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特許拒絶査定不服審判

2024-018896

ガスバリア性蒸着フィルム

審判番号
2024-018896
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-000353
請求日
2024年11月27日
審決日
2026年06月02日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】大日本印刷株式会社
  • 【請求人代理人】結田 純次
  • 【請求人代理人】守安 智
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 宮地 匡人
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P18 .113-Z (B32B) / P18 .121-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第44条第1項、特許法第44条第2項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023-353「ガスバリア性蒸着フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和5年4月11日出願公開、特開2023-52209〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成31年2月26日に出願した特願2019-32273号の一部を、特許法第44条第1項の規定により、令和5年1月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。なお、特許法第44条第2項の規定により、本願は、平成31年2月26日に出願したものとみなす。 令和6年 2月26日付け:拒絶理由通知書(特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知) 令和6年 5月 2日 :意見書、手続補正書の提出 令和6年 8月22日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (令和6年 8月27日 :原査定の謄本の送達) 令和6年11月27日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和7年 4月 7日 :上申書の提出 第2 令和6年11月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年11月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。) 「【請求項1】 基材層とガスバリア層とを有するガスバリア性積層体であって、 該基材層は、ポリオレフィン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層(但し、PVA系樹脂層が、ヒドラジン系化合物、または、チタン、ジルコニウム、アルミニウムを1種類以上有する金属化合物を含む場合を除く。)とを有し、 該ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であり、 該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの重合体、プロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体からなる群から選択される樹脂であり、 該PVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、または、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体であって、ケン化度は、85~100モル%であり、 該PVA系樹脂層の厚みは、0.3μm以上、1.5μm以下であり、 該ガスバリア層は、金属酸化物蒸着層を有し、 該金属酸化物蒸着層が、PVDによって蒸着された酸化アルミニウム層を含み、 該金属酸化物蒸着層は、該PVA系樹脂層の上に接して積層されており、 さらに、ヒートシール性樹脂を含有するシーラント層を有し、該シーラント層は、該ガスバリア性積層体の、該基材層とは反対側の面の表面に積層されており、 該ヒートシール性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であり、 該ポリオレフィン系樹脂と、該ヒートシール性樹脂とが、同基本骨格の樹脂を含有し、 該ガスバリア性積層体中の該同基本骨格の樹脂の含有率が、94質量%以上であり、 JIS K 7129に準拠して測定した40℃、相対湿度90%RH環境下における水蒸気透過度が、0.8g/m2day以下であることを特徴とする、 ガスバリア性積層体。