特許異議申立
2022-700292
化粧料
- 審判番号
- 2022-700292
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-516952
- 登録番号
- 6948314
- 請求日
- 2022年04月08日
- 審決日
- 2022年12月23日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友精化株式会社
- 【権利者代理人】松谷 道子
- 【権利者代理人】言上 惠一
- 【権利者代理人】福政 充睦
- 【異議申立人】山田 友則
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 木村 敏康
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.161-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第184条の13、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6948314号発明「化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6948314号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。
特許第6948314号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6948314号(以下「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、2017年4月27日〔優先権主張 平成28年5月10日(JP)日本国、平成28年6月1日(JP)日本国、及び平成29年1月23日(JP)日本国〕を国際出願日とする特願2018-516952号として特許出願され、令和3年9月22日に特許権の設定登録がされ、令和3年10月13日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~2に係る発明の特許に対し、令和4年4月8日に山田友則(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。
令和4年 6月13日付け 取消理由通知
同年 8月10日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 8月19日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 9月16日 意見書(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和4年8月10日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第6948314号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2に、訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1及び2からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。
(1)訂正事項1
(訂正事項1-1)
特許請求の範囲の請求項1の「粒子である」との記載部分を「粒子であり、ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり、」との記載に訂正する。
(訂正事項1-2)
特許請求の範囲の請求項1の「、化粧料。」との記載部分を「但し、ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量1800万)およびポリビニルアルコール(鹸化度80%、平均分子量11万)を含む水系分散体を含む化粧料、ならびに、ポリアクリル酸-メタクリルアミド(質量比で85:15)共重合体(平均分子量2500万)およびポリビニルアルコール(鹸化度89%、平均分子量24万)を含む水系分散体を含む化粧料を除く、化粧料。」との記載に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の「10%変位圧縮強度が1MPa以上である」との記載部分を「10%変位圧縮強度が3~30MPaである」との記載に訂正する。
2.本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1の(訂正事項1-1)は、本件特許明細書の段落0014の「前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子における脂肪族ポリエステル系樹脂の割合は、90質量%以上(例えば、90~100質量%)が好ましく」との記載に基づいて、訂正前の請求項1に記載された「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」について、その「球状粒子」に含まれる「脂肪族ポリエステル系樹脂」の一種である「ポリブチレンサクシネート」の配合割合を特定すべく、訂正前の請求項1の「粒子である」との記載部分を「粒子であり、ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり、」との記載に限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
また、訂正事項1の(訂正事項1-2)は、請求項に係る発明に包含される一部の態様を除外して限定するものであって、このような除外によって新たな技術的事項が導入されるものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項1の(訂正事項1-1)及び(訂正事項1-2)は、いずれも「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許明細書の段落0020の「前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子の10%変位圧縮強度は、化粧料の使用感の観点で、1MPa以上が好ましく、より好ましくは3~30MPaである。」との記載に基づいて、訂正前の請求項2の「10%変位圧縮強度が1MPa以上である」との記載部分を「10%変位圧縮強度が3~30MPaである」との記載に改めて限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項2は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)一群の請求項について
訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1~2について、その請求項2は直接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~2に対応する訂正後の請求項1~2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に適合するものである。
3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~2に係る発明(以下「本1発明」~「本2発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子を含む化粧料であって、
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子であり、ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり、
但し、ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量1800万)およびポリビニルアルコール(鹸化度80%、平均分子量11万)を含む水系分散体を含む化粧料、ならびに、ポリアクリル酸-メタクリルアミド(質量比で85:15)共重合体(平均分子量2500万)およびポリビニルアルコール(鹸化度89%、平均分子量24万)を含む水系分散体を含む化粧料を除く、化粧料。
【請求項2】
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子の10%変位圧縮強度が3~30MPaである請求項1に記載の化粧料。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由通知の概要
