審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2022-700062

複合ガス吸着材およびそれを用いた吸着フィルター並びに複合ガス吸着材の製造方法

審判番号
2022-700062
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-551814
登録番号
6910955
請求日
2022年01月25日
審決日
2022年06月07日
公報発行日
2022年07月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社クラレ
  • 【権利者代理人】小谷 悦司
  • 【権利者代理人】小谷 昌崇
  • 【権利者代理人】宇佐美 綾
  • 【異議申立人】後藤 奈美
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 原 賢一
  • 審判官 山田 倍司
分類
P1651.121-Y (B01J) / P1651.537-Y (B01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6910955号発明「複合ガス吸着材およびそれを用いた吸着フィルター並びに複合ガス吸着材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6910955号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6910955号の請求項1~15に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)11月2日(優先権主張 平成27年11月20日 日本国)を国際出願日とする出願であり、令和3年7月9日にその特許権の設定登録がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項(請求項1~15)に係る特許について、令和4年1月25日に特許異議申立人後藤奈美(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 請求項1~15に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 多孔質材料に、少なくとも1種のアミン類と少なくとも1種の酸類とを担持させた複合ガス吸着材であって、 前記アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.1~100μmであり、該アミン類の粒子が前記多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持されており、 前記アミン類の担持量が合計で多孔質材料に対し0.06~0.5倍の量(質量)である、アルデヒド類、アミン類および炭化水素類に対して吸着性能を有する複合ガス吸着材。 【請求項2】 前記アミン類が、塩基性度定数pKbが9以上の芳香族アミノスルホン酸または芳香族アミノ酸の少なくともいずれかである、請求項1記載の複合ガス吸着材。 【請求項3】 前記芳香族アミノスルホン酸が、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸及び4-アミノベンゼンスルホン酸から選択される少なくとも一つである、請求項2に記載の複合ガス吸着材。 【請求項4】 前記芳香族アミノ酸が、アントラニル酸、3-アミノ安息香酸及び4-アミノ安息香酸から選択される少なくとも一つである、請求項2に記載の複合ガス吸着材。 【請求項5】 前記アミン類の水に対する溶解度が1g/30mL(20℃)未満である、請求項1~4のいずれかに記載の複合ガス吸着材。 【請求項6】 前記アミン類より溶解度の高いアミン類をさらに少なくとも1種含み、該溶解度の高いアミン類の分子または粒子が前記多孔質材料の直径50nm未満のメソ孔および直径2nm未満のマイクロ孔に担持されており、前記アミン類と溶解度の高いアミン類との担持量が合計で多孔質材料に対し0.06~0.5倍の量(質量)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合ガス吸着材。 【請求項7】 前記溶解度の高いアミン類が、水に対して溶解度が1g/30ml(20℃)以上であり、塩基性度定数pKbが9以上の尿素結合を有する環状尿素化合物である請求項6記載の複合ガス吸着材。 【請求項8】 前記環状尿素化合物が、2-イミダゾリジノンである、請求項7に記載の複合ガス吸着材。 【請求項9】 前記多孔質材料が、BET比表面積が700m2/g以上である活性炭である、請求項1~8のいずれかに記載の複合ガス吸着材。 【請求項10】 前記酸類が無機酸類である、請求項1~9のいずれかに記載の複合ガス吸着材。 【請求項11】 請求項1~10のいずれかに記載の複合ガス吸着材からなる吸着フィルター。 【請求項12】 請求項1~10のいずれかに記載の複合ガス吸着材の製造方法であって、 粉末状のアミン類を水に分散し、サスペンション液を調整する工程、酸類及びバインダーを水に溶解し、水溶液を調整する工程、並びに 前記サスペンション液および水溶液を多孔質材料に散布した後、水分を蒸発させ、アミン類粉末を多孔質材料に前記バインダーによって担持させる工程を含む、複合ガス吸着材の製造方法。 【請求項13】 請求項1~10のいずれかに記載の複合ガス吸着材の製造方法であって、 粉末状のアミン類を多孔質材料と混合する工程、 得られた混合物に、バインダーを溶解または分散した水溶液と酸類を散布した後、水分を蒸発させ、アミン類粉末を多孔質材料に前記バインダーによって担持させる工程を含む、複合ガス吸着材の製造方法。 【請求項14】 前記バインダーが水溶性バインダーである請求項12または13に記載の複合ガス吸着材の製造方法。 【請求項15】 前記水溶性バインダーがカルボキシメチルセルロースである請求項14に記載の複合ガス吸着材の製造方法。」 