特許異議申立
2020-700101
プロピレン系樹脂組成物、成形体および容器
- 審判番号
- 2020-700101
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-073200
- 登録番号
- 特許第6564224号(P6564224)
- 請求日
- 2020年02月21日
- 審決日
- 2020年06月22日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社プライムポリマー
- 【権利者代理人】特許業務法人SSINPAT
- 【権利者】三井化学株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人SSINPAT
- 【異議申立人】徳野 幸枝
- 審判長/審判官
- 審判長 大熊 幸治
- 審判官 橋本 栄和
- 審判官 佐藤 健史
- 分類
- P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6564224号発明「プロピレン系樹脂組成物、成形体および容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6564224号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6564224号に係る出願(特願2015-73200号、以下「本願」ということがある。)は、平成27年3月31日に出願人株式会社プライムポリマー及び三井化学株式会社(以下、併せて「特許権者」ということがある。)により共同してされた特許出願であり、令和元年8月2日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、特許掲載公報が令和元年8月21日に発行されたものである。
2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき令和2年2月21日に特許異議申立人徳野幸枝(以下「申立人」という。)により、「特許第6564224号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。
(よって、本件特許異議の申立ては、特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許であるから、審理の対象外となる請求項はない。)
第2 本件特許の特許請求の範囲に記載された事項
本件特許の特許請求の範囲には、以下のとおりの請求項1ないし5が記載されている。
「【請求項1】
下記要件(A1)~(A3)を満たすプロピレン系重合体(A)、下記要件(B1)および(B2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)、下記要件(C1)および(C2)を満たすプロピレン・エチレン共重合体(C)を含むプロピレン系樹脂組成物。
(A1)プロピレン系重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.5~4.5である
(A2)プロピレン系重合体(A)のレオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)が100~400Pa・sである
(A3)プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)が1~500g/10分である
(B1)エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が885~925kg/m3である
(B2)エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度190℃、荷重2.16kg)が0.1~50g/10分である
(C1)プロピレン・エチレン共重合体(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.5~4.5である
(C2)プロピレン・エチレン共重合体(C)のエチレンに由来する構成単位のmol%が、プロピレン・エチレン共重合体(C)100mol%中25~35mol%である
【請求項2】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)とプロピレン系重合体(A)との、レオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)の比(Bの粘度/Aの粘度)が、2.0~6.0である請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記プロピレン・エチレン共重合体(C)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)との、レオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)の比(Cの粘度/Bの粘度)が、1.0~4.0である請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物から形成される成形体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物から形成される容器。」
(以下、上記請求項1ないし5に記載された事項で特定される発明を併せて「本件発明」という。)
第3 申立人が主張する取消理由
申立人は、同人が提出した本件異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証及び甲第2号証を提示し、申立書における申立人の取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由が存するとしているものと認められる。
取消理由:本件の請求項1ないし5の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特許第5511685号公報
甲第2号証:日本国特許庁「周知・慣用技術集(高分子)」平成10年7月13日発行、10(1998)-42、第31~34頁
(以下、「甲1」及び「甲2」と略していうことがある。)
第4 当審の判断
当審は、
申立人が主張する上記取消理由については理由がなく、ほかに各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許はいずれも取り消すべきものではなく、維持すべきもの、
と判断する。以下、詳述する。
1.本件発明の解決課題
本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載(特に【0009】)からみて、「食品包装容器等の容器をはじめとする成形体を製造した際に、従来と同等の剛性、従来と同等あるいはそれ以上の低温耐衝撃性を有し、かつ従来よりも透明性に優れるプロピレン系樹脂組成物および該組成物から形成される容器等の成形体」の提供にあるものと認められる。
2.本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の(a)ないし(h)の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)
(a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物、該組成物から形成される成形体および該組成物から形成される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー、プリン、コーヒー等の食品の包装容器(以下、食品包装容器とも記す)として、内容物の視認性、すなわち透明性に優れる容器が従来から求められている。透明性に優れる容器としては、その原料として、耐熱性、剛性および透明性に優れるプロピレン系樹脂組成物が用いられることが多い。
【0003】
また、食品はその保管・流通において、低温の環境で扱われることが多いため、食品包装容器には、常温における耐衝撃性だけではなく、低温時の耐衝撃性、すなわち低温耐衝撃性が求められる。
【0004】
衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物として、プロピレン‐エチレンブロック共重合体、造核剤、および低密度ポリエチレン樹脂若しくは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含む組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物としては、プロピレンブロック共重合体と、エチレン系樹脂からなる、特定の物性を有する組成物が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0006】
また、特許文献4には、特定のプロピレン系重合体と、特定のエチレン・α-オレフィン共重合体と、造核剤とを含むプロピレン系樹脂組成物、および該組成物から得られる成形体や容器が知られている。
【0007】
従来から、弾性率などの機能に優れた食品包装容器を製造するために、プロピレン系樹脂にエチレン系樹脂を添加することが行われてきたが、このようにして得られた組成物は、プロピレン系樹脂単味の場合に比べると透明性が劣後することが知られており、適度なエチレン系樹脂を配合した透明性の高い材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】 特開2001-26686号公報
【特許文献2】 特開2002-187996号公報
【特許文献3】 特開2002-187997号公報