1.特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1(拡大先願違反)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その優先日の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲第1号証に記載された発明と同一であり、しかも、この本件特許発明の発明者が甲第1号証に係る発明者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が甲第1号証の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第113条第1項第2号)。
甲第1号証:PCT/JP2015/082736号(国際公開第2016/080530号)
(2)申立理由2(甲第2~7号証による進歩性無し)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、下記の甲第2号証、甲第3号証及び甲第7号証(技術常識として甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証)に記載された発明に基いて容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない(同法第113条第1項第2号)。
記
甲第2号証:韓国公開特許第2003-0067867号公報
甲第3号証:特開2004-269865号公報
甲第4号証:特開2005-200663号公報
甲第5号証:国際公開第2012/105140号
甲第6号証:特表2013-527204号公報
甲第7号証:国際公開第02/100357号
(3)申立理由3(サポート要件違反)
本件特許の請求項2に係る発明は、下記の点で、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないため、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができない(同法第113条第1項第4号)。
記
不備1:本件特許発明の製造例において記載されているポリブチレンサクシネート系樹脂粒子の10%変位圧縮強度は6MPaのわずか1水準のみであり、10%変位圧縮強度が1~6MPaの範囲において、また、6MPa超(上限の記載がないため、極めて大きな値(例えば100MPa)等)において効果を奏するのか不明である。
(4)申立理由4(明確性違反)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、下記の点で、不明確であるため、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない(同法第113条第1項第4号)。
記
不備2:ポリブチレンサクシネート系樹脂とは、どのような樹脂を示すのか明細書には記載されておらず、どのような樹脂が該当するのか不明確である。
2.取消理由通知の概要
令和4年6月13日付の取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1~3からなるものである。
〔理由1〕本件特許の請求項1に係る発明は、先願発明〔本願の特許出願の日前の他の特許出願であって当該特許出願後に国際公開(国際公開第2016/080530号)がされた特願2016-560307号の国際出願日(2015年11月20日)における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明〕と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願の時にその出願人が当該他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13の規定において読み替えて適用する同法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明に係る特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。
〔理由2〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
記
不備A:本件特許の請求項2に記載の「10%変位圧縮強度が1MPa以上」という広範な数値範囲の全てが、本件特許発明の『環境にやさしく、塗布時の伸び、つき、感触性(異物感のなさ、ソフト感、きしみ感が無い、すべり性、滑らかさ)、および透明感のいずれにも優れた化粧料の提供』という課題を解決できると認識できる範囲にあるとは認められない。
不備B:本件特許の請求項1及び2に記載の「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」の全てが、本件特許発明の『環境にやさしく、塗布時の伸び、つき、感触性(異物感のなさ、ソフト感、きしみ感が無い、すべり性、滑らかさ)、および透明感のいずれにも優れた化粧料の提供』という課題を解決できると認識できる範囲にあるとは認められない。
よって、本件特許の請求項1~2に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。
〔理由3〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
記
不備C:本件特許の請求項1及び2に記載された「ポリブチレンサクシネート系樹脂」という発明特定事項の意味する内容ないし範囲について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当該「系」の意味するところについて、当業者が理解できる程度に説明ないし定義がなされていないので、その特許を受けようとする発明が明確ではない。
よって、本件特許の請求項1~2に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1.取消理由通知で示した取消理由について
(1)理由3(明確性要件)について
ア 不備C(ポリブチレンサクシネート系樹脂の明確性)について
本件特許の請求項1及び2に記載された「ポリブチレンサクシネート系樹脂」の明確性について、訂正後の請求項1の記載に「ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり」との記載が追加されたことから、当該「ポリブチレンサクシネート系樹脂」とは、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む樹脂であることが明確になった。
したがって、理由3の不備Cの点について、訂正後の請求項1及び当該請求項1を引用する請求項2の記載は、特許を受けようとする発明が明確になったので、特許法第36条第6項第2号に適合する。
イ 特許異議申立人の主張について
不備Cに関して、令和4年9月16日付けの意見書の3.(3)において、特許異議申立人は『微量の「ポリブチレンサクシネート」が球状粒子に含まれる場合であっても本件特許発明の「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」の範囲に含まれるのか明確ではないという明確性要件は依然として解消されていない』との旨を主張する。
しかしながら、微量の「ポリブチレンサクシネート」が球状粒子に含まれる場合は、訂正後の請求項1の「ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子」であるという発明特定事項を満たさないので、本件特許発明の範囲に含まれないことが明確であるといえるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(2)理由2(サポート要件)について
ア 不備A(10%変位圧縮強度の範囲)について
本件特許の請求項2の「前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子の10%変位圧縮強度」の数値範囲は、訂正前の「1MPa以上」から、訂正後の「3~30MPa」に限定された。
そして、本件特許明細書の段落0041には、製造例6の球状粒子(ポリブチレンサクシネート100gに対してエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を10gの配合割合で併用したもの)として「10%変位圧縮強度」が「6MPa」であるものが記載され、同段落0067の表3には、製造例6などの「10%変位圧縮強度」が「6MPa」である球状粒子を用いた「固形ファンデーション」又は「乳液」の「塗布時の伸び、つき、感触性(異物感、ソフト感)、透明感」の各項目の評価が「×:悪い」以外の「○:良い」や「△:ふつう」になることが記載され、同段落0020には「10%変位圧縮強度は、化粧料の使用感の観点で、…より好ましくは3~30MPaである。」と記載されているので、当然予想される圧縮強度と異物感等の感触性の関係の技術常識をも顧慮するに、当該「6MPa」及びその近傍の「3~30MPa」の範囲で、本2発明の『環境にやさしく、塗布時の伸び、つき、感触性(異物感のなさ、ソフト感、きしみ感が無い、すべり性、滑らかさ)、および透明感のいずれにも優れた化粧料の提供』という課題を解決できると当業者は認識できるといえる。
