特許異議申立
2024-701142
蒸気加熱式温冷配膳車およびその運転方法
- 審判番号
- 2024-701142
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-027051
- 登録番号
- 7490268
- 請求日
- 2024年11月26日
- 審決日
- 2026年01月07日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社井上製作所
- 【権利者代理人】山本 直樹
- 【権利者代理人】小林 義孝
- 【権利者代理人】野口 晴加
- 【権利者代理人】河野 修
- 【異議申立人】栃岡 歩実
- 審判長/審判官
- 審判長 渋谷 知子
- 審判官 三橋 健二
- 審判官 ▲高▼橋 祐介
- 分類
- P1651.121-YAA(A47B) / P1651.851-YAA(A47B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7490268号発明「蒸気加熱式温冷配膳車およびその運転方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7490268号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7490268号の請求項1-5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7490268号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和5年2月24日に特許出願されたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 6年 5月17日 :特許権の設定登録
令和 6年 5月27日 :特許掲載公報発行
令和 6年11月26日 :特許異議申立人栃岡 歩実(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1~5に対する特許異議の申立て
令和 7年 3月26日付け:取消理由通知書
令和 7年 5月26日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 7年 6月18日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 7年 7月17日 :申立人による意見書の提出
令和 7年 9月 3日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 7年11月 4日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 7年11月11日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 7年12月 9日 :申立人による意見書の提出
なお、令和7年11月4日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、先にした同年5月26日付け訂正請求は取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
令和7年11月4日付けの訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める、というものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなる。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において
「【請求項1】
カート収容室を有する配膳車本体と、該配膳車本体の前記カート収容室に収容されるカートとで構成され、該カートは御飯が入った飯茶碗や主菜、副菜等が入った食器が載置されたトレイを多段に収容するトレイ収容室を備え、該トレイ収容室内の上下方向に列設された仕切り壁部材を挟んで、その一側が冷却と蒸気加熱を行う温冷室、同他側が冷却のみ行う冷室となされており、前記配膳車本体には前記カートの冷室および温冷室内に冷気を供給する冷却装置と、前記カートの温冷室を加熱するヒータと、前記温冷室に蒸気を供給する蒸気発生装置が設けられた蒸気加熱式温冷配膳車であって、
当該配膳車の運転設定に係る入力および運転に係る表示を行う運転表示入力部と、
前記ヒータを制御するヒータ制御部と、前記蒸気発生装置を制御する蒸気制御部と、前記冷却装置を制御する冷却制御部と、
当該配膳車内の温度を検知する温度検知手段と、
当該配膳車の運転時間を管理する時間管理部と、
当該配膳車の運転情報を記憶する運転情報記憶部と、
当該配膳車の運転を実行する運転演算処理部と、
を有し、
前記運転情報記憶部に記憶されている運転情報が少なくとも、前記ヒータによる温冷室の加熱温度および加熱時間と前記蒸気発生装置による温冷室の蒸気供給開始温度および蒸気供給出力に関する情報を含み、これらの情報が前記運転表示入力部を介して前記運転情報記憶部に入力記憶され、該入力記憶された運転情報に基づいて前記運転演算処理部を介して前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ、且つ前記運転情報記憶部に記憶されている運転情報が、温冷室を冷却する保冷運転モードと温冷室を加熱する加熱運転モードと温冷室を保温する保温運転モードを含み、前記保冷運転モードでは温冷室の冷却を行い、前記加熱運転モードでは温冷室を加熱しつつ、その途中から蒸気を供給して所定時間の仕上げを行い、前記保温運転モードでは温冷室の保温のみを行うことを特徴とする、蒸気加熱式温冷配膳車。」
とあるのを、
「カート収容室を有する配膳車本体と、該配膳車本体の前記カート収容室に収容されるカートとで構成され、該カートは御飯が入った飯茶碗や主菜、副菜等が入った食器が載置されたトレイを多段に収容するトレイ収容室を備え、該トレイ収容室内の上下方向に列設された仕切り壁部材を挟んで、その一側が冷却と蒸気加熱を行う温冷室、同他側が冷却のみ行う冷室となされており、前記配膳車本体には前記カートの冷室および温冷室内に冷気を供給する冷却装置と、前記カートの温冷室を加熱するヒータと、前記温冷室に蒸気を供給する蒸気発生装置が設けられた蒸気加熱式温冷配膳車であって、
当該配膳車の運転設定に係る入力および運転に係る表示を行う運転表示入力部と、
前記ヒータを制御するヒータ制御部と、前記蒸気発生装置を制御する蒸気制御部と、前記冷却装置を制御する冷却制御部と、
当該配膳車内の温度を検知する温度検知手段と、
当該配膳車の運転時間を管理する時間管理部と、
当該配膳車の運転情報を記憶する運転情報記憶部と、
当該配膳車の運転を実行する運転演算処理部と、
を有し、
前記運転情報記憶部に記憶されている運転情報が少なくとも、前記ヒータによる温冷室の加熱温度および加熱時間と前記蒸気発生装置による温冷室の蒸気供給開始温度および蒸気供給出力に関する情報を含み、これらの情報が前記運転表示入力部を介して前記運転情報記憶部に入力記憶され、該入力記憶された運転情報に基づいて前記運転演算処理部を介して前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ、且つ前記運転情報記憶部に記憶されている運転情報が、温冷室を冷却する保冷運転モードと温冷室を加熱する加熱運転モードと温冷室を保温する保温運転モードを含み、前記保冷運転モードでは温冷室の冷却を行い、前記加熱運転モードでは温冷室を加熱しつつ、その途中から蒸気を供給して所定時間の仕上げを行い、前記保温運転モードでは温冷室の保温のみを行い、前記加熱運転モードの設定を行う場合、前記運転表示入力部において、前記加熱温度、前記加熱時間、仕上温度、仕上時間、前記蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力、及び保温温度の設定を行うことを特徴とする、蒸気加熱式温冷配膳車。」
に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~5において、請求項2~5はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項ごとにされたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の在否
(1) 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において特定している「前記加熱運転モード」について、訂正後の請求項1では「前記加熱運転モードの設定を行う場合、前記運転表示入力部において、前記加熱温度、前記加熱時間、仕上温度、仕上時間、前記蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力、及び保温温度の設定を行う」ことを具体的に特定し限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、本件訂正後の請求項2~5は、訂正後の請求項1に記載された「前記加熱運転モードの設定を行う場合、前記運転表示入力部において、前記加熱温度、前記加熱時間、仕上温度、仕上時間、前記蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力、及び保温温度の設定を行う」との記載を引用することにより、訂正後の請求項2~5に係る発明においても請求項1と同様の事項を具体的に特定し限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の有無について
訂正事項1は、本件特許の明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0044】の記載等を根拠とするものであり、本件特許明細書等の【0044】には、「図8に示すように、前記運転表示入力部(5001)において、加熱運転モードの設定を行う場合、前記加熱設定テーブル(1002)をタッチして、テンキー(1001)で、加熱温度、加熱時間、仕上温度、仕上時間、蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力および仕上中蒸気出力、更に必要に応じて保温温度の設定も行う。」との記載があり、また図8には、「加熱設定」とタイトルが記載されたテーブルが示され、その下部に「加熱温度120℃」、「加熱時間30分」、「仕上温度75℃」、「仕上時間15分」、「蒸気供給開始温度100℃」、「加熱中蒸気70%」、「仕上中蒸気15%」、「保温温度65℃」と設定が行われる態様が示されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の在否について
