特許異議申立
2022-700427
液体包装用積層体
- 審判番号
- 2022-700427
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-081964外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6967871
- 請求日
- 2022年05月16日
- 審決日
- 2023年06月28日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社プライムポリマー
- 【権利者代理人】宮崎 昭夫
- 【権利者代理人】緒方 雅昭
- 【異議申立人】日本ポリエチレン 株式会社
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6967871号発明「液体包装用積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6967871号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6967871号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6967871号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成29年4月18日に出願され、令和3年10月28日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月17日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 5月16日 :特許異議申立人日本ポリエチレン株式会社(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
同年 7月29日付け:取消理由通知書
同年 9月30日 :特許権者による意見書の提出
同年11月 4日 :申立人による上申書の提出
令和5年 1月31日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
同年 5月11日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
本件訂正前の請求項1に記載された「1~50g/10分」を、「9~50g/10分」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
本件訂正は、本件訂正前の請求項1における「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)」の「190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート」の数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件訂正は、本件特許の明細書の【0058】【表2】の実施例1の「MFR」の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、本件訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~5を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~5の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
下記のエチレン・α-オレフィン共重合体(X)を含む中間層(B)とシーラント層(C)とが少なくとも一部で接触していることを特徴とする積層体:
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x1)~(x3)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が9~50g/10分であり、
(x2)密度が900~925kg/m3であり、
(x3)下記条件でDSC測定による結晶融点(Tm)の吸熱ピークを含む融解熱量曲線から求められる、120℃以上の融解熱量が10J/g以上である。
(測定条件)
測定環境 :窒素ガス雰囲気
サンプル量 :5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃成形、厚み400μm)
サンプルパン:底が平面のアルミ製サンプルパン
第1step:0℃より10℃/minで200℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step:10℃/minで0℃まで降温する。
第3step:10℃/minで200℃まで昇温する。
上記測定条件で測定を行った際の、第3stepにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm)と定義し、吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm)と定義する。前記融解熱量は、それぞれの融解熱量曲線における135℃から160℃の領域にてベースラインを引き、融解熱量曲線からそのベースラインの値を引いて残りの面積を融解熱量とする。
【請求項2】
前記中間層(B)に、さらに、基材層(A)が少なくとも一部で接触しており、
前記シーラント層(C)が、下記要件(y1)~(y2)を満たす、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(Y)を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体:
(y1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が1~50g/10分であり、
(y2)密度が880~920kg/m3である。
【請求項3】
前記基材層(A)が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂またはそれらの延伸物、金属箔、無機酸化物蒸着フィルム、紙、及び不織布から選ばれる少なくとも1種を基材として含むことを特徴とする請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材層(A)が、その少なくとも一部に、ポリウレタン、イソシアネート化合物、ポリエステルまたはポリオールとイソシアネート化合物との混合物および反応生成物から選ばれる1種以上の接着剤を基材に積層して含有していることを特徴とする、請求項2又は3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の積層体を包装材料として用いた液体包装袋。」
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和5年1月31日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(新規性)
請求項1~5に係る発明は、下記甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。
取消理由2(進歩性)
請求項1~5に係る発明は、下記甲3に記載された発明及び下記甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。
取消理由3(実施可能要件)
