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特許異議申立

2022-700428

燃料電池

審判番号
2022-700428
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-547333
登録番号
6968083
請求日
2022年05月16日
審決日
2023年02月03日
公報発行日
2023年03月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】シーリーズ インテレクチュアル プロパティ カンパニー リミティド
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】鶴田 準一
  • 【権利者代理人】南山 知広
  • 【権利者代理人】渡辺 陽一
  • 【権利者代理人】中村 和広
  • 【異議申立人】小川 鐵夫
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 佐藤 陽一
  • 審判官 宮部 裕一
分類
P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6968083号発明「燃料電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6968083号の請求項1~16に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6968083号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、2017年(平成29年) 3月 8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年 3月 9日、英国)を国際出願日とする出願であって、令和 3年10月28日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月17日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和 4年 5月16日差出の特許異議申立書により、その請求項1~16(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人 小川 鐵夫(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年 7月29日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年10月21日に特許権者から意見書が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~16に係る発明(以下、それぞれの請求項に係る発明を「本件発明1」~「本件発明16」といい、まとめて「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書等」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~16に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 金属基材と、 前記金属基材に隣接する電解質層と、 少なくとも1つのガスケットとを含む、 金属で支持された固体酸化物型燃料電池であって、 前記ガスケットを通して、流体が、前記金属で支持された固体酸化物型燃料電池に及び/又は前記燃料電池から供給され、 前記電解質層は、前記金属基材の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し、 前記電解質層の少なくとも一部は、前記基材と前記ガスケットとの間に配置されている、燃料電池。 【請求項2】 前記電解質層は、前記ガスケットに近接した領域中の前記基材上に配置されている、請求項1に記載の燃料電池。 【請求項3】 前記電解質層の少なくとも一部は、前記ガスケットから2mm以下の領域中の前記金属基材上に配置されている、請求項2に記載の燃料電池。 【請求項4】 前記電解質層の少なくとも一部は、前記ガスケットから1mm以下の領域中の前記金属基材上に配置されている、請求項3に記載の燃料電池。 【請求項5】 前記電解質層は、前記金属基材の空気側を被覆しており、前記固体酸化物型燃料電池のガスケットと活性領域との間の領域を覆っている、請求項2に記載の燃料電池。 【請求項6】 前記電解質層が前記固体酸化物型燃料電池の前記活性領域と前記金属基材との間に位置するように、前記電解質層は前記固体酸化物型燃料電池の前記金属基材の表面全体上に位置する、請求項5に記載の燃料電池。 【請求項7】 前記電解質層が、前記固体酸化物型燃料電池の前記活性領域のカソードとアノードとの間の電解質層を形成するのに使用されるものと同じ電解質層である、請求項5又は6に記載の燃料電池。 【請求項8】 前記電解質層が、第一の電解質層と第二の電解質層とを含み、前記第一の電解質層は、前記固体酸化物型燃料電池の前記活性領域と前記金属基材との間に位置するように、前記固体酸化物型燃料電池の前記金属基材の表面全体上に位置する電解質層を含み;前記第二の電解質層は、前記固体酸化物型燃料電池の前記活性領域の前記カソードと前記アノードとの間の電解質層を形成するのに使用されるものと同じ電解質層を含み;そして、前記第二の電解質層は、前記カソードと前記アノードとの間から伸びて前記第一の電解質層を覆う、請求項7に記載の燃料電池。 【請求項9】 前記電解質層が、2μm超の厚さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の燃料電池。 【請求項10】 前記電解質層が、5μm超の厚さを有する、請求項9に記載の燃料電池。 【請求項11】 前記電解質層が酸化セリウムガドリニウムを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の燃料電池。 【請求項12】 前記酸化セリウムガドリニウムがコバルトをさらに含む、請求項11に記載の燃料電池。 【請求項13】 前記ガスケットが、第I族元素、第VII族元素、ケイ素、硫黄、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも一つの元素を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の燃料電池。 【請求項14】 請求項1~13のいずれか一項に記載の燃料電池を2つ以上含む、燃料スタック。 【請求項15】 請求項1~13のいずれか一項に記載の燃料電池の製造方法であって、 i)前記金属基材を提供する工程と、 ii)前記基材に前記電解質層を含む保護性の非多孔質被膜を適用する工程と、 iii)前記基材に隣接した前記燃料電池にガスケットを適用する工程とを含み、 前記保護性の非多孔質層は、ガスケットに近接した領域の少なくとも一部に適用される、方法。 【請求項16】 工程ii)における被膜は、前記固体酸化物型燃料電池のカソード層とアノード層との間に主要な電解質層を形成するのと同じ被膜として適用される、請求項15に記載の方法。」 第3 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、いずれも本件特許に係る優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである、次の甲第1号証~甲第10号証を提出し、以下の申立理由1~5により、本件特許の請求項1~16に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 甲第1号証:特表2014-504778号公報 甲第2号証:特開2011-222161公報 甲第3号証:特開2006-222006号公報 甲第4号証:国際公開第2015/136295号 甲第5号証:特表2010-526402号公報 甲第6号証:特表2010-519716号公報 甲第7号証:社団法人日本化学会、「化学便覧応用編」、改訂3版、丸善株式会社、昭和55年3月15日、p.1563 甲第8号証:江口浩一監修、「固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発と展望」、普及版第1刷、株式会社シーエムシー出版、2010年11月25日、p.215~221 甲第9号証:社団法人日本セラミックス協会編、「環境調和型新材料シリーズ 燃料電池材料」、初版1刷、日刊工業新聞社、2007年1月31日、p.220~226 甲第10号証:特開2011-1231号公報 (1)申立理由1(新規性、進歩性) 本件発明1~7、11、13~16は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。また、本件発明1~7、9~11、13~16は、甲第1号証に記載された発明、あるいは、甲第1号証に記載された発明と甲第3号証又は甲第4号証に記載された事項とに基いて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1~7、9~11、13~16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(新規性、進歩性) 本件発明1~7、11、13~16は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。また、本件発明1~7、9~11、13~16は、甲第2号証に記載された発明、あるいは、甲第2号証に記載された発明と甲第3号証又は甲第4号証に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1~7、9~11、13~16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(進歩性) 本件発明1~7、9~11、13~16は、甲第3号証に記載された発明と周知技術、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項と周知技術、あるいは、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証、甲第2号証又は甲第4号証に記載された事項と周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1~7、9~11、13~16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(進歩性) 本件発明1~7、9~11、13~16は、甲第4号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明と甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項、あるいは、甲第4号証に記載された発明と甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1~7、9~11、13~16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (5)申立理由5(サポート要件) 本件発明1~16について、以下、ア及びイの点で、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、請求項1~16に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 ア 本件発明1~12、14~16は、腐食促進剤を含まないガスケットが使用され、金属基材の腐食を改善する本件発明の課題が存在しない場合を含み、また、本件発明13は、本願明細書等【0039】に腐食促進剤として記載の元素を含むガスケットを使用するものではあるが、金属基材を腐食する元素として本件明細書等【0076】で確認されたFやSiを含むものに限られないから、本件発明1~16は発明の詳細な説明に記載したものではない。 イ 本件発明1~8、13~16は、電解質層の材料及び厚さが規定されておらず、電解質の厚さが「2μm超」と特定される本件発明9も、本願明細書等【0017】に、電解質の厚さを「2μm超」とすることで課題が解決できることが記載された、アノードとカソードとの間の電解質(又は電解質の一部)を形成するのに使用されるものと同じ電解質ではない場合に限られるものではなく、また、電解質の厚さが「5μm超」と特定される本件発明10も、電解質層の材料及び厚さが、本願明細書等に課題を解決できることが具体例(【0071】~【0076】)として示される、電解質がCo-CGOで、その厚さが12.5μmの場合に限られるものではなく、いずれも金属基材の腐食を改善する本件発明の課題が解決できると認識することはできないから、本件発明1~10、13~16は発明の詳細な説明に記載したものではない。 2 令和 4年 7月29日付けで通知した取消理由の概要 (1)取消理由(サポート要件) 本件発明1~16の「金属基材」は、「ステンレス鋼」に限られないものとなっているから、発明の詳細な説明に記載されたガスケット誘導腐食のメカニズムに照らし、本件発明の課題が生じると認識し得る材料範囲を超えた「金属基材」といえる。 よって、本件発明1~16は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許の請求項1~16に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 第4 本件明細書等の記載事項 1 本件明細書等には、以下の事項が記載されている(なお、「・・・」は記載の省略を表す。)。 (1)「【0004】 SOFCは、酸素及び他の反応性流体の存在下で長期間にわたり高温(典型的には450℃超)で作動する。SOFCは、典型的にはSOFCの片側の酸化環境(従来は燃料電池のカソード側と呼ばれている)と、SOFCの他方の側の還元環境(従来は燃料電池のアノード側と呼ばれている)とを、有する電気化学デバイスとして作動する。従って、典型的なSOFC製品の寿命(これは、出力のオン/オフと上下のサイクリングを含む何千時間もの作動となり得る)の間、SOFCがこのような条件に耐えるためには、SOFCは堅牢な構造でなければならない。これには、SOFCの電気化学層が、良好な熱的、機械的、及び安定した化学的性質を備えた支持基材を有して、SOFCが劣化に抵抗し、製品の寿命の間その性能を維持することが必要となる。したがって、英国特許第2368450A号に記載されているような450℃~650℃の作動温度を有するSOFC技術では、支持基材として金属を使用することができ、しばしばステンレス鋼が材料の望ましい選択肢である。700℃を超える作動温度を有するSOFC技術では、その性能及び金属表面の酸化に起因する劣化のために、SOFC及びSOFCスタックのための金属の使用は制限される。 【0005】 残念なことに、耐食性材料(ステンレス鋼など)であっても、これらの激しい作動条件下では劣化し易い。特に表面酸化が起きることがあり、金属酸化物の蓄積が、支持金属基材の弱化及び潜在的な破損を招く可能性がある。これらの酸化物層は、金属基材を被膜するSOFC電気化学層の下にも形成され、電気抵抗の上昇をもたらす。酸化が継続すると、酸化物層が厚く成長して、これが電気化学層を金属層から分離し、及び/又は酸化物層の一部が金属表面からはがれる可能性がある。これらの作用は、SOFCを損傷し、性能を低下させ、SOFCの破損を引き起こし得る。 【0006】 さらに、複数のSOFCを一緒に接続してSOFCスタックにするために、しばしば固定具又はガスケットがSOFC(これは、隣接するSOFC層上の固定具又はガスケットの対応する部分と協働する)に適用されて、一連の密閉チャンバーが形成され、ここに、適切な酸化及び還元流体を、スタック内のSOFC層に及びSOFC層から供給することができる。金属で支持されたSOFCの場合、これらの固定具又はガスケットが作られる材料は、金属基材の腐食に大きな影響を及ぼすことが分かっている。SOFCのこれらの固定具又はガスケット部分は、SOFCの作動下で劣化する可能性があり、これらは、燃料電池金属基材の腐食を発生させ及び/又は腐食を促進する物質を放出する可能性がある。この金属腐食は、金属基材からの材料の損失をもたらし、これが次に、金属基材の厚さの損失、機械的弱化、及び潜在的に金属基材の一方の側から他方の側へのガス漏れ経路の形成をもたらす可能性がある。 【0007】 したがって、SOFCが作動する作動雰囲気と、SOFC固定具又はガスケットから放出される特定の材料との反応の結果として、望ましくない金属基材腐食を生じる可能性がある。 【0008】 先の刊行物(D. Szymczewskaa, S. Molinb, M. Chenb,P. V. Hendriksenb, P. Jasinskia, “Ceria based protective coatings for steel interconnects prepared by spray pyrolysis”, 11th International Symposium on Systems with Fast Ionic Transport, ISSFIT 11, Procedia Engineering 98 ( 2014 ) 93 - 100, 本明細書において「Ref [1]」と呼ぶ)において、薄いセリア被膜(最大400nmの厚さを有する)が、二重の大気中で働くCrofer 22APU相互接続の燃料側の保護被膜としての適用の可能性を有することが示されている。 【0009】 相互接続としてSOFCに使用される金属板で観察される腐食に関する他の出版物、例えば、“The effect of duel atmosphere conditions on the corrosion of Sandvik Sanergy HT”, A. Werner, B. Skilbred, R. Haugsrud; International Journal of Hydrogen Energy 37 (2012) 809 5-8101、“Effects of water vapour on oxidation behaviour of ferritic stainless steels under solid oxide fuel cell interconnect exposure conditions”, Z. Yang, G. Xia, P. Singh, J. Stevenson, Solid State Ionics 176 (2005) 1495-1503、“Oxidation behaviour of Fe-16Cr alloy interconnect for SOFC under hydrogen potential gradient”, H. Kurokawa, K. Kawamura, T. Maruy、及び “Severe dual atmosphere effect at 600 C for stainless steel 441”, P. Alnegren, M. Sattari, J. Svensson, Journal of Power Sources 301 (2016) 170-178 があるが、SOFC金属基材の空気側で、腐食がどのように起きるかについてはほとんど議論されておらず、まして腐食を緩和するために使用できる技術も議論されていない。金属指示SOFCの使用がごく少数の企業に限られており、習得することも簡単ではない技術であるため、この研究の欠如はおそらく驚くべきことではない。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 すなわち、SOFC作動条件下で、上述した両方の形態の腐食に対して改善された耐性を有するSOFC構造を提供することが望ましい。 本発明は、この問題の一部を克服するか又は少なくとも改善することを意図している。」 (2)「【0013】 理論に拘束されないが、SOFCが特にスタックの中で使用されているとき、SOFCに取り付けられたガスケット及び他のそのような固定具からの材料は上記固定具から浸出し、上記固定具とSOFCの活性領域間の基材の領域上に堆積される。典型的にはSOFCの「活性領域」は、電気化学的に活性な材料(電解質、アノード、及びカソードを含む)で被覆されたSOFCの部分である。驚くべきことに、基材の空気側の露出した基材の表面(すなわち、電池の活性領域とガスケットとの間の金属基材の表面領域)に堆積した材料は、SOFCの作動中にしばしば酸化し、その後形成された酸化物が基材材料と反応することが分かった。典型的には、基材からの金属(例えば鉄)は基材から引き出され、表面に堆積した酸化物と反応して酸化物を形成する。 ・・・ 【0016】 本発明の発明者は、電解質層がSOFC上の固定具(例えばガスケット)とSOFCの活性領域との間の領域の少なくとも一部を電解質で覆うように、電解質層を延ばすことによって、基材の腐食を大幅に軽減することができることを認識した。電解質層の目的が耐腐食性材料として作用するものではなく、さらに電解質層は典型的には電解質層全体にイオン性酸素を輸送することができ、従って基材の腐食を防止するのではなくむしろ促進することが予想されるため、これは驚くべきことである。金属基材に対するこの変更は、SOFCの耐食性を大幅に向上させるため、SOFCをより長時間稼動させることを可能にする。」 (3)「【0065】 ガスケット誘導腐食のメカニズム ガスケットに誘導される基材腐食について、いくつかのメカニズムが考えられた。理論に拘束されるつもりはないが、最も可能性の高いメカニズムは、以下の2つの説によって説明することができる。 【0066】 (i)蒸気支援によるクロム(Cr)枯渇が腐食を活性化する: 残留燃料漏れによりガスケットから放出される蒸気は、基材表面上の局所的Cr揮発を引き起こし、Cr枯渇による保護Cr2O3表面スケールの劣化をもたらす。ある領域で、Crの枯渇が表面上のFe2O3結節の核形成を可能にするのに充分なほど大きくなると、腐食が開始される。次に、そのような結節の成長及び合体によって、時間とともに腐食が進行し得る。図8に示される電池の写真は、630℃で1,000時間の腐食試験中に発生した入口ガスケット周辺の蒸気効果を示す。 【0067】 (ii)揮発したガスケット不純物が腐食を活性化する: K、F、Si、硫黄(S)などの特定の不純物がガスケットから揮発し、Cr2O3スケールと反応して、欠陥部位の発生をもたらし、そこでFe2O3スケールが成長し得る。 【0068】 両方のメカニズムは一緒に作用して、観察された腐食作用を生じると考えられる。ガスケット内の燃料と揮発性種との間の相互作用の性質は、未だ不明のままである。それにもかかわらず、揮発性化学種が水素又は生成した水蒸気と反応し、ここで酸素と水素がガスケット内部で会合し、スタック内で加熱中に腐食を引き起こす種の放出を活性化すると仮定することは合理的であると思われる。いくつかの試験された電池で実施された元素分析は、微量のK、F、及びSiが、ガスケット接触領域の周りに化合物を形成していたことを示し、これは、これらの元素が揮発によってガスケットから供給され、基材表面と相互作用して、腐食を促進したことを示している。試験後の分析はまた、図9aに提示されたSEM-EDXデータから明らかなように、Kが表面スケールのCrと反応して、鋼表面上にK2CrO4相の結節を形成することを明らかにした。Kが表面スケールのCrと反応すると、鋼表面上のFe2O3核生成のための重要な部位が形成されるように思われる。次にFe2O3スケールが表面で横方向に合体及び成長し、鋼の厚さ方向にFe-Cr系酸化物が内向き成長することにより、腐食が伝播する可能性がある。これらの工程は、微細構造観察に基づいて図10に示されている。 【0069】 同様に、ガスケットを通って拡散した水素と反応するFは、蒸気及び合金に対して非常に腐食性の高いHFの蒸気を形成し得る。試験した基材及び電池上では、フッ素に誘発された基材腐食を検証する直接的な証拠は見出されなかった。しかし、1,000時間試験したCGO被覆基材についての最近のWDS分析は、ガスケット端部の周りのCGO被膜表面に堆積したF富化SiO2相を証明しており、腐食に対するF効果が実際のものであることを示唆している。」 (4)「【0070】 基材上のCGO被膜の製造 多くのレーザー穿孔された金属基材を標準クリーニング及びTGO熱処理プロセスに供した。次にこれらの基材を、電池上に電解質層を製造するために適用したように、3層スクリーン印刷によってCo-CGO電解質インクで被覆した。各印刷物を200℃で乾燥させた後、次の印刷層を加えた。次に加圧した後、結合剤燃焼工程を含む1020℃の標準空気電解質焼成を行った。 【0071】 焼結された電解質層は、厚さ12.5μmで完全に緻密であり、層間剥離、亀裂、又はチッピング損傷の徴候はなかった。CGOスクリーン印刷は、図12の図面に示されるように、CGO被膜が基材端部に非常に接近することを可能にした。基材端部とCGO被膜端部との間に1mmの隙間が残って、取り扱いが容易になり、製造中の被膜の突発的損傷を避けることができた。 【0072】 Co-CGO被覆基材の加速腐食試験(ACT) Co-CGO被覆基材を、Ceres Power Limitedで開発された標準加速SOFC腐食試験に供した。加速腐食試験は、SOFCスタック作動を模倣しており。すなわちすべてのSOFC層は、SOFC内のそれぞれのチャネル内の湿った空気/湿ったH2の連続的流れによって提供される二重雰囲気に曝される、相互接続及び未穿孔基材とを有するダミー層として作成される。腐食加速は、630℃で加速腐食試験と、湿った空気(水バブラーを通って吸引される大気)へのスタックの空気側の暴露を実施することにより引き起こされる。被覆されていない基材に加速腐食試験を用いて腐食評価を行い、その結果を実際のSOFCスタック試験に供されたSOFCと比較すると、これらの試験で適用された加速腐食条件は、570~610℃の範囲の温度で実際のSOFCスタック試験を行った後に通常見いだされるガスケット誘導腐食プロセスのほぼ12倍の加速を与えることを明らかにした。すなわち1,000時間の加速腐食試験は、通常の12,000時間のSOFC作動と同等である。 【0073】 この研究では、(i)被覆されていない基材と、(ii)Co-CGOを被覆した基材と、(iii)アルミニウム箔と結合したCo-CGO被覆基材とを含む、9層の腐食スタックを、Flexitallic T866ガスケットを用いて組み立てた。SOFCスタックの加速腐食試験は、630℃で1,000時間行った。加速腐食試験が完了した後、SEM特性評価及びEDX元素分析により、選択された電池層について試験後の特性評価を行った。 【0074】 Co-CGO被膜は基材を腐食から保護する 被覆されていない基材は、図13(a)のSOFC画像に例示されているように、630℃で1,000時間の加速腐食試験中に、ガスケット端部周辺で重度の腐食を受けた。基材の腐食はガスケット端部で開始し、横方向に約4mmまで伝搬し、深さ約120μmまで浸透した。この腐食段階は、実際のSOFCスタック作動の約12,000時間に相当する。一方、同じSOFCスタックで試験したCo-CGO電解質被覆基材には腐食は生じなかった(図13(b)及び(c)の写真及び図14,15、及び16のSEM断面図を参照)。 【0075】 Flexitallic T866ガスケットとCo-CGO被膜との間にアルミニウム箔を配置することは、ガスケットと基材との間にバリアを提供して、通常ガスケットが裸の基材表面と接触するであろう領域(図12に示すガスケットの下の領域)中の界面腐食反応を防止することを目的とした。箔はこの目的を十分に果たした。これは、基材鋼とガスケットの両方の不活性界面を形成し、箔で保護された領域には試験後に腐食の兆候は見られなかった(図16)。使用されたアルミニウム箔は、スタックアセンブリにおいてわずか25μmの厚さであり、これが、ガスケット圧縮下での塑性変形/クリープによるスタック試験中に約10μmに低減させたことに留意されたい。この構成は、630℃で1,000時間の加速腐食試験に曝されている間の基材の腐食に対して、非常に有効なバリアとなった。 【0076】 揮発した不純物とCo-CGO被膜との相互作用 T866ガスケットから揮発すると考えられる主な不純物の中で、基材表面上のガスケットの近傍のCo-CGO被膜上で、FとSiのみが検出された。表面上に成長した不純物相は、多量のFを含有する結晶質SiO2であった。図17に示すSEM画像は、Co-CGO表面上に成長したF含有SiO2結晶の例を提供する。研磨された断面を見ると、シリカ相は、高分解能SEM検査条件下で、Co-CGO被膜への分解可能な浸透がない。元素線の走査もまた、被膜へのシリカの多量の浸透がないことを示した。Co-CGO被膜は、特にガスケットから揮発したF含有及びSi含有蒸気の腐食攻撃に対する信頼できるバリアとなるようである。」 第5 甲第1号証~甲第10号証の記載事項 1 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「金属支持体型固体酸化物燃料電池の単位電池及びその製造方法とこれを用いた固体酸化物燃料電池スタック」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 金属支持体と、 前記金属支持体の一面に形成された第1の電極と、 前記第1の電極の一面に形成される電解質と、 前記電解質の一面に形成され、前記第1の電極と異なる極性を有する第2の電極と、 を含んでなり、 前記金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極に流体通路であるマニホールドが形成される、金属支持体型固体酸化物燃料電池の単位電池。 ・・・ 【請求項9】 金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極を製造する段階と、 前記金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極を積層して積層体を形成する段階と、 前記積層体を焼結する段階と、 前記焼結された積層体にマニホールドを形成する段階と、 を含む、金属支持体型固体酸化物燃料電池の単位電池の製造方法。 ・・・ 【請求項14】 請求項1から8のいずれか一項に記載の複数の単位電池と、 二つ以上の単位電池の間に配置されて直列連結する分離板と、 前記単位電池と分離板の間に形成される密封材と、 を含む、金属支持体型固体酸化物燃料電池スタック。 【請求項15】 前記密封材は、ガスケット型密封材である、請求項14に記載の金属支持体型固体酸化物燃料電池スタック。 ・・・」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)に関し、より詳細には、マニホールドと電池の一体化された金属支持体型固体酸化物燃料電池の単位電池及びその製造方法とこれを用いた固体酸化物燃料電池スタックに関する。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明の目的は、セルフレームを形成しないため、工程が簡単であり経済性に優れた金属支持体型固体酸化物燃料電池及びこれを製造する方法と上記固体酸化物燃料電池スタックを提供することである。」 (4)「【0020】 電解質107は、第1の電極と第2の電極の間に形成される。電解質107はZrを主成分とする酸素イオン伝導体を含むことが好ましい。具体的な例としては、ZrO2系(CaO、MgO、Sc2O3、Y2O3 doped ZrO2)、CeO2系(Sm2O3、Gd2O3、Y2O3 doped CeO2)、Bi2O3系(CaO、SrO、BaO、Gd2O3、Y2O3 doped Bi2O3)、ペロブスカイト(Perovskite)酸化物((La、Sr)(Ga、Mg)O3-δ、Ba(Ce、Gd)O3-δ)等の物質がある。 【0021】 第2の電極は、電解質に接して形成される。上記図1では第1の電極が空気極103であるため、第2の電極は燃料極109である。即ち、第1の電極と第2の電極は互いに異なる電極である。 【0022】 本発明の燃料電池の単位電池は金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極で積層された積層体を貫通して形成されたマニホールドを一つ以上含むことが好ましい。上記マニホールドは、空気や燃料の供給及び排出がなされる流体通路である。従来の燃料電池では、マニホールドと単位電池が別に形成されるため、マニホールドと単位電池をガラス密封材等を用いて接合させる工程を必要とし、接合部位を介して燃料又は空気の漏れがないように密封させなければならない。しかしながら、本発明では、マニホールドと単位電池を一体型にするため、マニホールドとセルを接合する必要がなく、積層体(スタック)の製造が簡単であり、積層体の信頼性が向上する。 【0023】 上記マニホールドには空気又は燃料遮断部が形成されていることが好ましい。図3を参照して上記遮断膜の用途を説明すると、下記の通りである。図4に示されているように、空気を通過させるマニホールド110’には第2の電極である燃料極109に空気が流入することを防止する第2の遮断部111が形成され、燃料を通過させるマニホールド110には第1の電極である空気極103に燃料が流入することを遮断する第1の遮断部112が形成されることが好ましい。 【0024】 上記のように、本発明の燃料電池の単位電池は、電池をなす積層体を貫通するマニホールドが形成されることにより、別途のセルフレームを必要としないという長所がある。 【0025】 以下、本発明の製造方法について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、本発明の製造方法の工程を示した工程図である。 【0026】 まず、金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極を製造する(S200)。テープキャスティング法又は押出法で金属支持体を製造し、テープキャスティング法、スクリーン印刷法及び湿式スプレー法のうちいずれか一つの方法で第1の電極、電解質及び第2の電極をそれぞれ製造する。 【0027】 その後、積層体を形成する(S210)。積層体は、金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極を順次積層(stacking)して形成される。 【0028】 次いで、上記形成された積層体を焼結する(S220)。上記焼結は窒素又は還元雰囲気で行われることが好ましい。上記焼結温度は1300~1400℃であることが好ましく、ガス雰囲気は窒素、アルゴン、水素又は各ガスの比率を調節して決定する。 【0029】 一方、クロムを含んでいない固体酸化物を用いる場合は、空気雰囲気で焼結した後に800~1000℃で還元して電池を製作することもできる。このような固体酸化物を原料として用いる場合、空気中で焼結して還元すると、燃料極機能層のNi粒子の粗大化を抑制することができるため、電池の性能を向上させることができる。 【0030】 次いで、上記焼結された積層体に対してマニホールドを形成する(S230)。上記マニホールドはパンチング、レーザー、ウォータージェットを用いて形成することが好ましい。従来のセラミック支持体型電池の場合、焼結後のセラミックの脆性のため、パンチングではマニホールドを形成することができず、レーザー、ウォータージェットを用いても不良率が高い。しかしながら、金属支持体型電池の場合、パンチング、レーザー、ウォータージェット等の多様な方法でマニホールドを形成することができる。 【0031】 以下、本発明の金属支持体型固体酸化物燃料電池スタックについて、図4を参照して詳細に説明する。本発明の固体酸化物燃料電池スタックは、金属支持体434と上記金属支持体上に形成された燃料極435、電解質436及び空気極437とを含む上記固体酸化物燃料電池の単位電池430と、上記固体酸化物燃料電池の単位電池430の空気極437と燃料極435を電気的に連結する少なくとも一つの分離板400と、を含む。 【0032】 但し、図4には金属支持体上に燃料極/電解質/空気極が順次積層されたことが示されているが、これに限定されず、空気極/電解質/燃料極の順で積層されても良い。 【0033】 本発明の固体酸化物燃料電池スタックは、空気極437と燃料極435に燃料又は空気の供給及び排出のためのマニホールド402、432を含み、上記マニホールド402、432は上記固体酸化物燃料電池に一体に形成されることが好ましい。 【0034】 本発明の固体酸化物燃料電池スタックは上記固体酸化物燃料電池430と分離板400の間に形成される密封材410、450を含むことが好ましい。 【0035】 一方、図示されてはいないが、上記単位電池の電解質と空気極の間には、必要に応じて、バッファ層がさらに含まれることができる。燃料極に含まれたYSZと空気極の(La、Sr)(Co、Fe)O3等が反応すると、La2ZrO7のような抵抗の大きい物質を生成して燃料電池の効率を減少させることができる。したがって、このような反応を抑制するために上記電解質膜と空気極の間にバッファ層を形成することが好ましい。 【0036】 上記密封材410、450としては、ガラス密封材を用いることができ、好ましくは、図4に示されているようにガスケット型密封材410、450を用いることができる。上記ガスケット型密封材は、密封のための高温の熱処理を必要とせず、常温で加圧により変形されて密封を行う密封材であり、例えば、マイカ系列の密封材等がある。 【0037】 上記のように、金属支持体上に燃料極、電解質、空気極を形成する金属支持体型燃料電池の場合、燃料極支持体型や電解質支持体型固体酸化物燃料電池に比べて格段に高い圧力に耐えられるという特徴がある。一般に、ガラス密封材の場合、密封形成のため約1kg/cm2の圧力を必要とするのに対し、ガスケット密封材の場合、密封形成のため10kg/cm2以上の高い圧力を必要とし、単位電池の面積が増加するほど、必要とされる圧力はより高くなる。電解質支持体型や燃料極支持体型燃料電池の場合、機械的強度が弱いことから、上記のような高い面圧を加えると、電池の構造を損傷及び変形させる可能性があるため、ガスケット密封材を用いることができなかった。しかしながら、本発明の場合、機械的強度の高い金属支持体を用いることから、10kg/cm2以上の高い圧縮応力に耐えられるため、ガスケット密封材を用いても単位電池を変形及び損傷させない。 【0038】 一方、本発明の上記固体酸化物燃料電池の単位電池では、図4に示されているように、燃料及び空気を供給及び排出できるマニホールド402、432が一体に形成される。このように、マニホールド402、432が一体に形成される場合、従来の単位電池をスタックに適用するときに用いられていたセルフレームがなくても燃料電池スタックを構成することができるという長所がある。即ち、従来では、単位電池をマニホールドを有するセルフレームに接合させた単位電池‐セルフレーム接合体を形成した後にこの単位電池‐セルフレーム接合体と分離板を交互に積層する方法で燃料電池スタックを構成し、このようにセルフレームを用いる場合は、単位電池とセルフレームの間から気体が抜け出ることを防止するために単位電池とセルフレームとをガラス密封材で密封する必要があった。しかしながら、上記のように単位電池の金属支持体自体にマニホールドを形成する場合は、セルフレームを用いる必要がないため、単位電池とセルフレームとを密封する必要がない。したがって、二重密封(セルフレーム‐単位電池密封、分離板マニホールド密封)が必要とされていた従来の構造に比べて非常に単純な密封構造を有する燃料電池スタックを製造することができる。 【0039】 上記マニホールドには空気又は燃料遮断部が形成されていることが好ましい。 【0040】 また、本発明の固体酸化物燃料電池と分離板の間には、集電性能向上のために燃料極集電体440及び空気極集電体420がさらに含まれることができる。上記燃料極集電体440は、燃料極側の集電を向上させて燃料ガスの移動を容易にするためのものであり、発泡金属からなることが好ましい。より具体的には、本発明の上記燃料極集電体は、特に限定されず、Ni及び/又はNi合金材質の発泡金属からなることが特に好ましい。 【0041】 一方、上記空気極集電体420は、空気極側の集電を向上させて空気の移動を円滑にするためのものであり、発泡金属からなることが好ましい。より具体的には、本発明の空気極集電体は、特に限定されず、ステンレススチール、Fe‐Ni系合金、Fe‐Ni‐Cr系合金及び/又はFe‐Ni‐SiC系合金材質の発泡金属からなることが特に好ましい。」 (5)「【図4】 [図:0001395223000001.jpg] 」 2 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「燃料電池」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 支持体と、 前記支持体上に形成され、前記支持体側から順に積層された第1電極膜、電解質膜、及び第2電極膜を含む電池部と、 前記支持体上に前記電池部を囲むように設けられた封止部と、を備え、 前記支持体は、前記電池部が形成された領域にガス通過用の貫通孔が形成され、前記電池部の外周端に沿って凹部が形成されていることを特徴とする燃料電池。 ・・・ 【請求項7】 前記燃料電池は、固体酸化物型燃料電池であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の燃料電池。 ・・・ 【請求項9】 電池形成領域に貫通孔を有し、前記電池形成領域の外周に凹部を有する支持体を形成する工程と、 前記電池形成領域上に、前記支持体側から順に積層された第1電極膜、電解質膜、及び第2電極膜を含む電池部を、前記電池部の外周端が前記凹部に沿うように形成する工程と、 前記支持体上に、前記電池部を囲むように封止部を設ける工程と、 を備えることを特徴とする燃料電池の製造方法。 ・・・」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 上記の燃料電池では、封止部を支持体上に設ける際に、支持体上に形成された電池部が支持体と封止部との間に入り込み、燃料電池のシール性が低下してしまう場合があった。 【0005】 本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、燃料電池のシール性を向上させることを目的とする。」 (3)「【0022】 燃料電池セル180のアノード側に供給されたアノードガスは、支持体10の貫通孔12を透過して電池部20のアノード電極膜22に到達する。燃料電池セル180のカソード側に供給されたカソードガスは、多孔質の集電体30を透過して電池部20のカソード電極膜26に到達する。これにより、燃料電池セル180において発電が行われる。発電により生じた電流(または電圧)は、導電性の支持体10及び集電体30を介して、外部へと出力される。」 (4)「【0029】 次に、図3(b)に示すように、支持体10上の電池形成領域14にアノード電極膜22を形成する。アノード電極膜22は、アノード活性を有していれば特に限定されるものではないが、例えば、Ni/YSZ(イットリア安定化ジルコニア)サーメット(50/50wt%)、Ni/GDC(Gadolinium Doped Ceria)サーメット(50/50wt%)等を用いることができる。アノード電極膜22は、例えばスクリーン印刷により成膜することができる。電池形成領域14からはみ出たアノード電極膜22aは、電池形成領域14の両側に形成された凹部16に収容される。 【0030】 次に、図3(c)に示すように、アノード電極膜22上に電解質膜24を形成する。電解質膜24は、酸素イオン電導性を有していれば特に限定されるものではないが、例えば、8YSZ(8mol% Yttrium Stabilised Zirconia)、3YSZ(3mol% Yttrium Stabilised Zirconia)、Ce0.8Gd0.2O2、Ce0.8Sm0.2O2、La0.8Sr0.2Ga0.9Mg0.1O3等を用いることができる。電解質膜24は、例えばスクリーン印刷により成膜することができる。電池形成領域14からはみ出た電解質膜24aは、電池形成領域14の両側に形成された凹部16に収容される。 【0031】 次に、図3(d)に示すように、電解質膜24上にカソード電極膜26を形成する。カソード電極膜26は、カソード活性を有していれば特に限定されるものではないが、例えば、La0.8Sr0.2CoO3、La0.8Sr0.2MnO3、La0.8Sr0.2Co0.5Fe0.5O3等を用いることができる。カソード電極膜26は、アノード側との短絡を抑制するために、電池形成領域14からはみ出ないように形成する。カソード電極膜26は、例えばスクリーン印刷により成膜することができる。以上のように、支持体10上の電池形成領域14に電池部20が形成され、電池形成領域14からはみ出た電池部20aは、電池形成領域14の両側に形成された凹部16に収容される。 【0032】 次に、図3(e)に示すように、電池部20のカソード側に集電体30を設け、さらに電池部20及び集電体30を覆うようにセパレータ40を設ける。集電体30には、例えばフェライト系SUSを用いることができる。セパレータ40は、燃料電池セル80を封止するための封止部の一例であり、支持体10上に電池部20を囲むように設けられる。本実施例では、セパレータ40の一部(燃料電池セル80の側面を封止する部分で、支持体10との接触部分)は、絶縁性のガスケット42となっている。ガスケットの材料としては、例えばマイカ系材料を用いることができる。 【0033】 以上の工程により、実施例1に係る燃料電池セル80が完成する。また、燃料電池セル80を複数積層することにより、実施例1に係る燃料電池100が完成する。このとき、図3(e)に示すように、支持体10は前段のセパレータ40aの上面に取り付けられる。取り付けの方法としては、例えば溶接を用いることができる。 【0034】 図4は、実施例1に係る燃料電池の構成を示す図である。燃料電池100は、支持体10上に凹部16を有する他は、比較例(図1)と基本的に同じ構成であり、詳細な説明を省略する。凹部16は、電池部20の外周端に沿って形成されている。凹部16には、電池部20の製造工程において電池形成領域14からはみ出した電池部20aが収納されている。より詳細には、電池部20aには、アノード電極膜22及び電解質膜24のうち電池形成領域14からはみ出した部分が含まれ、カソード電極膜26は電池部20aに含まれない。 【0035】 実施例1に係る燃料電池によれば、電池部20の外周端に沿って支持体10に凹部16が形成されている。これにより、電池形成領域14から電池部20がはみ出した場合でも、電池部20は凹部16に収納され、電池部20が支持体10とガスケット42(セパレータ40)との間に入り込んでしまうことが抑制される。これにより、燃料電池100のシール性を向上させることができる。また、電池形成領域14を大きくした場合でも、凹部16により燃料電池100のシール性の低下が抑制されるため、燃料電池セル80の出力向上とシール性の向上との両立を図ることができる。 【0036】 支持体10上の電池形成領域14を図3(a)のように規定して電池部20を形成する場合、実際に製造される燃料電池セル80において、電池部20、凹部16及びガスケット42の位置関係にはいくつかのバリエーションが考えられる。以下、この点について説明する。 【0037】 図5(a)~(c)は、実施例1に係る燃料電池セルの詳細な構成を示す図である。図5(a)では、ガスケット42の内壁面が凹部16上に位置し、凹部16の大部分に電池部20が充填されている。換言すれば、電池部20の外周端はガスケット42と重複し、凹部16は当該重複部分に形成されている。本構成によれば、電池部20をガスケット42の内壁のぎりぎりの位置まで形成することができるため、電池形成領域14を大きくすることができる。」 (5)「【図3】 [図:0001395223000002.jpg] 【図4】 [図:0001395223000003.jpg] 【図5】 [図:0001395223000004.jpg] 」 3 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、「固体酸化物形燃料電池用セル及びその製造方法」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 基板に固体酸化物から成る電解質と燃料極と空気極が形成された固体酸化物形燃料電池用セルであって、 上記基板が緻密なガス不透過部分とガス透過性を備えた孔部分から成り、該孔部分を覆うようにエアロゾルデポジッション法で電解質層が形成され、当該電解質層上に燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層が形成され、 上記孔部分において、当該電解質層と他方の電極層の間に下部電極界面層が形成されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用セル。 ・・・ 【請求項10】 請求項1~9のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用セルを製造する方法であって、 基板に孔部分を形成する工程と、下部電極界面層を形成する工程と、エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成する工程と、燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層を形成する工程と、他方の電極層を形成する工程を含むことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。 【請求項11】 基板上に下部電極界面層を形成し、次いで、エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成し、しかる後、基板に孔部分を形成し、燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層と他方の電極層を形成することを特徴とする請求項10に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。 ・・・」 (2)「【技術分野】 【0001】 本発明は、固体酸化物から成る電解質を使用して電気化学反応により電気エネルギーを得る固体酸化物形燃料電池(SOFC)における発電要素を構成するセル、及びこのような固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法に関する。」 (3)「【0010】 上記構成とすることにより、微結晶から成る緻密な膜状をなし基板との界面にアンカー層が形成された電解質層が形成され、安定した品質の電解質層として、耐熱衝撃性を高めることができる。また、ラメラ構造を含む場合や膜内微結晶粒子界面にアモルファス相を含有する場合には、熱応力により強い構造を含む電解質層を高い密着力で基板上に形成できるので、頻繁な起動停止に伴う熱応力を緩和することができ、電解質層全体にクラックが伸展したり、膜破壊によって発電不能になったりするような事態を未然に防止し、耐熱衝撃性にさらに優れた固体酸化物形燃料電池用セルを形成することができる。 また、基材に金属材料を使用することができることから、ガスマニホールド部を取り付けたり、セパレータと交互に積層してガスシール性を確保するための接合が容易なものとなり、積層密度の高いスタックを提供することができる。」 (4)「【0021】 ここで、本発明において使用可能な電解質材料としては、酸化ネオジム(Nd2O3)、酸化サマリウム(Sm2O3)、イットリア(Y2O3)、酸化ガドリニウム(Gd2O3)若しくは酸化スカンジウム(Sc2O3)、又はこれらを任意に組合わせた酸化物を固溶した安定化ジルコニア、セリア(CeO2)系固溶体、酸化ビスマス、及びSr、Mg、Co等のドーパントをドープしたLaGaO3(ランタンガレート)を挙げることができ、これらの2種以上を任意に組合わせて使用することもできる。 また、電極材料としては、燃料極の場合、Pt、Ni、Cuなどの金属材料や、Ni-SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、Ni-YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Ni-CGO(セリウム-ガリウム複合酸化物)、Cu-CeO2(セリア)などのサーメット材料、又はこれらの混合材料を用いることができる。空気極の場合には、Pt、Agなどの金属材料や、LSM(La1-xSrxMnO3)、LCM(La1-xCaxMnO3)、LSC(La1-xSrxCoO3)、SSC(Sm1-xSrxCoO3)など複合酸化物を使用することができる。 【0022】 このような構成とすることによって、微結晶から成る緻密な膜状をなし基板との界面にアンカー層が形成された電解質層が形成され、従来公知の電解質層は言うに及ばず、先願発明よりも更に安定した品質の電解質層として、耐熱衝撃性を高めることができる。 また、エアロゾルデポジッション法により形成した電解質層には、ラメラ構造を含む場合や膜内微結晶粒子界面にアモルファス相を含有する場合があり、熱応力により強い構造を含む電解質層を高い密着力で基板上に形成できるので、頻繁な起動停止に伴う熱応力を緩和することができ、電解質層全体にクラックが伸展したり、膜破壊によって発電不能になったりするような事態を未然に防止し、耐熱衝撃性にさらに優れた固体酸化物形燃料電池用セルを形成することができる。 また、基材に金属材料を使用することができることから、ガスマニホールド部を取り付けたり、セパレータと交互に積層してガスシール性を確保するための接合が容易なものとなり、積層密度の高いスタックを提供することができる。 【0023】 ここで、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルを図面を用いて説明する。 図1は、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの一実施例(実施例1に相当)を示す断面図である。なお、同図は多孔部分の一つの孔部分を拡大したものである。同図に示すように、固体酸化物形燃料電池用セル1は、基板10と、電解質層20と、電極層30と、下部電極界面層40を有する。また、基板10はガス不透過部分12と孔部分14を有し、電解質層20は孔部分14を覆うようにエアロゾルデポジッション法で形成されており、電解質層20の上に一方の電極層32が形成されており、孔部分14において、電解質層と他方の電極層34の間に下部電極界面層40が形成されている。また、下部電極界面層40は、本例においては、基板10の上に形成されている。 【0024】 下部電極界面層40を基板10の上に形成することによって、つまり、詳しくは後述する本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法の一実施例において、基板10に孔部分14を形成する前に下部電極界面層40と、電解質層20を基板10の上に形成することによって、孔部分14を例えばエッチングによって形成する際に、電解質層20が受ける衝撃を緩和することができ、電解質層20をより安定して、高品質なセルを提供することができる。また、本例の場合には、下部電極界面層40は、連続層であることが好ましい。 なお、詳しくは後述するが本例の場合には、下部電極界面層40のエッチングレートが基板10のエッチングレートより遅いことが好ましい。 【0025】 下部電極界面層40の膜厚は、基板10の上に形成される場合には、5μm以下である ことが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。電解質層20は、下部電極界面層40を覆うように形成されるが、5μm以下であれば、下部電極界面層40と基板10との段差により電解質層20にクラック等の欠陥が入ることを防止することが容易にできる。1μm以下であればその効果が大きく好ましい。また、下部電極界面層のエッヂ部の膜厚が徐々に薄くなっており基板との段差を小さくすることもできる。 なお、少なくとも下部電極界面層は孔部分を覆い、電解質層は下部電極界面層を覆っていればよいが、基板全面を覆っていてもよい。 【0026】 図2は、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの他の一実施例(実施例2に相当)を示す断面図である。なお、同図は多孔部分の一つの孔部分を拡大したものである。同図に示すように、固体酸化物形燃料電池用セル1は、基板10と、電解質層20と、電極層30と、下部電極界面層40を有する。また、基板10はガス不透過部分12と孔部分14を有し、電解質層20は孔部分14を覆うようにエアロゾルデポジッション法で形成されており、電解質層20の上に一方の電極層32が形成されており、孔部分14において、電解質層と他方の電極層34の間に下部電極界面層40が形成されている。また、下部電極界面層40は、本例においては、基板10の中に形成されている。 【0027】 下部電極界面層40を基板10の中に形成することによって、つまり、詳しくは後述する本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法の他の一実施例において、電解質層20を基板10の上に形成する前に、基板10に孔部分14を形成し、かかる孔部分を閉孔するように下部電極界面層40を形成する場合に、孔部分14を閉孔している下部電極界面層40を例えばエッチングして再度孔部分14を形成する際に、下部電極界面層40は全てを除去する必要はなく、そのため電解質層20が受ける衝撃を少なくすることができ、電解質層20をより安定して、高品質なセルを提供することができる。また、本例の場合には、下部電極界面層40は、連続層であっても不連続層であってもよい。また、本例の場合(下部電極界面層40を基板10の中に形成する場合)には、同図に示すように、下部電極界面層40内に他方の電極層32が入り込んでいるものも本発明の範囲に属する。 なお、詳しくは後述するが本例の場合には、下部電極界面層40のエッチングレートが基板10のエッチングレートより速いことが好ましい。 【0028】 下部電極界面層40の膜厚は、基板10の中に形成される場合には、製造時には10μm以上であることが好ましい。下部電極界面層40は基板10の孔部分14を閉孔するように形成されるが、10μm未満であると、下部電極界面層40上に電解質層20を形成する際に、下部電極界面層が電解質層20を形成するための下地層としての強度を維持できないために、所望の電解質層が形成できず、高品質なセルを提供することができない場合がある。 【0029】 また、本発明において、電解質を形成する基材としては、ニッケルやクロムを含有する耐熱金属などを好適に使用することができるが、本発明者らは、クロムを含有する基材に対してエアロゾルデポジッション法により、安定化ジルコニアやセリア系固溶体、酸化ビスマスなどの固体酸化物を形成すると、基材に含まれるクロムと電解質に含まれる酸素が反応して、基材と電解質界面にクロム酸化物を生じる場合があり、クロム酸化物が形成されると、燃料電池反応には預からない抵抗層となるため、燃料電池の出力密度を十分に上げられない場合があるという技術知見を得た。 【0030】 本発明において、下部電極界面層を構成する材料は、特に限定されるものではなく、接触する電解質層及び他の電極層を構成する材料と異種であることが好ましい。また、同種でもよいが、例えば含まれる構成元素が同種の場合には、上述したエッチングレートなどが異なることが望ましい。また、下部電極界面層がエアロゾルデポジッション法で形成さ れる電解質層などと反応して抵抗層を形成しない材料からなることがより望ましく、例えばクロムを含有しない材料から成ることが望ましい。 このような観点から、下部電極界面層自体は、固体酸化物形燃料電池の燃料極材料、空気極材料又は電解質材料として機能することが好ましく、換言すれば電子伝導性及び酸素イオン伝導性のいずれか一方又は双方を有することが好ましく、これにより、下部電極界面層が抵抗層となることはなく、即ち燃料電池の出力密度を低下させることを防止することができる。 【0031】 また、本発明において、下部電極界面層として使用される材料としては、例えば空気極材料としてはPt、Agなどの金属材料や、LSM(La1-xSrxMnO3)、LCM(La1-xCaxMnO3)、LSC(La1-xSrxCoO3)、SSC(Sm1-xSrxCoO3)などのペロブスカイト型酸化物が挙げられ、燃料極材料としてはNi、Cu、Co、Pt、Pd、Agなどの金属材料や、Ni-SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、Ni-YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Ni-CGO(セリウム-ガリウム複合酸化物)、Cu-CeO2(セリア)などのサーメット材料が挙げられる。更にはこれらの混合材料および電解質材料との混合材料を使用することもできるが、これらに限定されるものではない。 なお、下部電極界面層が燃料極側に形成される場合には、水素還元雰囲気下で金属に還元されればよい。 【0032】 更に、本発明において、基板として使用される材料は、とくに限定されるものではないが、耐熱性に優れるクロムを含有する基板を用いた場合に、特に顕著な効果が発揮される。 【0033】 次に、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法について説明する。 上述の如く、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法は上記本発明の固体酸化物形燃料電池用セルを製造する方法であって、基板に孔部分を形成する工程と、下部電極界面層を形成する工程と、エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成する工程と、燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層を形成する工程と、他方の電極層を形成する工程を含むことを特徴とし、これにより所望の固体酸化物形燃料電池用セルを得ることができる。 