、前記隣り合う一対の凸状 部が並ぶ方向に対して傾斜しており、
[構成G]前記上端縁は、前記第2の凸状部の上面と前記下り傾斜面との境 界よりも前記第2の凸状部側に延びている
[構成H]ことを特徴とする建築板。
第3 特許異議申立理由の概要及び証拠
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各証拠を提出している。
1 取消理由1:新規性・進歩性(特許法29条1項3号、29条2項)
本件発明1~7は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明と同一の発明、又は実質的に同一の発明であり、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
また、本件発明1~7は、甲第1号証~甲第4号証、甲第9号証及び甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(申立書の1-6頁の○1(当審注:○の中に1を表す。以下同様。)の対比表。23頁22行-30頁19行)
2 取消理由2:新規性・進歩性(特許法29条1項3号、29条2項)
本件発明1~3、5~7は、甲第5号証及び甲第6号証に記載された発明と同一の発明、又は実質的に同一の発明であり、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
また、本件発明1~7は、甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証及び甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(申立書の6-11頁の○2-1の対比表。30頁20行-31頁1行)
3 取消理由3:新規性・進歩性(特許法29条1項3号、29条2項)
本件発明1~3、5~7は、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明と同一の発明、又は実質的に同一の発明であり、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
また、本件発明1~7は、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証及び甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(申立書の11-16頁の○2-2の対比表。31頁2-11行)
4 取消理由4:明確性要件違反(特許法36条6項2号)
(1)請求項1について
本件発明1の構成Fにおける「第1の凸状部の上面」とは、本件特許明細書における図1の矢印Yが指す方向を指すか、又は第1の凸状部の表面の方向を指すか、明確でない。
本件発明1は、本件特許発明の目的及び効果を達成する上で、「隣り合う凸状部」或いは「第1の凸状部と第2の凸状部」が、建築板においてどの程度の割合で設けているのか明確でなく、不明瞭である。
本件発明1は、本件特許発明の目的及び効果を達成する上で、必要な「傾斜面」の角度や面積が記載されておらず、不明瞭である。
したがって、本件発明1は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(2)同様に、本件発明2~7についても、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(申立書16頁1-11行、31頁12行-35頁15行)
5 取消理由5:実施可能要件違反(特許法36条4項1号)
本件特許の発明の詳細な説明において、発明の機能、特性等を実現するための建築板の厚み等の具体的数値範囲が記載されていないだけで無く、本件特許発明の目的及び効果を達成する上で必要な建築板における、「隣り合う一対の凸状部」等の割合、「傾斜面」の角度や面積について記載されていないから、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要がある。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものである。
(申立書35頁16-26行)
<証拠>
甲第1号証:「Fuge フュージェ」、ニチハ株式会社、平成29年4 月、表紙、p39、裏表紙
甲第2号証:甲第1号証の説明図(作成日:令和5年1月20日)
甲第3号証:意匠登録第1598459号公報
甲第4号証:ニチハ株式会社の新商品情報、[online],ニチハ株式会社 ,インターネット
<URL:https://web.archive.org/web/20170612215349/https://www.nichiha.co.jp/topics/newitem>
甲第5号証:意匠登録第1441802号公報
甲第6号証:甲第5号証の説明図(作成日:令和5年1月20日)
甲第7号証:意匠登録第1416172号公報
甲第8号証:甲第7号証の説明図(作成日:令和5年1月20日)
甲第9号証:特開2013-167124号公報
甲第10号証:特開2006-192708号公報
第4 証拠の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許の出願前に発行された甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審合議体で付与した。以下同様である。)
ア 39頁の上部
「人気の細割りボーダータイル柄。柔らかなテクスチャーと変化のあるピース幅で動きと立体感を表現。ベース柄からアクセント柄まで幅広くお使いいただけます。」
イ 39頁左側の写真(囲う線は合議体が付与。)
「
[図:0001397235000001.jpg]
」
上記写真の線で囲う、商品名「シュマール」の一部分について、以下の点が看取できる。
「表面に凹凸が形成され、
左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部と右の凸状部とを有し、左の凸状部と右の凸状部との間に段差を有している点。」
