特許異議申立
2022-700198
分枝状ポリオルガノシロキサン並びに関連する硬化性組成物、方法、使用及びデバイス
- 審判番号
- 2022-700198
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-156331
- 登録番号
- 6935993
- 請求日
- 2022年03月07日
- 審決日
- 2023年03月30日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダウ シリコーンズ コーポレーション
- 【権利者代理人】村山 靖彦
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【異議申立人】信越化学工業 株式会社
- 【異議申立人代理人】好宮 幹夫
- 【異議申立人代理人】小林 俊弘
- 【異議申立人代理人】大塚 徹
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 近野 光知
- 審判官 橋本 栄和
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2項、特許法第29条、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6935993号発明「分枝状ポリオルガノシロキサン並びに関連する硬化性組成物、方法、使用及びデバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6935993号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第6935993号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6935993号(請求項の数9。以下、「本件特許」という。)は、平成28年8月9日(優先権主張 平成27年11月5日 米国)の出願に係る特許であって、令和3年8月30日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年9月15日である。)。
その後、令和4年3月7日に、本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、特許異議申立人である信越化学工業株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 6月30日付け取消理由通知
同年10月 3日 意見書の提出及び訂正請求(特許権者)
同年10月11日付け通知(申立人あて)
なお、申立人に対して、令和4年10月11日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年10月3日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「下付き文字mは0~1であり、下付き文字nは0~1.1であり、ただし、下付き文字の和m+nは1~2.1であり、」と記載されているのを、「下付き文字mは1であり、下付き文字nは0であり、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1に記載のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであって、
式中、下付き文字nは0であり、下付き文字pは0であり、前記分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(SiO4/2)m(R12SiO2/2)o((R2-R3)R12SiO1/2)q(R13SiO1/2)rであり、式中、下付き文字mは1であり、
下付き文字oは50~1000であり、
下付き文字qは2~42であり、
下付き文字rは0~42であり、
ただし、q+r=2m+2である、又は、
式中、下付き文字mは0であり、下付き文字pは0であり、下付き文字rは0であり、前記分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(R1SiO3/2)n(R12SiO2/2)。((R2-R3)R12SiO1/2)qであり、式中、下付き文字nは1~1.1であり、
下付き文字oは50~1000であり、
下付き文字qは2~42であり、
ただし、q=n+2である、又は、
式中、下付き文字mは>0であり、下付き文字nは>0であり、前記分枝状ポリオルガノシロキサンは、式
(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R12SiO2/2)。((R2-R3)R1SiO2/2)p((R2-R3)R12SiO1/2)q(R13SiO1/2)rであり、
式中、下付き文字mは>0~<1であり、下付き文字nは>0~<1.1であり、ただし、下付き文字の和m+nは1~2.1であり、下付き文字o、p、q、及びrは上記の定義による、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン」と記載されているのを、
「請求項1に記載のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであって、
式中、下付き文字pは0であり、前記分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(SiO4/2)m(R12SiO2/2)。((R2-R3)R12SiO1/2)q(R13SiO1/2)rであり、式中、
下付き文字oは50~1000であり、
下付き文字qは2~42であり、
下付き文字rは0~42であり、
ただし、q+r=2m+2である、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン」に訂正する。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件明細書の「いくつかの実施形態において、mは>0であり、nは0である」(【0015】)との記載及び実施例の表1を基に、mを訂正前の「0~1」から「1」とし、nを訂正前の「0~1.1」から「0」にするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項4に、m、n及びpの値に応じて3つの場合の分枝状ポリオルガノシロキサン(I)が記載されていたのを、訂正事項1により、請求項1におけるm及びnを限定したことに伴い、該当しなくなった2つの場合を削除すると共に、請求項1に記載されることとなったm及びnの特定を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議の申立てがなされているから、上記訂正事項に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 訂正の適否についての判断のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の請求項1~9に記載される以下のとおりのものである(以下、請求項1~9に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
式:
(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R12SiO2/2)。((R2-R3)R1SiO2/2)p((R2-R3R12SiO1/2)q(R13SiO1/2)rのラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであって、
式中、
各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、