したがって、理由2の不備Aの点について、訂正後の請求項2の記載は、特許を受けようとする発明の範囲が、発明の詳細な説明に記載された範囲にあるといえるので、特許法第36条第6項第1号に適合する。
イ ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子について
本件特許の請求項1に記載された「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」の範囲は、訂正後の請求項1において「ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子」に限定された。
そして、本件特許明細書の段落0028、0039及び0041には、製造例1、4及び6の球状粒子(ポリブチレンサクシネート100gに対してエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を15g、25g、又は10gの配合割合で併用したもの)が記載され、同段落0067の表3には、製造例1、4、及び6などの球状粒子を用いた「固形ファンデーション」又は「乳液」の「塗布時の伸び、つき、感触性(異物感、ソフト感)、透明感」の各項目の評価が「×:悪い」以外の「◎:非常に良い」や「○:良い」や「△:ふつう」になることが記載されているので、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であれば、本1及び本2発明の『環境にやさしく、塗布時の伸び、つき、感触性(異物感のなさ、ソフト感、きしみ感が無い、すべり性、滑らかさ)、および透明感のいずれにも優れた化粧料の提供』という課題を解決できると当業者は普通に認識できるといえる。
したがって、理由2の不備Bの点について、訂正後の請求項1及び当該請求項1を引用する請求項2の記載は、特許を受けようとする発明の範囲が、発明の詳細な説明に記載された範囲を不当に超えているとはいえないので、特許法第36条第6項第1号に適合する。
ここで、不備Bに関して、令和4年9月16日付けの意見書の3.(2)イ)において、特許異議申立人は『本件特許記載の脂肪族ポリエステル系樹脂粒子に含まれる成分としては、本件特許明細書0011段落に記載の樹脂成分の記載しかなく、0011段落に記載の樹脂成分以外の他のいかなる成分や化合物が含まれることについての記載が全くない。…意見書より、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体などの分散剤は、「脂肪族ポリエステル系粒子を構成するには含まれない」と述べられていることから、本件特許製造例に記載されている樹脂粒子は、ポリブチレンサクシネートのみからなる(ポリブチレンサクシネート100%の)粒子のみであるといえる。」と主張する。
しかしながら、本件特許明細書の段落0011には「他成分、例えば芳香族ジカルボン酸や多官能性単量体(例えば…)等の単量体由来の構造を含んでいてもよい」との記載があり、これら「芳香族ジカルボン酸」等の他成分が、10質量%未満の少量で「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」に含まれていたとしても、その物性や性能に著しい差異が生じると解すべき合理的な理由や根拠は見当たらず、一定程度その性質に影響があるとしても、一定程度課題が解決できると認識できると解するのが相当であるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
また、同意見書の3.(2)エ)において、特許異議申立人は『本件特許明細書には、ポリブチレンサクシネート以外の物質を含む樹脂粒子において、前記効果が得られるという点について、全く記載がなく、前記透明性が劣る樹脂成分を含有していても透明性が優れるのか、また、どのような物質が含有されていても、そのような効果が得られるのかについて、理論的な根拠も示されていない。』と主張する。
しかしながら、本1及び本2発明は「ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子」を発明特定事項とするものであって、球状粒子に含まれる樹脂の一定割合以上を「ポリブチレンサクシネート」とすることによって、上記所定の課題を解決するという技術思想に立脚したものであるところ、仮に「透明性が劣る樹脂成分」が配合されていたとしても、その配合割合は10質量%未満の少量にしなければならないのであって、このような少量の配合量によって上記所定の課題が解決できなくなると解することに合理性があるとはいえないので、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(3)理由1(拡大先願)について
ア 先願Xの当初明細書等及び参考例A~C、並びにその記載事項
国際公開(国際公開第2016/080530号;甲第1号証として提示されたものに同じ。)がされた特願2016-560307号(以下「先願X」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、次の記載がある。
摘記X1:請求項11
「[請求項11]請求項10に記載の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有することを特徴とする化粧品。」
摘記X2:段落0001、0016~0017及び0052
「[0001]本発明は、真球度が高く、かつ単分散性のポリエステル樹脂水系分散体とその製造方法並びに流動性と耐水性を有する真球状単分散ポリエステル樹脂粒子と、これを用いた化粧品に関するものである。…
[0016]本発明のポリエステル樹脂水系分散液は、簡単かつ安価に安定的に提供され、ポリエステル樹脂粒子は、その真球度が高く、単分散であるとともに、流動性(滑り性)、耐水性にも優れている。また、この粒子を含有する化粧品は、耐水性が良好で滑らかな感触で肌に違和感を与えず、伸展性やスクラブ効果に優れる。…
[0017]
[図1]実施例1の粒子状態として、(a)レーザー回折型粒度分布測定装置での測定チャート、(b)電子顕微鏡写真である。
[図2]比較例1の粒子状態として、(a)レーザー回折型粒度分布測定装置での測定チャート、(b)電子顕微鏡写真である。…
[0052]本発明の化粧品は、上記真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有する。本発明の化粧品としては、例えば、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ヘアケア化粧品、ネイルケア化粧品、アメニティ化粧品等が挙げられる。なかでも、成形性や耐衝撃性に優れるとともに、耐水性が良好で肌等への付着性、密着性に優れ、滑らかな感触で肌に違和感を与えない伸展性の良好な製品が求められている固形粉末化粧料、例えばメイクアップ化粧品が好適である。」
摘記X3:段落0055、0057及び0062
「[0055]1.真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体の調製
実施例及び比較例において、ポリエステル樹脂、分散剤、粘度調整剤として次のものを用いた。…
ポリエステル樹脂C:ポリスチレン換算Mw22万、メルトフローレート(MFR:JIS K7210-1999、温度190℃、荷重2.16kgf)1.5、引張破断強度57MPa、融点115℃の市販のポリブチレンサクシネート樹脂…
<実施例1~21、比較例1~5>
表1~表4に示した成分割合で、密閉分散槽に仕込み、ポリエステル樹脂Aを用いた場合は120℃、ポリエステル樹脂B~Dを用いた場合は70℃に加熱して所定の攪拌分散装置を用いた分散方法によって分散後、40℃まで急冷した。その後、減圧下に酢酸エチルを除去してポリエステル樹脂水系分散体を得た。…
[0057]また、ポリエステル樹脂粒子の粒子状態(平均粒径、分散度、真球度)について、以下のようにして測定、評価を行った。結果を表1~表4に示す。
〔粒子状態〕
粒子の平均粒径、単分散度は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所(株)製、SALD-2300型、屈折率1.45-0.00i)を用いて測定した。単分散度は、平均粒径と標準偏差から求めた変動係数にて評価した。…
[0062][表3]
