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特許拒絶査定不服審判

2024-017993

ガスバリア性積層体、包装材料用積層体および包装材料

審判番号
2024-017993
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-168345
請求日
2024年11月11日
審決日
2026年07月17日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】大日本印刷株式会社
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】浅野 真理
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 佐藤 秀之
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P18 .575-WZ (B32B) / P18 .121-WZ (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-168345「ガスバリア性積層体、包装材料用積層体および包装材料」拒絶査定不服審判事件〔令和2年3月19日出願公開、特開2020-40258〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年9月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 8月25日付け:拒絶理由通知書 令和4年10月31日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 2月16日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和5年 4月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 7月31日付け:拒絶理由通知書 令和5年10月 2日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年12月27日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和6年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出 令和6年 5月31日付け:拒絶理由通知書 令和6年 8月 1日 :意見書、手続補正書の提出 令和6年 8月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (令和6年 8月 9日 :原査定の謄本の送達) 令和6年11月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和8年 4月16日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和8年 6月15日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和8年6月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和8年6月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項4の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。) 「【請求項4】 基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層とを備える包装材料用積層体であって、 前記基材が、ポリエチレンにより構成される延伸樹脂フィルムであり、 前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、接着性樹脂層と、ポリエチレン樹脂層とを少なくとも備え、 前記ガスバリア性樹脂層、前記接着性樹脂層および前記ポリエチレン樹脂層が共押延伸樹脂フィルムであり、 前記ヒートシール層がポリエチレンにより構成される未延伸樹脂フィルム、または溶融押出層であり、 当該包装材料用積層体全体におけるポリエチレンの含有量は、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和6年11月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4の記載は次のとおりである。 「【請求項4】 基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層とを備える包装材料用積層体であって、 前記基材が、ポリエチレンにより構成される延伸樹脂フィルムであり、 前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、接着性樹脂層と、ポリエチレン樹脂層とを少なくとも備え、 前記ガスバリア性樹脂層、前記接着性樹脂層および前記ポリエチレン樹脂層が共押延伸樹脂フィルムであり、 前記ヒートシール層がポリエチレンにより構成され、 当該包装材料用積層体全体におけるポリエチレンの含有量は、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「ヒートシール層」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項4に記載された発明と補正後の請求項4に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項4に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項等 ア 引用文献1 (ア)令和8年4月16日付け拒絶理由通知(以下「先の拒絶理由通知」という。)の引用文献1である、特表2018-511504号公報(以下「引用文献1」という。)には以下の記載がある(なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。)。 