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特許異議申立

2023-701400

プロピレン系重合体組成物およびその発泡成形体

審判番号
2023-701400
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-017692
登録番号
7300839
請求日
2023年12月28日
審決日
2024年03月28日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社プライムポリマー
  • 【権利者代理人】弁理士法人エスエス国際特許事務所
  • 【異議申立人】藤江 桂子
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 大畑 通隆
分類
P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7300839号発明「プロピレン系重合体組成物およびその発泡成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7300839号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7300839の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成31年2月4日(優先日 平成30年2月9日)に出願した特願2019-17692であって、令和5年6月22日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年12月28日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)を行った。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。また、本件特許発明1~12をまとめて「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 下記プロピレン系重合体(A)を2~50質量%および下記プロピレン系重合体(B)を50~98質量%〔但し、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)の合計量を100質量%とする。〕含むことを特徴とするプロピレン系重合体組成物であって、プロピレン系重合体組成物が、当該プロピレン系重合体組成物のFE個数〔25mmΦのTダイ製膜機で製膜した厚さ50μmのフィルムを、FEカウンターを用いて測定されるFE個数を単位面積〔3000cm2〕当たりの個数に換算した値〕が100個以下であることを特徴とするプロピレン系重合体組成物。 プロピレン系重合体(A):135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%範囲にあり、135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲〔但し、プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%とする。〕にある。 プロピレン系重合体(B):230℃におけるメルトフローレートが1~30g/10分、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下である。 【請求項2】 プロピレン系重合体(A)が下記要件(i)および要件(ii)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物。 (i)230℃、2.16kg荷重で測定されるMFRが0.01~5g/10分の範囲にある。 (ii)230℃で測定される溶融張力(MT)が5~30gの範囲にある。 【請求項3】 プロピレン系重合体(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布曲線で囲まれる領域の全面積に占める分子量150万以上の高分子量領域の割合が7質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項4】 プロピレン系重合体(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布曲線が2つのピークを有し、高分子量側のピーク分子量MHと低分子量側のピーク分子量MLの比(MH/ML)が50以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項5】 プロピレン系重合体(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布曲線の低分子量側のピーク分子量MLが10万以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項6】 プロピレン系重合体(A)が、当該プロピレン系重合体(A)のフィッシュアイ(FE)個数〔25mmΦのTダイ製膜機で製膜した厚さ50μmのフィルムを、FEカウンターを用いて測定されるFE個数を単位面積〔3000cm2〕当たりの個数に換算した値〕が100個以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項7】 プロピレン系重合体組成物が、230℃、2.16kg荷重で測定されるMFRが1~20g/10分であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項8】 プロピレン系重合体組成物が、230℃で測定される溶融張力(MT)が0.1~3gであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項9】 プロピレン系重合体組成物が、角周波数が10rad/sのときの貯蔵弾性率G'(10)と角周波数が1rad/sのときの貯蔵弾性率G'(1)との比G'(10)/G'(1)と、角周波数が0.1rad/sのときの貯蔵弾性率G'(0.1)と角周波数が0.01rad/sのときの貯蔵弾性率G'(0.01)との比G'(0.1)/G'(0.01)との差、G'(10)/G'(1)-G'(0.1)/G'(0.01)が-1.5以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項10】 プロピレン系重合体組成物が、180℃、10s-1における歪硬化の傾きが0.085~0.6であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項11】 プロピレン系重合体組成物が、押出発泡成形用のプロピレン系重合体組成物である、請求項1~10のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物。 【請求項12】 請求項11に記載のプロピレン系重合体組成物を発泡させてなる発泡成形体。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由 1 特許異議申立理由の概要 令和5年12月28日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1-1(甲第1号証に基づく新規性欠如) 本件特許発明1、6ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由1-2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如) 本件特許発明1ないし12は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由2(実施可能要件違反) 本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由3(サポート要件違反) 本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 申立書に添付されて提出された証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:特開2003-89735号公報(以下、「甲1」という。) 