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 基材層とガスバリア層とを有するガスバリア性蒸着フィルムであって、 該基材層は、ポリオレフィン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層とを有し、 該ガスバリア層は、金属酸化物蒸着層を有し、 該金属酸化物蒸着層が、PVDによって蒸着された酸化アルミニウム層を含み、 該金属酸化物蒸着層は、該PVA系樹脂層の上に接して積層されていることを特徴とする、 ガスバリア性蒸着フィルム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「基材層」とそれを構成する「ポリオレフィン系樹脂」、「PVA系樹脂層」とそれを構成する「PVA系樹脂」、「シーラント層」を有する積層体であること及びそれを構成する「ヒートシール性樹脂」、並びに前記積層体の水蒸気透過度について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項等 ア 引用文献4 (ア)令和6年8月22日付け補正の却下の決定における引用文献4である、特開2001-191462号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある(なお、下線はもともと付されていたものに加えて当審において付したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。)。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、特定のポリビニルアルコール系重合体層を含む積層体に関する。さらに詳しくは、透明性があり、食品、医薬品等の包装用フィルムとして必要なガスバリア性を有し、湿度依存性の小さく肉厚精度の良好なポリビニルアルコール系重合体積層体に関する。」 「【0047】 【実施例】 実施例1 片面にコロナ処理を施した、25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下「OPPフィルム」という)のコロナ処理面に、重合度500でエチレン含有量が8.5mol%、ケン化度95%以上の延伸可能で水に可溶なポリビニルアルコール系重合体を、1.8μmになるように塗布し、積層フィルムを得た。 【0048】 実施例2 片面にコロナ処理を施した、25μmのOPPフィルムのコロナ処理面に、接着性樹脂としてポリウレタン系接着剤層を設けた後、重合度500でエチレン含有量が8.5mol%、ケン化度95%以上の延伸可能で水に可溶なポリビニルアルコール系重合体を、1.8μmになるように塗布し、積層フィルムを得た。 ・・・ 【0055】 実施例9 実施例2で得た積層フィルムの、延伸可能で水に可溶なポリビニルアルコール系重合体の上に、PVD法により酸化アルミニウムの無機質層を300Å設け、積層フィルムを得た。さらに積層フィルムの無機質層上に、密度0.920g/cm3のLLDPEをドライラミネートすることによりヒートシール層を有する積層フィルムを得た。」 (イ)上記(ア)を参照し、特に実施例9に着目すると、引用文献4には、次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明4」という。)。 「片面にコロナ処理を施した、25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、接着性樹脂としてポリウレタン系接着剤層を設けた後、重合度500でエチレン含有量が8.5mol%、ケン化度95%以上の延伸可能で水に可溶なポリビニルアルコール系重合体を、1.8μmになるように塗布してポリビニルアルコール系重合体層を設けてなる積層フィルムを得、 前記積層フィルムの、前記ポリビニルアルコール系重合体層の上に、PVD法により酸化アルミニウムの無機質層を300Å設け、 さらに、前記無機質層上に、密度0.920g/cm3のLLDPEをドライラミネートすることにより得た、ヒートシール層を有する積層フィルム。」 イ 周知技術1 (ア)当審において新たに引用する文献である、「大日本印刷、リサイクルに適した単一素材(モノマテリアル)のフィルムパッケージ2種を開発」、[online]、日本経済新聞電子版、2018年9月6日、[取得日2026年4月28日]、取得先<https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP489810_W8A900C1000000/>には以下の記載がある。 「 [図:0001437880000001.jpg] 」 「 [図:0001437880000002.jpg] 」 (イ)当審において新たに引用する文献である、西村厳夫、「プラスチック資源の活用と循環型社会の実現に向けて~サステナブル化の世界潮流~」、成型加工、一般社団法人プラスチック成形加工学会、2018年、第30巻、第11号、577~580ページには以下の記載がある。 「 [図:0001437880000003.jpg] 」 (ウ)上記(ア)、(イ)の記載を参照すると、以下の技術的事項は本願出願時における周知技術(以下「周知技術1」という。)である。 「包装材をポリプロピレンのモノマテリアル化によりリサイクル性を向上させること。」 ウ 引用文献1 (ア)引用文献1の記載 原査定における引用文献1である、特開2000-297359号公報(以下「引用文献1」という。)には以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、食品、医薬品、電子部品等の気密性や酸素バリヤー性を要求される包装用の透明なガスバリヤーフィルムに関するものである。」 「【0023】実施例1 ○1(当審注:○の中に数字の代用表記、以下同様。)ジアセトン基を有するポリビニルアルコールの合成 酢酸ビニル、ジアセトンアクリルアミドおよびメタノールを所定量仕込み、60℃まで昇温し、2,2-アゾビスイソブチロニトリルを添加して、重合を開始させた。