【0034】 例えば、基板上に下部電極界面層を形成し、次いで、エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成し、しかる後、基板に孔部分を形成し、燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層と他方の電極層を形成して所望の固体酸化物形燃料電池用セルを得ることができる。この場合、電解質層に対して下部電極界面層と反対側に形成される電極層は、基板に孔部分を形成する前に形成してもよく、電解質層に対して下部電極界面層と同じ側に形成される電極層は孔部分が形成された後に形成されればよい。 または、基板に孔部分を形成し、次いで、該孔部分を下部電極界面層で閉孔し、更に、エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成し、しかる後、閉孔部分を再度開孔し、燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層と他方の電極層を形成して所望の固体酸化物形燃料電池用セルを得ることもできる。この場合も、電解質層に対して下部電極界面層と反対側に形成される電極層は、基板に孔部分を形成する前に形成してもよく、電解質層に対して下部電極界面層と同じ側に形成される電極層は孔部分が再度形成された後に形成されればよい。 【0035】 本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法を図面に基づいて説明する。 図3は、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法の一実施例を示すフロー図である。同図(1)に示すように、基板10の上に下部電極界面層40を形成し、同図(2)に示すように、電解質層20をエアロゾルデポジッション法により形成し、同図(3)に示すように、基板10に電解質層20を形成した反対側から孔部分14を形成し、同図(4)に示すように燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層32を形成し、同図(5)に示すように他方の電極層34を形成する。 【0036】 同図(1)において、下部電極界面層を形成するに当たってその方法は特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、スプレー熱分解法又は電解・無電解メッキ法、及びこれらを適宜組み合わせることなどにより形成することができる。 このように下部電極界面層を形成することによって、同図(2)で示すように、電解質層をエアロゾルデポジッション法により形成する場合であって、例えばクロムを含有する基板を用いた場合でも、抵抗層を生じさせ難くすることができる。 【0037】 また、同図(3)において、例えばエッチングなどにより孔部分を形成する場合に、下部電極界面層が設けられているため、エッチングによる衝撃を緩和することができ、電解質層の破損の危険性を低下させることができる。衝撃を緩和する観点から、基板と比較して下部電極界面層の材料はエッチングレートは遅い方が望ましい。更には、エッチング圧を従来よりも高く設定することができるため、生産性を向上することもできる。 【0038】 図4は、本発明の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法の他の一実施例を示すフロー図である。同図(1)に示すように、基板10に孔部分14を形成し、同図(2)に示すように、孔部分14を閉孔するように下部電極界面層40を形成し、同図(3)に示すように、電解質層20をエアロゾルデポジッション法により形成し、同図4(4)に示すように、閉孔部分に再度孔部分14を形成し、同図(5)に示すように燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層32を形成し、同図(6)に示すように他方の電極層34を形成する。 【0039】 同図(1)において、基板に孔部分を形成する際に、その方法は特に限定されるものではなく、例えばエッチングやパンチング等により形成することができる。 同図(2)において、孔部分を閉孔する下部電極界面層としては、後の再度孔部分形成工程を考慮して基板よりもエッチングレートが速い材料を選択することが望ましい。 また、下部電極界面層を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、上述したように例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、スプレー熱分解法又は電解・無電解メッキ法、及びこれらを適宜組み合わせることなどにより形成することができる。 更に、後の電解質層の形成を考慮すると、下部電極界面層の膜厚は、10μm以上とすることが好ましい。 【0040】 同図(3)において、電解質層20をエアロゾルデポジッション法により形成する際に、例えばクロムを含有する基板を用いた場合でも、下部電極界面層が形成されている孔部分においては抵抗層を生じさせ難くすることができる。 同図(4)において、再度の孔部分形成の際に、先にエッチングレートが速い材料を選択しておくことによって、エッチング圧を従来よりも低く設定することができ、これによって、電解質層の破損の危険性を低下させることができる。 【実施例】 【0041】 以下、本発明をいくつかの実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。 【0042】 (実施例1) 基板として、フェライト系ステンレス鋼(SUS430:Fe-17%Cr)から成る厚さ100μm、径40mmの円板状の基材を使用し、下部電極界面層として、NiO- 8YSZ層をスパッタリング法を用いて、厚さ1μmで基材上1.0cm四方の大きさで成膜した。 【0043】 次いで、エアロゾルデポジッション法を用いて、厚さ5μmの8YSZ電解質層を、NiO-8YSZ層と中心位置を合わせて、1.5cm四方の大きさに成膜した。 【0044】 更に、8YSZから成る電解質層を成膜した基板の表裏面をエッチングマスク用の光硬化樹脂層で被覆し、塩化鉄系の公知のエッチャントを用いて基板を多孔化し、1cm四方の下部電極界面層に対して200μm径の大きさの孔部分を16箇所形成した。 【0045】 しかる後、8YSZ電解質層上1.0cm四方の範囲に、スパッタリング法を用いて厚さ10μmのLSC空気極を形成し、基板の裏面側多孔化部分にスパッタリング法を用いてNiO-8YSZ燃料極層を10μmの膜厚に成膜して、本例の固体酸化物形燃料電池用セルを得た。 【0046】 (実施例2) 基板として、フェライト系ステンレス鋼(SUS430:Fe-17%Cr)から成る厚さ100μm、径40mmの円板状の基材を使用し、基板の表裏面をエッチングマスク用の光硬化樹脂層で被覆し、塩化鉄系の公知のエッチャントを用いて基板を多孔化し、1cm四方の下部電極界面層に対して200μm径の大きさの孔部分を16箇所形成した。 【0047】 次いで、該孔部分に下部電極界面層としてNiをメッキし、孔部分を閉孔した。更に、孔部分の外側に形成されたNi層を除去するために研磨を行い、孔部分を埋めるように形成された下部電極界面層の厚みを、基板と同じ100μmとした。 この際、孔部分外部で電解質層を形成する面に薄いNiメッキ層が残存している場合もある。この場合は、基板エッヂと孔内Niの段差を埋めて、欠陥がない電解質が成膜しやすい平滑面に研磨されていることが望ましく、厚さは実施例1の態様と同様に1μm以下が好ましい。 【0048】 次いで、孔部分を閉孔した下部電極界面層上、1.5cm四方の範囲に、エアロゾルデポジッション法により、8YSZ電解質を5μmの厚さで成膜した。 【0049】 更に8YSZ電解質上1.0cm四方の範囲に、スプレー熱分解法を用いてSSC空気極層を厚さ10μmで成膜した。 【0050】 しかる後、基板の裏面をエッチングマスク用の光硬化樹脂層で被覆し、塩化鉄系の公知のエッチャントを用いて、閉孔部のNi下部電極界面層を多孔化した。この際、多孔化された下部電極界面層は、ガス透過性を有し、厚さ1μmで多孔化部に配置された。 【0051】 続いて、基板の多孔化部にスパッタリング法を用いて、NiO-8YSZ燃料極層を厚さ10μmで成膜して、本例の固体酸化物形燃料電池用セルを得た。」 (5)「【図1】 [図:0001395223000005.jpg] 」 (6)「【図3】 [図:0001395223000006.jpg] 」 (7)「【図4】 [図:0001395223000007.jpg] 」 4 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、「FUEL CELL STACK ARRANGEMENT」(仮訳:燃料電池スタック構成)(発明の名称)に関し、以下の記載がある。なお、仮訳は、甲第4号証のパテントファミリーである、特表2017-508254号公報の該当箇所を摘記したものである。 (1)「An intermediate-temperature solid oxide fuel cell stack assembly comprising: (i) a base plate; (ii) at least one intermediate-temperature solid oxide fuel cell stack mounted upon said base plate; (iii) an end plate; and (iv) clamping means adapted to exert compressive force upon said at least one fuel cell stack between said base plate and said end plate, each fuel cell stack having first and second ends, each fuel cell stack arranged mounted between said base plate and said end plate, and comprising at least one electrochemically active fuel cell stack repeat layer and at least one of: (a) an at least one electrochemically inactive fuel cell stack repeat layer positioned between said base plate and said at least one electrochemically active fuel cell stack repeat layer; and (b) an at least one electrochemically inactive fuel cell stack repeat layer positioned between said end plate and said at least one electrochemically active fuel cell stack repeat layer; each electrochemically active fuel cell stack repeat layer comprising a metal substrate, anode, electrolyte and cathode layers mounted upon said metal substrate, and a metal interconnect plate, a metal spacer located between said metal substrate and said metal interconnect plate, and defining an oxidant flow path from an oxidant inlet to an exhaust oxidant outlet, and a fuel flow path from a fuel inlet to an exhaust fuel outlet, each electrochemically inactive fuel cell stack repeat layer adapted such that it is incapable of performing an electrochemical function and comprising a metal substrate and a metal interconnect plate, a metal spacer located between said metal substrate and said metal interconnect plate, and defining an oxidant flow path from an oxidant inlet to an exhaust oxidant outlet.」(請求項1) (仮訳:(i)ベースプレートと、 (ii)前記ベースプレート上に載置された少なくとも1つの中温固体酸化物燃料電池スタックと、 (iii)エンドプレートと、 (iv)前記ベースプレートと前記エンドプレートとの間の前記少なくとも1つの燃料電池スタック上に圧縮力を加えるように構成されたクランプ手段と、 を備える中温固体酸化物燃料電池スタックアセンブリであって、 各燃料電池スタックは第1および第2端部を有し、各燃料電池スタックは前記ベースプレートと前記エンドプレートとの間に載置されて構成され、少なくとも1つの電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層ならびに (a)前記ベースプレートと前記少なくとも1つの電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層との間に配置された少なくとも1つの電気化学的に不活性な燃料電池スタック繰り返し層、および (b)前記エンドプレートと前記少なくとも1つの電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層との間に配置された少なくとも1つの電気化学的に不活性な燃料電池スタック繰り返し層 の少なくとも1つを備え、 各電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層は、金属基板、前記金属基板上に載置されたアノード、電解質およびカソード層、ならびに金属インターコネクトプレート、前記金属基板と前記金属インターコネクトプレートとの間に位置する金属スペーサーを備え、酸化剤導入口から酸化剤排出口までの酸化剤流路、および燃料導入口から燃料排出口までの燃料流路を画定し、 各電気化学的に不活性な燃料電池スタック繰り返し層は、電気化学的機能を行うことができないように構成され、金属基板および金属インターコネクトプレート、前記金属基板と前記金属インターコネクトプレートとの間に位置する金属スペーサーを備え、酸化剤導入口から酸化剤排出口までの酸化剤流路、および燃料導入口から燃料排出口までの燃料流路の少なくとも1つを画定する、中温固体酸化物燃料電池スタックアセンブリ。)(請求項1) (2)「The relevant metal surfaces are subject to significant oxidation and/or corrosion over the life of the product and thus to a significant or substantial increase in electrical resistance between them. Thus, a significant increase in electrical resistance across the dummy layer will be experienced over the life of the product, resulting in decreased efficiency and power output. The present invention seeks to improve upon the prior art and/or address, overcome or mitigate at least one of the prior art disadvantages.」(第4ページ第19~26行) (仮訳:製品の寿命中に関連金属表面には顕著な酸化および/または腐食が起こり、よってそれらの間の電気抵抗の顕著なまたは実質的な増加が起こる。このように、製品の寿命中にダミー層にわたる電気抵抗の顕著な増加が起こり、効率および電力出力の低下をもたらす。 本発明は、従来技術を向上させ、および/または従来技術の不利点の少なくとも1つを解決、克服もしくは軽減しようとするものである。)(段落【0015】~【0016】) (3)「the electrolyte layer has a thickness of about 15 microns」(第15ページ第4~5行) (仮訳:電解質層は約15ミクロンの厚さを有し)(段落【0053】) (4)「Preferably, at least one electrically insulating gasket is located between each fuel cell stack repeat layer and its adjacent fuel cell stack repeat layer or layers. Alternatively or additionally, preferably, each fuel cell stack repeat layer additionally comprises at least one electrically insulating gasket. Preferably, such an at least one electrically insulating gasket is mounted on the metal substrate remote from the metal interconnect plate, i.e. on an opposite side of the metal substrate to that facing the metal interconnect plate. The gasket also provides gas sealing for the inlet and outlet side fuel gas and the outlet side air gas.」(第17ページ第10~21行) (仮訳:好適には、少なくとも1つの電気絶縁ガスケットは、各燃料電池スタック繰り返し層とその隣接する燃料電池スタック繰り返し層との間に配置される。あるいはまたはさらに、好適には、各燃料電池スタック繰り返し層は少なくとも1つの電気絶縁ガスケットをさらに備える。好適には、こうした少なくとも1つの電気絶縁ガスケットは金属インターコネクトプレートから離れた金属基板上、すなわち金属インターコネクトプレートと対向する側の反対側の金属基板上に載置される。ガスケットは、入口および出口側の燃料ガスならびに出口側の空気ガスのガスシールももたらす。 よって、好適にはアノード、電解質およびカソード層は金属基板の第1面上に載置され、少なくとも1つの電気絶縁ガスケットは同じ側の金属基板上に載置される。)(段落【0065】~【0066】) (5)「Suitable materials for the electrically insulating gaskets include vermiculite and mica」(第30ページ第1~2行) (仮訳:電気絶縁ガスケットに適した材料としては、バーミキュライトおよびマイカ、好適にはマイカが挙げられる。)