第4 当審の判断 申立人がした申立ての理由によっては、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。 その理由は以下のとおりである。 1 申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由1-2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について (1)証拠等の記載等 ア 甲1の記載事項 甲1には、以下の記載がされている。なお、下線については当審において付与したものである。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】190℃におけるメルトテンション(MT)と230℃におけるメルトフローレート(MFR)が下記式(1)を満たすプロピレン重合体樹脂(A)1~99重量%、190℃におけるメルトテンション(MT)と230℃におけるメルトフローレート(MFR)が下記式(2)を満たすプロピレン重合体樹脂(B)0~98重量%、およびエチレン系樹脂(C)1~50重量%からなるポリプロピレン系樹脂組成物(但し、該(A)と該(B)と該(C)との合計を100重量%とする)からなるポリプロピレン系樹脂組成物。 logMT≧-0.9logMFR+0.8 (1) logMT<-0.9logMFR+0.8 (2) 【請求項2】プロピレン重合体樹脂(A)が、極限粘度が5dl/g以上の結晶性プロピレン重合体部分(a)を製造する工程および極限粘度が3dl/g未満の結晶性プロピレン重合体部分(b)を製造する工程を含む重合方法により得られ、樹脂全体に占める結晶性プロピレン重合体部分(a)の割合が0.05~25重量%であり、樹脂全体の極限粘度が3dl/g未満のプロピレン重合体樹脂である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 ・・・ 【請求項4】ポリプロピレン系樹脂組成物が、発泡中空成形用ポリプロピレン系樹脂組成物である請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】特開平11-181136号公報には高分子量エチレン重合体等を含有するポリプロピレン重合体組成物に化学発泡剤を添加して発泡中空成形した容器が開示されている。しかし、該公報に記載の容器は、発泡により密度が低下しているにもかかわらず、重く軽量性に劣っている。かかる状況下、本発明の目的は、発泡中空成形性に優れ、かつ軽量で剛性に優れる中空成形容器の製造に好適なポリプロピレン系樹脂組成物、および軽量で剛性に優れる中空成形容器を提供することにある。」 「【0008】本発明で用いられるプロピレン重合体樹脂(A)の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、特に制限はないが、好ましくは、0.1~30g/10分であり、さらに好ましくは0.3~20g/10分である。MFRが低すぎると、発泡倍率を上げにくくなる。また、MFRが高すぎると、ドローダウン性や発泡中空成形性が悪化するため好ましくない。」 「【0011】本発明で用いられるプロピレン重合体樹脂(A)として好ましくは、極限粘度が5dl/g以上の結晶性プロピレン重合体部分(a)を製造する工程および極限粘度が3dl/g未満の結晶性プロピレン重合体部分(b)を製造する工程を含む重合方法により得られ、樹脂全体に占める結晶性プロピレン重合体部分(a)の割合が0.05~25重量%であり、樹脂全体の極限粘度が3dl/g未満のプロピレン重合体樹脂(E)である。その具体的な製造方法として、第一段階で(a)を重合した後、引き続いて第二段階で(a)を重合したと同一の重合槽で(b)を重合する回分式重合法や、2槽以上の重合槽を直列に配置し、第一段階として(a)を重合後生成物を次の重合槽へ移送し、その重合槽で第二段階として(b)を重合する連続式重合法等が挙げられる。なお、連続式重合法の場合は、第一段階および第二段階それぞれの重合槽は1槽でも2槽以上でもよい。なお、極限粘度が5dl/g以上の結晶性プロピレン重合体と極限粘度が3dl/g未満の結晶性プロピレン重合体との単なる混合物では、溶融張力の改良効果が発現しないか不十分であり、ドローダウン性、発泡中空成形性に劣る。 【0012】前記結晶性ポリプロピレン重合体部分(a)の極限粘度は5dl/g以上であり、好ましくは6dl/g以上である。この範囲にあると本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は発泡中空成形性に優れるため好ましい。該(a)の極限粘度は高いほど好ましく特に上限に制限はないが、通常は15dl/g未満である。該(a)の極限粘度としてより好ましくは6~13dl/gであり、さらに好ましくは7~11dl/gである。 【0013】結晶性プロピレン重合体部分(a)のプロピレン重合体樹脂(E)に占める割合は0.05~25重量%であり、好ましくは0.3~20重量%である。この範囲内にあれば、発泡中空成形性および流動性に優れるため好ましい。 【0014】前記結晶性プロピレン重合体部分(b)の極限粘度は3dl/g未満であり、好ましくは2dl/g以下である。この範囲にあると本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は流動性や加工性に優れ、好ましい。また、該(b)の極限粘度の下限に制限はないが、通常は0.5dl/g以上である。該(b)の極限粘度としてより好ましくは0.8~2dl/gであり、さらに好ましくは1~1.8dl/gである。」 「【0026】本発明で用いられるプロピレン重合体樹脂(B)の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、特に制限はないが、好ましくは、0.1~30g/10分であり、さらに好ましくは0.3~20g/10分であり、特に好ましくは0.5~10g/10分である。MFRが低すぎると、発泡倍率を上げにくくなり軽量で剛性に優れる中空成形容器が得られにくい。また、MFRが高すぎると、ドローダウン性や発泡中空成形性が悪化するため好ましくない。 【0027】本発明で用いられるプロピレン重合体樹脂(B)としては、分子量分布(Mw/Mn)が3以上5未満のものが入手が容易であり、好ましく使用される。」 「【0047】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた評価方法は以下のとおりである。 【0048】(1)重合体の極限粘度 ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。なお、結晶性プロピレン重合体部分(b)の極限粘度は結晶性プロピレン重合体部分(a)および全体のプロピレン重合体樹脂(A)の極限粘度等より明細書中に記載の計算式を用いて求めた。 【0049】(2)メルトフローレート(MFR) プロピレン系樹脂は、JIS K7210の条件14(Condition Number 14)の方法に従って230℃で測定した。エチレン系樹脂はJIS K6760に従い190℃で測定した。 【0050】(3)メルトテンション(MT) 東洋精機社製メルトテンションテスターMT-501D3型を用いて、サンプル量5g、余熱温度190℃、余熱時間5分間、押出速度5.7mm/分で、長さ8mm、直径2mmのオリフィスからストランドを押し出し、該ストランドを直径50mmのローラーを用いて巻取速度100rpmで巻き取ったときの張力を、メルトテンション(MT)として測定した(単位=cN)。 