第3 特許異議の申立理由 1 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如) 本件発明1~15は、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第1~12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由1」という。)。 記 甲第1号証:特開2014-138924号公報 甲第2号証:福本和広、博士(工学)論文 化学反応型吸着材による室内環境中臭気物質の吸着除去、名古屋工業大学学術機関リポジトリ、2013年 甲第3号証:西野博、特集・環境浄化と活性炭 添着活性炭による悪臭成分の除去、環境技術、Vol.19 No.10、1990年、643~645頁 甲第4号証:林勝己、特集:有機溶剤排ガスの処理技術 活性炭による有機溶剤含有ガスの処理、環境技術、Vol.6 No.2、1977年、119~124頁 甲第5号証:特開平2-115020号公報 甲第6号証:特開2011-143359号公報 甲第7号証:特開2003-299950号公報 甲第8号証:特開2003-53181号公報 甲第9号証:特開2015-150526号公報 甲第10号証:特開2001-232189号公報 甲第11号証:特開2001-524号公報 甲第12号証:特開2013-188715号公報 (以下、甲各号証を単に「甲1」などという。) 2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反) 本件特許1、6は、特許請求の範囲の請求項1、6の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由2」という。)。 記 「多孔質材料に、少なくとも1種のアミン類と少なくとも1種の酸類とを担持させた複合ガス吸着材であって、」とされる本件発明1は、アミン類全般を含むものであるが、発明の詳細な説明に記載のアミン類は「4-アミノ安息香酸」、「アントラニル酸」、「4-アミノベンゼンスルホン酸」、「2-イミダゾリジノン」及び「アニリン」の5種類であり、それ以外のアミン類については具体的に記載されていない。そして、当該技術分野においては、活性炭(多孔質材料)に特定のアミン類が添着された場合にはアセトアルデヒドに対する反応性を示さないことが知られており(必要であれば、甲2の18頁17~20行の「α-アミノ酸、および、ベンゼン環に電子供与性置換基(-OCH3、-OH)をもつ芳香族第一アミンは、酸性塩とした場合にはアセトアルデヒドに対する反応性を示さない」等の記載を参照)、アミン類全般で複合ガスの除去効果が得られるわけではない。 そうすると、本件発明1に含まれるアミン類全般のうち、発明の詳細な説明においてその効果が実証されている上記5種類のアミン類以外のアミン類についても所期の効果が得られることまでは実証されていないというほかなく、本件発明1は 発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 この点は、「前記アミン類より溶解度の高いアミン類をさらに少なくとも1種含み」とされる本件発明6についても同様である。 よって、本件発明1及び本件発明6は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 第4 当審の判断 1 申立理由1について (1)甲1~甲12に記載の事項 ア 甲1に記載の事項 (ア)「【請求項1】 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを添着したヤシガラ活性炭(A)を含有し、該ヤシガラ活性炭に対する2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの添着量が7質量%以上30質量%以下であるガス吸着剤。 ・・・ 【請求項5】 さらに酸を添着したヤシガラ活性炭(B)を含有する、請求項1~4のいずれかに記載のガス吸着剤。 ・・・ 【請求項8】 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを添着したヤシガラ活性炭(A)と、酸を添着したヤシガラ活性炭(B)の質量比(A)/(B)が40/60~99/1である、請求項5~7のいずれかに記載のガス吸着剤。」 (イ)「【0005】 ガス吸着剤は、フィルターへの加工性の観点から、その硬度が高いことが求められる。すなわち、加工過程において、ガス吸着剤が崩れないような特性が求められる。 また、活性炭などを用いた吸着剤は、空気中で長期に保存した場合、様々な物質を吸着するため、吸着効率が徐々に低下するという問題があった。一方、特許文献1及び2に記載されているようなアルコールアミン化合物を用いることによって、アルデヒドの吸着量や吸着速度はある程度向上しているものの、酸素や二酸化炭素等の酸化性ガスとの接触による酸化による失活のためか、空気中で長期に保存した場合には、同様に悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率が低下し、その吸着効率は十分に満足できるものではない。そのため、空気中で長期保存した後においても低級アルデヒドの吸着効率にも優れる吸着剤の開発が望まれている。 【0006】 本発明は、高い硬度を有し、悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れ、空気中での保存後であっても吸着効率に優れるガス吸着剤、それを用いる低級アルデヒドの吸着方法、及び当該吸着剤を備えるガス吸着フィルターを提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れ、空気中での保存後であっても吸着効率に優れるガス吸着剤として、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを特定量添着したヤシガラ活性炭を用いることにより、前記課題を達成しうることを見出した。 ・・・ 【0010】 本発明の吸着剤が、悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れ、空気中で保存した後であっても吸着効率に優れ、さらに硬度にも優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。 本発明の吸着剤は、ヤシガラ活性炭に特定量の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが添着されている。 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールは低分子量でアミノ基密度が高いため、アミノ基の求核性により、低級アルデヒド等の悪臭ガスの吸着効率を高めることができると考えられる。 一方、ヤシガラ活性炭は硬度に優れるため、長時間にわたり空孔を維持すると考えられるが、そのような活性炭を用いた場合、アミン等は酸化性ガスとの接触により、酸化して長期保存時には吸着効率が低下しやすい。本発明においては、アミノ基のα位が4級炭素であることから酸化分解を受けにくいと考えられる2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを用いることによって、酸化に対する安定性と、低級アルデヒドの吸着効率を両立することができることから、本発明の吸着剤は、低級アルデヒドの吸着効率に優れ、空気中で保存した後の吸着効率にも優れ、さらに硬度にも優れると考えられる。 なお、本明細書において「悪臭ガス」とは、例えば、低級アルデヒド及び脂肪酸の少なくとも1種を含む気体を意味する。」 (ウ)「【0018】 [活性炭(A)及びその製造] 本発明の吸着剤の製造方法は、特に制限されないが、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが均一に添着された吸着剤を容易に得る観点から、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを含有する水性溶液をヤシガラ活性炭に吸収させた後、乾燥させる工程を有する方法で得ることが好ましい。このようにして、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを含有する水性溶液をあらかじめ調製することで、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを均一に添着したヤシガラ活性炭を効率よく得ることができる。」 (エ)「【実施例】 【0040】 以下の実施例、比較例において、「%」は特記しない限り「質量%」である。 【0041】 [吸着剤の製造] 実施例1 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(以下「AMP」ともいう)2.0g(22.4mmol)をイオン交換水10.0gに溶解させて、水溶液を調製した。20.0gの高賦活粒状ヤシガラ活性炭(フタムラ化学製、CG350SZ、平均粒径0.49mm、比表面積1500m2/g、pH7)に、活性炭を流動させながら、この水溶液を徐々に添加して吸収させた。この活性炭を48kPaの減圧下、80℃で16時間乾燥させ、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが活性炭に対する含有量(以下「外比」ともいう。)10.0%で添着された活性炭からなる吸着剤(1)を調整した。」 イ 甲2に記載の事項 (ア)「Figure 2-5に、試料のアセトアルデヒド吸着等温線(25℃)を示す。Figure 2-5から明らかなように、比較の無添着活性炭を基準に、アセトアルデヒド吸着性能が向上したグループと低下したグループとに分類された。吸着性能が向上したグループの薬剤はアニリンと、4-アミノ安息香酸および4-クロロアニリンで、ベンゼン環に電子吸引性置換基(-COOH、-Cl)をもつ芳香族第一アミンであつた。 一方、無添着活性炭に比べて、吸着性能が低下したグループの薬剤はグリシンと、4-アニシジンおよび4-アミノフェノールであった。これより、α-アミノ酸、および、ベンゼン環に電子供与性置換基(-OCH3、-OH)をもつ芳香族第一アミンは、酸性塩とした場合にはアセトアルデヒドに対する反応性を示さないことがわかつた。また、このような反応性をもたない薬剤の活性炭への含浸は、その細孔を閉塞し、種々のガスに対する物理吸着能を著しく低下させる原因となることが推察された。」(18頁12~末行) (イ)「Figure 2-6およびFigure 2-7から明らかなように、アミンを酸性塩としたときのアセトアルデヒドに対する反応性は、そのpKbと関係があり、pKbが9.3以上のとき一気に高まることがわかった。したがって、酸の存在下で、どのアミンがアセトアルデヒドに対して反応性を示すかは、アミンのpKb値を化学便覧、文献などで調べることによって容易に判断することが可能である。なお、本実験ではアミンlmol当たりのアセトアルデヒド吸着量(mol)を表すFigure 2-7から、4-アミノ安息香酸(pKb=11.59)、4-クロロアニリン(pKb=10.01)が最も高いアセトアルデヒド反応性を示すことがわかった。」(21頁下から12行~下から5行) ウ 甲3に記載の事項 (ア)「しかし汎用の活性炭では悪臭成分の代表であるアンモニア,アミン等の塩基性成分,硫化水素,メルカプタン等酸性成分あるいは硫化メチル,アルデヒド等の中性成分に対して吸着性能が些か低調であり,これ等を含む悪臭処理には大量の活性炭を必要とする.筆者らはこれ等の悪臭成分の吸着性能を改めるために種々の検討を繰り返し,活性炭に薬品添着させた脱臭炭(炭素複合吸着剤)を開発した.」(643頁右欄9~16行) (イ)「(1) アンモニア,アミン類等の悪臭除去 アンモニア,アミン類の除去には活性炭に酸を添着すれば著しく除去効果を高められる.添着される酸としては燐酸,硫酸等の無機酸が主に用いられているが,その他リンゴ酸,コハク酸等の有機酸も用いられている8).活性炭に吸着されたアンモニア,アミン類は添着酸と反応し,活性炭の細孔内に吸蔵保持される.」