商標取消審判
2022-300054
ジップ、ジェイアイピイ
- 審判番号
- 2022-300054
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1992-224389
- 登録番号
- 3056194
- 請求日
- 2022年01月24日
- 審決日
- 2023年05月16日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】正林 真之
- 【請求人代理人】林 栄二
- 【請求人代理人】木村 一弘
- 【被請求人】日本電子計算 株式会社
- 【被請求人代理人】涌井 謙一
- 【被請求人代理人】山本 典弘
- 【被請求人代理人】鈴木 一永
- 【被請求人代理人】工藤 貴宏
- 【被請求人代理人】三井 直人
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 旦 克昌
- 審判官 大橋 良成
- 分類
- T131 .1 -Y (042)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項第7号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第3056194号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第3056194号商標(以下「本件商標」という。)は、「ジップ」の片仮名及び「JIP」の欧文字を上下二段に書してなり、平成4年9月25日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年6月30日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年2月7日であり、その請求の登録前3年以内の平成31(2019年)年2月7日から令和4(2022年)年2月6日までの期間を以下「要証期間」という場合がある。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本全国において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標の指定役務(以下「請求に係る指定役務」という。)について本件商標の使用をしていないものであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対して、要旨次のとおり弁駁した。
(1) 被請求人提出の各号証について
被請求人は、答弁書において本件商標の使用事実を証明するものとして乙第1号証ないし乙第22号証を提出している。
以下これらの各乙号証について反論する。
ア 乙第2号証
社内報「JIP」が1968年9月に創刊された旨の記載があるのみで、本件商標が、指定商品・役務に使用された記載は確認できない。また、当該50年史が発行されたのは平成27年6月であり、これは要証期間外のものであるから、使用事実の証拠にはならない。
イ 乙第3号証
本件商標権者の会社概要であるが、JIPは日本電子計算株式会社の略称として記載されているのみで、JIPそれ自体が商品・役務との関係で使用されているものではない。また本件商標は、二段書きからなる商標であるのに(乙1)、記載されているのはJIPのみの文字であるから、本件商標と同一商標とはいえない。
ウ 乙第4号証及び乙第5号証
新聞記事及びネット記事の記載のみであり、記載された内容からは、本件商標がどのような商標の使用にあたるのか、なんら説明はない。
エ 乙第6号証ないし乙第9号証
日本電子計算株式会社(JIP)としての使用であり、本件商標そのもの使用ではない。また、具体的な商品・役務での使用を示すものではない。また、そもそもその使用時期が明示されていない。
オ 乙第10号証
本件商標権者が締結したとする契約書であるが、本件商標の記載は全くなく、そもそも相手方が黒塗りされており、本契約書を頒布した事実も証明されていない。
カ 乙11号証
ソリューションフェアヘのパンフレットとのことであるが、当該フェアについての記載は確認できるとしても、本件商標と同一のものは記載されておらず、そもそもこのパンフレットがいつ、どのように頒布されたかの事実は全く不明である。
キ 乙第12号証
JIPソリューションフェアの開催を記載するのみであり、本件商標の具体的な使用事実は何ら記載されていない。
ク 乙第13号証
本件商標権者ウェブサイトに記載された内容とのことであるが、使用されているのはJIP-BASEであり、本件商標の使用ではない。また、本件記載内容の掲載時期の明示がないため、何ら使用の事実を確認できない。
ケ 乙第14号証
本件商標権者作成のプレゼン資料とのことであるが、JIP-申請管理DXソリューションのご提案と記載するのみであり、本件商標の使用とはいえない。また、頒布先や頒布時期についても何ら証明がなされていない。
コ 乙第15号証
JIP-DXソリューションの記載は認められるが、これはハイフンで結合した文字であり、二段書きからなる本件商標の使用とはいえない。また宛先が黒塗りされており、頒布先、頒布時期については不明である。
サ 乙第16号証及び乙第17号証
商標権者等の記載がなく、また本件商標の記載もないことから、本件商標の使用の事実を証明していない。
シ 乙第18号証