【0051】(4)分子量分布 G.P.C.(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により、下記条件で測定した。なお分子量分布は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で評価した。 機種:150CV型(ミリポアウォーターズ社製) カラム:Shodex M/S 80 測定温度:145℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン サンプル濃度:5mg/8mL 【0052】(5)樹脂の密度 JIS K6760に従って測定した。 【0053】(6)発泡中空成形性 発泡中空成形容器の製造状態を目視で確認した。金型形状通りに腑形されたものを良好、ホットパリソンが破れ金型通りに腑形できなかった場合は不良とした。 【0054】(7)発泡中空成形品の密度 JIS K7112に従って水中置換法による測定方法を用いて発泡中空成形品の密度を求めた。測定に用いた試料は、得られた発泡中空成形品の高さ方向中央部を中心に高さ方向幅約3cm、横方向幅約2cmの大きさに切り取ったものである。 【0055】(8)圧縮強度 発泡中空成形品を温度23℃の恒温室内で24時間以上静置後、オリエンテック社製万能試験機RTA-1Aを用いて、発泡中空成形品を正立させた状態で、圧縮速度10mm/minで圧縮試験を行い、圧縮変位が5mmでの圧縮荷重を測定した。 【0056】[参考例1](プロピレン重合体樹脂(A)の製造) [1](固体触媒成分の合成) 攪拌機付きの200リットルSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80リットル、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モル、およびテトラエトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/リットルのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51リットルを、反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後室温でさらに1時間攪拌した後室温で固液分離し、トルエン70リットルでの洗浄を3回繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.6kg/リットルになるようにトルエンを加えた後、n-ブチルエーテル8.9モルと四塩化チタン274モルの混合液を加え、さらにフタル酸クロライドを20.8モル加えて110℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃でトルエンでの洗浄を2回行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/リットルに調整した後、フタル酸ジイソブチル3.13モル、n-ブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後同温度で固液分離した後、95℃でトルエン90リットルでの洗浄を2回行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/リットルに調整した後、n-ブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90リットルでの洗浄を3回行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/リットルに調整した後、n-ブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90リットルでの洗浄を3回行った後、さらにヘキサン90リットルでの洗浄を3回した後減圧乾燥して固体触媒成分11.0kgを得た。固体触媒成分はチタン原子1.9重量%、マグネシウム原子20重量%、フタル酸エステル8.6重量%、エトキシ基0.05重量%、ブトキシ基0.21重量%を含有し、微粉のない良好な粒子性状を有していた。 【0057】[2](固体触媒成分の予備活性化) 内容積3リットルのSUS製、攪拌機付きオートクレーブに十分に脱水、脱気処理したn-ヘキサン1.5リットル、トリエチルアルミニウム37.5ミリモル、t-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン3.75ミリモル、上記[1]で得られた固体触媒成分15gを添加し、槽内温度を5~15℃に保ちながらプロピレン15gを30分かけて連続的に供給して予備活性化を行った。 【0058】[3](結晶性プロピレン重合体部分(a)の重合) SUS製の内容積300リットルの重合槽において、重合温度60℃、重合圧力27kg/cm2Gを保持するように液状プロピレンを57kg/hで供給しながら、トリエチルアルミニウム1.3ミリモル/h、t-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン0.13ミリモル/hおよび予備活性化された固体触媒成分0.51g/hを連続的に供給し、水素の実質的非存在下でプロピレン重合を行い、2.0kg/hの重合体が得られた。この時の重合体生成量は触媒1g当たり3920gであり、その一部をサンプリングして分析した結果、極限粘度は7.7dl/gであった。得られた重合体はそのまま第二槽目に連続的に移送した。 【0059】[4](結晶性プロピレン重合体部分(b)の重合) 内容積1m3の攪拌機付き流動床反応器において、重合温度80℃、重合圧力18kg/cm2-G、気相部の水素濃度8vol%を保持するようにプロピレンおよび水素を供給しながら、第一槽目より移送された触媒含有重合体およびトリエチルアルミニウム60ミリモル/h、t-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン6ミリモル/hを供給しながらプロピレン重合を連続的に継続することにより18.2kg/hの重合体が得られた。この重合体の極限粘度は1.9dl/gであった。以上の結果から(b)の重合時の重合体生成量は触媒1gあたり31760gであり、第一槽目と第二槽目の重合重量比は11:89であり、(b)の極限粘度は1.2dl/gと求められた。 【0060】[5](重合体のペレット化) この重合体粉末100重量%に対して、ステアリン酸カルシウム0.1重量%、商品名イルガノックス1010(チバガイギー社製)0.05重量%、商品名スミライザーBHT(住友化学工業社製)0.2重量%を加えて混合し、230℃で溶融混練し、MTが4.6cN、MFRが12g/10分、Mw/Mnが8.0のペレット(プロピレン重合体樹脂(A))を得た。式(1)の左辺は0.66であり、右辺は-0.17であり、該プロピレン重合体樹脂(A)は式(1)の関係を満たす。 【0061】[参考例2](発泡核剤マスターバッチの製造) プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学工業(株)製;商品名 ノーブレンWP575A)30重量%と、タルク(林化成(株)製;商品名 MWHS-T)70重量%とを溶融混錬して発泡核剤マスターバッチを製造した。なお、ここで用いたプロピレン-エチレンブロック共重合体は下記第一工程と下記第二工程とで製造された共重合体(MFR=30g/10分)である。 第一工程:全重合体量の85.5重量%となるまでプロピレン単独重合体を製造する工程。 第二工程:第一工程で得られたプロピレン単独重合体の存在下に、エチレンから誘導される繰り返し単位の含有量が40重量%であるプロピレン-エチレン共重合体を製造する工程。 