発明の詳細な説明において、(x1)~(x3)の特性を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(X)とは、「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)」のみで上記特性を有するものであるのか、「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)」を含む混合物で上記特性を有するのか明らかでないため、当業者が請求項1~5に係る発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解できない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載が、請求項1~5に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に適合しないため、請求項1~5に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。
<引用文献等一覧>
以下、甲第1号証から甲第7号証を、それぞれ甲1~甲7という。
甲1:特開2001-187436号公報
甲2:特開平8-41254号公報
甲3:特開2016-190450号公報
甲4:本件特許出願に対する令和3年3月5日付け意見書、株式会社プライムポリマー、令和3年3月5日
甲5:株式会社プライムポリマー,エボリュー○R(当審注:○内にR),[online],株式会社プライムポリマーのホームページ,[令和4年5月12日検索],インターネット<URL:http://www.primepolymer.co.jp/product/pe/evolue.html>
甲6:エボリューSP2090CのDSCチャート、日本ポリエチレン株式会社、令和3年9月1日
甲7:甲3の実施例2を追試した実験報告書、日本ポリエチレン株式会社、令和2年10月5日
2 当審の判断
(1)取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)について
ア 引用文献の記載、及び引用発明
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
シーラント層(A)、中間層(B)及び基材層(C)の少なくとも3層を有する積層体からなる包装用フィルムであって、シーラント層(A)及び中間層(B)が、それぞれ下記の要件を満たす樹脂組成物からなり、押出ラミネーション法または共押出ラミネーション法により積層されることを特徴とする包装用フィルム。
シーラント層(A):下記の要件[1]~[3]を同時に満たすエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を含む。
[1]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1~30g/10分の範囲である。
[2]密度が0.900~0.930g/cm3の範囲である。
[3]オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)~(iii)を満たす。
(i)65℃以下と65℃超にそれぞれピークを少なくとも1つ有する。
(ii)溶出温度が65℃以下の溶出物(S1)の割合が20~50重量%である。
(iii)溶出温度が65℃超の溶出物(S2)の割合が50~80重量%である。
中間層(B):下記の要件[4]~[6]を同時に満たすエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を含む。
[4]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1~30g/10分の範囲である。
[5]密度が0.910~0.940g/cm3の範囲である。
[6]オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)~(iii)を満たす。
(i)85℃以下と85℃超にそれぞれピークを少なくとも1つ有する。
(ii)溶出温度が85℃以下の溶出物(M1)の割合が55~90重量%である。
(iii)溶出温度が85℃超の溶出物(M2)の割合が10~45重量%である。」
「【0029】
1.エチレン・α-オレフィン共重合体
シーラント層(A)及び中間層(B)に含有されるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、主要成分として、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含む。コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、炭素数3~20、好ましくは炭素数4~12、より好ましくは炭素数4~8のα-オレフィンである。α-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等が挙げられる。エチレン・α-オレフィン共重合体としては、具体例には、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。」
「【0047】
(2)密度
シーラント層(A)を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、密度が0.900~0.930g/cm3であり、好ましくは0.905~0.920g/cm3である。密度が上記範囲より高いと低温ヒートシール性に劣る。密度が上記範囲より低いと高温でシールした際に発泡しやすいので好ましくない。なお、密度は、JIS-K6922-2:1997付属書(23℃)に準拠して測定される値である。」
「【0068】
4.包装用フィルム
本実施形態の包装用フィルムは、シーラント層(A)、中間層(B)及び基材層(C)の少なくとも3層をこの順に有する積層体からなり、シーラント層(A)及び中間層(B)が、押出ラミネート法または共押出ラミネート法により、基材層(C)上に積層される。
【0069】
基材層(C)としては、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、高分子重合体などのフィルムが挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチルペンテン-1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等のフィルムを挙げることができる。基材層(C)として用いるフィルムは、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。また、該フィルムは、基材の種類によっては延伸加工を行ったものでもよい。延伸加工を行ったフィルムとしては、例えば、一軸、又は二軸延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエチエンテレフタレートフィルム、延伸ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。さらに、上記フィルム上にポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどをコーティングしたものや、アルミ、アルミナやシリカ、又はアルミナ及びシリカの混合物を蒸着したものを基材層C)として用いてもよい。液体や粘体を含む内容物の包装用フィルムの場合、基材層(C)は、二軸延伸ナイロンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、又はそれら基材上にシリカやアルミナを蒸着したものを用いることができる。」
「【0072】
