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特許異議申立

2024-700855

硬化性樹脂組成物、樹脂膜、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、及び、半導体デバイス

審判番号
2024-700855
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-575807
登録番号
7453260
請求日
2024年09月09日
審決日
2025年09月11日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】富士フイルム株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 岡谷 祐哉
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7453260号発明「硬化性樹脂組成物、樹脂膜、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、及び、半導体デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7453260号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-22〕について訂正することを認める。 特許第7453260号の請求項1-22に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7453260号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~22に係る特許は、令和3年2月2日を国際出願日(優先日 令和2年2月3日、同年6月30日、日本国)とする特願2021-575807号であって、令和6年3月11日にその特許権の設定登録(請求項の数22)がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月9日に弁理士法人朝日奈特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~22)がされたものである。 その後の手続は以下のとおりである。 令和6年12月26日付け 取消理由通知 令和7年 3月 5日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 5月 1日付け 訂正請求があった旨の通知 なお、申立人から意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和7年3月5日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(5)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に対し、「前記溶剤として、ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノンを含み、」、「前記溶剤のうち、最もSP値が高い溶剤と、最も低い溶剤との差が0.2~11.5MPaであり、」、「前記構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量が、溶剤の全質量に対して20~80質量%であり、」及び「溶剤の合計含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量であり、」という要件を追加する訂正を行う。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3において、「γ-ブチロラクトンの含有量が40質量%以下である」なる記載を、「γ-ブチロラクトンの含有量が0質量%以上40質量%以下である」なる記載に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6において、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン及び乳酸エチル、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせ」なる記載、及び、「γ-ブチロラクトンの含有量が40質量%以下である」なる記載を、それぞれ、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせ」、及び、「γ-ブチロラクトンの含有量が0質量%以上40質量%以下である」なる記載に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7において、「前記溶剤が、N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン及び乳酸エチル、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせを含み、」なる記載を、「前記溶剤が、N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノンの組み合わせを含み、」なる記載に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項10に対し、「N-メチル-2-ピロリドンは前記含窒素複素環構造を有する溶剤に含まれる、」とする訂正を行う。 2 一群の請求項について (1)訂正前の請求項2、4、5、8~14、16~22は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、2、4、5、8~14、16~22に対応する訂正後の請求項1、2、4、5、8~14、16~22は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正前の請求項5、8~22は、請求項3を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項2によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項3、5、8~22に対応する訂正後の請求項3、5、8~22は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (3)訂正前の請求項8~22は、請求項6を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項3によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項6、8~22に対応する訂正後の請求項6、8~22は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (4)また、訂正前の請求項8~22は、請求項7を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項4によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項7~22に対応する訂正後の請求項7~22は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (5)そして、上記各一群の請求項は、共通する請求項8~14、16~22を有しているため、これらの一群の請求項が組み合わされて、請求項1~22が一群の請求項を構成する。 したがって、訂正前の請求項1~22に対応する訂正後の請求項1~22は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1による訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「前記溶剤として、ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノンを含み、」、「前記溶剤のうち、最もSP値が高い溶剤と、最も低い溶剤との差が0.2~11.5MPaであり、」、「前記構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量が、溶剤の全質量に対して20~80質量%であり、」及び「溶剤の合計含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量であり、」と、溶剤に関する特定事項を追加してその範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、上記訂正された事項は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0420】、【0032】、【0037】及び【0040】に記載されているから、当該訂正は新規事項を追加するものではない。 また、訂正事項1による請求項2、4、5、8~14、16~22についての訂正も同様である。 (2)訂正事項2による訂正について 訂正事項2による請求項3についての訂正は、令和6年12月26日付けで通知した明確性要件違反の取消理由に対応して、γ-ブチロラクトンの含有量の下限を「0質量%以上」とし、「0質量%」を包含することを明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、上記訂正された事項は、本件特許明細書の段落【0035】に記載されているから、当該訂正は新規事項を追加するものではない。さらに、γ-ブチロラクトンの含有量の下限について、元来「0質量%以上」であることを意図していたところ、そのことを明記したに過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 また、訂正事項2による請求項5、8~22についての訂正も同様である。 (3)訂正事項3による訂正について ア 訂正事項3による請求項6についての訂正は、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン及び乳酸エチル、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせ」の三つの選択肢から、「N-メチル-2-ピロリドン及び乳酸エチル」を削除し、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせ」の二つの選択肢に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、当該訂正は、選択肢を削除しただけであるから、新規事項を追加するものではないし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項3による請求項6についての訂正は、訂正事項2による請求項3についての訂正と同様、γ-ブチロラクトンの含有量の下限を「0質量%以上」とし、「0質量%」を包含することを明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではないし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 また、訂正事項3による請求項8~22についての訂正も同様である。 (4)訂正事項4による訂正について 訂正事項4による請求項7についての訂正は、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン及び乳酸エチル、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせ」の三つの選択肢から、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノンの組み合わせ」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記訂正された事項は、選択肢を削除しただけであるから、新規事項を追加するものではないし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 また、訂正事項4による請求項8~22についての訂正も同様である。 (5)訂正事項5による訂正について 訂正事項5による請求項10についての訂正は、令和6年12月26日付けで通知した明確性要件違反の取消理由に対応して、「含窒素複素環構造を有する溶剤」について、「N-メチル-2-ピロリドンは前記含窒素複素環構造を有する溶剤に含まれる」ことを明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、上記訂正された事項は、本件特許明細書の段落【0036】に記載されているから、当該訂正は新規事項を追加するものではない。また、「含窒素複素環構造を有する溶剤」について、元来「N-メチル-2-ピロリドンは前記含窒素複素環構造を有する溶剤に含まれる」ことを意図していたところ、そのことを明記したに過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 また、訂正事項5による請求項11~14、16~22についての訂正も同様である。 4 本件訂正後の独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~22のすべての請求項に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-22〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められるため、本件特許の請求項 1~22に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1~22を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤として、構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物、を含み、 前記溶剤として、ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノンを含み、 前記溶剤のうち、最もSP値が高い溶剤と、最も低い溶剤との差が0.2~11.5MPaであり、 前記構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量が、溶剤の全質量に対して20~80質量%であり、 溶剤の合計含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量であり、 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、 硬化性樹脂組成物。 【請求項2】 前記溶剤として、3種以上の溶剤を含有する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤として、構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含み、 前記溶剤がジメチルスルホキシド及び乳酸エチルを含み、前記溶剤の全質量に対する乳酸エチルの含有量が40質量%以上であり、前記溶剤の全質量に対するγ-ブチロラクトンの含有量が0質量%以上40質量%以下である、 硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 前記溶剤として、ジメチルスルホキシドを更に含む、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項5】 前記構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物が、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、又は、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項6】 ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤が、N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせを含み、 前記溶剤がジメチルスルホキシド及び乳酸エチルを含み、前記溶剤の全質量に対する乳酸エチルの含有量が40質量%以上であり、前記溶剤の全質量に対するγ-ブチロラクトンの含有量が0質量%以上40質量%以下である、 硬化性樹脂組成物。 【請求項7】 ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤が、N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノンの組み合わせを含み、 前記溶剤が、エーテル結合を有する溶剤を含む、 硬化性樹脂組成物。 【請求項8】 イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環およびトリアジン環からなる群より選択される1種以上の複素環とアミノ基とを有する化合物であるマイグレーション抑制剤を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項9】 5-メチルベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、及び、5-アミノ―1H-テトラゾールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であるマイグレーション抑制剤を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項10】 前記溶剤が、含窒素複素環構造を有する溶剤を含み、N-メチル-2-ピロリドンは前記含窒素複素環構造を有する溶剤に含まれる、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項11】 前記溶剤として、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及び、γ-ブチロラクトンを含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項12】 前記溶剤において、2番目に含有量が多い溶剤の含有量が、溶剤の全質量に対して20質量%以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項13】 シランカップリング剤を更に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項14】 収容容器内で-15~16℃の冷蔵に少なくとも1回供される保管に用いられ、前記冷蔵時の前記収容容器の全収容容積に対する硬化性樹脂組成物の充填率が、50~90%である、請求項1~13のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項15】 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、請求項3,6及び7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項16】 請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を基材に適用してなる樹脂膜。 【請求項17】 請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物、又は、請求項16に記載の樹脂膜を硬化してなる硬化膜。 【請求項18】 請求項17に記載の硬化膜を2層以上含み、前記硬化膜同士のいずれかの間に金属層を含む積層体。 【請求項19】 請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を基板に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化膜の製造方法。 【請求項20】 前記膜を露光する露光工程及び前記膜を現像する現像工程を含む、請求項19に記載の硬化膜の製造方法。 【請求項21】 前記膜を、50~450℃で加熱する加熱工程を含む、請求項19又は20に記載の硬化膜の製造方法。 【請求項22】 請求項17に記載の硬化膜又は請求項18に記載の積層体を含む、半導体デバイス。」 第4 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由、証拠方法等及び取消理由通知の概要 1 申立人が提出した申立書に記載した申立ての理由の概要 (1)申立理由1-1(甲第1号証に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項1、2、4、5、7、10~13、15~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由1-2(甲第2号証に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項1、2、4、5、7、10~13、15~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由1-3(甲第3号証に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項7、10、12及び13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由2-1(甲第1号証に基づく進歩性欠如) 本件特許の請求項1~7、10~13、15~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由2-2(甲第2号証に基づく進歩性欠如) 本件特許の請求項1~7、10~13、15~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由2-3(甲第3号証に基づく進歩性欠如) 本件特許の請求項7、10、12及び13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由3(サポ-ト要件違反) 本件特許の請求項1、2、4、5及び8~22に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (なお、申立書の第143ページにおいて、「同様に、本件特許発明1を引用する、本件特許発明2~5及び8~22も発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。」