訂正事項1は、発明特定事項を更に具体的に特定し限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2~5の記載についても実質的に訂正するものであるが、訂正後の請求項1の記載は、訂正前の請求項1との関係で特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2~5の記載について何ら訂正するものではなく、請求項2~5のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、訂正前の請求項2~5との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
4 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1~5について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1~5に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 小括
上記1から4のとおりであるから、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
6 本件訂正についてのまとめ
以上のことから、本件訂正請求による訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法であり、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、1A等の記号は、分説するために当審合議体が付与した。
【請求項1】
1A カート収容室を有する配膳車本体と、該配膳車本体の前記カート収容室に収容されるカートとで構成され、
1B 該カートは御飯が入った飯茶碗や主菜、副菜等が入った食器が載置されたトレイを多段に収容するトレイ収容室を備え、
1C 該トレイ収容室内の上下方向に列設された仕切り壁部材を挟んで、その一側が冷却と蒸気加熱を行う温冷室、同他側が冷却のみ行う冷室となされており、
1D 前記配膳車本体には前記カートの冷室および温冷室内に冷気を供給する冷却装置と、前記カートの温冷室を加熱するヒータと、前記温冷室に蒸気を供給する蒸気発生装置が設けられた
1E 蒸気加熱式温冷配膳車であって、
1F 当該配膳車の運転設定に係る入力および運転に係る表示を行う運転表示入力部と、
1G 前記ヒータを制御するヒータ制御部と、
1H 前記蒸気発生装置を制御する蒸気制御部と、
1I 前記冷却装置を制御する冷却制御部と、
1J 当該配膳車内の温度を検知する温度検知手段と、
1K 当該配膳車の運転時間を管理する時間管理部と、
1L 当該配膳車の運転情報を記憶する運転情報記憶部と、
1M 当該配膳車の運転を実行する運転演算処理部と、
を有し、
1N 前記運転情報記憶部に記憶されている運転情報が少なくとも、前記ヒータによる温冷室の加熱温度および加熱時間と前記蒸気発生装置による温冷室の蒸気供給開始温度および蒸気供給出力に関する情報を含み、
1O これらの情報が前記運転表示入力部を介して前記運転情報記憶部に入力記憶され、該入力記憶された運転情報に基づいて前記運転演算処理部を介して前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ、且つ
1P 前記運転情報記憶部に記憶されている運転情報が、温冷室を冷却する保冷運転モードと温冷室を加熱する加熱運転モードと温冷室を保温する保温運転モードを含み、
1Q 前記保冷運転モードでは温冷室の冷却を行い、
1R 前記加熱運転モードでは温冷室を加熱しつつ、その途中から蒸気を供給して所定時間の仕上げを行い、
1S 前記保温運転モードでは温冷室の保温のみを行い、
1T 前記加熱運転モードの設定を行う場合、前記運転表示入力部において、前記加熱温度、前記加熱時間、仕上温度、仕上時間、前記蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力、及び保温温度の設定を行う
1U ことを特徴とする、蒸気加熱式温冷配膳車。
【請求項2】
2A 更に、手動運転と自動運転の切り換え手段を有し、
2B 運転情報記憶部に記憶されている手動運転では保冷運転モードと加熱運転モードと保温運転モードをそれぞれ個別に実行し、
2C 前記運転情報記憶部に記憶されている自動運転では保冷運転モードから自動的に加熱運転モード、更には保温運転モードへと移行し、
2D 予め前記運転情報記憶部に入力された仕上げ終了時刻に合わせて自動的に保冷運転モードから所定時間の加熱運転モードに移行する
2E ことを特徴とする、請求項1記載の蒸気加熱式温冷配膳車。
【請求項3】
3A 運転情報記憶部に記憶されている手動運転では加熱運転モードに続いて自動的に保温運転モードが実行される
3B ことを特徴とする、請求項2記載の蒸気加熱式温冷配膳車。
【請求項4】
4A 運転情報記憶部に記憶されている運転情報として、仕上時間および仕上温度、並びに保温温度が含まれている、
4B 請求項1~請求項3のうちのいずれか一項記載の蒸気加熱式温冷配膳車。
【請求項5】
5A 請求項1記載の蒸気加熱式温冷配膳車の運転方法であって、
5B 冷却装置の運転によって、トレイ収容室の冷室および温冷室をそれぞれ0~5℃の温度範囲とする保冷運転ステップと、
5C 温冷室については、前記冷却装置による保冷を停止すると共にヒータを作動させて120~130℃の温度範囲まで上昇させる加熱運転ステップと、
5D 該加熱運転ステップの途中から蒸気発生装置を作動させて蒸気を供給すると共に、前記ヒータの出力および前記蒸気発生装置の出力を下げる仕上運転ステップと、
5E 前記蒸気発生装置の作動を停止して温冷室内を65~80℃の範囲に維持する保温運転ステップを行う
5F ことを特徴とする、蒸気加熱式温冷配膳車の運転方法。
第4 特許異議の申立てについて
1 特許異議の申立ての概要
(1) 申立理由の概要及び証拠方法
申立人は、証拠方法として以下の甲第1~5号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由を主張している。
ア 証拠方法
甲1:特開2021-109037号公報
甲2:特開2017- 26261号公報
甲3:特開2015- 19839号公報
甲4:特開2015-161472号公報
甲5:特開2016- 63389号公報
イ 申立理由(進歩性)
本件特許査定時の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、甲1に記載された発明と、甲3に記載されている事項と、甲2、甲4及び甲5に基づいて認定される周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
本件特許発明2~4は、甲1に記載された発明と、甲3に記載されている事項と、甲2、甲4及び甲5に基づいて認定される周知技術と、甲2に記載されている事項と、甲4に記載されている事項、及び/又は甲5に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
本件特許発明5は、甲1に記載された発明と、甲3に記載されている事項と、甲2、甲4及び甲5に基づいて認定される周知技術と、甲5に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
よって、本件特許発明1~5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
2 令和7年3月26日付け取消理由通知の概要
本件特許発明1~5に係る特許に対して、当審合議体が令和7年3月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許発明1~5は、甲1に記載された発明、甲2~4に記載された事項、及び、本願出願前周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に対する特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 令和7年9月3日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
令和7年5月26日付け訂正請求書により訂正された請求項1~5に係る特許に対して、当審合議体が同年9月3日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
令和7年5月26日付け訂正請求書により訂正された請求項1~5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、甲2~4に記載された事項、及び、本願出願前周知の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 当審合議体の判断
1 令和7年9月3日付け取消理由通知(決定の予告)について
(1) 甲号証の記載事項及び周知事項
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア) 甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホーム等の介護施設で給食を提供する際に使用される配膳車に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。また、「水蒸気」は、設定温度によって、飽和水蒸気であったり、未飽和の水蒸気であったり、或いは過熱水蒸気(過熱蒸気)の場合もある。
【0018】
図1~図6に示すように、本発明の配膳車の構造について説明すると、配膳車1は、内部にトレイTが多段に配置され、底部に取り付けられたキャスター16で移動自在なカート3と、内部にカート3を収容するカート収容室4が形成された配膳車本体2とを備えており、配膳車本体2は、蒸気を発生する蒸気装置6と、蒸気装置6に連通され、蒸気或いは空気を供給するダクト24と、ダクト24内に配設され、前記蒸気または空気を所定温度に加熱する第一ヒータH1および第二ヒータH2と、ヒータH1・H2によって所定温度に加熱された蒸気または熱風を供給する第一ファン31および第二ファン26を有しており、カート収容室4は、前記ダクト24を介して前記蒸気装置6から供給される蒸気或いは熱風が噴き出す蒸気等噴出口19と蒸気または熱風を吸い込む蒸気等吸入口21とカート3を出し入れするカート出入口部10とカート出入口部10を開閉する本体扉13を備えており、カートは3、配膳車本体2内の蒸気等噴出口19および蒸気等吸入口21と連通する連通開口部3eとトレイTが出し入れされるトレイ出入口部3fとトレイ出入口部3fおよび連通開口部3eを開閉するカート扉14A・14Bを備えている。
