特許異議申立
2022-700440
積層体及び冷凍食品用容器包装
- 審判番号
- 2022-700440
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-091416
- 登録番号
- 6977944
- 請求日
- 2022年05月20日
- 審決日
- 2023年06月27日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社アースクリエイト
- 【権利者代理人】前井 宏之
- 【権利者】共栄産業株式会社
- 【権利者代理人】前井 宏之
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 中野 裕之
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6977944号発明「積層体及び冷凍食品用容器包装」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6977944号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第6977944号の請求項1、3、5、6に係る特許を維持する。
特許第6977944号の請求項2、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6977944号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和3年5月31日の特許出願であって、令和3年11月15日にその特許権の設定登録がされた(特許掲載公報令和3年12月8日発行)。
本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 5月20日 :特許異議申立人加藤浩志(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 9月14日付け:取消理由通知書
令和4年11月18日 :特許権者による意見書の提出
令和5年 2月 8日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 4月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和5年 5月18日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1中、
「積層体であって」を「冷凍食品用容器包装に用いるための積層体であって」に訂正し、
「炭酸カルシウム粒子を含み、」の次に「前記内層における前記無機充填剤の含有割合は、53質量%以上58質量%以下であり、前記積層体の全体厚さは、200μm以上1000μm以下であり、JIS K7211-1:2006に準拠し、重錘質量200g、測定温度-20℃において測定される前記積層体の50%破壊エネルギーは、0.50J以上であり、」を加え、
「積層体。」を「冷凍食品用容器包装に用いるための積層体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、5、6も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3中、「請求項1又は2に」を「請求項1に」に訂正し、「積層体。」を「冷凍食品用容器包装に用いるための積層体。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5中、
「請求項1から4の何れか一項」を「請求項1又は3」に訂正し、
「積層体。」を「冷凍食品用容器包装に用いるための積層体。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項6中、
「請求項1から5の何れか一項」を「請求項1、3又は5」に訂正し、
「積層体」を「冷凍食品用容器包装に用いるための積層体」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~6〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「積層体」、「内層」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0002】、【0026】、【0069】、【0072】、【0073】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2、4について
訂正事項2、4は、本件訂正前の請求項2、4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3について、「積層体」について限定するとともに、訂正事項2によって請求項2が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2によって削除された請求項2を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、本件訂正前の請求項5、6について、「積層体」について限定するとともに、訂正事項2、4によって請求項2、4が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2、4によって削除された請求項2、4を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5、6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、3、5、6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3、5、6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、3、5、6の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