[図:0001395213000001.jpg]
」
摘記X4:図1及び図2
「[図1]
[図:0001395213000002.jpg]
[図2]
[図:0001395213000003.jpg]
」
参考例A(https://www.an.shimadzu.co.jp/powder/lecture/practice/p01/le
sson17.htm)には、次の記載がある。
摘記A1:粉博士のやさしい粉講座:実践コース
「
[図:0001395213000004.jpg]
」
参考例B(特開2002-370920号公報)には、次の記載がある。
摘記B1:段落0008及び0011
「樹脂球状微粒子は、体積平均粒子径が8~16μmであり、かつ粒子径4μm未満の粒子および粒子径20μmを超える粒子がそれぞれ6体積%以下である化粧料に関する。…樹脂球状微粒子の体積平均粒子径および粒度分布は、電気検知式粒度分布測定装置で測定することができる。」
参考例C(特開2015-182979号公報)には、次の記載がある。
摘記C1:段落0016、0030及び0037
「生分解ポリマーとしては、…ポリブチレンサクシネート等のポリエステル系樹脂が挙げられ、…レーザー回折型粒度分布計(日機装製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて体積平均粒子径を測定した。…本発明の球状生分解性ポリマー粉体は、毛穴ぼかし効果、素肌感、透明感、塗布時の感触やすべり性に加え、肌への付着性に優れた化粧料を得ることができる」
イ 先願発明
摘記X1の「真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有することを特徴とする化粧品。」との記載、及び
摘記X3の「1.真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体の調製…ポリエステル樹脂…として次のものを用いた。…ポリエステル樹脂C:ポリスチレン換算Mw22万、メルトフローレート(MFR:JIS K7210-1999、温度190℃、荷重2.16kgf)1.5、引張破断強度57MPa、融点115℃の市販のポリブチレンサクシネート樹脂…実施例1~21…表1~表4に示した成分割合で、密閉分散槽に仕込み、…ポリエステル樹脂B~Dを用いた場合は70℃に加熱して所定の攪拌分散装置を用いた分散方法によって分散後、40℃まで急冷した。その後、減圧下に酢酸エチルを除去してポリエステル樹脂水系分散体を得た。…ポリエステル樹脂粒子の粒子状態(平均粒径、分散度、真球度)について、以下のようにして測定、評価を行った。結果を表1~表4に示す。…粒子の平均粒径、単分散度は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所(株)製、SALD-2300型、屈折率1.45-0.00i)を用いて測定した。単分散度は、平均粒径と標準偏差から求めた変動係数にて評価した。…表3…実施例…16…ポリエステル樹脂…C…40…平均粒径(μm)…4.56…標準偏差…0.244…変動係数(%)…5.36」との記載からみて、先願Xの当初明細書等には、
『真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有する水系分散体であって、ポリエステル樹脂がポリブチレンサクシネート樹脂であり、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所(株)製)を用いて測定した粒子の平均粒径が4.56μm、標準偏差が0.244、変動係数が5.36%の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有する水系分散体。』についての発明(以下「先願発明」という)が記載されているといえる。
ウ 対比
本1発明と先願発明とを対比する。
先願発明の「ポリエステル樹脂がポリブチレンサクシネート樹脂」である「真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子」は、本1発明の「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」及び「ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり」に相当する。
先願発明の「レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所(株)製)を用いて測定した粒子の平均粒径が4.56μm」は、摘記A1の「レーザ回折式粒度分布測定装置では、粒度分布を体積基準で測定しています。」との記載、摘記B1の「樹脂球状微粒子の体積平均粒子径および粒度分布は、電気検知式粒度分布測定装置で測定する」との記載、摘記C1の「レーザー回折型粒度分布計…を用いて体積平均粒子径を測定した。」との記載にあるように、粒度分布測定装置で測定した「平均粒子径」は「体積」基準で測定した「平均体積粒子径」であることが普通であるから、本1発明の「体積平均粒子径が2~30μmであり」に相当する。
先願発明の「水系分散体」と、本1発明の「化粧料」は、両者とも「配合品」という点において一致する。
してみると、本1発明と先願発明は、両者とも『ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子を含む配合品であって、前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、体積平均粒子径が2~30μmであり、ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子である、配合品。』という点において一致し、次の(α)~(γ)の点において相違する。
(α)配合品が、本1発明は「化粧料」であるのに対して、先願発明は「水系分散体」である点。
(β)粒子分布が、本1発明は「粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子である」であるのに対して、先願発明は「標準偏差が0.244、変動係数が5.36%」の「単分散性」である点
(γ)本1発明は「但し、ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量1800万)およびポリビニルアルコール(鹸化度80%、平均分子量11万)を含む水系分散体を含む化粧料、ならびに、ポリアクリル酸-メタクリルアミド(質量比で85:15)共重合体(平均分子量2500万)およびポリビニルアルコール(鹸化度89%、平均分子量24万)を含む水系分散体を含む化粧料を除く」として、先願Xの当初明細書等の段落0055及び0062に記載の実施例15及び16の具体例を除くものであるのに対して、先願発明は、先願明細書の実施例16の具体例に相当するものである点
エ 判断
事案に鑑み、先ず、上記(γ)の相違点について検討するに、本1発明は、先願発明を明確に除外しており、除外後の本1発明が先願Xの当初明細書等に記載されているに等しい又は技術常識であるとする理由はないから、この点について実質的な差異がないとはいえない。
したがって、上記(α)及び(β)の点について検討するまでもなく、本1発明は、先願発明と同一であるとはいえないので、特許法第184条の13の規定において読み替えて適用する同法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものに該当しない。
オ 特許異議申立人の主張
令和4年9月16日付けの意見書の3.(4)イ)において、特許異議申立人は「先願X(甲第1号証 国際公開第2016/080530号)の明細書0019段落は、分散剤として『本発明においては、ポリエステル樹脂粒子が水に安定に分散した安定な水分散体を形成するために、前記の通り、分散剤として(A)平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物と(B)ポリビニルアルコールとを質量比(A/B)で1/10~1/99の範囲内で含有するものとする。』と記載されている。つまり、先願X(甲第1号証 国際公開第2016/080530号)の化粧料に含まれる水系分散体は、平均分子量1800万及び平均分子量2500万という2点のみで同一性が除かれるものではなく、分子量500万以上2500万以下という範囲(少なくとも実施例の1800万~2500万の範囲)で存在する。」と主張する。
