特許拒絶査定不服審判
2023-015798
包装材料用積層体および包装材料
- 審判番号
- 2023-015798
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-168334
- 請求日
- 2023年09月19日
- 審決日
- 2026年06月16日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】浅野 真理
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P18 .575-WZ (B32B) / P18 .121-WZ (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-168334「包装材料用積層体および包装材料」拒絶査定不服審判事件〔令和2年3月19日出願公開、特開2020-40254〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 8月18日付け:拒絶理由通知書
令和4年10月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 1月27日付け:拒絶理由通知書
令和5年 4月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 6月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 6月16日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 9月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 7月 1日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和7年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年11月14日付け:令和7年9月2日付けの手続補正の却下の決定
令和7年11月14日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和8年 1月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和8年 2月20日付け:令和8年1月20日付けの手続補正の却下の決定
令和8年 2月20日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和8年 4月28日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和8年4月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和8年4月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)
「【請求項1】
基材と、接着層と、ヒートシール層とを少なくとも備える包装材料用積層体であって、
前記基材が、基材本体および第1の蒸着膜を備え、
前記ヒートシール層が、第2の蒸着膜およびポリエチレン樹脂層を備え、前記第2の蒸着膜が、前記ポリエチレン樹脂層に接して設けられており、
前記基材本体が、ポリエチレン樹脂により構成される延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体は、少なくとも、高密度ポリエチレンを含む層及び中密度ポリエチレンを含む層を備えた多層構造を有しており、
前記基材本体の外側に、前記高密度ポリエチレンを含む層を備え、
前記第1の蒸着膜の厚みが、前記基材本体の厚みよりも小さく、
前記第2の蒸着膜の厚みが、前記ポリエチレン樹脂層の厚みよりも小さく、
前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレン樹脂の含有量が、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年9月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
基材と、接着層と、ヒートシール層とを少なくとも備え、
前記基材が、基材本体および第1の蒸着膜を備え、
前記ヒートシール層が、第2の蒸着膜およびポリエチレン樹脂層を備え、前記第2の蒸着膜が、前記ポリエチレン樹脂層に接して設けられており、
前記基材本体が、ポリエチレン樹脂により構成される延伸樹脂フィルムであり、
前記第1の蒸着膜の厚みが、前記基材本体の厚みよりも小さく、
前記第2の蒸着膜の厚みが、前記ポリエチレン樹脂層の厚みよりも小さく、
包装材料用積層体全体における前記ポリエチレン樹脂の含有量が、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「基材本体」について、上記のとおり限定を付加する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献B
(ア)引用文献Bの記載
原査定で引用された特開2018-16012号公報(以下「引用文献B」という。)には以下の記載がある。なお、下線は当審において付した。以下同様。
「【0013】
本発明の酸素バリア性積層体および該積層体からなる包装材料について、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。
図1~3は、本発明の包装材料を形成する積層体の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【0014】
本発明の積層体は、図1に示すように、基材層と、接着剤層と、バリア層と、シーラント層とを、積層してなる構成を基本構造とするものである。
本発明の積層体の他の態様としては、図2に示すように、基材層と接着剤層との間に、蒸着層と、バリアコート層を積層した構成であってもよい。
本発明の積層体のさらに別の態様としては、図3に示すように、バリアコート層と接着剤層との間に、印刷層を積層した構成であってもよい。
上記の例は、本発明の包装材料の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。」