【特許文献4】 国際公開第2010/074001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、食品包装容器等の容器をはじめとする成形体を製造した際に、従来と同等の剛性、従来と同等あるいはそれ以上の低温耐衝撃性を有し、かつ従来よりも透明性に優れるプロピレン系樹脂組成物および該組成物から形成される容器等の成形体を提供することを目的とする。
・・(中略)・・
【発明の効果】
【0014】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、食品包装容器等の容器をはじめとする成形体を製造した際に、従来と同等の剛性、従来と同等あるいはそれ以上の低温耐衝撃性を有し、かつ従来よりも透明性に優れる。」
(b)
「【0016】
・・(中略)・・
(プロピレン系重合体(A))
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、要件(A1)~(A3)を満たすプロピレン系重合体(A)を含む。なお、要件(A1)~(A3)を満たすプロピレン系重合体(A)を、プロピレン系重合体(A)とも記す。
【0017】
プロピレン系重合体(A)は、要件(A1)~(A3)を満たしていればよく、特に制限はされないが、通常はプロピレン単独重合体、プロピレンと、少量のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)との共重合体であってもよい。
【0018】
プロピレン系重合体(A)が、プロピレン単独重合体または、プロピレンと、少量のα-オレフィンとの共重合体である場合には、プロピレン系重合体(A)を構成する全モノマー由来の構成単位を100モル%とすると、プロピレン由来の構成単位を80~100モル%有し、α-オレフィン由来の構成単位を0~20モル%有することが好ましく、プロピレン由来の構成単位を90~100モル%有し、α-オレフィン由来の構成単位を0~10モル%有することがより好ましい。
前記α-オレフィンとしては、エチレン、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、エチレン、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
【0019】
(要件(A1))
前記プロピレン系重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が、1.5~4.5であり、好ましくは1.5~4.0、より好ましくは2.0~3.5である。
【0020】
Mw/Mnが、前記範囲にあると、プロピレン系樹脂組成物や該組成物から得られた成形体の透明性に優れ、前記範囲を上回ると透明性が悪化し、ヘイズが大きくなる傾向がある。
要件(A1)を満たすプロピレン系重合体(A)は、製造時に使用する触媒として、メタロセン触媒等の所謂シングルサイト触媒を用いることにより得ることができる。
【0021】
(要件(A2))
前記プロピレン系重合体(A)のレオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)が100~400Pa・sであり、好ましくは100~300Pa・sである。前記粘度η*は、温度210℃で測定した温度であるが、該温度は、本発明のプロピレン系樹脂組成物の成形に適した範囲であり、要件(A2)を満たすと、プロピレン系樹脂組成物の成形性に優れる傾向がある。
【0022】
(要件(A3))
前記プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)が1~500g/10分であり、好ましくは10~250g/10分であり、さらに好ましくは35~170g/10分である。
【0023】
プロピレン系重合体(A)のMFRが上記範囲を上回ると、本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られた容器等の成形体の耐衝撃性が劣り、またプロピレン系重合体(A)のMFRが上記範囲を下回ると、本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて、容器等の成形体を製造する際の樹脂の流動性が劣り、薄肉化した成形体を製造することが困難となる。
なお、プロピレン系重合体(A)のMFRは、重合時に水素を連鎖移動剤として用いるなどの製造条件を調整することにより、任意のMFRに調整することができる。
【0024】
また、上記方法以外でも、重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物存在下で溶融混練処理することによりMFRを調整することができる。重合で得られたプロピレン系重合体を、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行うことによりMFRは高くなり、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行う際の有機過酸化物の添加量を増やすことでMFRをより高くすることができる。
【0025】
重合で得られたプロピレン系重合体に、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行う場合、プロピレン系重合体100質量部に対して有機過酸化物を0.005~0.05質量部使用することが好ましい。」
(c)
「【0048】
(エチレン・α-オレフィン共重合体(B))
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、要件(B1)および(B2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む。なお、要件(B1)および(B2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)とも記す。
【0049】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、要件(B1)および(B2)を満たしていればよく、特に限定はされないが、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンを共重合することにより得られる共重合体が、耐衝撃性および透明性に優れるため好ましい。
【0050】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。なかでも透明性・耐衝撃性・剛性・経済性の観点から炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
【0051】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を構成する全モノマー由来の構成単位を100モル%とすると、エチレン由来の構成単位を80~99モル%有し、α-オレフィン由来の構成単位を1~20モル%有することが好ましく、エチレン由来の構成単位を90~99モル%有し、α-オレフィン由来の構成単位を1~10モル%有することがより好ましい。
・・(中略)・・
【0055】
(要件(B1))
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が885~925kg/m3であり、好ましくは900~919kg/m3であることが好ましい。
【0056】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が上記範囲を下回ると、本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られた容器等の成形体の剛性、透明性が劣る傾向がある。これは前記範囲を下回るとエチレン・α-オレフィン共重合体の結晶性の低下し、かつプロピレン系重合体(A)との屈折率差も大きくなる為と推測される。
【0057】
一方、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が上記範囲を上回ると、本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られた容器等の成形体の透明性が低下する傾向がある。これもエチレン・α-オレフィン共重合体とプロピレン系重合体(A)との屈折率差が大きくなる為と考えられる。つまり、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度範囲が上記範囲から外れると、透明性が悪化する。
なお、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度の調整は、後述する製造条件を調整することにより任意の量とすることができる。
【0058】
より具体的には、後述するエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の重合において、エチレン・αオレフィン共重合体を重合する際の、エチレンとα-オレフィンのフィード量の比率を変える事により調整可能である。具体的には、エチレンのフィード量に対してα-オレフィンのフィード量を多くする事により、密度を低くすることが可能であり、エチレンのフィード量に対してα-オレフィンのフィード量を少なくする事により、密度を高くすることが可能である。
【0059】
なお、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度は、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート測定時(ASTM D-1238、測定温度190℃、荷重2.16kg)に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法にて密度の測定を行いエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度として決定した。