日本電子計算株式会社(JIP)としての使用であり、本件商標そのものの使用ではない。また、具体的な商品・役務での使用を示すものではない。また、そもそもその使用時期の記載は不鮮明であり、何ら使用の事実を証明していない。
ス 乙第19号証
本件商標の記載がなく、また使用商品役務が記載されていない。
セ 乙第20号証及び乙第21号証
本件商標の使用の事実とは全く関連のないものである。
ソ 乙第22号証
JIP-BASEの記載は認められるが、これは本件商標と同一のものではない。また時期も不鮮明な記載であり、使用時期を把握することはできない。
(2) 本件商標と使用商標との社会通念上の同一性について
本件商標は、ジップの片仮名文字とJIPのローマ字を二段に書してなるものであり、被請求人の提出に係る証拠には、この二段書きの態様での商標の記載はない。そして、本件商標の構成中ジップの片仮名は、ZIPの語の称呼にもなり、ZIPは活力、力の意味を有するものであり、また、JIPはチャックの開閉に意味を有することから両者は観念が異なることから、たとえ被請求人がJIPの文字を使用したとしても、これのみでは本件商標と使用商標とは社会通念上同一とはいえない。
(3) まとめ
以上のとおりであるから、被請求人提出の乙号証のいずれをもってしても、商標法第50条第2項で定める日本国内において継続して3年以上、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その請求された指定商品・指定役務について、本件商標の使用していたことを証明できたということはできないから、本件商標の商標登録は取り消されるべきである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を令和4年4月28日付け答弁書及び同年7月19日付け上申書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第31号証を提出した(当合議体において、上申書と同時に提出された証拠の甲は乙に置き換えた。)。
1 答弁の理由
(1) 本件商標権者及び同人の業務について
本件商標権者は、遅くとも1968年9月には自身の略称として「JIP」の語を使用していた(乙2)。
本件商標権者ウェブサイトの「会社概要」の頁には、会社名として「日本電子計算株式会社」、その英文名として「Japan Information Processing Service Co.,Ltd.」と記載され、さらにその正式名称の横には「略称:JIP」との記載がある(乙3)。
また、第三者も、本件商標権者を「JIP」と指称している(乙4、乙5)。
本件商標権者は、多様なITサービスを提供する企業であるが、その多様なサービスの一つとして、例えば、各種業界向けシステムの開発や保守、すなわち、本件商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」に該当するサービスを提供している(乙4、乙6~乙10)。
(2) 商標の使用事実について
ア 乙第11号証ないし乙第13号証
乙第11号証は、2019年7月25日及び同26日に「東京」、同年8月1日及び同2日に「大阪」及び同年8月8日及び同9日に「名古屋」で開催された「ソリューションフェア」のパンフレットであり、本件商標権者ウェブサイトの「イベント・セミナー」の頁(乙12)に掲載されたイベント開催のお知らせに添付された写しである。
当該フェアにおいて、本件商標権者が行った、サービスの広告宣伝活動のうちの、「Jip-Base」(乙13)は、地方公共団体向けのサービスであるが、そのサービスラインナップには、「運用保守サポート」及び「システム保守」などが挙げられており、これらは「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」に相当する。
イ 乙第14号証ないし乙第17号証
乙第14号証は、2021年6月23日に地方自治体に対して行った「申請管理DXソリューション」に関するプレゼンテーションシートの写しであり、その表紙のタイトルには「JIP」の語が使用されている(乙13、乙23、乙24)。
当該プレゼンテーションは、行政手続きのオンライン化を進めるシステムの提案に係るものであるが、その第5頁の内容から電子計算機用プログラムに相当するものであることは無理なく理解できる。
また、乙第15号証は、乙第14号証に係るプレゼンテーションに関連して「DXソリューション」提案のために提出した見積書であり、その題名は「JIP-DXソリューション」であり、「JIP」の語が使用されている。
その、内訳明細には、「Jip-Base」の記載があり、これが「運用保守サポート」「システム保守」等のサービスである。また、その他「ゆびナビプラス保守料」(乙16)及び「SkyPDF月額ライセンス(保守込み)」(乙17)の記載があり、「ゆびナビプラス」や「SkyPDF」はいずれも「電子計算機用プログラム」である。
ウ 乙第3号証ないし乙第9号証について
乙第3号証ないし乙第9号証には、各所に「JIP」又は「JIP(ジップ)」の語が使用されている。これらが会社の提供する業務の全般との関係で使用されていることからすれば、本件商標権者の提供する様々なサービスのうちの「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」との関係で使用されているといって差し支えない(乙8)。
(3) 商標の使用態様について
