特許異議申立
2023-700420
服飾資材及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-700420
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-024517
- 登録番号
- 7168923
- 請求日
- 2023年04月24日
- 審決日
- 2024年01月09日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社アースクリエイト
- 【権利者代理人】前井 宏之
- 【権利者】株式会社アイリス
- 【権利者代理人】前井 宏之
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 八木 誠
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.537-YAA(A44B) / P1651.121-YAA(A44B) / P1651.831-YAA(A44B) / P1651.851-YAA(A44B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7168923号発明「服飾資材及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7168923号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7〕、〔6、8〕について訂正することを認める。
特許第7168923号の請求項1~6に係る特許を維持する。
特許第7168923号の請求項7、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7168923号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和4年2月21日に出願され、同年11月1日にその特許権の設定登録がされ、同年11月10日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人加藤浩志(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 4月24日 特許異議の申立て
同年 8月 1日付け 取消理由通知
同年10月 3日 特許権者より意見書・訂正請求書の提出
同年11月 6日 申立人より意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年10月3日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(3)のとおりである。下線は、訂正箇所を示すため、当審で付与したものである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記ステアリン酸塩の含有割合は、0.003質量%以上0.020質量%以下である、服飾資材。」とあるのを、
「前記ステアリン酸塩の含有割合は、0.003質量%以上0.020質量%以下であり、
前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であり、
前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸カルシウムを含む、服飾資材。」と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「前記混合物における前記ステアリン酸塩の含有割合は、0.003質量%以上0.020質量%以下である、服飾資材の製造方法。」とあるのを、
「前記混合物における前記ステアリン酸塩の含有割合は、0.003質量%以上0.020質量%以下であり、
前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であり、
前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸カルシウムを含む、服飾資材の製造方法。」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(5)一群の請求項について
本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~5、7〕、〔6、8〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に、「前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であり、前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸カルシウムを含む」との限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項1は、無機充填剤における炭酸カルシウム粒子の含有割合を特定し、ステアリン酸塩がステアリン酸カルシウムを含むことを特定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記限定は、願書に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の【0028】の「無機充填剤における炭酸カルシウム粒子の含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。」との記載、及び、訂正前の請求項7の記載に基づくものであるから、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項6に、「前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であり、前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸カルシウムを含む」との限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2は、無機充填剤における炭酸カルシウム粒子の含有割合を特定し、ステアリン酸塩がステアリン酸カルシウムを含むことを特定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記限定は、本件明細書等の【0028】の上記記載、及び、訂正前の請求項8の記載に基づくものであるから、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。
(3)訂正事項3、4について
訂正事項3、4は、それぞれ、請求項7、8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。
3 小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7〕、〔6、8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