と記載されているところ、請求項3は請求項1を引用するものではないため、当該記載は「同様に、本件特許発明1を引用する、本件特許発明2、4、5及び8~22も発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。」の誤記と解するのが相当であるため、本件特許の請求項3は、申立理由3の申立ての対象から除外した。) (8)申立理由4(明確性要件違反) 本件特許の請求項3~22に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 (1)申立人が提出した証拠方法 申立人は、申立書に添付して以下の証拠を提出している。 甲第1号証:国際公開第2019/181782号 甲第2号証:国際公開第2016/167038号 甲第3号証:特開2015-232688号公報 以下、甲第1~3号証を「甲1」~「甲3」という。 3 取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審において、令和6年12月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如) 訂正前の本件特許の請求項1、5、12、13、16~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、訂正前の本件特許の請求項1、2、4、5、8~14、16~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性欠如) 訂正前の本件特許の請求項1、2、5、12、15、16~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、訂正前の本件特許の請求項1~22に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性欠如) 訂正前の本件特許の請求項7、10、12及び13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、訂正前の本件特許の請求項7、10、12及び13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)取消理由4(サポート要件違反) 訂正前の本件特許の請求項1、2、4、5及び8~22に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (5)取消理由5(明確性要件違反) 訂正前の本件特許の請求項3及び5~22に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 以下に述べるように、当審において通知した取消理由通知書に記載した取消理由、及び、申立書に記載した申立理由によっては、本件特許発明1~22に係る特許は取り消すことはできない。 1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)、申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)について 取消理由1、申立理由1-1及び申立理由2-1は、いずれも甲1に基づくものであるから、併せて検討する。 (1)甲1に記載された発明 甲1には、その請求の範囲に、「[請求項1] 一般式(1)で表される構造を有し、かつ次の(I)と(II)を満たすことを特徴とする、(A)アルカリ可溶性樹脂。 (I)一般式(1)のX1として炭素数8~30の脂肪族鎖を有する2価の有機基を、X1とX2の総量100モル%に対し30~70モル%含有する (II)一般式(1)のY1としてジフェニルエーテル構造を有する有機基を、 Y1とY2の総量100モル%に対し1~30モル%含有する [化1] [図:0001429993000001.jpg] (一般式(1)中のX1は炭素数2~100個の2価の有機基を表し、Y1およびY2は炭素数2~100個の2~6価の有機基を表し、X2は炭素数2~100個の4価の有機基を表し、pおよびqは0~4の範囲の整数を表し、n1およびn2は5から100,000の範囲の整数を表す。) [請求項4] 請求項1~3のいずれかに記載の(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)感光剤と(C)溶剤を含有する感光性樹脂組成物。 [請求項5] 前記(C)溶剤100質量部のうち、沸点が150~250℃かつ融点が-30℃以下であり、分子量が100以上の(D)化合物を0.1~50質量部含有することを特徴とする請求項4に記載の感光性樹脂組成物。 [請求項6] 前記(D)化合物が、沸点が150~250℃かつ融点が-45℃以下であり、分子量が100以上の(D-2)化合物であることを特徴とする請求項5に記載の感光性樹脂組成物。」が記載されている。 さらに、その請求の範囲には、「[請求項10] 請求項4~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物、あるいは請求項8または9に記載の感光性シートを硬化した硬化膜。 ・・・略・・・ [請求項15] 請求項10または11に記載の硬化膜が再配線間の層間絶縁膜として配置された電子部品または半導体装置。」と記載されていることから、甲1には、感光性樹脂組成物を「再配線間の層間絶縁膜の形成に用いられる」ことが記載されているといえる。 そして、上記請求項6に係る感光性樹脂組成物の実施態様である実施例15に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「下記樹脂(j)10gに下記光酸発生剤を2.0g、熱架橋剤としてHMOM-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)を0.5g、MW-100LM(商品名、(株)三和ケミカル製)を0.5g、KBM-1003(ビニルトリメトキシシラン)を0.1g、溶剤としてγ-ブチロラクトンを16g、(D-2)化合物としてMDMPA(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド)を4g加えて作成された、再配線間の層間絶縁膜の形成に用いられる感光性樹脂組成物。 樹脂(j):乾燥窒素気流下、ジアミンA:4、4-ジアミノジフェニルエーテル1.50g(0.0075モル)、BAHF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.99g(0.030モル)、RT-1000(トラメチレンエーテル基を有するジアミン HUNTSMAN(株)製)10.00g(0.010モル)をNMP(N-メチル-2-ピロリドン)100gに溶解させ、ここに、下記ジカルボン酸誘導体A7.43g(0.023モル)、下記ジカルボン酸誘導体B8.06g(0.023モル)をNMP25gとともに加えて、85℃で3時間反応させ、次に、SiDA(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン0.62g(0.0025モル)、ODPA(3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物)0.78g(0.0025モル)、NA(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸)0.82g(0.0050モル)をNMP25gとともに加えて、85℃で1時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却し、酢酸13.20g(0.25モル)をNMP25gとともに加えて、室温で1時間攪拌し、攪拌終了後、溶液を水1.5Lに投入して白色沈殿を得、この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の通風乾燥機で3日間乾燥して得られた樹脂。 ジカルボン酸誘導体A [図:0001429993000002.jpg] ジカルボン酸誘導体B [図:0001429993000003.jpg] 光酸発生剤 [図:0001429993000004.jpg] 」(以下、「甲1実施例15発明A」という。) 同様に、甲1の実施例17に着目すると、甲1実施例15発明Aにおいて、溶剤としてのγ-ブチロラクトンの配合量「16g」を「12g」に、(D-2)化合物としてのMDMPAの配合量を「4g」を「8g」に変更した「甲1実施例17発明A」についても記載されていると認められる。 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と甲1実施例15発明Aとを対比する。 甲1実施例15発明Aの「樹脂(j)」は、請求項6が引用する請求項1に記載される一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性樹脂の実施例であり、当該アルカリ可溶性樹脂は明らかにポリイミドであるから、本件特許発明1の「ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂」に相当する。 また、甲1実施例15発明Aの「γ-ブチロラクトン」は、本件特許発明1の「溶剤」に相当し、甲1実施例15発明Aの「MDMPA(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド)」は、本件特許発明1の「構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含」む「溶剤」に相当する。そうすると、甲1実施例15発明Aは、本件特許発明1の「少なくとも2種の溶剤を含」む事項を備えているといえる。 そして、甲1実施例15発明Aの感光性樹脂組成物は、熱架橋剤であるHMOM-TPHAP、MW-100LMを含むもので、甲1の段落[0124]に「現像後、150℃~500℃の温度を加えて熱架橋反応を進行させる。本発明での硬化膜とはこの加熱処理を行った膜を表す。」と「硬化」することが記載されていることから、甲1実施例15発明Aの「再配線間の層間絶縁膜の形成に用いられる感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤として、構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物、を含み、 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、 硬化性樹脂組成物。 <相違点1-1> 溶剤について、本件特許発明1は「前記溶剤として、ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノンを含み、 前記溶剤のうち、最もSP値が高い溶剤と、最も低い溶剤との差が0.2~11.5MPaであり、 前記構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量が、溶剤の全質量に対して20~80質量%であり、 溶剤の合計含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量」である事項を特定しているのに対し、甲1実施例15発明Aは、ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノンを含むものではなく、前記の特定された事項を備えているのか不明である点 (イ)相違点の検討 a 新規性について <相違点1-1>は、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は、甲1実施例15発明Aではない。 b 進歩性について 甲1の段落[0076]には、「本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)溶剤のうち、沸点が150~250℃かつ融点が-30℃以下の(D)化合物を含有することが好ましい。さらに、(D)化合物は、分子量が100以上であることが好ましい。融点が-30℃以下であることで、氷点下以下の低温下での硬化膜の機械特性が向上し、半導体デバイスなどの信頼性試験における、熱サイクル試験に対する耐性を向上させることができる。」と記載され、甲1実施例15発明Aの「MDMPA(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド)」が、(D)化合物に相当するものである。そして、甲1には、その他の溶剤について、「本発明の感光性樹脂組成物は(C)溶剤を含有する。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、N,N-ジメチルラクトアミドなどの非プロトン性極性溶媒・・・アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類・・・等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。」(段落[0074])と記載されている。 当該記載によると、ケトン類についての言及があるものの、「シクロペンタノン」という具体的化合物の記載はない。このため、γ-ブチロラクトンを、具体的に記載もされていない「シクロペンタノン」に代替したり、γ-ブチロラクトンに追加して「シクロペンタノン」を含有させる動機付けはない。 また、「ジメチルスルホキシド」については一応の例示がされているものの、多数例示された溶剤の一つに過ぎず、甲1には、「ジメチルスルホキシド」が特に好ましいことについて記載も示唆もされていないため、γ-ブチロラクトンを「ジメチルスルホキシド」に代替したり、γ-ブチロラクトンに追加して「ジメチルスルホキシド」を含有させる動機付けはないといえる。 そして、本件特許明細書の実施例を参酌すると、溶剤としてEA(3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド)とDMSO(ジメチルスルホキシド)を組み合わせた実施例7、及びEAとCyptn(シクロペンタノン)を組み合わせた実施例8の耐薬品性(調製6か月後)が、「1」(残膜率(%)が82.0%未満)~「10」(残膜率(%)が90.0%以上)段階の評価において、それぞれ「8」(残膜率(%)が88.0%以上89.0%未満)、「7」(残膜率(%)が87.0%以上88.0%未満)となっており、耐薬品性(調製6か月後)が優れていることが示されている。そして、当該組み合わせによる効果は、甲1の記載、他の証拠の記載及び本件特許優先日時の技術常識を参酌しても予測し得るものではない。 そうすると、本件特許発明1は、甲1実施例15発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、甲1実施例17発明Aは、甲1実施例15発明AのAMDMPAの配合量を「4g」から「8g」に変更しただけであるから、本件特許発明1と上記(ア)と同様の相違点でのみ相違する。 そうすると、上記で述べたのと同様、本件特許発明1は、甲1実施例17発明Aではないし、甲1実施例17発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3 (ア)対比 本件特許発明3と甲1実施例15発明Aとを、上記ア(ア)の相当関係を参考にして対比すると両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤として、構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物、を含む、 硬化性樹脂組成物。 <相違点1-3> 溶剤について、本件特許発明3は「ジメチルスルホキシド及び乳酸エチルを含み、前記溶剤の全質量に対する乳酸エチルの含有量が40質量%以上であり、前記溶剤の全質量に対するγ-ブチロラクトンの含有量が0質量%以上40質量%以下」である事項を特定しているのに対し、甲1実施例15発明Aは、ジメチルスルホキシド及び乳酸エチルを含むものではなく、前記の特定された事項を備えていない点 (イ)相違点の検討 甲1には、溶剤について、「本発明の感光性樹脂組成物は(C)溶剤を含有する。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、N,N-ジメチルラクトアミドなどの非プロトン性極性溶媒・・・アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル・・・などのエステル類、乳酸エチル・・・等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。」(段落[0074])と記載されている。 当該記載によると、「ジメチルスルホキシド」、「乳酸エチル」については一応の例示がされているものの、多数例示された溶媒の一つに過ぎないし、甲1には、「ジメチルスルホキシド」及び「乳酸エチル」が特に好ましいことについて記載もされていないため、γ-ブチロラクトンを「ジメチルスルホキシド」及び「溶剤の全質量に対する含有量が40質量%以上の乳酸エチル」に代替したり、γ-ブチロラクトンに追加して「ジメチルスルホキシド」及び「溶剤の全質量に対する含有量が40質量%以上の乳酸エチル」を含有させる動機付けはないといえる。 そうすると、本件特許発明3は、甲1実施例15発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲1実施例17発明Aも、本件特許発明3と上記と同様の相違点でのみ相違する。そうすると、上記で述べたのと同様、本件特許発明3は、甲1実施例17発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明3は、本件特許明細書の段落【0009】等の記載から、低温で長期間保管しても得られる樹脂膜の膜厚均一性に優れる効果を奏するものである。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明3は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明6 (ア)対比 本件特許発明6と甲1実施例15発明Aとを、上記ア(ア)の相当関係を参考にして対比すると、両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 硬化性樹脂組成物。 <相違点1-6-1> 溶剤について、本件特許発明6は「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせを含」むのに対し、甲1実施例15発明Aは、当該組み合わせを含まない点 <相違点1-6-2> 溶剤について、本件特許発明6は「前記溶剤がジメチルスルホキシド及び乳酸エチルを含み、前記溶剤の全質量に対する乳酸エチルの含有量が40質量%以上であり、前記溶剤の全質量に対するγ-ブチロラクトンの含有量が0質量%以上40質量%以下である」である事項を特定しているのに対し、甲1実施例15発明Aは、前記の特定された事項を備えていない点 (イ)相違点の検討 <相違点1-6-1>について 甲1には、溶剤について、「本発明の感光性樹脂組成物は(C)溶剤を含有する。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、N,N-ジメチルラクトアミドなどの非プロトン性極性溶媒・・・アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル・・・などのエステル類、乳酸エチル・・・等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。」(段落[0074])と記載されている。 上記記載によると、「N-メチル-2-ピロリドン」については一応の例示がされている。しかしながら、上記記載には、ケトン類についての言及があるものの、「シクロペンタノン」という化合物の記載はないし、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」については記載されていない。そうすると、甲1実施例15発明Aの溶剤を、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせ」に代替したり、追加する動機付けがあるとはいえない。 このため、<相違点1-6-2>を検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲1実施例15発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲1実施例17発明Aも、本件特許発明6と上記(ア)と同様の相違点でのみ相違する。 そうすると、上記で述べたのと同様、本件特許発明6は、甲1実施例17発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明6は、本件特許明細書の段落【0009】等の記載から、低温で長期間保管しても得られる樹脂膜の膜厚均一性に優れる効果を奏するものである。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明6は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件特許発明7 (ア)対比 本件特許発明7と甲1実施例15発明Aとを対比する。 