これらの証拠には「JIP」又は「JIP(ジップ)」の語が使用されている。ここで、本件商標は、片仮名文字「ジップ」と欧文字「JIP」を二段に書してなるものであり、片仮名文字は欧文字部分の読みを表したものであることは容易に理解でき、そのいずれも「ジップ」の称呼を生じる一方、特定の観念を生じないものである。
したがって、本件商標の構成中の欧文字「JIP」又は片仮名文字「ジップ」のいずれかの使用であっても、本件商標との関係では、社会通念上同一の商標の使用と認められる。
(4) 本件商標の使用者
本件商標は、本件商標権者がそのサービスを提供する際に使用をしている。
(5) 商標を使用している指定役務について
本件商標権者が多様なITサービスを提供しており、そのサービスの一つとして、「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」に該当するサービスを提供していることは、前記(1)及び(2)のとおりである。
ここで、本件商標は本件商標権者の略称を表示した商標として機能しており、かつ、当該語が表示されたウェブサイトの頁やその他本件商標権者ウェブサイトの記載等を総合して考慮すれば、本件商標をその指定役務の中の「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」についても使用していることは容易に把握できる。
(6) 商標の使用の時期
ア 乙第2号証は、2015年6月の出版物であり要証期間のものではないが、本件商標権者が「JIP」を古くから使用していたことを確認することができる。
イ 乙第3号証は、出力日時点の状態を示すものではある。しかしながら、ウェブページアーカイブを閲覧することができるインターネット上のサービスで、乙第3号証の過去の表示状況を確認すると、要証期間の2021年5月24日の表示状況を確認することができる(乙18)。当該ページには「JIP」の語が使用されている。
ウ 乙第4号証の記事に係る「ニッキン」の発行日は、要証期間の2019年3月8日である。
エ 乙第5号証のウェブサイトの記事掲載日は、要証期間の2020年4月8日である。
オ 乙第6号証のウェブサイトについては、乙第3号証と同様の方法で過去の表示状況をみると、要証期間の2020年2月18日の表示状況を確認することができ(乙19)、乙第6号証と同じような記載が確認できる。
カ 乙第7号証のカタログの写しについては、カタログ自体に発行時期は記載されていないが、2018年の本社移転の事実及び掲載されている代表取締役が、2021年6月16日に退任した前社長であることからすれば、要証期間内に使用されていたものであろうことは容易に想像できる(乙20、乙21)。
キ 乙第8号証と乙第9号証のいずれにも「はじめまして、日本電子計算です、略して「JIP(ジップ)」と同様の記載があること、乙第9号証中の「年商」が2020年3月期のものであること、従業員数が2020年4月1日現在のものであることからすれば、これらは要証期間に使用されたものである。
ク 乙第10号証にかかる契約書の契約日は要証期間の2021年8月1日である。
ケ 乙第11号証は、要証期間である2019年7月ないし8月のイベントに関するものであり要証期間のものである。
コ 乙第12号証は、2019年6月25日付け、同年6月26日付及び同月27日付けの二ュースリリースであることから、要証期間のものである。
乙第13号証のウェブサイトについても、乙第3号証と同様の方法で、要証期間である2019年7月18日の表示状態が確認でき、同様の記載がみられる(乙22)。
サ 乙第14号証は2021年6月23日に開催したプレゼンに係るプレゼンシートであり、乙第13号証は2021年7月2日に提出した見積もりであり、いずれも要証期間のものである。
シ 以上からすれば、今回提出する各証拠が要証期間の商標の使用を示すものであることを無理なく理解できる。
(7) 小括
以上のとおり、本件商標は、本件商標権者の略称を示す商標であり、出願人ウェブサイト他の各所において、本件商標と社会通念上同一と言って差し支えのない「JIP」又は「JIP(ジップ)」が使用されている。
また、本件商標が、本件商標権者の社名の略称を表す商標である以上、本件商標権者が提供するサービスと全般との関係で目印としての機能を果たしており、その提供役務の一つである「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」について使用していることは無理なく理解できる。
以上より、本件商標権者が、要証期間内に、本件商標を日本国内において、請求にかかる指定役務中、少なくとも「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」について、これをウェブサイト上やプレゼンテーションシート、見積等に表示する形で、商標法第2条第3項第8号に該当する使用をしている事実は明らかである。
2 上申書の理由
(1) 乙第25号証は、「JIP-CP SYSTEM」の操作説明書(抜粋)の写しである。当該「JIP-CP SYSTEM」は、本件商標権者が提供している「電子CP、手形CPの取引支援のためのシステム(コンピュータプログラム)」であり、そのシステムの名称に商標「JIP」が使用され、かつ、当該システムのログイン画面にも当該商標が使用されている。