【0060】
(要件(B2))
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度190℃、荷重2.16kg)が0.1~50g/10分であり、好ましくは1~10g/10分であり、より好ましくは2.0~5.0g/10分である。
【0061】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のMFRが上記範囲を下回ると、分子量が高くなるため、容器等の成形体を製造する際の樹脂の流動性が劣り、薄肉化した成形体を製造することが困難となり、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のMFRが上記範囲を上回ると、分子量が低く衝撃に対しての吸収エネルギーが低くなるため、発明のプロピレン系樹脂組成物から得られた容器等の成形体の耐衝撃性が劣る。
【0062】
なお、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のMFRの調整は、後述する製造条件を調整することにより任意の量とすることができる。
より具体的には、後述するエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の重合において、重合する際のエチレンおよびα-オレフィンのフィード量に対する水素ガスのフィード量を調整することで調整することが可能である。重合する際のエチレンおよびα-オレフィンのフィード量に対する水素ガスのフィード量を多くすることでMFRを高くすることが可能であり、エチレンおよびα-オレフィンのフィード量に対する水素ガスのフィード量を少なくすることでMFRを低くすることが可能である。
【0063】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のレオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)が通常は200~2400Pa・sであり、好ましくは250~1500Pa・sである。前記粘度η*は、温度210℃で測定した温度であるが、該温度は、本発明のプロピレン系樹脂組成物の成形に適した範囲であり、前記範囲内では、プロピレン系樹脂組成物の成形性に優れる傾向がある。」
(d)
「【0098】
(プロピレン・エチレン共重合体(C))
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、要件(C1)および(C2)を満たすプロピレン・エチレン共重合体(C)を含む。なお、要件(C1)および(C2)を満たすプロピレン・エチレン共重合体(C)を、プロピレン・エチレン共重合体(C)とも記す。
【0099】
プロピレン・エチレン共重合体(C)は、要件(C1)および(C2)を満たしていればよく、特に限定はされない。プロピレン・エチレン共重合体(C)は、プロピレン由来の構成単位およびエチレン由来の構成単位を有するが、炭素数4以上のα-オレフィン由来の構成単位を有していてもよい。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンから選択される少なくとも1種のα-オレフィンが好ましい。
【0100】
(要件(C1))
前記プロピレン・エチレン共重合体(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.5~4.5であり、好ましくは2.0~3.5である。かかる分子量分布を有するプロピレン・エチレン共重合体(C)からなる本発明のプロピレン系樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性等に優れる。
【0101】
(要件(C2))
前記プロピレン・エチレン共重合体(C)のエチレンに由来する構成単位のmol%が、プロピレン・エチレン共重合体(C)100mol%中25~35mol%であり、好ましくは25~30mol%である。
【0102】
プロピレン・エチレン共重合体(C)100mol%中、プロピレン由来の構成単位のmol%が通常は65~75mol%であり、好ましくは70~75mol%である。また、炭素数4以上のα-オレフィン由来の構成単位を有する場合には、炭素数4以上のα-オレフィン由来のmol%が、通常は5~30mol%であり、好ましくは10~25mol%である。
【0103】
前記プロピレン・エチレン共重合体(C)のレオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)が通常は600~3000Pa・sであり、好ましくは700~2800Pa・sである。前記粘度η*は、温度210℃で測定した温度であるが、該温度は、本発明のプロピレン系樹脂組成物の成形に適した範囲であり、前記範囲内では、プロピレン系樹脂組成物の成形性に優れる傾向がある。」
(e)
「【0114】
〔プロピレン系樹脂組成物〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)、プロピレン・エチレン共重合体(C)を含む。プロピレン系樹脂組成物の各成分の含有量は、プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)およびプロピレン・エチレン共重合体(C)の合計を100質量部とすると、通常はプロピレン系重合体(A)57~80質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)17~40質量部、プロピレン・エチレン共重合体(C)3~20質量部であり、好ましくはプロピレン系重合体(A)62~75質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)22~35質量部、プロピレン・エチレン共重合体(C)3~10質量部である。プロピレン系樹脂組成物が造核剤を含有する場合にはその含有量は、プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)およびプロピレン・エチレン共重合体(C)の合計を100質量部とすると、通常は0.1~0.5質量部であり、好ましくは0.1~0.4質量部である。
【0115】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、中和剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、気泡防止剤、分散剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、架橋剤、架橋助剤等の添加剤、デグラ剤(有機過酸化物);染料、顔料等の着色剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0116】
本発明のプロピレン系樹脂組成物が、他の成分を含む場合には、プロピレン系重合体(A)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計を100質量部とすると、通常は0.00001~10質量部の範囲で含まれる。
【0117】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)(測定温度230℃、荷重2.16kg)が20~200g/10分であることが好ましく、25~140g/10分であることがより好ましく、30~80g/10分であることが更に好ましい。上記範囲では、プロピレン系樹脂組成物を用いて容器等の成形体を成形する際の流動性に優れるため好ましい。
【0118】
プロピレン系樹脂組成物のMFRは、プロピレン系樹脂組成物を構成するプロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)、あるいはエチレン・α-オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度190℃、荷重2.16kg)を適宜選択することにより調整が可能である。
・・(中略)・・
【0124】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、主としてプロピレン系重合体(A)を連続相、すなわち海相とした、いわゆる海島構造をとる。また、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)は主に島相を構成する。このため、本発明のプロピレン系樹脂組成物は高い剛性と耐衝撃性とを両立できる。また、プロピレン・エチレン共重合体(C)は、プロピレン系重合体(A)と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)との界面に存在することが望ましく、その場合は成形体が高透明になる。
【0125】
(粘度比)
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)とプロピレン系重合体(A)との、レオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)の比(Bの粘度/Aの粘度)が、通常は2.0~6.0であり、好ましくは2.0~5.5であり、より好ましくは2.5~5.0である。
【0126】
この範囲を上回るとプロピレン系樹脂組成物のヘイズが悪化する。また、この範囲を下回るとプロピレン系樹脂組成物のMFRが著しく低くなり望ましくない。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン・エチレン共重合体(C)と前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)との、レオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)の比(Cの粘度/Bの粘度)が、通常は1.0~4.4であり、好ましくは1.0~4.0であり、より好ましくは1.0~3.0であり、特に好ましくは1.0~2.0である。
