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特許拒絶査定不服審判

2019-011986

多層フィルム及び包装体

審判番号
2019-011986
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-108686外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年09月10日
審決日
2020年03月24日
公報発行日
2020年06月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-108686「多層フィルム及び包装体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-221760〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成27年5月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年12月14日付け:拒絶理由通知 平成31年2月14日   :意見書、手続補正書の提出 令和1年6月4日付け   :拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和1年9月10日    :審判請求書の提出、 同時に手続補正書の提出 第2 令和1年9月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和1年9月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 結晶性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第1のフィルムと、 前記結晶性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第2のフィルムと、 を交互に繰り返し積層した繰り返し部を備え、 前記第1のフィルムの積層数が200以上であり、 前記第2のフィルムの積層数が200以上であり、 前記第1のフィルムが結晶核剤を含み、 前記結晶性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、多層フィルム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成31年2月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 結晶性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第1のフィルムと、 前記結晶性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第2のフィルムと、 を交互に繰り返し積層した繰り返し部を備え、 前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムの積層数が200以上であり、 前記第1のフィルムが結晶核剤を含む、多層フィルム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1のフィルムの積層数」及び「第2のフィルムの積層数」について、それぞれ「200以上」と限定し、「結晶性樹脂」について「ポリオレフィン系樹脂である」ことを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-184562号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(以下、下線は、理解の便宜の為に、当審が付した。) 「【請求項1】 結晶性樹脂Aを有する第1の層と、結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層とを交互に繰り返し積層してなる繰り返し部を含む多層フィルムであって、 前記結晶性樹脂Aの重量平均分子量が40,000以上、200,000以下であり、 前記第1の層と第2の層のそれぞれの平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であることを特徴とする多層フィルム。」 「【0006】 本発明の目的は、延伸工程を伴うことなくガスバリア性と成形加工性を両立した多層フィルム及び包装体を提供することである。」 「【0011】 図1に示すように、本発明の多層フィルム100は結晶性樹脂Aを有する第1の層1と、結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層2を交互に繰り返し積層してなる繰り返し部10を含む多層フィルムである。 すなわち、本発明の多層フィルムは、結晶性樹脂Aを結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bで挟み込むことによって、結晶性樹脂Aの結晶成分の成長方向を制御でき、球晶を多く有する従来の高分子材料に比して、有利な配向状態を形成することが可能となる。 【0012】 また、第1の層1と第2の層2のそれぞれの平均層厚みは10nm以上、1000nm以下である。 これにより、サイズ効果による高分子結晶の特異的な構造を形成し、結晶性樹脂Aの結晶成分の生長をより精密に制御できるため、従来の熱可塑性樹脂の特徴を損なうことなく多層フィルム100のガスバリア性を向上させることが出来ると考えられる。第1の層1と第2の層2の平均層厚みが1000nmより厚い場合には、フィルム中に占める高分子結晶の構造制御が達成された部位の割合が極端に低下するため、ガスバリア性向上の効果が十分ではなくなる。第1の層1と第2の層2の平均層厚みが10nmより薄い場合にも、また同様である。」 「【0015】 また、多層フィルム100が有する繰り返し部10の数は、特に限定されないが、10以上、10000以下であることが好ましく、100以上、5000以下であることがより好ましい。 また、多層フィルム100が有する繰り返し部10の数が前記範囲内であり、且つ、第1の層1と第2の層2の平均層厚みが前記範囲内であることにより、結晶性樹脂Aの結晶成分の生長を精密に制御できるため、ガスバリア性の高いフィルムを得ることができる。特に、100nm以下の層が100層以上の場合にはガスバリア性を更に向上させることが出来る。また、100nm以下の層が1000層以上の場合にはガスバリア性を更に向上させることが出来る。上限値は特に設定されないが、10000層以下であることが好ましい。」 「【0018】 結晶性樹脂Aとしては、結晶性を有し、且つ重量平均分子量が前記範囲内であるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレン‐2,6‐ナフタレート、などのポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂などが挙げられる。」 「【0022】 また、多層フィルム100に用いられる結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bは、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。また、各層中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無期粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などが添加されていても良い。」 「【0024】 繰り返し部10において、結晶性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bは異なるものであれば、その組み合わせは特に限定されないが、例えば、結晶性樹脂Aがポリオレフィン樹脂であるとき熱可塑性樹脂Bがポリプロピレン、エチレン‐環状オレフィンのいずれか1つ以上を含むことが好ましく、結晶性樹脂Aがポリエチレン樹脂であるとき熱可塑性樹脂Bがポリプロピレン、エチレン‐環状オレフィンのいずれか1つ以上を含むことがより好ましく、結晶性樹脂Aが高密度ポリエチレンであるとき熱可塑性樹脂Bがポリプロピレン、エチレン‐環状オレフィンのいずれか1つ以上を含むことがより一層好ましい。 これにより、より一層厳密な結晶生長制御、配向制御が可能となり、成形性、ガスバリア性に優れた多層フィルム100が得られる。」 「【0032】 多層フィルム100の製膜は、方法は限定しないが、徐冷により結晶性樹脂Aの結晶化を促すことが好ましい。徐冷によって結晶性樹脂Aの結晶化速度を最適化することにより、結晶性樹脂Aの結晶配向が進行し、よりガスバリア性の優れたフィルムを作製する事が出来る。」 