特許拒絶査定不服審判
2022-021262
包装材料及び包装製品
- 審判番号
- 2022-021262
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-186126
- 請求日
- 2022年12月27日
- 審決日
- 2024年07月30日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】浅野 真理
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 西堀 宏之
- 審判官 岩谷 一臣
- 分類
- P18 .113-Z (B32B) / P18 .121-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-186126「包装材料及び包装製品」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月9日出願公開、特開2020-55166〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月28日に出願された特願2018-186126号に係る特許出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 4月13日付け:拒絶理由通知書
令和4年10月11日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
(令和4年10月14日 :原査定の謄本の発送日)
令和4年12月27日 :本件審判請求、手続補正書の提出
第2 令和4年12月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月27日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
少なくとも、表面保護層、印刷層、外側熱可塑性樹脂層、紙基材層、内側熱可塑性樹脂層が順に積層された包装材料であって、
前記外側熱可塑性樹脂層は、ポリエチレンを含み、
前記印刷層は、着色剤と、バイオマス由来のニトロセルロースと、を含み、
前記表面保護層は、ニトロセルロースを含み、
前記紙基材層は、100g/m2以上700g/m2以下の坪量を有する、包装材料。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも、表面保護層、印刷層、外側熱可塑性樹脂層、紙基材層、内側熱可塑性樹脂層が順に積層された包装材料であって、
前記外側熱可塑性樹脂層は、ポリエチレンを含み、
前記印刷層は、着色剤と、バイオマス由来のニトロセルロースと、を含む、包装材料。」
2 補正の適否
本件補正における請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である包装材料の表面保護層及び紙基材層に関して、層の構成をさらに特定する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項と引用発明
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2014-231387号公報(平成26年12月11日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線については当審において付与した。)。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミニウム蒸着を施したフィルムを用い、フタ材に金属光沢を与える構成のものはこれまで、ポリエステルフィルムにアルミニウムを真空蒸着した蒸着ポリエステルフィルムと、それとは別に裏面印刷を施したフィルムをフィルム面をヒートシールの際のシールバーの接触面になるようにラミネートしたものを作成し、蒸着面で紙などの支持層にラミネートして作られてきた。
しかしながら、蒸着フィルムと裏面印刷フィルムをそれぞれ用意し貼り合わせることは煩雑であり、コストアップにつながる欠点があった。
また蒸着と印刷とを同じフィルムに形成する場合には、最外面は印刷層あるいはオーバーコート層となり、フタ材としての基本性能のひとつであるヒートシール性が損なわれるという問題がある。印刷層がシールバーに転移する、いわゆるインキ取られという現象が発生するためである。
本発明は、コストダウンを実現しつつ、また蒸着フィルムの金属光沢を損なうことなく、同時に内容物充填の際のヒートシール性も確保しうるフタ材を提供することを課題とするものである。」
(イ)「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明においては少なくとも蒸着フィルム、紙層、シーラント層が積層された支持体の蒸着フィルム上に印刷層が形成されており、前記印刷層上にオーバーコート層が形成されているフタ材であって、前記印刷層及び前記オーバーコート層の耐熱性は160℃以上であることを特徴とするフタ材によって課題解決を図ろうとするものである。
すなわち上記フタ材においては、金属蒸着フィルム層のフィルム側に耐熱性のインキおよび樹脂を用いて直接印刷層およびオーバーコート層を設け意匠性を損なうことなく、ヒートシール適性をもたせようとするものである。」
(ウ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも蒸着フィルム、紙層、シーラント層が積層された支持体の蒸着フィルム上に印刷層が形成されており、前記印刷層上にオーバーコート層が形成されているフタ材であって、前記印刷層及び前記オーバーコート層の耐熱性は160℃以上であることを特徴とするフタ材。」
