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特許拒絶査定不服審判

2023-017093

積層体および包装体

審判番号
2023-017093
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-141058外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年10月10日
審決日
2025年09月25日
公報発行日
2025年12月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .572-Z (B32B) / P18 .113-Z (B32B) / P18 .121-Z (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-141058号「積層体および包装体」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月22日出願公開、特開2021-24107号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年7月31日を出願日とする特願2019-141058号に係る出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 2月24日付け:拒絶理由の通知 令和5年 4月27日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 7月31日付け:拒絶査定(謄本送達日:令和5年8月4日) 令和5年10月10日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出 令和6年 3月18日 :上申書の提出 第2 令和5年10月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年10月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 基材と、ヒートシール層とを少なくとも備える積層体であって、 前記基材(但し、生分解性プラスチックからなる基材を除く)がポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)から構成され、 前記ヒートシール層は、数平均分子量(Mn)が10000以上、35000以下である樹脂を含有するヒートシール剤によって形成されたものであり、 前記ヒートシール層の厚さが、1μm以上5μm以下であり、 前記積層体全体におけるポリエステルの含有量が、60質量%以上である、 ことを特徴とする、積層体。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年4月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 基材と、ヒートシール層とを備え、 前記基材がポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)から構成され、 前記ヒートシール層の厚さが、1μm以上5μm以下であることを特徴とする、積層体。」 2 補正の適否 上記補正は、補正前の請求項1の「ヒートシール層」について、上記1(1)のとおり「前記ヒートシール層は、数平均分子量(Mn)が10000以上、35000以下である樹脂を含有するヒートシール剤によって形成されたものであり」と限定し、以下同様に、補正前の請求項1の「積層体」について、「前記積層体全体におけるポリエステルの含有量が、60質量%以上である」と限定するとともに、補正前の請求項1の「基材層」について、「(但し、生分解性プラスチックからなる基材を除く)」という限定を付加したものであって、補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献の記載事項、慣用技術、周知技術、及び技術情報について ア 引用文献1 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第01/19694号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。 「明細書 食品包装用袋、食品を包む方法、及び積層フィルムの食品を包装するための袋としての使用 (技術分野) 本発明は、食品包装用袋、特に、ポテトチップス等のスナック菓子の包装用袋 (特に、酸素バリヤー、水蒸気バリヤーを必要とするもの)、食品を包む方法、及び積層フィルムの食品を包装するための袋としての使用に関する。」(1頁1行~10行) 「ここでは、袋の最内層にポリエステル系低融点シ一ラン卜層を配している。このシーラント層は、包装機の高速適性に追随できるように、低融点(融点が160℃以下)のシーラントが好ましい。ポリエステル系樹脂では、使用するモノマー,ジオールとジカルボン酸との組合せから数多くのポリマーが得られ、種々の融点を持つポリエステル系樹脂を得ることができる。 低融点のポリエステル系樹脂のモノマーは、ジカルボン酸としては、コストの面からテレフタール酸が適している。また、ジオールとしては、1,3-ブタンジオール(テレフタール酸との縮合により、融点約80度のポリエステル樹脂が得られる)や、1,2-プロピレングリコール(テレフタール酸との縮合により、融点約122度のポリエステル樹脂が得られる)が好ましい。また、非晶質であるシクロへキサンジメタノールとの非晶質共重合PET(例えば、米国イーストマンケミカル社製の商品名「PETG」等)も、低温ヒー卜シールができるので、好ましく用いられる。」