商標取消審判
2024-300237
パレス
- 審判番号
- 2024-300237
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1992-237496
- 登録番号
- 3072084
- 請求日
- 2024年04月10日
- 審決日
- 2025年03月14日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オペラドーラ パレス リゾーツ ジェイエイ リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【被請求人】株式会社 パレスホテル
- 【被請求人代理人】宮嶋 学
- 【被請求人代理人】本宮 照久
- 【被請求人代理人】高田 泰彦
- 【被請求人代理人】柏 延之
- 【被請求人代理人】渡邊 かおり
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T131 .1 -Y (042)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第2条第3項第3号、商標法第50条第1項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第3072084号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第3072084号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成4年9月28日に登録出願、第42類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,婚礼のための施設の提供,宴会のための施設の提供」を指定役務として、同7年8月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年4月24日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和3年(2021年)4月24日から同6年(2024年)4月23日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人が提出する乙各号証によれば、被請求人が使用する商標(以下、「使用商標」という。)は、その構成において、「PALACE」の欧文字を包含する図形の上下に配置された、王冠を模した図形(上)と略涌斗形の図形(下)に斜線がない点で本件商標とは明らかに相違し、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。この点、本件商標は、上述した上下の図形の斜線によって、看者に対してシャープな印象を与える一方、使用商標にはそのような斜線がなく、看者に対して穏やかな印象を与える。そのため、当該斜線の有無は、商標に接した看者の受ける印象を全く別異のものとする変更であり、商標の識別性に影響を与えることは明らかである。
また、被請求人は、乙第9号証及び乙第10号証により、本件商標に係る社章を付けた社員が宿泊者を見送っていることが示された旨を主張するが、見送られている宿泊者は一切確認できない。そのため、実際に本件商標に係る社章が本件指定役務中「宿泊施設の提供」を受ける者の利用に供する物として使用されていない。
以上より、被請求人が提出している答弁書及び乙第1号証ないし乙第10号証は、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者または通常使用権者のいずれかによって、本件指定役務について使用されたことを立証していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 本件商標の商標権者(被請求人)について
被請求人は、東京都千代田区丸の内に所在し、ホテル事業の運営を主な事業内容としている会社である(乙1)。被請求人が運営する代表的なホテルであるパレスホテル東京においては(乙2)、本件商標の指定役務に該当するサービスの提供を行っている(乙3~乙7)。
2 本件商標の使用について
本件商標は、被請求人の社章を表したものであり(乙8)、本件商標に係る指定役務について以下の場面で使用されているものである。
(1)乙第3号証
乙第3号証は、被請求人が株主向けに年2回(中間・期末)発行している事業報告書のうち2024年(令和6年3月28日)付けで発行され、ハードコピーが発行日と同日付けで株主に郵送されたものであり、乙第3号証の表紙下方と裏表紙中央に本件商標が使用されている。乙第3号証は、被請求人の第79期事業年度(令和5年1月1日から令和5年12月31日まで)における事業の概況及び決算の内容を株主に報告するものである(乙3の1頁)。事業の概況にはパレスホテル東京の宿泊部門・レストラン部門・バンケット部門(婚礼及び宴会)に関する報告を含むものであり(乙3の2頁及び3頁)、これらサービスは、本件商標の指定役務「宿泊施設の提供,飲食物の提供,婚礼のための施設の提供,宴会のための施設の提供」に相当するものである。これらサービスの現況や売上高の報告を受けて、株主が投資判断を行い更なる投資をする場合もあることから、上記サービスに係る広告の役割を果たしている状況がある。
また、株主については、投資対象の会社が提供するサービスに興味を持っていることが投資の動機になっていることも多く、株主であり同時に需要者である場合もある。乙第3号証29頁及び30頁において、パレスホテル東京での宿泊・宴会及びウェディング・レストラン及びバーについての営業時間、URLや電話番号等の連絡先等を含めた案内が記載されているものであり、需要者でもある株主にパレスホテル東京の利用の便宜を図る形を取っており、上記サービスに係る広告の役割を果たしている状況がある。
以上より、乙第3号証は、本件商標は指定役務に係る取引書類において広告的使用がされ、本件商標に係る指定役務の広告及び取引書類に本件商標が付され頒布されたことを示すものであるから、被請求人が商標法第2条第3項第8号に該当する商標の使用を要証期間内に行ったことを証明するものである。
(2)乙第9号証