【0062】[実施例1]参考例1で得られたプロピレン重合体樹脂(A)40.0重量部、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学工業(株)製;商品名 ノーブレンAD571;MT=6.6cN、MFR=0.6g/10分、Mw/Mn=3.9)40.0重量部、および高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(住友化学工業(株)製;商品名 スミカセンF101-1;MFR=0.3g/10分、密度=921kg/m3)20.0重量部からなる樹脂組成物100.0重量部に対し、化学発泡剤(アゾジカルボンアミド30重量%と炭酸水素ナトリウム70重量%とからなる複合化学発泡剤)4.0重量部を添加したポリプロピレン系樹脂組成物を、スクリュー径50mmの日本製鋼所製中空成形機(NB3B型)にて、押出量20kg/h、ダイ温度180℃でホットパリソンに押出した。該ホットパリソンを15℃に温度調節した金型で挟んだ後、これに圧力5kg/cm2以下で供給された空気を20秒間吹き込み、重量が23g、側面の厚さが約1.2mm、容量が500mlの細口円筒形状の発泡中空成形容器を製造した。この発泡中空成形容器は安定して製造可能であり、また、低密度軽量であり、剛性も高かった。 【0063】[実施例2]実施例1において使用したポリプロピレン系樹脂組成物の代りに、参考例1で得られたプロピレン重合体樹脂(A)35.0重量部、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学工業(株)製;商品名 ノーブレンAD571;MT=6.6cN、MFR=0.6g/10分、Mw/Mn=3.9)35.0重量部、および高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(住友化学工業(株)製;商品名 スミカセンF101-1;MFR=0.3g/10分、密度=921kg/m3)30.0重量部からなるポリプロピレン系樹脂組成物を使用した以外は実施例1と同様の方法で発泡中空成形容器を製造した。中空成形性は良好で、得られた発泡中空成形容器は低密度、軽量であり、剛性も高かった。 【0064】[実施例3]実施例2において、参考例2で得られた発泡核剤マスターバッチをさらに添加した以外は実施例1と同様の方法で発泡中空成形容器を製造した。なお,用いた該発泡核剤マスターバッチの量は,ポリプロピレン系樹脂組成物100.0重量部に対し1.0重量部であった。中空成形性は良好で、得られた発泡中空成形容器は低密度、軽量であり、剛性も高かった。 【0065】[比較例1]実施例1において使用したポリプロピレン系樹脂組成物の代りに、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学工業(株)製;商品名 ノーブレンAD571;MT=6.6cN、MFR=0.6g/10分、Mw/Mn=3.9)を使用した以外は実施例1と同様の方法で発泡中空成形を行ったところ、ホットパリソンの気泡が破れ金型形状までブローアップすることは不可能であった。 【0066】[比較例2]実施例1において使用したポリプロピレン系樹脂組成物の代りに、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(住友化学工業(株)製;商品名 スミカセンF101-1;MFR=0.3g/10分、密度=921kg/m3)を使用した以外は実施例1と同様の方法で発泡中空成形を行った。中空成形性は良好であったが、得られた発泡中空成形容器は外観が荒れ、密度も低くなく、剛性に劣るものであった。 【0067】以上の実施例および比較例を表1および表2にまとめた。 【表1】 [図:0001409192000001.jpg] 【0068】 【表2】 [図:0001409192000002.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 甲1には、その請求項2の実施態様である実施例1の樹脂組成物に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「下記プロピレン重合体樹脂(A)40.0重量部、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学工業(株)製;商品名 ノーブレンAD571;MT=6.6cN、MFR=0.6g/10分、Mw/Mn=3.9)40.0重量部、および高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(住友化学工業(株)製;商品名 スミカセンF101-1;MFR=0.3g/10分、密度=921kg/m3)20.0重量部からなる樹脂組成物。 プロピレン重合体樹脂(A):極限粘度が7.7dl/gの結晶性プロピレン重合体部分(a)を第1槽で製造する工程、上記(a)を第2槽に連続的に移送しながら第2槽でプロピレン重合を継続し、極限粘度が1.2dl/gの結晶性プロピレン重合体部分(b)を製造する工程を含む重合方法により、第1槽目と第2槽目の重合重量比が11:89である重合体を得て、該重合体粉末100重量%に対して、ステアリン酸カルシウム0.1重量%、商品名イルガノックス1010(チバガイギー社製)0.05重量%、商品名スミライザーBHT(住友化学工業社製)0.2重量%を加えて混合し、230℃で溶融混練し、メルトテンション(MT)が4.6cN、MFRが12g/10分、Mw/Mnが8.0のペレット。」(以下、「甲1発明」という。) (2)本件特許発明の技術的意義について 本件特許明細書の段落【0002】に「ポリプロピレン重合体の重要な成形加工法の一つとして、発泡成形がある。押出発泡成形や射出発泡成形で得られた各種の成形体は、断熱性や遮音性、クッション性、エネルギー吸収特性などの優れた特性を生かし、幅広い用途で使用されている。発泡体の発泡倍率が高くなるほど、緩衝性、断熱性に優れ、連続気泡率が高いほど吸音性に優れることが一般に知られているため、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体が要望されている。」と記載され、段落【0007】に「本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、高分子量プロピレン系重合体の極限粘度[η]およびその量を適切に調整したプロピレン系重合体(以下、プロピレン系重合体(A)という)を、分子量分布の狭いプロピレン系重合体(以下、プロピレン系重合体(B)という)とブレンドすることによって得られたプロピレン系重合体組成物(以下、プロピレン系重合体組成物(X)と呼称する場合がある。)を用いることで、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。」ことが記載されている。 そして、段落【0013】には、「一方、高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには破泡を進行させることが重要である。プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]が大きいほど溶融張力が向上し破泡が抑制され、高分子量成分の極限粘度[η]が小さいほど破泡が進行しやすくなる。したがって、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには、プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]およびその含有量を適切な値に調整する必要がある。」