(644頁左欄8~14行) エ 甲4に記載の事項 (ア)「シリカアルミナ系吸着剤は極性吸着剤または親水性吸着剤と呼ばれるように,水のような極性分子を選択的に吸着する性質があるが,活性炭は非極性吸着剤または疎水性吸着剤と呼ばれ,非極性物質を選択的に吸着する.」(119頁右欄3~7行) (イ)「活性炭およびシリカゲルに対する低沸点炭化水素の等温吸着線を図-2に示したが,活性炭はシリカゲルにくらべて,低い平衡圧において等温線が急上昇しており,炭化水素濃度の低い場合でもよく吸着することがわかる.」(119頁右欄14~18行) オ 甲5に記載の事項 (ア)「2.特許請求の範囲 (1)芳香族アミノ酸、および芳香族アミノ酸の塩類の少なくとも一種を有効成分とする低級アルデヒド類の除去剤。 (2)芳香族アミノ酸、および芳香族アミノ酸の塩類は、O-、m-またはp-アミノ安息香酸、p-アミノサリチル酸及びその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる特許請求の範囲第1項記載の低級アルデヒド類の除去剤。 (3)多孔性担体に芳香族アミノ酸、および芳香族アミノ酸の塩類の少なくとも一種を有効成分として担持してなる低級アルデヒド類の除去剤。 (4)多孔性担体は、セピオライト、パリゴルスカイト、活性炭、ゼオライトから選ばれる少なくとも1種からなる特許請求の範囲第3項記載の低級アルデヒド類の除去剤。」(1頁左下欄4~19行) (イ)「[発明が解決しようとする課題] 本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、低級アルデヒド類に対して迅速かつ優れた除去効果を有し、無臭でしかも活性炭のように物理吸着作用により比較的少量で飽和吸着状態に達する物でなく、しかも人体に悪影響を与えない低級アルデヒド類の除去剤を提供することを目的とする。」(2頁左下欄19行~右下欄5行) カ 甲6に記載の事項 (ア)「【請求項1】 活性炭に芳香族アミノスルホン酸と有機酸とを添着させた複合ガス吸着材であって、 該活性炭のBET比表面積が、700~1300m2/gであり、 該有機酸が、水溶性かつ25℃で固体の炭素数が2~6の有機酸であり、そして 該活性炭100質量部に対して、該芳香族アミノスルホン酸が2~12質量部の割合で添着し、かつ該芳香族アミノスルホン酸と該有機酸とが、合計で3~20質量部の割合で添着している、複合ガス吸着材。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は、アルデヒドおよびブタンを含有する複合ガスの吸着性能に優れた複合ガス吸着材を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、活性炭のメソ孔およびミクロ孔のうち、ブタンを吸着する細孔であるミクロ孔を薬剤にて閉塞させない程度に、メソ孔領域に均一に芳香族アミノスルホン酸と特定の有機酸とを添着させることによって、アルデヒドおよびブタンを含有する複合ガスを効率よく吸着し得る複合ガス吸着材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」 キ 甲7に記載の事項 (ア)「【請求項1】pHが9.0以下の活性炭に、アミノベンゼンスルホン酸が添着されていることを特徴とする吸着剤。」 (イ)「【0013】この原因究明結果に基づき検討した結果、活性炭に灰分として含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属を除去して、pHを9.0以下にした活性炭にアミノベンゼンスルホン酸を添着した吸着剤では、添着したアミノベンゼンスルホン酸の低級脂肪族アルデヒドとの反応性が低下しないことを見出した。つまり、pHを9.0以下にした活性炭にアミノベンゼンスルホン酸を添着すれば、安定的に高い低級脂肪族アルデヒド除去性能を有する吸着剤を提供することができる。」 ク 甲8に記載の事項 (ア)「【請求項1】 多孔質体に、炭酸アンモニウムと炭酸水素アンモニウムの少なくともどちらか一方の塩基性物質とアミノベンゼンスルホン酸との混合物が、塩基性物質のアミノベンゼンスルホン酸に対する混合モル比0.2~2で添着されてなることを特徴とする吸着剤。」 (イ)「【0010】ところが、前述したようにアミノベンゼンスルホン酸は水に対して難溶性であり、例えば、p-アミノベンゼンスルホン酸の20℃での溶解度は水100gに対して1g程度と小さい。また、アルコール、エーテル、ベンゼンなどに対しても難溶性であり、アミノベンゼンスルホン酸の添着溶液として十分な濃度が得られる適当な溶媒が見当たらず、アミノベンゼンスルホン酸のみを溶媒に加えて添着溶液を調整し、前記した方法で多孔質体に添着しても、短時間の処理ではアミノベンゼンスルホン酸の添着量が少なく、低級脂肪族アルデヒド除去性能の高い実用的な吸着剤は得られない。 【0011】そこで、本発明者は鋭意検討した結果、アミノベンゼンスルホン酸添着溶液に炭酸アンモニウムと炭酸水素アンモニウムの少なくともどちらか一方の塩基性物質を加えて多孔質体に添着することにより、低級脂肪族アルデヒドとの反応に有効なアミノベンゼンスルホン酸の添着量を多く添着できることを見出した。つまり、アミノベンゼンスルホン酸は塩基性水溶液に溶解することから、アミノベンゼンスルホン酸添着溶液に炭酸アンモニウムと炭酸水素アンモニウムの少なくともどちらか一方の塩基性物質を加えることにより、アミノベンゼンスルホン酸が高濃度で溶解した添着溶液を調整することができ、この添着溶液を用いて前記したような浸漬法や噴霧法で多孔質体に添着すれば、アミノベンゼンスルホン酸の添着量が多く、低級脂肪族アルデヒド除去性能の高い吸着剤が得られるのである。」 ケ 甲9に記載の事項 (ア)「【請求項1】 以下の(a)及び(b): (a) 式(1): NH2-A-NH-B-OH (1) (式中、A及びBは、同一又は異なって、それぞれ低級アルキレン基を示す。)で表されるアミノアルコール、及び (b) スルファミン酸又はその塩、 を含有することを特徴とする、臭気物質の吸着剤。 【請求項2】 式(1)で表されるアミノアルコールが、2-(2-アミノエチル)アミノエタノール及びN-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の吸着剤。