各R2は、独立して、ラジカル硬化性基を有する基であり、
各R3は、独立して、2~12個の炭素原子を有するアルキレンであり、
下付き文字mは1であり、
下付き文字nは0であり、
下付き文字oは50~1000であり、
下付き文字pは0~100であり、
下付き文字qは0~42であり、
ただし、下付き文字の和p+qは2を超えて、前記分枝状ポリオルガノシロキサンは、平均で、1分子当たり少なくとも2個のラジカル硬化性基を有し、かつ
下付き文字rは0~42であり、
ただし、下付き文字の和q+r=n+2m+2であり、
各ラジカル硬化性基は、独立して、アクリレート基、メタクリレート基、又はこれらの組合せを含有する一価の有機基である、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン。
【請求項2】
(a)平均で、1分子当たり2個を超えるケイ素結合水素原子を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、
(b)1分子当たり、少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の
(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物である、請求項1に記載の分枝状ポリオルガノシロキサン。
【請求項3】
(a’)平均で、1分子当たり2個を超える脂肪族不飽和基を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、
(b’)1分子当たり、少なくとも1個のケイ素結合水素並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の、
(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物である、請求項1に記載の分枝状ポリオルガノシロキサン。
【請求項4】
請求項1に記載のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであって、
式中、下付き文字pは0であり、前記分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(SiO4/2)m(R12SiO2/2)。((R2-R3)R12SiO1/2)q(R13SiO1/2)rであり、式中、
下付き文字oは50~1000であり、
下付き文字qは2~42であり、
下付き文字rは0~42であり、
ただし、q+r=2m+2である、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン。
【請求項5】
硬化性シリコーン組成物であって、
(I)請求項1~4のいずれか一項に記載のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン;及び
(II)ラジカル開始剤を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化性シリコーン組成物であって、
(III)式:
(SiO4/2)mm(R1SiO3/2)nn(R12SiO2/2)oo((R2-R3)R1SiO2/2)pp((R2-R3)R12SiO1/2)qq(R13SiO1/2)rr
又は
(SiO4/2)mm(R1SiO3/2)nn(R12SiO2/2)oo(R2R1SiO2/2)pp(R2R12SiO1/2)qq(R13SiO1/2)rr
のシリコーン反応性希釈剤
(式中、
各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、
各R2は、独立して、構成要素(I)に関する上記定義によるラジカル硬化性基を有する基であり、
各R3は、独立して、2~12個の炭素原子を有する二価炭化水素であり、
下付き文字mmは0~5であり、
下付き文字nnは0~5であり、
ただし、下付き文字の和(mm+nn)は0~5であり、
下付き文字ooは0~400であり、
下付き文字ppは0~10であり、
下付き文字qqは0~10であり、
ただし、下付き文字の和(pp+qq)は1以上であり、
下付き文字rrは0~10であり、
ただし、下付き文字の和qq+rr=nn+2mm+2である)又は
(IV)充填剤、又は
(V)充填剤処理剤、又は
(IV)充填剤及び(V)充填剤処理剤、又は
(VI)湿気硬化開始剤及び(VII)架橋剤を更に含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
電子デバイスであって、請求項5若しくは6に記載の硬化性シリコーン組成物又はその硬化生成物及び前記デバイスと作用的に接触する少なくとも1つのその他のデバイスコンポーネントを含む、電子デバイス。
【請求項8】
基材及びその上に封止作用で接触して配置されたシーラント、又は第1及び第2の基材並びにその間に接着作用で接触して配置された接着剤を含むアセンブリ、を含む製造物品であって、前記シーラント又は前記接着剤が請求項5若しくは6に記載の硬化性シリコーン組成物又はその硬化生成物を含む、製造物品。
【請求項9】
熱伝導性部材及び該熱伝導性部材と熱的連通する少なくとも1つのその他のコンポーネントを含むデバイスであって、前記熱伝導部材が請求項5若しくは6に記載の硬化性シリコーン組成物又はその硬化生成物を含む、デバイス。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審が通知した取消理由について
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由
本件訂正前の本件特許の請求項1~9に係る特許は、下記(1)~(5)のとおり、特許法第113条第2項及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記(6)の甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」等という。)を提出する。
(1)申立理由1(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、5及び6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件訂正前の請求項1、2、5及び6係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1及び4~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件訂正前の請求項1、2及び4~6係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲2及び甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、2及び4~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件訂正前の請求項1、2及び4~6係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)申立理由4(進歩性)
本件訂正前の請求項1、2及び4~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1、甲2及び甲3に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、本件訂正前の請求項1、2及び4~6に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1~9に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