したがって、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「結晶性樹脂Aを有する第1の層と、結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層とを交互に繰り返し積層してなる繰り返し部を含む多層フィルムであって、前記第1の層と第2の層のそれぞれの平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であり、 100nm以下の層が100層以上の場合にはガスバリア性を更に向上させることが出来、100nm以下の層が1000層以上の場合にはガスバリア性を更に向上させることが出来るものであり、 各層中には、結晶核剤が添加されていても良い、 結晶性樹脂Aは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのオレフィン樹脂である、多層フィルム。」 (3)本件補正発明と引用発明との対比・判断 ア 特許法第29条第1項第3号について (ア)引用発明の「多層フィルム」は、その構成からみて、本件補正発明の「多層フィルム」に相当する。 (イ)引用発明の「多層フィルム」の「平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であ」る「結晶性樹脂Aを有する第1の層」及び「平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であ」る「結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層」は、それぞれ、本件補正発明の「結晶性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第1のフィルム」及び「前記結晶性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第2のフィルム」に相当するから、引用発明1の「繰り返し部」は、本件補正発明の「繰り返し部」に相当する。 (ウ)引用発明の「100nm以下の層が1000層以上」であることは、「結晶性樹脂Aを有する第1の層と、結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層とを交互に繰り返し積層してなる」結果として1000層以上になる、すなわち、「第1の層」及び「第2の層」のいずれもが200層以上あるから、本件補正発明の「前記第1のフィルムの積層数が200以上であり、前記第2のフィルムの積層数が200以上であ」ることに相当する。 (エ)引用発明の「各層中には、結晶核剤が添加されていても良い」ことは、「結晶性樹脂Aを有する第1の層」に「結晶核剤が添加されてい」ることを選択肢に含むことであるから、本件補正発明の「第1のフィルムが結晶核剤を含」むことに相当する。 (オ)引用発明の「結晶性樹脂Aは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのオレフィン樹脂である」ことは、本件補正発明の「結晶性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である」ことに相当する。 以上(ア)~(オ)から、本件補正発明と引用発明とは、全ての点で一致し、相違しない。 したがって、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 イ 特許法第29条第2項について (ア)引用発明の「多層フィルム」は、その構成からみて、本件補正発明の「多層フィルム」に相当する。 (イ)引用発明の「多層フィルム」の「平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であ」る「結晶性樹脂Aを有する第1の層」及び「平均層厚みが10nm以上、1000nm以下であ」る「結晶性樹脂Aとは異なる熱可塑性樹脂Bを有する第2の層」は、それぞれ、本件補正発明の「結晶性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第1のフィルム」及び「前記結晶性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第2のフィルム」に相当するから、引用発明1の「繰り返し部」は、本件補正発明の「繰り返し部」に相当する。 (ウ)引用発明の「結晶性樹脂Aは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのオレフィン樹脂である」ことは、本件補正発明の「結晶性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である」ことに相当する。 以上(ア)~(ウ)から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、一応相違する。 [一致点] 「結晶性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第1のフィルムと、 前記結晶性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を有し、平均層厚みが10~1000nmである第2のフィルムと、 を交互に繰り返し積層した繰り返し部を備え、 前記結晶性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、多層フィルム。」 [相違点1] 本件補正発明が「前記第1のフィルムの積層数が200以上であり、前記第2のフィルムの積層数が200以上であ」るのに対し、引用発明は「100nm以下の層が100層以上」でもある点。 [相違点2] 本件補正発明が「前記第1のフィルムが結晶核剤を含」んでいるのに対し、引用発明は「各層中には、結晶核剤が添加されていても良い」とされており、「結晶性樹脂Aを有する第1の層」に「結晶核剤が添加されてい」ないことも選択肢に含む点。 そこで、相違点について検討する。 [相違点1]について 引用発明は、「100nm以下の層が1000層以上の場合にはガスバリア性を更に向上させることが出来るもので」もあるのだから、引用発明の「第1の層」及び「第2の層」のそれぞれを200層以上とし、本件補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が、引用発明を具体化する際、適宜になし得たことである。 また、本件補正発明の「第1のフィルムの積層数が200以上」及び「第2のフィルムの積層数が200以上」という範囲について、本願の明細書の記載を参照したが、実施例の「バリア層の積層数」が「2053」のものと、比較例の「バリア層の積層数」が「1」のものが記載されているに過ぎず、「200」という積層数を境に顕著な効果の差があるとの裏付けは見い出せないから、「200」という積層数について、臨界的意義があるとはいえない。 [相違点2]について 引用文献には、前記(2)に摘記したとおり「【0032】・・・徐冷により結晶性樹脂Aの結晶化を促すことが好ましい。・・・結晶性樹脂Aの結晶配向が進行し、よりガスバリア性の優れたフィルムを作製する事が出来る。」と記載されているから、引用発明には、「結晶性樹脂Aの結晶化を促す」動機が存在するところ、結晶化を促す手段として結晶核剤を用いることは周知(例 特開2014-201309号公報の【0004】~【0005】)であるから、引用発明において、「結晶性樹脂Aを有する第1の層」に「結晶核剤を添加」し、本件補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が、引用発明を具体化する際、適宜になし得たことである。 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和1年9月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年2月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、5~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、この出願の請求項1、5~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献:特開2014-184562号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1のフィルムの積層数」及び「第2のフィルムの積層数」並びに「結晶性樹脂」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明であり、もしくは、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であり、もしくは、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、もしくは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-011986

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