内層と、前記内層の両面に積層される1対の外層とを備える冷凍食品用容器包装に用いるための積層体であって、
前記内層は、無機充填剤及び第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記外層は、第2熱可塑性樹脂を含有し、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記内層における前記無機充填剤の含有割合は、53質量%以上58質量%以下であり、
前記積層体の全体厚さは、200μm以上1000μm以下であり、
JIS K7211-1:2006に準拠し、重錘質量200g、測定温度-20℃において測定される前記積層体の50%破壊エネルギーは、0.50J以上であり、
前記積層体における前記無機充填剤の含有割合は、50質量%超であり、
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂は、それぞれ、以下のA又はBの条件を満たし、
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂において、下記第1ポリエチレン樹脂、下記第2ポリエチレン樹脂及び下記第3ポリエチレン樹脂の合計含有割合は、それぞれ、90質量%超である、冷凍食品用容器包装に用いるための積層体。
A:密度が0.942g/cm3以上0.970g/cm3以下、かつ多分散度(Mw/Mn)が2.0以上10.0以下の第1ポリエチレン樹脂を含む。
B:密度が0.942g/cm3以上0.970g/cm3以下、かつ多分散度(Mw/Mn)が10.0超50.0以下の第2ポリエチレン樹脂と、密度が0.850g/cm3以上0.930g/cm3未満の第3ポリエチレン樹脂とを含み、前記第2ポリエチレン樹脂及び前記第3ポリエチレン樹脂の総質量に対する前記第3ポリエチレン樹脂の質量の比率は、5質量%以上30質量%以下である。
【請求項3】
前記外層の厚さの比率は、前記積層体の全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である、請求項1に記載の冷凍食品用容器包装に用いるための積層体。
【請求項5】
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂において、前記第1ポリエチレン樹脂、前記第2ポリエチレン樹脂及び前記第3ポリエチレン樹脂の合計含有割合は、それぞれ、100質量%である、請求項1又は3に記載の冷凍食品用容器包装に用いるための積層体。
【請求項6】
請求項1、3又は5に記載の積層体を成形することにより形成される冷凍食品用容器包装に用いるための冷凍食品用容器包装。
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和5年2月8日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、本取消理由は、特許異議の申立ての理由を含むものである。
本件特許の請求項1~6に係る発明は、下記甲1に記載された発明、甲2~甲4、引用文献1及び引用文献2の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。
<引用文献等一覧>
(以下、甲第1号証~甲第4号証を甲1~甲4という。)
甲1:特開2016-198998号公報
甲2:特開2002-361811号公報
甲3:特開2005-289494号公報
甲4:特許第6857428号公報
引用文献1:特開2015-134629号公報
引用文献2:日本工業規格“プラスチック-ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎”、JIS K 6922-1:2018、2018年(平成30年)、5ページ
2 当審の判断
(1)引用文献等の記載及び引用発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、次の事項が記載されている。以下、当審が理解の便宜のために下線を付した。
「【請求項1】
無機充填剤を60重量%以上含むポリオレフィン系基材層(A)及び樹脂層(B)を有する多層樹脂成形物であって、
樹脂層(B)は、無機充填剤が20重量%未満で最外層を構成するものであり、
該多層樹脂成形物の全樹脂成分が50重量%未満であることを特徴とするポリオレフィン系多層樹脂成形物。
【請求項2】
無機充填剤の少なくとも70重量%が炭酸カルシウムである請求項1に記載のポリオレフィン系多層樹脂成形物。
【請求項3】
ポリオレフィン系基材層の樹脂成分の少なくとも50重量%がポリエチレン樹脂である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系多層樹脂成形物。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン、並びに、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンからなり、該ポリエチレン樹脂成分の少なくとも10重量%が低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンである請求項3に記載のポリオレフィン系多層樹脂成形物。」