ウ 39頁右上の写真
「
[図:0001397235000002.jpg]
」
上記写真から、以下の点が看取できる。
前記「シュマール」を壁の部材として用いている点
(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「表面に凹凸が形成され、
左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部と右の凸状部とを有し、左の凸状部と右の凸状部との間に段差を有し、
壁の部材として用いられ、
柔らかなテクスチャーと変化のあるピース幅で動きと立体感を表現できる、
板。」
2 甲第2号証
甲第2号証は、申立人が甲第1号証の39頁の左側の写真を拡大したものに説明を加えたものである。
3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に発行された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア 1頁
「(45)【発行日】平成30年2月26日(2018.2.26)
・・・
(54)【意匠に係る物品】建築用壁板
・・・
(22)【出願日】平成29年3月16日(2017.3.16)」
イ 2頁の【参考部分拡大斜視図】
「
[図:0001397235000003.jpg]
」
4 甲第4号証
本件特許出願前に発行された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(1)1枚目(「シュマール」を囲う線は、申立人が付与した。)
「
[図:0001397235000004.jpg]
」
5 甲第5号証
(1)甲第5号証の記載事項
本件特許の出願前に発行された甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア 1頁6行
「(54)【衣装に係る物品】建築用壁板」
イ 1頁【参考斜視図】
「
[図:0001397235000005.jpg]
」
ウ 2頁【参考部分拡大図】(囲う線は合議体が付与。)
「
[図:0001397235000006.jpg]
」
上記イをふまえると、上記写真の線で囲う部分について、以下の点が看取できる。
「表面に凹凸が形成され、
左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部を有しており、
上下二つの前記帯状部のうち上の前記帯状部は、左の凸状部と右の凸状部との間に段差を有しており、前記左の凸状部及び前記右の凸状部のうちの右の凸状部の左側の端において、上下の幅の範囲内に前記左の凸状部の右側の端が位置している、
点。」
(2)甲第5号証に記載された発明
上記(1)によれば、甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲5発明)
「表面に凹凸が形成され、
左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部を有しており、
上下二つの前記帯状部のうち上の前記帯状部は、左の凸状部と右の凸状部との間に段差を有しており、前記左の凸状部及び前記右の凸状部のうちの右の凸状部の左側の端において、上下の幅の範囲内に前記左の凸状部の右側の端が位置している、
建築用壁板。」
6 甲第6号証
甲第6号証は、申立人が甲第5号証の2頁の【参考部分拡大図】を拡大したものに説明を加えたものである。
7 甲第7号証
(1)甲第7号証の記載事項
本件特許の出願前に発行された甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
ア 1頁6行
「(54)【衣装に係る物品】壁板」
イ 2頁の【部分拡大斜視図2】のうち申立人が着目した部分(囲う線は合議体が付与。)
「
[図:0001397235000007.jpg]
」
上記写真の線で囲う部分について、以下の点が看取できる。
「表面に凹凸が形成され、
概ね左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部を有し、
上下の二つの前記帯状部のうち、
上の前記帯状部は、右の凸状部が、上の部位と下の部位とに分かれ、下の部位が、上の部位との間に段差を有するとともに、左の凸状部との間でも段差を有し、
下の前記帯状部は、左の凸状部が上の部位と下の部位とに分かれ、下の部位が、上の部位との間に段差を有するとともに、右の凸状部との間でも段差を有している点。」
(2)甲第7号証に記載された発明
上記(1)によれば、甲第7号証には、次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲7発明)
「表面に凹凸が形成され、
概ね左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部を有し、
上下の二つの前記帯状部のうち、
上の前記帯状部は、右の凸状部が上の部位と下の部位とに分かれ、下の部位が、上の部位との間に段差を有するとともに、左の凸状部との間でも段差を有し、
下の前記帯状部は、左の凸状部が上の部位と下の部位とに分かれ、下の部位が、上の部位との間に段差を有するとともに、右の凸状部との間でも段差を有している、
壁板。」
8 甲第8号証
甲第8号証は、申立人が甲第7号証の2頁の【部分拡大斜視図】を拡大したものに説明を加えたものである。
9 甲第9号証
(1)甲第9号証の記載事項
本件特許の出願前に発行された甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、家屋の外装材などとして用いられる建築板に関するものである。」
イ「【0012】
