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特許拒絶査定不服審判

2022-021256

包装材料及び包装製品

審判番号
2022-021256
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-186143外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月27日
審決日
2024年07月31日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-186143「包装材料及び包装製品」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020- 55171〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成30年9月28日に出願された特願2018-186143号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和4年 4月19日付け : 拒絶理由通知
令和4年10月 6日付け : 拒絶査定
令和4年12月27日 : 審判請求
令和4年12月27日 : 手続補正書の提出
令和5年 3月23日付け : 前置報告書
令和5年 5月22日 : 上申書の提出

第2 手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年12月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。なお、下線部は補正箇所を示す。

「【請求項1】
少なくとも、表面保護層、印刷層、紙基材層が順に積層された包装材料であって、
前記表面保護層は、バイオマス由来のニトロセルロースを含み、
前記表面保護層は、着色剤を含まず、
前記表面保護層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を更に含み、
前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む、包装材料。
【請求項2】 前記表面保護層は、ポリアミド樹脂を更に含む、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】 前記ポリアミド樹脂がバイオマス由来成分を含む、請求項2に記載の包装材料。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装材料を備える、包装製品。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~6の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも、表面保護層、印刷層、紙基材層が順に積層された包装材料であって、
前記表面保護層は、バイオマス由来のニトロセルロースを含む、包装材料。」

【請求項2】

表面保護層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を更に含む、請求項1に記載の包装材料。

【請求項3】

前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む、請求項2に記載の包装材料。

【請求項4】

前記表面保護層は、ポリアミド樹脂を更に含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装材料。

【請求項5】

前記ポリアミド樹脂がバイオマス由来成分を含む、請求項4に記載の包装材料。

【請求項6】

請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装材料を備える、包装製品。」

2 補正の適否

本件補正における請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1及び2を削除し、本件補正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を独立請求項とした上で、かかる独立請求項に記載された発明を特定するために必要な事項である包装材料の表面保護層に関して、層の構成をさらに特定する補正であって、本件補正前の請求項3に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1) 本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)の【請求項1】に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献の記載事項と引用発明

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ア.引用文献1

(ア)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特開2018-12744号公報(平成30年1月25日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。また、下線については当審において付与した。

・「【技術分野】

【0001】

本発明は、紙基材に表刷りするための溶剤型グラビア印刷インキ組成物に関する。

【背景技術】

【0002】

従来より、フィルム基材や紙基材上に印刷可能なグラビア印刷インキ組成物として、ポリアミド樹脂や硝化綿樹脂などを主成分とするものが知られている。

【0003】

特許文献1には、金属樹脂酸塩で変性させたポリアミド樹脂を含有する出版物用グラビア印刷インキが記載され、・・・

【0004】

特許文献2には、包装用グラビア印刷およびフレキソ印刷に使用する顔料または顔料調製物の使用方法であり、顔料単離直前に非イオン界面活性剤を添加し、バインダーとしてニトロセルロースを使用するものが記載されている・・・

【0006】

ニトロセルロース樹脂は、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロースであり、セルロース骨格はバイオマス材料である。

一方、ポリアミド樹脂は重合脂肪酸が原料となり、・・・。植物油由来である重合脂肪酸はバイオマス材料である。

ここで、バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの、と定義されている。・・・

前記特許文献1~3は、主に紙用途としてポリアミド樹脂やニトロセルロース樹脂が使用されるものであるが、耐水性、耐熱性、バイオマス度についての記載や示唆はない。

・・・

【0016】

紙を基材とする包装材としては、上記した紙器をはじめとする紙容器や液体紙容器、ラベル、蓋材、紙袋、バーガーラップなどがある。また、建材用の化粧紙や壁材などもあり、グラビア印刷により作製されている。

・・・

【0027】

また、地球温暖化対策としては、全世界的に取り組むべきもので、2015年に開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、各国の削減目標が提出された。・・・近年では企業にとって重要な事業戦略として「環境にやさしい」商品を提案し、いかに企業イメージを向上させるかが重視されてきている。・・・

したがって、廃棄されるものをいかに利用し、環境負荷を増加させずに「環境にやさしい」パッケージや材料としてアピールでき、紙用のさまざまな包装材や資材に使用できる溶剤型グラビア印刷インキ組成物が望まれていた。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0029】

そこで、本発明は、環境負荷を増加させない紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物であって、該インキ組成物を紙基材上に作成し、印刷塗膜としたときに該印刷塗膜中のバイオマス度が従来の紙用溶剤型グラビア印刷インキよりも高くなる表刷り紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物を提供することを目的とする。」