しかしながら、先願Xの当初明細書等には、ポリエステル樹脂C(ポリブチレンサクシネート樹脂)を用いた樹脂粒子として、実施例15の「粒子の平均粒径が3.22μm、標準偏差が0.206、変動係数が6.39%の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子」と、実施例16の「粒子の平均粒径が4.56μm、標準偏差が0.244、変動係数が5.36%の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子」が記載されているものの、実施例15及び16の記載以外に、特定の平均粒径と標準偏差と変動係数を有するポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子についての記載がない。
このため、ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子が「体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを越える粒子の割合が6体積%以下の粒子」であるという、本1発明の粒度分布に関する発明特定事項からみて、先願Xの当初明細書等に記載された実施例15及び16のものを除くとした本1発明が、先願Xの当初明細書等に記載されているとはいえず、上記主張は採用できない。
2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1(拡大先願違反)
特許異議申立人が主張する申立理由1(拡大先願違反)は『本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その優先日の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲第1号証に記載された発明と同一であり、しかも、この本件特許発明の発明者が甲第1号証に係る発明者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が甲第1号証の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第113条第1項第2号)。』というものである。
ここで、当該「甲第1号証」とされる「PCT/JP2015/082736号(国際公開第2016/080530号)」は、上記1.(3)アに示した「先願X」に対応するものであるものの、厳密には、異なる出願である。そして、当該「特許法第29条の2の規定」との根拠条文は、正しくは「特許法第184条の13の規定において読み替えて適用する同法第29条の2の規定」である。
ただし、上記第4 2.の〔理由1〕において、上記特許異議申立理由は実質的に採用されているから、「取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由」の項目においては、検討しないこととする。
(2)申立理由3(サポート要件違反)について、
特許異議申立人が主張する申立理由3(サポート要件違反)は、上記第4 1.(3)の「不備1」に示した点に関するものであって、上記第4 2.の〔理由2〕の「不備B」として採用されている。
(3)申立理由4(明確性違反)について
特許異議申立人が主張する申立理由4(明確性違反)は、上記第4 1.(4)の「不備2」に示した点に関するものであって、上記第4 2.の〔理由3〕の「不備A」として採用されている。
(4)申立理由2(甲第2~7号証による進歩性無し)について
特許異議申立人が主張する申立理由2(進歩性違反)は『本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第2号証、甲第3号証及び甲第7号証(技術常識として甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証)から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない(同法第113条第1項第2号)。』というものである。
ア 甲第2~7号証の記載事項
(ア)甲第2号証には、和訳として、次の記載がある。
摘記2a:甲第2号証の発明の名称
「ポリブチレンサクシネート球状微粒子の製造方法」
摘記2b:甲第2号証の1頁目の下から1行目
「図3は、実施形態によって製造されたポリブチレンサクシネート球状微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。」
摘記2c:甲第2号証の2頁目の2行目
「図4は、実施形態2により製造されたポリブチレンサクシネート球状微粒子の粒度分布図である。」
摘記2d:甲第2号証の3頁目の1~3行目
「本発明は平均粒子径および粒子サイズ分布などを制御することができるポリブチレンサクシネート球状微粒子の製造方法を提供することを主な目的とする。本発明の別の目的は、化粧品フィラーに使用可能なポリブチレンサクシネート球状微粒子を提供することである。」
摘記2e:甲第2号証の4頁目の下から15~17行目
「第3工程で得られたポリブチレンサクシネート微粒子(粉末)は球形で、平均粒子径が0.05~80μm(好ましくは0.1~20μm)で、単分散に優れるものとなる。本発明によれば、球形がいびつなものを0.1%未満にすることができ、最大の表面積を有するようになる。」
摘記2f:甲第2号証の5頁目の1~10行目
「実施形態2
第一の溶液として10mlの塩化メチレン溶液(ポリブチレンサクシネート:塩化メチレン=1:3)、第二の溶液として0.25%のポリビニルアルコール水溶液20mlを準備した。続いて、25℃で両溶液を混合し、ホモミキサー(3,000rpm)でエマルジョンを製造した。製造されたエマルジョンは、40℃で60分間攪拌することにより、ポリブチレンサクシネート微粒子を析出させた。その後、遠心分離法により析出物を回収し、減圧乾燥させてポリブチレンサクシネート微粒子(粉末)を得た。
析出させた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって、ポリブチレンサクシネート微粒子が単分散に優れた球状粒子で構成されていることを確認した。観察結果を図3に示す。ポリブチレンサクシネート微粒子の平均粒子径は3.6μmであった。その測定結果を図4に示す。」
摘記2g:甲第2号証の7項目の上から3つめの図)
「 図3
[図:0001395213000005.jpg]
」
摘記2h:甲第2号証の8項目の上から1つめの図)
「 図4
[図:0001395213000006.jpg]
」
(イ)甲第3号証には、次の記載がある。
摘記3a:段落0012~0013及び0015
「【0012】本発明の別の目的は、生分解性樹脂を用いても、球状粒子を簡便に形成できる製造方法を提供することにある。
【0013】本発明のさらに別の目的は、生分解性樹脂粒子の粒子径を制御できるとともに、粒子径の分布幅を狭くできる製造方法を提供することにある。…
【0015】本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、少なくともオリゴ糖で構成された助剤成分を、生分解性樹脂成分と組み合わせて分散体を形成すると、水を用いて助剤成分を効率よく溶出できるとともに、環境に対する負荷を低減でき、球状の生分解性樹脂粒子を簡便に製造できることを見出し、本発明を完成した。」
摘記3b:段落0113及び0116
「【0113】生分解性樹脂粒子の平均粒子径は、特に制限されず、用途に応じて0.1μm~1mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.1~800μm(例えば0.1~500μm)、好ましくは0.1~100μm(例えば、0.5~80μm)、さらに好ましくは0.5~50μm(例えば、1~40μm)程度である。また、粒子径の変動係数([粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100)は、60以下(例えば5~60程度)、さらに好ましくは50以下(例えば、10~50程度)である。…
【0116】本発明の生分解性樹脂粒子は、生分解性に優れるため、農薬、医薬、化粧品、塗料(例えば、粉体塗料、船底用塗料など)、コーティング剤、接着剤、インキ、トナー、ブロッキング防止剤、スペーサーなどのファインケミカル分野における原料又は添加剤などとして有用である。さらに、農林水産業用、土木用及び建設用フィルムやシートなどへの添加剤、使い捨てオムツなどの衛生用品材料、生体内分解吸収性を必要とする医用素材や徐放性を必要とする徐放性材料などとしても有用である。…
摘記3b:段落0118~0119、0124及び0126
「【0118】実施例1~5及び比較例1,2