記
「本件特許の請求項1のラジカル硬化性分岐状オルガノポリシロキサンのうち、「硬化特性における利点を、多種多様な用途に望まれる物理的及び機械的特性と共にもたらす」という課題を解決できるのは、(SiO4/2)mのみを有する場合(態様1)だけであり、(R1SiO3/2)nのみを有する場合(態様2)及び(SiO4/2)mと(R1SiO3/2)nの両方を有する場合(態様3)は課題を解決できることが明細書中に示されていない。」
(6)証拠方法
甲1:特開平6-256519号公報
甲2:特開平7-26146号公報
甲3:特開平7-149906号公報
2 当審が通知した取消理由通知の理由
当審が令和4年6月30日付けで通知した取消理由は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件訂正前の請求項1、3、5及び6係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明及び下記の引用文献Aに記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献A:特表2013-510227号公報
(2)取消理由2(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件訂正前の請求項1~3、5及び6係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲2に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1~9に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
記
本件明細書には、本件発明1~9に係るラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンにおいて、Q単位を含む具体例のみが記載され、Q単位を含まずT単位を含むものであっても上記課題を解決できることを技術的な根拠を示して説明した記載はないから、当業者といえども、Q単位を含まずT単位を含む場合に課題を解決できることを具体的に確認できない。
第5 当審の判断
以下に述べるように、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1~9に係る特許は取り消すことはできない。
1 取消理由通知の理由について
(1)取消理由1(新規性、進歩性)について
取消理由1及び申立理由1は、甲1を主引用文献とする新規性及び進歩性の理由であるから、併せて判断する。
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
甲1には、次の記載がある。
(ア)「【0006】更に、別の製造方法として、アルケニル基を持つ(メタ)アクリル化合物とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金触媒存在下でヒドロシリル化反応させる方法が知られている(特開昭48-48000号公報、特開平2-163166号公報参照)。」
(イ)「【0039】本発明によって得られる(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンは、例えば下記式(5)で示すことができる。
(AcR13-cSiO1/2)d+2(AR1SiO)m(R12SiO)n(R1SiO3/2)…(3) (当審注:左記(3)は(5)の誤記と解される。)
但し、A,R1,c,dは上記と同様の意味を示し、mは1以上、nは3以上の整数で、特に制限はないが、得られた(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンを紙やプラスチックフィルムなどの基材に塗工する際の塗工性の点でm+n=4~3000が望ましい。
【0040】このような本発明により製造することのできる(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものを例示することかできる。
【0041】
【化3】
[図:0001400427000001.jpg]
【0042】本発明の製造方法によって得られた(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンは、それ単独で又はこれとは重合度又は(メタ)アクリロキシ基含有率の異なる同種のオルガノポリシロキサンと混合して放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物とすることができる。この場合、該組成物にはその特徴を損なわない範囲で種々の添加剤を添加してもよく、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4-メチルアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイントリアルキルシリルエーテルなどの光反応開始剤、ジエチルアミン、2-ジエチルアミンエタノール、ピペリジンのような酸素硬化阻害抑制剤、へキサジオールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートのような反応性希釈剤、有機溶剤、レベリング剤、充填剤、帯電防止剤、消泡剤、顔料、オルガノポリシロキサン等を配合することができる。」
(ウ)「【0050】〔実施例1〕撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた4つ口フラスコに、下記式(6)で示される加水分解性シラン(29.4部)、下記式(7)で示されるオクタメチルシクロテトラシロキサン(100部)、メタンスルホン酸(0.13部)、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(0.07部)を仕込んだ。ここに水(3.7部)を室温で滴下し、そのまま3時間撹拌を続けた。この後、フラスコを35~40℃に加温し、80Torrの減圧下で反応混合物中のメタノール及び水を留去した。凝集器に2層に分離した液体がたまったが、これは上層がメタノール、下層がオクタメチルシクロテトラシロキサンであり、下層をフラスコ内に戻した。
【0051】
【化4】
[図:0001400427000002.jpg]
【0052】次に、下記式(8)で示されるオルガノシロキサンオリゴマー(2.2部)、メタンスルホン酸(1.3部)を加え、85~90℃に加熱し、8時間重合を行った。反応終了後、炭酸水素ナトリウム(1.7部)を加え、120~130℃で3時間加熱した。次いで、2Torrの減圧下、120~130℃で揮発分を留去した後、濾過して、試料1(93部)を得た。
【0053】
【化5】
[図:0001400427000003.jpg]
【0054】試料1のIRスペクトル、29SiNMR、1HNMRスペクトルの解析結果より、これは下記平均組成式(9)で示されるアクリル基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。このものの粘度は460cp、屈折率1.417であった。
【0055】
【化6】
[図:0001400427000004.jpg]
」
(エ)「【0060】〔実施例3〕実施例1と同様の式(6)の加水分解性シラン(29.4部)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(100部)、下記式(12)のオルガノシロキサンオリゴマー(2.4部)を用いた他は実施例1と同様にして試料3(112部)を得た。
【0061】
【化9】
[図:0001400427000005.jpg]