乙第9号証は、パレスホテル東京のリクルート用のSNS(インスタグラム)において2023年12月22日に発信された情報であり、パレスホテル東京の社員が本件商標に係る社章をスーツ上着の左胸に付けてパレスホテル東京の宿泊者を見送っている写真を掲載したものである。なお、この社員の背景にはパレスホテル東京のロゴの一部が写っているが、この場所はパレスホテル東京1階の車寄せである(乙10)。このサービスは、本件商標指定役務のうち「宿泊施設の提供」に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為に該当するから、乙第9号証は、被請求人が商標法第2条第3項第3号に該当する商標の使用を要証期間内に行ったことを証明するものである。
なお、直接顧客に接する現場の社員とは異なり被請求人会社の管理部門の社員は制服を着用せず、管理部門の社員が業務との関連で外出したり、パレスホテル東京における宿泊・レストラン・婚礼・宴会に係るサービスの現場に出たりする際に本件商標に係る社章をスーツ上着の左胸に着用するものである。
(3)小括
乙第1号証ないし乙第7号証に示すとおり、被請求人が運営するパレスホテル東京において本件商標の指定役務に該当するサービスの提供を行っている。
そして、乙第3号証及び乙第9号証に示すとおり、本件商標はパレスホテル東京における宿泊・レストラン・婚礼・宴会に係るサービスとの関係で使用されている。かかるサービスは、本件指定役務に該当するものであり、前述のとおり、本件商標について商標法第2条第3項第8号及び商標法第2条第3項第3号に該当する使用がされているものである。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)被請求人である商標権者は、東京都千代田区丸の内に所在し、ホテル事業やレストラン運営等を行う法人である(乙1)。
(2)事業報告書について
ア 乙第3号証は、商標権者により発行された、商標権者の第79期(令和5年1月1日から同年12月31日まで)の事業概況及び決算内容が記載された、株主向けの事業報告書(以下「本件事業報告書」という。)の写しであり、裏表紙の中央には別掲2のとおりの商標(以下「本件使用商標」という。)が表示されている。
イ 本件事業報告書の29頁には、「パレスホテル東京のご案内」として、ホテルの客室やレストラン、宴会場やチャペル等が、写真とともに紹介されている。
ウ 本件事業報告書の28頁には、定時株主総会が毎年3月下旬に開催される旨の記載があり、裏表紙には発行日(令和6年3月28日)を示すと思われる「6.3.28」の記載がある。また、被請求人は、本件事業報告書のハードコピーが発行日と同日付けで株主に郵送された旨主張している。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
ア 本件商標は、別掲1のとおり、上段及び下段に、斜線模様を付した、王冠及びじょうごを模したような図形を配し、中段に、内部に「PALACE」の文字を白抜きで横書きした黒塗りの幾何図形を配してなる。
イ 本件使用商標は、別掲2のとおり、上段及び下段に、やや不鮮明ではあるものの、斜線とおぼしき模様を付した、王冠及びじょうごを模したような図形を配し、中段に、内部に「PALACE」の文字を白抜きで横書きした黒塗りの幾何図形を配してなる。
ウ 本件商標と本件使用商標を比較すると、両者は、図形部分については、上段、中段及び下段の図形の形状及び配置を共通にし、文字部分も構成文字及び書体を共通にするから、両者は外観において同視される図形及び同一の文字からなる、社会通念上同一の商標と認められる。
(2)使用者について
本件使用商標が表示された本件事業報告書は、商標権者により発行されたものであるから、本件使用商標の使用者は、商標権者と認められる。
(3)使用役務について
本件事業報告書においては、商標権者が経営する宿泊施設やレストラン、宴会場、チャペル等が紹介されているところ、これらに係る役務は、本件指定役務である「宿泊施設の提供,飲食物の提供,婚礼のための施設の提供,宴会のための施設の提供」に相当するものである。
(4)使用時期について
本件事業報告書は、令和6年3月28日に発行されたものであり、また、商標権者の株主総会は毎年3月下旬に開催されている旨の記載から、令和6年においても3月下旬に株主総会が開催されたものと推認できる。そして、株主総会と同時期の、要証期間内である令和6年3月28日頃に、事業内容等を記載した本件事業報告書ないしこれと内容を同じくするハードコピーが株主に送付されたとみることに不自然な点はない。
(5)使用行為について
本件事業報告書に掲載された宿泊施設等の紹介は、本件指定役務に関する広告と認められる。
そうすると、商標権者は、本件指定役務に関する広告が掲載され、裏表紙に本件使用商標が付された本件事業報告書ないしこれと内容を同じくするハードコピーを株主に送付したといえることから、この行為は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当する。
また、当該行為は、日本国内において行われたことが明らかである。
(6)小括
上記(1)ないし(5)によれば、商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件指定役務である「宿泊施設の提供,飲食物の提供,婚礼のための施設の提供,宴会のための施設の提供」に係る広告に、本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布する行為(商標法第2条第3項第8号)を行ったものと認められる。
3 請求人の主張について
請求人は、本件商標は、上段及び下段の図形に付された斜線によってシャープな印象を与える一方、被請求人が使用する商標にはそのような斜線がなく、穏やかな印象を与えるものであり、当該斜線の有無は、看者に全く別異の印象を与えるから、両者は社会通念上同一の商標ではない旨主張する。
しかしながら、本件使用商標は、上記2(1)イのとおり、やや不鮮明ではあるが、上段及び下段に配置された図形に斜線とおぼしき模様が付されているものであるし、仮に本件商標と本件使用商標が、当該斜線模様において差異を有するとしても、上記2(1)ウのとおり、両者は図形の形状及び配置、文字部分の構成文字及び書体において共通するものであるから、外観において同視される図形及び同一の文字からなる社会通念上同一の商標というべきであって、上記の相違点が、両商標の共通性に実質的な影響を及ぼすものとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の指定役務について使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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