【0019】
また、配膳車本体2の上部には、カート3内に冷気を送入する冷却装置5が設置されている。
【0020】
なお、前記蒸気装置6は、電極やヒータおよび貯水タンク等が内蔵された一般的な構造のものである。
【0021】
配膳車本体2のカート収容室4は、上下壁7・8と左右壁9・11と後壁12と前側に形成された前記カート出入口部10を備え、カート出入口部10の両側縁には左右一対の前記本体扉13が取り付けられている。またカート収容室4の下壁8の外面四隅にはキャスター14と脚体30がそれぞれ取り付けられており、下壁8における左右壁9・11寄り部分にはカート3のキャスター16が進入するキャスター進入用開口部17が所定間隔をあけて形成されている。
【0022】
本実施形態に係るカート収容型配膳車1は、要するに、その配膳車本体2のカート収容室4内に、トレイTを多段に配置したカート3全体がそのまま収容され、カート出入口部10の本体扉13を閉めて、冷却装置5および蒸気装置6により、カート3内の各トレイT上に載せられた食器内の食品や食材を冷蔵したり、加熱したりするものである。
【0023】
本実施形態では、前記第二ファン26は、蒸気等吸込口21に面して、前記蒸気装置6に取り付けられている。
【0024】
カート3は、内部がトレイ収容室40となされたものであって、上下壁3a・3bと、左右壁3c・3dと、配膳車本体2の冷却装置5からの冷気および蒸気装置6からの水蒸気等が流入する前記連通開口部3eと、トレイTが出し入れされる前記トレイ出入口部3fと、トレイ出入口部3fおよび連通開口部3eを開閉する左右一対の前記カート扉14A・14Bを備えている。
【0025】
図2に示すように、カート3内の幅中央部分には、前後方向に伸びる多数の仕切壁部材15が上下方向に列設され、上下に隣り合う仕切壁部材15間のトレイ通路にトレイTが差し込まれて該トレイTが各仕切壁部材15間に挟み止められる。
【0026】
図3に示すように、配膳車本体2のカート収容室4の後壁12において、その左寄り部分には前記の通り、上下方向に多数の蒸気等噴出口19が列設され、また最下部の蒸気等噴出口19から内方には外形が円形の前記蒸気等吸込口21が形成されており、また後壁12における蒸気等吸込口21の上方には多数の冷気噴出口22Aと多数の冷気吸込口23Aとが上下方向にそれぞれ列設され、更にそれらの右側にも多数の冷気噴出口22Bと多数の冷気吸入口23Bとが上下方向にそれぞれ列設されており、これらは、ダクト(図示せず)を介して前記冷却装置5と連通されて冷気の循環が行われるようになされている。」
【図2】
「
[図:0001434132000001.jpg]
」
【図3】
「
[図:0001434132000002.jpg]
」
(イ) 甲1に記載された事項より認定できる事項
図2を参照すると、カート3の内部は、仕切壁部材15によって、右側部分と左側部分に分割される点が見て取れる(以下「認定事項1」という。)。
また、【0026】には、「配膳車本体2のカート収容室4の後壁12において、その左寄り部分には」「上下方向に多数の蒸気等噴出口19が列設され、」と記載されていることから、カート3の仕切壁部材15の左側部分のみが、蒸気等噴出口19により蒸気加熱が可能である点が認定できる(以下「認定事項2」という。)。
そして、「また後壁12における蒸気等吸込口21の上方には多数の冷気噴出口22Aと多数の冷気吸込口23Aとが上下方向にそれぞれ列設され、更にそれらの右側にも多数の冷気噴出口22Bと多数の冷気吸入口23Bとが上下方向にそれぞれ列設されており、これらは、ダクト」「を介して前記冷却装置5と連通されて冷気の循環が行われるようになされ」と記載されていることから、カート3の仕切壁部材15の右側部分と左側部分の両方において冷却が可能である点が認定できる(認定事項3)。
(ウ) 甲1発明
上記(ア)及び(イ)より、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「内部がトレイ収容室40となされたものであって(【0024】)、内部にトレイTが多段に配置され、各トレイT上に食器とともに食品や食材を載せ、底部に取り付けられたキャスター16で移動自在なカート3と、内部にカート3を収容するカート収容室4が形成された配膳車本体2とを備えた配膳車1であって(【0018】、【0022】)、
配膳車本体2は、蒸気を発生する蒸気装置6と、蒸気装置6に連通され、蒸気或いは空気を供給するダクト24と、ダクト24内に配設され、前記蒸気または空気を所定温度に加熱する第一ヒータH1および第二ヒータH2と、ヒータH1・H2によって所定温度に加熱された蒸気または熱風を供給する第一ファン31および第二ファン26を有しており、カート収容室4は、前記ダクト24を介して前記蒸気装置6から供給される蒸気或いは熱風が噴き出す蒸気等噴出口19と蒸気または熱風を吸い込む蒸気等吸入口21を備え(【0018】)、
配膳車本体2の上部には、カート3内に冷気を送入する冷却装置5が設置され(【0019】)、
カート収容室4は後壁12を備え(【0021】)、
カート3内の幅中央部分には、前後方向に伸びる多数の仕切壁部材15が上下方向に列設され(【0025】)、カート3の内部は、仕切壁部材15によって、右側部分と左側部分に分割され(認定事項1)、
カート収容室4の後壁12において、その左寄り部分には、上下方向に多数の蒸気等噴出口19が列設され(【0026】)、カート3の仕切壁部材15の左側部分のみが、蒸気等噴出口19により蒸気加熱が可能であり(認定事項2)、
後壁12における蒸気等吸込口21の上方には多数の冷気噴出口22Aと多数の冷気吸込口23Aとが上下方向にそれぞれ列設され、更にそれらの右側にも多数の冷気噴出口22Bと多数の冷気吸入口23Bとが上下方向にそれぞれ列設されており、これらは、ダクトを介して前記冷却装置5と連通されて冷気の循環が行われるようになされ(【0026】)、カート3の仕切壁部材15の右側部分と左側部分の両方において冷却が可能であり(認定事項3)、
冷却装置5および蒸気装置6により、カート3内の各トレイT上に載せられた食器内の食品や食材を冷蔵したり、加熱したりする(【0022】)、
配膳車1(【0018】)。」
(以下「甲1発明」という。)
イ 甲3に記載された事項及び甲3記載事項
(ア) 甲3に記載された事項
甲3には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、配膳車等の庫内に収容された冷蔵食品に蒸気を供給しつつ、加熱する方法に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を配膳車内に収容された冷蔵食品の加熱に適用した場合の実施形態について説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1に示す配膳車1は、本発明に係る冷蔵食品の加熱方法が使用されるものの一例であって、中央壁2aによって前後二室2b・2cに分けられた配膳車本体2と、配膳車本体2の下側に取り付けられた自在輪3並びに駆動輪4と、配膳車本体2の前後外面2f・2gにそれぞれ取り付けられた左右方向に伸びる略棒状のハンドル9を備えている。
【0021】
配膳車本体2は、前述した通り、前後二室2b・2cに分けられ、これらの部屋2b・2cの中央には仕切り壁部材5が上下方向に列設されて仕切壁が構成され、上下に隣り合う仕切り壁部材5間にはトレイ通路6が形成されており、また各トレイ通路6と同じ高さ位置には、中央壁2aと両側壁2dに、互いに対向するトレイ受け7が取り付けられ、トレイ通路6から差し込まれたトレイTの両側縁がそれぞれトレイ受け7によって支持される。
【0022】
前述した配膳車1の前後二室2b・2cには当該配膳車1に設けられた冷却装置(図示せず)によって冷気が供給され、該冷気によって前記各トレイT上の食品が配膳前の所定時間まで冷蔵され、そして、前記中央壁2aの両側の庫内2eに蒸気が供給されつつ、加熱が行われるようになされている。この場合、蒸気供給は当該配膳車1に設けられた蒸気発生装置(図示せず)によって行われ、また該蒸気の供給経路に設けられた加熱ヒータ(図示せず)によって、食品の加熱が適宜行われる。
【0023】
次に、前述した配膳車1において、本発明に係る蒸気を用いた庫内冷蔵食品の加熱方法を使用する場合について説明すると、先ずその基本は、配膳車1の庫内2eで冷蔵された食品に、蒸気を供給しながら加熱する方法であって、庫内2eで冷蔵された食品に対して加熱を行いつつ、蒸気を段階的に増加して供給する加熱ステップS1と、加熱ステップS1の終期で庫内を所定時間、所定の最高温度帯に維持した後、食品に対する加熱を停止し、蒸気だけを所定時間継続して供給するクールダウンステップS2とを有することを特徴とするものである。
【0024】
そして、より詳細には、図2に示すように、配膳車1の庫内2eに収容されたトレイT上の冷蔵食品が0~10℃の庫内温度状態下において、これを開始点M0として、配膳車本体2の庫内2eに収容されたトレイT上の食品に対して、先ず加熱だけを所定時間行って庫内温度が約70℃になった時点で、加熱を更に継続しつつ、蒸気をA1~A3へと段階的に増加させながら供給し、庫内温度を最終的に100~130度範囲の最高温度域M1に達するようにする。ここまでが前記加熱ステップS1であって、このステップS1における加熱ヒータの運転は本実施形態では、パルス制御によって断続的に行い、配膳時間から逆算して食品が所定時間ごとに所定温度に段階的に上昇していくように制御するのである。また、この加熱ステップにおいて、前記蒸気の供給は、通常、庫内2eが70~80℃の範囲内で開始する。
【0025】
次に、クールダウンステップS2では、前記最高温度帯M1を出発点として前述した通り、加熱を停止し、蒸気だけを供給するのであるが、本実施形態では蒸気の供給量をA4~A5へと段階的に減少させ、庫内温度が約70℃になった時点M2で蒸気供給を停止し、クールダウンステップS2が終了する。」
【図2】
「
[図:0001434132000003.jpg]
」
(イ) 甲3記載事項
上記(ア)より、甲3には、以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「冷却装置、蒸気発生装置及び加熱ヒータが設けられた配膳車1において(【0022】)、