凸柄2は基板1の表面に突設されている。また、凸柄2は正面視において略長方形に形成されている。凸柄2の長手方向と基板1の長手方向は略平行に形成されている。また、複数個の凸柄2は基板1の長手方向と短手方向とに規則正しく並ぶようにして設けられている。隣接する凸柄2,2の間には断面略V字状の凹溝3が形成されている。また、凸柄2の表面は平坦ではなく、自然石の表面のような凸凹面で形成されている。さらに、凸柄2の高さは一定ではなく、ばらつくように形成されていてもよい。最も高い凸柄2と最も低い凸柄2の高さの差は0~10mmにすることができる。このように基板1の表面には、凸柄2と凹溝3とからなる凹凸模様が形成されている。尚、凸柄2の長手方向の寸法は10~3030mm、凸柄2の短手方向の寸法は15~100mm、凸柄2の基板1の裏面からの高さ寸法は12~50mm、凹溝3の深さ寸法は2~20mm、凹溝3の開口部(基板1の表面での開口部分)の幅寸法は2~15mmとすることができるが、これに限定されるものではない。なお、本実施例では、長手方向で隣接する凸柄2,2の間に凹溝3が形成されている凹凸模様を示したが、凹溝3を設けずに凸柄2が基板1の長手方向の全長にわたって連続する、所謂ボーダー調の凹凸模様に形成されていてもよい。
・・・
【0017】
図3に、隣接する建築板A、Aの突き合わせ部分の一例を写真で示す。このように隣接する建築板A、Aの突き合わせ部分は明確に視認することができないことが判る。尚、図3の建築板Aはインクジェット印刷により、その表面の意匠が帯状石調に形成されている。すなわち、帯状石調は、「夏」をテーマにした海・青空・暑さ・元気でエネルギッシュさをイメージできるものである。また、帯状石調は、色合いと種類が異なりナチュラルな表情のある石を帯状に積み重ねたイメージである。上記の建築板Aでは、本物の石で表現するには手間ひまがかかる表現であり、一見すると明るく、色合いのコントラストが映えるデザインは、細かな小石組みにすることで、遠目では色々な色合いが重なり合ったように見え、近目では華やかで多彩な表現を狙うことができる。」
ウ 図3
「
[図:0001397235000008.jpg]
」
10 甲第10号証
(1)甲第10号証の記載事項
本件特許の出願前に発行された甲第10号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、壁板等の外装建材などとして用いられる、表面に凹凸模様を形成したポリマー複合セメント板の製造方法に関するものである。」
イ 「【0006】
上記の図4のように、成形板1の表面にプレス成形で凹凸模様3を形成する場合、成形型10で成形板1を加圧して凹凸模様3を形成した後、成形型10を離型させる際に成形型10の凹凸型12から凹凸模様3が抜ける必要がある。このため、形成することができる凹凸模様3としては図6(a)のように抜き勾配θが90°以下の単純な形状のものに限られることになり、図6(b)のように複雑な形状の凹凸模様3を形成することは不可能である。従って、石を割ったような自然で複雑な意匠表現で凹凸模様3を形成することは難しいという問題を有するものであった。」
ウ 図6(a)
「
[図:0001397235000009.jpg]
」
上記イの記載をふまえると、図6から、凹凸模様3の上方に突出する部分において、左側に勾配θが90°以下となる部位が看取できる。
第5 当審の判断
1 新規性・進歩性について
(1)甲第1号証を主引用例として
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲第2号証は、上記のとおり、申立人が甲第1号証の39頁の左側の写真を拡大したものに説明を加えたものであり、甲第3号証に記載されたものが、甲第1号証に記載されたものと同じものであるとはいえず、また、甲第4号証は、商品明「シュマール」という外装材が、新商品として2017年4月にニチハ株式会社のホームページに掲載されたことを示すものに過ぎないことから、本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「表面に凹凸が形成され」た「壁の部材として用いられ」る「板」は、本件発明1の「表面に凹凸が形成された建築板」に相当する。
b 甲1発明の「左右方向」の「帯状部」及び「凹状部」は、本件発明1の「帯状部」及び「凹状部」に、それぞれ相当し、
甲1発明の「上下の二つの前記帯状部の間」に設けられる「一つの前記凹状部」は、本件発明1の「二つの前記帯状部の間」に設けられる「一つの前記凹状部」に相当する。
そうすると、甲1発明の「壁の部材として用いられ」る「板」が、「左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられて」いることは、本件発明1の「前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられて」いることに相当する。
c 甲1発明の「境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部」は、「境界部により区別される」、「左の凸状部」と「右の凸状部」とにより、左右方向で一対をなしているといえるから、本件発明1の「隣り合う一対の凸状部」に相当する。
甲1発明の「上下の二つ」の「帯状部」は、いずれも、「境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部」を有している。
そうすると、甲1発明において、「上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部を有して」いることは、本件発明1の「前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有し」ていることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「表面に凹凸が形成された建築板であって、
前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有する、
建築板」
(相違点1)