と記載され、段落【0023】より、重合体(A)の重合体(a1)は、[η]が12dl/gを超えると発泡成形体の連続気泡率が低くなり、10dl/g未満だと発泡倍率が低くなり、重合体(a1)の質量分率が20質量%未満では溶融張力が不十分であるため発泡倍率が低くなること、段落【0026】より、重合体(a2)は、[η]が0.5dl/g未満だと、重合体組成物の溶融張力が不十分で、重合体(a2)の質量分率が80%を超えると溶融張力が不十分であるため発泡倍率が低くなること、段落【0049】及び【0050】より、重合体(B)は、メルトフローレートが1~30であり、Mw/Mnが6以下だと、組成物の発泡倍率が高い発泡成形体が得られること、段落【0059】より、重合体(A)を2~50質量%、重合体(B)を50~98質量%の範囲で含むことにより、押出し成形性に優れ、且つ、高い発泡倍率、高い連続気泡を有する発泡成形体を得ることができることが記載されている。 また、段落【0069】に、「本発明のプロピレン系重合体組成物(X)は、3.5倍以上の発泡倍率、ならびに60%以上の連続気泡率を有する発泡成形体の成形に特に優れている。 発泡成形体の発泡倍率や連続気泡率は、発泡剤の添加量等により変更することが可能であるが、重合体構造や溶融物性により、十分に発泡しない場合や、発泡しても目的の連続気泡率に到達しないことがある。本発明のプロピレン系重合体組成物(X)では、目的とする発泡倍率、ならびに連続気泡率を有する発泡成形体を得ることができる。」と記載されている。 上記摘記した本件特許明細書の記載より、本件特許発明は、「下記プロピレン系重合体(A)を2~50質量%および下記プロピレン系重合体(B)を50~98質量%〔但し、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)の合計量を100質量%とする。〕含むことを特徴とするプロピレン系重合体組成物。 プロピレン系重合体(A):135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%範囲にあり、135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲〔但し、プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%とする。〕にある。 プロピレン系重合体(B):230℃におけるメルトフローレートが1~30g/10分、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下である。」であることにより、発泡成形した際に、緩衝性、断熱性に優れる高い(例えば、3.5倍以上の)発泡倍率、ならびに吸音性に優れる高い(例えば、60%以上の)連続気泡率を有する発泡成形体が得られる、という技術的意義を有するものである。 (3)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1の段落【0048】に、重合体の極限粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行ったことが記載されていることから、甲1発明の「極限粘度が1.2dl/gの結晶性プロピレン重合体部分(b)」は、本件特許発明1の「135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)」に相当する。 甲1発明の「極限粘度が7.7dl/gの結晶性プロピレン重合体部分(a)」は、本件特許発明1の「135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)」と「プロピレン系重合体(a1)」である点に限り相当する。 そして、甲1発明の「プロピレン重合体樹脂(A)」は、本件特許発明1の「プロピレン系重合体(A)」に相当する。 甲1発明の「プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学工業(株)製;商品名 ノーブレンAD571;MT=6.6cN、MFR=0.6g/10分、Mw/Mn=3.9)」は、本件特許発明1の「プロピレン系重合体(B):230℃におけるメルトフローレートが1~30g/10分、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下である。」と「プロピレン系重合体(B):重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下である。」である点に限り相当する。 さらに、甲1発明の「ポリプロピレン系樹脂組成物」は、プロピレン重合体樹脂(A)40.0重量部、プロピレン-エチレンブロック共重合体40.0重量部を含むものであるから、プロピレン重合体樹脂(A)とプロピレン-エチレンブロック共重合体の合計量を100質量%とすると、各々50質量%となる。そうすると、甲1発明の「ポリプロピレン系樹脂組成物」は、本件特許発明1の「下記プロピレン系重合体(A)を2~50質量%および下記プロピレン系重合体(B)を50~98質量%〔但し、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)の合計量を100質量%とする。〕含む」「プロピレン系重合体組成物」に相当する。 してみると、本件特許発明1と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 下記プロピレン系重合体(A)を2~50質量%および下記プロピレン系重合体(B)を50~98質量%〔但し、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)の合計量を100質量%とする。〕含むことを特徴とするプロピレン系重合体組成物。 プロピレン系重合体(A):プロピレン系重合体(a1)と135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)を含む。 プロピレン系重合体(B):重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下である。 <相違点1> プロピレン系重合体(a1)の135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が、本件特許発明1は「10~12dl/g」であるのに対し、甲1発明は「7.7dl/g」である点 <相違点2> プロピレン系重合体(A)が、本件特許発明1は「プロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%範囲にあり」、「プロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲〔但し、プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%とする。〕にある」のに対し、甲1発明は「プロピレン系重合体(a1)の含有量が11質量%であり、プロピレン系重合体(a2)の含有量が89質量%」である点 <相違点3> プロピレン系重合体(B)の230℃におけるメルトフローレートが、本件特許発明1は「1~30g/10分」であるのに対し、甲1発明は「0.6g/10分」である点 <相違点4> プロピレン系重合体組成物のFE個数〔25mmΦのTダイ製膜機で製膜した厚さ50μmのフィルムを、FEカウンターを用いて測定されるFE個数を単位面積〔3000cm2〕当たりの個数に換算した値〕が、本件特許発明1は「100個以下」であるのに対し、甲1発明は不明である点 (イ)相違点の検討 <相違点1>及び<相違点2>は、プロピレン系重合体(a1)に関する事項であるため、併せて検討する。 まず、両相違点は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、新規性を有するものである。 ついで、<相違点1>及び<相違点2>の容易想到性について検討する。 