包装用フィルムを構成する積層体は、積層体全体の厚み、各層の厚みや各層の厚み比については特に制限はなく、内容物や用途等に応じて適宜選択することができる。積層体全体の厚みは、例えば、40~120μm、基材層の厚みは10~40μm、シーラント層の厚みは10~40μm程度である。中間層を設ける場合は、該中間層の厚みは20~40μm程度とすることができる。また、積層の際は、基材表面の接着性をよくするために、予め基材層上にコロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理を行うことができる。さらに、接着性増強等のために、予め基材上にアンカーコート剤を塗布してから積層することができる。アンカーコート剤としては、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系等のものが挙げられる。
【0073】
本実施形態の包装用フィルムは、種々の包装材、例えば食品包装材、医療用包装材、エンジンオイルなどの工業材料包装材等として用いることができる。中でも、液体、繊維、粉体等の固形状の不溶物を含む液体、粘体等の流体を内容物として収容するための包装材として好適に用いられる。また、耐熱性に優れるため、内容物温度が少なくとも95℃以下での高速充填が可能であり、液体を含む内容物を高温(例えば、90℃以上)で充填するホットパック用の包装材として好適に用いられる。」
「【0082】
【表1】
[図:0001401622000001.jpg]
」
「【0083】
[実施例1]
[シーラント層]
エチレン・α-オレフィン共重合体としてP1:38重量%およびP4:40重量%、高圧法低密度ポリエチレンとしてP9:22重量%を用いた。上記樹脂100重量部と脂肪族アミド系スリップ剤0.06重量部をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、エチレン・α-オレフィン共重合体組成物(A1)を得た。図1(A1)に示されるように、TREF曲線は、P1に基づく約57℃のピークと、P4、P9に基づく約74℃のピークが観察された。
[中間層]
エチレン・α-オレフィン共重合体としてP5:65重量%およびP6:15重量%、高圧法低密度ポリエチレンとしてP9:20重量%を用いた。上記樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、エチレン・α-オレフィン共重合体組成物(B1)を得た。図2(B1)に示されるように、TREF曲線は、P5、P6、P9に基づく約73℃のピークと、P5、P6に基づく約88℃のピークが観察された。
[評価用フィルムの作製]
押出ラミネート装置を用い、幅500mm、厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(東洋紡社製ハーデンフィルムN1102)を基材層として、その上に、イソシアネート系アンカーコート剤(日本曹達製チタボンドT120溶液)をボウズロールにて塗工しながら、またラミネート部にてオゾン吹きつけを行いながら、中間層材料のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を引き取り速度100m/分、被覆厚み25μmで溶融押出しラミネート加工を行い、中間層を積層した。押出ラミネート装置は、口径90mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が300℃になるように設定し、冷却ロール表面温度25℃、ダイス幅560mm、ダイリップ開度0.7mmで引き取り加工速度が100m/分の場合に被覆厚みが25μmになるように押出量を調整した。
さらにこの中間層の上に、同じ押出ラミネート装置を用い、シーラント層材料のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を押出樹脂温度290℃、引き取り速度100m/分、被覆厚み25μmで溶融押出しラミネート加工を行い、シーラント層を積層した。
加工後の積層フィルムを40℃のオーブン内にて48時間のエージングを行った後、幅150mmにスリットすることで評価用の包装用フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0084】
[実施例2]
下記の方法により得られたシーラント層材料及び中間層材料のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物(A2)、(B2)を用いた以外は、実施例1と同様に、評価用フィルムを作製した。フィルムの評価結果を表2に示す。
[シーラント層]
エチレン・α-オレフィン共重合体としてP2:38重量%およびP3:40重量%、高圧法低密度ポリエチレンとしてP9:22重量%を用いた。上記樹脂100重量部と脂肪族アミド系スリップ剤0.06重量部をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、エチレン・α-オレフィン共重合体組成物(A2)を得た。図1(A2)に示されるように、TREF曲線はP2に基づく約55℃のピークと、P3、P9に基づく約76℃のピークが観察された。
[中間層]
エチレン・α-オレフィン共重合体としてP6:50重量%およびP7:30重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、P9:20重量%を用いた。上記樹脂をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、エチレン・α-オレフィン共重合体組成物(B2)を得た。図2(B2)に示されるように、TREF曲線はP6に基づく約67℃のピークと、P9に基づく約76℃のピークと、P6、P7に基づく約94℃のピークが観察された。」
「【0090】
[評価結果]
実施例1~3のフィルムは、充填適性、ホットパック充填時の耐熱性や外観が良好であり、低温から高温まで幅広い範囲で高速液体充填が可能であった。中でも、実施例2のフィルムは、実施例1と比較して、中間層の溶融温度分布が広いため、ホットパック充填で幅広い充填温度が得られた。また、実施例3のフィルムは、中間層に高融点成分の割合が多いHDPEを含み、実施例1と比較して腰感に優れる。
一方、比較例1は、中間層の溶融温度分布が狭いため、実施例と比較して、ホットパック充填適性などに劣る。また、比較例2は、シーラント層の溶融温度分布において、溶出温度が65℃以下の溶出物(S1)の割合が、65℃超の溶出物(S2)の割合よりも多く、中間層の溶融温度分布が狭いため、実施例と比較して、常温充填適性及びホットパック充填適性などに劣る。また、比較例3は、シーラント層の溶融温度分布において、溶出温度が65℃以下の溶出物(S1)の割合が、65℃超の溶出物(S2)の割合よりも多く、中間層の溶融温度分布が広いため、ホットパック充填で幅広い充填温度が得られたが、シーラントでの融着が確認され、耐熱性に劣る。」
以上の記載によれば、甲3には、次の「甲3発明」が記載されているといえる。
「包装用フィルムは、シーラント層(A)、中間層(B)及び基材層(C)の少なくとも3層をこの順に有する積層体からなり、
中間層(B)に含有されるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、主要成分として、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、炭素数3~20のα-オレフィンであり、
中間層(B)が下記の要件を満たす樹脂組成物からなる包装用フィルム:
中間層(B):下記の要件[4]~[6]を同時に満たすエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を含む。