(2) 乙第26号証は、上記(1)のシステム(コンピュータプログラム)の利用に際して、銀行と締結した契約書の写しである。当該契約書はオンラインで当該システム(コンピュータプログラム)を提供するに際して締結したものであり、この点は、操作説明書(乙25)及び契約書の「要綱」に記載されたサービス名等からも明らかである。
また、契約書の記載のとおり、当該サービスは「保守」までも含むものである。なお、当該契約書は、平成15年3月20日に締結され、契約期間は、一年間となっている。しかしながら、当該契約は特段の事情がなければ自動更新が前提となっているところ、現在に至るまで継続しており、本件商標権者は、継続して保守を含めた当該システム(コンピュータプログラム)に係るサービスの提供を行っている(乙27)。
(3) 乙第28号証は、「JIP-RTGSシステム(RENOVA日銀RTGSシステム)」のログイン画面のハードコピーの写しである。「Real Time Gross Settlement(即時グロス決済)」に関し、本件商標権者が提供しているシステム(コンピュータプログラム)であり、そのログイン画面上部には、商標「JIP」が使用されている。
乙第28号証は、ログイン画面である関係上、これを表示させた時点のものであり、厳密には要証期間のものではないものの、2018年11月19日に改定された操作マニュアルに同様のログイン画面が記載されており、かつ、要証期間である2019年4月26日付けの請求書(乙30)及び納品受領書(乙31)が存在することからすれば、乙第28号証にかかるサービスが要証期間においても商標「JIP」を使用して提供されていたものであることは無理なく理解できる。
(4) 乙第29号証は、乙第28号証に係るソフトウェアについて、本件商標権者が作成した操作マニュアル(抜粋)の写しであり、その第1-1頁に乙第28号証と同様のログイン画面の記載がある。また、ログイン後のメインメニュー画面左上にも「JIP」が付されている。
(5) 乙第30号証は、2019年4月26日付けの三井住友信託銀行株式会社宛請求書(控)の写しであり、件名の欄に「JIP-RTGSシステム(新日銀ネット対応版)ソフトウェア保守」と記載がある。
(6) 乙第31号証は、乙第30号証に係る請求書について、三井住友信託銀行株式会社から受領した納品受領書の写しである。
(7) 上記の各証拠を総合すれば、本件商標権者が商標「JIP」を「ソフトウェアのログイン画面」や「取引書類」に使用して「ソフトウェア保守」、すなわち「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」に該当する役務を、要証期間に提供しており、商標法第2条第3項第7号及び同第8号の使用に該当する。
第4 当審の判断
1 事実認定
(1) 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 乙第3号証は、本件商標権者ウェブサイトの写しであり、「会社概要」の頁には、「日本電子計算株式会社(略称 JIP)」及びその下段に「Japan Information Processing ServiceCo.,Ltd.(英文名)」と記載されている。
イ 乙第6号証は、「JIPの強み当社事業の特長」と題する本件商標権者ウェブサイトの写しであり、そこには、「日本電子計算株式会社(JIP)は、1962年の設立以来、OmegaFSをはじめとする証券分野の総合システム、総合行政サービスのWizLIFEなどで豊富な実績を有するほか、銀行、大学、教育などの各分野でも多くのITシステム提供や関連サービスを提供しております。」、「JIPは日本のITベンダーの先駆者として、これまで3,500社を超えるお客様のために、信頼性の高い情報システムの構築・運用を行ってきました。」及び「・・・コンサルティングから企画・開発・導入・保守・BPOに至るまでの総合的なITサービスを、お客様のニーズに合わせて提供」等の記載がある。
ウ 乙第28号証は、コンピューターソフトウェアのログイン画面のハードコピーであって、そこには、上段に「JIP-RTGS」及びその下段に「RENOVA日銀RTGSシステム」と表示されている。
エ 乙第29号証は、「新日銀RTGSシステム」の操作マニュアルであり、1枚目(表紙)のタイトルの下部に「日本電子計算(株)」の記載があり、その5枚目には「概説」として「モニタリング」、「外為モニタリング」等の文字、6枚目(最終頁)には、「ブラウザ(Google Chrome)を起動します。」等の記載及び乙28号証と同様のログイン画面等が表示されている。
オ 乙第30号証は、「請求書(控)」の写しであり、その右上部には、「日本電子計算株式会社」の記載及び社印並びに本件商標権者の住所、左上部には「三菱住友信託銀行株式会社 御中」及び「2019年4月26日」の記載があり、件名の欄に「JIP-RTGSシステム(新日銀ネット対応版)ソフトウェア保守」(以下「使用商標」という。)の記載及び品名の欄に「ソフトウェア保守料金」、「2019年4月1日~2019年9月30日」及び「2019年10月1日~2020年3月31日」等の記載がある。
カ 乙第31号証は、「納品受領書(サービス確認書)」の写しであり、その左上部には「日本電子計算株式会社 御中」、右上部には、「三井住友信託銀行株式会社」の記載、受領日欄には「2019年4月26日」、受領印の欄は、マスキングがされているが、印影の枠線が表されており、件名の欄には、使用商標の記載があり、さらに、品名の欄に「ソフトウェア保守料金」、「2019年4月1日~2019年9月30日」及び「2019年10月1日~2020年3月31日」等の記載がある。