【0062】試料3のIRスペクトル、29SiNMR、1HNMRスペクトルの解析結果より、これは下記平均組成式(13)で示されるアクリル基含有オルガノポリシロキサンであることを確認した。このものの粘度は370cp、屈折率1.416であった。
【0063】
【化10】
[図:0001400427000006.jpg]
【0064】次に、実施例1~3で得られた試料1~3をオフセット転写機を用いてポリエチレンラミネート紙に塗布量が約1.0g/m2となるように塗布した後、電子線照射装置を用いて電子線を照射して硬化させ、このときの硬化性、剥離性を調べたところ、表1に示した通りの結果が得られた。
【0065】
【表1】
[図:0001400427000007.jpg]
【0066】また、実施例1~3で得られた試料1~3に光反応開始剤としてのベンゾイルイソブチルエーテルを5重量%添加し、これをポリエチレンラミネート紙にオフセット印刷機を用いて塗布量が約1.0g/m2となるように塗布した後、これに空気中において高圧水銀灯(80w/cm)を2本使用し、8cmの距離から紫外線を照射して硬化させ、この時の硬化性及びこの硬化皮膜の剥離特性を調べたところ、下記表2に示した通りの結果が得られた。
【0067】
【表2】
[図:0001400427000008.jpg]
」
甲1には、【0039】の式(5)で表される(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンの具体例として【0041】に例示されたものに着目すると、次の発明が記載されている。
「(Me3SiO1/2)3(A1MeSiO)5(Me2SiO)100(MeSiO3/2)
但し、A1:-(CH2)3OCOCH=CH2
Me:-CH3
で表される(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサン」(以下、「甲1発明1」という。)
また、甲1の【0063】には、実施例3で得られたアクリル基含有オルガノポリシロキサンとして、式(13)で表される次のものが記載されている。
「
但し、A1:CH2=CHC(O)O(CH2)3-
で表されるアクリル基含有オルガノポリシロキサン」(以下、「甲1発明2」という。)
イ 本件発明1について
(ア)甲1発明1に基づく理由
a 対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。
(a)甲1発明1の「(MeSiO3/2)」はポリオルガノシロキサンのT単位であり、これを本件発明1のT単位である「(R1SiO3/2)n」と対比すると、甲1発明1の「Me」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。
(b)甲1発明1の「(Me2SiO)100」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「(R12SiO2/2)o」と対比すると、甲1発明1の「Me」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲1発明1における「(Me2SiO)」の単位数は100であり、本件発明1の「下付き文字oは50~1000」に相当する。
(c)甲1発明1の「(A1MeSiO)5」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「((R2-R3)R1SiO2/2)p」と対比すると、甲1発明1の「Me」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。また、甲1発明1の「A1」は、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)と「-(CH2)3-」(プロピレン基)が結合したものであり、甲1発明1の「-OCOCH=CH2」及び「-(CH2)3-」が、それぞれ、本件発明1の「R2」である「ラジカル硬化性基を有する基」及び「R3」である「2~12個の炭素原子を有するアルキレン」に相当する。そして、甲1発明1における「(A1MeSiO)」の単位数は5であり、本件発明1の「下付き文字pは0~100」に相当する。
(d)甲1発明1の「(Me3SiO1/2)3」はポリオルガノシロキサンのM単位であり、本件発明1のM単位である「(R13SiO1/2)r」と対比すると、甲1発明1の「Me」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲1発明1における「(Me3SiO1/2) 」の単位数は3であり、本件発明1の「下付き文字rは0~42」に相当する。そして、甲1発明1におけるM単位の数は3であり、Q単位の数は0、T単位の数は1であるから、本件発明1の「下付き文字の和q+r=n+2m+2」を充足するといえる。
(e)そして、甲1発明1は、上述のとおり、上述のとおり、T単位を有して分枝状となり、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)を有して放射線硬化性となるから「ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン」であるといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「式:
(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R12SiO2/2)。((R2-R3)R1SiO2/2)p((R2-R3R12SiO1/2)q(R13SiO1/2)rのラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであって、
式中、
各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、
各R2は、独立して、ラジカル硬化性基を有する基であり、
各R3は、独立して、2~12個の炭素原子を有するアルキレンであり、
下付き文字oは50~1000であり、
下付き文字pは0~100であり、
下付き文字qは0~42であり、
ただし、下付き文字の和p+qは2を超えて、前記分枝状ポリオルガノシロキサンは、平均で、1分子当たり少なくとも2個のラジカル硬化性基を有し、かつ
下付き文字rは0~42であり、
ただし、下付き文字の和q+r=n+2m+2であり、
各ラジカル硬化性基は、独立して、アクリレート基、メタクリレート基、又はこれらの組合せを含有する一価の有機基である、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:(SiO4/2)mの「下付き文字m」が、本件発明1では「1」であるのに対し、甲1発明1では「0」であると共に、(R1SiO3/2)nの「下付き文字n」が、本件発明1では「0」であるのに対し、甲1発明1では「1」である点
b 検討
相違点1について検討する。
まず、相違点1はポリオルガノシロキサンの構造に関する相違点であり、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明1と同じではない。
そして、甲1には、(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法(請求項1~3)が記載されており、当該製造方法により得られた化合物として、上記アで述べたとおり、【0039】の式(5)で表される(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンや、その具体例である【0041】に例示されたもの(甲1発明1)などが記載されているが、Q単位を含み、T単位を含まない(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサンは記載も示唆もされていない。