「【請求項1】 ポリマー材料から作製される積層構造体であって、前記積層構造体が、 A) A.1) HDPE組成物を含む第1-A層;並びに A.2) LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層 を含む外側ウェブ、 B) B.1) 前記外側ウェブと接触する第1-B層であって、前記第1-B層が、LLDPE及びMDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む層; B.2) HDPE組成物を含む第2-B層;並びに B.3) シーラント組成物を含む第3-B層 を含む内側ウェブ、 但し、 I) 前記外側ウェブが、前記内側ウェブに積層され、 II) 前記積層構造体が、前記外側層と前記内側層との境界面にて印刷され、 III) 前記HDPE、MDPE、LLDPE及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成すること を含む、構造体。 ・・・ 【請求項4】 前記外側ウェブが、2:1から10:1の縦方向配向に供される、請求項2に記載の構造体。 ・・・ 【請求項6】 バリア層が、前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置するときはいつも、前記内側ウェブが、前記バリア層を更に含む、請求項1に記載の構造体。 【請求項7】 前記バリア層が、EVOHを含み、前記バリア層の全重量が、前記EVOHの合計重量と前記構造体に使用されるポリエチレンの全重量とに基づいて、5重量%未満であることを更に条件とする、請求項6に記載の構造体。 【請求項8】 2つの結合層が、第1結合層が、前記バリア層の一方の側に位置し、第2結合層が、前記バリア層の他方の側に位置するように含まれる、請求項7に記載の構造体。 【請求項9】 請求項1に記載の構造体から調製されるスタンドアップパウチ。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、第1ポリエチレンウェブを、第2ポリエチレンウェブに積層することによって調製される印刷された積層構造体に関する。該積層構造体は、スタンドアップパウチ(stand up pouch:自立袋)の調製に特に適している。」 「【0030】 更に、核形成剤が存在すると、HDPE層のモジュラスを(同等の厚さの非核形成層と比べって)改善することが観察されている。 上記のタイプの核形成HDPEブレンド組成物を使用すると、酸素及び水の透過に対する「バリア」をもたらす。このバリア層の性能は、多くの品物に適している。しかし、当業者には、「バリア」性能は、エチレン-ビニルアルコール(EVOH);アイオノマー及びポリアミド等の特定の「バリア」ポリマーを使用することによって改善することができることがわかる。このような非ポリエチレンバリア樹脂を多量に使用すると、ポリエチレンと非ポリエチレン材料の組合せを用いて作製されるフィルム/構造体/SUPをリサイクルするのが非常に困難になり得る。しかし、非ポリエチレン材料が少量(10重量%未満、特に5重量%未満)の場合、このような構造体をリサイクルすることは依然として可能である。 特定の非ポリエチレンバリア樹脂を使用すると、非ポリエチレンバリア層とポリエチレンの残りの層との間の接着を可能にするための「結合層」を更に使用することが必要となることもまた、当業者には分かるであろう。」 (イ)上記(ア)の【0030】から、引用文献1には次の技術的事項が記載されているものと認められる。 【請求項8】に記載の結合層は、非ポリエチレンバリア層とポリエチレン層の接着を可能にするものであること。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を参照すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内は特に参照した箇所を理解促進のために示したものである。 「ポリマー材料から作製される積層構造体であって、前記積層構造体が、 HDPE組成物を含む第1-A層;並びに ポリエチレンを含む第2-A層 を含む外側ウェブ、 前記外側ウェブと接触し、ポリエチレンを含む第1-B層; HDPE組成物を含む第2-B層;並びに シーラント組成物を含む第3-B層 を含む内側ウェブ、 但し、 前記外側ウェブが、前記内側ウェブに積層され、 前記積層構造体が、前記外側ウェブと前記内側ウェブとの境界面にて印刷され、 前記HDPE、ポリエチレン及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成すること を含む、積層構造体であって、(ここまで【請求項1】) 前記外側ウェブが、2:1から10:1の縦方向配向に供され、(【請求項4】) 前記内側ウェブが、前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置するバリア層を更に含み、(【請求項6】) 前記バリア層が、EVOHを含み、前記バリア層の全重量が、前記EVOHの合計重量と前記積層構造体に使用されるポリエチレンの全重量とに基づいて、5重量%未満であり、(【請求項7】) 前記バリア層の一方の側と他方の側に、非ポリエチレンバリア層とポリエチレン層の接着を可能にするための結合層を備える、(【請求項8】、上記(イ)) スタンドアップパウチに調製されるための積層構造体。(【0001】)」 イ 周知技術 (ア)引用文献2 先の拒絶理由通知の引用文献2である、特開2001-277352号公報(以下「引用文献2」という。)には以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)を中間層に用いた積層体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、ガスバリア性、防湿性、保香性等に優れ、かつシール性や外観性にも優れた包装袋を得ることができる、製袋適性に優れた積層体及びその製造方法に関する。」 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の方法では、バリア層であるEVOH層に水を吸収させているため、折角のEVOH層のバリア性能が低下する結果となり、EVOH層のバリア性能を十分に生かすことが困難であると同時に、水分吸収工程が加わることにより積層フィルムの生産性が低下してしまうという問題点がある。」 