(3頁10行~22行) 「[実施例5] まず、PET樹脂のリサイクル品の固有粘度を上昇させたリサイクルPET樹脂とイーストマンケミカル社製商品名「PETG」樹脂とを共押し出し成形して、シーラントフィルムを作成する。この2層化したシーラン卜フィルムを、実施例1と同じ通常のポリエステル系接着剤を用い、12μmのPETフィルムにAl2O3を蒸着した東洋メタライジング(株)製の商品名「バリアロックスHGC」のAl2O3蒸着面に印刷を行ったフィルムに対して貼合する。これにより、スナック菓子用袋の原反を作成する。なお、商品名「バリアロックスHGC」のAl2O3蒸着面に印刷を行ったフィル厶に対してシーラン卜フィルムを貼合する際には、ドライラミネー卜法で、PETG側が最内層に来るように貼合を行う。 共押出し成形されたシーラントフィルムに用いたリサイクル樹脂層としては、直鎖状飽和ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレー卜、ポリブチレンテレフタレー卜、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレー卜等)を用いて繊維、フィルム、ボトル等に広範囲に使用された後に回収されたものを用いる。このような樹脂は、バージン樹脂に比べ低コストであるため、シーラント層の80~90%を占める割合で使用する。最内層としては、食品接触面である為に、バージンのPETGをシーラン卜として用いる。シーラン卜層全体の厚みとしては30μmであり、最内層のPETGは5μmである。」(11頁5行~22行) (イ) 上記記載から、引用文献1の実施例5の2層化したシーラントフィルムの厚みとなるシーラント層全体の厚みが30μmであり、その2層化したシーラントフィルムのうちの「PETG」の厚みが5μmであるから、リサイクルPET樹脂層の厚みは25μmといえる。 イ 引用文献1に記載された発明 上記アを踏まえると、引用文献1には、実施例5として次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「PET樹脂のリサイクル品の固有粘度を上昇させたリサイクルPET樹脂とイーストマンケミカル社製商品名「PETG」樹脂とを共押出で2層化したシーラントフィルムを作成し、12μmのPETフィルムにAl2O3を蒸着した東洋メタライジング(株)製の「バリアロックスHGC」のAl2O3蒸着面に印刷を行ったフィルムに対してドライラミネート法でPETG側が最内層に来るように貼合して得られた積層体であって、イーストマンケミカル社製商品名「PETG」樹脂からなる最内層の厚さは5μmであり、リサイクルPET樹脂からなる層の厚さは25μmである積層体。」 ウ 慣用技術について (ア) 特開平2-198841号公報には、以下の記載がある。 「そして、このヒートシール層は、アルミニウム箔に直接塗布される通常VCと呼称されているラッカータイプ(溶液型ヒートシール剤)により形成されるものと、アルミニウム箔にポリエチレン等の熱可塑性フィルムを介して塗布される押出しコーティングタイプあるいはホットメルトコーティングにより形成されるものとがある。」(1頁右欄5行~12行) (イ) 特開2003-237802号公報には、以下の記載がある。 「【0021】このような構成のおまけ等添付用の袋の製造に用いるプラスチックフィルムまたはプラスチックフィルムを主体とする積層材としては、インパルスシール、熱板シール、溶断シールなどヒートシールにより製袋可能なフィルムであれば何でもよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱接着性を有する単体フィルムのほか、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどの延伸フィルムや紙などを基材として、これにポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらの共重合体などをシーラント層として押し出しコートなどの方法で積層した積層材、或いは、前記基材にヒートシール剤をパターンコートした積層材などを使用することができる。」 (ウ) 慣用技術 上記(ア)及び(イ)の記載から認知できる慣用技術として、以下の事項が認定できる。 「ヒートシール層の形成方法として、押出コート法とヒートシール剤を塗布して形成する方法とが適宜選択されうること。」 エ 周知技術について (ア) 実願昭59-99234号(実開昭61-15144号)のマイクロフィルムには、以下の記載がある。 「次に、ヒートシール層(3)は1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むグリコール成分と二塩基酸成分との縮重合によって生成されるポリエステルよりなるものである。ここにおいて、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外のグリコール成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等で、実際にはエチレングリコールが主体となる。グリコール成分の一部の1,4-シクロヘキサンジメタノールは生成されるポリエステルに低温シール性を付与するものである。一方、二塩基酸成分はイソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバチン酸、コハク酸、シユウ酸等である。また、ビカツト軟化点とはASTMD-1525により測定されるものであり、90℃以上では、軟包装材料のヒートシーラントとして適当な低温シール性を有することができない。 