表1に示す組成の生分解性樹脂成分と水溶性助剤成分とで構成された樹脂組成物を、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により設定温度200℃で5分間溶融混練した後、30℃で10分間放置し、その後プレス機にて200℃、200kg/cm2(約20MPa)、3分間の条件で、厚さ1mmの板状の分散体を作製した。得られた分散体は、速やかに30℃、3分間の条件で冷却し、その後60℃の湯水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。孔径0.45μmのポリビニリデンフルオライド製のメンブレン膜を用いて、この懸濁溶液より不溶分を分離することにより樹脂の微粒子を回収した。なお、用いた各成分や、相溶性及び得られた微粒子の評価方法は以下の通りである。結果を表1に示す。
【0119】
(樹脂成分)
樹脂-1:セルロースアセテートブチレート樹脂(イーストマン(株)製、CAB171-15S)
樹脂-2:ポリ乳酸(三井化学(株)製、レイシア H-100PL)
樹脂-3:ポリカプロラクトン-ポリブチレンサクシネート共重合樹脂(ダイセル化学工業(株)製、カプロラクトン含有量10モル%、MFR(190℃/2160g)1g/10分)
樹脂-4:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(クラレ(株)製、EP-L101B、エチレン含量19.8重量%)
樹脂-5:ポリスチレン樹脂(東洋スチレン(株)製、GPPS HRM63C)
樹脂-6:ナイロン12樹脂(ダイセルデグサ(株)製、ダイアミドL1600)
(助剤成分)
助剤成分-1(オリゴ糖):デンプン糖(東和化成(株)製、還元デンプン糖化物PO-10、25℃においてB型粘度計で測定した50重量%水溶液の粘度:6.5Pa・s)
助剤成分-2(a)(可塑化成分):糖アルコール(和光純薬(株)製、ペンタエリスリトール)
助剤成分-2(b)(可塑化成分):糖アルコール(和光純薬(株)製、D(-)ソルビトール)。…
【0124】(樹脂粒子の平均粒径)
回収された樹脂微粒子を乾燥した後、走査型電子顕微鏡を用いて微粒子の形状観察を行った。また、乾燥した樹脂微粒子の適当量を純水中に再び分散させることにより懸濁液を調製し、レーザー回折型粒度分布計(島津製作所(株)製、SALD-2000J)を用いて数平均粒子径を測定した。さらに、無作為に抽出した100個の樹脂微粒子に対して変動係数を算出した。…
【0126】…【表1】
実施例1~5では、樹脂成分と助剤成分とが、相溶系又は非相溶系のいずれにおいても、真球状の球状樹脂微粒子を得ることができた。参考のため、実施例1で得られたセルロースアセテートブチレート樹脂の球状微粒子の電子顕微鏡写真を図1に示す。」
(ウ)甲第4号証には、次の記載がある。
摘記4a:段落0034
「【0034】化粧品配合用には、一般に3μm以上15μmの平均粒子径のものが好ましく使用される。生分解性合成高分子の球状粒子は、ローリング効果を有し、化粧品ののびがよく、サラサラした感触を与える。」
(エ)甲第5号証には、次の記載がある。
摘記5a:段落0102~0103
「[0102]上記多孔質形状のポリ乳酸系樹脂微粒子の数平均粒子径については、用途に応じて、適正な数平均粒子径の範囲を決定することができる。例えば、化粧品などの用途においては、数平均粒子径が小さいほうが滑らかさが向上するため、数平均粒子径の上限値としては、通常90μm以下であり、好ましい態様によれば、50μm以下であり、より好ましい態様によれば、30μm以下である。また、化粧品などに使用した場合、数平均粒子径が小さすぎると粒子同士の凝集が起こりやすくなるため、数平均粒子径の下限値としては、通常1μm以上であり、1μm超が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上が最も好ましい。
[0103]上記多孔質形状のポリ乳酸系樹脂微粒子の粒子径分布を示す粒子径分布指数としては、2以下であると、化粧品などに使用した場合、粒子の流れが向上し、より滑らかな感触が付与されるため好ましい。粒子径分布指数の上限値としては、好ましい態様によれば、1.5以下であり、より好ましい態様によれば、1.3以下であり、最も好ましい態様によれば、1.2以下である。また、その下限値は、理論上1である。」
(オ)甲第6号証には、次の記載がある。
摘記6a:段落0048
「【0048】本発明による粉末組成物は、粒径(又は数平均粒径)が具体的には約0.1~約44ミクロンの範囲であり、好ましくは平均粒径が5~20ミクロンで最大粒径が44ミクロン、より好ましくは平均粒径が8~12ミクロンで最大粒径が31.11ミクロンであることができる。前記粒径範囲は、すべての特定の値及びその間の部分的範囲を包含する。粒径は、リーズ・ノースラップ(Leeds-Northrup)の装置「マイクロトラック(Microtrac)X100&SRA150」にてASTM D4464基準に従って測定されてもよい。」
(カ)甲第7号証には、次の記載がある。
摘記7a:第8頁第2~7行
「本発明において、生分解性ポリエステル樹脂微粒子の圧縮時の10%変形強度(測定法については後述)は、5MPa以上であることが必要であり、特に10MPa以上であることが必要であり、特に10MPa以上が好ましい。10%変形強度が5MPa未満の場合は、化粧品に配合した際に元の球状体から非球状体へ変形しやすく、このため感触の向上や塗布時の滑り性向上への効果が少なくなる。」
イ 甲第2及び3号証に記載された発明
(ア)甲2発明
摘記2dの「本発明の別の目的は、化粧品フィラーに使用可能なポリブチレンサクシネート球状微粒子を提供することである。」との記載、摘記2fの「実施形態2…析出させた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって、ポリブチレンサクシネート微粒子が単分散に優れた球状粒子で構成されていることを確認した。観察結果を図3に示す。ポリブチレンサクシネート微粒子の平均粒子径は3.6μmであった。その測定結果を図4に示す。」との記載、及び摘記2hの図4の記載からみて、甲第2号証には『平均粒子径が3.6μmであり、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した測定結果が図4で示される、化粧品フィラーに使用可能なポリブチレンサクシネート球状微粒子。』についての発明が記載されているといえる。
そして、当該「化粧品フィラーに使用可能なポリブチレンサクシネート球状微粒子」は、化粧品に配合して用いるものであることから、甲第2号証には『平均粒子径が3.6μmであり、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した測定結果が図4で示される、化粧品フィラーに使用可能なポリブチレンサクシネート球状微粒子が配合された化粧品。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が実質的に記載されているといえる。
(イ)甲3発明
甲第3号証(摘記3b及び3c)の記載からみて、甲第3号証には「実施例3」の樹脂微粒子として、
『ポリカプロラクトン-ポリブチレンサクシネート共重合樹脂(カプロラクトン含有量10モル%)30wt%、デンプン糖(助剤成分1)50%、及び糖アルコール(助剤成分2)20wt%とで構成された樹脂微粒子であって、レーザー回折型粒度分布計を用いて測定した数平均粒子径が8.2μmであり、無作為に抽出した100個の樹脂微粒子に対して算出した変動係数が32である、生分解性に優れるため、農薬、医薬、化粧品、塗料(例えば、粉体塗料、船底用塗料など)、コーティング剤、接着剤、インキ、トナー、ブロッキング防止剤、スペーサーなどのファインケミカル分野における原料又は添加剤などとして有用である真球状の球状樹脂微粒子。』についての発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
ウ 甲第2号証を主引用例とした場合の検討
(ア)本1発明と甲2発明との対比
本1発明と、甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ポリブチレンサクシネート球状微粒子」は、ポリブチレンサクシネート100%の組成にある「球状」の粒子であるから、本1発明の「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」及び「ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり」に相当する。
甲2発明の「化粧品フィラーに使用可能なポリブチレンサクシネート球状微粒子が配合された化粧品」は、本1発明の「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子を含む化粧料」に実質的に相当する。
また、甲2発明は、本1発明の「除くクレーム」によって除外されていない。
