商標取消審判
2023-300129
コンパス
- 審判番号
- 2023-300129
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2017-070104
- 登録番号
- 6122135
- 請求日
- 2023年02月24日
- 審決日
- 2024年04月11日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】アクシスコンサルティング 株式会社
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】佐藤 俊司
- 【請求人代理人】阪田 至彦
- 【請求人代理人】村瀬 純一
- 【被請求人】正林 真之
- 【被請求人代理人】林 栄二
- 【被請求人代理人】鈴木 昇
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 阿曾 裕樹
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T132 .1 -Z (W35)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項、商標法第2条第3項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6122135号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6122135号商標の指定役務中、第35類「工業所有権・著作権等の知的所有権に関する事業調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権に関する市場調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6122135号商標(以下「本件商標」という。)は、「Compass」の文字を標準文字で表してなり、平成28年11月29日に登録出願、第35類「工業所有権・著作権等の知的所有権に関する事業調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権に関する市場調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権に関する書類の複製」を指定役務として、同31年2月15日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年3月13日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和2年(2020年)3月13日から同5年(2023年)3月12日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨以下のように述べた。
本件商標は、その指定役務中、第35類「工業所有権・著作権等の知的所有権に関する事業調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権に関する市場調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供」(以下「請求に係る指定役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人の答弁に対して、弁駁していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書及び令和5年12月18日付け審判事件回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証から乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
(1)被請求人は、本件商標を、要証期間内に、請求に係る指定役務のうち、第35類「工業所有権・著作権等の知的所有権に関する事業調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言」について使用している。
(2)乙第1号証について
乙第1号証は、本件商標の商標登録原簿の写しである。
(3)乙第2号証について
乙第2号証(枝番号を含む。)は、被請求人が所長である正林国際特許商標事務所のホームページであり、INTERNET ARCHIVEの「Wayback Machine」によって2021年当時の同ホームページのうち、「サービスラインナップ」を表記した部分を抜粋したものである。
具体的には、乙第2号証の1は、「Wayback Machine」のカレンダーに該当するページであり、「INTERNET ARCHIVE\Wayback Machine」の見出しの右側に正林国際特許商標事務所のホームページのアドレスが記載されており、また、カレンダーの右側上部には2021年の部分が黄色くなっており、カレンダーの1月16日に丸く色が付けられていることからも、2021年当時であることが分かる。そして、2021年は、要証期間内に該当する。
また、乙第2号証の2は、2021年当時の同ホームページのうち、「サービスラインナップ」を表記した部分を抜粋したものであり、上述のアドレス中には、カレンダーの2021年1月16日に相当する「20210116」の数字が含まれている。そして、同証拠の2枚目には、「企業買収時(出資時)調査」の見出しの下に「企業を買収する際、或いは出資する際に、その会社の主たる商品における知的財産状況を調べるものです。いわば知的財産の視点からのデューデリジェンスと言えるものです。具体的には、たとえば当該企業の主力商品等における特許侵害等の可能性有無からみた将来リスク分析、競合会社との知的財産からみた技術力判定、持っている知的財産の価値などを必要に応じて総合的に分析するものです。」との記載、さらに、「事業戦略調査」の見出しの下に「特許権を用い、ヒストリカル、バブル、マトリクス、サイテーション、コンパラ等の各種マップを用い「マクロ分析」における知財の見える化による事業戦略の立案のための材料を提供、あるいはより具体的にターゲットとなる技術を保有している相手先(協業候補先、買収候補先)を特許権の有力性や技術内容から分析し、相手先をお探しする等の多様な調査が可能です。」との記載がある。