【0127】
この範囲を上回るとプロピレン系樹脂組成物のヘイズが悪化する場合がある。
プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)、プロピレン・エチレン共重合体(C)それぞれの粘度は、レオメータを用い、温度210℃、周波数25rad/sで測定することが可能である。
【0128】
プロピレン系樹脂組成物を成形すると、プロピレン系重合体(A)から形成される海相に、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)から形成される島相が分散した相構造を形成する。プロピレン・エチレン共重合体(C)と前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)との、レオメータにより210℃で測定した粘度η*(周波数:25rad/s)の比が前記範囲内であると、プロピレン・エチレン共重合体(C)が、プロピレン系重合体(A)から形成される海相に単独で分散せず、プロピレン系重合体(A)と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)との界面にプロピレン・エチレン共重合体(C)が配置され、より透明性に優れる傾向があり、好ましい。
・・(中略)・・
【0133】
本発明のプロピレン系樹脂組成物から形成される成形体としては、容器、家電部品、日用品等が挙げられる。中でも耐衝撃性・剛性の観点から容器が好ましい。
本発明の容器は、前述のプロピレン系樹脂組成物から形成される。容器としては、洗髪剤・調髪剤・化粧品・洗剤・殺菌剤などの液体日用品用の包装容器;清涼飲料水・水・調味料などの液体用の食品包装容器;ゼリー、プリン、ヨーグルトなどの固体用の食品包装容器;その他の薬品用の包装容器;工業用の液体用の包装容器などとして広範囲に使用できる。」
(f)
「【実施例】
【0137】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[評価方法]
以下に記載の方法に従い、プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)、プロピレン・エチレン共重合体(C)およびプロピレン系樹脂組成物の物性を測定した。
【0138】
[メルトフローレート(MFR)]
MFRは、ASTM D 1238に従い、230℃または190℃、2.16kg荷重で測定した。
【0139】
[密度]
密度は、下記の方法で測定した。
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の、測定温度190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート測定時(ASTM D-1238)に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法にて密度の測定を行った。
【0140】
[粘度]
密度はレオメータ(アントンパールジャパン製 PHYSICA MCR301)を用いて測定した。
測定条件は以下の通り設定した。
サンプル:プレス板 28mmφ×1mm
測定治具:プレート-プレート
ギャップ:0.8mm
測定温度:210℃
測定周波数:25rad/s
【0141】
[分子量分布]
ポリマーの分子量分析に、次の条件でGPC分析を実施し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
装置:Waters社製 Alliance GPC 2000型
カラム:TSKgel GMH6-HTx2 TSKgel GMH6-HTLx2(いずれも東ソー社製、内径7.5mmx長さ30cm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)
検出器:示差屈折計
流量:1.0mL/min
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.5mL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)。
・・(中略)・・
【0145】
[エチレン割合]
プロピレン・エチレン共重合体(C)のエチレンに由来する構成単位の割合(mol%)を、13C-NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。
13C-NMRスペクトルは、日本電子製EX-400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o-ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
・・(中略)・・
【0149】
[プロピレン系重合体(A1)の製造]
(1)固体触媒担体の製造
1L枝付フラスコにSiO2(AGCエスアイテック製サンスフェアH121)300gをサンプリングし、トルエン800mLを入れ、スラリー化した。次に5L4つ口フラスコへ移液をし、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、MAO)-トルエン溶液(10wt%溶液)を2830mL導入した。室温のままで、30分間攪拌した。1時間で110℃に昇温し、4時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0150】
(2)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L4つ口フラスコに[3-(1’,1’,4’,4’,7’,7’,10’,10’-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-tert-ブチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライドを1.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.5Lおよび前記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー2.0L(固体成分として100g)を窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。
【0151】
得られた[3-(1’,1’,4’,4’,7’,7’,10’,10’-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-tert-ブチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。その後に固形分(固体触媒成分)を回収した。
【0152】
(3)前重合触媒の製造
前記(2)で調製した固体触媒成分101g、トリエチルアルミニウム111mL、ヘプタン80Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちエチレンを303g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。
【0153】
重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で1g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0154】
(4)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を5NL/時間、前記(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として3.2g/時間、トリエチルアルミニウム1.0ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0155】
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.10mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。次いで得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.10mol%になるように供給した。重合温度69℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。更に得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを12kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.10mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。最後に得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを13kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.10mol%になるように供給した。重合温度67℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行い、プロピレン系重合体を40kg/時間で得た。
【0156】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、コニカル乾燥機に導入して80℃で真空乾燥を行った。