ポリプロピレン樹脂、無機充填剤及びステアリン酸塩を含有し、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記無機充填剤の含有割合は、50.0質量%超68.0質量%以下であり、
前記ステアリン酸塩の含有割合は、0.003質量%以上0.020質量%以下であり、
前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であり、
前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸カルシウムを含む、服飾資材。
【請求項2】
射出成型品である、請求項1に記載の服飾資材。
【請求項3】
前記ポリプロピレン樹脂は、ブロックポリプロピレン樹脂又はホモポリプロピレン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の服飾資材。
【請求項4】
前記ポリプロピレン樹脂の230℃でのメルトフローレートは、25g/10分以上70g/10分以下である、請求項1から3の何れか一項に記載の服飾資材。
【請求項5】
ボタンとして用いられる、請求項1から4の何れか一項に記載の服飾資材。
【請求項6】
第1ポリプロピレン樹脂及び無機充填剤を含有するマスターバッチを準備する準備工程と、
前記マスターバッチ、第2ポリプロピレン樹脂及びステアリン酸塩を混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を射出成型することで服飾資材を得る射出成型工程とを備え、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記混合物における前記無機充填剤の含有割合は、50.0質量%超68.0質量%以下であり、
前記混合物における前記ステアリン酸塩の含有割合は、0.003質量%以上0.020質量%以下であり、
前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であり、
前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸カルシウムを含む、服飾資材の製造方法。」
第4 取消理由について
1 本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、令和5年8月1日付けで当審が通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[取消理由](サポート要件)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
記
(1)「無機充填剤」について
本件発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の【0007】にも記載されるように、取り扱い性、耐熱性及び強度に優れる服飾資材及びその製造方法を提供することであると認められる。
そして、上記課題を解決する手段に関して、無機充填剤について、発明の詳細な説明の【0025】及び【0027】に記載があり、【0028】には、「無機充填剤における炭酸カルシウム粒子の含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。」と記載され、実施例としては、無機充填剤を炭酸カルシウムのみとしたものが実施例1~14が示され、各種試験の結果が表2(【0054】)に示されている。
上記に示すように、発明の詳細な説明からは、無機充填剤を炭酸カルシウムとし、無機充填剤の含有割合が、50.0質量%超68.0質量%以下であるものは、上記課題を解決できると認められ、当業者であれば、無機充填剤のほとんどが炭酸カルシウムであり、無機充填剤の含有割合が、50.0質量%超68.0質量%以下であるものも同様に、上記課題を解決できると理解できると解するのが相当である。
しかしながら、請求項1、6の記載では、無機充填剤は炭酸カルシウムを少しでも含めばよいが、発明の詳細な説明の上記記載を参照しても、そのようなものについてまで上記課題を解決できるとは理解できない。
そうすると、請求項1、6、及び、これら請求項を直接又は間接的に引用する請求項2~5、7、8に係る発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない。
(2)「ステアリン酸塩」について
上記課題を解決する手段に関して、ステアリン酸塩を含むことについて、発明の詳細な説明の【0029】~【0031】に記載があり、実施例として、ステアリン酸塩を含むものとしては、実施例6、9~12がステアリン酸カルシウムを含むことが示され、各種試験の結果が表2(【0054】)に示されている。
そして、ステアリン酸塩が有する機能として、強度を向上させる機能は、技術常識であると認めるに足る証拠もないところ、発明の詳細な説明の記載からは、ステアリン酸カルシウムは、強度を向上させる機能があると認められるが、その他のステアリン酸塩にも同様の機能があるとは、当業者であっても理解できるとは認められない。
それに対して、請求項1、6には、ステアリン酸塩に関して、「前記ステアリン酸塩の含有割合は、0.003質量%以上0.020質量%以下である」と記載され、ステアリン酸塩として、ステアリン酸カルシウム以外だけのものも含まれるが、発明の詳細な説明の上記記載を参照しても、そのようなものについてまで上記課題を解決できるとは理解できない。
そうすると、請求項1、6、及び、請求項1を引用する請求項2~5に係る発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない。
2 取消理由についての判断
(1)「無機充填剤」について
ア 当審の判断
本件訂正によって、請求項1、6には、「前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であり」との事項が追加された。
そうすると、上記1(1)で説示したように、無機充填剤のほとんどが炭酸カルシウムであり、無機充填剤の含有割合が、50.0質量%超68.0質量%以下であるもの(下線は当審が付与。以下同様。)は、当業者であれば、上記課題を解決できると理解できると認められ、本件訂正により、本件発明1、6は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものとなった。
イ 申立人の主張について
申立人は、意見書(2~4ページ参照。)において、本件明細書等の【0022】には、炭酸カルシウム粒子の最大径は20μm以下が好ましいことが記載されていること等により、炭酸カルシウム粒子の粒径は、成形品の強度等に大きな影響を及ぼし得るものであると認められるところ、本件発明1、6では、無機充填剤や炭酸カルシウム粒子の粒径が特定されていないから、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない旨主張する。