甲1実施例15発明Aの「MDMPA(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド)」は、本件特許発明1の「構造内にエーテル結合を有する溶剤」に相当する。 また、その他、上記ア(ア)の相当関係を参考にすると、両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤が、エーテル結合を有する化合物を含む、 硬化性樹脂組成物。 <相違点1-7> 溶剤について、本件特許発明7は「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノンの組み合わせを含」むのに対し、甲1実施例15発明Aは、そのような組み合わせを含まない点 (イ) 相違点の検討 a 新規性について <相違点1-7>は、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明は、甲1実施例15発明Aではない。 b 進歩性について 上記ウ(イ)で述べたのと同様、甲1には、ケトン類についての言及があるものの、「シクロペンタノン」という化合物の記載はないから、甲1実施例15発明Aの溶剤を、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノンの組み合わせ」に代替したり、追加する動機付けがあるとはいえない。 そうすると、本件特許発明7は、甲1実施例15発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲1実施例17発明Aも、本件特許発明7と上記と同様の相違点でのみ相違する。そうすると、上記で述べたのと同様、本件特許発明7は、甲1実施例17発明A及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明7は、本件特許明細書の段落【0009】等の記載から、低温で長期間保管しても得られる樹脂膜の膜厚均一性に優れる効果を奏するものである。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明7は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件特許発明2、4、5、8~22について 本件特許発明2、4、5、8~22は、本件特許発明1、3、6又は7を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1、3、6又は7の発明特定事項を全て有するものであるから、上記ア~エで説示したのと同様の理由により、本件特許発明2、4、5、10~13、15~22は、甲1に記載された発明ではないし、本件特許発明2、4、5、8~22は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1、2、4、5、7、10~13、15~22は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1~22は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~22に係る特許は、取消理由1、申立理由1-1及び申立理由2-1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性欠如)、申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)について 取消理由2、申立理由1-2及び申立理由2-2は、いずれも甲2に基づくものであるから、併せて検討する。 (1)甲2に記載された発明 甲2には、その請求の範囲に、「[請求項1] 樹脂(A)として、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドの前駆体およびポリベンゾオキサゾールの前駆体からなる群から選択される1種以上の樹脂、有機溶媒(B)として、大気圧下における沸点が210℃以上260℃以下の有機溶媒、および有機溶媒(C)として、大気圧下における沸点が100℃以上210℃未満の有機溶媒を含有し、前記有機溶媒(B)の含有量が有機溶媒全量に対して5質量%以上70質量%以下であり、前記有機溶媒(C)の含有量が有機溶媒全量に対して30質量%以上95質量%以下である耐熱性樹脂組成物。」が記載されている。 さらに、請求の範囲には、「[請求項6] 請求項1~4のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥し、塗布膜を形成する工程、および前記塗布膜を加熱処理する工程を含む層間絶縁膜または表面保護膜の製造方法。」と記載されていることから、甲2には、耐熱性樹脂組成物を「層間絶縁膜の形成に用いられる」ことが記載されているといえる。 そして、上記請求項1に係る耐熱性樹脂組成物の実施態様である実施例17に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「下記ポリイミド前駆体10.0g、界面活性剤としてポリフロー77(商品名、共栄化学(株)製)0.04gを、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(沸点216℃)7.8gと乳酸エチル(沸点154℃)5,8gとプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)5.8gに加えて撹拌して得られた、層間絶縁膜の形成に用いられる耐熱性樹脂組成物。 ポリイミド前駆体:乾燥窒素気流下、合成例1で得られたHFHA51.3g(0.085モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA、信越化学(株)製)1.24g(0.005モル)、3-アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)200gに溶解し、ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA、マナック(株)製)31.0g(0.1モル)を加え、40℃で2時間撹拌後、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(三菱レーヨン(株)製、DFA)7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分間かけて滴下後、40℃で2時間撹拌を続け、撹拌終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿を濾過で集め、さらに水2Lで3回洗浄を行い、集めたポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥して得られたもの。」(以下、「甲2実施例17発明A」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1 (ア)対比 本件特許発明1と甲2実施例17発明Aとを対比する。 甲2実施例17発明Aの「ポリイミド前駆体」は、本件特許発明1の「ポリイミド前駆体」に相当する。また、甲2実施例17発明Aの「乳酸エチル」、「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は、本件特許発明1の「溶剤」に相当し、甲2実施例17発明Aの「3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド」は、本件特許発明1の「構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含」む「溶剤」に相当する。そうすると、甲2実施例17発明Aは、本件特許発明1の「少なくとも2種の溶剤を含」む事項を備えているといえる。 そして、甲2の[0020]には、「本発明の耐熱性樹脂組成物は、加熱あるいは触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有するポリマーとなり得るものである。好ましくは、ポリイミド前駆体のポリアミド酸やポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドなどが挙げられる。環状構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上する。」と記載され、ポリイミド前駆体のポリアミド酸が、環状構造のポリイミドとなり硬化するといえるから、甲2実施例17発明Aの「層間絶縁膜の形成に用いられる耐熱性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「層間絶縁膜の形成に用いられる硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で一応相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤として、構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物を含み、 層間絶縁膜の形成に用いられる、 硬化性樹脂組成物。 <相違点2-1-1> 層間絶縁膜の用途が、本件特許発明1が「再配線層用」であるのに対し、甲2実施例17発明Aはそのような特定がされていない点 <相違点2-1-2> 溶剤について、本件特許発明1は「前記溶剤として、ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノンを含み、 前記溶剤のうち、最もSP値が高い溶剤と、最も低い溶剤との差が0.2~11.5MPaであり、 前記構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量が、溶剤の全質量に対して20~80質量%であり、 溶剤の合計含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量」である事項を特定しているのに対し、甲2実施例17発明Aは、ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノンを含むものではなく、前記の特定された事項を備えているのか不明である点 (イ)相違点の検討 a 新規性について <相違点2-1-2>は、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は、甲2実施例17発明Aではない。 b 進歩性について 甲2には、有機溶媒(C-2)について、「有機溶媒(C-2)としては、前記樹脂(A)を溶解するものが好ましい。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)などのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピルアセテート(沸点102℃)、ブチルアセテート(沸点125℃)、イソブチルアセテート(沸点118℃)、などのアルキルアセテート類、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)、メチルプロピルケトン(沸点102℃)などのケトン類、ブチルアルコール(沸点117℃)、イソブチルアルコール(沸点108℃)などのアルコール類などが挙げられる。