以上のようにして得られたプロピレン系重合体のMFR(230℃、荷重2.16kg)は4.0g/10分、ペンタッド分率(mmmm)は95%、Tmピークの半値幅は3.3℃、Mw/Mnは3.0であった。
【0157】
得られたプロピレン系重合体を、デグラ剤(カヤヘキサAD;化薬アクゾ株式会社)を用いて処理し、プロピレン系重合体(A1)を得た。プロピレン系重合体(A1)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は103g/10分、粘度η*(周波数:25rad/s)(210℃)は210Pa・s、Mw/Mnは2.2、ペンタッド分率(mmmm)は95%、Tmピークの半値幅は8.5℃であった。
【0158】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の製造]
(触媒の調製)
充分に窒素置換した300リットルの反応器に600℃で10時間乾燥したシリカ10.0kgとトルエン154リットルとを装入し、懸濁状にして0℃まで冷却した。その後、この懸濁液に、メチルアミノキサンのトルエン溶液(Al=3.02モル/リットル)23.4リットルを1時間かけて滴下した。この際、系内の温度を0~5℃の範囲に保った。引続き0℃で30分間反応させ、次いで1.5時間かけて95℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーション法により除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエン100リットルで再懸濁し、全量を160リットルとした。
【0159】
このようにして得られた懸濁液に、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr=25.6ミリモル/リットル)20.0リットルを35℃で30分間かけて滴下し、さらに35℃で2時間反応させた。その後、上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄することにより、固体触媒成分1g当り3.2mgのジルコニウムを含有する固体触媒成分(1)を得た。
【0160】
(予備重合触媒の調製)
充分に窒素置換した350リットルの反応器に、上記で調製した固体触媒成分(1)7.0kgとヘキサンを装入し、全容積を285リットルにした。系内を10℃まで冷却した後、エチレンを8Nm3/hrの流量で5分間ヘキサン中に吹き込んだ。この間、系内の温度は、10~15℃に保持した。その後、エチレンの供給を停止し、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBALH)を2.4モルおよび1-ヘキセンを1.2kg装入した。系内を密閉系にした後、8Nm3/hrの流量でエチレンの供給を再度開始した。15分後、エチレンの流量を2Nm3/hrに下げ、系内の圧力を0.08MPaGにした。この間に、系内の温度は35℃まで上昇した。その後、系内の温度を32~35℃に調節しながら、エチレンを4Nm3/hrの流量で3.5時間供給した。この間、系内の圧力は0.07~0.08MPaGに保持されていた。次いで、系内を窒素により置換を行った後、上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄した。このようにして固体触媒成分1g当たり3gのポリマーが予備重合された予備重合触媒(2)を得た。
【0161】
(重合)
連続式流動床気相重合装置を用い、全圧2.0MPaG、重合温度80℃、ガス線速0.7m/秒で、エチレンと1-ヘキセンとの共重合を行った。
【0162】
上記で調製した予備重合触媒(2)を4.1g/hrおよびトリイソブチルアルミニウム(TIBA)を5ミリモル/hrの割合で連続的に供給しながら重合を開始した。
重合の間一定のガス組成を維持するためにエチレン、1-ヘキセン、水素、窒素を連続的に供給した(ガス組成;1-ヘキセン/エチレン=0.03、水素/エチレン=4.2×10-4、エチレン濃度=71%)。得られたエチレン・1-ヘキセン共重合体の収量は6.0kg/hrであり、密度が913kg/m3であり、MFR(230℃、荷重2.16kg)が6.2g/10分、MFR(190℃、荷重2.16kg)が3.3g/10分、粘度η*(周波数:25rad/s)(210℃)が746Pa・sであった。
なお、得られたエチレン・1-ヘキセン共重合体をエチレン・α-オレフィン共重合体(B1)とも記す。
【0163】
[プロピレン・エチレン共重合体(C1)の製造]
容積300リットルの連続重合器の供給口より、メタロセン触媒化合物((8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド)を0.026mmol/hr、修飾メチルアルミノキサンを6.5mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを3.5mmol/hrで、トルエンとともに連続的に供給した(合計33L/hr)。
【0164】
同時に重合器の別の供給口より、プロピレンを15kg/hr、エチレンを2.7kg/hr、水素を4L/hrの割合で連続供給し、重合温度60℃、全圧1.3MPaG、滞留時間100分の条件下で連続溶液重合を行った。
【0165】
重合器で生成したプロピレン・エチレン共重合体のトルエン溶液は、加温しトルエンを除去した。その結果、プロピレン・エチレン共重合体が11.1kg/hの生産スピードで得られた。
【0166】
得られたプロピレン・エチレン共重合体(C1)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は10g/10min、エチレン含量は28mol%、粘度η*(周波数:25rad/s)は961Pa・s、Mw/Mnは3であった。
【0167】
[プロピレン・エチレン共重合体(C2)の製造]
容積300リットルの連続重合器の供給口より、メタロセン触媒化合物((8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド)を0.023mmol/hr、修飾メチルアルミノキサンを5.8mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを3.1mmol/hrで、トルエンとともに連続的に供給した(合計33L/hr)。
【0168】
同時に重合器の別の供給口より、プロピレンを15kg/hr、エチレンを3.1kg/hr、水素を2L/hrの割合で連続供給し、重合温度60℃、全圧1.3MPaG、滞留時間100分の条件下で連続溶液重合を行った。
【0169】
重合器で生成したプロピレン・エチレン共重合体のトルエン溶液は、加温しトルエンを除去した。その結果、プロピレン・エチレン共重合体が9.3kg/hの生産スピードで得られた。
【0170】
得られたプロピレン・エチレン共重合体(C2)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は6g/10min、エチレン含量は26mol%、粘度η*(周波数:25rad/s)は1640Pa・s、Mw/Mnは3であった。
【0171】
[プロピレン・エチレン共重合体(C3)の製造]
容積300リットルの連続重合器の供給口より、メタロセン触媒化合物((8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド)を0.020mmol/hr、修飾メチルアルミノキサンを5.0mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを2.7mmol/hrで、トルエンとともに連続的に供給した(合計33L/hr)。
【0172】
同時に重合器の別の供給口より、プロピレンを14kg/hr、エチレンを2.1kg/hr、水素を1L/hrの割合で連続供給し、重合温度60℃、全圧1.3MPaG、滞留時間100分の条件下で連続溶液重合を行った。
【0173】
重合器で生成したプロピレン・エチレン共重合体のトルエン溶液は、加温しトルエンを除去した。その結果、プロピレン・エチレン共重合体が8.01kg/hの生産スピードで得られた。
【0174】
得られたプロピレン・エチレン共重合体(C3)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は2g/10min、エチレン含量は24mol%、粘度η*(周波数:25rad/s)は3250Pa・s、Mw/Mnは3であった。
【0175】
[プロピレン・エチレン共重合体(C4)の製造]
C1~3と同様の手法を適用し、MFR(230℃、荷重2.16kg)が1g/10min、エチレン含量は24mol%、粘度η*(周波数:25rad/s)は4540Pa・s、Mw/Mnは3なるように調整し、プロピレン・エチレン共重合体(C4)を得た。
【0176】
[参考例1]
プロピレン系重合体(A1)を100質量部、造核剤としてミラードNX8000(ミリケン社製)を0.3質量部、および添加剤としてリン系酸化防止剤[トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト]を0.1質量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.09質量部、滑剤としてエルカ酸アミドを0.07質量部、デグラ剤としてカヤヘキサAD(化薬アクゾ株式会社)を0.12質量部、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合し、その混合物をナカタニ機械社製の二軸押出機(NR-36)を用いて下記条件にて溶融混練しストランドを得た。
得られたストランドを水冷後ペレタイザーにて切断する事によりプロピレン系樹脂組成物のペレット(1)を得た。
【0177】
(二軸押出機条件)
型式:NR-36
スクリュー回転数250rpm