[4]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1~30g/10分の範囲である。
[5]密度が0.910~0.940g/cm3の範囲である。
[6]オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)~(iii)を満たす。
(i)85℃以下と85℃超にそれぞれピークを少なくとも1つ有する。
(ii)溶出温度が85℃以下の溶出物(M1)の割合が55~90重量%である。
(iii)溶出温度が85℃超の溶出物(M2)の割合が10~45重量%である。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
a 甲3発明の「エチレン・α-オレフィン共重合体組成物」を含有する「中間層(B)」は、本件発明1の「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)を含む中間層(B)」に相当する。
b 甲3発明の「シーラント層(A)」は、本件発明1の「シーラント層(C)」に相当する。
c 甲3発明の「シーラント層(A)、中間層(B)及び基材層(C)の少なくとも3層をこの順に有する積層体からな」る「包装用フィルム」は、本件発明1の「中間層(B)とシーラント層(C)とが少なくとも一部で接触している」「積層体」に相当する。
d 甲3発明の「中間層(B)に含有されるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、主要成分として、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、炭素数3~20のα-オレフィンであり、
中間層(B)が下記の要件を満たす樹脂組成物からなる包装用フィルム:
中間層(B):下記の要件[4]~[6]を同時に満たすエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を含む。
[4]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1~30g/10分の範囲である。
[5]密度が0.910~0.940g/cm3の範囲である。
[6]オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)~(iii)を満たす。
(i)85℃以下と85℃超にそれぞれピークを少なくとも1つ有する。
(ii)溶出温度が85℃以下の溶出物(M1)の割合が55~90重量%である。
(iii)溶出温度が85℃超の溶出物(M2)の割合が10~45重量%である。」と、
本件発明1の「前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x1)~(x3)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が9~50g/10分であり、
(x2)密度が900~925kg/m3であり、
(x3)下記条件でDSC測定による結晶融点(Tm)の吸熱ピークを含む融解熱量曲線から求められる、120℃以上の融解熱量が10J/g以上である。
(測定条件)
測定環境 :窒素ガス雰囲気
サンプル量 :5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃成形、厚み400μm)
サンプルパン:底が平面のアルミ製サンプルパン
第1step:0℃より10℃/minで200℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step:10℃/minで0℃まで降温する。
第3step:10℃/minで200℃まで昇温する。
上記測定条件で測定を行った際の、第3stepにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm)と定義し、吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm)と定義する。前記融解熱量は、それぞれの融解熱量曲線における135℃から160℃の領域にてベースラインを引き、融解熱量曲線からそのベースラインの値を引いて残りの面積を融解熱量とする。」とは、
「前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x2)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x2)密度が900~925kg/m3である」限りで一致する。
e そうすると、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点1】
「下記のエチレン・α-オレフィン共重合体(X)を含む中間層(B)とシーラント層(C)とが少なくとも一部で接触している積層体:
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x2)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x2)密度が900~925kg/m3である。」
【相違点1】
「前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x2)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x2)密度が900~925kg/m3である」ことに関して、
本件発明1では、「前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x1)~(x3)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が9~50g/10分であり、
(x2)密度が900~925kg/m3であり、
(x3)下記条件でDSC測定による結晶融点(Tm)の吸熱ピークを含む融解熱量曲線から求められる、120℃以上の融解熱量が10J/g以上である。
(測定条件)
測定環境 :窒素ガス雰囲気
サンプル量 :5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃成形、厚み400μm)
サンプルパン:底が平面のアルミ製サンプルパン
第1step:0℃より10℃/minで200℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step:10℃/minで0℃まで降温する。
第3step:10℃/minで200℃まで昇温する。
上記測定条件で測定を行った際の、第3stepにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm)と定義し、吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm)と定義する。前記融解熱量は、それぞれの融解熱量曲線における135℃から160℃の領域にてベースラインを引き、融解熱量曲線からそのベースラインの値を引いて残りの面積を融解熱量とする。」であるのに対して、
甲3発明では、「中間層(B)に含有されるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、主要成分として、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、炭素数3~20のα-オレフィンであり、
中間層(B)が下記の要件を満たす樹脂組成物からなる包装用フィルム:
中間層(B):下記の要件[4]~[6]を同時に満たすエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を含む。