・「【課題を解決するための手段】

【0030】

本発明者らは、バイオマス材料であるニトロセルロース樹脂とバイオマス由来のポリアミド樹脂とキレートを含有する紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物であって、該インキ組成物を紙基材上に作成した印刷塗膜としたときに該印刷塗膜中のバイオマス度(顔料を含まない)が26~85質量%であることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。」

・「【0048】

さらに、本発明のインキ組成物には、デザイン性、用途、色相などの要求物性や、インキ安定性、印刷適性の向上を目的として、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤、帯電防止剤、離型剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤などを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、その印刷適性、インキ組成物の特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。また、バイオマス由来であるものが好ましい。」

・「【0056】

本発明の紙容器は、前記積層体を用いて作成することが好ましい。食品包装用の紙器やトレイ、カップ、皿、ボトル、テトラパック、ゲーブルトップ、ブリック、カートン缶、ケーキ箱などや日用品用などの液体紙容器や保水箱、粉洗剤箱などのボトルや箱の形態として好ましく使用できる。」

・「【実施例】

【0066】

・・・

【0069】

ワニス3(製造例3)

ニトロセルロース樹脂(固形分70%、バイオマス度49%)7部、バイオマス材料を使用したポリアミド樹脂(固形分100%、米糠由来ダイマー酸使用、バイオマス度80%)19.5部に、メチルシクロヘキサン44部、メタノール10部、イソプロピルアルコール12.5部、酢酸エチル7部を仕込み、溶解、混合し、ワニス3を作製した。

・・・

【0074】

[インキ組成物の作製]

インキ1(実施例1)

・・・

【0080】

インキ7(実施例7)

製造例3で作製したワニス3を60部に、墨顔料(ピグメントブラック7)10部、イソプロピルアルコール6部、メチルシクロヘキサン10部を仕込み、ペイントシェーカーにて練肉し、ミルベースを作製した。チタンアセチルアセテート(金属キレート)3部、メチルシクロヘキサン5部、イソプロピルアルコール3部、酢酸エチル3部にて、混合溶液を作製し、前記ミルベースに加えて、混合し、インキ7を作製した。

・・・

【0088】

[コーティング組成物の作製]

インキ15(実施例9)

製造例3で作製したワニス3を50部に、チタンアセチルアセテート(金属キレート)3部、メチルシクロヘキサン28部、イソプロピルアルコール14部、酢酸エチル5部にて、混合溶液を作製し、前記ミルベースに加えて、混合し、インキ15を作製した。

・・・

【0096】

5色機グラビア印刷機を用いて、60g/m2のラベル用コート紙に、第一ユニットでインキ7、第二ユニットでインキ15(略称:インキ15)を印刷して、巻き取り、積層体7を作製した。このとき、インキ7、15はCN104にて、希釈した。これによって、積層体7は、「インキ15/インキ7/コート紙」の構成の積層体となった。

・・・

【0107】

積層体1~17について、印刷塗膜のバイオマス度、耐熱性、密着性、耐水性を評価し、表1に結果を示した。

・・・」

・「【0112】

【表1】

[図:0001414605000001.jpg]

【0113】

表1によると、実施例10~20の積層体は、印刷面の耐熱性、耐水性に優れ、印刷面と紙基材層との密着性も良好であることが明確である。また、従来例である参考例2よりも印刷塗膜のバイオマス度が高く、環境負荷も少ない。・・・

また、・・・さらにグラビア印刷方式にて塗工できることから、食品包装用途に限らず、食品保存用途、農業用途、土木用途、漁業用途、自動車内外装用途、船舶用途、日用品用途、建材内外装用途、住設機器用途、医療・医療機器用途、医薬用途、家電品用途、家具類用途、文具類・事務用品用途、販売促進用途、商業用途、電機電子産業用途および産業資材用途などのさまざまな業態の各種紙容器、ラベル、蓋材、紙袋、紙製品などに広く適用できる。」

(イ)引用文献1の記載事項から把握される事項

上記(ア)の記載事項から以下のことがわかる。

・【0096】の記載から、積層体7は、「インキ15/インキ7/コート紙」の構成を有すること。

・【0069】の記載から、ワニス3(製造例3)は、ニトロセルロース樹脂(バイオマス度49%)7部、バイオマス材料を使用したポリアミド樹脂19.5部、メチルシクロヘキサン44部、メタノール10部、イソプロピルアルコール12.5部、酢酸エチル7部から製作されたものであること。

・【0088】の記載から、コーティング組成物は、インキ15(実施例9)として、製造例3で作製したワニス3を50部に、チタンアセチルアセテート(金属キレート)3部、メチルシクロヘキサン28部、イソプロピルアルコール14部、酢酸エチル5部から作製したものであること。また、ワニス3及びその余の組成並びに含有割合からみて、インキ15には、着色剤が含まれていないこと。