重合開始後、メタノールに溶解したジアセトンアクリルアミドを一定速度で滴下して重合を停止した。得られた反応混合物より、酢酸ビニルを留出し、ジアセトンアクリルアミド共重合成分を含有する酢酸ビニル系重合物のメタノール溶液を得た。この溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて、40℃でケン化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノールで洗浄した後乾燥して、ジアセトン基の含有率6.3モル%を有するポリビニルアルコールを得た。 【0024】○2ポリプロピレンフィルムへのポリビニルアルコール塗工 二軸延伸ポリプロピレンフィルム(王子製紙(株)製 PY-001 、厚さ30μm)を基材としてその片面に、スパークギャップ方式でコロナ処理を施した。その後、下記組成の塗料をメイヤーバーにより、乾燥後の塗工量が、3g/m2となるように塗工して試料を得た。 組成 ○1で得られたジアセトン基を有するポリビニルアルコール 100部 アジピン酸ヒドラジド 5部 【0025】○3酸化アルミニウムの成膜 ○2で得られた試料の塗工層表面に蒸着材料としてアルミニウム(純度4N)を使用し、真空度5×10-4Torr、酸素を5×10-5Torr導入し、高周波出力200Wにてイオンプレーティング法により、膜厚200Åの酸化アルミニウム薄膜を形成した。 【0026】このようにして得られた酸化アルミニウム薄膜上にエクストルージョンラミネート法により、低密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン(株)製ジェイレックスJH606N)を膜厚30μmで押し出した。 【0027】得られた試料を下記評価方法で評価した。評価結果を表1に示す。 評価方法 ・・・ 水蒸気透過率 水蒸気透過率は、JIS-Z-208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)によって、40℃、相対湿度90%の条件下で測定を行った。 ・・・」 「【0036】 【表1】 [図:0001437880000004.jpg] 」 (イ)引用文献1に記載された発明 上記(ア)を参照すると、引用文献1には以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明1」という。)。 「二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材としてその片面に、ジアセトン基を有するポリビニルアルコール100重量部とアジピン酸ヒドラジド5重量部を混合してなる塗料を、乾燥後の塗工量が、3g/m2となるように塗工し、 前記塗工層表面に高周波出力200Wにてイオンプレーティング法により、膜厚200Åの酸化アルミニウム薄膜を形成し、 前記酸化アルミニウム薄膜上に低密度ポリエチレンを膜厚30μmで押し出してなる、ガスバリヤーフィルム。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明4を対比する。 引用発明4の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」は、本件補正発明の「ポリプロピレン系樹脂であ」る「ポリオレフィン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層」に相当する。 引用発明4の「ポリビニルアルコール系重合体層」は、本件補正発明の「PVA系樹脂層(但し、PVA系樹脂層が、ヒドラジン系化合物、または、チタン、ジルコニウム、アルミニウムを1種類以上有する金属化合物を含む場合を除く。)」と、「PVA系樹脂層」である限りにおいて一致する。 引用発明4の「PVD法により」設けた「酸化アルミニウムの無機質層」は、本件補正発明の「金属酸化物蒸着層を有し、該金属酸化物蒸着層が、PVDによって蒸着された酸化アルミニウム層を含」む「ガスバリア層」に相当する。 引用発明4の「LLDPEをドライラミネートすることにより得た、ヒートシール層」は、LLDPEがヒートシール性樹脂であるから、本件補正発明の「ヒートシール性樹脂を含有するシーラント層」に相当する。 引用発明4の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」、「ポリウレタン系接着剤層」及び「ポリビニルアルコール系重合体層」からなる「積層フィルム」は、本件補正発明の「基材層」に相当する。 引用発明4の「ヒートシール層を有する積層フィルム」は、「積層フィルムの、前記ポリビニルアルコール系重合体層の上に、PVD法により酸化アルミニウムの無機質層を300Å設け、さらに、前記無機質層上に、密度0.920g/cm3 のLLDPEをドライラミネートすることにより得た」ものであるから、その層構成に鑑みると、本件補正発明の「基材層とガスバリア層とを有」し、該ガスバリア層である「該金属酸化物蒸着層は、該PVA系樹脂層の上に接して積層されており、」「該シーラント層は、該ガスバリア性積層体の、該基材層とは反対側の面の表面に積層されて」いる「ガスバリア性積層体」に相当する。 