特許異議申立
2022-700069
パネル付椅子ユニット
- 審判番号
- 2022-700069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-230739
- 登録番号
- 6918915
- 請求日
- 2022年01月26日
- 審決日
- 2022年10月03日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社イトーキ
- 【権利者代理人】西 博幸
- 【権利者代理人】渡辺 隆一
- 【異議申立人】佐野 裕之
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 佐藤 美紗子
- 分類
- P1651.121-YAA(A47B) / P1651.851-YAA(A47B) / P1651.853-YAA(A47B) / P1651.841-YAA(A47B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6918915号発明「パネル付椅子ユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6918915号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第6918915号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6918915号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成29年1月30日に出願された特願2017-13959号(以下、「本件原出願」という。優先権主張日は平成28年1月29日(以下、「本件原出願の優先日」という。)。)の一部を、令和1年12月20日に新たな特許出願としたものであり、令和3年7月27日にその特許権の設定登録がされ、同年8月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年1月26日に、特許異議申立人 佐野 裕之(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし7に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和4年4月25日付け: 取消理由通知書
同年6月27日: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年8月26日: 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
令和4年6月27日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第6918915号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし7について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が形成されており、前記物品収納部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている」
とあるのを、
「前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が前記椅子部に向けて開口するように形成されており、前記物品収納部の内部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている」
と訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2及び請求項4ないし7も、同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「基部と、前記基部から立設した囲い板とを有しており」
とあるのを、
「基部と、前記基部から立設した囲い板とを有して、前記サイドパネルの囲い板と前記バックパネルの囲い板とは1枚板の状態に連続しており」
と訂正する。
(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項4ないし7も、同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
明細書の【0015】に、
「前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が形成されており、前記物品収納部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている」
とあるのを、
「前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が前記椅子部に向けて開口するように形成されており、前記物品収納部の内部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている」
と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の【0018】に、
「基部と、前記基部から立設した囲い板とを有しており」
とあるのを、
「基部と、前記基部から立設した囲い板とを有して、前記サイドパネルの囲い板と前記バックパネルの囲い板とは1枚板の状態に連続しており」
と訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、訂正の単位、及び独立特許要件について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明について、物品収納部が「前記椅子部に向けて開口するように」形成されていること、及び、電源用コンセント又はUSBポートを物品収納部の「内部に」設けていることを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
(ア)物品収納部を「前記椅子部に向けて開口するように」形成する点について
訂正事項1のうち、物品収納部を「前記椅子部に向けて開口するように」形成する点について、判断する。