甲1発明の課題は、「発泡中空成形性に優れ、かつ軽量で剛性に優れる中空成形容器の製造に好適なポリプロピレン系樹脂組成物を提供する」(段落【0004】)ものであるところ、本件特許発明1のように、「高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体を得るに好適なプロピレン系重合体組成物を得ること」を課題とするものではない。 そして、本件特許明細書には、プロピレン系重合体(a1)の極限粘度が「8dl/g」であるプロピレン系樹脂(A)を使用した比較例1が、発泡倍率が「2.7倍」、連続気泡率が「58.7%」と、目安とされる発泡倍率「3.5倍」、連続気泡率「58.7%」を下回るものである。そして、甲1発明におけるプロピレン重合体樹脂(A)中のプロピレン系重合体(a1)の極限粘度は、「7.7dl/g」であり、当該比較例1に相当するものといえる。 ところで、甲1発明の結晶性ポリプロピレン重合体部分(a)の極限粘度及び含有量について、甲1の段落【0012】及び【0013】には、「前記結晶性ポリプロピレン重合体部分(a)の極限粘度は5dl/g以上であり、好ましくは6dl/g以上である。この範囲にあると本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は発泡中空成形性に優れるため好ましい。該(a)の極限粘度は高いほど好ましく特に上限に制限はないが、通常は15dl/g未満である。該(a)の極限粘度としてより好ましくは6~13dl/gであり、さらに好ましくは7~11dl/gである。 結晶性プロピレン重合体部分(a)のプロピレン重合体樹脂(E)に占める割合は0.05~25重量%であり、好ましくは0.3~20重量%である。この範囲内にあれば、発泡中空成形性および流動性に優れるため好ましい。」と記載され、本件特許発明1における重合体(a1)の極限粘度及び重合体(A)における重合体(a1)の含有量と重複する数値範囲が一応記載されてはいる。 しかしながら、上記(2)で述べたように、本件特許発明は、重合体(a1)の極限粘度を10~12dl/gとし、その含有量を20~50質量%とすることにより、高い発泡倍率、高い連続気泡率が得られるという技術的意義を有するものであるところ、甲1に、発泡中空成形性(金型どおりに腑形できること)のために、重合体部分(a)の極限粘度が7~11dl/g、含有量が0.3~20重量%とすることが記載されていても、甲1発明におけるプロピレン重合体樹脂(A)中のプロピレン系重合体(a1)の極限粘度を「7.7dl/g」から「10~12dl/g」に変更すると共に、その含有量を「11質量%」から、甲1の上記好ましい範囲である「0.3~20重量%」から外れる「20~50質量%」として、発泡倍率及び連続気泡率を高くすることが動機付けられるとはいえない。 よって、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものとはいえず、本件特許発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が甲1の記載から容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果の検討 本件特許発明1は、「高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体を得ることができる。」(【0008】)という効果を奏するものである。 一方、甲1には、緩衝性、断熱性に優れる高い発泡倍率、ならびに吸音性に優れる高い連続気泡率の発泡成形体が得られることは記載されていないし、本件特許優先日時の技術常識であったともいえないから、本件特許発明1の効果は甲1の記載から当業者が予測し得る範囲のものとはいえない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし12について 本件特許発明2ないし12は、本件特許発明1を引用するものであるから、上記アで検討したのと同様、本件特許発明6ないし12は甲1に記載された発明ではないし、また、本件特許発明2ないし12は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、申立書の第15ページにおいて以下の主張を行っている。 「・・・なお、本件特許発明が目的とする「高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体が得ることができる」という効果を達成しているのは(段落[0008])、請求項1で規定されるプロピレン系重合体(A)としてプロピレンの単独重合体のみからなる組成物とプロピレン系重合体(B)として特定のプロピレン系樹脂とをプレンドし、かつ発泡剤を含む態様のみである(表3-1、3-2、段落[0085]等参照)。 してみると、プロピレン系重合体(A)のそれ以外の態様においては(プロピレンと炭素数2~8のα-オレフィンとの共重合体組成物など)、上記効果を奏することが明らかでなく、そのことは出願時の技術常識を参酌しても当業者に自明であるといえないから、請求項1で規定されるプロピレン系重合体(A)としてプロピレンの単独重合体のみからなる組成物とプロピレン系重合体(B)として特定のプロピレン系樹脂及び発泡剤を含むもの以外の態様まで本件特許発明の効果の顕著性を認めることができない。 よって、構成1は、甲第1号証に記載されているか、甲第1号証の記載に基づき容易に想到し得たものである。」 イ 検討 そこで、上記主張について検討する。 本件特許明細書の段落【0013】に、「一方、高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには破泡を進行させることが重要である。プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]が大きいほど溶融張力が向上し破泡が抑制され、高分子量成分の極限粘度[η]が小さいほど破泡が進行しやすくなる。したがって、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには、プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]およびその含有量を適切な値に調整する必要がある。」と記載されているように、本件特許発明は、極限粘度[η]に着目したものである。このため、プロピレンの単独重合体であろうとプロピレン系共重合体であろうと、極限粘度[η]が本件特許発明の範囲であれば、実施例以外の範囲においても、本件特許発明の効果を奏することを理解できる。 また、申立人は、甲1の記載事項を寄せ集めて、甲1に本件特許発明1が記載されている旨を主張している。しかしながら、本件特許発明は、上記(2)で示したように、本件特許発明1のすべての特定事項を備えることにより、緩衝性、断熱性に優れる高い発泡倍率、ならびに吸音性に優れる高い連続気泡率の発泡成形体が得られる技術的意義を有する技術的思想であるところ、甲1には、このような技術的思想が記載されているとはいえないし、また、甲1の記載に基いて当業者が容易に想到し得たものともいえない。 よって、申立人の上記主張は首肯することができない。 (5)まとめ 以上検討したとおり、本件特許発明1及び6ないし12は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び6ないし12に係る特許は、申立理由1-1によっては取り消すことはできない。 また、本件特許発明1ないし12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、申立理由1-2によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(実施可能要件違反)について (1)実施可能要件の判断基準 本件特許発明1ないし12はいずれも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、当該判断基準に沿って、以下検討する。 (2)検討 本件特許明細書には、プロピレン系重合体(A)の製造方法については、段落【0027】~【0047】について記載されており、プロピレン系重合体(B)の製造方法については、段落【0053】~【0057】に記載され、プロピレン系重合体組成物の製造方法については、段落【0067】に記載されている。 そして、【実施例】では、プロピレン系重合体(A)として6つの樹脂とプロピレン系重合体(B)として7つの樹脂を組み合わせた14の実施例があり、それらのすべての実施例において、3.5倍以上の高い発泡倍率、ならびに60%以上の高い連続気泡率の発泡成形体が得られている。 そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明に係る物を生産し、使用することができる程度の記載があるものといえる。 (3)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、申立書の21~23ページにおいて以下の主張を行っている。 「・・・しかしながら、発明の詳細な説明に具体例として開示されているのは、該プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)としてどちらもプロピレンの単独重合体の場合のみであり、それ以外の場合、例えば、プロピレンと炭素数2~8のα-オレフィンとの共重合体の全ての態様・・・をあらゆる炭素数2~8のα-オレフィンのモノマー濃度で、本件特許の請求項1で規定する要件を満たすかどうか確認するためには当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要があると認められる。 より具体的には、例えば、プロピレンの単独重合体と、プロピレンと炭素数2~8のα-オレフィンとの共重合体(以下、「プロピレン系共重合体」ともいう。)との間で、レオロジー特性(ひいては発泡特性)が異なり得る点に基づいて、説明することができる。 第一に、レオロジー特性に大きく影響する絡み合いに着目する。プロピレン系共重合体では、コモノマ一種やコモノマー量によって絡み合い点間分子量(Me)が異なる。絡み合い点間分子量(Me)が小さいほど同一分子量における絡み合い点数が増加し、溶融張力が増大する。 ・・・ よって、プロピレン系共重合体の溶融張力は、コモノマーの種類やコモノマー量により大きく変化する。このようにコモノマーの種類やコモノマー量により溶融張力が大きく変化するプロピレン系共重合体を用いた場合に、本件特許の請求項1で規定する要件を満たすかどうか確認するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要があると認められる。 第二に、ポリプロピレンとの相溶性に着目する。プロピレン系共重合体では、コモノマ一種やコモノマー量によってポリプロピレンとの相溶性が異なる。例えば、ポリプロピレンとプロピレンエチレン共重合体との相溶性は、プロピレンエチレン共重合体のエチレン含量によって変化し、エチレン含量が12モル% (8重量%)以上で非相溶となり、マイナー成分(通常、プロピレンエチレン共重合体)が相分離して分散相を形成する。分散相が溶融時に変形して元の形に回復する長時間緩和マトリックス相との界面張力に依存)が新たに生じ、レオロジー特性が変化する。 よって、プロピレン系共重合体のコモノマ一種やコモノマー量によってポリプロピレン中の分散構造が異なるため、レオロジー特性が変化する。このようにコモノマ一種やコモノマー量によってポリプロピレン中の分散構造が異なるため、レオロジー特性が変化するプロピレン系共重合体を用いた場合に、本件特許の請求項1で規定する要件を満たすかどうか確認するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要があると認められる。」 イ 検討 そこで、上記主張について検討する。 申立人が主張するように、コモノマ一種やコモノマー量によって絡み合い点間分子量(Me)が異なったり、ポリプロピレン中の分散構造が異なったりすることにより、プロピレンの単独重合体とプロピレン系共重合体とで、レオロジー特性が異なる可能性があることは一応理解できる。 しかしながら、本件特許明細書の段落【0013】に、「一方、高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには破泡を進行させることが重要である。プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]が大きいほど溶融張力が向上し破泡が抑制され、高分子量成分の極限粘度[η]が小さいほど破泡が進行しやすくなる。したがって、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには、プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]およびその含有量を適切な値に調整する必要がある。」と記載されているように、本件特許発明は、所定の極限粘度[η]の高分子量成分であるプロピレン系重合体(a1)及び(a2)を含有するプロピレン系重合体(A)と、分子量分布の狭いプロピレン系重合体(B)とを所定比率でブレンドすることにより、所望のレオロジー特性、ひいては発泡特性、すなわち高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率の発泡成形体が得ることが理解できる。 そうすると、プロピレン系共重合体の製造にあたっても、プロピレンの単独重合体と同様に、本件特許発明1に係る所定の極限粘度[η]の高分子量成分であるプロピレン系重合体(a1)及び(a2)を含有するプロピレン系重合体(A)を、分子量分布の狭いプロピレン系重合体(B)と所定比率でブレンドすればよく、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要があるとまではいえない。 よって、申立人の上記主張は首肯することができない。 (4)まとめ 以上検討したとおり、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)検討 ア 本件特許発明の課題 本件特許発明の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】からみて、「高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体を得るに好適なプロピレン系重合体組成物を得ること」であると解される。 イ 検討 (ア)発明の詳細な説明の一般的記載について 本件明細書の段落【0010】~【0013】に、「以下、本発明に係るプロピレン系重合体組成物およびその成形体について具体的に記載する。 発泡成形における気泡成長過程は、(1)気泡核生成、(2)気泡成長、(3)破泡、(4)気泡安定化の4つの過程を経る。高い発泡倍率の発泡成形体を得る場合、十分な気泡成長を促し、破泡を抑制することが鍵となる。 本発明者らは、発泡倍率向上に必要な重合体特性について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。 (イ)重合体組成物の溶融張力は、低いと気泡を維持できず破泡しやすくなり、高すぎると気泡の成長が阻害され、高発泡倍率が得られない。 (ロ)気泡壁が伸張変形する際、粘度が上昇する歪硬化性が現れるが、この歪硬化性が高いほど気泡壁の破断が抑制され、発泡倍率の低下を防ぐことができる。 (ハ)歪硬化性を高めるには高分子量成分が必要であるが、その指標の一つに動的粘弾性測定から得られる角周波数(X)における貯蔵弾性率G’(X)がある。角周波数が0.1rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.1)と角周波数が0.01rad/sのときの貯蔵弾性率G’(0.01)との比G’(0.1)/G’(0.01)が小さいほど歪硬化性が上昇し、発泡倍率が向上する傾向にある。