(ウ)引用文献1に記載された発明

上記(ア)(イ)を踏まえると、引用文献1には、積層体7(実施例16)として、以下の積層体の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認める。

「インキ15/インキ7/コート紙の構成を有する積層体7であって、
インキ15は、ニトロセルロース樹脂(バイオマス度49%)7部、バイオマス材料を使用したポリアミド樹脂19.5部、メチルシクロヘキサン44部、メタノール10部、イソプロピルアルコール12.5部、酢酸エチル7部から作製されたワニス3を50部に、チタンアセチルアセテート(金属キレート)3部、メチルシクロヘキサン28部、イソプロピルアルコール14部、酢酸エチル5部から作製したものであって、着色剤を含まない、
積層体7。」

イ.引用文献3

(ア)引用文献3の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2017-171910号公報(平成29年9月28日公開。以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

・「【特許請求の範囲】

【請求項1】

-80℃から-35℃の範囲のガラス転移温度を有し、かつ2から20μmの範囲の平均粒子径を有する樹脂粒子(A)と、熱可塑性バインダー樹脂(B)と、有機溶剤(C)とを含有する、印刷用コート剤組成物。

・・・

【請求項8】

少なくとも一部に印刷インキ層を有する基材と、前記基材の印刷インキ層の上に請求項1~7のいずれか1項に記載の印刷用コート剤組成物を用いて形成されたコート層とを有する、印刷物。

【請求項9】

前記基材が、紙基材である、請求項8に記載の印刷物。」

・「【技術分野】

【0001】

本開示は、印刷によって塗膜を形成でき、塗膜の手触り感及び耐摩擦性が良好である、印刷用コート剤組成物に関する。また、本開示は、上記印刷用コート剤組成物を用いて形成したコート層を有する印刷物に関する。」

・「【背景技術】

【0002】

従来、パソコンの筐体などの電気及び電子機器関連部品、インストルメントパネル、センターコンソール、ダッシュボード、及びドアトリムなどの自動車内装部品、椅子脚、肘掛け、手摺り、窓枠、及びドアノブなどの生活関連部品や家具建材関連部品などの用途のプラスチック製品の表面、又は化粧品用箱などの包装用箱体用途の紙製品の表面には、重厚感や高級感などの意匠性の点から、通常、艶消し塗料を用いて艶消し塗膜が形成されている。近年、このような艶消し塗膜の手触り感を更に向上することが求められている。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0007】

本発明は、上記の状況に鑑み、印刷によって塗膜を形成することができ、塗膜の手触り感、及び耐摩擦性が良好である、印刷用コート剤組成物を提供することを目的とする。」

・「【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明者は鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の印刷用コート剤組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の態様は以下に関する。

【0009】

本発明の第1の態様は、-80℃から-35℃の範囲のガラス転移温度を有し、かつ2μmから20μmの範囲の平均粒子径を有する樹脂粒子(A)と、熱可塑性バインダー樹脂(B)と、有機溶剤(C)とを含有する、印刷用コート剤組成物に関する。

・・・

【0016】

本発明の第2の態様は、上記印刷用コート剤組成物を用いて形成したコート層を有する印刷物に関する。一実施形態において、印刷物は、少なくとも一部に印刷インキ層を有する基材と、上記基材の印刷インキ層の上に上記印刷用コート剤組成物を用いて形成されたコート層とを有することが好ましい。

【0017】

一実施形態において、上記印刷物において、上記基材は、紙基材であることが好ましい。」

・「【発明を実施するための形態】

【0020】

・・・

【0022】

一実施形態において、印刷用コート剤組成物は、下記(1)、(2)及び(3)を満たすことを特徴とする。

(1)ガラス転移温度が-80℃から-35℃の範囲であり、平均粒子径が2μmから20μmの範囲の樹脂粒子(A)を含有する。

(2)熱可塑性バインダー樹脂(B)を含有する。

(3)有機溶剤(C)を含有する。

・・・

【0026】

樹脂粒子(A)は、上記ガラス転移温度の範囲及び上記平均粒子径の範囲を満たすものであればよく、樹脂粒子(A)を構成する樹脂の種類は特に限定されない。樹脂粒子(A)を構成可能な樹脂の一例として、ポリウレタン系樹脂、ポリナイロン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリシリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂などが挙げられる。例えば、ポリウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂及びその誘導体を意味する。

樹脂粒子(A)を構成するために、上記で例示した樹脂を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の樹脂を組合せて使用した例として、ポリウレタンアクリル系樹脂が挙げられる。一実施形態において、樹脂粒子(A)は、ポリウレタン系樹脂、及びポリアクリル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂から構成されることが好ましい。