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、上記吸着剤ではアルデヒド系臭気物質に対する吸着性能が十分ではなく、消費者による消臭に対するニーズが高まっている近年では、さらに優れた吸着性能が要求されている。 【0005】 よって、本発明は、アルデヒド系臭気物質の吸着性能に優れた吸着剤を提供することを目的とする。」 コ 甲10に記載の事項 (ア)「【請求項1】 分子中に尿素結合を有する尿素化合物並びに無機酸及び/又は有機酸を多孔質担体に担持せしめてなる多孔質吸着剤。 【請求項2】 該尿素化合物が環状尿素化合物である請求項1記載の多孔質吸着剤。 【請求項3】 該環状尿素化合物が2-イミダゾリジノン又はプソイド尿酸である請求項2記載の多孔質吸着剤。」 (イ)「【0006】・・・本発明の目的は、低級アルデヒド類を常温で効率よく長時間に亘り除去することができ、除去速度、耐熱性、安全性に優れた吸着剤を提供することにある。」 サ 甲11に記載の事項 (ア)「【請求項1】環状飽和第二アミンと、不揮発性酸、尿素およびチオ尿素から選ばれた少なくとも1種とを多孔質担体に担持せしめてなる低級アルデヒド類の吸着剤。 【請求項2】多孔質担体が活性炭である請求項1記載の低級アルデヒド類の吸着剤。」 (イ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、低級アルデヒド類を効率よく長時間に亙り吸着除去し、優れた吸着能を示す吸着剤を提供することを目的とする。」 シ 甲12に記載の事項 (ア)「【請求項1】 磁性体粒子とセシウム吸着性化合物がバインダーとともに結着されている磁性吸着剤において、磁性体粒子がパーマロイであることを特徴とする磁性吸着剤。」 (イ)「【0013】 本発明に用いられるバインダーの種類に特に制限はなく、造粒、成形分野において知られているバインダーを用いることができる。具体的には例えば・・・デンプン、カゼイン、ゼラチン、キチン類、キトサン類等の天然有機系水溶性バインダー・・・等が挙げられ、これらのうちの1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用することもできる。」 (2)甲1に記載の発明 甲1の上記(1)ア(エ)における実施例1の記載によれば、甲1には、実施例1に係る吸着剤として、「2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが活性炭に対する含有量(以下「外比」ともいう。)10.0%で添着された(ヤシガラ)活性炭からなる吸着剤」が記載されているところ、同(イ)の【0006】、【0007】及び【0010】等には、甲1に記載される、ヤシガラ活性炭に特定量の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが添着された吸着剤は、悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れるものであることが記載されている。 そうすると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールがヤシガラ活性炭に対する含有量(「外比」)10.0%で添着された活性炭からなる、悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れた吸着剤。」 (3)本件発明1について ア 甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール」は、アミンの一種であるから、本件発明1の「少なくとも1種のアミン類」に相当し、甲1発明の「ヤシガラ活性炭」は、本件発明1の「多孔質材料」に相当し、甲1発明の「低級アルデヒド」は、本件発明1の「アルデヒド類」に相当する。 そして、甲1発明の「2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを活性炭に」「添着されたヤシガラ活性炭からなる」「吸着剤」は、本件発明1の「多孔質材料に、少なくとも1種のアミン類と少なくとも1種の酸類とを担持させた複合ガス吸着材」と、「多孔質材料に、少なくとも1種のアミン類を担持させたガス吸着材」の限りにおいて一致し、甲1発明の「悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れた吸着剤」は、本件発明1の「アルデヒド類、アミン類および炭化水素類に対して吸着性能を有する複合ガス吸着材」と、「アルデヒド類に対して吸着性能を有するガス吸着材」の限りにおいて一致する。 また、甲1発明における2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの活性炭に対する含有量(「外比」)である「10.0%」は、本件発明1における「アミン類の担持量が合計で多孔質材料に対し0.06~0.5倍の量(質量)」に含まれる量である。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、「多孔質材料に、少なくとも1種のアミン類を担持させた吸着材であって、前記アミン類の担持量が合計で多孔質材料に対し0.06~0.5倍の量(質量)である、アルデヒド類に対して吸着性能を有するガス吸着材。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> ガス吸着材について、本件発明1では、少なくとも1種のアミン類に加え、少なくとも1種の酸類を担持させているのに対し、甲1発明では、少なくとも1種の酸類を担持させているのか明らかでない点。 <相違点2> ガス吸着材について、本件発明1では、アルデヒド類、アミン類および炭化水素類に対して吸着性能を有する複合ガス吸着材であるのに対し、本件発明1では、悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れた吸着剤であるものの、アミン類および炭化水素類に対して吸着性能を有する複合ガス吸着材であるのか明らかでない点。 <相違点3> アミン類について、本件発明1では、アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.1~100μmであり、該アミン類の粒子が多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持されているのに対し、甲1発明では、この様な構成を有しているのか明らかでない点。 イ 判断 事案に鑑み、はじめに上記相違点3について検討をする。 (ア)まず、上記相違点3に係る本件発明1の構成についてみると、その技術的意義は、本件明細書の記載からみて以下のとおりであると解される。 臭気成分であるアルデヒド類、アミン類、炭化水素などが存在する複合ガスを除去するために一般的に使用される活性炭は、吸着する臭気成分の選択性を有しているため、極性の比較的高いアルデヒド、アンモニアなどを吸着しにくいという問題があるところ(【0002】)、従来の対処策では、アルデヒド類及びアンモニアを除去することを目的とし複数の臭気成分を除去しうる吸着材として、活性炭にアミノベンゼンスルホン酸を添着させた吸着材、活性炭に2-イミダゾリジノンを添着した吸着材、さらには活性炭にアミノ安息香酸を添着した吸着材等が報告されているが、いずれも添着物質を完全に溶解させた水溶液を担持体に添着しているため、水分を蒸発させる工程において活性炭のマイクロ孔、メソ孔が析出した添着物質の結晶よって閉塞する場合があり、そのため、吸着物質がマイクロ孔に多く存在する吸着ポイントまで到達することができなくなり、活性炭本来の吸着性能を阻害し、結果的に炭化水素類だけでなく、アルデヒド類、アミン類の吸着性能が低いものとなるという問題があった(【0003】)。 そして、この問題を解決するためにされたのが本件発明であり、具体的には、本件発明1のような「アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.1~100μmであり、該アミン類の粒子が前記多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持され」るという構成をとることにより、多孔質材料のメソ孔およびマイクロ孔をアミン類の結晶の析出によって閉塞することがなく、多孔質材料の本来の吸着性能を阻害せず、結果的に炭化水素類だけでなく、アルデヒド類、アミン類に対しても吸着性能が高い複合ガス吸着材を提供することができたものである(【0014】)。 (イ)一方、甲1発明は、甲1の上記(1)ア(イ)の記載によれば、「高い硬度を有し、悪臭ガス、特に低級アルデヒドの吸着効率に優れ、空気中での保存後であっても吸着効率に優れるガス吸着剤、それを用いる低級アルデヒドの吸着方法、及び当該吸着剤を備えるガス吸着フィルターを提供することを課題とする」(【0006】)ものではあるが、この課題、特に、空気中での保存後であっても吸着効率に優れるガス吸着剤を提供するとの点を解決するために、甲1発明では、添着物質として、アミノ基のα位が4級炭素であることから酸化分解を受けにくいと考えられる2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを用いることによって、酸化に対する安定性と、低級アルデヒドの吸着効率を両立することができるようにしたものである(【0010】)。 そして、この2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールは、甲1の同(ウ)の「2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(以下「AMP」ともいう)2.0g(22.4mmol)をイオン交換水10.0gに溶解させて、水溶液を調製した。」との記載によれば、水に溶解するものであり、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが溶解した水溶液をヤシガラ活性炭に添着したものは、上記(ア)で述べた、本件発明1に対する従来の技術に相当するものであって、「添着物質を完全に溶解させた水溶液を担持体に添着しているため、水分を蒸発させる工程において活性炭のマイクロ孔、メソ孔が析出した添着物質の結晶よって閉塞する場合が」あるものというべきである。 そうである以上、甲1発明の、ヤシガラ活性炭に添着された2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールは、「粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.1~100μmであり、粒子が活性炭の直径50nm以上のマクロ孔および前記活性炭の外表面に担持されている」ものではないし、甲1発明が、上記(ア)で述べたような、多孔質材料のメソ孔およびマイクロ孔をアミン類の結晶の析出によって閉塞することに配慮したものではないことは明らかであるから、甲1発明において、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを、そのような配慮の下、他の添着物質に変更する動機付けも存しないというべきである。 (ウ)上記(イ)のとおり、甲1発明には、上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用する動機付けがない上、そもそも甲1発明において、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールは、酸化に対する安定性と、低級アルデヒドの吸着効率を両立する上で必須の構成であるのであるから、これを、上記相違点3に係る本件発明1の構成を有するようなアミン類に置換することは予定されていないと解するのが合理的であるから、甲2~甲12の記載事項にかかわらず、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者にとり容易に想到し得ることではない。もとより、上記(1)イ~シの摘示によれば、甲2~甲12に、上記相違点3に係る本件発明1の構成については記載されていない。 