(エ)「【実施例】
【0020】
本願実施例は、図2に示した構成に基づき実施した。
すなわち、蒸着フィルム(10)の蒸着層とは反対の面に印刷層を表印刷(6b)にて設け、その上にオーバーコート層(8)を設けた。
支持層(1)には紙を用いてアルミニウム箔と押し出しポリエチレンを用いてラミネートしたものを用いた。シーラント層(2)として押し出しポリエチレン層を容器の口部に接する側に設けた。
支持層(1)のシーラント層(2)とは反対の面と、蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面(4)を、ドライラミネート接着剤を介してラミネートしフタ材の原紙を得た。
印刷層に用いたインキには、硝化綿・ウレタン系樹脂からなるLPGTインキにSP硬化剤を添加して用いた。(いずれも東洋インキ製)
オーバーコート層には、硝化綿・ウレタン系樹脂からなるLPGTメジウムにSP硬化剤を添加し更にポリエチレン系ワックスである添加剤240を用いた。(いずれも東洋インキ製)
ヒートシール条件として、印刷層およびオーバーコート層が160℃のシールバーに直接触れるために耐熱性は160℃以上が要求されるため、160℃で10N/cm2・8秒押しで評価した結果、インキの取られは見られなかった。」
(オ)「【符号の説明】
【0022】
1・・・支持層
2・・・シーラント層
3・・・接着層
4・・・蒸着層
5・・・フィルム層
6(a)・・・印刷層(裏印刷)
6(b)・・・印刷層(表印刷)
7・・・フィルム層
8・・・オーバーコート層
10・・・蒸着フィルム」
(カ)「【図2】
[図:0001414606000001.jpg]
」
イ 引用文献3に記載された発明
上記アの記載を踏まえると、引用文献3には以下の発明(以下「引用発明3」という)が記載されていると認められる。
「蒸着フィルム(10)の蒸着層とは反対の面に印刷層(6b)を表印刷にて設け、さらにその上にオーバーコート層(8)を設け、紙を用いてアルミニウム箔と押し出しポリエチレンを用いてラミネートした支持層(1)を設け、さらにシーラント層(2)として押し出しポリエチレン層を容器の口部に接する側に設け、支持層(1)のシーラント層(2)とは反対の面と蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面(4)を、ドライラミネート接着剤による接着剤層(3)を介してラミネートして得たフタ材の原紙であって、印刷層(6b)に用いたインキには、硝化綿・ウレタン系樹脂からなるLPGTインキにSP硬化剤を添加して用い(いずれも東洋インキ製)、オーバーコート層(8)には、硝化綿・ウレタン系樹脂からなるLPGTメジウムにSP硬化剤を添加し更にポリエチレン系ワックスである添加剤240を用いた、フタ材の原紙。」
(3) 本件補正発明と引用発明3との対比
ア 本件補正発明と引用発明3とを対比する。
引用発明3は「オーバーコート層(8)」、「印刷層(6b)」、「シーラント層(2)」は、それぞれ、本件補正発明の「表面保護層」、「印刷層」、「内側熱可塑性樹脂層」に相当する。
引用発明3の「支持層(1)」のうち「紙」は、本件補正発明の「紙基材層」に相当する。
引用発明3における各層の配置順に関し、引用発明3は「蒸着フィルム(10)の蒸着層とは反対の面に印刷層(6b)を表印刷にて設け、さらにその上にオーバーコート層(8)を設け、紙を用いてアルミニウム箔と押し出しポリエチレンを用いてラミネートした支持層(1)を設け、さらにシーラント層(2)として押し出しポリエチレン層を容器の口部に接する側に設け、支持層(1)のシーラント層(2)とは反対の面と蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面(4)を、ドライラミネート接着剤による接着剤層(3)を介してラミネートして得たフタ材の原紙」としたものであるから、「オーバーコート層(8)」、「印刷層(6b)」、「紙」、「シーラント層(2)」の順に積層されたものである。そうすると、本件補正発明の「表面保護層、印刷層、外側熱可塑性樹脂層、紙基材層、内側熱可塑性樹脂層が順に積層」のうち、「外側熱可塑性樹脂層」の有無はさておき、少なくとも「表面保護層、印刷層、紙基材層、内側熱可塑性樹脂層が順に積層され」る点において一致する。
引用発明3の「印刷層(6b)に用いたインキには、硝化綿・ウレタン系樹脂からなるLPGTインキにSP硬化剤を添加して用い(いずれも東洋インキ製)」ることは、「印刷層(6b)」が硝化綿・ウレタン系樹脂からなるLPGTインキにSP硬化剤を添加して用いており、硝化綿はバイオマス由来のニトロセルロースを含んでいるものであるから、本件補正発明の「印刷層は、着色剤と、バイオマス由来のニトロセルロースと、を含み」に相当する。
引用発明3の「オーバーコート層(8)には、硝化綿・ウレタン系樹脂からなるLPGTメジウムにSP硬化剤を添加し更にポリエチレン系ワックスである添加剤240を用いた」ことは、「オーバーコート層(8)」は硝化綿が含まれているから、本件補正発明の「表面保護層は、ニトロセルロースを含み」に相当する。
引用発明3の「フタ材の原紙」は、その機能等からみて、本件補正発明の「包装材料」に相当する。
イ そうすると、本件補正発明と引用発明3との一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点1】
「少なくとも、表面保護層、印刷層、紙基材層、内側熱可塑性樹脂層が順に積層された包装材料であって、