「【0048】実施例3 多層Tダイ共押出製膜装置に、PP[実施例1と同じ]、EVOH・・・及び接着性樹脂[実施例1と同じ]を供給して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層(厚み構成は600μm/42μm/126μm)の積層シートを得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に6倍延伸した。次いで、得られた延伸積層シートのEVOH層表面に、単層Tダイ押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂[上記と同じ]を80m/分の速度で積層(厚みは7μm)して多層シートを得た後、横方向(TD方向)に速度8m/分、温度168℃で7倍に延伸して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は14μm/1μm/3μm/1μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.02)の延伸多層シートを得た。 【0049】 得られた延伸多層シートの接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として1.5g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の無延伸フィルムを積層して目的とする積層体を得た。・・・実施例1と同様にして、得られた積層体のLLDPE層をシール層として、縦25cm×横5cmの包装袋(口貼り及び背貼りからなる3方シール、充填物なし)を作製して、その背貼りシール強度を測定した。・・・」 (イ)特開2000-167998号公報 当審において新たに提示する文献である、特開2000-167998号公報には以下の記載がある。 「【請求項1】 ポリプロピレン(PP)/接着性樹脂/エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)/接着性樹脂の層構成を有する多層シートを少なくとも一軸方向に延伸した後に該接着性樹脂表面にヒートシール層を積層したことを特徴とする積層体。 ・・・ 【請求項7】 包装袋に用いることを特徴とする請求項1~6いずれか記載の積層体。 【請求項8】 請求項1~7いずれか記載の積層体を製造するにあたり、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)及び接着性樹脂を共押出して、ポリプロピレン(PP)/接着性樹脂/エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)/接着性樹脂の層構成を有する多層シートを得た後、該多層シートを押出し方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)に延伸して、その後該接着性樹脂表面にヒートシール層を積層することを特徴とする積層体の製造方法。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)を中間層に用いた積層体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、ガスバリア性、防湿性、保香性等に優れ、かつシール性や外観性にも優れた包装袋を得ることができる、製袋適性に優れた積層体及びその製造方法に関する。」 「【0032】ヒートシール層に使用される樹脂としては、・・・好適には、無延伸ポリプロピレン系樹脂(CPP)層、エチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体系樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)層が用いられ、更にはメタロセン触媒中で重合されたLLDPEも好適に用いられる。・・・」 「【0068】実施例11 多層Tダイ共押出製膜装置に、PP[実施例1と同じ]、EVOH[エチレン含有量34モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH80部とエチレン含有量44モル%、ケン化度96.2モル%、MI6.5g/10分(同上)のEVOH20部の溶融混合物]及び接着性樹脂[実施例1と同じ]を供給して、PP/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂(厚み構成は600μm/42μm/126μm/42μm)の多層シートを得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に6倍延伸してから、更にテンター法にて横方向(TD方向)に速度8m/分、温度168℃で7倍に延伸して、PP/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂(厚み構成は14μm/1μm/3μm/1μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.02)の延伸多層シートを得た。 【0069】得られた延伸多層シートの接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として1.5g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の無延伸フィルムを積層して本発明の積層体を得た。・・・」 (ウ)特開2006-1011号公報 当審において新たに提示する文献である、特開2006-1011号公報には以下の記載がある。 「【請求項1】 下記(1)又は(2)のいずれかの組成物からなる表裏層(A)と接着性樹脂からなる接着層(B)とエチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物からなるガスバリヤー層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層された少なくとも5層からなる2軸延伸積層フィルム。 (1)融点が157~170℃のポリプロピレン98~85質量%と非晶性エチレン-1-ブテン共重合体2~15質量%と、両者の合計100質量部に対し任意成分として結晶性ポリプロピレン部分(ハードセグメント)とプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体部分(ソフトセグメント)とからなるブロック共重合体0~60質量部との組成物。 (2)融点が157~170℃のポリプロピレン80~35質量%と結晶性ポリプロピレン部分(ハードセグメント)とプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体部分(ソフトセグメント)とからなるブロック共重合体20~65質量%と、両者の合計100質量部に対し任意成分として非晶性エチレン-1-ブテン共重合体0~15質量部との組成物。 ・・・ 【請求項4】 表裏層(A)の少なくとも片面上に易ヒートシール性樹脂からなるシール層(D)がさらに設けられた請求項1~3のいずれか1項に記載の2軸延伸積層フィルム。 【請求項5】 請求項4に記載の2軸延伸積層フィルムを用いた包装体。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は2軸延伸積層フィルムに関し、より詳しくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物からなるガスバリヤー層の両面に接着性樹脂からなる接着層を介して融点が157~170℃のポリプロピレンと非晶性エチレン-1-ブテン共重合体及び/又は結晶性ポリプロピレン部分(ハードセグメント)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体部分(ソフトセグメント)とからなるブロック共重合体との組成物からなる表裏層が積層された少なくとも5層からなる2軸延伸積層フィルムに関する。」 「【0021】 次に2軸延伸積層フィルムの好ましい製造方法について説明する。先ず5層の積層シートを作成する。その方法としては公知の如何なる方法を用いてもよいが、共押出によるのが簡便でより好ましい。次いで、このシートを縦方向に好ましくは80~150℃で3~4倍ロール延伸し、横方向に好ましくは110~170℃で7~12倍テンター延伸し、160~180℃で熱固定し、必要ならフィルム表面にコロナ放電処理を施して、巻き取る。 次いで、エージング後、所望の幅にスリットして、所期のフィルムが得られる。・・・ 【0023】 本発明のフィルムは、表裏層(A)の少なくとも片面上に易ヒートシール性樹脂からなるシール層(D)がさらに設けられた2軸延伸積層フィルムとしてもよい。 このような構成にすると、ヒートシールにより合掌シール袋や三方シール袋のような包装用袋を作成することができる。・・・ 易ヒートシール性樹脂としては、特に限定するものではなく、例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリブタジエン、及びそれらのブレンド物が例示できる。 シール層(D)を設ける方法は公知の如何なる方法によってもよい。例えば、ドライラミ、押出しラミ、サンドラミ、コーティング等の方法が例示できる。・・・」 「【0029】 (実施例1) ・・・ 【0030】 かくして得た2軸延伸積層フィルムと厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ株式会社製TUX-FCD)とを、コロナ放電処理面同士が合わさるようにしてドライラミネータ-を使用して速度100m/分でラミネートし、38℃で48時間エージングして所期のラミネートフィルムを得た。・・・」 (エ)周知技術1 上記(ア)~(ウ)を参照すると、以下の技術的事項は本願出願時における周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。 「ガスバリア性積層体とヒートシール層を含む包装材用積層体において、ポリオレフィン樹脂層と接着性樹脂層とバリア性樹脂層を含むガスバリア性積層体を、共押出延伸フィルムとすること。」 (オ)周知技術2 上記(ア)の特に実施例3、上記(イ)の特に実施例11、及び上記(ウ)の実施例1に着目すると、以下の技術的事項は本願出願時における周知技術(以下「周知技術2」という。)が記載されていると認められる。 「包装材用積層体において、ガスバリア性積層体にヒートシール層としてポリエチレンからなる未延伸フィルムを積層すること。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「HDPE組成物を含む第1-A層;並びに ポリエチレンを含む第2-A層を含む外側ウェブ」は、「前記外側ウェブが、2:1から10:1の縦方向配向に供され」ているから、本件補正発明の「ポリエチレンにより構成される延伸樹脂フィルムであ」る「基材」に相当する。 引用発明の「EVOHを含」む「バリア層」、「接着を可能にするための結合層」、「ポリエチレンを含む第1-B層」及び「HDPE組成物を含む第2-B層」はそれぞれ、本件補正発明の「ガスバリア性樹脂層」、「接着性樹脂層」、「ポリエチレン樹脂層」に相当する。 そうすると、引用発明の「前記外側ウェブと接触し、ポリエチレンを含む第1-B層」と「HDPE組成物を含む第2-B層」と「前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置するバリア層」と「前記バリア層の一方の側と他方の側に」「備える」「結合層」からなる層構成は、本件補正発明の「ガスバリア性樹脂層と、接着性樹脂層と、ポリエチレン樹脂層とを少なくとも備え」る「ガスバリア性積層体」に相当する。 引用発明の「シーラントポリエチレン」である「シーラント組成物を含む第3-B層」は、本件補正発明の「ポリエチレンにより構成される未延伸樹脂フィルム、または溶融押出層であ」る「前記ヒートシール層」と、「ポリエチレンにより構成される」「前記ヒートシール層」である限りにおいて一致する。 引用発明の「スタンドアップパウチに調製されるための積層構造体」は、本件補正発明の「包装材料用積層体」に相当する。 以上より、引用発明の「HDPE組成物を含む第1-A層;並びに ポリエチレンを含む第2-A層を含む外側ウェブ」と、「前記外側ウェブと接触し、ポリエチレンを含む第1-B層;HDPE組成物を含む第2-B層」と「前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置するバリア層」と「前記バリア層の一方の側と他方の側に」「備える」「結合層」と、「シーラント組成物を含む第3-B層」「を含む、積層構造体であって、」「スタンドアップパウチに調製されるための積層構造体」は、本件補正発明の「基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層とを備える包装材料用積層体」に相当する。 