「一対の凸状部」について、本件発明1では、「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部を有し、前記一対の凸状部のうちの第1の凸状部の一側端の内側に第2の凸状部が位置し、前記第1の凸状部に前記下り傾斜面が形成されており、前記下り傾斜面の上端縁と下端縁とが、前記第1の凸状部の上面から前記凹状部の底面に向かって延び、前記隣り合う一対の凸状部が並ぶ方向に対して傾斜しており、前記上端縁は、前記第2の凸状部の上面と前記下り傾斜面との境界よりも前記第2の凸状部側に延びている」のに対して、甲1発明では、「左の凸状部と右の凸状部との間に段差を有し」ているものの、そのような特定がされていない点。
(イ)判断
a 甲第1号証には、「壁の部材として用いられ」る「板」において、「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部」を有することや、「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」を有することは、記載も示唆もなく、また「建築板」において、このような構成を採用することが技術常識でもない。そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。
b 上記相違点1について検討する。
申立人が提出した甲第10号証には、外装建材の表面に形成される凹凸模様3の上方に突出する部分において、左側に「勾配θが90°以下となる部位」が記載されている。しかしながら、甲第10号証に記載された前記「勾配θが90°以下となる部位」は、本件発明1の「隣の凸状部に一体に連接」する「下り傾斜面」ではない。
また、申立人が提出した甲第2号証~甲第4号証、及び、甲第9号証のいずれにも、本件発明1の「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部」や、「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」は、記載も示唆もされていない。
上記のとおりであるから、甲1発明に、甲第2号証~甲第4号証に記載された事項、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項を適用し、相違点1に係る本件発明1に係る構成とすることはできない。
よって、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証~甲第4号証に記載された事項、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、甲第1号証には、本件発明1の構成A~構成Hの構成に相当する構成が記載されている旨主張する。(申立書の1-3頁の○1の対比表。23頁26行-25頁7行)
しかしながら、甲第1号証は、平面的な写真であって、建築板の表面側の立体的状況を明確に示すものではないから、甲第1号証において、本件発明1のような「下り傾斜面」及び「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」を認定することはできない。また、申立人が提出した甲第3号証には、斜視図(【参考斜視図】、【参考部分拡大斜視図】)が含まれているが、これらの図と甲第1号証との関係が明らかでないので、甲第3号証の記載をふまえて、甲1発明を認定することはできない。甲第1号証に記載の建築板については、写真中の陰影の状況から、その表面に「凸状部」、「凹状部」及び「段差」等を把握することができる程度であって、上記第4の1(2)のとおりの甲1発明を認定できるに止まるものである。
したがって、甲第1号証には、本件発明1の、「下り傾斜面」及び「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」に係る構成D~構成Gに相当する構成が記載されているとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
(エ)小括
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明、甲第2号証~甲第4号証に記載された事項、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用しさらに限定するものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~7は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明、甲第2号証~甲第4号証に記載された事項、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)甲第5号証を主引用例として
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲第6号証は、上記のとおり、申立人が甲第5号証の2頁の【参考部分拡大図】を拡大したものに説明を加えたものであるから、本件発明1と甲5発明とを対比する。
a 甲5発明の「表面に凹凸が形成され」た「建築用壁板」は、本件発明1の「表面に凹凸が形成された建築板」に相当する。
b 甲5発明の「左右方向」の「帯状部」及び「凹状部」は、本件発明1の「帯状部」及び「凹状部」に、それぞれ相当し、
甲5発明の「上下の二つの前記帯状部の間」に設けられる「一つの前記凹状部」は、本件発明1の「二つの前記帯状部の間」に設けられる「一つの前記凹状部」に相当する。
そうすると、甲5発明の「建築用壁板」が、「左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられて」いることは、本件発明1の「前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられて」いることに相当する。
c 甲5発明の「境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部」は、「境界部により区別される」、「左の凸状部」と「右の凸状部」とにより、左右方向で一対をなしているといえるから、本件発明1の「隣り合う一対の凸状部」に相当する。