樹脂温度200℃
得られたペレット(1)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
【0178】
得られたペレット(1)から、型締め力40トンの電動射出成形機(東芝機械製シリーズモデルEC40NII)を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件で、長さ60mm、幅60mm、厚さ1mmの試験片を射出成形しヘイズ測定用角板試験片を得た。
【0179】
また、同条件で引張弾性率用試験片(JIS K7162-BA)(5mm(幅)×2mm(厚さ)×75mm(長さ))、シャルピー衝撃強度用試験片(10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ))を作製した。
これら試験片を用いて、ヘイズ、引張弾性率、シャルピー衝撃強度(シングルノッチ、エッジワイズ垂直、温度0℃)を測定した。結果を表4に示した。
【0180】
[参考例2]
造核剤の量を0.3質量部から0.41質量部に変更した以外は、参考例1と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(2)を得た。
【0181】
得られたプロピレン系樹脂組成物のペレット(2)を73質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)を27質量部を混合し、その混合物を東洋精機製作所社製の二軸押出機(ラボプラストミル・マイクロ)を用いて、溶融混練しストランドを得て、さらにペレタイザーで切断し、プロピレン系樹脂組成物のペレット(3)を得た。
【0182】
得られたペレット(3)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(3)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
(二軸押出機条件)
型式:ラボプラストミル・マイクロ
スクリュー回転数45rpm
樹脂温度200℃
【0183】
[実施例1]
造核剤の量を0.3質量部から0.43質量部に変更した以外は、参考例1と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(4)を得た。
【0184】
得られたプロピレン系樹脂組成物のペレット(4)を69質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)を25質量部、プロピレン・エチレン共重合体(C1)を6質量部を混合し、その混合物を東洋精機製作所社製の二軸押出機(ラボプラストミル・マイクロ)を用いて、溶融混練しストランドを得て、さらにペレタイザーで切断し、プロピレン系樹脂組成物のペレット(5)を得た。
【0185】
得られたペレット(5)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(5)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
(二軸押出機条件)
型式:ラボプラストミル・マイクロ
スクリュー回転数45rpm
樹脂温度200℃
【0186】
[比較例1]
プロピレン系樹脂組成物1(J13BP;プライムポリマー社製)を70質量部、プロピレン系樹脂組成物2(J105P;プライムポリマー社製)を30質量部、造核剤としてミラードNX8000(ミリケン社製)を0.3質量部、および添加剤としてリン系酸化防止剤[トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト]を0.1質量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.09質量部、滑剤としてエルカ酸アミドを0.07質量部をヘンシェルミキサーにて攪拌混合し、その混合物をナカタニ機械社製の二軸押出機(NR-36)を用いて参考例1と同じ条件にて溶融混練しストランドを得た。
【0187】
得られたストランドを水冷後ペレタイザーにて切断する事によりプロピレン系樹脂組成物のペレット(6)を得た。
得られたペレット(6)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(6)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0188】
[比較例2]
造核剤の量を0.3質量部から0.41質量部に変更した以外は、比較例1と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(7)を得た。
【0189】
得られたプロピレン系樹脂組成物のペレット(7)を73質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)を27質量部を混合し、参考例2と同様の方法で、溶融混練しストランドを得て、ペレタイザーで切断し、プロピレン系樹脂組成物のペレット(8)を得た。
【0190】
得られたペレット(8)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(8)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0191】
[比較例3]
造核剤の量を0.3質量部から0.43質量部に変更した以外は、比較例1と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(9)を得た。
【0192】
得られたプロピレン系樹脂組成物のペレット(9)を69質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)を25質量部、プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)を6質量部を混合し、実施例1と同様の方法で、溶融混練しストランドを得て、ペレタイザーで切断し、プロピレン系樹脂組成物のペレット(10)を得た。
【0193】
得られたペレット(10)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(10)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0194】
なお、タフマーS4020は、チグラー・ナッタ触媒を用いて重合されたPERであり、MFR(230℃)は2g/10分、エチレン含有割合は31mol%、粘度η*(周波数:25rad/s)は2430Pa・s、Mw/Mnは5であった。
【0195】
[比較例4]
プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(C1)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(11)を得た。
【0196】
得られたペレット(11)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(11)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0197】
[比較例5]
プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(C2)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(12)を得た。
【0198】
得られたペレット(12)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(12)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0199】
[比較例6]
プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(C3)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(13)を得た。
【0200】
得られたペレット(13)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(13)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0201】
[比較例7]
プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4030、三井化学社製)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(14)を得た。
【0202】
得られたペレット(14)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(14)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0203】
なお、タフマーS4030は、チグラー・ナッタ触媒を用いて重合されたPERであり、MFR(230℃、荷重2.16kg)は0.4g/10分、エチレン含有割合は31mol%、粘度η*(周波数:25rad/s)は4870Pa・s、Mw/Mnは5であった。
【0204】
[比較例8]
プロピレン系樹脂組成物1(J13BP;プライムポリマー社製)を70質量部から100質量部に変更し、プロピレン系樹脂組成物2(J105P;プライムポリマー社製)を30質量部から0質量部に変更し、プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(C4)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(15)を得た。
