特許異議申立
2022-700365
多層中華麺の製造方法
- 審判番号
- 2022-700365
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-184323外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6957291
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2022年12月15日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.537-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6957291号発明「多層中華麺の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6957291号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第6957291号の請求項1、2及び4ないし6に係る特許を維持する。
特許第6957291号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6957291号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年 9月26日の出願であって、令和 3年10月 8日にその特許権の設定登録がされ、同年11月 2日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、令和 4年 4月28日に特許異議申立人 田村良介(以下「申立人」という。)により本件特許の請求項1~6に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、同年 7月25日付けで取消理由が通知され、同年 9月20日に特許権者より意見書の提出及び訂正請求がされ、同年10月28日に申立人より意見書の提出がされたものである。
第2 訂正の適否の判断
1 訂正の内容(下線は訂正箇所を表す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「内層の麺帯のみを熟成させるか、あるいは内層の麺帯を外層の麺帯よりも長く熟成させる工程」と記載されているのを、
「内層の麺帯のみを温度0~35℃で5時間以上熟成させるか、あるいは内層及び外層の麺帯を温度0~35℃で、外層の麺帯の熟成時間と内層の熟成時間との比(外層:内層)が1:2~20となるように、かつ外層の麺帯の熟成温度が内層の麺帯の熟成温度と同じになるようにして熟成させる工程」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2、4ないし6も同様に訂正する(当審注:請求項3は訂正事項3のとおり削除された。以下同様。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「内層の麺帯を温度0~35℃で5時間以上熟成させる」と記載されているのを、
「内層及び外層の麺帯を熟成させる場合、内層の麺帯を5時間以上熟成させる」に訂正する。
請求項2を引用する請求項4ないし6も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1から3のいずれか」と記載されているのを、「請求項1又は2」に訂正する。
請求項4を引用する請求項5ないし6も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1から5のいずれか」と記載されているのを、「請求項1~2及び4~5のいずれか」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
この訂正は、請求項1において、内層及び外層の麺帯の熟成条件を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記の熟成条件は、段落【0014】、【0016】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。
(2)訂正事項2について
この訂正は、請求項2において、内層及び外層の麺帯を熟成させる場合における内層の麺帯の熟成時間を更に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記の熟成条件は、段落【0014】、【表3】の製造例3-2、製造例3-3の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。
(3)訂正事項3について
この訂正は、請求項3を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。
(4)訂正事項4,5について
これらの訂正はいずれも、引用に係る請求項の選択肢から請求項3を除くものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし6はいずれも、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しており、請求項1に従属するものであるから、請求項1ないし6は一群の請求項である。
4 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1ないし6に対してされているので、訂正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかを確認する必要はない。