耐熱性樹脂組成物の保存安定性および粘度安定性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。」(段落 [0068])と記載されている。 上記記載によると、ケトン類についての言及があるものの、「シクロペンタノン」という化合物の記載はない。このため、有機溶媒(C-2)である「プロピレングリコールモノメチルエーテル」を、具体的に記載もされていない「シクロペンタノン」に代替したり、追加して「シクロペンタノン」を含有させる動機付けはない。 また、甲2には、有機溶媒(C-1)について、「有機溶媒(C-1)としては、前記樹脂(A)を溶解するものが好ましい。具体的には、乳酸エチル(沸点154℃)、乳酸ブチル(沸点186℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点189℃)、3-メトキシブチルアセテート(沸点171℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点160℃)、ガンマブチロラクトン(沸点203℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点204℃)、ジアセトンアルコール(沸点166℃)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(沸点154℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド(沸点175℃)が挙げられる。耐熱性樹脂組成物の保存安定性および粘度安定性の観点から乳酸エチルもしくはジエチレングリコールエチルメチルエーテルもしくはN,N-ジメチルイソ酪酸アミドがより好ましい。」(段落[0067])と記載されている。 上記記載によると、「ジメチルスルホキシド」については一応の例示がされているものの、多数例示された溶媒の一つに過ぎず、「ジメチルスルホキシド」が特に好ましいことについて記載されていないため、有機溶媒(C-1)である「乳酸エチル」を「ジメチルスルホキシド」に代替したり、追加して「ジメチルスルホキシド」を含有させる動機付けはないといえる。 そして、上記1(2)ア(イ)で述べたのと同様、本件特許明細書の溶剤としてEA(3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド)とDMSO(ジメチルスルホキシド)を組み合わせた実施例7、及びEAとCyptn(シクロペンタノン)を組み合わせた実施例8の耐薬品性(調製6か月後)が良好となっていることが示されており、当該効果は、甲2の記載、他の証拠の記載及び本件特許優先日時の技術常識を参酌しても予測し得るものではない。 そうすると、本件特許発明1は、甲2実施例17発明A及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明3 (ア)対比 本件特許発明3と甲2実施例17発明Aとを、上記ア(ア)の相当関係を参考にして対比する。 甲2実施例17発明Aは、溶剤の全質量に対する乳酸エチルの含有量が40質量%で、γ-ブチロラクトンの含有量が0質量%である点で本件特許発明3と重複一致する。 そうすると、両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤として、構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物、を含み、 前記溶剤が乳酸エチルを含み、溶剤の全質量に対する乳酸エチルの含有量が40質量%であり、 前記溶剤の全質量に対する γ-ブチロラクトンの含有量が0質量%である、 硬化性樹脂組成物。 <相違点2-3> 溶剤について、本件特許発明3は「ジメチルスルホキシドを含」むのに対し、甲2実施例17発明Aは、ジメチルスルホキシドを含むものではない点 (イ)相違点の検討 甲2の段落[0067]には、有機溶媒(C-1)について、「ジメチルスルホキシド」の例示がされているものの、多数例示された溶媒の一つに過ぎず、「ジメチルスルホキシド」が特に好ましいことについて記載されていないため、有機溶媒(C-1)として、耐熱性樹脂組成物の保存安定性および粘度安定性の観点から特に好ましいとされる「乳酸エチル」を、「ジメチルスルホキシド」に代替したり、追加して「ジメチルスルホキシド」を含有させる動機付けはないといえる。 そして、上記ア(イ)で述べたように、溶剤としてEA(3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド)とDMSO(ジメチルスルホキシド)を組み合わせた耐薬品性(調製6か月後)の効果は、甲2の記載、他の証拠の記載及び本件特許優先日時の技術常識を参酌しても予測し得るものではない。 そうすると、本件特許発明3は、甲2実施例17発明A及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明3は、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明6 (ア)対比 本件特許発明6と甲2実施例17発明Aとを、上記ア(ア)、イ(ア)の相当関係を参考にして対比すると、両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤が乳酸エチルを含み、溶剤の全質量に対する乳酸エチルの含有量が40質量%であり、 前記溶剤の全質量に対する γ-ブチロラクトンの含有量が0質量%である、 硬化性樹脂組成物。 <相違点2-6> 溶剤について、本件特許発明6は「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン、又は、N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのいずれかの組み合わせ」及び「ジメチルスルホキシドを含」むのに対し、甲2実施例17発明Aは、当該溶媒を含まない点 (イ)相違点の検討 <相違点2-6>について 甲2(段落 [0068])には、有機溶媒(C-2)について、ケトン類の言及があるものの、「シクロペンタノン」という化合物の記載はない。 また、甲2(段落[0067])には、有機溶媒(C-1)として、「N-メチル-2-ピロリドン」、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「ジメチルスルホキシド」について一応の例示がされているものの、多数例示された溶媒の一つに過ぎず、上記溶媒が特に好ましいことについて記載も示唆もされていない。 このため、甲2実施例17発明Aにおいて、有機溶媒(C-1)及び有機溶媒(C-2)として、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン」という特定の組み合わせ、又は有機溶媒(C-1)として、「N-メチル-2-ピロリドン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」という組み合わせ選択した上で、さらに有機溶媒(C-1)として、「ジメチルスルホキシド」を含有させる動機付けはないといえる。 そして、本件特許発明6は、本件特許明細書の段落【0009】等の記載から、低温で長期間保管しても得られる樹脂膜の膜厚均一性に優れる効果を奏するものである。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明6は、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件特許発明7 (ア)対比 本件特許発明7と甲2実施例17発明Aとを対比する。 甲2実施例17発明Aの「3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド」は、本件特許発明7の「構造内にエーテル結合を有する溶剤」に相当する。 その他、上記ア(ア)の相当関係を参考にすると、両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤が、エーテル結合を有する化合物を含む、 硬化性樹脂組成物。 <相違点2-7> 溶剤について、本件特許発明7は「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノンの組み合わせを含」むのに対し、甲2実施例17発明Aは、そのような組み合わせを含まない点 (イ)相違点の検討 a 新規性について <相違点2-7>は、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明は、甲2実施例17発明Aではない。 b 進歩性について 甲2(段落 [0068])には、有機溶媒(C-2)について、ケトン類の言及があるものの、「シクロペンタノン」という具体的化合物までの記載はない。また、甲2(段落[0067])には、有機溶媒(C-1)として、「N-メチル-2-ピロリドン」について一応の例示がされているものの、多数例示された溶媒の一つに過ぎず、上記溶媒が特に好ましいことについて記載されていない。 このため、甲2実施例17発明Aにおいて、有機溶媒(C-1)及び有機溶媒(C-2)として、「N-メチル-2-ピロリドン及びシクロペンタノン」という特定の組み合わせを選択する動機付けはないといえる。 そして、本件特許発明7は、本件特許明細書の段落【0009】等の記載から、低温で長期間保管しても得られる樹脂膜の膜厚均一性に優れる効果を奏するものである。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明7は、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件特許発明2、4、5、8~22について 本件特許発明2、4、5、8~22は、本件特許発明1、3、6又は7を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1、3、6又は7の発明特定事項を全て有するものであるから、上記ア~エで説示したのと同様の理由により、本件特許発明2、4、5、10~13、15~22は、甲2に記載された発明ではないし、本件特許発明2、4、5、8~22は、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1、2、4、5、7、10~13、15~22は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1~22は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~22に係る特許は、取消理由2、申立理由1-2及び申立理由2-2によっては取り消すことはできない。 3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性欠如)、申立理由1-3(甲3に基づく新規性欠如)及び申立理由2-3(甲3に基づく進歩性欠如)について 取消理由3、申立理由1-3及び申立理由2-3は、いずれも甲3に基づくものであるから、併せて検討する。 (1)甲3に記載された発明 甲3の比較例3、4の感放射線性樹脂組成物に着目すると以下の発明が記載されていると認められる。 「下記重合体(A-5)を含む重合体溶液200質量部(固形分濃度35質量%;重合体(A-5)70質量部(固形分)に相当する量、重合溶媒 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとN-メチル-2-ピロリドンの質量比 16.7質量部:133.3質量部)に、感放射線性酸発生剤(B)として下記(B-1)20質量部、ノボラック樹脂(C)として下記(C-1)30質量部、架橋剤(D)として下記ブロックイソシアネート化合物(D-1)20質量部、密着助剤(E)として下記(E-1)5質量部、(F)界面活性剤として下記(F-1)0.2質量部、および溶剤(G)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとNーメチルー2ーピロリドンからなる混合溶剤(質量比218.3質量部:87.3質量部)を混合し、固形分濃度が25質量%となるようにすると共に、口径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、調整した感放射線性樹脂組成物。 重合体(A-5):3口フラスコに重合溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドン340gを加えた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gを加え、ジアミン化合物としての2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン120gを重合溶剤中に加え、ジアミン化合物を重合溶剤に溶解させた後、酸二無水物としての4,4'-オキシジフタル酸二無水物を71g投入後、60℃で1時間反応させた後、末端封止剤とし て無水マレイン酸を19g加え、60℃で更に1時間反応させた後、昇温して180℃で4時間反応させて得られたポリイミド(Mwは8500、イミド化率は20%) B-1:4,4'-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)の縮合物(東洋合成工業(株)製) ・ノボラック樹脂(C) C-1:合成例C1のノボラック樹脂 ・架橋剤(D)(ブロックイソシアネート化合物) D-1:昭和電工(株)製の「カレンズMOI-BP」 2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート ・密着助剤(E) E-1:信越化学工業(株)製の「KBM-403」 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン ・界面活性剤(F) F-1:東レダウコーニング社製のシリコーン系界面活性剤「SH8400」」(以下、「甲3比較例3発明A」という。) 「下記重合体(A-5)を含む重合体溶液200質量部(固形分濃度35質量%;重合体(A-5)70質量部(固形分)に相当する量、重合溶媒 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとN-メチル-2-ピロリドンの質量比 23.8質量部:161.9質量部)に、感放射線性酸発生剤(B)として下記(B-1)20質量部、架橋剤(D)として下記ブロックイソシアネート化合物(D-1)20質量部、密着助剤(E)として下記(E-1)5質量部、(F)界面活性剤として下記(F-1)0.2質量部、および溶剤(G)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとN-メチル-2-ピロリドンからなる混合溶剤(質量比178.5質量部:71.4質量部)を混合し、固形分濃度が25質量%となるようにすると共に、口径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、調整した感放射線性樹脂組成物。 重合体(A-5):3口フラスコに重合溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドン340gを加えた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gを加え、ジアミン化合物としての2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン120gを重合溶剤中に加え、ジアミン化合物を重合溶剤に溶解させた後、酸二無水物としての4,4'-オキシジフタル酸二無水物を71g投入後、60℃で1時間反応させた後、末端封止剤として無水マレイン酸を19g加え、60℃で更に1時間反応させた後、昇温して180℃で4時間反応させて得られたポリイミド(Mwは8500、イミド化率は20%) B-1:4,4'-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)の縮合物(東洋合成工業(株)製) ・架橋剤(D)(ブロックイソシアネート化合物) D-1:昭和電工(株)製の「カレンズMOI-BP」 2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート ・密着助剤(E) E-1:信越化学工業(株)製の「KBM-403」 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン ・界面活性剤(F) F-1:東レダウコーニング社製のシリコーン系界面活性剤「SH8400」」(以下、「甲3比較例4発明A」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明7 (ア)対比 本件特許発明7と甲3比較例3発明Aとを対比する。 甲3比較例3発明Aの「重合体(A-5)」はイミド化率20%のポリイミドであるから、本件特許発明7の「ポリイミド、ポリイミド前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂」に相当する。 甲3比較例3発明Aの「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」は、本件特許発明7の「エーテル結合を有する溶剤」に相当する。また、甲3比較例3発明Aは、さらに溶剤として、「N-メチル-2-ピロリドン」を含むものであるから、本件特許発明7の「少なくとも2種の溶剤を含」む事項を備えるものである。 そして、甲3の段落【0090】には、「成分(D1)は、熱硬化の際の高温処理により、ブロックイソシアネート基が脱ブロック化して(保護基が外れ)、活性なイソシアネート基を再生する。・・・ポストベーク時に例えば前記イソシアネート基と、重合体(A)やノボラック樹脂(C)等に含まれるフェノール性水酸基との間で反応が進行し、低吸水性、耐熱性に優れた硬化膜を得ることができる。」と「硬化膜を得ることができる」ことが記載されていることから、甲3比較例3発明Aの「感放射線性樹脂組成物」は、本件特許発明7の「硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及び、ポリベンゾオキサゾール前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂、並びに、 少なくとも2種の溶剤を含み、 前記溶剤が、N-メチル-2-ピロリドンを含み、 前記溶剤が、エーテル結合を有する化合物を含む、 硬化性樹脂組成物。 <相違点3-7> 溶剤について、本件特許発明7は「シクロペンタノン」を含むのに対し、甲3比較例3発明Aは、シクロペンタノンを含まない点 (イ)相違点の検討 a 新規性について <相違点3-7>は、実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明7は、甲3比較例3発明Aではない。 b 進歩性について 甲3には、溶剤について、その段落【0110】に「本発明では、溶剤(G)として、式(G1-1)で表される化合物、および式(G1-2)で表される化合物から選択される少なくとも1種の溶剤(G1)が、少なくとも用いられる。」とされ、段落【0120】に「式(G1-1)で表される化合物としては、RG1がそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、RG2がカルボニル基であり、RG3が水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、RG4が炭素数1~6のアルキル基または炭素数2~10のアルコキシアルキル基である化合物が好ましい。例えば、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ヘキシルオキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、イソプロポキシ-N-イソプロピル-プロピオンアミド、n-ブトキシ-N-イソプロピル-プロピオンアミドが挙げられる。」と記載され、段落【0124】には、「式(G1-2)で表される化合物としては、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチル-2-ピロリドン、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(t-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドンが挙げられる。」と記載されている。また、段落【0126】には、「溶剤(G)としては、塗膜形成時に発生するハジキを抑制する観点から、溶剤(G1)とともに、グリコール系溶剤(G2)を用いることが好ましい。グリコール系溶剤(G2)とは、-O-A-O-で表される構造単位を有し、窒素原子を有さない有機溶剤をいう。前記Aは、炭素数2~10のアルキレン基である。」と記載され、段落【0137】には、「溶剤(G)としては、上記例示した溶剤以外に、その他の溶剤(G3)を併用してもよい。溶剤(G3)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。その他の溶剤(G3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」と記載されている。 しかしながら、上記の溶剤として、「シクロペンタノン」は記載も示唆もされていないから、甲3比較例3発明Aにおいて、「シクロペンタノン」を含有する動機付けはないといえる。 したがって、本件特許発明7は、甲3比較例3発明A及び甲3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲3比較例4発明Aは、甲3比較例3発明Aの溶剤の配合量を変更しただけであるから、本件特許発明7と上記(ア)と同様の相違点でのみ相違する。 