引用発明4の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」を構成するポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレンはその態様として、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)、又は、プロピレンを主単位とし少量の他のα-オレフィンを共重合した共重合体が含まれるという技術常識を踏まえると、本件補正発明の「該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの重合体、プロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体からなる群から選択される樹脂」であることに相当する。 引用発明4の「ケン化度95%以上の延伸可能で水に可溶なポリビニルアルコール系重合体」は、技術常識も踏まえると、本件補正発明の「該PVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、または、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体であって、ケン化度は、85~100モル%であ」ることに相当する。 以上を総合すると、本件補正発明と引用発明4の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「基材層とガスバリア層とを有するガスバリア性積層体であって、 該基材層は、ポリオレフィン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層と、PVA系樹脂層とを有し、 該ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であり、 該ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの重合体、プロピレンモノマーと炭素数2~8のアルケンモノマーとの共重合体からなる群から選択される樹脂であり、 該PVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ル、または、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体であって、ケン化度は、85~100モル%であり、 該ガスバリア層は、金属酸化物蒸着層を有し、 該金属酸化物蒸着層が、PVDによって蒸着された酸化アルミニウム層を含み、 該金属酸化物蒸着層は、該PVA系樹脂層の上に接して積層されており、 さらに、ヒートシール性樹脂を含有するシーラント層を有し、該シーラント層は、該ガスバリア性積層体の、該基材層とは反対側の面の表面に積層されている、 ガスバリア性積層体。」 [相違点1] PVA系樹脂層について、本件補正発明では、「PVA系樹脂層が、ヒドラジン系化合物、または、チタン、ジルコニウム、アルミニウムを1種類以上有する金属化合物を含む場合を除く」のに対し、引用発明4では、かかる構成を有するか不明な点。 [相違点2] 本件補正発明では、「PVA系樹脂層の厚みは、0.3μm以上、1.5μm以下」であるのに対し、引用発明4では、ポリビニルアルコール系重合体を、1.8μmになるように塗布している点。 [相違点3] 本件補正発明では、「該ヒートシール性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であり、該ポリオレフィン系樹脂と、該ヒートシール性樹脂とが、同基本骨格の樹脂を含有し、該ガスバリア性積層体中の該同基本骨格の樹脂の含有率が、94質量%以上であ」るのに対し、引用発明4では、ヒートシール層がLLDPEである点。 [相違点4] ガスバリア性積層体が、本件補正発明では、「JIS K 7129に準拠して測定した40℃、相対湿度90%RH環境下における水蒸気透過度が、0.8g/m2day以下」であるのに対し、引用発明4では、かかる構成を有するか不明な点。 (4)判断 上記各相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用発明4において、「ポリビニルアルコール系重合体層」がヒドラジン系化合物、又は、チタン、ジルコニウム、アルミニウムを1種類以上有する金属化合物を含むことは特定されておらず、引用文献4の記載全体を参酌してもそのようなものを含むことは記載も示唆もされていない。 そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。 イ 相違点2について 引用文献4の【0012】には「延伸が可能で水に可溶なポリビニルアルコール系重合体層(c)の厚みは、0.01~5.0μm、好ましくは0.03~5.0μm、より好ましくは0.05~5.0μmであり、この範囲であればガスバリア性と延伸性、機械的強度等とのバランスが良い。」と記載されている。 そうすると、引用発明4において、引用文献4の上記記載を参酌して、積層体のガスバリア性と機械的強度等とのバランスを考慮してポリビニルアルコール系重合体層の厚さを調節することは、当業者が適宜なし得たことである。 そして、本願明細書の【0018】を参酌しても、相違点2に係る数値範囲が格別なものであるとも認められない。 ウ 相違点3について 引用発明4のヒートシール層に用いる材料について、引用文献4の【0007】には「本発明で基材層(a)として用いる熱可塑性樹脂としては格別の制限はなく、・・・これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等延伸性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。」