配膳車1の庫内2eに収容されたトレイT上の冷蔵食品が0~10℃の庫内温度状態下において、トレイT上の食品に対して、先ず加熱だけを所定時間行って庫内温度が約70℃になった時点で、加熱を更に継続しつつ、蒸気を段階的に増加させながら供給し、庫内温度を最終的に100~130度範囲の最高温度域M1に達するようにし、この加熱ステップにおいて、前記蒸気の供給は、通常、庫内2eが70~80℃の範囲内で開始し(【0024】)、加熱を停止し、蒸気だけを供給し、庫内温度が約70℃になった時点M2で蒸気供給を停止する(【0025】)点。」
ウ 甲2に記載された事項及び甲2記載事項
(ア) 甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、冷温蔵装置に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図1ないし図11によって説明する。本実施形態の冷温蔵装置1は、図1に示すように、カート10(断熱カート)とカート10を出し入れ可能に格納するステーション30とを備えている。カート10は断熱室11Bを構成する断熱箱11Aを有するカート本体11と、トレイ40を収納するフレームカート20とを備えている。」
「【0019】
第2の熱交換室32は冷蔵室25Cの上方に配されている。第2の熱交換室32には第2の蒸発器33B(冷却器)、及び、第2の循環ファン35Bが収容されている。第2の蒸発器33Bは冷却装置37の一部を構成するものである。第1の蒸発器33A及び第2の蒸発器33Bは、冷媒管や開閉弁(図示せず)を介して圧縮機38や凝縮器と並列接続されている。制御部80(後述)は開閉弁を切り替えることにより、蒸発器33A、33Bに対する冷媒の供給を制御することができる。これにより、制御部80は、第1の蒸発器33Aと第2の蒸発器33Bとが両方作動している状態、第1の蒸発器33Aのみが作動している状態、及び、第2の蒸発器33Bのみが作動している状態を切り替えることができる。また、熱交換室31には、冷温蔵室25Hの温度を検知する温度センサ61Hが配され、熱交換室32には、冷蔵室25Cの温度を検知する温度センサ61Cが配されている。」
「【0033】
(冷温蔵装置の電気的構成)
次に、冷温蔵装置1の電気的構成について説明する。図8に示すように、冷温蔵装置1は、制御部80を備えている。制御部80には、操作部81A、表示部81B、温度センサ61H,61C、循環ファン35A,35B、ヒータ34、冷却装置37(より具体的には圧縮機38や開閉弁)、計時部62、記憶部63、カート検知部70、ダクト検知部60が電気的に接続されている。
【0034】
制御部80は、例えばCPUを主体に構成され、記憶部63は、例えばROMやRAMなどによって構成されている。制御部80は、記憶部63に記憶されたプログラムを実行することで、制御部80に接続された表示部81B、循環ファン35A,35B、ヒータ34、冷却装置37(ひいては蒸発器33A,33B)の動作を制御することが可能となっている。なお、制御部80及び記憶部63は、例えば、機械室36内に配置された電装箱内に収容されているが、これに限定されない。また、図1に示すように、ステーション30の前壁部には、タッチパネル81(より詳しくはタッチパネル付き液晶パネル)が設けられている。タッチパネル81は、操作部81A及び表示部81Bを構成するものとされる。作業者は、タッチパネル81に表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置1の運転に関する操作や各種設定(例えば、調理完了時刻や目標温度などの入力)、及び運転履歴の確認などを行うことができる。計時部62(内蔵時計)は、現在時刻を計時するものとされ、制御部80は、計時部62の現在時刻に基づいて、各機器の制御を行うことが可能となっている。
【0035】
(冷温蔵装置の使用形態の一例)
次に、本実施形態の冷温蔵装置1の使用形態の一例を説明する。まず、作業者は調理等の準備をした温食と冷食とをトレイ40に分けて盛り付け、各トレイ40をフレームカート20に収納し、その後にフレームカート20をカート本体11に収納する。そして、作業者はカート10をステーション30に格納し、操作レバー57を操作してダクト本体51を押し下げる。これにより、ダクト52~55が断熱箱11Aに接続され、ダクト検知部60がオフ状態(ダクトが伸びている状態)になる。また、カート10がステーション30に格納されることで、カート検知部70はオン状態になる。
【0036】
そして、作業者は、予め設定された複数種類の運転コース(後述)からいずれか一つを選択し、タッチパネル81上に表示される運転スイッチをオンにする。運転スイッチがオンにされると制御部80は冷温蔵装置1の運転を開始する。なお、本実施形態では、ダクト検知部60がオフ状態且つカート検知部70がオン状態であることを、運転開始の条件としている。運転が開始されると、制御部80は、選択された運転コースに基づいて、各機器(ヒータ34、冷却装置37、循環ファン35A,35B)の制御を行う。一例としては、制御部80は、計時部62によって計時される現在時刻と予め設定された調理完了時刻を比較しつつ、温度センサ61H,61Cによる検知温度が予め設定された目標温度となるように、各機器の制御を行う。調理完了時刻になると、制御部80は、各機器の作動を停止させる。運転が完了した後、作業者は、操作レバー57を操作して、断熱箱11Aに対するダクト52~55の接続を解除し、カート10をステーション30から引き出して配膳に供する。」
「【0040】
図9は、運転状態(運転コース及び運転動作)の履歴を示す表示画面の一例である。本実施形態における運転動作としては保温運転とは、冷蔵室25C及び冷温蔵室25Hをそれぞれ予め設定された温度で維持するように運転を行う運転コースのことである、待機、両チルド運転、加熱運転,蒸らし運転、保温運転、予冷運転、クーリング運転、エラー停止などを例示することができる。なお、両チルド運転とは、両室25C,25Hをチルド冷蔵する運転であり、加熱運転とは、冷蔵室25Cを保冷し、冷温蔵室25Hを加熱する運転である。また、蒸らし運転とは、加熱運転後、冷蔵室25Cの保冷は継続し、ヒータ34による冷温蔵室25Hの加熱を停止した状態で循環ファン35Aを作動させる運転である。そして、予冷運転とは、加熱運転後、次の食事を入れる前に空の状態の断熱室11B内を冷やすための運転であり、循環ファン35A,35B及び冷却装置37を駆動させる運転のことである。また、クーリング運転とは、冷却装置37を駆動せず、循環ファン35A,35Bを駆動させることで冷却装置37に負荷を掛けずに断熱室11Bの冷却を行う運転のことである。
【0041】
本実施形態における運転コースとは、予め設定された一つ以上の上記運転動作を計時部の現在時刻等に基づいて実行するものである。運転コースとしては、朝食運転、昼食運転、夕食運転、手動運転、保温運転などを例示することができる。朝食運転は、例えば、次のように設定された運転コースである。朝食運転では、まず、冷蔵室25C及び冷温蔵室25Hの保冷運転(例えば、両チルド運転)を行い、その後、予め設定された加熱完了時刻(配膳時刻)から逆算した時刻になると、冷温蔵室25Hについては保冷運転を停止し、加熱運転に切り替える。これにより、冷蔵室25Cの冷食を保冷しつつ、冷温蔵室25Hの温食を再加熱することができる。また、朝食運転として、加熱運転の後、蒸らし運転が行われてもよい。
【0042】
昼食運転及び夕食運転は、例えば、朝食運転と同様の運転動作で構成されている。朝食運転、昼食運転、及び夕食運転については、各運転動作における目標保冷温度、目標加熱温度、加熱完了時刻などがそれぞれ個別で設定されている。これにより、朝食、昼食、夕食に適した加熱完了時刻や目標加熱温度を運転コース毎に設定し、適宜実行することができる。また、手動運転とは、作業者が目標温度及び調理時間を入力した後、運転開始ボタンを押圧すると同時に運転を行う運転コースのことであり、保温運転とは、冷蔵室25C及び冷温蔵室25Hをそれぞれ予め設定された温度で維持するように運転を行う運転コースのことである。
【0043】
図9に示すように、本実施形態では、現在時刻と、その時刻に実行されていた運転コースの種類、及びその時刻に実行されていた運転動作を履歴として表示することが可能となっている。また、本実施形態では、制御部80は、各運転コース、各運転動作をそれぞれ数字に置き換えて、記憶部63に記憶し(図9の表示領域H1、H2参照)、この数字と時刻とを対応付けて表示する構成となっている。例えば、朝食運転であれば「1」、昼食運転であれば「2」、夕食運転であれば「4」に置き換えて記憶及び表示を行う。このようにすることで、例えば文字情報としてデータを取り扱う場合と比べてデータ量を少なくすることができ、より多くの運転情報を記憶部63に記憶させることができる。」
【図1】
「
[図:0001434132000004.jpg]
」
【図8】
「
[図:0001434132000005.jpg]
」
(イ) 甲2記載事項
上記(ア)より、甲2には、以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「カート10とカート10を出し入れ可能に格納するステーション30とを備えた冷温蔵装置1において(【0012】)、
冷温蔵装置1は、制御部80を備え、制御部80には、操作部81A、表示部81B、冷温蔵室25Hの温度を検知する温度センサ61H,冷蔵室25Cの温度を検知する温度センサ61C、循環ファン35A,35B、ヒータ34、冷却装置37、計時部62、記憶部63、カート検知部70、ダクト検知部60が電気的に接続され(【0019】、【0033】)、
制御部80は、記憶部63に記憶されたプログラムを実行することで、制御部80に接続された表示部81B、循環ファン35A,35B、ヒータ34、冷却装置37(ひいては蒸発器33A,33B)の動作を制御することが可能となっており(【0034】)、
ステーション30の前壁部には、タッチパネル81(より詳しくはタッチパネル付き液晶パネル)が設けられ、タッチパネル81は、操作部81A及び表示部81Bを構成するものとされ、タッチパネル81に表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置1の運転に関する操作や各種設定を行うことができ、計時部62は、現在時刻を計時し、制御部80は、計時部62の現在時刻に基づいて、各機器の制御を行うことが可能となっており(【0034】)、
制御部80は、各運転コース、各運転動作を記憶部63に記憶し(【0043】)、