5 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とし、かつ、同条第9項で準用する第126条第5項、第6項の規定に適合するものである。よって、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で検討したとおり、訂正請求による特許請求の範囲の訂正は適法なものである。そして、訂正後の本件特許に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、各々「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)。
「【請求項1】
少なくとも内層と外層を有する多層中華麺の製造方法であって、
内層の麺帯のみを温度0~35℃で5時間以上熟成させるか、あるいは
内層及び外層の麺帯を温度0~35℃で、外層の麺帯の熟成時間と内層の熟成時間との比(外層:内層)が1:2~20となるように、かつ外層の麺帯の熟成温度が内層の麺帯の熟成温度と同じになるようにして熟成させる工程と、
前記内層の麺帯と前記外層の麺帯を複合した後、圧延する工程とを含むことを特徴とする多層中華麺の製造方法。
【請求項2】
内層及び外層の麺帯を熟成させる場合、内層の麺帯を5時間以上熟成させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
外層に、内層よりも多く澱粉を配合する請求項1又は2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
外層の原料粉100質量部中において澱粉の配合量が0~60質量部であり、
内層の原料粉100質量部中において澱粉の配合量が0~20質量部である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
中華麺が、蒸煮処理後に冷蔵または冷凍される請求項1~2及び4~5のいずれかに記載の製造方法。」
第4 申立理由及び取消理由の概要
1 申立理由について
申立人は、証拠方法として、下記(4)の甲第1~7号証を提出して、以下の理由により、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張した。
(1)申立理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)申立理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)申立理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明に基いて、その出願前その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(4)証拠方法
甲第1号証:特開2003-284517号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2002-238483号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2001-245618号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:小田聞多監修、「めんの本」、食品産業新聞社発行、2013年、第69~75頁(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2005-278572号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開平6-276973号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証:特開2008-29273号公報(以下「甲7」という。)
2 取消理由について
当審は、上記1(1)を採用し、次のとおり取消理由を通知した。
取消理由(サポート要件)
本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
第5 取消理由及び申立理由の判断
1 取消理由(サポート要件、申立理由1と同旨。)について
(1)当審が通知した取消理由(サポート要件)は、
「訂正前の請求項1の「内層の麺帯を外層の麺帯よりも長く熟成させる工程」における「長く」の対象は「時間」、すなわち熟成時間を長くさせることを意味するものと解される。
これに対し、発明の詳細な説明の記載をみても、熟成温度と無関係に上記課題(当審注:冷蔵状態で流通されるチルド麺や冷凍麺とした場合でも、特別な添加剤を用いなくても、中華麺らしい風味や食感に優れる中華麺を提供することができる中華麺の製造方法を提供すること。)を解決するものであるかどうかは判然としない。また、麺帯の熟成には熟成時間だけでなく熟成温度も影響することが出願時の技術常識であるといえるから、単に内層の麺帯を外層の麺帯よりも熟成時間が長くなるように制御しても、熟成温度によっては上記課題を解決できる程度の差が生じるとは限らず、上記課題を解決できない場合が含まれ得ることになる。」
というものである。
(2)これに対し、訂正後の請求項1は「内層及び外層の麺帯を温度0~35℃で、外層の麺帯の熟成時間と内層の熟成時間との比(外層:内層)が1:2~20となるように、かつ外層の麺帯の熟成温度が内層の麺帯の熟成温度と同じになるようにして熟成させる工程」と記載され、内層及び外層の麺帯を熟成させる場合の熟成条件として、熟成時間は「比(外層:内層)が1:2~20」であること、及び、熟成温度は「温度0~35℃で」かつ「外層の麺帯の熟成温度が内層の麺帯の熟成温度と同じ」であることが特定された。
そうすると、訂正後の請求項1は、内層の麺帯と外層の麺帯とを、熟成温度を同じとした上で熟成時間を異ならせること(内層の麺帯の熟成時間を外層の麺帯の熟成時間よりも長くすること)が特定されたため、熟成温度が異なる場合の検討は不要となったから、取消理由(サポート要件)は解消した。
(3)ア 申立人は、令和 4年10月28日提出の意見書において、
(ア)発明の詳細な説明には、内層と外層の麺帯の熟成温度を20℃とし、内層の麺帯の熟成時間を20時間、外層の麺帯の熟成時間をそれぞれ1時間及び10時間とした製造例(表3の製造例3-2,3-3)が記載されているだけで、熟成時間が極端に短い例や極端に長い例は記載されていない旨