してみると、本1発明と甲2発明は『ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子を含む化粧料であり、ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり、但し、ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量1800万)およびポリビニルアルコール(鹸化度80%、平均分子量11万)を含む水系分散体を含む化粧料、ならびに、ポリアクリル酸-メタクリルアミド(質量比で85:15)共重合体(平均分子量2500万)およびポリビニルアルコール(鹸化度89%、平均分子量24万)を含む水系分散体を含む化粧料を除く、化粧料。』という点において実質的に一致し、次の(α)の点において相違する。
(α)ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子の粒子径と粒度分布が、本1発明においては「体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子」であるのに対して、甲2発明は「平均粒子径が3.6μmであり、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した測定結果が図4で示される」である点
(イ)本1発明についての判断
a 体積平均粒子径(体積基準)と数平均粒子径(個数基準)について
例えば、特開2007-264669号公報(参考例D)の段落0106の「走査型電子顕微鏡により…個数基準の平均一次粒径…を求めることで測定出来る」との記載にあるように、走査型電子顕微鏡で測定する「平均粒子径」は、体積基準ではなく、個数基準で測定されるのが普通である。
また、例えば、特開2005-274722号公報(参考例E)の段落0061の「得られたトナーの粒径は、体積基準で平均粒径7.6μm、個数基準で、平均粒径6.8μmであり」との記載にあるように、体積平均粒子径と数平均粒子径は、必ずしも同じ値にならないことが普通に知られている。
b 甲2発明の「平均粒子径」について
甲2発明の「平均粒子径が3.6μm」という粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した測定結果によるものであるから、体積基準でなく、個数基準で測定された粒径であると普通には解されるので、甲2発明の「平均粒子径」が、本1発明の「体積平均粒子径が2~30μm」を満たす範囲にあると直ちに認めることはできず、甲2発明の個数基準での平均粒子径を、体積基準での平均粒子径に換算するために必要な計算方法やパラメータなどの情報は、特許異議申立人が提示した証拠の全てを精査しても見当たらない。
してみると、上記(α)の前段の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。
c 甲2発明の粒度分布について
特許異議申立人が提示した甲第8号証には、甲第2号証の図4より各粒径における頻度(粒子量割合)を読み取った結果が示されているところ、その結果を示す表に基づいて計算すると、粒径が0.90μmから0.12μmまでの頻度(%)の和は、17.9%(=2.20+2.20+2.00+1.90+1.70+1.50+1.30+1.10+0.90+0.75+0.55+0.45+0.35+0.30+0.25+0.20+0.15+0.10)となって、15%を超える百分率にあるので、甲2発明が、本1発明の「粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下」という要件を満たす範囲にあると直ちに認めることはできず、甲2発明の個数基準での粒度分布を、体積基準での平均粒子径に換算するために必要な計算方法やパラメータなどの情報も見当たらない。
そして、甲第3号証の段落0124及び0126(摘記3c)には、数平均粒子径を8.2μmとした球状樹脂微粒子の実施例3の記載があり、
甲第4号証の段落0034(摘記4a)には「化粧品配合用には、一般に3μm以上15μmの平均粒子径のものが好ましく使用される。」との記載があり、
甲第5号証の段落0102~0103(摘記5a)には「化粧品などの用途においては、数平均粒子径が小さいほうが滑らかさが向上するため、数平均粒子径の上限値としては、通常90μm以下であり、…数平均粒子径が小さすぎると粒子同士の凝集が起こりやすくなるため、数平均粒子径の下限値としては、通常1μm以上であり、…粒子径分布を示す粒子径分布指数としては、2以下であると、化粧品などに使用した場合、粒子の流れが向上し、より滑らかな感触が付与されるため好ましい。」との記載があり、
甲第6号証の段落0048(摘記6a)には「本発明による粉末組成物は、粒径(又は数平均粒径)が具体的には約0.1~約44ミクロンの範囲であり、好ましくは平均粒径が5~20ミクロンで最大粒径が44ミクロン、より好ましくは平均粒径が8~12ミクロンで最大粒径が31.11ミクロンであることができる。」との記載があり、
甲第7号証の第8頁(摘記7a)には「生分解性ポリエステル樹脂微粒子の圧縮時の10%変形強度(測定法については後述)は、5MPa以上であることが必要であり」との記載があるものの、
ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子の粒子径と粒度分布を「体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下」とすること(当該数値範囲の上限や下限を本1発明のとおりに設定すること)については、甲第2~7号証の全ての記載全体を検討しても、示唆を含めて記載が見当たらない。
してみると、上記(α)の後段の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。
d 本1発明の効果について
本件特許明細書の段落0067には、上記(α)の相違点に係る構成を満たさない製造例8~11のものを使用する比較例3~6のものに比して、本1発明に係る構成の全てを満たす実施例1、5、7及び13のものが、10名の評価パネラーでの評価で良好な結果〔×:悪い(良いと感じた人数が5人以下)の評価が、実施例では皆無なのに対して、比較例においては少なくとも1以上の×の評価がなされているという結果〕になることが示されている。そして、このような効果は、甲第2~7号証に示唆を含めて記載がなく、出願時の技術常識を考慮しても、容易に予測できるとはいえない。
してみると、本1発明は当業者の予測できない、顕著な効果を奏するものと認められる。
e 小括
したがって、本1発明は、甲第2~7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
f 特許異議申立人の主張について
特許異議申立書の第25頁第23~24行では「甲第2号証には、本件特許発明1の発明特定事項A、B及びDが明確に記載されている。」と主張するが、甲第2号証の「平均粒子径」は「体積平均粒子径」ではなく、甲第2号証に、発明特定事項Bに関する事項が明確に記載されているとはいえない。
また、同第27頁第15~17行では「甲第2号証の実施形態2に係るポリブチレンサクシネート微粒子は、発明特定事項C『粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子』を満たす。」と主張するが、甲第2号証の「実施形態2」のものは、甲第8号証の結果において、粒子径0.90μm以下の粒子の割合が17.9%であること〔さらに、粒子径1.0μm以下の粒子の割合で19.05%であること〕が示されており、このような粒度分布にあるものが、上記「発明特定事項C」を満たすといえる合理的な根拠は、特許異議申立人の主張及び証拠に見出すことはできない。
加えて、令和4年9月16日付けの意見書の第6頁では、新たな文献として「特開2002-370920号公報」を提示し、その段落0007~0008に記載の事項が「当業者の技術常識」であるとしているが、当該記載事項が「当業者の技術常識」であると認めるに足る根拠は見当たらない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(ウ)本2発明について
本2発明は、本1発明を直接的に引用し、さらに限定したものであるから、本1発明の進歩性が、甲第2~7号証に記載された発明によって否定できない以上、本2発明が、甲第2~7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
エ 甲第3号証を主引用例とした場合の検討
(ア)本1発明と甲3発明との対比
本1発明と、甲3発明とを対比する。
甲3発明の「ポリカプロラクトン-ポリブチレンサクシネート共重合樹脂(カプロラクトン含有量10モル%)30wt%、デンプン糖(助剤成分1)50%、及び糖アルコール(助剤成分2)20wt%とで構成された樹脂微粒子」である「真球状の球状樹脂微粒子」と、本1発明の「ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり」とされる「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」とは、両者とも「樹脂の球状粒子」という点において共通する。