【0205】
得られたペレット(15)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(15)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0206】
[比較例9]
プロピレン系樹脂組成物1(J13BP;プライムポリマー社製)を70質量部から85質量部に変更し、プロピレン系樹脂組成物2(J105P;プライムポリマー社製)を30質量部から15質量部に変更し、プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(C4)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(16)を得た。
【0207】
得られたペレット(16)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(16)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0208】
[比較例10]
プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(C4)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(17)を得た。
【0209】
得られたペレット(17)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(17)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0210】
[比較例11]
プロピレン系樹脂組成物1(J13BP;プライムポリマー社製)を70質量部から52質量部に変更し、プロピレン系樹脂組成物2(J105P;プライムポリマー社製)を30質量部から48質量部に変更し、プロピレン・エチレン共重合体(タフマーS4020;三井化学社製)をプロピレン・エチレン共重合体(C4)に変更した以外は、比較例3と同様に行い、プロピレン系樹脂組成物のペレット(18)を得た。
【0211】
得られたペレット(18)を用いて、プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(230℃、荷重2.16kg)の測定を実施した。結果を表4に示した。
得られたペレット(18)について、参考例1と同様の方法で、成形し、試験片を得て、各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0212】
参考例、実施例、比較例で用いたプロピレン系重合体の物性を表1に示し、エチレン・α-オレフィン共重合体の物性を表2に示し、プロピレン・エチレン共重合体の物性を表3に示し、参考例、実施例、比較例で得られたプロピレン系樹脂組成物の物性、評価結果を表4に示す。
【0213】
なお、表1におけるJ13BP:J105P=70:30、J13BP:J105P=85:15、J13BP:J105P=52:48との記載は、それぞれ、J13BPとJ105Pとの質量比が70:30、85:15、52:48の混合物であることを意味する。
【0214】
なお、J13BPとJ105Pとの混合物の物性は、J13BPとJ105Pとを所定の質量比で、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合し、その混合物をナカタニ機械社製の二軸押出機(NR-36)を用いて参考例1と同じ条件にて溶融混練することにより得られたストランドについて測定した。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
実施例および比較例1~4より、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、引張弾性率、シャルピー衝撃強度に優れるとの特性を有したまま、ヘイズが低い(透明性に優れる)ことがわかる。
また、実施例および比較例3、5~11より、前述の粘度の比(Bの粘度/Aの粘度)および(Cの粘度/Bの粘度)の最適範囲がわかる。」
3.検討
(1)実施例(比較例)に係る部分以外の部分の記載について
本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例に係る部分以外の部分(【0001】ないし【0136】)の記載を検討すると、請求項1に記載された(A1)ないし(A3)、(B1)、(B2)、(C1)及び(C2)に係る各事項、請求項2に記載された事項並びに請求項3に記載された事項のそれぞれにつき、好適な数値範囲が具体的に記載されており、さらに、各事項のそれぞれの数値範囲につき外れた場合に物性等が低下することが具体的に記載されている(摘示(b)ないし(e)の下線部参照)から、それらの事項をいずれかを具備するか否かにより、上記1.に示した本件発明の解決課題に即した効果を発現すべき作用機序につき、明らかにされているものと認められる。
してみると、これらを総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例に係る部分以外の部分に基づき、請求項1に記載された(A1)ないし(A3)、(B1)、(B2)、(C1)及び(C2)に係る各事項を具備する場合並びに請求項1を引用する請求項2に記載された事項又は請求項3に記載された事項を具備する場合であれば、上記1.に示した本件発明の解決課題を解決できると当業者が認識できるものと認められる。
(2)実施例(比較例)に係る部分の記載について
本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分(【0137】ないし【0219】)の記載を検討すると、実施例の場合につき、比較例の場合に比して、樹脂組成物のMFR、ヘイズ、シャルピー衝撃強度及び引張弾性率につきバランスがとれて改善されていることが看取することができ(摘示(f)の下線部及び【表1】ないし【表4】参照)、当該実施例(比較例)に係る記載の対比に基づいて、本件の各請求項に記載された事項で特定される本件発明が、上記1.に示した本件発明に係る解決課題を解決できると当業者が看取・認識できるように記載されているものといえる。
(3)検討
以上を総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記1.に示した本件発明に係る解決課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているものということができる。
したがって、本件の各請求項に記載された事項で特定される本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものというべきである。
(4)申立人の主張について
ア.申立人が主張する具体的論点
申立人は、本件申立書において、上記取消理由に係る論点として、概略以下の3点を主張しているので以下それぞれ検討する。
(a)プロピレン系樹脂組成物の各成分の含有量について
(b)エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度について
(c)プロピレン・エチレン共重合体(C)のエチレン構成単位のmol%について
イ.検討
(ア)上記(a)の点について
上記(a)の点につき検討すると、申立人が主張するとおり、「プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)及びプロピレン・エチレン共重合体(C)の含有量によって、低温耐衝撃性、透明性が変化することは技術常識である」ことは一応首肯できるものの、当該3種の成分の含有量比を変化させることにより、低温耐衝撃性及び透明性がどのように変化するか又はどのように変化する傾向にあるかまでは、当業者の技術常識であるということができない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)、プロピレン・エチレン共重合体(C)を含む。プロピレン系樹脂組成物の各成分の含有量は、プロピレン系重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)およびプロピレン・エチレン共重合体(C)の合計を100質量部とすると、通常はプロピレン系重合体(A)57~80質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)17~40質量部、プロピレン・エチレン共重合体(C)3~20質量部であり、好ましくはプロピレン系重合体(A)62~75質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)22~35質量部、プロピレン・エチレン共重合体(C)3~10質量部である。」(【0114】)とは記載されるものの、当該「通常」の場合以外に本件発明が低温耐衝撃性及び透明性に係る効果を奏することができないであろうと当業者が認識すべき技術常識が存するものでもない。
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当該3種の成分の含有量比のいかんを問わず、要件(A1)を満たすことにより、成形体の透明性に優れること(【0020】)、要件(A3)のMFRの範囲を上回ると、成形体の耐衝撃性が劣ること(【0023】)、要件(B1)の密度の範囲を外れると透明性が低下すること(【0056】及び【0057】)、要件(B2)のMFRの範囲を上回ると、成形体の耐衝撃性が劣ること(【0061】)並びに要件(C1)の「Mw/Mn」の範囲を満たすことにより、透明性、耐衝撃性に優れること(【0100】)がそれぞれ記載されており、各要件に係る事項を具備しても、3種の成分の含有量比により、本件発明が低温耐衝撃性及び透明性に係る効果を奏することができない場合が存すると認識することもできない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして、当業者は、上記3種の成分の含有量比につき特定されていない本件発明のものであっても、上記低温耐衝撃性及び透明性に係る効果を奏し、本件発明の解決課題を解決できるものと認識し得るものと認められる。