樹脂粒子(A)は、公知の方法に従って製造することができる。また、市販品を使用してもよい。例えば、ポリアクリル系樹脂から構成される樹脂粒子として、根上工業社製の製品名「SS-010T」(Tg:-44℃、平均粒子径:10μm)を使用することができる。

例示した樹脂の中でも、一実施形態において、ポリウレタン系樹脂から構成される樹脂粒子(a-1)を使用することがより好ましい(以下、ポリウレタン系樹脂粒子(a-1)と称す)。・・・」

・「【0077】

<印刷物>

上記印刷用コート剤組成物は、少なくとも一部に印刷インキ層を有する各種基材の表面を覆うコート層(固体塗膜)を形成するために有効に使用することができる。コート層は、基材上の印刷インキ層の表面を保護し、更に印刷物の表面に優れた手触り感を付与することができる。印刷物の製造方法は、特に限定されない。例えば、基材上に印刷インキ組成物を印刷及び乾燥し、印刷インキ層を形成する工程と、次いで、上記基材の印刷インキ層の上に、印刷用コート剤組成物を印刷及び乾燥し、コート層(固体塗膜)を形成する工程とを有することが好ましい。」

・「【実施例】

【0088】

以下、実施例に沿って本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本明細書に記載する「部」、及び「%」は、特に注釈の無い場合、重量部、及び重量%を表わす。

・・・

【0095】

以下に、熱可塑性バインダー樹脂(B)の一例として、ポリウレタン系樹脂の合成例を示す。

【0096】

(合成例1)

・・・

【0105】

2.ポリウレタン系樹脂粒子(A)の調製

以下にポリウレタン系樹脂粒子の合成例を示す。・・・

【0108】

(合成例6)

2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水800gを仕込み、この中にヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ90SH-100、信越化学工業株式会社製)37gを溶解して分散媒を調製した。

一方、ポリオールとして数平均分子量6000のアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタジオールから得られるポリエステルジオール(PMPA、株式会社クラレ製)187.5g、ポリイソシアネート成分としてヘキサメチレンジイソシアネートの1つのイソシアネート基がイソシアヌレート構造で3量化したトリイソシアネート112.5g、希釈溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)120g、及び触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.003gを混合して、樹脂粒子原料を調製した。この樹脂粒子原料中のイソシアネート成分とポリオール成分のモル比(NCO/OH)は9.8であった。

先に調製した分散媒を700rpmで攪拌しながら、上記樹脂粒子原料を加え、懸濁液を調製した。次いで、攪拌を継続しながら懸濁液を60℃に昇温し、4時間にわたって反応させた後、室温まで冷却した。冷却後、固液分離し、水で充分に洗浄した後、50℃で20時間にわたって乾燥して、樹脂粒子を得た。

このようにして得られたポリウレタン系樹脂粒子(A-1)は、平均粒子径が7μmであり、ガラス転移温度が-54℃であった。」

・「【0112】

3.印刷用コート剤組成物の調製

以下に印刷用コート剤組成物の調製例を示す。

(実施例1)

ポリウレタン系樹脂溶液PU1を20部、ポリウレタン系樹脂粒子(A-1)を8部、ポリエチレンワックス(三井化学社製、110P、融点109℃)を2部、及び混合溶剤(酢酸エチル/IPA=50/50)70部を、エアディスパー(回転数800rpm)を用いて60分にわたって混合し、印刷用コート剤組成物S1を得た。

【0113】

(実施例2~17)

表2-1に示した原料をそれぞれ記載された配合率で使用し、実施例1と同様の手法に従って、印刷用コート剤組成物S2~S17を得た。

表2-1に記載の原料は、以下に示すとおりである。

【0114】

<樹脂粒子(A)>

ポリウレタン系樹脂粒子(a-1)

・A-1~A-4:合成例6~9で調製したポリウレタン系樹脂粒子(A-1)~(A-4)
・SS-010T:根上工業社製のアクリル粒子、Tg-44℃、平均粒子径10μm)

【0115】

<熱可塑性バインダー樹脂(B)>

ポリウレタン系樹脂(b-1)

・PU1~PU5:合成例1~5で調製したポリウレタン系樹脂溶液PU1~PU5(固形分30%)

セルロース系樹脂(b-2)

・DHX3-5:稲畑産業社製のニトロセルロース、固形分30%IPA溶液

塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体(b-3)

・ソルバインTA3:日信化学社製の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、固形分30%酢酸エチル溶液、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=83/4/13、重量平均分子量25000

ケトン樹脂

・K-90:荒川化学社製のケトン樹脂、固形分30%MEK溶液、Tg90℃

<添加剤>

・110P:三井化学社製のポリエチレンワックス、融点109℃

・・・

【0117】

【表2-1】

[図:0001414605000002.jpg]