願書に添付された明細書の段落【0126】には、「サイドパネル5に、椅子部3に向けて開口した物品収納部61が形成されている。」と記載されており、願書に添付された図面の【図1】(B)及び【図7】(A)にも、「物品収納部61」が「椅子部3」に向かった方向に開口している様子が示されている。
上記段落【0126】の記載、【図1】(B)及び【図7】(A)の図示から、「物品収納部61」を、「椅子部3に向けて開口するように」形成されたものとすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書等に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。
したがって、訂正事項1のうち、物品収納部を「前記椅子部に向けて開口するように」形成されたものとする点は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(イ)電源用コンセント又はUSBポートを物品収納部の「内部に」設ける点について
訂正事項1のうち、「電源用コンセント又はUSBポート」を、物品収納部の「内部に」設ける点について、判断する。
願書に添付された明細書の段落【0126】には、「サイドパネル5に、椅子部3に向けて開口した物品収納部61が形成されている。・・・。物品収納部61の前面には角形の穴62を空けており、この穴62に、コンセントやUSBポートなどを装着したパネルを取り付けることができる。」と記載されている。また、願書に添付された図面の【図7】(A)には、サイドパネル5に設けられ椅子部3に向けて開口した物品収納部61の内部の前面に、角形の穴62が空けられている様子が示されており、段落【0126】に記載されるように、「この穴62に、コンセントやUSBポートなどを装着したパネルを取り付け」れば、「コンセントやUSBポートなど」は、「物品収納部61の内部」の「穴62」の箇所に設けられることが、理解される。
そうすると、「電源用コンセント又はUSBポート」を、物品収納部の「内部に」設けることは、願書に添付した明細書等に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書等に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。
したがって、訂正事項1のうち、電源用コンセント又はUSBポートを物品収納部の「内部に」設ける点は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし7について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1において、請求項1、2及び4ないし7について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1、2及び4ないし7に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項3に係る発明について、囲い板に関し、「前記サイドパネルの囲い板と前記バックパネルの囲い板とは1枚板の状態に連続して」いることを、限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項3に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
願書に添付された明細書の段落【0048】には、「・・・、従って、囲い板11も、サイドパネル部分11aとバックパネル部分11bとを有しており、サイドパネル部分11aとバックパネル部分11bとは一連に繋がっている。」と記載されている。また、願書に添付された図面の【図1】(A)及び(B)より、囲い板11について、特段の切れ目や継ぎ目等がない1枚の板が折り曲げられてサイドパネル部分11aとバックパネル部分11bとに区分されている様子が、看取される。
そうすると、「囲い板」について、「サイドパネルの囲い板」と「バックパネルの囲い板」とが「1枚板の状態に連続」したものとすることは、願書に添付した明細書等に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書等に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし7について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項2において、請求項3ないし7について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項3ないし7に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、明細書の段落【0015】の記載を、訂正事項1により記載が訂正される訂正後の請求項1の記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項3は、明細書の記載について明瞭でない記載の釈明を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項3による段落【0015】の記載の訂正内容は、実質的に訂正事項1による請求項1の記載の訂正内容と同様であり、上記(1)ウにおいて訂正事項1について示したと同様に、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、明細書の段落【0018】の記載を、訂正事項2により記載が訂正される訂正後の請求項3の記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項4は、明細書の記載について不明瞭な記載の釈明を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項4による段落【0018】の記載の訂正内容は、実質的に訂正事項2による請求項3の記載の訂正内容と同様であり、上記(2)ウにおいて訂正事項2について示したと同様に、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(5)訂正の単位について