ウ 小括 以上のとおり、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1~12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明2~15について 本件発明2~10は、複合ガス吸着材の発明であり、本件発明11は、吸着フィルターの発明であり、本件発明12~15は、複合ガス吸着材の製造方法の発明であるが、これらの発明は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2~15は、甲1発明及び甲1~甲12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由1に関するまとめ 以上のとおり、本件特許1~15は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1には、理由がない。 2 申立理由2について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)サポート要件に関する判断 ア 本件発明1、6の課題について 本件発明1、6の課題は、1(3)イ(ア)において説示した従来の問題を解決することにあり、具体的には、「アルデヒド類、アミン類および炭化水素類を有する複合ガスの吸着性能に優れた複合ガス吸着材を提供すること」(【0005】)にあるといえる。 イ 本件発明1、6の課題解決手段に関する発明の詳細な説明の記載について 上記アにおける発明の課題の前提となる1(3)イ(ア)において説示した従来の問題の記載によれば、極性の比較的高いアルデヒド、アンモニアなどを吸着できる添着物質を活性炭に添着させることは、従来より知られていたといえるが、「いずれも添着物質を完全に溶解させた水溶液を担持体に添着しているため、水分を蒸発させる工程において活性炭のマイクロ孔、メソ孔が析出した添着物質の結晶よって閉塞する場合が」あるため、「吸着物質がマイクロ孔に多く存在する吸着ポイントまで到達することができなくなり、活性炭本来の吸着性能を阻害し、結果的に炭化水素類だけでなく、アルデヒド類、アミン類の吸着性能が低いもの」となっていたということであるから、添着物質が、マイクロ孔、メソ孔、特にマイクロ孔に析出することを防げば、吸着物質がマイクロ孔に多く存在する吸着ポイントまで到達し、炭化水素類だけでなく、アルデヒド類、アミン類に対する活性炭本来の吸着性能を発揮することができることが理解できる。 そうすると、本件発明1、6の課題における「アルデヒド類、アミン類および炭化水素類を有する複合ガスの吸着性能に優れた」とは、添着物質によるアルデヒド類、アミン類の吸着性能は、従来技術と同程度であるとしても、添着物質がマイクロ孔に析出することを防ぐことにより、活性炭本来の、炭化水素類だけでなくアルデヒド類、アミン類に対する吸着性能が発揮されることを意味しているといえる。 これに対し、「アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.01~100μmであり、該アミン類の粒子が前記多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持されて」(【0007】)いれば、アミン類がマイクロ孔に析出することを防ぐことができることが理解できるから、上記本件発明1、6の発明の課題を解決するには、複合ガス吸着材において、「アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.01~100μmであり、該アミン類の粒子が前記多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持されて」いれば良いといえる。 そして、用いるアミン類について、具体的な種類が例示される(【0023】)と共に、その特性として、塩基性度定数pKbの好ましい範囲(【0025】)や、溶解度(水に対する)の範囲(【0026】)が記載されている。 その上、【0090】~【0115】に、具体的な実施例が記載され、例えば、実施例1として、粒子径が1~100μmの4-アミノ安息香酸を分散させたサスペンション水溶液を、ヤシガラ活性炭に散布し、さらにリン酸等を散布した後、乾燥して4-アミノ安息香酸及びリン酸を担持した活性炭が製造され(【0090】)、製造された活性炭を使用してアセトアルデヒドとアンモニア、およびベンゼンの吸着量が測定され、良好な性能が得られることが示され(【表1】)、走査電子顕微鏡による観察で、実施例1で製造された活性炭は、外表面において50nm未満のメソ孔が閉塞されていないことも確認されている(【0115】、【図1】、【図2】)。このように本件明細書の発明の詳細な説明には、「アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.1~100μmであり、該アミン類の粒子が前記多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持されて」いることに対する技術的な裏付けも認められる。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、上記アの発明の課題を解決するには、複合ガス吸着材において、「アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.01~100μmであり、該アミン類の粒子が前記多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持されて」いることが肝要であることが理解できる。 ウ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲、及び、当該範囲と本件発明1、6の広狭関係について 上記イで述べたように、本件発明の課題を解決するにあたっては、複合ガス吸着材において、「アミン類が粒子状で、かつ、全粒子の粒子径が0.01~100μmであり、該アミン類の粒子が前記多孔質材料の直径50nm以上のマクロ孔および前記多孔質材料の外表面に担持されて」いることが肝要であり、この点を具備していれば、おおよそ上記アの本件発明の課題を解決することができることを、当業者は本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて理解することができる。 