前記印刷層は、着色剤と、バイオマス由来のニトロセルロースと、を含み、
前記表面保護層は、ニトロセルロースを含む、
包装材料。」
【相違点1】
本件補正発明は、「印刷層」と「紙基材層」との間に「外側熱可塑性樹脂層」を有するものであるが、引用発明3は、「印刷層(6b)」と「支持層(1)」のうち「紙」との間に、「外側熱可塑性樹脂層」と呼べるものを有するかどうか不明である点。
【相違点2】
紙基材層に関し、本件補正発明は、「前記紙基材層は、100g/m2以上700g/m2以下の坪量を有する」と特定するのに対し、引用発明3は、この点を特定しない点。
(4) 判断
ア 相違点1について
引用発明3の「印刷層(6b)」と「紙」の間には、「接着剤層(3)」を有している。
そして、引用発明3の接着剤層(3)は、蒸着フィルムと紙とをドライラミネートで接着するための接着層であるが、蒸着フィルムと紙との接着層としてポリエチレン樹脂を利用した押出ラミネートで接着することは、ドライラミネートを利用した接着法と同様に周知慣用な技術である(要すれば、https://www.fukusuke-kogyo.co.jp/products/b00.html参照のこと)。
そして、当業者は求められるコストや接着強度等に応じて接着方法を適宜変更するものであるから、引用発明3の具体的な用途等に応じて、接着層を、ポリエチレンを利用した押出ラミネート層とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
仮に、接着層を、ポリエチレン樹脂を利用した押出ラミネートで接着することに置き換えることが困難であるとしても、ポリエチレンを含む外側熱可塑性樹脂層と紙基材層と内側熱可塑性樹脂層をこの順に有する包装材料は多数あり(例えば、特開2018-12744号公報の積層体11(段落【0100】)、特開2006-347616号公報の段落【0002】、特開2006-282257号公報の段落【0002】等を参照。)、紙基材層の外側にポリエチレンを含む外側熱可塑性樹脂層を設けることは周知技術である。
そうすると、引用発明3において、紙基材層の外側に当該周知技術を適用して外側熱可塑性樹脂層を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、そのことによる効果について検討しても、格別なものがあるとは認められない。
イ 相違点2について
フタ材の原紙として利用される紙の坪量としては、フタの種類に応じて適宜変更され得るものであり、100g/m2以上700g/m2以下という数値範囲も通常に利用されている範囲のものである(要すれば、特開2003-182781号公報の特許請求の範囲の請求項1、特開2013-141984号公報の段落【0031】、特開2003-237816号公報の特許請求の範囲の請求項2等参照。)。
その上で、引用発明3における紙の坪量は、具体的に利用するフタの大きさや用途等に応じて、当業者が適宜設定し得る設計的事項に過ぎない。
また、上記数値範囲としたことによる効果について検討しても、本願明細書においては、単に100g/m2以上700g/m2以下の坪量が好ましいとの記載があるのみであり、本件補正発明の課題である「バイオマス度が高められた紙基材層を含む包装材料の提供」との関係が認められず、また、数値範囲の臨界的意義も不明であるから、相違点2に係る構成における効果に格別なものがあるとは認められない。
よって、本件補正発明は、引用発明3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件補正についてのむすび
以上より、本件補正発明は、引用発明3及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
以上のことから、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないというものである。
具体的には、引用文献3には、蒸着層とは反対の面に印刷層(6b)、その上にオーバーコート層(8)を設けた蒸着フィルム(10)と、紙を用いてアルミニウム箔と押し出しポリエチレンを用いてラミネートした支持層(1)と、シーラント層(2)とを有することが記載されており、引用文献3記載の発明に対して、引用文献2に記載された発明の印刷層の支持層として用いられるバイオマスポリエチレンを適用することで、本願発明1に係る構成とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2018-62642号公報
引用文献2:特開2015-205719号公報
引用文献3:特開2014-231387号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である包装材料の表面保護層及び紙基材層に関しての層構成をさらに特定する補正事項を削除したものである。
そして、本願発明と引用文献3に記載の発明とを対比すると、上記第2の[理由]2(3)で対比したとおりであって、相違点1で相違しているが、上記(4)での判断のとおり当該相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。
そうすると、本願発明は、引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、又は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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