「【0004】
一方、包装容器リサイクル法においては、樹脂を50%以上含有するような容器については、リサイクルが義務付けられているのに対して、樹脂の含有量が50重量%未満のものは、包装容器リサイクル法の対象とならない。このため、包装容器や農業用フィルム等において、無機フィラーの配合量を50重量%以上とすることは、コスト上も環境面でも好ましいものである。」
「【0016】
(ポリオレフィン系基材層(A))
上記ポリオレフィン系基材層(A)を形成するポリオレフィン樹脂は特に限定されず、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、ポリプロピレン等の一般的に知られる公知のポリオレフィン樹脂を使用することができ、これらを2以上組み合わせた混合物であってもよい。」
「【0020】
上記無機充填剤は、ポリオレフィンに配合される一般的な無機充填剤を使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、酸化亜鉛、ドロマイト、ガラス繊維、中空ガラスミクロビーズ、シリカ、チョーク、タルク、ピグメント、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ベントナイト、クレー、珪藻土等を挙げることができる。これらのなかでも、特に炭酸カルシウムは、豊富に産出する国産資源として比較的低コストで安定的に入手できるという点で好ましいものである。よって、無機充填剤のうち、70重量%以上が炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0021】
更に、無機充填剤として一部に二酸化チタンを使用することが好ましい。二酸化チタンは、白色度が高いものであることから、これを使用することで印刷特性が向上する点で特に好ましい。二酸化チタンを配合する場合、ポリオレフィン系樹脂層(A)全量に対して、0.5~5重量%であることが好ましい。上記上限は3重量%であることがより好ましく、上記下限は0.5重量%であることがより好ましい。
【0022】
本発明のポリオレフィン系基材層(A)は、無機充填剤を60重量%以上含むものである。すなわち、多層樹脂成形物における無機充填剤の配合量を多量にすることによって、成形物全体としての無機充填剤の配合量を50重量%以上のものとするものである。上記無機充填剤の配合量は、65重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることが更に好ましい。また、無機充填剤の配合量が80重量%以下であることが好ましい。無機充填剤が80重量%を超えると、成形性が悪化する点で好ましいものではない。」
「【0025】
(樹脂層(B))
本発明の多層樹脂成形物は、更に無機充填剤が20重量%未満で最外層を構成する樹脂層(B)を有するものである。すなわち、無機充填剤の配合量が少ない樹脂層(B)を最外層(すなわち、多層体の最外層)に設け、これによって無機充填剤の脱落を防ぎ、印刷特性を向上させるものである。更に、成形体全体としては、無機充填剤の配合量を50%以上とすることで、包装容器リサイクル法の対象にならない点で好ましい。
【0026】
上記樹脂層(B)は、例えば、多層樹脂成形物がフィルム、シート物形状である場合は、多層フィルムの形で上記ポリオレフィン系基材層(A)と組み合わせることができ、射出成形やブロー成形等の場合は、多層形状に成形した形状とすることができる。
【0027】
上記樹脂層(B)の組成は、無機充填剤の配合量が20重量%未満であれば特に限定されるものではない。上記樹脂層(B)として、無機充填剤の配合量が小さいものを最外層に設けることによって、上述したポリオレフィン系基材層(A)が最表面層である場合の印刷特性や、粉吹きといった問題を改善することができる。
更に、無機充填剤の配合量が20重量%未満である樹脂層(B)は、空隙率が高い層となることはない。このため、当該樹脂層(B)を水が透過できないため透水性が低くなり、これによって多層体の防水性能が高められるものである。
・・・
【0029】
上記樹脂層(B)は、無機充填剤を全く配合しないものであってもよい。本発明の目的においては、樹脂層(B)に無機充填剤を配合することは、必要とされる効果を得る上で必要な事項ではないためである。上記無機充填剤の配合量は、10重量%以下であることがより好ましい。
【0030】
上記樹脂層を形成する樹脂は、上述したポリオレフィン系基材層(A)中に含まれるものと同様に、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。また、ポリオレフィン系基材層(A)と同一の樹脂種を使用するものであることがより好ましい。上記樹脂層(B)において配合してもよい上記無機充填剤としては特に限定されず、上述したポリオレフィン系基材層(A)の無機充填剤として例示したものを同様に使用することができる。
・・・
【0032】
また、ポリオレフィン系基材層(A)と、樹脂層(B)との比率は特に限定されるものではないが、本発明においては「多層樹脂成形物の全樹脂成分が50重量%未満である」との要件を満たすことが必須であるから、ポリオレフィン系基材層(A)と樹脂層(B)との組成を勘案し、上述した数値範囲を満たすものになるように、それぞれの層の比率を具体的に設定するものである。
【0033】
(多層構造)