[4]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1~30g/10分の範囲である。
[5]密度が0.910~0.940g/cm3の範囲である。
[6]オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)~(iii)を満たす。
(i)85℃以下と85℃超にそれぞれピークを少なくとも1つ有する。
(ii)溶出温度が85℃以下の溶出物(M1)の割合が55~90重量%である。
(iii)溶出温度が85℃超の溶出物(M2)の割合が10~45重量%である。」である点。
(イ)新規性についての判断
相違点1における特性(x3)について検討する。
甲3発明において特定される「中間層(B)に含有されるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物」について、その「120℃以上の融解熱量」がどの程度なのか、甲3や提出された他の証拠には記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1は実質的な相違点である。
(ウ)進歩性についての判断
甲3や提出された他の証拠には、相違点1に係る本件発明1の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、甲3発明においてそのような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(エ)申立人の主張について
申立人は、意見書において「甲3発明(特に実施例2)は、融点分布の広い樹脂(本件特許明細書[0010]段落で課題解決手段として記載)を利用しており、その融解熱量も120℃以上で10J/g以上になる蓋然性が高いものと考えられます。これを実証的に示したのが甲第7号証ですが、特許権者が追試によって示したデータも、これを支持する傾向を示しています。」(意見書4ページ末行~5ページ4行)と述べている。
しかしながら、甲3の実施例2における中間層(B)の「エチレン・α-オレフィン」のメルトフローレートは、「4g/10min」である。
そうすると、甲7の実験報告書により、甲3の実施例2の中間層(B)の「エチレン・α-オレフィン」が「120℃以上の融解熱量が10J/g以上」であったとしても、「120℃以上の融解熱量」を「10J/g以上」としたまま、「190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)」を「4g/10min」から「9~50g/10分」に変更することは甲3、甲7のいずれにも記載も示唆もされていない。
(オ)小括
よって、本件発明1は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものであるから、いずれも甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)取消理由3(実施可能要件)について
ア 発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0008】、【0009】)、当該課題を解決するための手段(【0010】、【0011】)、本件発明の効果(【0012】)、本件発明を実施するための形態(【0013】~【0045】)、本件発明の実施例(【0046】~【0059】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。
なお、本件発明において、「(x1)~(x3)の特性を有する」のは「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)」であることから、本件発明を実施するために、そのような特性を有する「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)」を用いればよいことは明らかである。
イ 小括
よって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議の申立ての理由について
取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった、特許異議申立理由の概要、及び当該理由に対する当審の判断は次のとおりである。
1 特許異議申立理由の概要(甲1を主引例とする新規性、進歩性)
請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。
また、請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。
2 当審の判断
(1)引用発明
甲1(【請求項1】、【請求項10】、【0006】、【0011】、【0013】~【0015】、【0031】~【0034】、【図3】)には、次の「甲1発明」が記載されているといえる。
「2種類のエチレン・α-オレフィン共重合体(a)および(b)がそれぞれ独立して互いに接するA層およびB層を形成し、A層がヒートシール面として利用可能になっている多層フィルム:
エチレン・α-オレフィン共重合体は、少なくとも(a)および(b)の2種類が用いられ、いずれもエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であり;
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、ASTM D-1238に準拠して190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート値MFRが0.5~20(g/10分)の範囲にあり、
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、その密度が0.903~0.940(g/cm3)であり、
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、その融点ピークが85~105℃の範囲および106~125℃の範囲に少なくとも1個ずつ存在しており、
DSC測定は、セイコー電子工業社製示差走査型熱量計DSC220型装置を用い、試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分の速度で180℃まで昇温させ、180℃で5分間保持し、その後10℃/分の速度で室温まで降温させ、再び10℃/分の速度で昇温する条件で行う。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「エチレン・α-オレフィン共重合体」「(b)」から形成された「B層」は、本件発明1の「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)を含む中間層(B)」に相当する。
(イ)甲1発明の「エチレン・α-オレフィン共重合体(a)」から形成され「ヒートシール面として利用可能になっている」「A層」は、本件発明1の「シーラント層(C)」に相当する。
(ウ)甲1発明の「A層およびB層」が「それぞれ独立して互いに接する」「多層フィルム」は、本件発明1の「中間層(B)とシーラント層(C)とが少なくとも一部で接触している」「積層体」に相当する。
(エ)甲1発明の「エチレン・α-オレフィン共重合体は、少なくとも(a)および(b)の2種類が用いられ、いずれもエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であり;
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、ASTM D-1238に準拠して190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート値MFRが0.5~20(g/10分)の範囲にあり、