したがって、申立人の上記(a)の点に係る主張は当を得ないものである。
(イ)上記(b)の点について
上記(b)の点につき検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が885~925kg/m3であ」ること(要件(B1))が記載され(【0055】)、当該要件(B1)の密度の範囲を外れると(成形体の)透明性が低下すること(【0056】及び【0057】)が記載されているから、当該記載に照らして、当業者は、上記要件(B1)を具備することにより、本件発明が上記透明性に係る効果を奏するであろうことが認識できるものといえる。
なお、申立人は、甲第1号証(特許第5511685号公報)を提示し、プロピレン-エチレンブロック共重合体であるプロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)とを含むプロピレン系樹脂組成物において、当該「エチレン・α-オレフィン共重合体(B)」の密度につき900~919kg/m3に限定され、当該範囲を外れると成形体の透明性が低下することが当業者の技術常識として開示されていることに基づき、本件発明における要件(B1)の範囲のうち、885~900kg/m3未満及び919超~925kg/m3の各範囲で本件発明に係る透明性についての効果を得られるか否か当業者であっても予測することはできない旨をもって、本件発明1の範囲まで拡張又は一般化できないと主張している(申立書第11頁第9行~第18頁第23行)。
しかしながら、甲第1号証に係るプロピレン系重合体(A)は、「プロピレン-エチレンブロック共重合体」なる、プロピレンホモポリマーからなるマトリックス中にプロピレン-エチレンコポリマーからなるドメインが分散されてなるいわゆる「海-島構造」なる特殊構造をそもそも有するものであり、甲第1号証に係るプロピレン系樹脂組成物は、当該特殊構造を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体であるプロピレン系重合体(A)に更にエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を他の「島構造」として単に含む場合をも包含するものといえる(甲第1号証【0032】)。
それに対して、本件発明のプロピレン系樹脂組成物につき、本件特許明細書には、「本発明のプロピレン系樹脂組成物は、主としてプロピレン系重合体(A)を連続相、すなわち海相とした、いわゆる海島構造をとる。また、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)は主に島相を構成する」とし、「プロピレン・エチレン共重合体(C)は、プロピレン系重合体(A)と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)との界面に存在することが望ましく、その場合は成形体が高透明になる。」とされており(【0124】)、プロピレン・エチレン共重合体(C)が、プロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)との界面に存在するようにするために、重合体(A)と共重合体(B)との粘度比及び共重合体(C)と共重合体(B)との粘度比について、それぞれ適当な範囲を上回る場合、ヘイズが悪化することも記載されている(【0125】~【0128】)。
してみると、甲第1号証に係るプロピレン系樹脂組成物は、その特殊構造として本件発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(C)が、プロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)との界面に存在する海島構造の場合を含む多種多岐にわたる広範な海島構造を有するものであり、その際においては、共重合体(B)の密度につき900~919kg/m3に限定すべきであり、その範囲を外れると透明性が低下することが開示されているのみであって、本件発明のプロピレン系樹脂組成物にあっては、共重合体(B)の密度が885~925kg/m3であることを前提として、そのうち、たとえ885~900kg/m3未満及び919超~925kg/m3の各範囲の場合であっても、例えば上記粘度比に係る規定を任意付加的に具備することにより、透明性に係る効果を発現できるであろうことは、当業者が認識することができるものと認められる。
したがって、申立人の甲第1号証に基づく主張は、当を得ないものである。
よって、申立人の上記(b)の主張は、当を得ないものである。
(ウ)上記(c)の点について
上記(c)の点につき検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「プロピレン・エチレン共重合体(C)は、要件(C1)および(C2)を満たしていればよく、特に限定はされない。」とされる(【0099】)とともに、当該要件(C2)につき「前記プロピレン・エチレン共重合体(C)のエチレンに由来する構成単位のmol%が、プロピレン・エチレン共重合体(C)100質量%中25~35mol%であり、好ましくは25~30mol%である。」とされている(【0101】)のみであり、当該「エチレンに由来する構成単位の質量が、プロピレン・エチレン共重合体(C)100質量%中25~35mol%であ」っても、本件発明の上記解決課題に対応する効果を奏し得ない場合が存すると当業者が認識し得る記載が存するものともいえず、当業者が、その技術常識に照らして、本件発明の上記解決課題に対応する効果を奏し得ない場合が存すると認識できるものともいえない。
なお、申立人は、甲第1号証(特許第5511685号公報)を提示し、プロピレン-エチレンブロック共重合体であるプロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)とを含むプロピレン系樹脂組成物において、当該「プロピレン-エチレンブロック共重合体であるプロピレン系重合体(A)」の一部を構成し、本件発明における「プロピレン・エチレン共重合体(C)」に相当する「Dsol」部につき25~35重量%、すなわち33.3~44.7mol%に限定され、当該範囲を外れる(比較例5)と成形体の低温耐衝撃性が低下することが当業者の技術常識として開示されていることに基づき、本件発明における要件(C2)の範囲のうち、30超~35mol%の範囲で本件発明に係る低温耐衝撃性についての効果を得られるか否か当業者であっても予測することはできない旨をもって、本件発明1の範囲まで拡張又は一般化できないと主張している(申立書第19頁第23行~第20頁末行)。
しかしながら、上記(イ)でも説示したとおり、甲第1号証に係るプロピレン系樹脂組成物は、その特殊構造として本件発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(C)が、プロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)との界面に存在する海島構造の場合を含む多種多岐にわたる広範な海島構造を有するものであり、その際においては、共重合体(C)のエチレン含量につき33.3~44.7mol%に限定すべきであり、その範囲を外れると低温耐衝撃性が低下することが開示されているのみであって、本件発明のプロピレン系樹脂組成物にあっては、共重合体(C)のエチレン含量につき上記甲第1号証における範囲外である28mol%の場合(実施例1)であっても、低温耐衝撃性に係る効果を発現できているのであるから、本件発明において、上記共重合体(C)のエチレン含量につき30超~35mol%の範囲であっても本件発明の上記解決課題に対応する効果(特に低温耐衝撃性)を奏し得るであろうと当業者が認識することができるものと認められる。
したがって、申立人の甲第1号証に基づく主張は、当を得ないものである。
よって、申立人の上記(c)の主張は、当を得ないものである。
(エ)申立人の主張に係るまとめ
以上のとおり、申立人の上記(a)ないし(c)に係る主張は、いずれも当を得ないものであるから、採用することはできない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件の各請求項の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであって、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たすものである。
4.当審の判断のまとめ
よって、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項の規定に違反した特許出願に対してされたものということはできないから、上記取消理由は理由がなく、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、取り消すことができない。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許に係る異議申立において特許異議申立人が主張する取消理由は理由がなく、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許は、取り消すことができない。
ほかに、本件の請求項1ないし5に係る発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-700101