また、引用文献Aには、硬化性シリコーン組成物に、充填剤、充填剤処理剤、湿気硬化開始剤又は架橋剤を添加することが記載されているにとどまり(【0036】、【0043】、【0077】、【0092】)、甲1発明1において、(SiO4/2)mを導入して下付き文字mを1とし、(R1SiO3/2)nの下付き文字nを0とすることを動機付ける事項は記載されていない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明1並びに甲1及び引用発明Aに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
c 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明でないし、甲1発明1並びに甲1及び引用文献Aに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)甲1発明2に基づく理由
a 対比
本件発明1と甲1発明2を対比する。
a 甲1発明2の「(CH3SiO3/2)1」はポリオルガノシロキサンのT単位であり、これを本件発明1のT単位である「(R1SiO3/2)n」と対比すると、甲1発明2の「-CH3」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。
b 甲1発明2の「((CH3)2SiO)180」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「(R12SiO2/2)o」と対比すると、甲1発明2の「-CH3」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲1発明2における「((CH3)2SiO)」の単位数は180であり、本件発明1の「下付き文字oは50~1000」に相当する。
c 甲1発明2の「(A1(CH3)SiO)18」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「((R2-R3)R1SiO2/2)p」と対比すると、甲1発明2の「(CH3)」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。
また、甲1発明2の「A1」は、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)と「-(CH2)3-」(プロピレン基)が結合したものであり、甲1発明2の「-OCOCH=CH2」及び「-(CH2)3-」が、それぞれ、本件発明1の「R2」である「ラジカル硬化性基を有する基」及び「R3」である「2~12個の炭素原子を有するアルキレン」に相当する。そして、甲1発明2における「(A1(CH3)SiO)」の単位数は18であり、本件発明1の「下付き文字pは0~100」に相当する。
d 甲1発明2の「((CH3)3SiO1/2)3」はポリオルガノシロキサンのM単位であり、本件発明1のM単位である「(R13SiO1/2)r」と対比すると、甲1発明2の「(CH3)」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲1発明2における「((CH3)3SiO1/2) 」の単位数は3であり、本件発明1の「下付き文字rは0~42」に相当する。そして、甲1発明2におけるM単位の数は3であり、Q単位の数は0、T単位の数は1であるから、本件発明1の「下付き文字の和q+r=n+2m+2」を充足するといえる。
e そして、甲1発明2は、上述のとおり、T単位を有して分枝状となり、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)を有して放射線硬化性となるから「ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン」であるといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明2とは、上記(ア)aで述べた本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点1と同様の一致点及び相違点を有する。そして、その相違点は、上記(ア)bで述べたのと同じ理由により、甲1及び引用文献Aに記載された事項に基づいて動機付けられるものではない。
したがって、本件発明1は、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明でないし、甲1発明2並びに甲1及び引用文献Aに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明2、3、5及び6について
本件発明2、3、5及び6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記イにおいて本件発明1について述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び引用文献Aに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ まとめ
したがって、本件発明1~3、5及び6は、特許法第29条第1項第3号に該当し又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえず、本件発明1~3、5及び6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものではない。
(2)取消理由2(新規性、進歩性)について
取消理由2及び申立理由2は、甲2を主引用文献とする新規性及び進歩性の理由であるから、併せて判断する。
ア 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
甲2には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】一般式(I)
【化1】
[図:0001400427000009.jpg]
[ここにR1は水素原子または炭素数1~4のアルキル基あるいはフェニル基、R2はR1と同じ基または一般式(II)
【化2】
[図:0001400427000010.jpg]
(ここにR3は水素原子またはメチル基、nは1~3)で示される基で、1分子中のけい素原子に結合している全有機基に対してその 0.5~3.0モル%は一般式(II)で示される基であり、cは0~3、a+b×c+d=500~1,000]で示されるオルガノポリシロキサン(A)と、一般式(III)
【化3】
[図:0001400427000011.jpg]
(R1は前記と同じ、R2はR1と同じ基または一般式(II)で示される基で、1分子中のけい素原子に結合している全有機基に対して5~20モル%は一般式(II)で示される基であり、gは0~3、e+f×g+h=50~200)であるオルガノポリシロキサン(B)とを主成分とし、その混合比率(重量比)がオルガノポリシロキサン(A)/オルガノポリシロキサン(B)=10/90~40/60であることを特徴とする放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物。」
(イ)「【0020】(合成例)撹拌装置、温度計、ジムロートを取り付けた1リットルの四ッ口フラスコに、式
【化13】
[図:0001400427000012.jpg]
で示される(イ)オルガノポリシロキサン31部と、式
【化14】
[図:0001400427000013.jpg]
で示される(ロ)環状ジメチルポリシロキサン592部、および式
【化15】
[図:0001400427000014.jpg]