これらの記載を勘案するならば、被請求人が所長である正林国際特許商標事務所が要証期間内の2021年当時に、第35類の「工業所有権・著作権等の知的所有権に関する事業調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言」に関する役務の提供を行っていたことが分かる。
(4)乙第3号証について
ア 使用時期、使用者、使用役務
乙第3号証は、2021年当時、被請求人が上記(2)のサービスの紹介又は広告のために使用していた「経営に資するIPランドスケープ」と題した資料である。
当時は、未だ、企業の経営陣にはIPランドスケープの有用性が浸透していないこともあったため、被請求人は、同事務所の先頭に立って、この資料を使用して、同事務所のIPランドスケープに係るサービスの紹介又は広告を行っていた。
そして、この資料の内容をみれば、同資料が第35類の「工業所有権・著作権等の知的所有権に関する事業調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言」に関するものであることは明らかである。また、資料の標題にある「IPランドスケープ」については、特許庁自身が「IPランドスケープを「経営戦略又は事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること」と定義しており(令和3年の「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書」において上述のとおり定義するとしている。)、このことを踏まえても、同資料が第35類の上記役務に関するものであることが分かる。
また、同資料が2021年当時のもので、被請求人が使用したものであることは、同資料の1ページに日付と被請求人の氏名が記載されていることから明らかである。
イ 使用に係る商標
本件商標は、「Compass」の文字よりなるところ、該文字は「コンパス」と称呼され、「方位磁石,羅針儀」を意味する語として親しまれており、一方の乙第3号証の54ページに表示されている「コンパス」の片仮名(以下「使用商標1」という。)は、背景に方位磁石の写真が掲載されていることからも分かるとおり、その「Compass」の語を片仮名表記したものであり、わが国でも親しまれた語になっているといえる。このことは、乙第4号証のウェブサイト「コトバンク」の「Compass」の項の写しをみても明らかである。
そうすると、本件商標と使用商標1は、「コンパス」の称呼及び「方位磁石,羅針儀」の観念を共通にするから、社会通念上同一の商標といえる。
2 審尋に対する回答
被請求人の主張及び提出された証拠によっては、本件商標が、請求に係る役務について使用されたことが確認できない、とする令和5年11月2日付けの当審における審尋に対し、被請求人は、回答書において要旨以下のとおり述べた。
(1)商標法第2条第3項の「使用」の該当性について
被請求人は、本件商標を、要証期間内に、本件審判請求に係る指定役務のうち、第35類「工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言,経営の診断又は経営に関する助言」について使用している。すなわち、被請求人が所長を務める正林国際特許商標事務所では、事業承継や相続に当たっての商標権の活用についての相談事業をK社と連携して行っており、乙第5号証の2は、同事業の顧客への説明資料として、正林国際特許商標事務所の所員が同社に配布するとともに、同社の顧客の相談に対する説明に使用した資料の写しである。
このため、乙第5号証の2は、商標法第2条第3項第3号又は第4号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)」、さらには、同項第8号の「取引書類」に該当するものといえる。
そして、乙第5号証の1によれば、「配布され説明を受けました」又は「同資料に基づき提案をさせていただきました」との陳述がされているとおり、乙第5号証の2がK社やその顧客に、同項第3号、第4号又は第8号に定める譲渡や、利用の行為がされたことは明らかである。
(2)乙第5号証の2の使用時期について
乙第5号証の1によれば、「2022年6月15日に・・・配布され説明を受けました」、さらに、「2022年8月3日には・・・取引先に対して・・・同資料に基づき提案をさせて頂きました。」との陳述がされているとおり、乙第5号証の2の使用時期は、少なくとも、昨年の6月ないし8月であることが明らかであるから、乙第5号証の2が要証期間内に使用されていたことは明らかである。
(3)使用者及び使用に係る役務について
乙第5号証の2の表紙には、被請求人が所長の「正林国際特許商標事務所」の記載とともに、「商標権を活用した相続対策及び事業承継スキーム」の標題があり、事業承継という会社の経営や事業の管理に商標権を活用するための資料であること明らかであり、その後の詳細の中にも、商標権に関する記述がなされているところ、審判請求に係る指定役務のうちの「工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言,経営の診断又は経営に関する助言」に関する指導、助言のための説明資料であることが分かるものといえる。
(4) 使用に係る商標について