引用発明の「前記HDPE、ポリエチレン及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成すること」は、本件補正発明の「当該包装材料用積層体全体におけるポリエチレンの含有量は、80質量%以上であること」を満たす。 以上を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点1] 「基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層とを備える包装材料用積層体であって、 前記基材が、ポリエチレンにより構成される延伸樹脂フィルムであり、 前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、接着性樹脂層と、ポリエチレン樹脂層とを少なくとも備え、 前記ヒートシール層がポリエチレンにより構成され、 当該包装材料用積層体全体におけるポリエチレンの含有量は、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」 [相違点1] ガスバリア性樹脂層、接着性樹脂層及びポリエチレン樹脂層が、本件補正発明では、「共押延伸樹脂フィルム」であるのに対し、引用発明では、かかる方法で製造されているか不明な点。 [相違点2] ポリエチレンにより構成されるヒートシール層が、本件補正発明では「未延伸樹脂フィルム、または溶融押出層であ」るのに対し、引用発明では、第3-B層がそのようなものであるか不明な点。 (4)判断 ア 相違点1及び相違点2について 相違点1と相違点2は密接に関連するのでまとめて検討する。 包装材用積層体の技術分野において、積層体をどのような方法で製造するかは、当該積層体に求められる特性や製造コスト等を考慮して適宜決定されるものである。 また、上記(2)イ(エ)及び(オ)で周知技術1及び2として示したように、ガスバリア性積層体とヒートシール層を含む包装材用積層体において、ポリオレフィン樹脂層と接着性樹脂層とバリア性樹脂層を含むガスバリア性積層体を共押出延伸フィルムとすることも、包装材用積層体において、ガスバリア性積層体にヒートシール層としてポリエチレンからなる未延伸フィルムを積層することも、共に周知技術である。 そして、引用発明と周知技術1及び2は、バリア性積層体とヒートシール層を含む包装材用積層体に関するものである点で共通するから、引用発明に周知技術1及び2を適用する動機付けは十分に存在する。 そうすると、引用発明に周知技術1及び2を適用することにより、引用発明の内側ウェブにおいて、第1-B層/結合層/バリア層/結合層/第2-B層からなる層構成を共押延伸樹脂フィルムとし、シーラント層である第3-B層を未延伸樹脂フィルムとすることにより、相違点1、2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 効果の予測性について これらの相違点1、2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1及び2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (5)審判請求人の主張について 請求人は令和8年6月15日の意見書において、「引用発明では、「前記外側ウェブと接触し、ポリエチレンを含む第1-B層;HDPE組成物を含む第2-B層を含む内側ウェブ」および「シーラント組成物を含む第3-B」が延伸されているのか未延伸であるのかが不明である点・・・について検討すると、引用文献1の段落[0020]には、「内側ウェブは、少なくとも3つの層を含む同時押出フィルムである」と記載され・・・内側ウェブのうち「第1-B層/バリア層/第2-B層」の部分を延伸処理し、「第3-B層」のみを未延伸とすることは技術的に不可能です。また、引用文献1には、引用発明において内側ウェブに代えて、「共押延伸樹脂フィルム」と「未延伸樹脂フィルム」との2層構成を採用する動機付けとなる記載もありません。」と主張する。 しかしながら、内側ウェブに代えて共押延伸樹脂フィルムと未延伸樹脂フィルムの2層構成を採用することについての判断は上記(4)アで示したとおりである。また、引用文献1には、内側ウェブを、シーラント層である第3-B層まで含めて同時押出フィルムとすることと、発明が解決しようとする課題(【0003】)との関係については、特段示されていないことも踏まえると、引用発明に周知技術1及び2を適用することを阻害する事情も認められない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (6)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和6年11月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項4に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 先の拒絶理由 先の拒絶理由通知は以下の理由を含むものである。 理由(進歩性)本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用文献 引用文献1の記載、引用発明、及び周知技術1は、上記第2の2(2)で示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2(3)及び(4)で検討した本件補正発明から、ガスバリア性積層体にヒートシール層が積層されることに係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものに相当する本件補正発明について、上記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、上記限定事項の判断のために周知技術1に加えて周知技術2を認定し、本件補正発明が引用発明及び周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたとするものであるから、上記限定事項を含まない本願発明は、引用発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-017993

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