作業者は、予め設定された複数種類の運転コースからいずれか一つを選択し、制御部80は、選択された運転コースに基づいて、各機器の制御を行い(【0036】)、
運転動作として、両チルド運転、加熱運転,蒸らし運転、保温運転、予冷運転、クーリング運転を例示することができ、両チルド運転とは、冷温室25Cと冷温蔵室25Hをチルド冷蔵する運転であり、加熱運転とは、冷蔵室25Cを保冷し、冷温蔵室25Hを加熱する運転であり(【0040】)、
運転コースとは、予め設定された一つ以上の上記運転動作を計時部の現在時刻等に基づいて実行するもので、運転コースとしては、朝食運転、昼食運転、夕食運転、手動運転、保温運転などを例示することができ、朝食運転では、まず、保冷運転を行い、その後、予め設定された加熱完了時刻から逆算した時刻になると、保冷運転を停止し、加熱運転に切り替え、これにより、温食を再加熱することができ(【0041】)、
各運転動作における目標保冷温度、目標加熱温度、加熱完了時刻などがそれぞれ個別で設定され(【0042】)、
保温運転とは、冷蔵室25C及び冷温蔵室25Hをそれぞれ予め設定された温度で維持するように運転を行う運転コースのことである(【0042】)点。」
エ 甲4に記載された事項及び甲4記載事項
(ア) 甲4に記載された事項
甲4には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、冷温蔵装置に関する。」
「【0020】
<実施形態1>
冷温蔵装置10の実施形態1を図1ないし図10を参照して説明する。
冷温蔵装置10は、図1に示すように、カート11と、カート11を出し入れ可能に収納するステーション30と、を備えている。なお、本実施形態では、前後方向については、ステーション30からカート11を出す方向を前方、ステーション30に対してカート11を入れる方向を後方とする。」
「【0023】
ステーション30は、正面が開口された略箱形をなし、その開口を通じてカート11を出し入れ可能となっている。ステーション30の前面には、液晶パネル31が備えられている。液晶パネル31は、ユーザが操作可能な操作部32(図5参照)と、視認可能な表示部33としての機能を有する。ステーション30の上部には、2つの熱交換室35A,35Bが左右に並んでいる。冷蔵室21の上方に配された第1熱交換室35A(正面視右側の熱交換室)には冷却器37A(図4参照)が設けられ、温蔵室22の上方に配された第2熱交換室35B(正面視左側の熱交換室)には冷却器37Bとヒータからなる加熱手段45(図4参照)とが設けられている。また、熱交換室35A,35Bには循環ファン41,42がそれぞれ設けられている。循環ファン41,42はターボ式のファンモータを備え、駆動時には、ファンの下面の吸引口から吸引された空気が、周面の吐出口から放射状に吐出される。」
「【0026】
次に、冷温蔵装置10の電気的構成を図5を参照して説明する。
冷温蔵装置10は、複数の電子部品が回路基板に実装された制御回路を備えており、この制御回路は、図5に示すように、所定のプログラムを実行するマイクロコンピュータ等からなる制御部60(「制御手段、停電検知手段、判断手段、選択手段及び表示制御手段」の一例)を有する。制御部60は、メモリ59及びタイマ62を有する。この制御部60は、冷蔵室21及び温蔵室22の両室を保冷する保冷運転(「両室冷却運転」の一例)を行う保冷モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22を加熱する加熱運転(「片室加熱運転」の一例)を行う加熱モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22の加熱を停止する蒸らし運転を行う蒸らしモードと、を切り替え可能となっている。
【0027】
制御部60は、保冷モードにあるときには、冷蔵室21及び温蔵室22の両室を保冷する保冷運転を行うように冷却手段55を制御する。これにより、図6に示すように、設定温度TAを目標温度として冷蔵室21及び温蔵室22が冷却される。制御部60は、設定した時刻t1(配膳時間を設定した場合には、配膳時間の所定時間前)になると、保冷モードを加熱モードに切り替える。加熱モードにあるときには、冷蔵室21を冷却手段55で冷却し、かつ、温蔵室22を加熱手段45で加熱する加熱運転を行うように冷却手段55及び加熱手段45を制御する。これにより、冷蔵室21が設定温度TBを目標温度として冷却(解凍)されるとともに、温蔵室22が設定温度TCを目標温度として加熱される。そのため、加熱運転では、温蔵室22の温度が、設定温度TCに向けて急速に温度が上昇させる昇温加熱運転を経たのちに、設定温度TCの付近でほぼ一定の温度を維持する定温加熱運転を行うようになっている。加熱運転が終了する時刻t2(配膳時間の蒸らし時間経過前)になると加熱モードから蒸らしモードに切り替わる。蒸らしモードでは、冷却手段55による冷蔵室21の冷却は継続し、かつ、加熱手段45による温蔵室22の加熱を停止し、循環ファン42を駆動する蒸らし運転を行うように、冷却手段55,加熱手段45及び循環ファン42を制御する。
なお、冷蔵室21及び温蔵室22の温度は、制御部60によって、各設定温度に対して所定の温度差(ディファレンシャル)の範囲内となるように、冷却手段55及び加熱手段45がオンオフ制御されているようになっている。
【0028】
制御部60の入力側には、操作部32と、記憶手段63と、冷蔵室21及び温蔵室22のそれぞれの部屋の温度を検知するためのサーミスタからなる温度検知手段61A,61Bとが接続されている。操作部32の入力信号及び温度検知手段61A,61Bの出力信号が制御部60に入力されるとともに、制御部60は記憶手段63に記憶された情報を読み出す。ここで、記憶手段63は、停電により電力供給が遮断されても情報が失われない不揮発性の記憶手段が用いられている。記憶手段63としては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM )やNVRAM(non-volatile random access memory)を用いることができる。
【0029】
記憶手段63に記憶される情報は、冷温蔵装置の運転に関する運転情報である。この運転情報には、少なくとも停電の有無を判断することが可能な情報が含まれる。本実施形態では、運転情報として、現在時刻(本実施形態では1分ごとの時刻)、その時刻における冷蔵室21及び温蔵室22の温度、その時刻における運転状態、及び、その運転状態の継続時間が記憶手段63に記憶されている。運転状態は、保冷運転、加熱運転(昇温加熱運転及び定温加熱運転の情報も記憶される)、蒸らし運転のいずれかが記憶される。通常時は、これらの情報が記憶手段63に記憶されるが、停電時は制御部60に電力が供給されないため、記憶されない。したがって、例えば、運転情報が記憶されていない時間帯があれば、制御部60は、停電復帰後にその時間帯に停電があったことを判断することができる。
【0030】
制御部60の出力側には、冷却手段55と、加熱手段45と、循環ファン41,42と、表示部33(「表示手段」の一例)とが接続されている。これにより、制御部60からの制御信号に応じて冷却手段55,加熱手段45,循環ファン41,42及び表示部33が動作する。停電が発生したことを制御部60が判断すると、表示部33には、停電が発生したことを示す表示(図10)がされる。この表示は、操作部32の操作により、通常の画面に移行させることができる。また、表示部33により、過去の運転情報等を確認することができる。さらに、操作部32の操作画面は、所定時間(例えば1分)経過するごとに停電が発生したことを示す表示に自動的に戻る。このようにすることで、停電発見した者と実際に再加熱運転完了後に配膳するものが違う場合等に、停電が発生したことを周知させることができる。
【0031】
冷温蔵装置10の制御について説明する。
(基本処理)
まず、調理済みの温食と冷食とをプレハブ冷蔵庫内等においてチルド保存する。次に、翌朝等にプレハブ冷蔵庫内等から取り出した温食と冷食とをトレイ19に盛り付け、各トレイ19をカート11の温蔵室22と冷蔵室21に亘って複数段に収納し、カート11をステーション30に入れる。そして、制御部60は、最初は現在のモードを保冷モードとする。保冷モードでは、制御部60は、温度検知手段61A,61Bが検知した温度に応じて温蔵室22及び冷蔵室21の両室を設定温度TAとなるように冷却手段55を動作させる保冷運転を行う。
【0032】
そして、図9に示すように、タイマ62が加熱運転の開始時刻t1となると、加熱モードとなり、冷蔵室21を冷却し温蔵室22を加熱する加熱運転が行われる。加熱手段45の加熱開始から所定時間(t2-t1)経過して加熱運転の終了時刻t2になると蒸らしモードとなり、温蔵室22の加熱を停止し、冷蔵室21の冷却を継続する蒸らし運転を行う。そして、蒸らし運転の終了時刻t3(配膳時刻)となったら、カート11がステーション30から引き出され、トレイ19が取り出されて配膳に供される。」
【図1】
「
[図:0001434132000006.jpg]
」
【図5】
「
[図:0001434132000007.jpg]
」
【図6】
「
[図:0001434132000008.jpg]
」
(イ) 甲4の記載より認定できる事項
a 認定事項ア
甲4の【0027】において、時刻t1及び設定温度TA、TB及びTCが、ユーザが操作可能な操作部32からユーザによって入力される値であり、それらの時刻及び設定温度が制御部60が有するメモリ59に記憶されることは、技術常識を参酌すれば明らかである。
よって、甲4には、ユーザにより操作部32から時刻t1、t2及び設定温度TA、TB及びTCの値が入力され、その値は制御部60が有するメモリ59に記憶されること(以下「認定事項ア」という。)が認定できる。
b 認定事項イ
甲4の図6を参照すると、時刻t3の以後は、冷温蔵温度が70℃程度に維持されており、その状態は保温状態といえるから、甲4には、「冷温蔵温度を70℃程度に維持する保温モード」があり、時刻t3の以後は保温モードに切り替わる点(以下「認定事項イ」という。)が認定できる。
(ウ) 甲4記載事項
上記(ア)及び(イ)より、甲4には、以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「カート11と、カート11を出し入れ可能に収納するステーション30と、を備えている冷温蔵装置10において(【0020】)、
ステーション30の前面には、液晶パネル31が備えられ、液晶パネル31は、ユーザが操作可能な操作部32と、視認可能な表示部33としての機能を有し(【0023】)、