で示される(ハ)環状ポリシロキサン 310部とをこのシロキサン全量に対して2
0ppmの式
【化16】
[図:0001400427000015.jpg]
で示される化合物と共に入れ、5分間室温で撹拌し、その後触媒としてのCH3SO3Hをシロキサン全量に対して 1.0重量%添加し、90~100℃の温度で6~10時間酸平衡反応を行なわせ、反応終了後NaHCO3をCH3SO3H に対して3倍量添加し、110℃で2~3時間中和反応を行ない、その後濾過、ストリップしたところ、平均組成式がオルガノポリシロキサンの各シロキサン単位を
M=化17
【化17】
[図:0001400427000016.jpg]
D=化18
【化18】
[図:0001400427000017.jpg]
DA=化19
【化19】
[図:0001400427000018.jpg]
T=CH3SiO3/2と略記したときにM3D80DA18Tで示されるシロキサン(1)を収率90%で得ることができた。
【0021】このものは粘度210cp、屈折率1.427、淡黄色透明な液体であり、アクリロキシ基含有率はIR、 1H-NMRにより8.7モル%であることが確認されたが、これにつては上記における(イ)、(ロ)、(ハ)成分の比率を変えたほかは同様に処理してつぎのオルガノポリシロキサン(2)~(7)を合成したが、これらの組成、重合度、アクリル基含有率、粘度、屈折率は表1に示したとおりのものであった。
【0022】
【表1】
[図:0001400427000019.jpg]
」
甲2の表1には、その請求項1に記載された「オルガノポリシロキサン(A)」の具体例として、M3DA18D80Tで示されるシロキサン(1)及びM3DA14D682Tで示されるシロキサン(5)が記載されている。
そうすると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。
「M3DA18D80T
(ここに、Mは化17であり、
【化17】
[図:0001400427000020.jpg]
Dは化18であり、【化18】
[図:0001400427000021.jpg]
DAは化19であり、【化19】
[図:0001400427000022.jpg]
TはCH3SiO3/2である。)
で表されるオルガノポリシロキサン(1)」(以下、「甲2発明1」という。)
「M3DA14D682T
(ここに、Mは化17であり、
【化17】
[図:0001400427000023.jpg]
Dは化18であり、【化18】
[図:0001400427000024.jpg]
DAは化19であり、【化19】
[図:0001400427000025.jpg]
TはCH3SiO3/2である。)
で表されるオルガノポリシロキサン(5)」(以下、「甲2発明2」という。)
「甲2発明1のオルガノポリシロキサン70部に甲2発明2のオルガノポリシロキサン30部を添加して混合した放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物」(以下、「甲2発明3」という。)
イ 本件発明1について
(ア)甲2発明1に基づく理由
a 対比
本件発明1と甲2発明1を対比する。
(a)甲2発明1の「T」で示される「(CH3SiO3/2)」はオルガノポリシロキサンのT単位であり、これを本件発明1のT単位である「(R1SiO3/2)n」と対比すると、甲2発明1の「-CH3」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。
(b)甲2発明1の「D」で示される「((CH3)2SiO2/2)80」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「(R12SiO2/2)o」と対比すると、甲2発明1の「-CH3」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲2発明1における「((CH3)2SiO)」の単位数は80であり、本件発明1の「下付き文字oは50~1000」に相当する。
(c)甲2発明1の「DA」で示される「((CH3)(C3H6OCOCH=CH2)SiO2/2)18」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「((R2-R3)R12SiO2/2)p」と対比すると、甲2発明1の「(CH3)」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。また、甲2発明1の「(C3H6OCOCH=CH2)」は、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)と「-(C3H6)-」(プロピレン基)が結合したものであり、甲2発明1の「-OCOCH=CH2」及び「-(C3H6)-」が、それぞれ、本件発明1の「R2」である「ラジカル硬化性基を有する基」及び「R3」である「2~12個の炭素原子を有するアルキレン」に相当する。そして、甲2発明1における「((CH3)(C3H6OCOCH=CH2)SiO2/2)」の単位数は18であり、本件発明1の「下付き文字pは0~100」に相当する。
(d)甲2発明1の「((CH3)3SiO1/2)3」はポリオルガノシロキサンのM単位であり、本件発明1のM単位である「(R13SiO1/2)r」と対比すると、甲2発明1の「(CH3)」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲2発明1における「((CH3)3SiO1/2) 」の単位数は3であり、本件発明1の「下付き文字rは0~42」に相当する。そして、甲2発明1におけるM単位の数は3であり、Q単位の数は0、T単位の数は1であるから、本件発明1の「下付き文字の和q+r=n+2m+2」を充足するといえる。
(e)そして、甲2発明1は、上述のとおり、T単位を有して分枝状となり、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)を有して放射線硬化性となるから「ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン」であるといえる。
そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、
「式:
(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R12SiO2/2)。((R2-R3)R1SiO2/2)p((R2-R3R12SiO1/2)q(R13SiO1/2)rのラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであって、
式中、
各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、
各R2は、独立して、ラジカル硬化性基を有する基であり、
各R3は、独立して、2~12個の炭素原子を有するアルキレンであり、
下付き文字oは50~1000であり、
下付き文字pは0~100であり、
下付き文字qは0~42であり、
ただし、下付き文字の和p+qは2を超えて、前記分枝状ポリオルガノシロキサンは、平均で、1分子当たり少なくとも2個のラジカル硬化性基を有し、かつ
下付き文字rは0~42であり、
ただし、下付き文字の和q+r=n+2m+2であり、
各ラジカル硬化性基は、独立して、アクリレート基、メタクリレート基、又はこれらの組合せを含有する一価の有機基である、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点2:(SiO4/2)mの「下付き文字m」が、本件発明1では「1」であるのに対し、甲2発明1では「0」であると共に、(R1SiO3/2)nの「下付き文字n」が、本件発明1では「0」であるのに対し、甲2発明1では「1」である点