一方、角周波数が10rad/sのときの貯蔵弾性率G’(10)と角周波数が1rad/sのときの貯蔵弾性率G’(1)との比G’(10)/G’(1)が大きいほど気泡壁の延伸特性が良化し、伸張変形時の気泡壁の破断が抑制される。 本発明では、上記特性を満足するプロピレン系重合体組成物(X)は、極限粘度[η]が特定の範囲にある高分子量成分を特定量含むプロピレン系重合体(A)と、分子量分布の狭いプロピレン系重合体(B)を混合することで得られることを見出した。 一方、高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには破泡を進行させることが重要である。プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]が大きいほど溶融張力が向上し破泡が抑制され、高分子量成分の極限粘度[η]が小さいほど破泡が進行しやすくなる。したがって、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率の発泡成形体を得るためには、プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の極限粘度[η]およびその含有量を適切な値に調整する必要がある。」と記載されている。 そして、段落【0007】に、「本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、高分子量プロピレン系重合体の極限粘度[η]およびその量を適切に調整したプロピレン系重合体(以下、プロピレン系重合体(A)という)を、分子量分布の狭いプロピレン系重合体(以下、プロピレン系重合体(B)という)とブレンドすることによって得られたプロピレン系重合体組成物(以下、プロピレン系重合体組成物(X)と呼称する場合がある。)を用いることで、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。」ことが記載されている。 上記記載より、プロピレン系重合体(A)に含まれる高分子量成分の「極限粘度[η]」と「含有量」を適切な値に調整すること、その結果として、「下記プロピレン系重合体(A)を2~50質量%および下記プロピレン系重合体(B)を50~98質量%〔但し、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)の合計量を100質量%とする。〕含むことを特徴とするプロピレン系重合体組成物。 プロピレン系重合体(A):135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が10~12dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a1)の含有量が20~50質量%範囲にあり、135℃、テトラリン中で測定される極限粘度[η]が0.5~3dl/gの範囲にあるプロピレン系重合体(a2)の含有量が50~80質量%の範囲〔但し、プロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)の合計量を100質量%とする。〕にある。 プロピレン系重合体(B):230℃におけるメルトフローレートが1~30g/10分、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下である。」という技術的事項により、本件特許発明の課題が解決し得ることを読み取ることができる。 (イ)実施例について 本件特許明細書の【実施例】を見てみると、プロピレン系重合体(A)として6つの樹脂とプロピレン系重合体(B)として7つの樹脂を組み合わせた14のプロピレン系重合体組成物の実施例がある。これらのすべての実施例は、上記(ア)の技術的事項を満足するものであり、3.5倍以上の高い発泡倍率、ならびに60%以上の高い連続気泡率の発泡成形体が得られている。一方、上記(ア)の技術的事項を満足しない比較例1及び2は、発泡倍率がそれぞれ2.7倍、4.2倍、ならびに連続気泡率が58.7倍、14.6倍と、3.5倍以上の発泡倍率、ならびに60%以上の連続気泡率の発泡成形体が得られていない。 (ウ)特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比 上記(ア)及び(イ)で検討した事項をまとめると、発明の詳細な説明の記載における上記(ア)で示した技術的事項により、本件特許発明の課題が解決し得るものといえる。 そして、本件特許発明1は、上記技術的事項を備えるものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし12についても同様である。 (3)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、申立書の25ページにおいて以下の主張を行っている。 ・主張(ア)「・・・実施例で、請求項1のプロピレン系重合体組成物と発泡剤を含む態様が高い発泡倍率及び高い連続気泡率を有する発泡成形体を提供することが可能なものとして具体的に実証されているからといって、発泡剤を含まない請求項1の組成物の態様においてまで、本件特許発明の「高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率を有する発泡成形体を得る」という課題を解決できるとはいえず、そのことは出願時の技術常識を参酌しても当業者に自明ではない。」 ・主張(イ)「また、上記「エ.理由2(実施可能要件)」で検討した通り、プロピレンの単独重合体と、プロピレン系共重合体との間で、レオロジー特性(ひいては発泡特性)が異なり得ることから、本件特許発明1~12のうち、プロピレン系重合体 (A)を構成するプロピレン系重合体(a1)とプロピレン系重合体(a2)としてプロピレン系共重合体を用いた範囲にまで、プロピレンの単独重合体を用いて発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」 イ 検討 そこで、上記主張について以下、検討する。 ・主張(ア)について 本件特許明細書の段落【0068】~【0072】には、本件特許発明1のプロピレン系重合体組成物に発泡剤を添加して発泡成形体を製造することが記載されているように、本件特許発明1は、発泡剤を添加して発泡成形体とする場合に、高い発泡倍率、ならびに高い連続気泡率となる樹脂組成物の発明であり、主張(ア)はその前提において誤っている。 よって、申立人の主張(ア)は首肯することができない。 ・主張(イ)について 申立人が主張するように、コモノマ一種やコモノマー量によって絡み合い点間分子量(Me)が異なったり、ポリプロピレン中の分散構造が異なることにより、プロピレンの単独重合体とプロピレン系共重合体とで、レオロジー特性が異なる可能性があることは理解できる。 しかしながら、上記(2)で説示したように、上記(2)の(ア)で示した技術的事項により、本件特許発明の課題が解決し得るものといえる。 そして、申立人は、コモノマ一種やコモノマー量によってレオロジー特性が異なる可能性を指摘するにとどまり、実験成績報告書等の具体的証拠を挙げて、あるプロピレン系共重合体が本件特許発明の課題を解決し得ないことを立証してはいない。 よって、申立人の主張(イ)は首肯することができない。 (4)まとめ 以上検討したとおり、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、申立理由3によっては取り消すことはできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701400

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