一方、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明6は、この点を発明特定事項として含んでいる。 そうすると、本件発明1、6は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、上記(1)の判断基準に当てはめると、本件特許請求の範囲の請求項1、6の記載は、サポート要件に適合するということができる。 したがって、申立理由2には、理由がない。 (3)異議申立人の主張に対する判断 ア 異議申立人の主張について 上記第3の2に記載した異議申立人の申立理由2に係る主張は、要は、本件発明1、6は、アミン類全般を含むところ、吸着材の技術分野において、活性炭(多孔質材料)に特定のアミン類が添着された場合にはアセトアルデヒドに対する反応性を示さないことが知られているから、発明の詳細な説明に具体的に記載されるアミン類(「4-アミノ安息香酸」等)以外のアミン類については、発明の詳細な説明に具体的に記載されるアミン類と同様の効果が得られることは実証されておらず、本件発明1、6は 発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである、というものである。 イ 上記主張に対する判断 本件発明1、6に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合することは、上記(2)で述べたとおりである。 念のため異議申立人の上記主張を検討すると、異議申立人の主張は、本件発明1、6は、アミン類全般を含み、このアミン類全般の中には、アセトアルデヒドに対する反応性を示さないものも含まれていることを前提としているが、本件明細書の【0002】の「活性炭は吸着する臭気成分の選択性を有し、極性の比較的高いアルデヒド、アンモニアなどを吸着しにくいという問題があり」との記載によれば、アルデヒドの吸着は、主にアミン類が担うことが理解できるところ、本件発明1(本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明6)は、「アルデヒド類、アミン類および炭化水素類に対して吸着性能を有する複合ガス吸着材」という吸着性能に関する事項をも発明特定事項としているのであるから、本件発明1、6のアミン類において、アセトアルデヒドに対する反応性を示さないものは排除されていると解すべきである。 そうすると、上記異議申立人の主張は、採用することができない。 (4)小括 以上のとおり、本件発明1、6に対応する特許請求の範囲の請求項1、6の記載が、サポート要件に適合していないということはできないから、申立理由2には理由がない。 第5 むすび 上記第4で検討したとおり、本件特許1~15は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、本件特許1、6は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記申立理由1、2では、本件特許1~15を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~15を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700062

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決146件(後藤 奈美、株式会社クラレ)
  • 2022-701045異議申立 / 2023-09-26 / 訂正認容炭素質材料及びその製造方法、並びに、含フッ素有機化合物除去材、浄水用フィルター及…
    同じ当事者: 後藤 奈美、株式会社クラレ
  • 2022-701033異議申立 / 2023-02-07 / 維持炭素質材料及びその製造方法、並びに浄水用フィルター及び浄水器
    同じ当事者: 後藤 奈美、株式会社クラレ
  • 2022-700014異議申立 / 2022-10-31 / 訂正認容活性炭、並びにそれを用いた吸着フィルターおよび浄水器
    同じ当事者: 後藤 奈美、株式会社クラレ
  • 2022-700287異議申立 / 2022-06-20 / 維持めっき液精製用フィルターおよびめっき液精製用吸着剤
    同じ当事者: 後藤 奈美、株式会社クラレ
  • 2022-700011異議申立 / 2022-03-30 / 維持吸着フィルター
    同じ当事者: 後藤 奈美、株式会社クラレ
同じ論点・分野の審決(審決分類)426件(121・B01J、537・B01J)
  • 2026-700229異議申立 / 2026-06-19 / 維持アンモニアエンジンの排ガス処理システム及びアンモニアエンジンの排ガス処理方法
    共通の審決分類: 121・B01J、537・B01J
  • 2024-700953異議申立 / 2026-02-18 / 訂正認容液体フィードストリーム中へのガスの再飽和
    共通の審決分類: 121・B01J、537・B01J
  • 2025-700964異議申立 / 2026-01-19 / 維持水電解用イリジウム含有触媒
    共通の審決分類: 121・B01J、537・B01J
  • 2024-701181異議申立 / 2025-10-10 / 訂正認容有機溶媒の精製方法及び精製有機溶媒の製造方法、並びに有機溶媒の精製システム
    共通の審決分類: 121・B01J、537・B01J
  • 2024-700769異議申立 / 2025-07-01 / 訂正認容排ガス浄化触媒
    共通の審決分類: 121・B01J、537・B01J

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存