本件訂正前の請求項1ないし7について、請求項2及び4ないし7は請求項1を直接又は間接的に引用しており、請求項4ないし7は請求項3を直接又は間接的に引用しているから、本件訂正前の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1ないし4により、本件訂正前の請求項1ないし7に係る発明についてする本件訂正は、一群の請求項1ないし7に係る発明について、訂正をするものである。
(6)申立人の意見における主張について
申立人は、令和4年8月26日提出の意見書において、訂正事項1による請求項1の訂正に関し、コンセントやUSBポートの配置について「物品収納庫の内部に」とする記載は、願書に添付した明細書等の段落【0126】の記載及び図面の記載に比べて拡張されているから、訂正事項1は願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲を超えるものである旨を主張している。
また申立人は、同意見書において、訂正事項2による請求項3の訂正に関し、訂正後の請求項3の記載は願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲を超えるものである旨を主張している。
しかしながら、訂正事項1及び2が願書に添付した明細書等の記載の範囲内であるか否かについては、上記(1)ウ及び(2)ウに判断したとおりであり、申立人による上記主張について検討しても、上記(1)ウ及び(2)ウの判断を変更すべき事情は見いだせない。
したがって、申立人の意見書における主張について検討しても、本件訂正の適否について、上記(1)ないし(4)と異なる判断をすべき事情はない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ないし4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について、本件訂正を全て認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1ないし7に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、令和4年6月27日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、本件訂正発明が有する各構成について、当審において「1A」等の分説を付した。
「【請求項1】
1A 座及び背もたれを有する椅子部と、
1B 前記椅子部の左右両側に配置されたサイドパネルと、
1C 前記椅子部の後ろに配置されて前記左右のサイドパネルの後端に連続したバックパネルと、
を備え、
1D 前記椅子部は、前記背もたれを後傾姿勢にできるリクライニング方式であって、
1E 前記左右のサイドパネルのうち一方のサイドパネルに、前後長手の載置台が、前記背もたれの側方まで延びるように配置されて、前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が前記椅子部に向けて開口するように形成されており、前記物品収納部の内部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている、
1F パネル付椅子ユニット。
【請求項2】
2A 前記サイドパネルは、前記座よりも高くて前記背もたれの上端よりは低い高さである、
2B 請求項1に記載したパネル付椅子ユニット。
【請求項3】
3A 座及び背もたれを有する椅子部と、
3B 前記椅子部の左右両側に配置されたサイドパネルと、
3C 前記椅子部の後ろに配置されて前記左右のサイドパネルの後端に連続したバックパネルと、
を備え、
3D 前記椅子部は、前記背もたれを後傾姿勢にできるリクライニング方式であって、
3E 前記サイドパネル及びバックパネルは、基部と、前記基部から立設した囲い板とを有して、前記サイドパネルの囲い板と前記バックパネルの囲い板とは1枚板の状態に連続しており、
3F 前記基部の上端は前記座よりも高くて前記背もたれの上端よりは低い高さで、前記囲い板の上端は前記背もたれの上端よりも高くなっている、
3G パネル付椅子ユニット。
【請求項4】
4A 前記椅子部の手前でかつ前記左右のサイドパネルのうち一方のサイドパネルの側にテーブル板を配置している、
4B 請求項1~3のうちのいずれかに記載したパネル付椅子ユニット。
【請求項5】
5A 前記左右のサイドパネルのうち一方のサイドパネルの手前に、他方のサイドパネルよりも前方に延びるフロントパネルを設けている、
5B 請求項1~4のうちいずれかに記載したパネル付椅子ユニット。
【請求項6】
6A 前記フロントパネルに、前記椅子部と対向するように左右方向に延びる前幕板を設けている、
6B 請求項5に記載したパネル付椅子ユニット。
【請求項7】
7A 前記背もたれにヘッドレストを設けている、
7B 請求項1~6のうちのいずれかに記載したパネル付椅子ユニット。」
第4 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び取消理由通知に記載した取消理由の要旨
1 証拠一覧
本件特許異議申立における証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ「甲1」、「甲2」等という。
甲1: ”Brody”,日本スチールケース株式会社,[online],Wayback Machine,2016年1月13日格納,インターネットURL;https://web.archive.org/web/20160112204119/https://www.steelcase.com/asia-ja/products/lounge-seating/brody/
甲2: 特開2015-80622号公報
(平成27年4月27日公開)
甲3: 特開2008-74398号公報
(平成20年4月3日公開)
甲4: ”The Design Story Behind Brody WorkLounge-Steelcase”,Steelcase,[online],[video],YouTube,2015年4月19日,インターネットURL;https://www.youtube.com/watch?v=a080NYJH3LI
甲5: ”Can Office Furniture Keep You Focused?”,Wall Street Journal,[online],[video],YouTube,2015年4月21日,インターネットURL;https://www.youtube.com/watch?v=DAFIrrWhgaU