b 検討
相違点2について検討する。
まず、相違点2はポリオルガノシロキサンの構造に関する相違点であり、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明1、すなわち甲2に記載された発明ではない。
そして、甲2には、上記アで述べたとおり、一般式(I)で示されるオルガノポリシロキサン(A)と一般式(III)で示されるオルガノポリシロキサン(B)とを主成分とし、その混合比率(重量比)がオルガノポリシロキサン(A)/オルガノポリシロキサン(B)=10/90~40/60である放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物は記載されるにとどまり、Q単位を含み、T単位を含まないオルガノポリシロキサンは記載されておらず、甲2発明1において、(SiO4/2)mを導入して下付き文字mを1とし、(R1SiO3/2)nの下付き文字nを0とすることを動機付ける事項は記載されていない。
そうすると、本件発明1は、甲2発明1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
c 小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)甲2発明2に基づく理由
a 対比
本件発明1と甲2発明2を対比する。
(a)甲2発明2の「T」で示される「(CH3SiO3/2)」はオルガノポリシロキサンのT単位であり、これを本件発明1のT単位である「(R1SiO3/2)n」と対比すると、甲2発明2の「-CH3」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。
(b)甲2発明2の「D」で示される「((CH3)2SiO2/2)682」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「(R12SiO2/2)o」と対比すると、甲2発明2の「-CH3」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲2発明2における「((CH3)2SiO)」の単位数は682であり、本件発明1の「下付き文字oは50~1000」に相当する。
(c)甲2発明2の「DA」で示される「((CH3)(C3H6OCOCH=CH2)SiO2/2)14」はポリオルガノシロキサンのD単位であり、これを本件発明1のD単位である「((R2-R3)R12SiO2/2)p」と対比すると、甲2発明2の「(CH3)」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当する。また、甲2発明2の「
(C3H6OCOCH=CH2)」は、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)と「-(C3H6)-」(プロピレン基)が結合したものであり、甲2発明2の「-OCOCH=CH2」及び「-(C3H6)-」が、それぞれ、本件発明1の「R2」である「ラジカル硬化性基を有する基」及び「R3」である「2~12個の炭素原子を有するアルキレン」に相当する。そして、甲2発明2における「((CH3)(C3H6OCOCH=CH2)SiO2/2)」の単位数は14であり、本件発明1の「下付き文字pは0~100」に相当する。
(d)甲2発明2の「((CH3)3SiO1/2)3」はポリオルガノシロキサンのM単位であり、本件発明1のM単位である「(R13SiO1/2)r」と対比すると、甲2発明2の「(CH3)」(メチル基)は、本件発明1の「R1」である「脂肪族不飽和を含まない一価の有機基」に相当し、甲2発明2における「((CH3)3SiO1/2) 」の単位数は3であり、本件発明1の「下付き文字rは0~42」に相当する。そして、甲2発明2におけるM単位の数は3であり、Q単位の数は0、T単位の数は1であるから、本件発明1の「下付き文字の和q+r=n+2m+2」を充足するといえる。
(e)そして、甲2発明2は、上述のとおり、T単位を有して分枝状となり、「-OCOCH=CH2」(アクリレート基)を有して放射線硬化性となるから「ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン」であるといえる。
そうすると、本件発明1と甲2発明2とは、上記(ア)aで述べた本件発明1と甲2発明1との一致点及び相違点2と同様の一致点及び相違点を有する。そして、その相違点は、上記(ア)bで述べたのと同じ理由により、甲2に記載された事項に基づいて動機付けられるものではない。
したがって、本件発明1は、甲2発明2、すなわち甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記イにおいて本件発明1について述べたのと同じ理由により、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ まとめ
したがって、本件発明1~6は、特許法第29条第1項第3号に該当し又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえず、本件発明1~6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものではない。
(3)取消理由3(サポート要件)について
取消理由3及び申立理由5は同旨のサポート要件であるから、併せて判断する。
ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。
イ 本件発明の課題
本件明細書には、「ポリマーの構造も硬化速度にも影響し得る。…ポリマー末端に近い反応性基の濃度が高いほど、硬化速度が大きくなる可能性があり、更に、反応性基の接近可能性も硬化速度に影響し得る。接近可能な反応性基を1分子当たりでより多く有することによって、より功利的な硬化及びより速い硬化速度を有するポリオルガノシロキサンを調製することが引き続き必要とされている。」(【0003】)、及び、「ポリマー構造、鎖長、及び架橋密度は、全て、最終的な硬化生成物の物理的特性に影響を与える。…物理的特性プロファイルを改善すること(例えば、引張強度の改善、及び破断伸び%の改善)…」(【0004】)と記載され、このような本願出願時の技術常識を背景にして、「本発明は、硬化特性における利点を、多種多様な用途に望まれる物理的及び機械的特性と共にもたらす、分枝状ポリオルガノシロキサン及びそれを含有する硬化性シリコーン組成物を提供する」(【0006】)と記載されている。
そうすると、本件発明が解決しようとする課題は、硬化特性における利点(効率的な硬化、速い硬化速度等)を、多種多様な用途に望まれる物理的及び機械的特性(引張強度、破断伸び%等)と共にもたらす、分枝状ポリオルガノシロキサン及びそれを含有する硬化性シリコーン組成物を提供することであると解される。
ウ 本件発明1について
本件発明1は、請求項1に記載された事項により特定されるとおり、請求項1に記載の式で表されるラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであり、上記式は、Q単位である「(SiO4/2)m」の「下付き文字mは1であり」、T単位である「(R1SiO3/2)n」の「下付き文字nは0であ」る。