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、その密度が0.903~0.940(g/cm3)であり、
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、その融点ピークが85~105℃の範囲および106~125℃の範囲に少なくとも1個ずつ存在しており、
DSC測定は、セイコー電子工業社製示差走査型熱量計DSC220型装置を用い、試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分の速度で180℃まで昇温させ、180℃で5分間保持し、その後10℃/分の速度で室温まで降温させ、再び10℃/分の速度で昇温する条件で行う。」と、
本件発明1の「前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x1)~(x3)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が9~50g/10分であり、
(x2)密度が900~925kg/m3であり、
(x3)下記条件でDSC測定による結晶融点(Tm)の吸熱ピークを含む融解熱量曲線から求められる、120℃以上の融解熱量が10J/g以上である。
(測定条件)
測定環境 :窒素ガス雰囲気
サンプル量 :5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃成形、厚み400μm)
サンプルパン:底が平面のアルミ製サンプルパン
第1step:0℃より10℃/minで200℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step:10℃/minで0℃まで降温する。
第3step:10℃/minで200℃まで昇温する。
上記測定条件で測定を行った際の、第3stepにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm)と定義し、吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm)と定義する。前記融解熱量は、それぞれの融解熱量曲線における135℃から160℃の領域にてベースラインを引き、融解熱量曲線からそのベースラインの値を引いて残りの面積を融解熱量とする。」とは、
「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x2)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x2)密度が900~925kg/m3である」限りで一致する。
(オ)そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点2】
「下記のエチレン・α-オレフィン共重合体(X)を含む中間層(B)とシーラント層(C)とが少なくとも一部で接触している積層体:
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x2)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x2)密度が900~925kg/m3である。」
【相違点2】
「エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x2)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x2)密度が900~925kg/m3である」ことに関して、
本件発明1では、「前記エチレン・α-オレフィン共重合体(X)は、下記(x1)~(x3)の特性を有するエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体;
(x1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が9~50g/10分であり、
(x2)密度が900~925kg/m3であり、
(x3)下記条件でDSC測定による結晶融点(Tm)の吸熱ピークを含む融解熱量曲線から求められる、120℃以上の融解熱量が10J/g以上である。
(測定条件)
測定環境 :窒素ガス雰囲気
サンプル量 :5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃成形、厚み400μm)
サンプルパン:底が平面のアルミ製サンプルパン
第1step:0℃より10℃/minで200℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step:10℃/minで0℃まで降温する。
第3step:10℃/minで200℃まで昇温する。
上記測定条件で測定を行った際の、第3stepにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm)と定義し、吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm)と定義する。前記融解熱量は、それぞれの融解熱量曲線における135℃から160℃の領域にてベースラインを引き、融解熱量曲線からそのベースラインの値を引いて残りの面積を融解熱量とする。」であるのに対して、
甲1発明では、「エチレン・α-オレフィン共重合体は、少なくとも(a)および(b)の2種類が用いられ、いずれもエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であり;
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、ASTM D-1238に準拠して190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート値MFRが0.5~20(g/10分)の範囲にあり、
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、その密度が0.903~0.940(g/cm3)であり、
エチレン・α-オレフィン共重合体(b)は、その融点ピークが85~105℃の範囲および106~125℃の範囲に少なくとも1個ずつ存在しており、
DSC測定は、セイコー電子工業社製示差走査型熱量計DSC220型装置を用い、試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分の速度で180℃まで昇温させ、180℃で5分間保持し、その後10℃/分の速度で室温まで降温させ、再び10℃/分の速度で昇温する条件で行う。」である点。
イ 新規性についての判断
相違点2における特性(x3)について検討する。
甲1発明における「B層」に用いられる「エチレン・α-オレフィン共重合体(b)」について、その「120℃以上の融解熱量」がどの程度なのか、甲1や提出された他の証拠には記載も示唆もされていない。
したがって、相違点2は実質的な相違点である。
ウ 進歩性についての判断
甲1や提出された他の証拠には、相違点2に係る本件発明1の構成とすることについて、記載も示唆もされておらず、甲1発明においてそのような構成とすることを当業者が容易に想到し得たことではない。
エ 小括
よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものであるから、いずれも甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700427