(2) 上記(1)からすれば、以下の事実が認められる。
ア 本件商標権者(被請求人)は、その略称を「JIP」とし、証券分野の総合システムをはじめ、行政、銀行、大学、教育などの各分野でITシステムやシステム保守等の関連サービスを提供している。
イ 本件商標権者は、ブラウザ(Google Chrome)を使用した「新日銀RTGSシステム」とする電子計算機プログラムを作成した。当該システムは、外為等をモニタリングするための電子計算機用プログラムと認められる。
ウ 本件商標権者は、2019年4月26日付けで、三井住友信託銀行株式会社宛てに、件名を「JIP―RTGSシステム(新日銀ネット対応版)ソフトウェア保守」(使用商標)とする、ソフトウェア保守料金に係る請求書を発行し、三井住友信託銀行株式会社は、同日付けで本件商標権者に、当該請求書と同じ件名及び品名の「納品受領書(サービス確認書)」を発行し、本件商標権者は、これを受領している。
2 判断
(1) 使用商標について
本件商標は、別掲のとおり「ジップ」の片仮名及び「JIP」の欧文字を明朝体様の文字で上下二段に書してなり、下段の「JIP」の欧文字は、「チャックで開閉する」の意味を有するところ、上段の「ジップ」の片仮名は特段の意味を有しないから下段の「JIP」の欧文字の読みを表した文字としてのみ認識され、当該欧文字の読みを超えた特段の観念を有するものでない。
一方、使用商標は、「JIP-RTGSシステム(新日銀ネット対応版)ソフトウェア保守」の文字をゴシック体様の文字で表示したものよりなるところ、その構成中「RTGSシステム(新日銀ネット対応版)ソフトウェア保守」の文字部分は、「RTGS」が、「中央銀行の当座預金振替によって行われる金融機関同士の資金取引や国債などの決済システムの手法のひとつ」(被請求人主張、職権調査「証券用語解説集」)を意味し、「システム」の文字は、電子計算機プログラムのことを指称する文字として使用されている。
また、「新日銀ネット版対応」の文字は、当該プログラムが「日銀のシステムに対応している商品の新版」であることを示す文字であり、「ソフトウェア保守」の文字は、役務の内容、用途を表示する文字である。
そうすると、当該「RTGSシステム(新日銀ネット対応版)ソフトウェア保守」の文字部分は、提供される役務の質(内容)を表す文字であり、自他役務の識別標識としての機能を有しないか、有するとしても極めて弱いものである。
したがって、使用商標は、その構成中「JIP」の文字部分が要部といえるものであり、当該「JIP」は、本件商標の欧文字部分とそのつづりを共通にし、書体のみに変更を加えたものであるから、社会通念上同一の商標と認められる。
そして、当該文字に自他役務の識別標識としての機能を有しないか、有するとしても極めて弱いものと認められる文字が付加されている使用商標も、本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
(2) 使用役務について
使用商標を件名とする「請求書(控)」及び「納品受領書(サービス確認書)」は、「ソフトウェア保守料金」に係る書証であるから、当該書証に係る役務は「ソフトウェアの保守」であり、これは、本件審判の請求に係る指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成または保守」の範ちゅうに含まれる役務である。
(3) 使用者について
上記1(2)ウによれば、「JIP-RTGS(新日銀ネット対応版)システム」の表示のある請求書(控)の作成者は、本件商標権者である。したがって、本件商標の使用者は、本件商標権者である。
(4) 使用及び使用時期について
本件商標権者が、三井住友信託銀行株式会社宛てにソフトウェアの保守に係る「請求書(控)」と同じ内容の記載がされている請求書を送付したことは、同日付の三井住友信託銀行株式会社からの「納品受領書(サービス確認書)」が本件商標権者に受領されていたことから認められるものであり、当該請求書の発行日である2019年(平成31年)4月26日は要証期間内である。
また、請求書の宛先は日本国内であること明らかである。
(5) 小括
上記(1)ないし(4)からすれば、本件商標の商標権者は、日本国内において、要証期間内である平成31年(2019年)4月26日に、本件審判の請求に係る指定役務中の「電子計算機のプログラムの設計・作成または保守」に含まれる「ソフトウェアの保守」に係る取引書類(請求書)に本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布したといえ、当該行為は、商標法第2条第3項第8号の「取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当するものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が本件審判の請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)
特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
別掲
1 本件商標
[図:0001400661000001.jpg]
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-300054