冷温蔵装置10は、複数の電子部品が回路基板に実装された制御回路を備えており、この制御回路は、所定のプログラムを実行するマイクロコンピュータ等からなる制御部60を有し、制御部60は、メモリ59及びタイマ62を有し、この制御部60は、冷蔵室21及び温蔵室22の両室を保冷する保冷運転を行う保冷モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22を加熱する加熱運転を行う加熱モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22の加熱を停止する蒸らし運転を行う蒸らしモードと、冷温蔵温度を70℃程度に維持する保温モードとを切り替え可能となっており(【0026】、認定事項イ)、
制御部60の入力側には、操作部32と、冷蔵室21及び温蔵室22のそれぞれの部屋の温度を検知するためのサーミスタからなる温度検知手段61A,61Bとが接続され(【0028】)、
ユーザにより操作部32から時刻t1、t2及び設定温度TA、TB及びTCの値が入力され、その値は制御部60が有するメモリ59に記憶され(認定事項ア)、
制御部60の出力側には、冷却手段55と、加熱手段45と、循環ファン41,42と、表示部33とが接続され、制御部60からの制御信号に応じて冷却手段55,加熱手段45,循環ファン41,42及び表示部33が動作し(【0030】)、
制御部60は、保冷モードにあるときには、冷蔵室21及び温蔵室22の両室を保冷する保冷運転を行うように冷却手段55を制御し、設定温度TAを目標温度として冷蔵室21及び温蔵室22が冷却され、制御部60は、設定した時刻t1になると、保冷モードを加熱モードに切り替え、加熱モードにあるときには、冷蔵室21を冷却手段55で冷却し、かつ、温蔵室22を加熱手段45で加熱する加熱運転を行うように冷却手段55及び加熱手段45を制御し、冷蔵室21が設定温度TBを目標温度として冷却(解凍)されるとともに、温蔵室22が設定温度TCを目標温度として加熱され、加熱運転では、温蔵室22の温度が、設定温度TCに向けて急速に温度が上昇させる昇温加熱運転を経たのちに、設定温度TCの付近でほぼ一定の温度を維持する定温加熱運転を行うようになっており、加熱運転が終了する時刻t2になると加熱モードから蒸らしモードに切り替わり、蒸らしモードでは、冷却手段55による冷蔵室21の冷却は継続し、かつ、加熱手段45による温蔵室22の加熱を停止し、循環ファン42を駆動する蒸らし運転を行うように、冷却手段55,加熱手段45及び循環ファン42を制御し(【0027】)、時刻t3の以後は保温モードに切り替わる(認定事項イ)点。」
オ 本件特許出願前周知の事項
(ア) 周知事項1
甲2記載事項における「タッチパネル」「付き液晶パネル」「81に表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置1の運転に関する操作や各種設定を行うことができ、計時部62は、現在時刻を計時し、制御部80は、計時部62の現在時刻に基づいて、各機器の制御を行うことが可能となっており」、「作業者は、予め設定された複数種類の運転コースからいずれか一つを選択し、制御部80は、選択された運転コースに基づいて、各機器の制御を行う」ことと、甲4記載事項における「ユーザにより操作部32」「の機能を有する」「液晶パネル31」から時刻t1、t2及び設定温度TA、TB及びTCの値が入力され、」「設定温度TA」が「目標温度と」され、「設定された時刻t1になると」「設定温度TBを目標温度として冷却(解凍)され」「時刻t2になると」「蒸らし運転を行う」ことは、液晶パネルに表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置の運転に関する操作や各種設定を行うことができることであると認められる。
よって、甲2記載事項及び甲4記載事項より、以下の点が本件特許出願前周知の事項であることが認定できる。
「冷温蔵装置が、操作部及び表示を有する液晶パネルを有し、液晶パネルに表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置の運転に関する操作や各種設定を行うことができる点。」(以下「周知事項1」という。)
(イ) 周知事項2
甲2記載事項及び甲4記載事項より、以下の点も本件特許出願前周知の事項であることが認定できる。
「冷温蔵装置は、制御部を備え、前記制御部には、操作部、表示部、冷蔵室及び冷温蔵室の温度センサ、冷却装置、計時部(タイマ)、記憶部(メモリ)が電気的に接続され、前記制御部は、前記計時部(タイマ)による時刻に基づいて各機器の制御を行うことが可能となっている点。」(以下「周知事項2」という。)
(ウ) 周知事項3
甲2記載事項には、「各運転コース、各運転動作を記憶部63に記憶」することが特定されており、また、甲4記載事項における「制御部60が」、「冷蔵室21及び温蔵室22の両室を保冷する保冷運転を行う保冷モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22を加熱する加熱運転を行う加熱モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22の加熱を停止する蒸らし運転を行う蒸らしモードと、を切り替え可能」とする構成は、それらのモードの制御情報が「制御部60」が有する「メモリ59」に存在することは技術常識より明らかであるから、甲2記載事項における「各運転コース、各運転動作」及び甲4記載事項における切り替え可能となっている保冷モード、加熱モード、蒸らしモード及び保温モードは、「記憶部(メモリ)に記憶された運転に関する情報」といえる。
よって、甲2記載事項及び甲4記載事項より、以下の点も本件特許出願前周知の事項であることが認定できる。
「冷温蔵装置の記憶部(メモリ)は、運転に関する情報を記憶する点。」(以下「周知事項3」という。)
(エ) 周知事項4
甲2記載事項は「運転動作として、両チルド運転、加熱運転,蒸らし運転、保温運転、予冷運転、クーリング運転を例示することができ、」「各運転動作における目標保冷温度、目標加熱温度、加熱完了時刻などがそれぞれ個別で設定され」る点が特定されており、また、甲4記載事項は「ユーザにより操作部32から」「入力され」た「時刻t1、t2及び設定温度TA、TB及びTCの値が」「制御部60が有するメモリ59に記憶され」る点が特定されている。そして、目標保冷温度、目標加熱温度、設定温度TA、TB及びTCの値は、目標温度であり、加熱完了時刻、時刻t1、t2は、加熱時間に関する値であることは当業者にとって明らかである。
また、甲2記載事項には、「制御部80は、選択された運転コースに基づいて、各機器の制御を行う」点が特定されており、甲4記載事項には「制御部60からの制御信号に応じて冷却手段55,加熱手段45,循環ファン41,42及び表示部33が動作」する点が特定されていることから、上記(ウ)を踏まえると、以下の点が本件特許出願前周知の事項であると認定できる。
「冷温蔵装置の制御部が有する記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報には、操作部を介して操作者により設定された目標温度及び加熱時間に関する情報が含まれ、前記制御部は、前記記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報に基づいて制御を行う点。」(以下「周知事項4」という。)
(オ) 周知事項5
甲2記載事項には、「運転動作として、両チルド運転、加熱運転,蒸らし運転、保温運転、予冷運転、クーリング運転」がある点が特定されており、甲4記載事項には、「冷蔵室21及び温蔵室22の両室を保冷する保冷運転を行う保冷モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22を加熱する加熱運転を行う加熱モードと、冷蔵室21を保冷し、かつ、温蔵室22の加熱を停止する蒸らし運転を行う蒸らしモードと、冷温蔵温度を70℃程度に維持する保温モード」がある点が特定されていることから、上記(ウ)を踏まえると、以下の点が本件特許出願前周知の事項であると認定できる。
「記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報には、冷温蔵室を保冷する保冷運転を行う保冷モード、冷温蔵室を加熱する加熱運転を行う加熱モード、冷温蔵室を保温する保温モードが設定される点。」(以下「周知事項5」という。)
(2) 本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア) 甲1発明における「カート3と、内部にカート3を収容するカート収容室4が形成された配膳車本体2とを備え」ることは、本件訂正発明1の構成1Aにおける「カート収容室を有する配膳車本体と、該配膳車本体の前記カート収容室に収容されるカートとで構成され」ることに相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の構成1Aに相当する構成を有する。
(イ) 甲1発明における「カート3」が「内部がトレイ収容室40となされたものであって」「内部にトレイTが多段に配置され、各トレイT上に食器とともに食品や食材を載せ」るものであることは、本件訂正発明1の構成1Bにおける「該カートは御飯が入った飯茶碗や主菜、副菜等が入った食器が載置されたトレイを多段に収容するトレイ収容室を備え」ることに相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の構成1Bに相当する構成を有する。
(ウ) 甲1発明における「カート3内の幅中央部分には、前後方向に伸びる多数の仕切壁部材15が上下方向に列設され」、「カート3の内部は、仕切壁部材15によって、右側部分と左側部分に分割され」ることは、本件訂正発明1の構成1Cにおける「該トレイ収容室内の上下方向に列設された仕切り壁部材を挟んで、」「その一側」と「同他側」があることに相当する。
また、甲1発明における「蒸気等噴出口19により蒸気加熱が可能であり」「冷却装置5と連通されて冷気の循環が行われるようになされ」「冷却が可能である」「カート3の仕切壁部材15の左側部分」は、蒸気加熱と冷却が可能であるから、本件訂正発明1の構成1Cにおける「一側」の「冷却と蒸気加熱を行う温冷室」に相当し、甲1発明における「冷却が可能である」「カート3の仕切壁部材15の右側部分」は、本件訂正発明1の構成1Cにおける「同他側」の「冷却のみを行う冷室」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の構成1Cに相当する構成を有する。