そして、本件明細書には、実施例1~7として、7種のアクリレート官能性分枝状ポリオルガノシロキサン(ポリマー1~7(Pol1~Pol7))を調製したこと、及び、実施例1b~8bとして、上記ポリマーと希釈剤(希釈剤1~3(Dil1~Dil3))とを所定の量でブレンドした硬化性シリコーン組成物(実施例E1a~E8a)の硬化速度、及び当該組成物を硬化することによって得られる硬化生成物の強度等の基本特性について試験した結果が記載されており(【0169】~【0196】)、ポリマー1~7及びこれを使用した硬化性シリコーン組成物が、上記(2)で述べた課題を解決することを確認することができる。ここで、上記ポリマー1~7のうち、ポリマー1~4、6及び7は、上記Q単位を含み、下付き文字mが1であり、T単位を含まないものであり、本件発明1の具体例であると解される。
これらのことから、本件明細書には、本件発明1に係るラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンが上記課題を解決できることを具体的に確認できる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。
エ 本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記ウで述べたのと同じ理由により、上記課題を解決できることを当業者が認識できるといえる。
オ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~9は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するといえるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消すことはできない。
2 取消理由通知で採用しなかった申立理由について
(1)申立理由3(新規性、進歩性)について
ア 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
甲3には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】 オルガノポリシロキサンにおいて、末端および/または側面に式:【化1】
[図:0001400427000026.jpg]
および/または
【化2】
[図:0001400427000027.jpg]
および/または
【化3】
[図:0001400427000028.jpg]
で示される少なくとも1個の基並びに架橋成分を介して前記の基に結合した少なくとも1個のアクリレート基を有し、少なくとも1個のSiH-基を有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも2個のアクリレート基を有する化合物と、当量で、60~130℃の温度でロジウム触媒の存在下にヒドロシリル化することによって得られることを特徴とする、オルガノポリシロキサン。
【請求項2】 一般式:
【化4】
[図:0001400427000029.jpg]
〔式中、基は、R1が、同一かまたは異なり、炭素原子1~4個を有するアルキル基またはフェニル基であり、この場合、しかしながら、基R1の少なくとも90%がメチル基であり、R2は、基R1の意味を有するかまたは水素原子であり、この場合、しかしながら、少なくとも1個の基R2は、水素原子であり、係数は、aが、0~100の平均値を有し、かつbは、0~5の平均値を有する〕で示される水素ポリシロキサンを用いるヒドロシリル化を実施して得られたものである、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン。」
甲3には、請求項2の一般式【化4】で示されるオルガノポリシロキサンが記載されているから、以下の発明が記載されているといえる。
「一般式:
【化4】
[図:0001400427000030.jpg]
〔式中、基は、R1が、同一かまたは異なり、炭素原子1~4個を有するアルキル基またはフェニル基であり、この場合、しかしながら、基R1の少なくとも90%がメチル基であり、R2は、基R1の意味を有するかまたは水素原子であり、この場合、しかしながら、少なくとも1個の基R2は、水素原子であり、係数は、aが、0~100の平均値を有し、かつbは、0~5の平均値を有する〕で示される水素ポリシロキサン。」(以下、「甲3発明」という。)
イ 本件発明1について
本件発明1と甲3発明を対比すると、甲3発明は、下付き文字bの構造がT単位であり、bは0~5の平均値を有するが、Q単位を含まないものであるから、両者は少なくとも次の点で相違する。
相違点3:(SiO4/2)mの「下付き文字m」が、本件発明1では「1」であるのに対し、甲3発明では「0」であると共に、(R1SiO3/2)nの「下付き文字n」が、本件発明1では「0」であるのに対し、甲3発明では0~5の平均値を有する点
そして、相違点3について検討する。
まず、相違点3はポリオルガノシロキサンの構造に関する相違点であり、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲3発明、すなわち甲3に記載された発明ではない。
そして、甲3には、上記アで述べたとおり、その請求項2の一般式【化4】で示されるオルガノポリシロキサンが記載されるにとどまり、Q単位を含み、T単位を含まないオルガノポリシロキサンは記載されていないから、甲3発明において、(SiO4/2)mを導入して下付き文字mを1とし、(R1SiO3/2)nの下付き文字nを0とすることが動機付けられるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲3発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明2及び4~6について
本件発明2及び4~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記イにおいて本件発明1について述べたのと同じ理由により、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ まとめ
したがって、本件発明1、2及び4~6は、特許法第29条第1項第3号に該当し又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえず、本件発明1、2及び4~6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものではない。
(2)申立理由4(進歩性)について
本件特許異議申立書には、申立理由4に関して、「本件特許発明1、2、及び4~6は、少なくとも、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に為し得るものであり、特許法第29条第2項に違背して特許されたものであるから、取り消されるべきものである。」(申立書第49頁1~4行)と記載するのみである。
そして、上記1(1)及び(2)、並びに上記2(1)で述べたとおり、甲1~甲3には、Q単位を有し、T単位を有さないオルガノポリシロキサンは記載も示唆もされていないから、本件発明1及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明2及び4~6は、甲1、甲2及び甲3に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものでない。
したがって、本件発明1、2及び4~6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえず、本件発明1、2及び4~6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものではない。
第5 むすび
本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
請求項1~9に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700198