甲6: Brody WorkLounge seating,Steelcase,日本スチールケース株式会社,2015年,[online],インターネットURL;https://www.steelcase.com/content/uploads/sites/14/2015/12/Brody_brochure_JP.pdf
甲7: 特開2015-81418号公報
(平成27年4月27日公開)
2 特許異議申立理由の要旨
申立人が申立書において主張する特許申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲1により、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明、並びに、甲2、甲3及び甲7に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲4により、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明、並びに、甲2、甲3及び甲7に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲5により、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明、並びに、甲2、甲3及び甲7に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知に記載した取消理由の要旨
令和4年4月25日付け取消理由通知書に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件訂正前の本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲6により、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明、及び甲2に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 証拠について
1 取消理由通知に記載した取消理由において引用した証拠
取消理由通知に記載した取消理由において引用した、甲6及び甲2には、下記(1)及び(2)の記載がある。
(1)甲6
ア 記載事項
甲6には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
(ア)表紙の写真(以下、「写真6-1」という。)
「
[図:0001393091000001.jpg]
」
(イ)第6頁には、次の説明及び図示がある(以下、「説明6-1」という。)
「
[図:0001393091000002.jpg]
」
(ウ)第6頁右側~第7頁の写真(以下、「写真6-2」という。)
「
[図:0001393091000003.jpg]
」
(エ)第8頁~第9頁の写真の右部分(以下、「写真6-3」という。)
「
[図:0001393091000004.jpg]
」
(オ)第10頁~第11頁の写真の左部分(以下、「写真6-4」という。)
「
[図:0001393091000005.jpg]
」
(カ)第10頁~第11頁の写真の右部分(以下、「写真6-5」という。)
「
[図:0001393091000006.jpg]
」
(キ)第12頁~13頁の写真の右下部分(以下、「写真6-6」という。)
「
[図:0001393091000007.jpg]
」
(ク)第14頁「細部へのこだわり」上段中の写真及び説明(以下、「写真6-7」という。)
「
[図:0001393091000008.jpg]
」
(ケ)第14頁「細部へのこだわり」上段右の写真及び説明(以下、「写真6-8」という。)
「
[図:0001393091000009.jpg]
」
(コ)第14頁「細部へのこだわり」中段左の写真及び説明(以下、「写真6-9」という。)
「
[図:0001393091000010.jpg]
」
(サ)第14頁「細部へのこだわり」中段中の写真及び説明(以下、「写真6-10」という。)
「
[図:0001393091000011.jpg]
」
(シ)第14頁「細部へのこだわり」下段左の写真及び説明(以下、「写真6-11」という。)
「
[図:0001393091000012.jpg]
」
(ス)第14頁「細部へのこだわり」下段中の写真及び説明(以下、「写真6-12」という。)
「
[図:0001393091000013.jpg]
」
(セ)第15頁上「製品タイプ」の図示(以下、「図示6」という。)
「
[図:0001393091000014.jpg]
」
(ソ)第15頁下左下「仕上げ・張り地」の箇所には、次の説明(以下、「説明6-2」という。)がある。
「
[図:0001393091000015.jpg]
」
(タ)最終頁下から3行中程
「○C2015」(当審注;「○C」は○の中にCを示す。)
イ 甲6が公知となった時期について
上記ア(ソ)の説明6-2中に「本カタログ」と記載されていること、及び、上記ア(タ)に示した「○C2015」の記載より、甲6はカタログであり、2015年中に作成され、販売または販売の申し出のためにその内容が公衆に示されたと解される。
また、当審で調査したところ、甲6のホームページの更新日は、2015年12月28日と表示された。
したがって、甲6の内容は、本件原出願の優先日より前の、2015年中に、電気通信回線を通じて、公衆に利用可能となったと認められる。
ウ 上記アの写真、図示及び説明から看取される事項
(ア)上記ア(ク)ないし(ス)の写真6-7ないし写真6-12の説明文より、甲6が示す製品を構成する部材として、「電源」、「パーソナルワークサーフェス」、「プライバシースクリーン」、「サイドサーフェス」、「パーソナル収納」、「フットレスト」という部材があることが、理解される。また、上記ア(ソ)の説明6-2より、甲6が示す製品を構成する部材として、「シート」、「バック」、「ローワーサラウンド(下部囲い)」という部材もあることが、理解される。
(イ)上記ア(セ)の図示6より、甲6が示す製品タイプとして、「Brodyワークラウンジ」、「Brodyプライバシーラウンジ」、「Brodyプライバシーラウンジ(エクステンション付き)」というタイプがあることが、理解される。また、同図示6より、上記3つの製品タイプは、いずれも、椅子に部材を付加してなる椅子ユニットであることが、看取される。