(エ) 甲1発明における「カート3内に冷気を送入する冷却装置5」は、本件訂正発明1の構成1Dにおける「前記カートの冷室および温冷室内に冷気を供給する冷却装置」に相当し、甲1発明における「蒸気または空気を所定温度に加熱する第一ヒータH1および第二ヒータH2」は、本件訂正発明1の構成1Dにおける「前記カートの温冷室を加熱するヒータ」に相当し、甲1発明における「蒸気を発生する蒸気装置6」及び「蒸気或いは空気を供給するダクト24」は、本件訂正発明1の構成1Dにおける「前記温冷室に蒸気を供給する蒸気発生装置」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の構成1Dに相当する構成を有する。
(オ) 甲1発明における「冷却装置5および蒸気装置6により」「食品や食材を冷蔵したり、加熱したりする」「配膳車1」は、本件訂正発明1の構成1E及び1Tにおける「蒸気加熱式温冷配膳車」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の構成1E及び1Tに相当する構成を有する。
(カ) 甲1発明は、「冷却装置5」、「第一ヒータH1および第二ヒータH2」及び「蒸気装置6」を有するものである。
そして、甲1発明は、「ヒータH1・H2によって所定温度に加熱された蒸気または熱風」が「供給」されるものであるから、「所定温度に加熱」するための「蒸気装置6」の制御部及び「第一ヒータH1および第二ヒータH2」の制御部を有することは自明である。
同様に、甲1発明が、「冷却装置5」についてもその制御部を有することは自明である。
ここにおいて、甲1発明における「第一ヒータH1および第二ヒータH2」の制御部、「蒸気装置6」の制御部、及び「冷却装置5」の制御部は、それぞれ、本件訂正発明1の構成1G、1H及び1Iにおける「前記ヒータを制御するヒータ制御部」、「前記蒸気発生装置を制御する蒸気制御部」、及び「前記冷却装置を制御する冷却制御部」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の構成1G、1H及び1Iに相当する構成を有する。
(キ) 甲1発明における、「ヒータH1・H2によって所定温度に加熱された蒸気」を「供給」し、「冷却装置5および蒸気装置6により、カート3内の各トレイT上に載せられた食器内の食品や食材を冷蔵したり、加熱したりする」ことと、本件訂正発明1における((構成1F)「当該配膳車の運転設定に係る入力および運転に係る表示を行う運転表示入力部と、」(構成1L)「当該配膳車の運転情報を記憶する運転情報記憶部と、」(構成1M)「当該配膳車の運転を実行する運転演算処理部と、」「を有し、」(構成1N)「前記運転情報記憶部に記憶されている運転情報が少なくとも、前記ヒータにより加熱された水蒸気による温冷室の加熱温度および加熱時間と前記蒸気発生装置による温冷室の蒸気供給開始温度および蒸気供給出力に関する情報を含み、」)(構成1O)「これらの情報が前記運転表示入力部を介して前記運転情報記憶部に入力記憶され、該入力記憶された運転情報に基づいて前記運転演算処理部を介して前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ」ることとは、「ヒータにより加熱された水蒸気による」「加熱」により「前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ」る点で一致する。
(ク) 上記(ア)~(キ)より、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
1A カート収容室を有する配膳車本体と、該配膳車本体の前記カート収容室に収容されるカートとで構成され、
1B 該カートは御飯が入った飯茶碗や主菜、副菜等が入った食器が載置されたトレイを多段に収容するトレイ収容室を備え、
1C 該トレイ収容室内の上下方向に列設された仕切り壁部材を挟んで、その一側が冷却と蒸気加熱を行う温冷室、同他側が冷却のみ行う冷室となされており、
1D 前記配膳車本体には前記カートの冷室および温冷室内に冷気を供給する冷却装置と、前記カートの温冷室を加熱するヒータと、前記温冷室に蒸気を供給する蒸気発生装置が設けられた
1E 蒸気加熱式温冷配膳車であって、
1G 前記ヒータを制御するヒータ制御部と、
1H 前記蒸気発生装置を制御する蒸気制御部と、
1I 前記冷却装置を制御する冷却制御部と、
を有し、
1N’ 前記ヒータにより加熱された水蒸気による加熱により
1O’ 前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われる、
1U 蒸気加熱式温冷配膳車。
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>(構成1F、1J~1Mに関して)
本件訂正発明1は、(構成1F)配膳車の運転設定に係る入力および運転に係る表示を行う運転表示入力部と、(構成1J)当該配膳車内の温度を検知する温度検知手段と、(構成1K)当該配膳車の運転時間を管理する時間管理部と、(構成1L)当該配膳車の運転情報を記憶する運転情報記憶部と、(構成1M)当該配膳車の運転を実行する運転演算処理部と、を有するものであるのに対して、甲1発明は、それらの構成を有することが特定されていない点。
<相違点2>(構成1N~1Tに関して)
御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われることに関して、本件訂正発明1は、(構成1N)運転情報記憶部に記憶されている運転情報が少なくとも、前記ヒータにより加熱された水蒸気による温冷室の加熱温度および加熱時間と前記蒸気発生装置による温冷室の蒸気供給開始温度および蒸気供給出力に関する情報を含み、(構成1O)これらの情報が前記運転表示入力部を介して前記運転情報記憶部に入力記憶され、該入力記憶された運転情報に基づいて前記運転演算処理部を介して前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ、且つ、(構成1P)前記運転情報が、温冷室を冷却する保冷運転モードと温冷室を加熱する加熱運転モードと温冷室を保温する保温運転モードを含み、(構成1Q)前記保冷運転モードでは温冷室の冷却を行い、(構成1R)前記加熱運転モードでは温冷室を加熱しつつ、その途中から蒸気を供給して所定時間の仕上げを行い、(構成1S)前記保温運転モードでは温冷室の保温のみを行う点が特定され、さらに、(構成1T)前記加熱運転モードの設定を行う場合、前記運転表示入力部において、前記加熱温度、前記加熱時間、仕上温度、仕上時間、前記蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力、及び保温温度の設定を行う点が特定されているのに対して、甲1発明は、ヒータによって所定温度に加熱された蒸気を供給して加熱するものの、第一ヒータH1、第二ヒータH2、蒸気装置6及び冷却装置5をどのように運転・制御して、御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われるのかが特定されていない点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
冷温蔵装置の技術分野において、制御部が有する記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報には、操作部を介して操作者により設定された目標温度及び加熱時間に関する情報が含まれ、前記制御部は、前記記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報に基づいて制御を行うことは、上記(1)オ(エ)に周知事項4として示したように、本件特許出願前周知の事項である。
そして、上記周知事項4における、「制御部が有する記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報には、」「目標温度及び加熱時間に関する情報が含まれ」ることは、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成における(構成1N’)「運転情報記憶部に記憶されている運転情報が少なくとも、」「温冷室の加熱温度および加熱時間」を含むことに相当し、上記周知事項4における「制御部が」「操作部を介して操作者により設定された」「記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報」「に基づいて制御を行う」ことは、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成における(構成1O)「これらの情報が前記運転表示入力部を介して前記運転情報記憶部に入力記憶され、該入力記憶された運転情報に基づいて前記運転演算処理部を介して前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ」ることに相当する。
また、冷温蔵装置の技術分野において、記憶部(メモリ)に記憶する運転に関する情報には、冷温蔵室を保冷する保冷運転を行う保冷モード、冷温蔵室を加熱する加熱運転を行う加熱モード、冷温蔵室を保温する保温モードが設定されることも、上記(1)オ(オ)に周知事項5として示したように、本件特許出願前周知の事項である。
そして、上記周知事項5における、「冷温蔵室を保冷する保冷運転を行う保冷モード」、「冷温蔵室を加熱する加熱運転を行う加熱モード」及び「冷温蔵室を保温する保温モード」は、それぞれ、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成における(構成1P)「温冷室を冷却する保冷運転モード」、「温冷室を加熱する加熱運転モード」及び「温冷室を保温する保温運転モード」に相当することから、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成のうち、(構成1P、1Q、1R’、1S)「前記運転情報が、温冷室を冷却する保冷運転モードと温冷室を加熱する加熱運転モードと温冷室を保温する保温運転モードを含み、前記保冷運転モードでは温冷室の冷却を行い、前記加熱運転モードでは温冷室を加熱し」、「前記保温運転モードでは温冷室の保温のみを行う」ことは、本件特許出願前周知の事項である。