」

・「【0119】

4.印刷物

以下に上記印刷用コート剤組成物を使用した印刷物の作製方法の例を示す。

(実施例18)

<印刷物G1の作製>

紙基材(大王製紙社製の製品名「リュウオウコート紙」、65g/m2)と、ヘリオ175L(版式コンプレスト)ベタ版とを備えた小型グラビア印刷機を準備した。グラビアインキ(エコカラーF92墨:東洋インキ社製)を、ザーンカップ#3で15秒となるように、混合溶剤(MEK/n-プロピルアセテート/IPA=50/30/20)で希釈した。希釈したグラビアインキを上記印刷機に供給し、次いで、印刷速度80m/min、乾燥温度60℃の条件下で、100mの印刷を行い、印刷物を得た。

更に、印刷用コート剤組成物S1を混合溶剤(MEK/n-プロピルアセテート/IPA=50/30/20)でザーンカップ#3で15秒となるように希釈した溶液を調製し、腐蝕175L(版深40μm)ベタ版を備えた小型グラビア印刷機を用いて、先に得た印刷物の印刷面に対して、印刷速度80m/min、乾燥温度60℃の条件下で、100mの印刷を行い、印刷物G1を得た。

【0120】

(実施例19~34)

<印刷物G2~G17の作製>

実施例18と同様の方法により、表2-1に記載の印刷用コート剤組成物S2~S17を用いて、印刷物G2~G17(実施例)を得た。

・・・」

・「【0130】

【表3-1】

[図:0001414605000003.jpg]

」

(イ)引用文献3の記載事項から把握される事項

折りたたみ中(クリックで表示)

上記(ア)の記載事項から以下のことがわかる。

・上記【0077】の記載から、印刷物に関して、印刷用コート剤組成物は、印刷インキ層を有する基材の表面を覆うコート層(固体塗膜)を形成するために使用することができ、コート層は、基材上の印刷インキ層の表面を保護するものであること。

・上記【0077】及び【0119】の記載から、印刷物G1は、紙基材にグラビアインキによる印刷インキ層を形成し、印刷用コート剤組成物S1によるコート層を形成したものであり、さらに、上記【0120】及び【表3-1】の記載を合わせると、実施例23の印刷物G6は、印刷物G1と同様に、紙基材にグラビアインキによる印刷インキ層を形成し、印刷用コート剤組成物S6によるコート層を形成したものであること。

・上記【0114】、【0115】及び【表2-1】の記載から、印刷用コート剤組成物S6は、樹脂粒子(A)として「A-1」、熱可塑性バインダー樹脂(B)として「稲畑産業社製のニトロセルロース」「DHX-3-5」、添加物として、「ポリエチレンワックス」、有機溶剤(C)として、酢酸エチル/IPAを含有するものであること、また、各組成及びその割合からみて、コート層には、着色剤が含まれていないこと。

・上記【0026】、【0108】及び【0114】の記載から、樹脂粒子(A)としての「A-1」は、合成例6で調製したイソシアネート成分とポリオール成分を含む樹脂粒子原料から得たポリウレタン系樹脂粒子であること。

(ウ)引用文献3に記載された発明

上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用文献3には、印刷物G6として、以下の発明(以下、「引用文献3発明」という。)が記載されていると認める。

<引用文献3発明>

「紙基材にグラビアインキによる印刷インキ層を形成し、印刷用コート剤組成物S6によるコート層を形成した印刷物G6であって、
印刷用コート剤組成物S6によるコート層は、
イソシアネート成分とポリオール成分を含む樹脂粒子原料から得たポリウレタン系樹脂粒子(A-1)と、
稲畑産業社製のニトロセルロースDHX-3-5である熱可塑性バインダー樹脂(B)と、
ポリエチレンワックスである添加物と、
酢酸エチル/IPAから成る有機溶剤(C)と、
を含有し、
着色剤を含まない、
印刷物G6。」

ウ.引用文献2

原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された引用文献である特開2018-62642号公報(平成30年4月19日公開。以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

・「【技術分野】

【0001】

本発明は、裏刷り用溶剤型グラビア印刷インキ組成物をグラビア印刷法によりフィルム基材層上に作成した印刷塗膜に関する。」

・「【背景技術】

【0002】

従来より、フィルム基材に印刷可能なグラビア印刷インキ組成物として、ポリウレタン樹脂を主成分とするものが知られている。特に、ポリマージオールとジイソシアネートを用いるポリウレタン樹脂は、適度な極性と凝集力を有しており、印刷適性に影響を与えるエステル系/アルコール系溶剤への溶解性や、耐ブロッキング性などの皮膜物性を両立できるため、広く用いられている。