(ウ)上記ア(セ)の図示6より、製品タイプ「Brodyワークラウンジ」は、椅子としてシート及びバックを有し、さらにローワーサラウンド(下部囲い)、サイドサーフェス、パーソナル収納、及びパーソナルワークサーフェスを有する、椅子ユニットであることが、看取される。
また、製品タイプ「Brodyプライバシーラウンジ」は、「Brodyワークラウンジ」に、プライバシースクリーンを付加した、椅子ユニットであることが、看取される。
そして、製品タイプ「Brodyプライバシーラウンジ(エクステンション付き)」は、「Brodyプライバシーラウンジ」のローワーサラウンド(下部囲い)の右手前に、前方に延びるエクステンション部分を付加した、椅子ユニットであることが、看取される。
(エ)図示6及び説明6-2をふまえて、ローワーサラウンド(下部囲い)に着目すると、写真6-1ないし写真6-6より、ローワーサラウンド(下部囲い)は、シート及びバックの左右両側に配置されて前後に延びる略平板状の部分と、シート及びバックの後ろに配置されて、シート及びバックの左右両側に配置された略平板状の部分と連続する部分とを有することが、看取される。
(オ)説明6-1、及び写真6-12中の説明に、「リクライニング」と記載されていることから、甲6に示されるシート及びバックを有する椅子は、リクライニングの機能を有することが、理解される。
(カ)写真6-10における説明をふまえて、サイドサーフェスに着目すると、写真6-1ないし写真6-7及び写真6-10より、左右どちらにも設置可能なサイドサーフェスは、ローワーサラウンド(下部囲い)の前後に延びる略平板状の部分に配置され、前後方向が長手方向であり、ローワーサラウンド(下部囲い)の前端からシート及びバックの側方に至るまで延びていることが、看取される。
(キ)写真6-11における説明をふまえて、パーソナル収納に着目すると、写真6-1ないし写真6-3、写真6-5、及び写真6-11より、私物や資料などを手が届くところに置けるパーソナル収納は、サイドサーフェスの下方に設けられ、前方の略全面及びシートに向かう側の略上半分が開口していることが、看取される。
(ク)写真6-7における説明をふまえて、電源に着目すると、写真6-1、写真6-2、写真6-7、及び写真6-11より、電源としてコンセントが、パーソナル収納とシートとの間で、シートに向かう側のパーソナル収納の開口部より下に、前方向きに設けられることが、看取される。
(ケ)ローワーサラウンド(下部囲い)及びシート、バックの高さの関係に着目すると、写真6-1ないし写真6-6及び図示6より、ローワーサラウンド(下部囲い)の上端の高さは、シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方のいずれの箇所においても、椅子のシートより高く、椅子のバックの上端より低い高さであることが、看取される。
(コ)写真6-9における説明をふまえて、プライバシースクリーンに着目すると、写真6-1ないし写真6-3、写真6-6、写真6-9及び図示6より、プライバシースクリーンは、シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方の、ローワーサラウンド(下部囲い)の上端から立設され、シート及びバックの後方で分割された2枚のスクリーンによりシート及びバックの左右両側及び後方を囲うようになっており、プライバシースクリーンの上端は、バックの上端より高くなっていることが、看取される。
(サ)写真6-8における説明をふまえて、パーソナルワークサーフェスに着目すると、写真6-1ないし写真6-6及び図示6より、パーソナルワークサーフェスは、シート及びバックの前側で、ローワーサラウンド(下部囲い)の前後に延びる略平板状の部分のうちサイドサーフェスが設けられた側に配置されていることが、看取される。
(シ)図示6において、製品タイプ「Brodyプライバシーラウンジ」に対して、製品タイプ「Brodyプライバシーラウンジ(エクステンション付き)」で付加される、エクステンション部分に着目すると、エクステンション部分は、ローワーサラウンド(下部囲い)の右手前から、ローワーサラウンド(下部囲い)の左前端よりも前方に延びる略平板状の部分、及び、シート及びバックと対向し左右方向に延びる略板状の部分を有することが、看取される。
(ス)椅子のバックに着目すると、写真6-1、写真6-3ないし写真6-6、説明6-1及び図示6より、椅子のバックは、ヘッドレスト部を有することが、看取される。
エ 甲6発明
製品タイプ「Brodyプライバシーラウンジ(エクステンション付き)」に着目して整理すると、上記ア及びウより、甲6には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。
「椅子としてシート及びバックを有し、
さらにローワーサラウンド(下部囲い)、サイドサーフェス、パーソナル収納、及びパーソナルワークサーフェスを有し、プライバシースクリーンを付加し、
ローワーサラウンド(下部囲い)の右手前に、前方に延びるエクステンション部分を付加した、椅子ユニットであって、
ローワーサラウンド(下部囲い)は、シート及びバックの左右両側に配置されて前後に延びる略平板状の部分と、シート及びバックの後ろに配置されて、シート及びバックの左右両側に配置された略平板状の部分と連続する部分とを有し、
シート及びバックを有する椅子は、リクライニングの機能を有し、
左右どちらにも設置可能なサイドサーフェスは、ローワーサラウンド(下部囲い)の前後に延びる略平板状の部分に配置され、前後方向が長手方向であり、ローワーサラウンド(下部囲い)の前端からシート及びバックの側方に至るまで延びており、
私物や資料などを手が届くところに置けるパーソナル収納は、サイドサーフェスの下方に設けられ、前方の略全面及びシートに向かう側の略上半分が開口しており、
電源としてコンセントが、パーソナル収納とシートとの間で、シートに向かう側のパーソナル収納の開口部より下に、前方向きに設けられ、
ローワーサラウンド(下部囲い)の上端の高さは、シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方のいずれの箇所においても、椅子のシートより高く、椅子のバックの上端より低い高さであり、