本件商標は、「Compass」の文字よりなるものであるところ、該文字は「コンパス」と称呼され、「方位磁石、羅針儀」を意味する語として親しまれており、一方の乙第5号証の2に表示されている「コンパス」の片仮名(以下「使用商標2」という。)は、括弧で他の文字と区切られ、ひときわ大きく表示されており、「コンパス」の片仮名が独立したものとして認識され得るものである。
そうすると、本件商標と使用商標2は、「コンパス」の称呼及び「方位磁石、羅針儀」の観念を共通にするものであるから、社会通念上同一の商標といえる。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙第3号証について
ア 乙第3号証は、「経営に資するIPランドスケープ」と題する資料であり、被請求人が、「工業所有権・著作権等の知的所有権に関する事業調査・分析又はこれらに関する情報の提供,工業所有権・著作権等の知的所有権の実施に関する経営の診断若しくは事業の管理又はこれらに関する指導・助言」のサービスの紹介又は広告に使用していたと主張するものである。
イ 上記資料の表紙には、表題の下に、「講師」として、被請求人(商標権者)の氏名が「(正林国際特許商標事務所 所長 弁理士)」の肩書とともに記載され、「2021.2.18(木)」の文字が記載されている。
ウ 上記資料の10ページには、「当所の考えるIPランドスケープとは 『IP情報を軸として事業、製品、サービス、財務、その他非IP情報を総合的に加味しながら、対象企業の現在置かれている位置づけとその未来を提言し、経営に役立てるもの』」の記載がある。
エ 上記資料の54ページには、「IPランドスケープを経営の「コンパス」に」(以下「本件使用商標1」という。)の記載がある。
(2)乙第5号証について
ア(ア)乙第5号証の2は、「「商標権を活用した相続対策及び事業承継スキーム」“TACTIVE”のご案内」と題する資料の写しであり、被請求人(商標権者)が所長を務める正林国際特許商標事務所において、事業承継や相続に当たっての商標権の活用についての相談事業をK社と連携して行っていると主張するものである。
(イ)上記資料の1ページには、「商標権の活用を経営の「コンパス」に!」(以下「本件使用商標2」という。)の記載がある。
イ 乙第5号証の1は、「陳述書の写し」とするものであり、K社の取締役会長により、2022年6月15日に、正林国際特許商標事務所のA氏から、乙第5号証の2に係る資料を配布され説明を受けたこと、同年8月3日に、A氏とともに、取引先に対し、上記資料に基づき提案を行った旨の陳述がされている。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)乙第3号証における使用について
乙第3号証は、本件商標権者が講師として、「IPランドスケープ」(IP情報を軸として、対象企業の位置づけとその未来を提言し、経営に役立てるもの)についての説明を行うための資料であって、要証期間である2021年2月18日に作成されたものであることがうかがえる。
しかしながら、上記資料が頒布されたことを示す証拠の提出はない。
また、上記資料に表示された本件使用商標1(IPランドスケープを経営の「コンパス」に)は、「コンパス(compass)」が、一般に「羅針盤」等の意味を有する語(乙4)として知られていることから、「IPランドスケープを経営の羅針盤にする」程の意味合いを有する一連のキャッチフレーズを表したものとみるのが相当である。
そうすると、本件使用商標1は、「コンパス」の文字をその構成中に含むものの、それが独立した商標として表示されているとは認識し得ない。
してみれば、本件使用商標1の構成中の「コンパス」の文字部分が、独立した出所識別標識として、請求に係る指定役務に関する広告又は取引書類に使用されたと認めることはできない。
(2)乙第5号証の2における使用について
乙第5号証の2は、本件商標権者が所長を務める正林国際特許商標事務所が作成した、事業承継や相続に当たっての商標権の活用についての説明資料であり、被請求人の主張及びK社による陳述(乙5の1)によれば、要証期間内である2022年8月3日に、同事務所の所員とK氏が取引先に対し提案を行う際に使用されたものであることがうかがえる。
しかしながら、上記資料に表示された本件使用商標2(商標権の活用を経営の「コンパス」に!)は、上記(1)と同様に、「商標権の活用を経営の羅針盤にする」程の意味合いを有する一連のキャッチフレーズを表したものとみるのが相当であるから、本件使用商標2の構成中の「コンパス」の文字部分が、独立した出所識別標識として、請求に係る指定役務に関する広告又は取引書類に使用されたと認めることはできない。
(3)小括
以上のことからすれば、被請求人提出の証拠によっては、本件商標権者又はその使用権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、請求に係る指定役務について使用をしたと認めることができない。
そして、その他、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間に日本国内において、本件商標を請求に係る指定役務について使用をしていることを認めるに足りる証拠の提出はない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務について、本件商標を使用していることを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定役務について、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定役務中、「結論掲記の指定役務」について、商標法第50条第1項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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