特に、耐ボイル性や耐ブロッキング性などの皮膜物性を向上させるために、ポリマージオールとして特定のグリコール成分を使用するものが提案されている。

・・・

【0014】

また、地球温暖化対策としては、全世界的に取り組むべきもので、2015年に開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、各国の削減目標が提出された。・・・近年では企業にとって重要な事業戦略として「環境にやさしい」商品を提案し、いかに企業イメージを向上させるかが重視されてきている。・・・

したがって、食料品として廃棄されるものをいかに利用し、環境負荷を増加させずに「環境にやさしい」パッケージとしてアピールでき、フィルム用の包装材に使用できる溶剤型グラビア印刷インキ組成物をグラビア印刷法によりフィルム基材層上に印刷塗膜としたときに、該印刷塗膜中のバイオマス度が高くなる印刷塗膜が望まれていた。」

・「【発明を実施するための形態】

【0020】

以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。

【0021】

本発明の印刷塗膜は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤およびアルコール系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種と、バイオマス由来成分とを含有するバイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂を含み、前記バイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂のアミン価が1~13mgKOH/gであり、かつ、前記バイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000である裏刷り用溶剤型グラビア印刷インキ組成物(以下、単に「インキ組成物」ともいう。)を、グラビア印刷法によりフィルム基材層上に印刷塗膜としたとき、該印刷塗膜中のバイオマス度(顔料を含まない)(以下、単に「バイオマス度」ともいう。)が3~40質量%であることが好ましい。

【0022】

前記バイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂は、ポリオール(I)とポリイソシアネート(II)および鎖伸長剤(III)を反応させることにより得られ、前記ポリオール(I)、前記ポリイソシアネート(II)および前記鎖伸長剤(III)の少なくとも1つがバイオマス素材を使用して製造されることが好ましい。」

エ.本審決において例示する文献

本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-225863号公報(平成23年11月10日公開。以下、「周知例」という。)には、次の記載がある。

・「【請求項1】

植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とを用いて合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)を用いて合成されてなるバイオポリエーテルポリオール(C)、のいずれかのポリオールと、イソシアネート成分(d)とを反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、上記バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28~95質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂。」

(3) 本件補正発明と引用文献3発明との対比・判断

ア.対比

本件補正発明と引用文献3発明とを対比する。

引用文献3発明の「紙基材」は、印刷物G6を構成する層であるから、本件補正発明の「紙基材層」に相当する。また、引用文献3発明の「グラビアインキによる印刷インキ層」及び「印刷用コート剤組成物S6によるコート層」は、その配置及び機能から見て、本件補正発明の「印刷層」及び「表面保護層」にそれぞれ相当する。そうすると、引用文献3発明の「紙基材にグラビアインキによる印刷インキ層を形成し、印刷用コート剤組成物S6によるコート層を形成した印刷物G6」は、本件補正発明の「少なくとも、表面保護層、印刷層、紙基材層が順に積層された包装材料」の限りで、本件補正発明と一致する。

また、引用文献3発明の「コート層」が「稲畑産業社製のニトロセルロースDHX-3-5である熱可塑性バインダー樹脂(B)」を含有することは、ニトロセルロースが植物に存在する高分子であるセルロースから製造されるものであることに照らすと、本件補正発明の「表面保護層は、バイオマス由来のニトロセルロースを含」むことに相当する。

さらに、引用文献3発明の「コート層」が「イソシアネート成分とポリオール成分を含む樹脂粒子原料から得たポリウレタン系樹脂粒子(A-1)」を含有することは、本件補正発明の「表面保護層」が「ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を」含むことに相当する。

そして、引用文献3発明の「コート層」において「着色剤を含まない」ことは、本件補正発明の「前記表面保護層は、着色剤を含ま」ないことに相当する。

以上を踏まえると、本件補正発明と引用文献3発明とは、

「少なくとも、表面保護層、印刷層、紙基材層が順に積層された包装材料であって、
前記表面保護層は、バイオマス由来のニトロセルロースを含み、
前記表面保護層は、着色剤を含まず、
前記表面保護層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を更に含む、
積層体。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3-1>

本件補正発明は、「包装材料」であるのに対し、引用文献3発明は、印刷物である点。

<相違点3-2>

表面保護層に配合されているポリオールとイソシアネート化合物との硬化物に関し、本件補正発明は、「前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む」のに対し、引用文献3発明は、そのような構成を備えていない点。

イ.判断

以下、相違点について検討する。

(ア) 相違点3-1について

上記(2)イ(ア)の【0002】の記載から見て、引用文献3は、包装用箱体用途の紙製品を含む様々な用途の表面の塗膜に関するものであって、同【0007】~【0009】、【0016】、【0017】には、前記各用途の表面に用いられる塗膜における【発明が解決しようとする課題】及び【課題を解決するための手段】が記載されているのであるから、引用文献3における【課題を解決するための手段】を具体化した各実施例についても、包装用箱体用途の紙製品を含む様々な用途への適用が意図されていることは明らかである。