プライバシースクリーンは、シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方の、ローワーサラウンド(下部囲い)の上端から立設され、シート及びバックの後方で分割された2枚のスクリーンによりシート及びバックの左右両側及び後方を囲うようになっており、プライバシースクリーンの上端は、バックの上端より高くなっており、
パーソナルワークサーフェスは、シート及びバックの前側で、ローワーサラウンド(下部囲い)の前後に延びる略平板状の部分のうちサイドサーフェスが設けられた側に配置されており、
エクステンション部分は、ローワーサラウンド(下部囲い)の右手前から、ローワーサラウンド(下部囲い)の左前端よりも前方に延びる略平板状の部分、及び、シート及びバックと対向し左右方向に延びる略板状の部分を有し、
椅子のバックは、ヘッドレスト部を有する、
椅子に部材を付加してなる椅子ユニット。」
(2)甲2
甲2には、次の図示がある。
【図3】
「
[図:0001393091000016.jpg]
」
2 その他の証拠
(1)甲1、甲4及び甲5
甲1は、甲6に係る製品と同じ製品を紹介するインターネットホームページであり、写真6-2、写真6-4及び6-5、写真6-6と同じ写真等が掲載されている。
甲4及び甲5は、甲1及び甲6に係る製品と同じ製品を紹介するインターネット上の動画である。
(2)甲3
甲3には、次の記載及び図示がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、シートユニット(seating unit)に関する。特に、航空機の客室用のシートユニットに関する。」
イ 【図13】
「
[図:0001393091000017.jpg]
」
(3)甲7
甲7には、次の図示がある。
ア 【図3】
「
[図:0001393091000018.jpg]
」
イ 【図4】
「
[図:0001393091000019.jpg]
」
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)本件訂正発明1について
ア 甲6発明との対比
本件訂正発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明における「シート」及び「バック」は、それぞれ本件訂正発明1における「座」及び「背もたれ」に相当する。
甲6発明において、「シート及びバック」からなる「椅子」は、本件訂正発明1において、「座及び背もたれを有する椅子部」に相当する。
甲6発明において、「ローワーサラウンド(下部囲い)」が有する、「シート及びバックの左右両側に配置されて前後に延びる略平板状の部分」は、本件訂正発明1において、「前記椅子部の左右両側に配置されたサイドパネル」に相当する。
甲6発明において、「ローワーサラウンド(下部囲い)」が有する、「シート及びバックの後ろに配置されて、シート及びバックの左右両側に配置された略平板状の部分と連続する部分」は、本件訂正発明1において、「前記椅子部の後ろに配置されて前記左右のサイドパネルの後端に連続したバックパネル」に相当する。
甲6発明において、「シート及びバックを有する椅子」が「リクライニングの機能」を有する構成と、本件訂正発明1において、「前記椅子部は、前記背もたれを後傾姿勢にできるリクライニング方式」である構成とは、「前記椅子部は、リクライニング方式」である構成という点で、共通する。
甲6発明において、「左右どちらにも設置可能なサイドサーフェスは、ローワーサラウンド(下部囲い)の前後に延びる略平板状の部分に配置され、前後方向が長手方向であり、ローワーサラウンド(下部囲い)の前端からシート及びバックの側方に至るまで延びて」いる構成は、本件訂正発明1において、「前記左右のサイドパネルのうち一方のサイドパネルに、前後長手の載置台が、前記背もたれの側方まで延びるように配置されて」いる構成に、相当する。
甲6発明において、「私物や資料などを手が届くところに置けるパーソナル収納は、サイドサーフェスの下方に設けられ、前方の略全面及びシートに向かう側の略上半分が開口しており、電源としてコンセントが、パーソナル収納とシートとの間で、シートに向かう側のパーソナル収納の開口部より下に、前方向きに設けられ」ている構成と、本件訂正発明1において、「前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が前記椅子部に向けて開口するように形成されており、前記物品収納部の内部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている」構成とは、「前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が形成されており、前記物品収納部の近傍に、電源用コンセントを設けている」構成という点で、共通する。
甲6発明において、「椅子に部材を付加してなる椅子ユニット」が、「「略平板状の部分」を有する「ローワーサラウンド(下部囲い)」を含む構成は、本件訂正発明1において、「パネル付椅子ユニット」に相当する。
整理すると、本件訂正発明1と甲6発明とは、次の点で一致する。
「座及び背もたれを有する椅子部と、
前記椅子部の左右両側に配置されたサイドパネルと、
前記椅子部の後ろに配置されて前記左右のサイドパネルの後端に連続したバックパネルと、
を備え、
前記椅子部は、リクライニング方式であって、
前記左右のサイドパネルのうち一方のサイドパネルに、前後長手の載置台が、前記背もたれの側方まで延びるように配置されて、前記載置台の下方に、荷物を格納できる物品収納部が形成されており、前記物品収納部の近傍に、電源用コンセントを設けている、
パネル付椅子ユニット。」
そして、本件訂正発明1と甲6発明とは、次の点で相違する。
<相違点1>
リクライニングに関し、
本件訂正発明1においては、「前記背もたれを後傾姿勢にできる」と特定されているのに対し、
甲6発明においては、椅子の「バック」が「後傾姿勢にできる」とは特定されていない点。
<相違点2>
物品収納部及び電源用コンセント等に関し、
本件訂正発明1においては、「物品収納部が前記椅子部に向けて開口するように形成されており、前記物品収納部の内部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている」のに対し、