本発明の多層樹脂成形物の多層構造は2層以上のものであれば特に限定はされず、例えば、図1に示した2層構造又は図2に示した3層構造を挙げることができる。3層である場合は、図2に示したように、中間に無機充填剤を60重量%以上含むポリオレフィン系基材層を形成し、その両側に樹脂層を表面層として形成したものであることが好ましい。これによって、上述した目的を好適に達成することができる。また、2層構造である場合、印刷特性、耐水性、ヒートシール特性等、樹脂層(B)によって得られる特性が必要とされる側に、樹脂層(B)を使用することが好ましい。」
「【0039】
本発明のポリオレフィン系多層樹脂成形物が、フィルム状の形状を有するものである場合、その厚みは、25~1500μmであることが好ましい。当該範囲内の厚みとすることで、強度を維持しつつ、紙と同様の感触を得ることができるため、汎用用途において使用することができる。上記上限はより好ましくは、800μmであり更に好ましくは400μmである。上記下限は、より好ましくは30μmである。」
「【0041】
本発明のポリオレフィン多層樹脂成形物は、農業用シートや薬、食品、化粧料等の包装容器として使用することができる。また、買い物袋等に使用される樹脂シートを加工して得られる袋体としても好適に使用できる。農業用シートとして使用する場合は、果実保護袋、果樹の保温用シート、地面の冷却を防止するための保温シート等の目的で使用することができる。更に、紙の代替品として使用することもできる。また、製造においてヒートシール加工を行うことで所望の形状を得るものであってもよい。」
「【0043】
(マスターバッチ1の製造)
高密度ポリエチレンに、炭酸カルシウム粒子を、樹脂/炭酸カルシウム/二酸化チタン=30/68/2の重量比となるように使用して、二軸混練機によって混練し、チップ化することで、マスターバッチ樹脂を得た。」
「【0054】
(実施例9:3層インフレーションフィルム)
上述したマスターバッチ1及びマスターバッチ1の製造に使用したものと同一で、無機フィラーを含有しないポリエチレン樹脂を使用して、多層インフレーション成形装置を使用して、3層フィルムを成形した。3層の2つの最外層を樹脂層(B)とし、内層をポリオレフィン系基材層(A)とした。得られた成形品全体に対して、無機充填剤は65重量%となった。また、フィルムの厚みは、50μmであった。」
「【図2】
[図:0001401624000001.jpg]
」
上記【0020】~【0022】、【0043】の記載から、炭酸カルシウムと二酸化チタンは無機充填剤であるから、マスターバッチ1を用いたポリオレフィン系多層樹脂成形物の、ポリオレフィン系基材層(A)における無機充填剤の含有割合は、70重量%である。
イ 甲1に記載された発明
甲1には、特に実施例9(【0054】)に着目すると、次の発明が記載されている。
「ポリオレフィン系基材層(A)と、前記ポリオレフィン系基材層(A)の両側に表面層として形成される樹脂層(B)とを備える、3層フィルムに成形された、食品の包装容器に用いられるポリオレフィン系多層樹脂成形物であって、
前記ポリオレフィン系基材層(A)は、無機充填剤及び高密度ポリエチレンを含有し、無機充填剤の含有割合は、70重量%であり、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記樹脂層(B)は、高密度ポリエチレンを含有し、無機充填剤を含有せず、
前記3層フィルムの厚みは、50μmであり、
前記ポリオレフィン系多層樹脂成形物における前記無機充填剤の含有割合は、65重量%であり、
前記ポリオレフィン系基材層(A)及び前記樹脂層(B)において、それぞれの層の樹脂成分全体に対する、高密度ポリエチレンの含有割合は100重量%である、食品の包装容器に用いられるポリオレフィン系多層樹脂成形物。」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリオレフィン系基材層(A)」は本件発明1の「内層」に相当し、以下同様に、「樹脂層(B)」は「外層」に、「ポリオレフィン系多層樹脂成形物」は「積層体」に、ポリオレフィン系基材層(A)の「高密度ポリエチレン」は「第1熱可塑性樹脂」に、樹脂層(B)の「高密度ポリエチレン」は「第2熱可塑性樹脂」に、「炭酸カルシウム粒子」は「無機充填剤」及び「炭酸カルシウム粒子」にそれぞれ相当する。
甲1発明の「食品の包装容器に用いられる」ことと、本件発明1の「冷凍食品用容器包装に用いるための」ものであることとは、食品用容器包装に用いるためのものである限りで一致する。
甲1発明の「前記ポリオレフィン系基材層(A)及び前記樹脂層(B)において、それぞれの層の樹脂成分全体に対する、高密度ポリエチレンの含有割合は100重量%である」ことと、本件発明1の「前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂は、それぞれ」、A「密度が0.942g/cm3以上0.970g/cm3以下、かつ多分散度(Mw/Mn)が2.0以上10.0以下の第1ポリエチレン樹脂を含む。」又はB「密度が0.942g/cm3以上0.970g/cm3以下、かつ多分散度(Mw/Mn)が10.0超50.0以下の第2ポリエチレン樹脂と、密度が0.850g/cm3以上0.930g/cm3未満の第3ポリエチレン樹脂とを含み、前記第2ポリエチレン樹脂及び前記第3ポリエチレン樹脂の総質量に対する前記第3ポリエチレン樹脂の質量の比率は、5質量%以上30質量%以下である。」の「条件を満た」すこととは、「前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂は、それぞれ」、A「高密度ポリエチレンの第1ポリエチレン樹脂を含む。」の「条件を満た」すことの限りで一致する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