甲5発明の「上下の二つ」の「帯状部」は、いずれも、「境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部」を有している。
そうすると、甲5発明において、「上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部を有して」いることは、本件発明1の「前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有し」ていることに相当する。
d 甲5発明の「右の凸状部」及び「左の凸状部」は、本件発明1の「第1の凸状部」及び「第2の凸状部」に相当し、
甲5発明の「右の凸状部の左側の端」は、本件発明1の「第1の凸状部の一側端」に相当する。
甲5発明の「右の凸状部の左側の端において、上下の幅の範囲内に左の凸状部の右側の端が位置」していることは、本件発明1の「前記一対の凸状部のうちの第1の凸状部の一側端の内側に第2の凸状部が位置」していることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲5発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「表面に凹凸が形成された建築板であって、
前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有し、
前記一対の凸状部のうちの第1の凸状部の一側端の内側に第2の凸状部が位置している、
建築板」
(相違点2)
「一対の凸状部」について、本件発明1では、「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部を有し」、「前記第1の凸状部に前記下り傾斜面が形成されており、前記下り傾斜面の上端縁と下端縁とが、前記第1の凸状部の上面から前記凹状部の底面に向かって延び、前記隣り合う一対の凸状部が並ぶ方向に対して傾斜しており、前記上端縁は、前記第2の凸状部の上面と前記下り傾斜面との境界よりも前記第2の凸状部側に延びている」のに対して、甲5発明では、「左の凸状部と右の凸状部との間に段差を有し」ているものの、そのような特定がされていない点。
(イ)判断
a 甲第5号証には、「建築用壁板」において、「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部」を有することや、「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」を有することは、記載も示唆もなく、また「建築板」において、このような構成を採用することが技術常識でもない。そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明ではない。
b 上記相違点2について検討する。
申立人が提出した甲第10号証には、外装建材の表面に形成される凹凸模様3の上方に突出する部分において、左側に「勾配θが90°以下となる部位」が記載されている。しかしながら、甲第10号証に記載された前記「勾配θが90°以下となる部位」は、本件発明1の「隣の凸状部に一体に連接」する「下り傾斜面」ではない。
また、申立人が提出した甲第9号証には、本件発明1の「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部」や、「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」は、記載も示唆もされていない。
上記のとおりであるから、甲5発明に、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項を適用し、相違点2に係る本件発明1に係る構成とすることはできない。
よって、本件発明1は、甲5発明、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、甲第5号証には、本件発明1~3の構成A~構成L、及び、本件発明5~7の構成O~Vの構成に相当する構成が記載されている旨主張する。(申立書の6-8頁の○2-1の対比表。30頁22-24行)
しかしながら、甲第5号証の【参考部分拡大図】(上記第4の5(1)エ)は、平面的な図であって、建築板の表面側の立体的状況を明確に示すものではないから、甲第5号証において、本件発明1のような「下り傾斜面」及び「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」を認定することはできない。甲第5号証に記載の建築板は、図の陰影の状況から、その表面に「凸状部」、「凹状部」及び「段差」等を把握することができる程度であって、上記第4の5(2)のとおりの甲5発明を認定できるに止まるものである。
したがって、甲第5号証には、本件発明1の、「下り傾斜面」及び「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」に係る構成D~構成Gに相当する構成が記載されているとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
(エ)小括
よって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明ではなく、また、甲5発明、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用しさらに限定するものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~7は、甲第5号証に記載された発明ではなく、また、甲5発明、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)甲第7号証を主引用例として
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲第8号証は、上記のとおり、申立人が甲第7号証の2頁の【部分拡大斜視図】を拡大したものに説明を加えたものであるから、本件発明1と甲7発明とを対比する。