甲6発明においては、「パーソナル収納」は、「前方の略全面及びシートに向かう側の略上半分が開口」しており、「電源としてコンセントが、パーソナル収納とシートとの間で、シートに向かう側のパーソナル収納の開口部より下に、前方向きに設けられ」ている点。
イ 相違点についての判断
(ア)相違点2について
事案に鑑み、上記相違点2から判断する。
甲2には、上記第5の1(2)に摘記した図示があり、椅子のリクライニング機構に関する開示があるが、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成は記載されていない。
甲1、甲4及び甲5は、上記第5の2(1)に説明したとおり、甲6に係る製品と同様の製品に関する、インターネットに掲載された写真や動画であるが、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。
甲3及び甲7には、上記第5の2(2)及び(3)に摘記した記載や図示があるが、いずれも上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。
そして、甲6発明において、「パーソナル収納」は、「前方の略全面及びシートに向かう側の略上半分が開口」しており、「電源としてコンセントが、パーソナル収納とシートとの間で、シートに向かう側のパーソナル収納の開口部より下に、前方向きに設けられ」ている構成は、「パーソナル収納」の構造と「コンセント」の設置位置とが相互に関連する構成であるところ、甲1ないし甲5及び甲7の記載を考慮しても、甲6発明における「パーソナル収納」及び「コンセント」の構成を変更して、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることが、記載あるいは示唆されていたとは言えない。
したがって、甲6発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲5及び甲7の記載を考慮したとしても、当業者が容易に想到できたものではない。
(イ)容易想到性の小括
上記(ア)のとおり、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成は、当業者にとって容易に想到できたものではないから、その余の相違点1について判断するまでもなく、本件訂正発明1は、甲6発明、及び甲1ないし甲5並びに甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1が有する構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
上記(1)のとおり、本件訂正発明2が有する本件訂正発明1の構成は、甲6発明、及び甲1ないし甲5並びに甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、本件訂正発明2における付加的構成について判断するまでもなく、本件訂正発明2は、甲6発明、及び甲1ないし甲5並びに甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
(3)本件訂正発明3について
ア 甲6発明との対比
本件訂正発明3が有する構成のうち、構成3Aないし3D及び3Gは、本件訂正発明1が有する構成1Aないし1D及び1Fと同じであるから、本件訂正発明3が有する構成3Aないし3D及び3Gと、甲6発明との対比は、上記(1)アに示した本件訂正発明1についての対比と同様である。
本件訂正発明3が有する構成3E及び3Fについて、甲6発明と対比する。
甲6発明において、「プライバシースクリーン」が「シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方の、ローワーサラウンド(下部囲い)の上端から立設され」るところ、「ローワーサラウンド(下部囲い)」は、「ローワーサラウンド(下部囲い)」及び「プライバシースクリーン」からなり「シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方」に配置される部材の下部の部分であるから、本件訂正発明3における構成3Eのうち、「前記サイドパネル及びバックパネル」の「基部」に相当する。また、甲6発明において、「シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方の、ローワーサラウンド(下部囲い)の上端から立設され」る「プライバシースクリーン」は、本件訂正発明3における構成3Eのうち、「前記基部から立設した囲い板」に相当する。
甲6発明において、「ローワーサラウンド(下部囲い)の上端の高さは、シート及びバックの左右両側、及びシート及びバックの後方のいずれの箇所においても、椅子のシートより高く、椅子のバックの上端より低い高さ」である構成は、本件訂正発明3における構成3Fのうち、「前記基部の上端は前記座よりも高くて前記背もたれの上端よりは低い高さ」である構成に相当する。また、甲6発明において、「プライバシースクリーンの上端は、バックの上端より高くなって」いる構成は、本件訂正発明3における構成3Fのうち、「前記囲い板の上端は前記背もたれの上端よりも高くなっている」構成に相当する。
整理すると、本件訂正発明3と甲6発明とは、次の点で一致する。
「座及び背もたれを有する椅子部と、
前記椅子部の左右両側に配置されたサイドパネルと、
前記椅子部の後ろに配置されて前記左右のサイドパネルの後端に連続したバックパネルと、
を備え、
前記椅子部は、リクライニング方式であって、
前記サイドパネル及びバックパネルは、基部と、前記基部から立設した囲い板とを有し、
前記基部の上端は前記座よりも高くて前記背もたれの上端よりは低い高さで、前記囲い板の上端は前記背もたれの上端よりも高くなっている、
パネル付椅子ユニット。」
そして、本件訂正発明3と甲6発明とは、次の点で相違する。
<相違点3>
リクライニングに関し、
本件訂正発明3においては、「前記背もたれを後傾姿勢にできる」と特定されているのに対し、
甲6発明においては、椅子の「バック」が「後傾姿勢にできる」とは特定されていない点。
<相違点4>
囲い板に関し、
本件訂正発明3においては、「前記サイドパネルの囲い板と前記バックパネルの囲い板とは1枚板の状態に連続して」いると特定されているのに対し、