しかしながら、本件明細書等の【0022】には、「炭酸カルシウム粒子の最大粒径を20μm以下とすることで、炭酸カルシウム粒子及びポリプロピレン樹脂の界面の空隙が発生することを抑制できる。その結果、本発明の服飾資材の強度を更に向上できる。」と記載され、炭酸カルシウム粒子の最大粒径を20μm以下とすることが、上記課題を解決するための必須の構成であるとまではいえず、上記1(1)及びアで説示したように、本件発明1、6は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用できない。
(2)「ステアリン酸塩」について
ア 当審の判断
本件訂正によって、請求項1、6には、「前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸カルシウムを含む」との事項が追加された。
そうすると、上記1(2)で説示したように、ステアリン酸カルシウムを含むものは、強度を向上させる機能があり、上記課題を解決できるものであると認められるところ、本件発明1、6は、ステアリン酸カルシウムを含むものであるから、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものである。
イ 申立人の主張について
申立人は、意見書(4~5ページ参照。)において、本件発明1、6は、ステアリン酸塩が0.003質量%以上0.020質量%以下であるもののうち、ステアリン酸カルシウムを極わずか含み、その他のステアリン酸塩を多く含む態様のものも含むから、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない旨主張する。
しかしながら、本件明細書等の表2(【0054】)には、ステアリン酸カルシウムが0.001質量%であるもの(実施例9)についても、強度が極めて良好であることが記載されていること等を勘案すると、上記1(2)及びアで説示したように、本件発明1、6は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用できない。
(3)小括
以上によれば、令和5年8月1日付けで当審が通知した取消理由は解消された。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の内容
申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正前発明1」~「本件訂正前発明8」という。)について、以下の(1)、(2)を主張する。
甲1:特開昭55-131031号公報
甲2:特表2010-500468号公報
甲3:特開2003-147176号公報
甲4:特開2013-216840号公報
甲5:特開2020-104410号公報
(1)特許異議申立理由1(進歩性)
本件訂正前発明1~3、7は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、3で示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前発明4、5は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2~4で示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)特許異議申立理由2(進歩性)
本件訂正前発明6、8は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、3、5で示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6、8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 甲号証の記載事項等
(1)甲1について
ア 記載事項
甲1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は(a)ポリプロピレン系樹脂、(b)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、(c)無機粉状充填剤および/または有機充填剤および(d)有機過酸化物を溶融混合してなるものである。」(2ページ左上欄15~19行)
(イ)「次に、無機粉状充填剤としては炭酸カルシウム,タルク,ケイ酸カルシウム,硫酸カルシウム,亜硫酸カルシウム,炭酸マグネシウム,クレー,水酸化アルミニウム,水酸化カルシウム,ガラス粉,アスベスト,珪石粉などがある。」(2ページ右上欄18行~左下欄2行)
(ウ)「本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は流動性と成形性にすぐれているため、薄肉成形品や大型成型品の成形に適している。また、得られる成形品にはフローマーク,ウエルドマークが少なく、ヒケやソリも少なく外観が良好である。しかも、機械的強度が高く、熱安定性にもすぐれている。さらに表面性や相溶性が改善されることも特色の1つとして挙げられる。したがつて、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は工業材料、とりわけ電気部品、自動車部品、日用品などの射出成形品の製造に特に適している。」(3ページ右上欄5~15行)
(エ)「実施例1
ポリプロピレン(プロピレン-エチレンブロツクコポリマー,エチレン含量4.7重量%,MI:5g/10分,密度:0.90g/cm3)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸含量5.0重量%)、炭酸カルシウム(平均粒径約2μの重質炭酸カルシウム)、有機過酸化物(1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)の各所定量および滑剤(ステアリン酸モノグリセライド)0.2重量部を混合したものをインターミックスにて200℃で4分間混練後、ペレツト化した。
このペレツトを用いて射出成形により試験片を作成し、その物性を測定した。一方、射出成形機にてアルキメデス型スパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度215℃、射出圧力800Kg/cm2、金型温度50℃にて成形してスパイラルフロー長さを測定し、成形性を評価した。併せて熱安定性、表面硬度、塗装性の評価を行なつた。」(3ページ右上欄17行~左下欄15行)
(オ)「実施例2
ポリプロピレンと炭酸カルシウムの配合割合を変えたこと以外は実施例1と同様にして得た結果を表-2のNo.1~5に示した。」(4ページ右下欄1~4行)
(カ)表-2
[図:0001409115000001.jpg]
(キ)「実施例4
ポリプロピレン(ホモポリマー,MI:13g/10分、密度:0.91g/cm3)、炭酸カルシウム(325メツシユ通過)、木粉(100メツシユ通過、ツガ木粉)、有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド)の各所定量および滑剤(ステアリン酸カルシウム)0.5重量部を用い、190℃で溶融混練したこと以外は実施例1と同様にして行なつた。結果を表-4のNo.1~5に示した。」(4ページ右下欄19行~5ページ左上欄7行)