a 甲7発明の「表面に凹凸が形成され」た「壁板」は、本件発明1の「表面に凹凸が形成された建築板」に相当する。
b 甲7発明の「概ね左右方向」の「帯状部」及び「凹状部」は、本件発明1の「帯状部」及び「凹状部」に、それぞれ相当し、
甲7発明の「上下の二つの前記帯状部の間」に設けられる「一つの前記凹状部」は、本件発明1の「二つの前記帯状部の間」に設けられる「一つの前記凹状部」に相当する。
そうすると、甲7発明の「壁板」が、「概ね左右方向の帯状部と凹状部とを備え、上下の二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられて」いることは、本件発明1の「前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられて」いることに相当する。
c 甲7発明の「境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部」は、「境界部により区別される」、「左の凸状部」と「右の凸状部」とにより、左右方向で一対をなしているといえるから、本件発明1の「隣り合う一対の凸状部」に相当する。
甲7発明の「上下の二つ」の「帯状部」は、いずれも、「境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部」を有している。
そうすると、甲7発明の「上下の二つの前記帯状部は、それぞれ、境界部により区別される、左の凸状部及び右の凸状部を有して」いることは、本件発明1の「前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有し」ていることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲7発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「表面に凹凸が形成された建築板であって、
前記建築板は、帯状部と凹状部とを備え、二つの前記帯状部の間に一つの前記凹状部が設けられており、
前記各帯状部は、隣り合う一対の凸状部を有する、
建築板」
(相違点3)
「一対の凸状部」について、本件発明1では、「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部を有し、前記一対の凸状部のうちの第1の凸状部の一側端の内側に第2の凸状部が位置し、前記第1の凸状部に前記下り傾斜面が形成されており、前記下り傾斜面の上端縁と下端縁とが、前記第1の凸状部の上面から前記凹状部の底面に向かって延び、前記隣り合う一対の凸状部が並ぶ方向に対して傾斜しており、前記上端縁は、前記第2の凸状部の上面と前記下り傾斜面との境界よりも前記第2の凸状部側に延びている」のに対して、甲7発明では、「上下の二つの前記帯状部のうち、上の前記帯状部は、右の凸状部が上の部位と下の部位とに分かれ、下の部位が、上の部位との間に段差を有するとともに、左の凸状部との間でも段差を有し、下の前記帯状部は、左の凸状部が上の部位と下の部位とに分かれ、下の部位が、上の部位との間に段差を有するとともに、右の凸状部との間でも段差を有している」ものの、そのような特定がされていない点。
(イ)判断
a 甲第7号証には、「壁板」において、「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部」を有することや、「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」を有することは、記載も示唆もなく、また「建築板」において、このような構成を採用することが技術常識でもない。そうすると、上記相違点3は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明ではない。
b 上記相違点3について検討する。
申立人が提出した甲第10号証には、外装建材の表面に形成される凹凸模様3の上方に突出する部分において、左側に「勾配θが90°以下となる部位」が記載されている。しかしながら、甲第10号証に記載された前記「勾配θが90°以下となる部位」は、本件発明1の「隣の凸状部に一体に連接」する「下り傾斜面」ではない。
また、申立人が提出した甲第9号証には、本件発明1の「少なくとも一側面が下り傾斜面で形成されて該下り傾斜面が隣の凸状部に一体に連接する凸状部」や、「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」は、記載も示唆もされていない。
上記のとおりであるから、甲7発明に、甲第9号証に記載された事項及び甲第10号証に記載された事項を適用し、相違点3に係る本件発明1に係る構成とすることはできない。
よって、本件発明1は、甲7発明、甲第9号証に記載された事項、及び、甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、甲第7号証には、本件発明1~3の構成A~構成L、及び、本件発明5~7の構成O~Vの構成に相当する構成が記載されている旨主張する。(申立書の11-13頁の○2-2の対比表。31頁4-6行)
しかしながら、甲第7号証の【部分拡大斜視図2】(上記第4の7(1)イ)は、平面的な図であって、建築板の表面側の立体的状況を明確に示すものではないから、甲第7号証において、本件発明1のような「下り傾斜面」及び「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」を認定することはできない。甲第7号証に記載の建築板については、図の陰影の状況から、その表面に「凸状部」、「凹状部」及び「段差」等を把握することができる程度であって、上記第4の7(2)のとおりの甲7発明を認定できるに止まるものである。
したがって、甲第7号証には、本件発明1の、「下り傾斜面」及び「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁」に係る構成D~構成Gに相当する構成が記載されているとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