内層と、前記内層の両面に積層される1対の外層とを備える食品用容器包装に用いるための積層体であって、
前記内層は、無機充填剤及び第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記外層は、第2熱可塑性樹脂を含有し、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記積層体における前記無機充填剤の含有割合は、50質量%超であり、
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂は、それぞれ、以下のAの条件を満たし、
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂において、下記第1ポリエチレン樹脂の合計含有割合は、それぞれ、90質量%超である、食品用容器包装に用いるための積層体。
A:高密度ポリエチレンの第1ポリエチレン樹脂を含む。
[相違点1]
食品用容器包装に用いるためのものであることについて、本件発明1は、「冷凍食品用容器包装に用いるための」ものであるのに対して、甲1発明は、「食品の包装容器に用いられる」点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記内層における前記無機充填剤の含有割合は、53質量%以上58質量%以下であ」るのに対して、甲1発明は、「前記ポリオレフィン系基材層(A)」は、「無機充填剤の含有割合は、70重量%であ」る点。
[相違点3]
本件発明1は、「前記積層体の全体厚さは、200μm以上1000μm以下であ」るのに対して、甲1発明は、「前記3層フィルムの厚みは、50μmであ」る点。
[相違点4]
本件発明1は、「JIS K7211-1:2006に準拠し、重錘質量200g、測定温度-20℃において測定される前記積層体の50%破壊エネルギーは、0.50J以上であ」るのに対して、甲1発明は、そのようなものであるか不明である点。
[相違点5]
「第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂の成分は、それぞれ」、A「高密度ポリエチレンの第1ポリエチレン樹脂を含む。」の「条件を満た」すことに関して、本件発明1は、「前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂は、それぞれ」、A「密度が0.942g/cm3以上0.970g/cm3以下、かつ多分散度(Mw/Mn)が2.0以上10.0以下の第1ポリエチレン樹脂を含む。」又はB「密度が0.942g/cm3以上0.970g/cm3以下、かつ多分散度(Mw/Mn)が10.0超50.0以下の第2ポリエチレン樹脂と、密度が0.850g/cm3以上0.930g/cm3未満の第3ポリエチレン樹脂とを含み、前記第2ポリエチレン樹脂及び前記第3ポリエチレン樹脂の総質量に対する前記第3ポリエチレン樹脂の質量の比率は、5質量%以上30質量%以下である。」の「条件を満た」すのに対して、甲1発明は、「前記ポリオレフィン系基材層(A)及び前記樹脂層(B)において、それぞれの層の樹脂成分全体に対する、高密度ポリエチレンの含有割合は100重量%である」点。
イ 判断
事案に鑑み相違点2、4について検討する。
(ア)相違点2について
甲1発明は、ポリオレフィン系多層樹脂成形物における1つの層であるポリオレフィン系基材層の無機充填剤の配合量を、50重量%を上回る多量の配合量である70重量%とすることによって、成形物全体としての無機充填剤の配合量を50重量%以上とし、包装容器リサイクル法の対象とならないことを課題解決手段とするものである(甲1の【0004】、【0009】及び【0022】)。
その上、甲1には、「本発明のポリオレフィン系基材層(A)は、無機充填剤を60重量%以上含むものである。・・・上記無機充填剤の配合量は、65重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることが更に好ましい。また、無機充填剤の配合量が80重量%以下であることが好ましい。無機充填剤が80重量%を超えると、成形性が悪化する点で好ましいものではない。」(【0022】)と記載されている。
そうすると、甲1発明における「ポリオレフィン系基材層(A)」の「無機充填剤の含有割合」を「53質量%以上58質量%」に減少させることに阻害要因がある。
そうすると、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(イ)相違点4について
積層体において、「JIS K7211-1:2006に準拠し、重錘質量200g、測定温度-20℃において測定される前記積層体の50%破壊エネルギーは、0.50J以上」とすることについて、甲1やその他の証拠には記載も示唆もされておらず、甲1発明において、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3、5、6について
本件発明3、5、6は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1、3、5、6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、3、5、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2、4は、本件訂正により削除されたため、請求項2、4に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700440