(段落【0127】) (6)「Each electrochemically active fuel cell stack repeat layer 90 comprises one fuel cell 91 (in other embodiments, not shown, each electrochemically active fuel cell stack repeat layer 90 contains a plurality of fuel cells 91). Each fuel cell 91 comprises an anode 120, electrolyte 130 and cathode 140 mounted upon metal substrate 110, and covering a metal substrate porous region 110A which is surrounded by a metal substrate non-porous region 110B. Metal substrate 110 is mounted upon electrically conductive metal interconnect plate 150, and provides manifolding for fuel flow. Each fuel cell stack repeat layer 70, 90 also includes electrically insulating gas seal gaskets 430, 440. The metal substrate 110 of a first fuel cell stack repeat layer 90 or 70 is prevented from coming into direct electrical contact with an adjacent metal interconnect plate 150 (for example, of a second adjacent fuel cell stack repeat layer 90 or 70) by electrically insulating gaskets 430, 440. An oxidant flow path 160 is defined between the metal substrate 110 of each first fuel cell stack repeat layer 90, 70 and the adjacent metal interconnect plate 150 (for example, of a second adjacent fuel cell stack repeat layer 90 or 70), and passes from an open manifolded oxidant inlet 170 to an internally manifolded exhaust oxidant outlet 180.」(第35ページ第4~22行) (仮訳:各電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層90は、1つの燃料電池91を備える(図示しない他の実施形態において、各電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層90は複数の燃料電池91を含有する)。各燃料電池91は、金属基板110上に載置され、金属基板非多孔質領域110Bにより囲まれた金属基板多孔質領域110Aを覆う、アノード120、電解質130およびカソード140を備える。金属基板110は電気伝導金属インターコネクトプレート150上に載置され、燃料流のマニホールドをもたらす。 各燃料電池スタック繰り返し層70、90は電気絶縁ガスシールガスケット430、440も備える。 第1燃料電池スタック繰り返し層90または70の金属基板110は、電気絶縁ガスケット430、440により(例えば、第2の隣接する燃料電池スタック繰り返し層90または70の)隣接する金属インターコネクトプレート150との直接電気的接触が防止される。酸化剤流路160は、各第1燃料電池スタック繰り返し層90、70のそれぞれの金属基板110と(例えば、第2の隣接する燃料電池スタック繰り返し層90または70の)隣接する金属インターコネクトプレート150との間で画定され、開放マニホールド化された酸化剤導入口170から内部マニホールド化された酸化剤排出口180まで通る。)(段落【0153】~【0155】) (7)「Fig.10 [図:0001395223000008.jpg] 」 (8)「Fig.12 [図:0001395223000009.jpg] Fig.13 [図:0001395223000010.jpg] 」 5 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、「燃料電池の改良」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。 (1)「【0032】 図1bは、スタックを形成する一対の燃料電池の一方の完全な電池と、他方の一部分を示す。各電池は、盛上がり側部11bを有する相互接続プレート10aを備え、中央領域10gが穿孔されたステンレス鋼プレート10cからなる鋼基材で覆った際に燃料流路11bを形成する。鋼プレート10cをその領域12で盛上がり側部11aに気密に溶接し、各鋼プレートを次の電池の相互接続プレートからガスケット13により離隔する。アノード10dを各鋼プレート10cの穿孔領域の上側に置き、該アノードが鋼プレート10cの穿孔を通じて燃料流路11bに供給された燃料と接触可能となる。ガス不透過性の電解質10eがアノード10dの上側表面を完全に覆い、その上にカソード10fを置いて覆う。カソードの上方で各鋼プレート10cとその上の相互接続プレート10a間で、ガスケット13により境を接する空間が、カソードへの酸化剤(空気)流路11cとなる。」 (2)「【図1b】 [図:0001395223000011.jpg] 」 6 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、「燃料電池スタック流路フード」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。 (1)「【0075】 燃料電池スタックアセンブリ1の第1の実施形態では、固体酸化物燃料電池10が複数の燃料電池スタック層20から組み立てられている。各燃料電池スタック層20は1つの燃料電池30を収容している(他の実施形態では、図示していないが、各燃料電池スタック層20は複数の燃料電池30を収容している)。各燃料電池は、燃料電池金属基板34上に取り付けられ、燃料電池基板多孔質領域36を覆うアノード31と、電解質32と、カソード33と、を備えている。燃料電池基板多孔質領域36は燃料電池基板非多孔質領域35に取り囲まれている。導電性のある相互接続プレート37は燃料が通流するためのマニホールドを提供している。第1の燃料電池スタック層20の金属基板34は、絶縁ガスケット38によって、隣接する第2の燃料電池スタック層の相互接続プレート37に直接電気的接触をしないようにされている。」 (2)「【0094】 図4には、説明の便宜上拡大された燃料電池スタック層20とさらなる燃料電池スタック層21とを示すB-B’線(図3)に沿った断面図が示されている。図面から分かるように、空気140が、酸化剤流入口120から燃料電池スタックアセンブリ1に流れ込むようになっている。酸化剤流入口120は、燃料電池スタック10の開放マニホールド形酸化剤流入口70とは反対側(すなわち、それから遠く隔れた位置)に設けられている。次いで、空気140は、燃料電池スタック10の側面をまわって通流して(燃料電池スタック10頂部の上方の流体の流れは、燃料電池スタック端板160の頂面とフード50との間に位置するとともに接触している気密性及び断熱性を有する蛭石ガスケット150により遮蔽されている)、加熱される。そして、空気140は、燃料電池スタック層20の開放マニホールド形酸化剤流入口70へ流れ、中間温度固体酸化物燃料電池(IT-SOFC)30のカソード33上を通流し、その間に、電気化学反応により、熱、酸化物及び電気が生成され、その後、空気140はマニホールド90を通じて排出される。燃料130は、内部マニホールド形燃料流入口100を通じて燃料電池スタック10に流れ込み、燃料電池基板多孔質領域36の下を通過して、燃料電池のアノード31を通流し、その間に、電気化学反応により、熱、酸化物(主として、酸化炭素類及び水)、及び電気を生成する。次いで、排出燃料130は、内部マニホールド形燃料流出口110を通じて燃料電池スタック10から排出される。」 (3)「【図4】 [図:0001395223000012.jpg] 」 7 甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、「金属材料の湿食」に関し、以下の記載がある。 「f.すきま腐食(crevice corrosion) 不動態にある金属・合金の表面が,金属または非金属によりしゃへいされ,その間にすきまがあるとき,その部分が腐食を受ける.このすきまは,ガスケット,ボルト,小穴など構造上最初から存在する場合のほか,砂,生物の付着,腐食生成物によっても起こる.とくに,すきまが10-4cm程度で,塩素イオンなど不動態皮膜を破壊する陰イオンの存在下で起こり,また腐食されたすきま内部ではpHの低下および塩素イオンの濃縮が見られる.すきまを持つステンレス鋼をアノード分極すると,孔食の場合と同様に過不動態電位より卑な電位で電流の急上昇が観測され,すきま部が腐食する,このように,すきま腐食の挙動は孔食とよく似ており,孔食は自由表面における小孔生成によるすきま腐食であると考えることもできる.すきま寓食に対する抵抗は,チタンおよびニッケル基高クロム-マンガン合金が最も高く,以下70-30銅.ニッケル,アルミ青銅,黄銅,銅,モネル合金,鋳鉄,軟鋼の順で,通常のステンレス鋼の抵抗性はきわめて低い,すきま腐食の防止法としては,材料の選択はもちろん,設計時にすきま,あるいは流れのよどみなど沈着物の付きやすい場所をつくらないようにし,必要ならばカソード防食を行なう.エナメルなどで塗装したアルミニウム,マグネシウム,軟鋼,亜鉛などで,湿度の高いとき発生するかび状の腐食(filiform corrosion)は一種のすきま腐食である.」 8 甲第8号証の記載事項 甲第8号証には、「SOFCの劣化要因について」に関し、以下の記載がある。以下、丸数字の1等を、「丸1」等と表す。 (1)「このような条件で,材料に起こりうる劣化の種類としては,大きく3種類に大別される。 丸1 外部要因(不純物)による劣化 丸2 材料自体の劣化 丸3 異種材料間の反応・拡散による劣化 以下,各劣化現象について簡単に述べる。 (1)外部要因による劣化 外部から入り込む劣化要因で古典的なものは,燃料極における珪素成分の混入による劣化が挙げられる。珪素は外部配管や,平板型においては側面のガスリークを封止するためのシール剤(ガラスセラミックスなど)に含まれていることが多い。 還元雰囲気においては,この中に含まれるシリコン成分がSiO(g)などの気体となり,燃料ガスに乗って電極上まで運ばれることがある。燃料極上では電解質から供給された酸化物イオンによる酸化反応が常に起こっているため,SiO(g)は燃料極上で酸化され,絶縁体SiO2として燃料極・電解質界面に析出する。燃料の酸化反応(電極反応)はニッケルとYSZと気相の三相界面で起こっていると考えられているが,問題は電極反応が激しく起こっている箇所と,SiO2が析出する箇所が一致することである。このため,SiO2の析出はごく微量であっても電極反応の活性点を著しく侵害し,反応過電圧の上昇の主要因となりうる。恒常的なSiO(g)の源がガスライン上にあれば,蒸気圧は非常に低くともSiO2が確実に燃料極上に析出する。過去の例では燃料加湿器に用いられたシリコンゴムが源となった報告がある3)。 一方,空気極近傍で問題となるのは,配管材料・インターコネクトなどから蒸発するクロム成分である。ランタンクロマイト系の酸化物インターコネクトではクロム成分の蒸発はほとんど問題とならないが,含クロム合金を用いた金属インターコネクトおよび配管材料からはCrO3(g)などの気相化学種が蒸発することが知られている。図2に含クロム鉄系合金(Cr22%-Fe)を湿潤空気(3%H2O)中においた場合に蒸発する化学種の種類と蒸気圧の温度依存性を示した。空気中に水索気が含まれると,CrO3(g)に加えてCrO2(OH)2などの気相化学種の蒸気圧が高くなるこれら含クロム気相化学種は空気極近傍に運ばれると還元反応をうけてCr2O3として析出し,電極反応を著しく阻害する。 また,他に気相を介した物質輸送については,ガラス成分に含まれるホウ素,ナトリウム,カリウムなどが蒸発・輸送される現象がある。 これらの気相を介した不純物の輸送は,その源となる物質を除くことが最も直接的な解決法である。ホウ素,ナトリウム,カリウムなどは材料開発の過程で含量を低減・あるいは零にすることは可能だが,珪素およびクロムは,それぞれガラスシール剤および合金材料では非常に一般的に使われており,完全になくすことは難しい。 含クロム合金からの蒸発を抑えるために様々なコーティング処理が試みられており,緻密なコーティングが得られれば短期的な蒸発は抑えられるが,実際には合金とコーティングの界面は必ずしも安定ではなく,合金中の金属成分がコーティング材へ拡散する現象がみられている。この現象については,別の章で解説するが,長期運転においてはコーティング膜の不安定化・蒸発の再燃を招く可能性も否定できない。」 (2)「図2 [図:0001395223000013.jpg] 」 (3)「また,平板型SOFCに多く用いられるシール材に含まれる成分と合金インターコネクトのクロム成分も反応を起こしやすい。たとえば,シール中のガラス成分にNa,Kなどのアルカリ金属,またはBa,Ca,Srなどのアルカリ土類金属が含まれると,それらはSOFCの運転温度,空気中で反応してクロム酸塩(M2CrO4,M’CrO4,M:アルカリ金属,M’:アルカリ土類金属)を生成する。とくにK2CrO4,BaCrO4は安定である。これらのクロム酸塩は伝導度に悪影響を及ぼすのみならず,合金中からクロム成分を奪うことによって安定な酸化皮膜の生成を阻害することなどにより合金の対酸化性をも低減させてしまう。」 9 甲第9号証の記載事項 甲第9号証には、「固体酸化物形燃料電池材料」に関し、以下の記載がある。 (1)「4.10.4 シール材とインターコネクト ガラスを用いたシール材の検討が進められてきたが、酸化アルカリ、酸化珪素、酸化ホウ素などとの反応性が最も重要となる。 シリカとランタンクロマイトとの反応では、La、Caなどの塩基性酸化物はシリカと反応してシリケートを形成し、クロミアを析出させる。酸性度でいうとシリカの方がクロミアよりはるかに高い。したがって、シール材中のシリカ成分がどれほど安定化されているかが焦点となる。 フェライト系合金を用いた場合では、酸化物スケールがシール材に対してどれだけ安定であるかが焦点となる。アルカリ成分を含むガラスを用いた時のフェライト系合金の異常酸化の様子を図4.10.2に示す。内部に異常の酸化が進行している領域とアルカリが浸食している様子とが一致していることがわかる。数10ppmのアルカリ成分は、通常のEDX、EPMAでは検出が難しいが、二次質量分析計(SIMS)を用いると鮮明に検出することができる。 シール材としてはアルカリ成分を含まないものに移行しているが、それでもアルカリ土類成分は入れざるを得ない。アルカリ成分が異常浸食を加速させる詳細な機構は不明であるが、アルカリクロメートなどの低融点化合物の生成が重要な点であることは推測がつく。アルカリ土類では同じくクロメートは安定であるため、ガラス中のアルカリ土類成分は酸化クロムと反応し、ガラスのアルカリ土類濃度が低くなり、ガラス中の酸性度が上がり空気極などとの反応性があがることが十分に予想される。 シール材の最適化には、単に、丸1熱膨張係数の一致、丸2ガス気密性、丸3電気的絶縁性ばかりでなく、丸4他の構成材料との両立性、丸5ガラス構成成分の揮発性と揮発物と他の材料との反応性、丸6化合物生成による熱膨張係数の変化、丸7化合物生成による酸塩基度の変化による新たな反応性の促進などを考慮する必要があり、その技術的難しさが最も集中して現れる材料となっている。」 (2)「図4.10.2 [図:0001395223000014.jpg] 」 10 甲第10号証の記載事項 甲第10号証には、「耐熱性シール部材」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】 粘土粒子を配向させた構造を有し、該粘土粒子間又は/及び粘土粒子層間に、100℃を超え且つ該粘土粒子の構造水酸基が水として放出される温度以下の温度で分解する物質を含有する粘土膜からなる、前記物質の分解温度以上の環境下に配される部材。 【請求項2】 前記分解温度以上の温度が、該粘土粒子の構造水酸基が水として放出される温度以上である、請求項1記載の部材。 【請求項3】 前記粘土粒子が、カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、クリソタイル、リザーダイド、アメサイト、パイロフィライト、タルク、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、スチーブンサイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、2八面体型バーミキュライト、3八面体型バーミキュライト、白雲母、パラゴナイト、イライト、セリサイト、金雲母、黒雲母、レピドライト及び層状チタン酸からなる群より選択される一種以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載の部材。 【請求項4】 前記物質が、有機物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項記載の部材。 【請求項5】 前記有機物が、環状モノマー、炭素多重結合系モノマー、単官能性モノマー、多官能性モノマー、これらの単独重合体及びこれらの共重合体からなる群より選択される一種以上である、請求項4記載の部材。 【請求項6】 前記有機物が、εカプロラクタムであることを特徴とする、請求項5記載の部材。 【請求項7】 前記有機物が、有機オニウムイオンであることを特徴とする、請求項4記載の部材。 【請求項8】 前記有機オニウムイオンが、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン及びイミダゾリウムイオンからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする、請求項7記載の部材。 【請求項9】 前記物質が、発泡剤であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項記載の部材。 【請求項10】 前記発泡剤が、有機系発泡剤及び無機系発泡剤より選択される一種以上である、請求項9記載の部材。 【請求項11】 前記部材が、前記物質の分解温度以上の加熱により膨張してシール材となる部材である、請求項1~10のいずれか一項記載の部材。 【請求項12】 前記部材が、該粘土粒子の構造水酸基が水として放出される温度以上の加熱によりナトリウム抽出量が100ppm以下となる低ナトリウム溶出性シール材となる部材である、請求項1~11のいずれか一項記載の部材。 【請求項13】 請求項11記載の部材を、凹凸を有する狭固定空間に該物質の分解温度以下で固定配置し、該物質が分解する温度以上の環境下に配することにより形成された、該凹凸を有する狭固定空間の凹凸を埋めるシール材。 【請求項14】 前記シール材が、ガスケットである、請求項13記載のシール材。 【請求項15】 請求項12記載の部材を、ナトリウム溶出が問題となり得る空間に該物質の分解温度以下で固定配置し、該物質が分解する温度以上であり且つ該粘土粒子の構造水酸基が水として放出される温度以上の環境下に配することにより形成された、ナトリウム抽出量が100ppm以下となる低ナトリウム溶出性シール材。 【請求項16】 前記低ナトリウム溶出性シール材が、燃料電池用ガスケットである、請求項15記載の低ナトリウム溶出性シール材。 【請求項17】 請求項1~12のいずれか一項記載の部材を製造するための粘土分散液であって、前記粘土粒子及び前記物質を、水、有機溶剤又はこれらの混合溶媒に分散させることにより得られる粘土分散液。 【請求項18】 請求項17記載の前記分散液を基材に塗布し、乾燥し、基材から剥離する工程を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の部材の製造方法。」 (2)「【0002】 シール材として、高温域においては、一般的にはゴムや繊維、クレーを主成分としたガスケットや金属ガスケット、ガラスシール材が使用されている。ゴムや繊維、クレーを主成分としたガスケットは、ゴムの耐熱性によりそれほど高い温度域、例えば500℃以上の温度域では使用ができない。このような高温域では、金属ガスケットやガラスシール材が使用されるが、金属ガスケットは重量が重い、締め付け圧力を高くしなければならない等の問題点を抱えている。一方、ガラスシールは、高温域で溶融し、温度低下により固着し、シール性能を発現するが、長時間の使用でガラス成分であるナトリウムが溶出し、電極や金属、その他部材を腐食させたり性能を劣化させたりする問題点がある。