(イ)「(A)内層の麺帯のみを熟成させる場合」についても、内層の麺帯の熟成時間について『5時間以上』としか特定されておらず、上限値は特定されていない旨
(ウ)常温下で何日も放置すると、麺帯の腐敗や変質、異臭や不快臭の発生といった問題が生じるため、数週間に亘って熟成を行う場合をも含む訂正発明1は現実的ではなく、当然ながら「特別な添加剤を用いなくても中華麺らしい風味」は得られないから、本件発明の課題を解決することはできない旨
を主張する(意見書2~4頁)。
イ そこで検討するに、甲4によれば、製麺技術における麺帯の熟成に係る技術常識として、熟成は、応力の緩和によって生地が軟らかくなり、次の圧延工程に無理なく入れる状態になるのを待つものである旨、及び、熟成の時間はこの麺帯の圧延伸長が一定に落ち着くに要する時間ということになる旨が知られている(第70~71頁)。
ウ そうすると、本件発明における内層及び外層の麺帯の熟成も、応力緩和に十分な時間が確保できればよいものであるということができるから、そのような前提を無視して極端に短い例や長い例を検討する必要はなく、また、上限がないからといって直ちに発明の課題を解決できないとする根拠もない。よって、上記主張は採用できない。
(4)以上のとおり、訂正後の請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決することができるものといえる。訂正後の請求項2及び4ないし6に記載された発明についても同様である。
2 取消理由に採用しなかった申立理由について
(1)申立理由2(実施可能要件)について
ア 申立理由2(実施可能要件)は、上記1の取消理由(サポート要件、申立理由と同旨。)を援用して、
「発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、熟成温度や熟成時間にかかわらず、いかなる配合組成の麺帯であっても、内層の麺帯を外層の麺帯よりも長く熟成させるだけで、上記課題を解決できる条件が理解できないから、請求項1に記載された発明を実施するにあたり、配合組成毎に熟成温度や熟成時間について、当業者に基体し得る程度を超える試行錯誤が必要であり、また、内層と外層とで熟成時間の差が極端に短い場合や極端に長い場合についても、どのように実施すれば上記課題を解決できるかを当業者が理解できない。」(特許異議申立書第8頁)と主張するものである。
イ そこで検討するに、上記1(2)のとおり、訂正後の請求項1は、内層の麺帯と外層の麺帯とを、熟成温度を同じとした上で熟成時間を異ならせること(内層の麺帯の熟成時間を外層の麺帯の熟成時間よりも長くすること)が特定されたため、熟成温度が異なる場合の問題を考慮する必要はなくなったといえる。また、上記1(3)のとおり、製麺技術における麺帯の熟成に係る技術常識によれば、本件発明における内層及び外層の麺帯の熟成も、応力緩和に十分な時間が確保できればよいものであるということができるから、そのような前提を無視して極端に短い例や長い例を検討する必要はなく、また、上限がないからといって直ちに発明の課題を解決できないとする根拠もない。
ウ 以上のとおり、訂正後の請求項1に記載された発明について、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に記載されたものといえる。訂正後の請求項2及び4ないし6に記載された発明についても同様である。
(2)申立理由3(進歩性)について
ア 甲1について
甲1は「麺及びその製造方法」(発明の名称)に係るものであって、段落【0001】、【0035】、【0045】、【0049】、【0050】、図3の(5)(麺帯熟成)、図4の(7)(三層麺化)及び(8)(再圧延)に注目すると、次の発明が記載されているといえる。
「ラーメン(中華麺)の製造方法であって、
(5)第5ステップ(麺帯熟成)として、巻き取りロールで巻き取った2個の麺帯(内層および外層用)を巻いたままで30分間の熟成を行い、粗麺帯の表面が乾燥しないよう全体を遮光性の袋で覆っておき、
(7)第7ステップ(3相麺化)として、外層用麺生地を台上に敷き、次に内層用生地を同じ長さで張り合わせ、最後に外層用麺生地を再度同じ長さに張り合わせ、
(8)第8ステップ(再圧延)として、予め定める厚みの生地にするために、第7ステップで3層構造に張り合わされた生地を連続圧延機の第1段目ロール(6寸ロール)から再度薄くのばしていく、ラーメン(中華麺)の製造方法」(以下「甲1発明」という。)
イ 甲2について
(ア)甲2は「麺及びその製造方法並びに被膜剤」(発明の名称)に係るものであって、段落【0020】、【0021】、【0023】、【0024】、図2のS5-1(麺帯熟成工程)、S5-2(麺帯熟成工程)、S7(三層麺化工程)及びS8(再圧延工程)に注目すると、次の発明が記載されているといえる。
「多層構造の麺の一実施例としての冷凍中華麺の製造方法であって、
麺帯熟成工程S5-1(S5-2)において、粗麺帯を巻取りロールに巻いたままで熟成を行い、
三層麺化工程S7において、上述したように形成された内層麺生地用麺帯及び外層麺生地用麺帯を積層して積層三層構造の麺帯を形成し、
再圧延工程S8において、この積層状態の麺帯に対して圧延を行う、冷凍中華麺の製造方法」(以下「甲2発明」という。)
ウ 甲3について
(ア)甲3は「冷凍麺の製造方法」(発明の名称)に係るものであって、段落【0018】、【0031】、【0033】、【0034】、図1のステップa4(熟成)、a6(重ね合せ)及び図2のa7(積層圧延)に注目すると、次の発明が記載されているといえる。
「冷凍麺の製造方法であって、
ステップa4では、熟成工程が行われ、この工程では、複合された各粗麺帯が常温で所定時間、たとえば1時間放置され、
ステップa6では、圧延された各麺帯の重合わせが行われ、重合わせは、中心に配置した内層用麺帯を2枚の外層用麺帯で挟むことによって行われ、