そうすると、引用文献3における【課題を解決するための手段】を具体化した実施例23である印刷物G6に基づいて認定した引用文献3発明を包装用箱体用途とすること、換言すれば、引用文献3発明の印刷物G6を包装材料とすることは、引用文献3に記載されているに等しい事項であるから、相違点1は実質的な相違点でない。

仮に、相違点3-1が実質的な相違点であったとしても、上記各記載から、引用文献3発明を包装材料とし、相違点3-1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ) 相違点3-2について

包装材料の塗膜において、バイオマス度の向上は、本願出願当時おいて、例示するまでもなく周知の技術課題であったといえる。なお、この点、要すれば、上記(2)ア(ア)の【背景技術】の記載及び上記(2)ウの【背景技術】の記載を参照されたい。

そして、上記(2)ウの【0002】及び【0022】の記載からみて、塗膜に利用される「ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物」において、「ポリオールまたはイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む」ようにした、硬化物は当業者に周知の技術であったといえる。なお、この点、要すれば、さらに、上記(2)エの【請求項1】の記載も参照されたい。

してみれば、引用文献3発明の印刷物G6においても、上記周知の技術課題に基づき、塗膜を構成する成分である「ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物」のポリオール又はイソシアネート化合物の少なくともいずれかをバイオマス由来とすることにつき、動機付けが存在するから、引用文献3発明の印刷物G6において、相違点3-2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、そのことによる効果について検討しても、本願明細書においては、単にバイオマス成分を採用することでバイオマス比率が高まると記載されているだけであって、当業者が予測し得る効果に過ぎない。

(ウ)まとめ

以上のとおり、本件補正発明は、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.審判請求人の主張について

審判請求人は、審判請求書の「(引用文献3,2の組合せについて)」において、引用文献3のコーティングのための組成物である印刷用コート剤組成物と、引用文献2の多色印刷のために重ね刷りされる最も上側の印刷層とは、構成及び機能の点で相違しているとし、相違点3-2は、容易想到ではない旨主張する。

しかしながら、引用文献3発明は、表面保護層にポリオール及びイソシアネート化合物を用いた硬化物が配合されているところ、上記相違点3-2の判断のとおり、かかる硬化物として、周知のバイオマス由来の材料を含む硬化物を利用することは、バイオマス度向上という周知の技術課題に照らし、当業者であれば容易に想到し得たことであるから、請求人の上記主張には首肯できない。

(4) 本件補正発明と引用文献1発明との対比・判断

ア.対比

本件補正発明と引用文献1発明を対比する。

引用文献1発明の「コート紙」は、積層体7を構成する層であるから、本件補正発明の「紙基材層」に相当する。同様に、引用文献1発明の「インキ7」は本件補正発明の「印刷層」に、引用文献1発明の「インキ15」は本件補正発明の「表面保護層」に相当する。そうすると、引用文献1発明の「インキ15/インキ7/コート紙」の構成を有する積層体7は、本件補正発明の「少なくとも、表面保護層、印刷層、紙基材層が順に積層された包装材料」の限りで、本件補正発明と一致する。

また、引用文献1発明の「インキ15は、ニトロセルロース樹脂(バイオマス度49%)7部から製作したワニス3」「から作製したもの」であることは、本件補正発明の「前記表面保護層は、バイオマス由来のニトロセルローを含み」に相当し、引用文献1発明の「インキ15は」、「着色剤は含まない」ことは、本件補正発明の「表面保護層は、着色剤を含まず」という事項に相当する。

これらを踏まえると、本件補正発明と引用文献1発明とは、

「少なくとも、表面保護層、印刷層、紙基材層が順に積層された包装材料であって、
前記表面保護層は、バイオマス由来のニトロセルロースを含み、
前記表面保護層は、着色剤を含まない、
積層体。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-1>

本件補正発明は、「包装材料」であるのに対し、引用文献1発明は、積層体である点。

<相違点1-2>

表面保護層に関し、本件補正発明は、「ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を更に含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む」のに対し、引用文献1発明は、ニトロセルロース樹脂(バイオマス度49%)7部、バイオマス材料を使用したポリアミド樹脂19.5部、メチルシクロヘキサン44部、メタノール10部、イソプロピルアルコール12.5部、酢酸エチル7部から作製されたワニス3を50部に、チタンアセチルアセテート(金属キレート)3部、メチルシクロヘキサン28部、イソプロピルアルコール14部、酢酸エチル5部から作製した点。