(エ)小括
よって、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明ではなく、また、甲7発明、甲第9号証に記載された事項、及び、甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用しさらに限定するものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~7は、甲第7号証に記載された発明ではなく、また、甲7発明、甲第9号証記載された事項及び甲第10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 明確性要件について
(1)申立人は、本件発明1の構成Fにおける「第1の凸状部の上面」とは、本件特許明細書における図1の矢印Yが指す方向を指すか、又は第1の凸状部の表面の方向を指すか、明確でない旨主張する。
しかしながら、請求項1の「下り傾斜面の上端縁と下端縁」との記載から、「下り傾斜面」は、その上端と下端において縁となる部位である「上端縁」と「下端縁」とを有していると理解できる。
また、請求項1の「前記下り傾斜面の上端縁と下端縁とが、前記第1の凸状部の上面から前記凹状部の底面に向かって延び」との記載から、上記「上端縁」及び「下端縁」が、「第1の凸状部の上面」から「凹状部の底面に向かって延び」ていることが理解できる。
ところで、請求項1の「第1の凸状部」は、「凹状部」よりも、凸状となっている(突出している)分だけ、「凹状部の底面」よりも高さが高いことは明らかである。
そうすると、「第1の凸状部の上面」とは、図1の矢印Yが差す方向の面ではなく、「上端縁」及び「下端縁」が延びる際の起点となっているところの面、即ち、第1凸状部の表面であって、凹状部の底面よりも、高さが高い位置にあるところの面であると理解できる。
以上のとおり、請求項1の「第1の凸状部の上面」については、上記のとおり理解することができるから、明確である。
(2)申立人は、本件発明1は、本件特許発明の目的及び効果を達成する上で、「隣り合う凸状部」或いは「第1の凸状部と第2の凸状部」が、建築板においてどの程度の割合で設けているのか明確でなく、不明瞭である旨主張する。
申立人が述べるとおり、請求項1には、「隣り合う一対の凸状部」、「第1の凸状部と第2の凸状部」が「建築板」において設けられる割合については、記載されていない。
しかしながら、上記の記載がないということは、請求項1に係る発明においてその特定がされていないということに過ぎず、そのこと自体が、請求項1の記載を不明確にするものではない。
なお、「建築板」において、「隣り合う一対の凸状部」や「第1の凸状部と第2の凸状部」をどの程度の割合で設けるかにより、本件特許発明の目的の達成度合いや、奏する効果の程度に違いは生じるものといえるが、上記のとおり、このような記載がないことが、請求項1の記載を不明確にするものではない。
よって、請求項1の記載は、明確である。
(3)申立人は、本件発明1は、本件特許発明の目的及び効果を達成する上で、必要な「傾斜面」の角度や面積が記載されておらず、不明瞭である旨主張する。
申立人が述べるとおり、請求項1には、「傾斜面」の角度や面積については、記載されていない。
しかしながら、上記の記載がないということは、請求項1に係る発明においてその特定がされていないということに過ぎず、そのこと自体が、請求項1の記載を不明確にするものではない。
なお、「建築板」において、「傾斜面」の角度や面積をどの程度にするかにより、本件特許発明の目的の達成度合いや、奏する効果の程度に違いは生じるものといえるが、上記のとおり、このような記載がないことが、請求項1の記載を不明確にするものではない。
よって、請求項1の記載は、明確である。
(4)以上のとおりであるから、請求項1の記載は明確であり、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしている。
3 実施可能要件について
申立人は、発明の機能、特性等を実現するための建築板の厚み、建築板の縦辺及び横辺の長さ等の具体的数値範囲が記載されておらず、当該建築板における「隣り合う一対の凸状部」等の割合、「傾斜面」の角度や面積について記載されておらず、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるから、実施可能要件違反である旨を主張する。
申立人が述べるとおり建築板の厚み、建築板の縦辺及び横辺の長さ等の具体的数値範囲や、建築板における「隣り合う一対の凸状部」等の割合、「傾斜面」の角度や面積について記載されていない。
しかしながら、建築板において、建築板の厚み、建築板の縦辺及び横辺の長さ等の具体的数値は、建築板を製造する際に、建築板を適用する現場の諸条件を考慮して適宜決定しうる事項である。また、本件特許の発明の詳細な説明の【0016】~【0112】には、「建築板」の「隣り合う一対の凸状部」、「傾斜面」について、様々な実施例が、具体的に記載されている。
したがって、本件発明については、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等を要することなく、建築板の製造等の実施をすることができると理解できる。
なお、建築板の厚み、建築板の縦辺及び横辺の長さ等の具体的数値範囲や、建築板における「隣り合う一対の凸状部」等の割合、「傾斜面」の角度や面積の違いにより、本件特許発明の目的の達成度合いや、奏する効果の程度に違いは生じるものといえるが、これらの記載が発明の詳細な説明にないからといって、本件発明の実施ができないというものでもない。
以上のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしている。
第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700059