してみると、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成のうち、(構成1N’、1O、1P、1Q、1R’、1S)「運転情報記憶部に記憶されている運転情報が少なくとも、」「温冷室の加熱温度および加熱時間」「に関する情報を含み、これらの情報が前記運転表示入力部を介して前記運転情報記憶部に入力記憶され、該入力記憶された運転情報に基づいて前記運転演算処理部を介して前記御飯、主菜および副菜等の再加熱が行われ、且つ、前記運転情報が、温冷室を冷却する保冷運転モードと温冷室を加熱する加熱運転モードと温冷室を保温する保温運転モードを含み、前記保冷運転モードでは温冷室の冷却を行い、前記加熱運転モードでは温冷室を加熱し」「前記保温運転モードでは温冷室の保温のみを行う」ことは、本件特許出願前周知の事項である。
さらに、甲3には、上記(1)イ(イ)に示した甲3記載事項が記載されており、先ず加熱だけを所定時間行って庫内温度が約70℃になった時点で、加熱を更に継続しつつ、蒸気を段階的に増加させながら供給し、庫内温度を最終的に100~130度範囲の最高温度域M1に達するように制御するように構成することが記載されている。
そして、ヒータによって加熱された蒸気または熱風を供給して加熱する構成を備えた甲1発明において、カート3内の各トレイT上に載せられた食器内の食品や食材を加熱する際に、蒸気を発生する蒸気装置6を用いるにあたって、甲3記載事項を適用し、先ず加熱だけを所定時間行って庫内温度が約70℃になった時点で、加熱を更に継続しつつ、蒸気を段階的に増加させながら供給し、庫内温度を最終的に100~130度範囲の最高温度域M1に達するように制御するように構成することによって、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成のうち、(構成1R)「加熱運転モードでは温冷室を加熱しつつ、その途中から蒸気を供給して所定時間の仕上げを行」うように構成するとともに、その場合において、(構成1N)ヒータにより加熱された水蒸気による温冷室の加熱温度および加熱時間、蒸気供給開始温度および蒸気供給出力に関する情報を、運転に関する情報として、記憶部(メモリ)に記憶させておくことは、本件特許出願前周知の事項を参酌することによって、当業者が容易になし得る程度のことである。
しかしながら、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成のうち、加熱運転モードの設定を行う場合、運転表示入力部において、加熱中蒸気出力、及び、仕上中蒸気出力の設定を行う点については、甲2~甲5のいずれにも記載されておらず、そのことが本件特許出願時の当該技術分野における技術常識であるともいえないことから、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成が、甲1発明、甲3記載事項及び本件特許出願前周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
そして、本件訂正発明1は、上記相違点2に係る構成を備えることによって、温冷室を加熱しつつその途中から蒸気を供給して所定時間の仕上げを行う加熱運転モードを行う場合に、蒸気の供給を開始するタイミングやその供給量を設定できるようにし、食品の種類や給食のタイミングに応じて仕上がりを良好な保湿状態とすることを可能とするという、当業者が予測することのできなかった顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明、甲3記載事項及び本件特許出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和7年12月9日に意見書とともに下記甲6及び甲7を提出した。
甲6:国際公開第2020/017453号
甲7:特開2022-47726号公報
(ア) 申立人の主張の概要
そして、上記意見書において、概ね以下のとおり主張する。
甲2には、タッチパネル81に表示されるスイッチを利用して、目標保冷温度、目標加熱温度、加熱完了時刻、保温運転における温度等を設定できる点が開示されており、甲4には、配膳時間、目標温度を設定できる点が開示されている。さらに甲7には、調理温度や調理時間、保温時間をタッチパネルなどで設定できる点が開示されている。
従って、加熱温度、加熱時間、仕上温度、仕上時間、保温温度を設定できることは、甲2、甲4及び甲7に記載された事項、並びに、当業者の技術常識に基づき、当業者が容易に想到することができる。
また、甲3には、加熱運転中に供給される蒸気量を適切に制御することで、食感や味を損なうことを抑制することができる点が開示されている。即ち、食感や味を向上させるために、蒸気出力に関するパラメータ(蒸気供給開始温度、加熟中蒸気出力、仕上中蒸気出力)を適切に設定することは、技術常識である。そして、配膳車によって加熱される食品は様々であり、配膳車によって加熱される食品毎に、当該食品に適して蒸気出力に関するパラメータは異なる。このため、蒸気を利用して様々な食品を加熱させる配膳車において、蒸気出力に関するパラメータである蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力を設定できるようにすることは、当業者であれば容易に想到することができる。
また、配膳車によって加熱される食品は様々であるにも関わらず、蒸気出力に関するパラメータを、工場出荷時に設定された状態から変更できない状態にすることは、当業者であれば考えられないことである。この点からも、蒸気出力に関するパラメータである蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力を設定できるようにすることは、当業者であれば容易に想到することができる。
また、甲6には、ユーザが過熱水蒸気の供給量を設定することができる点が開示されている。従って、ユーザが、蒸気出力に関するパラメータである加熱中蒸気出力、仕上中蒸気出力を設定できるようにする点は技術常識でもある。そして、甲3には、加熱運転中における庫内温度が所定温度(約70℃)になった時点で蒸気出力を開始させる点が開示されている。即ち、甲3では、蒸気出力を開始させる温度が設定されている。これらの点からも、蒸気出力に関するパラメータである蒸気供給開始温度、加熱中蒸気出カ、仕上中蒸気出力を設定できるようにすることは、配膳車の用途に関する甲3及び甲6に記載された事項、並びに、当業者の技術常識を適用することで、当業者であれば容易に想到することができる。
(イ) 申立人の主張についての検討
申立人の主張について検討する。
甲2及び甲4には、蒸気を供給する点については何ら記載されていない。
また、甲1及び甲3には、蒸気を供給する点についての記載はあるものの、蒸気に関するパラメータとして、加熱中蒸気出カ及び仕上中蒸気出力が存在する点についての記載は存在しない。
そして、申立人が主張するように、蒸気出力に関するパラメータを変更可能とすること自体は、技術常識ではあるものの、そのパラメータに、加熱中蒸気出カ及び仕上中蒸気出力が含まれることは、それらについての記載が全く存在しない甲1及び甲3に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められない。
してみると、上記意見書における申立人の主張を参照しても、本件訂正発明1が、甲1発明、甲3記載事項及び本件特許出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものと判断するに足る根拠は見いだせない。
エ 小括
以上のことから、本件訂正発明1は、甲1発明、甲3記載事項、及び、本件特許出願前周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 本件訂正発明2~5について
本件訂正発明2~5は、いずれも、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正発明2~5は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そうすると上記(2)のとおり、本件訂正発明1が、甲1発明、甲3記載事項、及び、本件特許出願前周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2~5も甲1発明、甲3記載事項、及び、本件特許出願前周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 取消理由通知(決定の予告)のまとめ
以上のことから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
2 令和7年3月26日付け取消理由通知について
令和7年9月3日付け取消理由通知(決定の予告)は、実質的に令和7年3月26日付け取消理由通知において通知した取消理由をすべて含むものであり、その判断は、上記1(2)エ及び1(3)に記載したとおりである。
してみると、令和7年3月26日付け取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
3 申立理由について
(1) 本件訂正発明1について
本件特許査定時の請求項1に係る発明(本件特許発明1)に対する申立理由は、上記第4の1(1)アに記載したとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明と、甲3に記載された事項と、甲2、甲4及び甲5に基づいて認定される周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、申立理由における「甲2、甲4及び甲5に基づいて認定される周知事項」は、上記「1 令和7年7月3日付け取消理由通知(決定の予告)について」における、上記「1(1)オ 本件特許出願前周知の事項」において認定した周知事項1~4に相当することから、本件特許発明1に対する申立理由は、取消理由通知(決定の予告)における本件訂正発明1に対する取消理由と同じものである。
そして、その判断は、上記1(2)エに記載したとおりであるから、申立理由によっては、本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 本件訂正発明2~5について
本件訂正発明2~5は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものであるから、本件訂正発明2~5についての判断は、上記1(3)に記載したとおりであり、申立理由によっては、本件訂正発明2~5に係る特許を取り消すことはできない。
4 取消理由及び申立理由についてのまとめ
以上のことから、当審合議体が通知した取消理由及び申立理由によっては、本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701142