ステップa7では積層工程が行われ、3枚に重合わされた麺帯は、3組の圧延ローによって順次圧延されて3層麺帯に形成される、冷凍麺の製造方法」(以下「甲3発明」という。)
エ(ア)本件発明1と、甲1発明、甲2発明及び甲3発明とを対比する。
甲1発明の「ラーメン(中華麺)」、甲2発明の「冷凍中華麺」及び甲3発明の「冷凍麺」はいずれも、内層用麺帯を外層用麺帯で挟んで構成されていることから、本件発明1の「多層中華麺」に相当する。
甲1発明の「(5)第5ステップ(麺帯熟成)」、甲2発明の「麺帯熟成工程S5-1(S5-2)」及び甲3発明の「ステップa4(熟成工程)」はいずれも、内層及び外層の麺帯を熟成させる限りにおいて、本件発明1の「熟成させる工程」に相当する。
甲1発明の「(7)第7ステップ(3層麺化)」、甲2発明の「三層麺化工程S7」及び甲3発明の「ステップa6(重合わせ)」はいずれも、本件発明1の「前記内層の麺帯と前記外層の麺帯を複合」する工程に相当する。
甲1発明の「(8)第8ステップ(再圧延)」、甲2発明の「再圧延工程S8」及び甲3発明の「ステップa7(積層工程)」はいずれも、本件発明1の「圧延する工程」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と、甲1発明、甲2発明及び甲3発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「少なくとも内層と外層とを有する多層中華麺の製造方法であって、
内層の麺帯と外層の麺帯とを熟成させる工程と、
前記内層の麺帯と外層の麺帯とを複合した後、圧延する工程とを含む、多層中華麺の製造方法」
(相違点)
熟成させる工程の条件が、本件発明1では「内層の麺帯のみを温度0~35℃で5時間以上熟成させるか、あるいは内層及び外層の麺帯を温度0~35℃で、外層の麺帯の熟成時間と内層の熟成時間との比(外層:内層)が1:2~20となるように、かつ外層の麺帯の熟成温度が内層の麺帯の熟成温度と同じになるようにして熟成させる」のに対し、甲1発明、甲2発明及び甲3発明ではいずれも、熟成工程の条件を特定していない点。
(ウ)上記相違点について検討する。
申立人が提示した甲1ないし甲7のいずれにも、多層麺の麺帯の熟成において、外層の麺帯を熟成させずに内層の麺帯のみを熟成させたり、又は内層の麺帯を外層の麺帯よりも長く熟成させたりすることは、記載も示唆もされておらず、当該事項が周知であったとはいえない。まして、熟成の温度ないし時間条件を具体的に特定することまでが周知であったということはできない。
これに対して、本件発明1は、多層麺の麺帯の熟成において、内層の麺帯の熟成と外層の麺帯の熟成とを特定の温度ないし時間条件で行うことにより、「冷蔵状態で流通されるチルド麺や冷凍麺とした場合でも、特別な添加剤を用いなくても、中華麺らしい風味や食感に優れる中華麺を提供することができる中華麺の製造方法を提供することができる」(段落【0009】)という、本件特許の明細書に記載のとおりの効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明から当業者が容易に発明をすることができたものでない。
オ 本件発明2及び4ないし6について
本件発明2及び4ないし6はいずれも、本件発明1を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、甲1発明、甲2発明及び甲3発明と対比すると、少なくとも、上記エ(イ)と同様の点で一致ないし相違する。
そして、相違点についての検討は上記エ(ウ)のとおりであるから、同様の理由により、本件発明2及び4ないし6は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明から当業者が容易に発明をすることができたものでない。
カ(ア)申立人は、令和 4年10月28日提出の意見書において、甲4及び甲5によれば、「麺帯の熟成温度を0~35℃とすること」は、本件出願時において周知・慣用技術である旨、また、甲4によれば、麺帯の熟成時間は、熟成温度・麺帯の状態・目的とする麺の特性等に応じて適宜設定されるものであるから、「外層の麺帯の熟成時間と内層の麺帯の熟成時間の比を1:2~20の範囲にすること」も、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、当業者が適宜設定し得る設計事項である旨、を主張する(意見書第4頁)。
(イ)そこで検討するに、甲4には、上記1(3)イのとおり、製麺技術における麺帯の熟成に係る技術常識として、熟成は、応力の緩和によって生地が軟らかくなり、次の圧延工程に無理なく入れる状態になるのを待つものである旨、及び、熟成の時間はこの麺帯の圧延伸長が一定に落ち着くに要する時間ということになる旨が示され(第70~71頁)、また、甲5には、麺帯熟成の温度ないし時間条件の一例が示されている(請求項2、段落【0014】、【0022】)。
(ウ)そうすると、麺帯の熟成条件によって得られる麺の物性が変化するであろうことは容易に想起できたといえるが、多層麺の麺帯の熟成において、外層の麺帯を熟成させずに内層の麺帯のみを熟成させたり、又は内層の麺帯を外層の麺帯よりも長く熟成させたりすることが周知であったとはいえないし、まして、麺帯熟成の温度ないし時間条件を具体的に特定することまでが周知であったということはできない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由及び申立理由のいずれによっても、本件特許の請求項1、2及び4ないし6に係る特許を取り消すことはできず、また他に、本件特許の請求項1、2及び4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項3に係る特許は、訂正により削除されたから、請求項3に対する特許異議の申立ては、対象が存在しない。
よって、上記のとおり決定する。
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2022-700365