イ.判断

以下、相違点について検討する。

(ア)相違点1-1について

上記(2)ア(ア)の【0016】及び【0113】の記載から見て、引用文献1に記載されている積層体は包装材料へ適用することが意図されていることは明らかである。

そうすると、引用文献1における【課題を解決するための手段】を具体化した実施例16である積層体7に基づいて認定した引用文献1発明を包装材料とすることは、引用文献1に記載されているに等しい事項であるから、相違点1-1は実質的な相違点でない。

仮に、相違点1-1が実質的な相違点であったとしても、上記記載から、引用文献1発明を包装材料とし、相違点1-1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点1-2について

上記(2)ア(ア)の【0001】、【0029】及び【0030】の記載のとおり、引用文献1は、グラビア印刷インキ組成物に係る発明を開示するものである。

ここで、グラビア印刷インキは、溶媒と添加剤(着色剤含む)と樹脂(バインダー樹脂)からなるものであり、このうち、バインダー樹脂として、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物は周知慣用のものであるところ、引用文献1発明において、バインダー樹脂として、ニトロセルロース樹脂及びバイオマス材料を使用したポリアミド樹脂に換えて、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とすることは、公知材料の中からの材料の選択にすぎないし、さらに、上記(2)ア(ア)の【0029】の記載のとおり、引用文献1が、バイオマス度を従来のグラビア印刷インキよりも高めることを目的とするものであることに照らすと、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を採用する際に、周知の「ポリオールまたはイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む」ようにした硬化物(上記(2)ウの【0002】及び【0022】、並びに、上記(2)エ)を採用することは、技術の具体的適用に伴う設計変更にすぎない。

また、上記【0029】の記載のとおり、引用文献1が、バイオマス度を従来のグラビア印刷インキよりも高めることを目的とするものであることに照らすと、引用文献1発明において、バインダー樹脂として、ニトロセルロース樹脂及びバイオマス材料を使用したポリアミド樹脂に加えて、周知の「ポリオールまたはイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む硬化物を採用することも格別の困難性なく、想到可能である。

そうすると、引用文献1発明において、ニトロセルロース樹脂及びバイオマス材料を使用したポリアミド樹脂に換えて、又は、バインダー樹脂として、ニトロセルロース樹脂及びバイオマス材料を使用したポリアミド樹脂に加えて、周知の「ポリオールまたはイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む硬化物を採用することで、相違点1-2に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、そのことによる効果について検討しても、本願明細書においては、単にバイオマス成分を採用することでバイオマス比率が高まると記載されているだけであって、当業者が予測し得る程度の効果に過ぎない。

(ウ)まとめ

以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.審判請求人の主張について

(ア)引用文献1を主引例とする進歩性について

審判請求人は、審判請求書の「(引用文献1,2の組合せについて)」において、引用文献1の、コーティングのための組成物であるインキ15と、引用文献2の、多色印刷のために重ね刷りされる最も上側の印刷層とは、構成及び機能の点で相違しているから、引用文献1に記載されたインキ15に、引用文献2に記載のバイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂を配合してみることは、当業者が容易に想到し得るものではないと主張する。

なるほど、引用文献1発明のインキ15と引用文献2の印刷層とは、構成及び機能の点で相違しているとはいえる。しかしながら、引用文献2から参酌した技術事項は「ポリオール又はイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む」ことである。引用文献1発明のインキ15と引用文献2の印刷層とは、いずれもバインダー樹脂を含むものであり、当該引用文献2の「ポリオールまたはイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む」ものは、引用文献1発明のインキ15の当該バインダー樹脂に適用可能なものである。すなわち、当該バインダー樹脂に対してバイオマス由来成分を利用しようとすることは、引用文献1発明のインキ15や引用文献2の印刷層の構成及び機能の如何にはかかわらないものといえる。よって、請求人の上記主張には首肯できない。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

以上のことから、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった上記第2の2(2)の引用文献1又は3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、引用文献1又は3に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができない、というものである。

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び3の記載事項は、上記第2の2(2)ア及びイに記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の1(1)の本件補正発明から、包装材料の表面保護層に関して、層構成をさらに限定する事項を削除したものである。

そして、本願発明と引用文献3発明又は引用文献1発明とを対比すると、上記第2の2(3)および(4)で対比したとおりであって、相違点3-1又は相違点1-1で一応相違している。

しかしながら、上記第2の2(3)又は(4)での判断のとおり、相違点3-1又は相違点1-1は実質的な相違点でない、又は、当業者が容易に想到し得たものである。

そうすると、本願発明は、引用文献1発明又は引用文献3発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである、又は、引用文献1発明又は引用文献3発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、又は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-021256

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