また、完全に固着する為に、メンテナンス等でシール部分を解体する場合、解体することが困難であるという問題点を有する。」 第6 当審の判断 以下に述べるように、本件特許異議の申立ての理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1(新規性、進歩性)について (1)甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には、 「金属支持体と、 前記金属支持体の一面に形成された第1の電極と、 前記第1の電極の一面に形成される電解質と、 前記電解質の一面に形成され、前記第1の電極と異なる極性を有する第2の電極と、 を含んでなり、 前記金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極に流体通路であるマニホールドが形成される、金属支持体型固体酸化物燃料電池の単位電池」に関する発明(請求項1)、 「請求項1から8のいずれか一項に記載の複数の単位電池と、 二つ以上の単位電池の間に配置されて直列連結する分離板と、 前記単位電池と分離板の間に形成される密封材と、 を含む、金属支持体型固体酸化物燃料電池スタック」に関する発明(請求項14)及び、 「前記密封材は、ガスケット型密封材である、請求項14に記載の金属支持体型固体酸化物燃料電池スタック」に関する発明(請求項15)が記載されている。 イ また、上記アの発明に関し、図4には、金属支持体434上に、順次、燃料極435、電解質436及び空気極437が形成され、その上に、空気極集電体420、ガスケット型密封材410及び分離板400を積層すること、金属支持体434の下に、燃料極集電体440、ガスケット型密封材450及び分離板400を積層すること、及び、マニホールドが単位電池430の短辺側に形成されることが記載されている(段落【0031】~【0041】)。 ウ さらに、甲第1号証には、上記アの単位電池の製造方法として、 「金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極を製造する段階と、 前記金属支持体、第1の電極、電解質及び第2の電極を積層して積層体を形成する段階と、 前記積層体を焼結する段階と、 前記焼結された積層体にマニホールドを形成する段階と、 を含む、金属支持体型固体酸化物燃料電池の単位電池の製造方法」も記載されている(請求項9)。 エ また、上記アの金属支持体型固体酸化物燃料電池スタックは、上記ウの製造方法で製造された二つ以上の単位電池の間に分離板を配置し直列連結する段階と、単位電池と分離板の間にガスケット型密封材を形成する段階とを経て製造されるものである。 オ そして、上記金属支持体型固体酸化物燃料電池スタックのうち、図4に示すような、上方の分離板400から下方の分離板400までを金属支持体型固体酸化物燃料電池の一単位と捉えると、甲第1号証には、以下の2つの発明(以下、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明1> 金属支持体と、 前記金属支持体の一面に形成された燃料極と、 前記燃料極の一面に形成される電解質と、 前記電解質の一面に形成された空気極と、 ガスケット型密封材、 を含んでなり、 前記金属支持体、燃料極、電解質及び空気極に流体通路であるマニホールドが形成される、金属支持体型固体酸化物燃料電池の単位電池を備え、 前記単位電池の両面側に配置されて直列連結する分離板と、 前記単位電池と分離板の間に形成されるガスケット型密封材と、 を含む、金属支持体型固体酸化物燃料電池。 <甲1発明2> 甲1発明1の金属支持体型固体酸化物燃料電池の製造方法であって、 金属支持体、燃料極、電解質及び空気極を製造する段階と、 前記金属支持体、燃料極、電解質及び空気極を積層して積層体を形成する段階と、 前記積層体を焼結する段階と、 前記焼結された積層体にマニホールドを形成する段階とにより、単位電池を製造し、 前記単位電池の両面側に分離板を配置し直列連結する段階と、 前記単位電池と分離板の間にガスケット型密封材を形成する段階と を含む、金属支持体型固体酸化物燃料電池の製造方法。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明1との対比・判断 (ア)対比 a 甲1発明1の「金属支持体」、「電解質」、「ガスケット型密封材」及び「固体酸化物燃料電池」は、それぞれ、本件発明1の「金属基材」、「電解質」、「ガスケット」及び「固体酸化物型燃料電池」に相当する。 b 甲第1号証の図4から、甲1発明1の電解質が層状であること、すなわち、「電解質」が「電解質」の層であることと、電解質が金属支持体とガスケット型密封材との間に配置されていることが見て取れる。 c 甲第1号証において、マニホールドは、空気や燃料の供給及び排出がなされる流体通路である(段落【0022】)。 d そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、以下の一致点1-1において一致するとともに、以下の相違点1-1~相違点1-3において相違する。 <一致点1-1> 「金属基材と、 電解質層と、 少なくとも1つのガスケットとを含む、 金属で支持された固体酸化物型燃料電池であって、 流体が、前記金属で支持された固体酸化物型燃料電池に及び/又は前記燃料電池から供給され、 前記電解質層の少なくとも一部は、前記基材と前記ガスケットとの間に配置されている、燃料電池。」である点。 <相違点1-1> 本件発明1では、「電解質層」が「金属基材に隣接する」のに対し、甲1発明1では、「電解質」が「金属支持体に隣接する」ことが特定されていない点。 <相違点1-2> 本件発明1では、流体が「ガスケットを通して」供給されるのに対し、甲1発明1では、流体が「ガスケット型密封材を通して」供給されることが特定されていない点。 <相違点1-3> 本件発明1では、「前記電解質層は、前記金属基材の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し」ているのに対し、甲1発明1では、「電解質」が「金属支持体」の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供しているのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点1-1について (a)甲第1号証の図4をみると、金属支持体、燃料極及び電解質の積層方向に垂直な断面の形状は同一であるから、電解質と金属支持体とは隣り合っておらず、接してもいないことは明らかであるから、相違点1-1は実質的な相違点である。 (b)そして、甲第1号証には、電解質と金属支持体とを接触させることについて何ら記載も示唆もされていないから、甲1発明1において、電解質を金属支持体に隣接するようにすることが動機付けられるとはいえない。 b 相違点1-2について 甲第1号証の図4をみると、ガスケット型密封材は、空気と燃料とを密封するために矩形の領域を形成し、その領域を通して空気と燃料とが供給されているといえる。よって、相違点1-2は実質的な相違点ではない。 c 相違点1-3について (a)本件発明1において、電解質層が金属基材の腐食を防止する機序は、露出した金属基材の少なくとも一部を電解質層で覆うことであるが(本件明細書等の段落【0013】、【0016】)、上記a(a)のとおり、甲第1号証において、金属支持体は燃料極に覆われているから、甲1発明1において、電解質は、露出した金属支持体の少なくとも一部を覆っておらず、電解質は腐食を防止する保護被膜の機能を果たしているとはいえない。よって、相違点1-3は実質的な相違点である。 (b)上記a(b)の判断と同様に、甲第1号証には、電解質と金属支持体とを接触させることが何ら記載も示唆もされていないから、甲1発明1において、電解質で露出した金属支持体の少なくとも一部を覆うことで、電解質を腐食防止のための保護被膜とすることが動機付けられるとはいえない。 イ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第36ページ下から5行目~第38ページ第11行において、甲第4号証の第4ページ第19~26行には、従来の固体酸化物燃料電池の課題の一つに、金属表面が酸化及び腐食されることにより電気抵抗の顕著な増加が起っていた旨が記載され、甲第7号証の「すきま腐食」の項には、「金属・合金の表面が、金属または非金属によりしゃへいされ、その間にすきまがあるとき、その部分が腐食をうける」というすきま腐食に関する記載があり、これは塩素イオン等の陰イオン存在下で起こり、ガスケット等とのすきまでも生じるものであると記載され、甲第8号証の第218ページ第3行~第219ページ第11行、第220ページ下から2行目~第221ページ第5行には、SOFCの劣化要因に関し、外部要因(不純物)により劣化や異種材料間の反応・拡散による劣化が挙げられており、シール材に含まれるNa、Kなどのアルカリ金属やBa、Ca、Srなどのアルカリ土類金属が含まれていると合金インターコネクトのクロム成分が反応を起こしやすいことが記載され、甲第9号証の第224ページ第10行~第225ページ第7行には、フェライト系合金を用いた場合、シール材中に含まれるアルカリ成分がフェライト系合金の異常酸化及び異常浸食の原因となることが記載され、甲第10号証の段落【0002】には「一方、ガラスシールは、・・・、長時間の使用でガラス成分であるナトリウムが溶出し、電極や金属、その他部材を腐食させたり性能を劣化させたりする問題点がある。」と、それぞれ記載されていることから、燃料電池分野において、本件発明の課題は周知であり、ガスケットから浸出する物質から金属基材を保護するために、基材に電解質層を含む保護性の非多孔質被膜を適用することは当業者であれば当然に想定することである旨の主張をしているが、上記のとおり、甲第1号証には、電解質と金属支持体とを接触さることや、電解質を保護被膜とすることについて何ら記載も示唆もされていないから、燃料電池分野において、本件発明の課題が周知であるとしても、甲1発明1において、電解質と金属支持体とを接触させることや、電解質を保護被膜とすることが動機付けられるとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~7、11、13、14について 本件発明2~7、11、13、14は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明2~7、11、13、14についても同様に、甲第1号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~7、9~11、13、14についても同様に、甲第1号証に記載された発明、あるいは、甲第1号証に記載された発明と甲第3号証又は甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明15について ア 本件発明15と甲1発明2との対比・判断 (ア)対比 a 甲1発明2の「金属支持体」、「電解質」、「ガスケット型密封材」及び「固体酸化物燃料電池」は、それぞれ、本件発明15の「金属基材」又は「基材」、「電解質」、「ガスケット」及び「燃料電池」に相当する。 したがって、甲1発明2の「金属支持体」を「製造する段階」は、本件発明15の「金属基材を提供する工程」に相当する。 b 甲1発明2の「前記単位電池と分離板の間にガスケット型密封材を形成する段階」は、本件発明15の「基材に隣接した燃料電池にガスケットを適用する工程」に相当する。 c 甲第1号証の図4から、甲1発明2の電解質が層状の被膜であることが見て取れる。 したがって、甲1発明2の「前記金属支持体」、「電解質」「を積層して積層体を形成する段階」と、本件発明15の「前記基材に前記電解質層を含む保護性の非多孔質被膜を適用する工程」とは、「基材に前記電解質層を含む被膜を適用する工程」の点で共通する。 d 甲第1号証において、マニホールドは、空気や燃料の供給及び排出がなされる流体通路である(段落【0022】)。 eそうすると、本件発明15と甲1発明2とは、以下の一致点1-2において一致するとともに、以下の相違点1-4~相違点1-6において相違する。 <一致点1-2> 「燃料電池の製造方法であって、 i)前記金属基材を提供する工程と、 ii)前記基材に前記電解質層を含む被膜を適用する工程と、 iii)基材に隣接した燃料電池にガスケットを適用する工程と、 を含む方法。」である点。 <相違点1-4> 本件発明15では、その製造方法により製造されるのが、本件発明1~13であるのに対し、甲1発明2では、その製造方法により製造されるのが、甲1発明1の金属支持体型固体酸化物燃料電池である点。 <相違点1-5> 本件発明15では、基材に適用する「電解質層を含む被膜」が、「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるのに対し、甲1発明2では、基材に適用する「電解質層を含む被膜」が「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるか不明である点。 <相違点1-6> 本件発明15では、「電解質層を含む被膜」である「保護性の非多孔質層」は、「ガスケットに近接した領域の少なくとも一部に適用される」のに対し、甲1発明2では、「電解質層を含む被膜」である「電解質」が、そのように適用されるのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点1-4について (a)甲1発明2は、甲1発明1の製造方法である。 (b)そして、上記(2)で検討したとおり、本件発明1は、甲1発明1とはいえないから、本件発明15によって製造される本件発明1も甲1発明2によって製造される甲1発明1であるとはいえない。よって、相違点1-4は実質的な相違点である。 (c)また、上記(2)で検討したとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、甲1発明2によって製造される甲1発明1を本件発明1とすることも、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得ることとはいえない。 (d)よって、相違点1-5、相違点1-6について検討するまでもなく、本件発明1の製造方法である本件発明15は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、本件発明1の製造方法である本件発明15は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (e)本件発明2~13は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で検討したとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明2~13についても同様に、甲第1号証に記載された発明とはいえない。 よって、相違点1-5、相違点1-6について検討するまでもなく、本件発明2~13の製造方法である本件発明15も、甲第1号証に記載された発明とはいえない。 (f)また、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~13についても同様に、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、相違点1-5、相違点1-6について検討するまでもなく、本件発明2~13の製造方法である本件発明15も、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 b 以上のとおり、相違点1-5、相違点1-6について検討するまでもなく、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明16について 本件発明16は、本件発明15の記載を引用するものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明15が、甲第1号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明16についても同様に、甲第1号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明15が、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明16についても同様に、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)申立理由1のまとめ 以上のとおり、申立理由1によっては、本件特許の請求項1~7、9~11、13~16に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(新規性、進歩性)について (1)甲第2号証に記載された発明 ア 甲第2号証には、 「支持体と、 前記支持体上に形成され、前記支持体側から順に積層された第1電極膜、電解質膜、及び第2電極膜を含む電池部と、 前記支持体上に前記電池部を囲むように設けられた封止部と、を備え、 前記支持体は、前記電池部が形成された領域にガス通過用の貫通孔が形成され、前記電池部の外周端に沿って凹部が形成されていることを特徴とする燃料電池」に関する発明が記載されている(請求項1)。また、該燃料電池が固体酸化物型燃料電池であることも記載されている(請求項7)。 イ ここで、甲第2号証の図4との対応から、「支持体10」、「アノード電極膜22」、「カソード電極膜26」は、それぞれ、上記アの「支持体」、「第1電極膜」、「第2電極膜」である。 ウ また、甲第2号証において、「セパレータ40は、燃料電池セル80を封止するための封止部の一例であり、支持体10上に電池部20を囲むように設けられる。本実施例では、セパレータ40の一部(燃料電池セル80の側面を封止する部分で、支持体10との接触部分)は、絶縁性のガスケット42となっている」(段落【0032】)から、上記アにおいて、「封止部」は「ガスケット」である。さらに、「支持体」は、ステンレス系の金属板である(段落【0027】)。 エ 加えて、甲第2号証には、上記アの燃料電池の製造方法として、「電池形成領域に貫通孔を有し、前記電池形成領域の外周に凹部を有する支持体を形成する工程と、 前記電池形成領域上に、前記支持体側から順に積層された第1電極膜、電解質膜、及び第2電極膜を含む電池部を、前記電池部の外周端が前記凹部に沿うように形成する工程と、 前記支持体上に、前記電池部を囲むように封止部を設ける工程と、 を備えることを特徴とする燃料電池の製造方法」も記載されている(請求項9)。 オ そうすると、甲第2号証には、以下の2つの発明(以下、「甲2発明1」、「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲2発明1> ステンレス系の金属板である支持体と、 前記支持体上に形成され、前記支持体側から順に積層されたアノード電極膜、電解質膜、及びカソード電極膜を含む電池部と、 前記支持体上に前記電池部を囲むように設けられたガスケットと、を備え、 前記支持体は、前記電池部が形成された領域にガス通過用の貫通孔が形成され、前記電池部の外周端に沿って凹部が形成されている固体酸化物型燃料電池。 <甲2発明2> 甲2発明1の固体酸化物型燃料電池の製造方法であって、 電池形成領域に貫通孔を有し、前記電池形成領域の外周に凹部を有するステンレス系の金属板である支持体を形成する工程と、 前記電池形成領域上に、前記支持体側から順に積層されたアノード電極膜、電解質膜、及びカソード電極膜を含む電池部を、前記電池部の外周端が前記凹部に沿うように形成する工程と、 前記支持体上に、前記電池部を囲むようにガスケットを設ける工程と、 を備える固体酸化物型燃料電池の製造方法。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明1との対比・判断 (ア)対比 a 甲2発明1の「ステンレス系の金属板である支持体」、「電解質」、「ガスケット」及び「固体酸化物型燃料電池」は、それぞれ、本件発明1の「金属基材」、「電解質」、「ガスケット」及び「固体酸化物型燃料電池」に相当する。 b 甲第2号証には、甲2発明1の電解質膜をスクリーン印刷により成膜することが記載されているから(段落【0030】)、電解質膜は層状であるといえる。 c また、甲2発明1の固体酸化物型燃料電池には、流体であるアノードガス及びカソードガスが供給されている(段落【0022】)。 d そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、以下の一致点2-1において一致するとともに、以下の相違点2-1~相違点2-3において相違する。 <一致点2-1> 「金属基材と、 電解質層と、 少なくとも1つのガスケットとを含む、 金属で支持された固体酸化物型燃料電池であって、 流体が、前記金属で支持された固体酸化物型燃料電池に及び/又は前記燃料電池から供給される燃料電池。」である点。 <相違点2-1> 本件発明1では、「電解質層」が「金属基材に隣接する」のに対し、甲2発明1では、「電解質膜」が「支持体に隣接する」ことが特定されていない点。 <相違点2-2> 本件発明1では、流体が「ガスケットを通して」供給されるのに対し、甲2発明1では、流体が「ガスケットを通して」供給されることが特定されていない点。 <相違点2-3> 本件発明1では、「前記電解質層は、前記金属基材の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し」、「電解質層の少なくとも一部は、基材とガスケットとの間に配置されている」のに対し、甲2発明1では、「電解質」が「支持体」の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し、電解質膜の少なくとも一部は、支持体とガスケットとの間に配置されているのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点2-1について (a)甲第2号証の図4をみると、支持体、アノード電極膜及び電解質膜の積層方向に垂直な断面の形状は同一であるから、電解質膜と支持体とは隣り合っておらず、接してもいないことは明らかであるから、相違点2-1は実質的な相違点である。 (b)そして、甲第2号証には、電解質膜と支持体とを接触させることについて何ら記載も示唆もされていないから、甲2発明1において、電解質膜を支持体に隣接するようにすることが動機付けられるとはいえない。 (c)他方、甲第2号証の図5(a)には、「ガスケット42の内壁面が凹部16上に位置し、凹部16の大部分に電池部20(当審注:「20a」の誤記と認める。)が充填されている」こと、「電池部20の外周端はガスケット42と重複し、凹部16は当該重複部分に形成されている」こと、「本構成によれば、電池部20をガスケット42の内壁のぎりぎりの位置まで形成することができるため、電池形成領域14を大きくすることができる」ことが記載されている(段落【0037】)。 (d)ここで、「電池部20aには、アノード電極膜22及び電解質膜24のうち電池形成領域14からはみ出した部分が含まれ、カソード電極膜26は電池部20aに含まれない」(段落【0034】)との記載から、電池部20aにアノード電極膜22のうち電池形成領域14からはみ出した部分のみが含まれ、電解質膜24が含まれないことがあり得るから、支持体と電解質膜のはみ出した部分が隣接するかどうかは不明である。 (e)そして、甲第2号証の図5(c)には、電解質膜が電池形成領域からはみ出さない態様が記載されているから、甲2発明1において、あえて、電解質膜を凹部16に充填させ、電解質膜を支持体に隣接するようにすることが動機付けられるとはいえない。 b 相違点2-2について 甲第2号証の図4をみると、ガスケットは燃料電池の側方に位置し、「カソードガスは、多孔質の集電体30を透過して電池部20のカソード電極膜26に到達する」(段落【0022】)から、甲2発明1において、カソードガスがガスケットを通して供給されているといえる。よって、相違点2-2は実質的な相違点であるとはいえない。 c 相違点2-3について (a)本件発明1において、電解質層が金属基材の腐食を防止する機序は、露出した金属基材の少なくとも一部を電解質層で覆うことであるが(本件明細書等の段落【0013】、【0016】)、上記a(a)のとおり、甲第2号証において、支持体はアノード電極膜に覆われているから、甲2発明1において、電解質膜は、露出した支持体の少なくとも一部を覆っておらず、電解質膜は保護被膜とはいえない。よって、相違点2-3は実質的な相違点である。 (b)上記a(b)と同様に、甲第2号証には、電解質膜と支持体とを接触させることが何ら記載されていないから、甲2発明1において、電解質膜で露出した支持体の少なくとも一部を覆うことで、電解質を保護被膜とすることが動機付けられるとはいえない。 (c)他方、上記a(c)、(d)と同様に、凹部16内に電池部20aをガスケット42の内壁のぎりぎりの位置まで形成することができるものの、電池部20aにアノード電極膜22のうち電池形成領域14からはみ出した部分のみが含まれ、電解質膜24が含まれないことがあり得るから、支持体と電解質膜のはみ出した部分が隣接するかどうかは不明である。 (d)そして、甲第2号証の図5(c)には、電解質膜が電池形成領域からはみ出さない態様が記載されているから、甲2発明1において、あえて、電解質膜を凹部16に充填させ、電解質膜を支持体に隣接するようにすることが動機付けられるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~7、11、13、14について 本件発明2~7、11、13、14は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明2~7、11、13、14についても同様に、甲第2号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~7、11、13、14についても同様に、甲第2号証に記載された発明、あるいは、甲第2号証に記載された発明と甲第3号証又は甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明15について ア 本件発明15と甲2発明2との対比・判断 (ア)対比 a 甲2発明2の「支持体」、「電解質」、「ガスケット」及び「固体酸化物型燃料電池」は、それぞれ、本件発明15の「金属基材」又は「基材」、「電解質」、「ガスケット」及び「燃料電池」に相当する。 したがって、甲2発明2の「金属板である支持体を形成する工程」は、本件発明15の「前記金属基材を提供する工程」に相当する。 b 甲第2号証には、甲2発明2の電解質膜をスクリーン印刷により成膜することが記載されているから(段落【0030】)、電解質膜は層状の被膜であるといえる。 したがって、甲2発明2の「前記支持体側から順に積層されたアノード電極膜、電解質膜、及びカソード電極膜を含む電池部を」「形成する工程」と、本件発明15の「前記基材に前記電解質層を含む保護性の非多孔質被膜を適用する工程」とは、「基材に前記電解質層を含む被膜を適用する工程」の点で共通する。 c 甲2発明2の「ガスケットを設ける工程」は、本件発明15の「ガスケットを適用する工程」に相当する。 d そうすると、本件発明15と甲2発明2とは、以下の一致点2-2において一致するとともに、以下の相違点2-4~相違点2-7において相違する。 <一致点2-2> 「燃料電池の製造方法であって、 i)前記金属基材を提供する工程と、 ii)前記基材に前記電解質層を含む被膜を適用する工程と、 iii)ガスケットを適用する工程と、 を含む方法。」である点。 <相違点2-4> 本件発明15では、その製造方法により製造されるのが、本件発明1~13であるのに対し、甲2発明2では、その製造方法により製造されるのが、甲2発明1の固体酸化物型燃料電池である点。 <相違点2-5> 本件発明15では、基材に適用する「電解質層を含む被膜」が、「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるのに対し、甲2発明2では、基材に適用する「電解質膜を含む被膜」が「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるか不明である点。 <相違点2-6> 本件発明15では、基材に隣接した燃料電池にガスケットを適用する工程を含むのに対し、甲2発明2では、支持体上に、電池部を囲むようにガスケットを設ける工程を含む点。 <相違点2-7> 本件発明15では、「電解質層を含む被膜」である「保護性の非多孔質層」は、「ガスケットに近接した領域の少なくとも一部に適用される」のに対し、甲2発明2では、「電解質層を含む被膜」である「電解質膜」が、そのように適用されるのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点2-4について (a)甲2発明2は、甲2発明1の製造方法である。 (b)そして、上記(2)で検討したとおり、本件発明1は、甲2発明1とはいえないから、本件発明15によって形成される本件発明1も甲2発明2によって製造される甲2発明1であるとはいえない。よって、相違点2-4は実質的な相違点である。。 (c)また、上記(2)で検討したとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、甲2発明2によって製造される甲2発明1を本件発明1とすることも、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得ることとはいえない。 (d)よって、相違点2-5~相違点2-7について検討するまでもなく、本件発明1の製造方法である本件発明15は、甲第2号証に記載された発明とはいえず、また、本件発明1の製造方法である本件発明15は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (e)本件発明2~13は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で検討したとおり、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明2~13についても同様に、甲第2号証に記載された発明とはいえない。 よって、本件発明2~13の製造方法である本件発明15も、甲第2号証に記載された発明とはいえない。 (f)また、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~13についても同様に、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、相違点2-5~相違点2-7について検討するまでもなく、本件発明2~13の製造方法である本件発明15も、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 b 以上のとおり、相違点2-5~相違点2-7について検討するまでもなく、本件発明15は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明15は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明15は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明15は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明16について 本件発明16は、本件発明15の記載を引用するものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明15が、甲第2号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明16についても同様に、甲第2号証に記載された発明とはいえない。また、本件発明15が、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明16についても同様に、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)申立理由2のまとめ 以上のとおり、申立理由2によっては、本件特許の請求項1~7、9~11、13~16に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(進歩性)について (1)甲第3号証に記載された発明 ア 甲第3号証には、 「基板に固体酸化物から成る電解質と燃料極と空気極が形成された固体酸化物形燃料電池用セルであって、 上記基板が緻密なガス不透過部分とガス透過性を備えた孔部分から成り、該孔部分を覆うようにエアロゾルデポジッション法で電解質層が形成され、当該電解質層上に燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層が形成され、 上記孔部分において、当該電解質層と他方の電極層の間に下部電極界面層が形成されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用セル」に関する発明が記載されている(請求項1)。 イ また、甲第3号証には、上記アの発明に関し、基板がフェライト系ステンレス鋼からなること(段落【0042】)、上記アの固体酸化物形燃料電池用セルに、ガスマニホールド部を取り付けたり、セパレータと交互に積層したりして、積層密度の高いスタックを提供すること(段落【0022】)も記載されている。 ウ さらに、甲第3号証には、 「請求項1~9のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用セルを製造する方法であって、 基板に孔部分を形成する工程と、下部電極界面層を形成する工程と、エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成する工程と、燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層を形成する工程と、他方の電極層を形成する工程を含むことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法」も記載されている(請求項10)。なお、この製造方法は甲第3号証の図4と段落【0038】~【0040】で説明されている。 エ そして、上記イのスタックのうち、セパレータで挟まれる固体酸化物形燃料電池用セルを一単位と捉えると、甲第3号証には、以下の2つの発明(以下、「甲3発明1」、「甲3発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲3発明1> フェライト系ステンレス鋼からなる基板に固体酸化物から成る電解質と燃料極と空気極が形成された固体酸化物形燃料電池用セルであって、 上記基板が緻密なガス不透過部分とガス透過性を備えた孔部分から成り、該孔部分を覆うようにエアロゾルデポジッション法で電解質層が形成され、当該電解質層上に燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層が形成され、 上記孔部分において、当該電解質層と他方の電極層の間に下部電極界面層が形成されている固体酸化物形燃料電池用セルと、 ガスマニホールド部と、 前記固体酸化物形燃料電池用セルの両面側に積層されたセパレータ とを含む固体酸化物形燃料電池。 <甲3発明2> 甲3発明1の固体酸化物形燃料電池を製造する方法であって、 フェライト系ステンレス鋼からなる基板に孔部分を形成する工程と、下部電極界面層を形成する工程と、エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成する工程と、燃料極及び空気極のいずれか一方の電極層を形成する工程と、他方の電極層を形成する工程を含む固体酸化物形燃料電池用セルを製造する工程と、 前記固体酸化物形燃料電池用セルの両面側にセパレータを積層する工程と、ガスマニホールド部を取り付ける工程を含む固体酸化物形燃料電池の製造方法。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲3発明1との対比・判断 (ア)対比 a 甲3発明1の「フェライト系ステンレス鋼からなる基板」、「電解質層」及び「固体酸化物形燃料電池」は、それぞれ、本件発明1の「金属基材」、「電解質層」及び「固体酸化物型燃料電池」に相当する。 b 甲第3号証の図1から、甲3発明1の電解質層がフェライト系ステンレス鋼からなる基板と隣接していることが見て取れる。 c また、甲3発明1の固体酸化物形燃料電池に、流体である空気及び/又は燃料が供給されることは明らかである。 d そうすると、本件発明1と甲3発明1とは、以下の一致点3-1において一致するとともに、以下の相違点3-1~相違点3-3において相違する。 <一致点3-1> 「金属基材と、 前記金属基材に隣接する電解質層とを含む、 金属で支持された固体酸化物型燃料電池であって、 流体が、前記金属で支持された固体酸化物型燃料電池に及び/又は前記燃料電池から供給される燃料電池。」である点。 <相違点3-1> 本件発明1では、「少なくとも1つのガスケットとを含む」のに対し、甲3発明1では、ガスケットを含むのか不明である点。 <相違点3-2> 本件発明1では、流体が「ガスケットを通して」供給されるのに対し、甲3発明1では、流体が「ガスケットを通して」供給されるか不明である点。 <相違点3-3> 本件発明1では、「前記電解質層は、前記金属基材の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し」、「電解質層の少なくとも一部は、基材とガスケットとの間に配置されている」のに対し、甲3発明1では、「電解質層」が「フェライト系ステンレス鋼からなる基板」の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し、電解質層の少なくとも一部は、基板とガスケットとの間に配置されているのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点3-1、相違点3-2について (a)基板に金属材料を用いた燃料電池にガスケットを適用することについて、甲第1号証の段落【0036】には、「上記密封材410、450としては、ガラス密封材を用いることができ、好ましくは、図4に示されているようにガスケット型密封材410、450を用いることができる。」と記載され、甲第2号証の段落【0037】には、「図5(a)では、ガスケット42の内壁面が凹部16上に位置し、凹部16の大部分に電池部20が充填されている。」と記載され、甲第4号証の第17ページ第10~11行(翻訳として特表2017-508254号公報の段落【0065】参照)には、「好適には、少なくとも1つの電気絶縁ガスケットは、各燃料電池スタック繰り返し層とその隣接する燃料電池スタック繰り返し層との間に配置される。」と記載され、甲第5号証の段落【0032】には、「鋼プレート10cをその領域12で盛上がり側部11aに気密に溶接し、各鋼プレートを次の電池の相互接続プレートからガスケット13により離隔する。」と記載され、甲第6号証の段落【0094】には、「燃料電池スタック10頂部の上方の流体の流れは、燃料電池スタック端板160の頂面とフード50との間に位置するとともに接触している気密性及び断熱性を有する蛭石ガスケット150により遮蔽されている」と記載されるとおり、周知技術である。 (b)そうすると、甲3発明1の燃料電池を製造する際に、上記周知技術に基づきフェライト系ステンレス鋼からなる基板の上にガスケットを適用することは、当業者が容易になし得ることである。 (c)また、ガスケットの適用に際し、ガスケットが、空気及び燃料を系内に保持するものである以上、流体がガスケットを通して供給されることは明らかである。 b 相違点3-3について (a)ガスケットを適用する際のガスケットが配置される位置について検討するにあたり、各部材の大きさについて確認すると、甲第3号証には、フェライト系ステンレス鋼からなる基板(円板状)の直径が40mm、下部電極界面層が1cm四方の大きさ、下部電極界面層上の電解質層が1.5cm四方の大きさであることが記載されている(実施例1、2)ことから、基板の上面(面積12.56cm2)には電解質層(面積2.25cm2)で覆われていない領域(面積10.31cm2)が存在する。 (b)ここで、ガスケットは空気及び燃料を系内に保持するものである以上、その位置は、電解質層上に限られず、電解質層の外周よりも外側の領域に配される場合も許容される。その場合、ガスケットが配置される基板上に電解質層に覆われていない部分が存在することになるから、その部分は、基板の腐食が防止されているとはいえない。 (c)そして、甲第3号証には、電解質層によって基板の腐食を防止することが記載されておらず、そのためにガスケットを電解質層上に配置することも記載されていないから、甲3発明1において、電解質層がフェライト系ステンレス鋼からなる基板の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し、電解質層の少なくとも一部は、基板とガスケットとの間に配置されることが動機付けられるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~7、9~11、13、14について 本件発明2~7、9~11、13、14は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~7、9~11、13、14についても同様に、甲第3号証に記載された発明と周知技術、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項と周知技術、あるいは、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証、甲第2号証又は甲第4号証に記載された事項と周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明15について ア 本件発明15と甲3発明2との対比・判断 (ア)対比 a 甲3発明2の「フェライト系ステンレス鋼からなる基板」、「電解質層」及び「固体酸化物形燃料電池」は、それぞれ、本件発明15の「金属基材」又は「基材」、「電解質層」及び「固体酸化物型燃料電池」に相当する。 したがって、甲3発明2の「フェライト系ステンレス鋼からなる基板に孔部分を形成する工程」は、本件発明15の「金属基材を提供する工程」に相当する。 また、甲3発明2の「エアロゾルデポジッション法により電解質層を形成する工程」と、本件発明15の「前記基材に前記電解質層を含む保護性の非多孔質被膜を適用する工程」とは、「基材に前記電解質層を含む被膜を適用する工程」の点で共通する。 b そうすると、本件発明15と甲3発明2とは、以下の一致点3-2において一致するとともに、以下の相違点3-4~相違点3-7において相違する。 <一致点3-2> 「燃料電池の製造方法であって、 i)前記金属基材を提供する工程と、 ii)前記基材に前記電解質層を含む被膜を適用する工程と、 を含む方法。」である点。 <相違点3-4> 本件発明15では、その製造方法により製造されるのが、本件発明1~13であるのに対し、甲3発明2では、その製造方法により製造されるのが、甲3発明1の固体酸化物形燃料電池である点。 <相違点3-5> 本件発明15では、基材に適用する「電解質層を含む被膜」が、「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるのに対し、甲3発明2では、基材に適用する「電解質層を含む被膜」が「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるか不明である点。 <相違点3-6> 本件発明15では、基材に隣接した燃料電池にガスケットを適用する工程を含むのに対し、甲3発明2では、そのような工程を含むのか不明である点。 <相違点3-7> 本件発明15では、電解質層を含む保護性の非多孔質層は、ガスケットに近接した領域の少なくとも一部に適用されるのに対し、甲3発明2では、電解質膜が、そのように適用されるのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点3-5について 事案に鑑み、相違点3-5から検討すると、上記(2)、(3)で相違点3-3について検討したとおり、本件発明1~13は、電解質膜が基材の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供する点について、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、「基材に前記電解質層を含む保護性の非多孔質被膜を適用する工程」との発明特定事項を有する本件発明15も同様に、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 b よって、相違点3-4、相違点3-6、相違点3-7について検討するまでもなく、本件発明15は、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明15は、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明16について 本件発明16は、本件発明15の記載を引用するものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明15が、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明16についても同様に、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)申立理由3のまとめ 以上のとおり、申立理由3によっては、本件特許の請求項1~7、9~11、13~16に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4(進歩性)について (1)甲第4号証に記載された発明 ア 甲第4号証には、 「(i)ベースプレートと、 (ii)前記ベースプレート上に載置された少なくとも1つの中温固体酸化物燃料電池スタックと、 (iii)エンドプレートと、 (iv)前記ベースプレートと前記エンドプレートとの間の前記少なくとも1つの燃料電池スタック上に圧縮力を加えるように構成されたクランプ手段と、 を備える中温固体酸化物燃料電池スタックアセンブリであって、 各燃料電池スタックは第1および第2端部を有し、各燃料電池スタックは前記ベースプレートと前記エンドプレートとの間に載置されて構成され、少なくとも1つの電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層ならびに (a)前記ベースプレートと前記少なくとも1つの電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層との間に配置された少なくとも1つの電気化学的に不活性な燃料電池スタック繰り返し層、および (b)前記エンドプレートと前記少なくとも1つの電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層との間に配置された少なくとも1つの電気化学的に不活性な燃料電池スタック繰り返し層 の少なくとも1つを備え、 各電気化学的に活性な燃料電池スタック繰り返し層は、金属基板、前記金属基板上に載置されたアノード、電解質およびカソード層、ならびに金属インターコネクトプレート、前記金属基板と前記金属インターコネクトプレートとの間に位置する金属スペーサーを備え、酸化剤導入口から酸化剤排出口までの酸化剤流路、および燃料導入口から燃料排出口までの燃料流路を画定し、 各電気化学的に不活性な燃料電池スタック繰り返し層は、電気化学的機能を行うことができないように構成され、金属基板および金属インターコネクトプレート、前記金属基板と前記金属インターコネクトプレートとの間に位置する金属スペーサーを備え、酸化剤導入口から酸化剤排出口までの酸化剤流路、および燃料導入口から燃料排出口までの燃料流路の少なくとも1つを画定する、中温固体酸化物燃料電池スタックアセンブリ」に関する発明が記載されている(請求項1)。 イ また、甲第4号証には、上記アの発明における、電気化学的に活性な燃料電池スタックの態様として、各燃料電池91は、金属基板110上に載置され、金属基板非多孔質領域110Bにより囲まれた金属基板多孔質領域110Aを覆う、アノード120、電解質130およびカソード140を備えること(第35ページ第6~9行)、各燃料電池スタック繰り返し層70、90は電気絶縁ガスシールガスケット430、440を備えること(第35ページ第12~13行)が記載されている。 ウ さらに、図12、13をみると、下向きコの字形の電解質130が金属基板110と隣接し、アノード120及びカソード140と層をなしていること、流体である空気が酸化剤導入口170から入り、ガスケット440を通って、酸化剤排出口180から出ることが見て取れる。 エ 加えて、上記イの電気化学的に活性な燃料電池スタックを製造するに際し、少なくとも、金属基板を提供する工程と、前記基材板に電解質を適用する工程と、燃料電池にガスケットを適用する工程とを含むことは明らかである。 オ そうすると、甲第4号証には、以下の2つの発明(以下、「甲4発明1」、「甲4発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲4発明1> 金属基板と、 前記金属基板に隣接する電解質層と、 少なくとも1つのガスケットとを含む、 金属で支持された固体酸化物燃料電池スタックであって、 前記ガスケットを通して、流体が、前記金属で支持された固体酸化物燃料電池スタックに及び/又は前記燃料電池スタックから供給される、 燃料電池スタック。 <甲4発明2> 甲4発明1の固体酸化物燃料電池スタックの製造方法であって、 i)金属基板を提供する工程と、 ii)前記基板に電解質層を適用する工程と、 iii)前記燃料電池にガスケットを適用する工程とを含む方法。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲4発明1との対比・判断 (ア)対比 a 甲4発明1の「金属基板」、「電解質層」、「ガスケット」及び「固体酸化物燃料電池スタック」は、それぞれ、本件発明1の「金属基材」、「電解質層」、「ガスケット」及び「固体酸化物型燃料電池」に相当する。 b そうすると、本件発明1と甲4発明1とは、以下の一致点4-1において一致するとともに、以下の相違点4-1において相違する。 <一致点4-1> 「金属基材と、 前記金属基材に隣接する電解質層と、 少なくとも1つのガスケットとを含む、 金属で支持された固体酸化物型燃料電池であって、 前記ガスケットを通して、流体が、前記金属で支持された固体酸化物型燃料電池に及び/又は前記燃料電池から供給される、 燃料電池。」である点。 <相違点4-1> 本件発明1では、「前記電解質層は、前記金属基材の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し」、「電解質層の少なくとも一部は、基材とガスケットとの間に配置されている」のに対し、甲4発明1では、「電解質層」が「金属基板」の腐食を防止する非多孔質の保護被膜を提供し、電解質層の少なくとも一部は、基板とガスケットとの間に配置されているのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点4-1について (a)甲第4号証の図12、13をみると、燃料電池91とガスケット440との間に酸化剤流路が形成されているから、甲4発明1において、ガスケットを金属基板110上に形成された電解質層140の上に移動すると酸化剤流路が形成されなくなってしまうため、ガスケットの移動には阻害要因があるといえる。 (b)また、甲4発明1において、金属基板とガスケットとは接触していないから、これらの間に隙間腐食が生じるとはいえず、そのため、燃料電池分野において、本件発明の課題が周知であるとしても、甲4発明1において、金属基材とガスケットとの間に電解質層を配置することが動機付けられるとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~7、9~11、13、14について 本件発明2~7、9~11、13、14は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~7、9~11、13、14についても同様に、甲第4号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明と甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項、あるいは、甲第4号証に記載された発明と甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明15について ア 本件発明15と甲4発明2との対比・判断 (ア)対比 a 甲4発明2の「金属基板」、「電解質層」、「ガスケット」及び「固体酸化物燃料電池スタック」は、それぞれ、本件発明1の「金属基材」又は「基材」、「電解質層」、「ガスケット」及び「固体酸化物型燃料電池」に相当する。 b そうすると、本件発明15と甲4発明2とは、以下の一致点4-2において一致するとともに、以下の相違点4-2~相違点4-5において相違する。 <一致点4-2> 「製造方法であって、 i)前記金属基材を提供する工程と、 ii)前記基材に前記電解質層を含む被膜を適用する工程と、 iii)前記燃料電池にガスケットを適用する工程と、 を含む方法。」である点。 <相違点4-2> 本件発明15では、その製造方法により製造されるのが、本件発明1~13であるのに対し、甲4発明2では、その製造方法により製造されるのが、甲4発明1の固体酸化物燃料電池スタックである点。 <相違点4-3> 本件発明15では、基材に適用する「電解質層を含む被膜」が、「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるのに対し、甲4発明2では、基材に適用する「電解質層を含む被膜」が「電解質層を含む保護性の非多孔質被膜」であるか不明である点。 <相違点4-4> 本件発明15では、ガスケットを基材に隣接した燃料電池に適用する工程を含むのに対し、甲4発明2では、そのような工程を含むのか不明である点。 <相違点4-5> 本件発明15では、電解質層を含む保護性の非多孔質層は、ガスケットに近接した領域の少なくとも一部に適用されるのに対し、甲4発明2では、電解質膜が、そのように適用されるのか不明である点。 (イ)判断 a 相違点4-2について 上記(2)、(3)で検討したとおり、本件発明1~13は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1~13の製造方法である本件発明15も、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 b よって、相違点4-3~相違点4-5について検討するまでもなく、本件発明15は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明15は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明16について 本件発明16は、本件発明15の記載を引用するものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明15が、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明16についても同様に、甲第4号証に記載された発明と甲第1号証又は甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)申立理由4のまとめ 以上のとおり、申立理由4によっては、本件特許の請求項1~7、9~11、13~16に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由5(サポート要件)について (1)ア 本件発明が解決しようとする課題は、金属基材表面の酸化、固定具又はガスケットに起因する金属基材の腐食の一部を克服するか又は少なくとも改善することであると認められる(段落【0004】~【0010】)。 イ 一方、上記金属基材表面の酸化のメカニズムに関し、段落【0066】には、「ガスケットから放出される蒸気は、基材表面上の局所的Cr揮発を引き起こし、Cr枯渇による保護Cr2O3表面スケールの劣化をもたらす。ある領域で、Crの枯渇が表面上のFe2O3結節の核形成を可能にするのに充分なほど大きくなると、腐食が開始される。」と記載され、この酸化(腐食)に対し、金属基材表面に電解質層を被覆すると、「同じSOFCスタックで試験したCo-CGO電解質被覆基材には腐食は生じなかった」ことが記載されている(段落【0070】~【0074】)。 そうすると、本件発明の課題は、金属基材を電解質層で被覆し、電解質層が金属基材の腐食を防止することで解決したものと認められる。 ウ それに対し、本件発明1は、「金属基材に隣接する電解質層」、すなわち、電解質層で被覆された金属基材と、「前記電解質層」が「前記金属基材の腐食を防止する非多孔質の保護被膜」であることを発明特定事項としているから、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 エ よって、本件発明1及び本件発明1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2~16は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書の第56ページ第3行~下から4行目において、本件発明1~12、14~16は、腐食促進剤を含まないガスケットが使用され、金属基材の腐食を改善する本件発明の課題が存在しない場合を含み、また、本件発明13は、本願明細書等の段落【0039】に腐食促進剤として記載の元素を含むガスケットを使用するものではあるが、金属基材を腐食する元素として本件明細書等の段落【0076】で確認されたFやSiを含むものに限られないから、本件発明1~16は発明の詳細な説明に記載したものではない旨の主張をしている。 イ しかしながら、上記(1)イで検討したとおり、金属基材表面の酸化はガスケットから放出される蒸気(水蒸気を意味するものと解される)によって生じるものであり、ガスケットの材料を問わないから、本件発明1~12、14~16が、本件発明の課題が存在しない場合を含むとはいえない。また、ガスケットに腐食促進剤が含まれていたとしても、本件発明において、電解質膜は非多孔質であり、当該電解質被膜で金属基材表面を被覆しているから、ガスケットの元素の種類を問わず、金属基材表面の酸化、固定具又はガスケットに起因する金属基材の腐食の一部を克服するか又は少なくとも改善していると認められる。 ウ よって、申立人の上記アの主張は採用できない。 エ また、申立人は、特許異議申立書の第56ページ下から3行目~第58ページ第16行において、本件発明1~8、13~16は、電解質層の材料及び厚さが規定されておらず、電解質の厚さが「2μm超」と特定される本件発明9も、本願明細書等の段落【0017】に、電解質の厚さを「2μm超」とすることで課題が解決できることが記載された、アノードとカソードとの間の電解質(又は電解質の一部)を形成するのに使用されるものと同じ電解質ではない場合に限られるものではなく、また、電解質の厚さが「5μm超」と特定される本件発明10も、電解質層の材料及び厚さが、本願明細書等に課題を解決できることが具体例(【0071】~【0076】)として示される、電解質がCo-CGOで、その厚さが12.5μmの場合に限られるものではなく、いずれも金属基材の腐食を改善する本件発明の課題が解決できると認識することはできないから、本件発明1~10、13~16は発明の詳細な説明に記載したものではない旨の主張をしている。 オ しかしながら、本件発明において、電解質膜は非多孔質であり、当該電解質被膜で金属基材表面を被覆しているから、電解質層の材料及び厚さを問わず、金属基材表面の酸化、固定具又はガスケットに起因する金属基材の腐食の一部を克服するか又は少なくとも改善していると認められる。 カ よって、申立人の上記エの主張は採用できない。 (3)申立理由5のまとめ 以上のとおり、申立理由5によっては、本件特許の請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。 6 取消理由(サポート要件)について (1)令和 4年 7月29日付けで通知した取消理由について ア 本件明細書等の段落【0005】には、「耐食性材料(ステンレス鋼など)であっても、これらの激しい作動条件下では劣化し易い。特に表面酸化が起きることがあり」と記載され、また、段落【0015】には、「この種の腐食は、ステンレス鋼のような従来の耐腐食性材料でさえも起きる。」とあり、段落【0016】に金属基材を電解質層で覆い「基材の腐食を大幅に軽減することができることを認識した。」と記載されているから、「金属基材」が「ステンレス鋼」のような耐食性材料に限られない材料であればなおさらのこと腐食の問題が生じることは明らかであるから、本件発明1~16の「金属基材」は、本件発明の課題が生じると認識し得る材料範囲を超えた「金属基材」とはいえない。 イ よって、本件発明1~16は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 ウ 以上のとおり、取消理由によっては、本件特許の請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。 第7 まとめ 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700428

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