甲3発明の「生分解性に優れるため、農薬、医薬、化粧品、塗料(例えば、粉体塗料、船底用塗料など)、コーティング剤、接着剤、インキ、トナー、ブロッキング防止剤、スペーサーなどのファインケミカル分野における原料又は添加剤などとして有用である真球状の球状樹脂微粒子」は、化粧品として有用であるとされるものであるから、本1発明の「樹脂の球状粒子を含む化粧料」に実質的に相当する。
また、甲3発明は、本1発明の「除くクレーム」によって除外されていない。
してみると、本1発明と甲3発明は『樹脂の球状粒子を含む化粧料であり、但し、ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量1800万)およびポリビニルアルコール(鹸化度80%、平均分子量11万)を含む水系分散体を含む化粧料、ならびに、ポリアクリル酸-メタクリルアミド(質量比で85:15)共重合体(平均分子量2500万)およびポリビニルアルコール(鹸化度89%、平均分子量24万)を含む水系分散体を含む化粧料を除く、化粧料。』という点において実質的に一致し、次の(β)及び(γ)の点において相違する。
(β)樹脂の球状粒子が、本1発明においては「ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり」とされる「ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子」であるのに対して甲3発明においては「ポリカプロラクトン-ポリブチレンサクシネート共重合樹脂(カプロラクトン含有量10モル%)30wt%、デンプン糖(助剤成分1)50%、及び糖アルコール(助剤成分2)20wt%とで構成された樹脂微粒子」であって、ポリブチレンサクシネートを90質量%未満の量で含むものである点
(γ)樹脂の球状粒子の粒子径と粒度分布が、本1発明においては「体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子」であるのに対して、甲3発明は「レーザー回折型粒度分布計を用いて測定した数平均粒子径が8.2μmであり、無作為に抽出した100個の樹脂微粒子に対して算出した変動係数が32」である点
(イ)本1発明についての判断
a 相違点(β)について
甲第3号証の段落0015(摘記3a)の「少なくともオリゴ糖で構成された助剤成分を、生分解性樹脂成分と組み合わせて分散体を形成すると、…球状の生分解性樹脂粒子を簡便に製造できる」との記載にあるように、甲3発明は、オリゴ糖で構成された助剤成分の相当量を用いることで、球状の樹脂粒子を製造可能になっているものであるから、甲3発明の「真球状の球状樹脂微粒子」の組成に占める助剤成分(デンプン糖50wt%及び等アルコール20wt%)の量を10wt%未満とすることには、阻害理由があるといえる。
してみると、甲第2~7号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても、上記(β)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。
b 相違点(γ)について
甲3発明の「数平均粒子径が8.2μm」は、体積基準の平均粒子径と異なるものであるから、本1発明の「体積平均粒子径が2~30μmであり」を示唆するものではない。
また、甲3発明の「無作為に抽出した100個の樹脂微粒子に対して算出した変動係数が32」は、甲第3号証の段落0113(摘記3b)の「[粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100)」との記載にある計算式によって算出されるものであるところ、甲第3号証には、甲3発明の「無作為に抽出した100個の樹脂微粒子」の具体的な「粒子径の標準偏差」や粒度分布を明らかにするものではないので、甲第3号証の記載によっては、甲3発明の「真球状の球状樹脂微粒子」の「粒子径1μm未満の粒子の割合」及び「粒子径30μmを超える粒子の割合」が、どのようなものであるかを算出ないし再現できないし、甲3発明(甲第3号証の実施例3の樹脂微粒子)の粒度分布が、甲第2号証の図2の粒度分布(正規分布に近い型)などでなく、甲第2号証の図4(実施形態2)と同じシェイプ(象を飲み込んだウワバミ型)の粒度分布を有するといえる合理的かつ技術的な根拠は見当たらないので、甲第8号証の「甲第2号証の図4の変動係数の計算方法」を適用して、甲第3号証の粒度分布を算出することに合理性があるとはいえない。
そして、ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子の粒子径と粒度分布を「体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下」とすること(当該数値範囲の上限や下限を本1発明のとおりに設定すること)については、甲第2~7号証の全ての記載を精査しても、示唆を含めて記載が見当たらない。
してみると、上記(γ)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。
c 本1発明の効果について
本件特許明細書の段落0067には、上記(β)の相違点に係る構成を満たさない製造例3のものを使用する比較例1のもの、及び上記(γ)の相違点に係る構成を満たさない製造例8~11のものを使用する比較例3~6のものに比して、本1発明に係る構成の全てを満たす実施例1、5、7及び13のものが、10名の評価パネラーでの評価で良好な結果〔×:悪い(良いと感じた人数が5人以下)の評価が、実施例では皆無なのに対して、比較例においては少なくとも1以上の×の評価がなされているという結果〕になることが示されている。そして、このような効果は、甲第2~7号証に示唆を含めて記載がなく、出願時の技術常識を考慮しても、容易に予測できるとはいえない。
してみると、本1発明は当業者の予測できない、顕著な効果を奏するものと認められる。
d 小括
したがって、本1発明は、甲第2~7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
e 特許異議申立人の主張について
令和4年9月16日付けの意見書の第6頁では「甲第3号証発明には、『ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子を含む化粧料であって、前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、体積平均粒子径が2~30μmであり、ここに前記ポリブチレンサクシネート系樹脂の球状粒子は、ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子であり、但し、ポリアクリル酸-アクリルアミド(質量比で80:20)共重合体(平均分子量1800万)およびポリビニルアルコール(鹸化度80%、平均分子量11万)を含む水系分散体を含む化粧料、ならびに、ポリアクリル酸-メタクリルアミド(質量比で85:15)共重合体(平均分子量2500万)およびポリビニルアルコール(鹸化度89%、平均分子量24万)を含む水系分散体を含む化粧料を除く、化粧料。』が記載されている点で一致する。」と主張するが、甲第3号証の具体的な記載事項との正確な比較がなされているものではないので、甲第3号証発明が上記のとおり「一致する」とは認めるに至らない。
そして、上記(γ)の相違点にあるように、甲3発明の「数平均粒子径が8.2μm」との記載によっては、本1発明の「体積平均粒子径が2~30μm」が記載されているとはいえない。
また、上記(β)の相違点にあるように、甲3発明の「真球状の球状樹脂微粒子」は合計70wt%のオリゴ糖を有するものであるから、本1発明の「ポリブチレンサクシネートを90質量%以上含む球状粒子」が記載されているともいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)本2発明について
本2発明は、本1発明を直接的に引用し、さらに限定したものであるから、本1発明の進歩性が、甲第2~7号証に記載された発明によって否定できない以上、本2発明が、甲第2~7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
第6 まとめ
以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1~本2発明に係る特許を取り消すことはできず、他に本1~本2発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700292