甲6発明においては、「プライバシースクリーン」は、「シート及びバックの後方で分割された2枚のスクリーンによりシート及びバックの左右両側及び後方を囲うようになって」いる点。
イ 相違点についての判断
(ア)相違点4について
事案に鑑み、上記相違点4から判断する。
甲2には、上記第5の1(2)に摘記した図示があり、椅子のリクライニング機構に関する開示があるが、上記相違点4に係る本件訂正発明3の構成は記載されていない。
甲1、甲4及び甲5は、上記第5の2(1)に説明したとおり、甲6に係る製品と同様の製品に関する、インターネットに掲載された写真や動画であるが、上記相違点4に係る本件訂正発明3の構成を示すものではない。
甲3には、上記第5の2(2)に摘記した記載及び図示があるが、複雑な構造を有する航空機用のシートに関するものであって、甲6発明とは前提となる構造が異なり、甲6発明における「プライバシースクリーン」の構成を変更することを記載あるいは示唆するものではない。
甲7には、上記第5の2(3)に摘記した図示があるが、甲6発明とは前提となる構造が異なり、甲6発明における「プライバシースクリーン」の構成を変更することを記載あるいは示唆するものではない。
したがって、甲6発明において、上記相違点4に係る本件訂正発明3の構成に至ることは、甲1ないし甲5及び甲7の記載を考慮したとしても、当業者が容易に想到できたものではない。
(イ)容易想到性の小括
上記(ア)のとおり、上記相違点4に係る本件訂正発明3の構成は、当業者にとって容易に想到できたものではないから、その余の相違点3について判断するまでもなく、本件訂正発明3は、甲6発明、及び甲1ないし甲5並びに甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
(4)本件訂正発明4ないし7について
本件訂正発明4ないし7は、本件訂正発明1が有する全ての構成、又は本件訂正発明3が有する全ての構成を有し、さらに構成を付加したものである。
上記(1)及び(3)のとおり、本件訂正発明4ないし7が有する、本件訂正発明1または本件訂正発明3の構成は、いずれも、甲6発明、及び甲1ないし甲5並びに甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、本件訂正発明4ないし7における付加的構成について判断するまでもなく、本件訂正発明4ないし7は、甲6発明、及び甲1ないし甲5並びに甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、甲1、甲4または甲5を主たる証拠とした、進歩性の欠如である。
上記第2のとおり、本件訂正は全て認められたので、以下では、本件訂正発明1ないし7に係る特許について、甲1、甲4または甲5を主たる証拠とした、進歩性の欠如を理由として、取り消されるべきか否かを判断する。
甲1、甲4及び甲5は、上記第5の2(1)に説明したとおり、甲6に係る製品と同様の製品に関する、インターネットに掲載された写真や動画であるところ、上記1(1)アに認定した本件訂正発明1と甲6発明との相違点2に係る構成、及び、上記1(3)アに認定した本件訂正発明3と甲6発明との相違点4に係る構成に関し、甲6と異なる事項を開示するものではない。
そのため、甲1、甲4または甲5のいずれを主たる証拠としても、本件訂正発明1ないし7と、甲1、甲4または甲5に記載された発明とは、少なくとも上記1(1)アに認定した本件訂正発明1と甲6発明との相違点2において、または、上記1(3)アに認定した本件訂正発明3と甲6発明との相違点4において、相違する。
そして、上記1(1)イ及び1(3)イにおいて判断したとおり、相違点2に係る本件訂正発明1の構成、及び、相違点4に係る本件訂正発明3の構成は、甲2、甲3、甲6及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、本件訂正発明1ないし7は、甲1、甲4または甲5を主たる証拠として、甲2、甲3、甲6及び甲7に記載される事項を考慮しても、申立書に記載された進歩性欠如の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。
3 申立人の意見書における主張について
申立人は、令和4年8月26日提出の意見書において、本件訂正発明1と甲6発明との相違点2に係る構成のうち、「物品収納部が前記椅子部に向けて開口するように」形成されている構成は、甲6に開示されているから、本件訂正発明1は進歩性を有さない旨を主張している。
また申立人は、同意見書において、本件訂正発明3と甲6発明との相違点4に係る構成は、甲3に図示されるとおり周知技術であるから、本件訂正発明3は進歩性を有さない旨を主張している。
しかしながら、上記1(1)に対比・判断したとおり、本件訂正発明1と甲6発明との相違点2に係る本件訂正発明1の構成は、「物品構造部」の構造とともに、「前記物品収納部の内部に、電源用コンセント又はUSBポートを設けている」ことを特定した構成であり、甲6発明における「パーソナル収納」及び「コンセント」の構成を変更して、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、甲1ないし甲5及び甲7の記載を考慮しても、開示あるいは示唆されていないから、本件訂正発明1の進歩性に関する上記申立人の主張は採用することができない。
また、上記1(3)イに判断したとおり、甲3の図示は、複雑な構造を有する航空機用のシートに関するものであって、甲6発明とは前提となる構造が異なり、甲6発明における「プライバシースクリーン」の構成を変更することを記載あるいは示唆するものではないから、本件訂正発明3の進歩性に関する上記申立人の主張は採用することができない。
したがって、申立人による意見書における主張について考慮しても、本件訂正発明1ないし7の進歩性について、上記1及び2と異なる判断をすべき事情は見いだせない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件訂正発明1ないし7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正発明1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700069