そうすると、上記で述べたのと同様、本件特許発明7は、甲3比較例4発明Aではないし、甲3比較例4発明A及び甲3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明7は、本件特許明細書の段落【0009】等の記載から、低温で長期間保管しても得られる樹脂膜の膜厚均一性に優れる効果を奏するものである。 (ウ)小括 以上、検討したとおり、本件特許発明7は、甲3に記載された発明及び甲3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明10、12及び13について 本件特許発明10、12及び13は、本件特許発明7を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで説示したのと同様の理由により、本件特許発明10、12及び13は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明及び甲3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明7、10、12及び13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明7、10、12及び13は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~22に係る特許は、取消理由3、申立理由1-3及び申立理由2-3によっては取り消すことはできない。 4 取消理由4(サポート要件違反)及び申立理由3(サポート要件違反) 取消理由4及び申立理由3はサポート要件に関するものであるから、併せて検討する。 (1)取消理由4及び申立理由3の概要 ア 取消理由4の概要 (ア)溶剤の種類について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌しても、「構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物」以外の溶剤について「構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物」との関係性(SP値の差)について何ら特定がされていない訂正前の本件特許発明1により、本件特許発明の課題を解決し得るとは認めることができない。 (イ)溶剤の含有量について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌しても、「構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物」の含有量について何ら特定されていない訂正前の本件特許発明1により、本件特許発明の課題を解決し得るとは認めることができない。 イ 申立理由3の概要 実施例7及び実施例8における結果のみを以って、溶剤である構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量を特定しない全ての範囲において、本件の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとは言えない。すなわち、本件の発明の詳細な説明に記載された具体例を本件特許発明1に規定された範囲に対してまで、拡張ないし一般化することはできない(申立書第141~143ページ)。 (2)検討 ア 上記(1)ア(ア)について 本件訂正により、本件特許発明1は、少なくとも2種の溶剤について、「ジメチルスルホキシド又はシクロペンタノン」を含むとともに、「前記溶剤のうち、最もSP値が高い溶剤と、最も低い溶剤との差が0.2~11.5MPa」であることが特定された。 本件明細書の段落【0032】には、「 膜厚均一性の観点からは、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤において、最もSP値が高い溶剤と、最もSP値が低い溶剤とのSP値の差が、0.2~11.5MPaであることが好ましく、1.5~10.0MPaであることがより好ましい。 このような態様によれば、硬化性樹脂組成物に含まれる多様な溶質の溶解性を向上することができるため、膜厚均一性に優れやすいと考えられる。」と記載されており、「構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物」の一例である3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(EA)のSP値は21.5MPaであるところ、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロペンタノン(Cyptn)のSP値は各々29.7MPa、21.3MPaであり、EAとDMSO、EAとCyptnとのSP値の差は各々8.2MPa、0.2MPaとなっており、別途、特定された「最もSP値が高い溶剤と、最も低い溶剤との差が0.2~11.5MPa」の範囲にも合致する。 このため、訂正後の本件特許発明1は、「構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物」とそれ以外の溶剤との関係性(SP値の差)が特定されたといえる。 したがって、取消理由4(ア)は解消され、理由がないものとなった。 イ 上記(1)ア(イ)及びイについて 本件訂正により、本件特許発明1は、「前記構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量が、溶剤の全質量に対して20~80質量%であり、 溶剤の合計含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量」と、「溶剤である構造内にエーテル結合及びアミド結合を有する化合物の含有量が特定された。 当該含有量は、実施例7、8の結果及び本件特許出願時の技術常識からみて、本件特許発明1の課題(低温で長期間保管した後の硬化性樹脂組成物においても、得られる樹脂膜の膜厚均一性に優れる硬化性樹脂組成物を提供すること(段落【0007】))を解決し得るのに妥当な範囲といえる。 したがって、取消理由4(イ)は解消され、取消理由4(イ)及び申立理由3は理由がないものとなった。 (3)まとめ よって、本件特許の請求項1、2、4、5及び8~22に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由4及び申立理由3によっては取り消すことはできない。 5 取消理由5(明確性要件違反)及び申立理由4(明確性要件違反)について (1)取消理由5及び申立理由4の概要 ア 取消理由5の概要 (ア)溶剤の全質量に対する特定溶剤の含有量について 訂正前の本件特許発明3及び6は、「前記溶剤の全質量に対するγ-ブチロラクトンの含有量が40質量%以下である」と記載されているところ、γ-ブチロラクトンの含有量の下限が特定されていない。そうすると、γ-ブチロラクトンを含まない、すわなち「0質量%」である場合を包含するのか否か不明となっている。 (イ)エーテル結合を有する溶剤について 訂正前の本件特許発明7は、「前記溶剤が、エーテル結合を有する溶剤を含む」という発明特定事項を有する。 ところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは「エーテル結合を有する溶剤」に包含される。 そうすると、本件特許発明7が、(1)N-メチル-2-ピロリドン及び(2)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの組み合わせを含むことを必須要件とする場合、本件特許発明7は、上記(1)及び(2)の溶剤を含むことを必須要件とする(エーテル結合を有する溶剤が(2)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである)のか、あるいは、上記(1)及び(2)の溶剤に加えて、さらに、(2)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとは異なる、(3)エーテル結合を有する溶剤を含む(3種類の溶剤を含む)ことを必須要件とするのかを特定することができない。 (ウ)含窒素複素環構造を有する溶剤について 訂正前の本件特許発明10は、「前記溶剤が、含窒素複素環構造を有する溶剤を含む」という発明特定事項を有する。 ところで、N-メチル-2-ピロリドンは、「含窒素複素環構造を有する溶剤」に包含される。 そうすると、本件特許発明6又は7が、(1)N-メチル-2-ピロリドンを含むことを必須要件とするため、本件特許発明10は、上記(1)及び(2)の溶剤を含むことを必須要件とする(含窒素複素環構造を有する溶剤が(1)N-メチル-2-ピロリドンである)のか、あるいは、上記(1)及び(2)の溶剤に加えて、さらに、(1)N-メチル-2-ピロリドンとは異なる、(3)含窒素複素環構造を有する溶剤を含む(3種類の溶剤を含む)ことを必須要件とするのかを特定することができない。 イ 申立理由4の概要 申立理由4の概要ア~ウ(申立書第143~146ページ)は、上記アの取消理由5の(ア)~(ウ)の概要と同旨である。 (2)検討 ア 上記(1)ア(ア)について 本件訂正により、本件特許発明3及び6は、「γ-ブチロラクトンの含有量が0質量%以上」と特定され、γ-ブチロラクトンを含まない、すわなち「0質量%」である場合も包含することが明らかとなった。 したがって、取消理由5(ア)は解消され、取消理由5(ア)及び申立理由4のアは理由がないものとなった。 イ 上記(1)ア(イ)について 本件訂正により、本件特許発明7は、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」を含む選択肢が削除され、「エーテル結合を有する溶剤」が、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」であっても、それ以外のものであっても良くなり、明確となった。 したがって、取消理由5(イ)は解消され、取消理由5(イ)及び申立理由4のイは理由がないものとなった。 ウ 上記(1)ア(ウ)について 本件訂正により、本件特許発明10は、「N-メチル-2-ピロリドンは、含窒素複素環構造を有する溶剤に含まれる」ことが特定され、明確となった。 したがって、取消理由5(ウ)は解消され、取消理由5(ウ)及び申立理由4のウは理由がないものとなった。 (3)まとめ よって、本件特許の請求項3~22に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由5及び申立理由4によっては取り消すことはできない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1~22に係る特許は、当審が通知した取消理由通知及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700855

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