このようなポリエステルとしては、米国イーストマン・ケミカル州のKodavR○(当審注:「R○」は、○の中にRがあることを示す)PETG6763がある。」(5頁3行~6頁2行) (イ) 特開2005-162326号公報には、以下の記載がある。 「【0026】 (実施例1) 基材用樹脂として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度80℃、融点260℃)を用いた。また、ヒートシール層樹脂の成分として、1,4-シクロヘキサンジメタノールが30モル%共重合された イーストマン製PETG6763を用い、それぞれ乾燥した。2台の押し出し機を使用し、1台には上記ポリエチレンテレフタレートのみを投入、もう1台には、ポリエチレンテレフタレートとPETG6763を質量比6:4でチップブレンドしたものを投入し、2台とも280℃で各樹脂をそれぞれ溶融し、吐出比31:1で押し出した後、フィードブロックにて合流させた。合流した樹脂はダイから押し出され、縦延伸は延伸温度90℃、延伸倍率3.8倍。横延伸は延伸温度120℃、延伸倍率4.6倍の条件で逐次二軸延伸されたのち、230℃で熱処理を施し、厚み16μm、内HS層厚み0.5μmのチーズ包装用フィルムを得た。」 (ウ) 特許第5182183号公報には、以下の記載がある。 「【0048】 実施例1 ヒートシール層(A)用の樹脂として、ポリブチレンテレフタレート系共重合体〔ウィンテックポリマー株式会社製ジュラネックス400LP;以下PBT共重合体という〕45質量部と、非晶性ポリエチレンテレフタレート共重合体〔イーストマンケミカルジャパン株式会社製PETG6763;以下PETGという〕55質量部との混合物を用い、接着樹脂層(B)として密度が0.89g/cm3の無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン-ブテン共重合体〔以下接着性樹脂という〕を用い、基材層(C)用の樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン〔密度0.93g/cm3、メルトフローレート6g/10min;以下LLDPEという〕を用い、ヒートシール層用押出機(口径30mm)と接着樹脂層用押出機(口径30mm)と基材層用押出機(口径40mm)とのそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度230℃でTダイから(A)/(B)/(C)の各層の厚さが5μm/10μm/15μmになるように押出し、30℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、基材層(C)表面の濡れ張力が40mN/mとなるようにコロナ放電処理を施した後、ロールに巻き取り、35℃の熟成室で48時間熟成させて、全厚が30μmの本発明の積層フィルムを得た。」 (エ) 周知技術 上記(ア)~(ウ)の記載から、以下の事項が周知技術(以下「周知技術」という。)と認められる。 「包装用の積層体のヒートシール層に利用する「PETG」として、「イーストマン製PETG6763」を利用すること。」 オ 技術情報 (ア) 特許第3345824号公報には、以下の記載がある。 「【0043】PETG: エチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメタノールからの共重合ポリエステルで、約26,000の数平均分子量を有する。Eastman 社からのKodar PETG6763。」 (イ) 東レフィルム加工株式会社のバリアロックスについてのテクニカル情報として、以下の記載がある。 「 [図:0001429351000001.jpg] 」 (3) 対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「12μmのPETフィルム」は、当該PETフィルムである「バリアロックスHGC」は、上記(2)オ(イ)のバリアロックスの技術情報において、生分解性であることやリサイクル樹脂であることについての記載がないことを踏まえると、生分解性プラスチックでないこと及びリサイクルポリエステルでないことは明らかであるから、本件補正発明の「基材」に相当し、本件補正発明の「基材(但し、生分解性プラスチックからなる基材を除く)がポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)から構成され」を充足している。 引用文献1には「PET樹脂のリサイクル品の固有粘度を上昇させたリサイクルPET樹脂とイーストマンケミカル社製商品名「PETG」樹脂とを共押出で2層化した」フィルムを「シーラントフィルム」と記載しているが、PETGが低温シールできること(3頁19行~22行)及びPETGからなる層は最内層であることを踏まえると、引用発明の「PETGからなる最内層」が、本件補正発明の「ヒートシール層」に相当し、本件補正発明の「ヒートシール層の厚さが1μm以上5μm以下」を満たしている。 また、引用発明の積層体は、12μmのPETフィルム及びAl2O3蒸着膜と、25μmリサイクルPET樹脂からなる層と、5μmのPETGからなる層とにより構成された積層体であり、積層体を構成するAl2O3蒸着膜以外の層がポリエステルを材料としていることから、本件補正発明の「積層体全体におけるポリエステルの含有量が、60質量%以上である」を満たしていることは明らかである。