イ 甲1発明1
甲1の記載(特に、上記(ア)、(イ)、(エ)~(カ))を総合すると、甲1には、実施例2のNo.4として、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、炭酸カルシウム、有機過酸化物及び滑剤を含み、
炭酸カルシウムは、無機粉状充填剤であり、かつ、平均粒径約2μの重質炭酸カルシウムであり、
滑剤は、ステアリン酸モノグリセライドであり、
ポリプロピレン37.5重量部、変性ポリプロピレン2.5重量部、炭酸カルシウム60重量部、有機過酸化物0.01重量部、滑剤0.2重量部を溶融混合してなる、ポリプロピレン系樹脂組成物。」
3 特許異議申立理由についての判断
(1)特許異議申立理由1(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、後者の「ポリプロピレン」は、前者の「ポリプロピレン樹脂」に相当し、以下同様に、「含む」ことは「含有」することに、「平均粒径約2μの重質炭酸カルシウム」は「炭酸カルシウム粒子」に、それぞれ相当する。
後者の「炭酸カルシウム」は、無機粉状充填剤であるから、後者の「無機充填剤」に相当し、後者の「滑剤」は、ステアリン酸モノグリセライドであるから、前者の「ステアリン酸塩」に相当する。
後者の「炭酸カルシウムは、無機粉状充填剤であり、かつ、平均粒径約2μの重質炭酸カルシウムであ」ることは、無機粉状充填剤が平均粒径約2μの重質炭酸カルシウムであるから、前者の「前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含」むこと及び「前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上であ」ることに相当する。
後者の「炭酸カルシウム60重量部」は、無機充填剤が約60質量%であるから、前者の「前記無機充填剤の含有割合は、50.0質量%超68.0質量%以下であ」ることに相当する。
後者の「ポリプロピレン系樹脂組成物」は、前者の「ポリプロピレン樹脂、無機充填剤及びステアリン酸塩を含有」する「服飾資材」と、「樹脂材料」という点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ポリプロピレン樹脂、無機充填剤及びステアリン酸塩を含有し、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記無機充填剤の含有割合は、50.0質量%超68.0質量%以下であり、
前記無機充填剤における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は90質量%以上である、樹脂材料。」
<相違点1>
ステアリン酸塩について、本件発明1では、その含有割合は、「0.003質量%以上0.020質量%以下」であり、「ステアリン酸カルシウムを含む」のに対し、甲1発明1では、その含有割合は、「0.2重量部」であり、「ステアリン酸モノグリセライド」である点。
<相違点2>
樹脂材料について、本件発明1では、「服飾資材」であるのに対し、甲1発明1では、「ポリプロピレン系樹脂組成物」である点。
(イ)相違点についての判断
まず、相違点1について検討する。
甲1には、実施例4として、滑剤をステアリン酸カルシウムとし、その含有割合を0.5重量部(約0.5質量%)とすることは記載されている(上記2(1)ア(キ)参照。)が、その含有割合を0.003質量%以上0.020質量%以下とすることは記載も示唆もない。
そして、甲2~5においても、相違点1に係る本件発明1の構成について、記載も示唆も見いだせないから、甲1発明1において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(22ページ参照。)において、甲2には、ポリオレフィン組成物における滑剤として、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ(【0171】)、その含有割合がポリオレフィン組成物の重量に対し約0.01%から約0.4%であること(【0177】)や、0.001から0.5wt%であること(【0209】の119.)が記載されているから、甲1発明において、ステアリン酸塩の含有量を、0.003質量%以上0.020質量%以下とすることは、設計的事項である旨主張する。
しかしながら、甲2(特に、【0171】~【0176】)において、ステアリン酸カルシウムは、好ましい滑剤として例示された数多くのものの1つに過ぎない。また、甲2において、滑剤の含有割合は、滑剤の材料をステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩に特定したものではなく、その範囲について、実施例等による裏付けもなく、その範囲がどうして好ましいのかについて機序等も示されていない。
そして、甲1発明1と甲2に記載されたものは、ポリプロピレン系樹脂組成物という点では共通するが、課題や機能等に共通性は見いだせないことも勘案すると、甲1、2に接した当業者であっても、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用することはできない。
(エ)小括
以上によれば、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものあるとはいえない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を追加するものであるから、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものあるとはいえない。
ウ 小括
以上によれば、特許異議申立理由1は成り立たない。
(2)特許異議申立理由2(進歩性)について
甲1には、甲1発明1を製造する方法(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
本件発明6と甲1発明2とを対比すると、少なくとも、相違点1と同様の相違点があると認められる。
そうすると、上記(1)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、本件発明6も、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものあるとはいえない。
したがって、特許異議申立理由2も成り立たない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項7、8は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てにおける請求項7、8に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700420