と記載されている。 また、上記(2)イで周知技術1として示したように、包装材をポリプロピレンのモノマテリアル化によりリサイクル性を向上させることは周知技術である。 そうすると、引用発明4において、引用文献4の上記記載及び周知技術1を参照することで、ヒートシール層の材料を、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと同基本骨格であるポリプロピレンに変更し、その結果としての積層フィルム中のポリプロピレンの含有率を決定することは、当業者であれば適宜なし得たことである。ここで、本件補正発明の、ポリプロピレンの含有率を94質量%以上とすることは格別なことではないし、臨界的な意義があるとも認められない。 エ 相違点4について 引用文献4の「このようなガスバリア性樹脂を積層したフィルムは、水蒸気、酸素などに対するガスバリア性が未だ十分ではなく、高温でのガスバリア性が著しく低下する。」(【0003】)、「本発明の目的は、ポリビニルアルコール系重合体積層体の問題点である、高湿度下でのガスバリア性の低下を抑えた、透明なガスバリア性フィルムを提供することである。」(【0005】)との記載を踏まえると、引用発明4は水蒸気も含めたガスバリア性を高めることを解決課題とするものであるから、水蒸気透過度を含めたガスバリア性を高めることは、当業者が容易に想到し得たことである。 加えて、上記(2)ウで示した引用文献1の記載(特に【0036】【表1】)も踏まえると、相違点4に係る本件補正発明の水蒸気透過度が格別なものであるとも認められない。 そうすると、引用発明4において、引用文献4の記載を参酌して、相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 オ 効果の予測性について 相違点1~4を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明4、引用文献4の記載、及び周知技術1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (5)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明4、引用文献4の記載、及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の請求項1についての拒絶の理由は以下のものである。 本願発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は同第2項の規定により特許を受けることができないものである。 引用文献1:特開2000-297359号公報 3 引用文献 上記第2の2(2)ウ(イ)で示したとおり、引用文献1には以下の引用発明1が記載されている。 「二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材としてその片面に、ジアセトン基を有するポリビニルアルコール100重量部とアジピン酸ヒドラジド5重量部を混合してなる塗料を、乾燥後の塗工量が、3g/m2となるように塗工し、 前記塗工層表面に高周波出力200Wにてイオンプレーティング法により、膜厚200Åの酸化アルミニウム薄膜を形成し、 前記酸化アルミニウム薄膜上に低密度ポリエチレンを膜厚30μmで押し出してなる、ガスバリヤーフィルム。」 4 対比、判断 本願発明と引用発明1を対比する。 引用発明1の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」は、本願発明の「ポリオレフィン系樹脂を含有する2軸延伸樹脂フィルムからなる層」に相当する。 引用発明1の「ジアセトン基を有するポリビニルアルコール100重量部とアジピン酸ヒドラジド5重量部を混合してなる塗料を、乾燥後の塗工量が、3g/m2となるように塗工し、」てなる「塗工層」は、本願発明の「PVA系樹脂層」に相当する。 引用発明1の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」と「塗工層」はあわせて、本願発明の「基材層」に相当する。 引用発明1の「高周波出力200Wにてイオンプレーティング法により」形成した「酸化アルミニウム薄膜」は、PVD(物理気相成長)法により形成されているといえるから、本願発明の「金属酸化物蒸着層を有し、該金属酸化物蒸着層が、PVDによって蒸着された酸化アルミニウム層を含」む「ガスバリア層」に相当する。 引用発明1の「塗工層表面に・・・酸化アルミニウム薄膜を形成し」てなる態様は、本願発明の「金属酸化物蒸着層は、該PVA系樹脂層の上に接して積層されている」態様を満たす。 引用発明1の「ガスバリヤーフィルム」は本願発明の「ガスバリア性蒸着フィルム」に相当する。 以上を総合すると、本願発明と引用発明1に相違点はない。 仮に相違点があったとしても、当業者が容易になし得た程度のことである。 そうすると、本願発明は引用発明1であるか、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項又は同第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-018896

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