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「基材と、ヒートシール層とを少なくとも備える積層体であって、 前記基材(但し、生分解性プラスチックからなる基材を除く)がポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)から構成され、 前記ヒートシール層の厚さが、1μm以上5μm以下であり、 前記積層体全体におけるポリエステルの含有量が、60質量%以上である、 積層体。」 <相違点> ヒートシール層に関し、本件補正発明は、「前記ヒートシール層は、数平均分子量(Mn)が10000以上、35000以下である樹脂を含有するヒートシール剤によって形成されたものであり」と特定するのに対し、引用発明は、ヒートシール層を構成するイーストマンケミカル社製商品名「PETG」樹脂の数平均分子量が明らかでなく、共押出により構成されたものである点。 (4) 判断 上記相違点について検討する。 包装用の積層体のヒートシール層に利用する「PETG」として、「イーストマン製PETG6763」を利用することは周知技術(上記(2)エ(エ))である。 そして、引用発明のヒートシール層は、イーストマンケミカル社製商品名「PETG」樹脂からなるものであるところ、「PETG」の種類が明らかでない引用発明も、ヒートシール層という目的を考慮すれば、引用発明の「PETG」は「PETG6763」である蓋然性が高い。 この場合、「PETG6763」の数平均分子量は約26000程度とみられることから(上記(2)オ(ア)参照)、引用発明のヒートシール層の数平均分子量は、本件補正発明で特定する「数平均分子量(Mn)が10000以上、35000以下」を満たすものである。 仮にそうでないとしても、引用発明のヒートシール層の「PETG」樹脂について、周知技術を参考にして、「PETG6763」を利用することは当業者にとって容易であり、その場合でも、引用発明の数平均分子量は、本件補正発明の「10000以上35000以下」を満たすものである。 また、ヒートシール層の形成方法として、押出コート法とヒートシール剤を塗布して形成する方法とが適宜選択されうることは慣用技術(上記(2)ウ(ウ))であるから、引用発明において「PETG」樹脂をヒートシール剤によって形成することに格別の困難性はない。 ウ 効果について 上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ 審判請求人の主張について 審判請求人は審判請求書の【請求の理由】(2-1-2)において「これに対して、引用文献1には、「ポリエステル系低融点シーラント層/酸素及び水蒸気バリア性を有するバリア層/ポリエステル系高融点耐熱層から構成される積層フィルム」から構成される食品包装用袋に関する発明が記載されています。具体例として実施例には、「PETG樹脂層」が「ヒートシール層」「ポリエステル系ヒートシール剤」に対応する構成として記載されています(実施例5)。しかしながら、引用文献1には、特定の数平均分子量(Mn)の樹脂を含有するヒートシール剤によって形成されたヒートシール層を構成することについて、何ら記載はありませんし、動機付けとなる記載もございません。そもそも引用文献1は、ポリエステル系材料からなるヒートシール層としてPETG樹脂層を用いることを特徴としていることから、引用文献1に接した当業者が、上記積層フィルムにおいて、ヒートシール性を向上しつつ、モノマテリアルによるリサイクル性を満たすために、PETG樹脂層に代えて特定の数平均分子量(Mn)の樹脂を含有するヒートシール剤によって形成されたヒートシール層を採用する動機付けはありません。」と主張する。 しかしながら、上記審判請求書の主張については、上記(4)のとおりであり、引用発明の「PETG」は、当該数平均分子量の範囲のものであると考えるのが自然であるし、そうでないとしても、ヒートシール層として利用する「PETG」に適するPETG6763を選ぶ動機はあり、その場合のPETGの数平均分子量は、本件補正発明の範囲を満たすものとなる。 したがって、上記主張は採用できない。 オ 小括 よって、本件補正発明は、引用発明であるか、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号、又は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年10月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年4月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、及び下記の引用文献1に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:国際公開第01/019694号(上記引用文献1) 3 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 第2[理由]2(3)で検討したとおり、引用発明の「12μmのPETフィルム」は、本願発明の「基材」に相当し、本願発明の「基材がポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)から構成され」を充足しており、引用発明の「PETG」層は、本願発明の「ヒートシール層」に相当し、本願発明の「ヒートシール層の厚さが1μm以上5μm以下」を満たしている。 そうすると、本願発明は、引用発明との間に相違点はなく、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-017093

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