「【0016】
[基材層]
・・・
【0017】
本発明の積層体において、基材層としては、単層フィルムまたは多層積層フィルムが用いられるが、特に限定されず、各種包装材料に用いられる任意のフィルムを使用することができる。・・・
【0018】
基材層として好ましく使用されるフィルムの具体例としては、紙、アルミ箔、セロファン、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、酸変性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、アセタール系樹脂フィルム、これらを一軸または二軸延伸したフィルム、Kコートフィルム、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなる樹脂フィルム、Kコート延伸ポリプロピレンフィルム、Kコート延伸ナイロンフィルム、これらの2以上のフィルムを積層した複合フィルム等が挙げられる。」
「【0039】
本発明においては、シーラント層としてヒートシール性の樹脂層が望ましい。ヒートシール性の樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよい。
具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、その他等の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂のフィルムないしシートあるいはその他塗布膜等を使用することができる。・・・」
「【図2】
[図:0001437632000001.jpg]
」
(イ)引用文献Bに記載された発明
上記(ア)の記載を参照し、特に【0014】、【図2】の記載に着目すると、引用文献Bには以下の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されている。
「基材層と、蒸着層と、バリアコート層と、接着剤層と、バリア(蒸着)層と、シーラント層とをこの順に積層してなる、包装材料を形成する酸素バリア性積層体。」
イ 周知技術
(ア)引用文献1の記載
当審において通知した令和7年7月1日付け拒絶理由で引用した韓国登録特許第10-1293222号公報(以下「引用文献1」という。)には以下の記載がある。なお和訳は当審による。以下同様。
「
[図:0001437632000002.jpg]
」
(和訳:[0006]また、ポリエチレン系列の樹脂はスリング性が低くて包装対象を覆う材質では適合することができなかった問題点があった。
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0007]本発明の目的は接着層を除いた各層がすべてポリエチレン系列の樹脂で成り立って、各層を分離しなくて分離収去またはリサイクルが可能であり、熱変形性、引張り応力及び耐衝撃性が優れた包装材を提供することである。)
(イ)引用文献2の記載
当審において通知した令和7年7月1日付け拒絶理由で引用した米国特許出願公開第2016/0332430号明細書(以下「引用文献2」という。)には以下の記載がある。
「
[図:0001437632000003.jpg]
」
(和訳:[0005]現在、市場に出回っているスタンドアップパウチのほとんどは、剛性やその他の望ましい特性を与えるために、ポリエチレン(PE)フィルム(モノまたはコエックス)に他の材料をラミネートして作られている。この他の材料として、多くの場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。ポリプロピレン、アルミ箔、および/またはポリアミド(ナイロン)が使用される構造もある。しかし、ポリエチレンのみで製造されたスタンドアップパウチは存在しない。
[0006]持続可能性の観点から、ポリエチレン樹脂のみを使用してスタンドアップパウチとして使用可能なフィルムを実現することが望ましい。一般的に、ポリエチレンを使用することで、企業は十分な耐穿刺性を維持しながらフィルムの厚さを薄くすることができる。これにより、包装材料の輸送に必要なエネルギー量が削減されるだけでなく、埋め立て地に送られる廃棄物の量も削減される。さらに、ポリエチレンのような単一の樹脂からなるフィルム構造は、より容易にリサイクルできる。)
(ウ)引用文献3の記載
当審において通知した令和7年7月1日付け拒絶理由で引用した、「大日本印刷、リサイクルに適した単一素材(モノマテリアル)のフィルムパッケージ2種を開発」,日本経済新聞,2018年9月6日,[検索日2023年11月17日],インターネット<URL:https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP489810_W8A900C1000000/>(以下「引用文献3」という。)には以下の記載がある。
「
[図:0001437632000004.jpg]
」
(エ)引用文献1~3に例示される周知技術
上記(ア)~(ウ)を踏まえると、以下の事項は本願出願時における周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
「積層体の各層をポリエチレンとする、いわゆるモノマテリアル化によりリサイクル性を向上させること。」
ウ 引用文献4
(ア)引用文献4の記載
令和8年2月20付け補正却下の決定で引用された特表2018-511504号公報(以下「引用文献4」という。)には以下の記載がある。
「【0001】 本発明は、第1ポリエチレンウェブを、第2ポリエチレンウェブに積層することによって調製される印刷された積層構造体に関する。該積層構造体は、スタンドアップパウチ(stand up pouch:自立袋)の調製に特に適している。」
「【0005】
従って、積層構造体は、ポリマー材料から作製される。
一実施形態では、ポリマー材料は、異なるタイプのポリエチレンから本質的になる-この実施形態のSUPを作製するのに用いられる唯一のポリマー材料は、ポリエチレンである。好適なタイプのポリエチレンには、
1)高密度ポリエチレン(HDPE)-密度約0.95から約0.97g/ccを有するポリエチレンホモポリマー又はコポリマー;
2)中密度ポリエチレン(MDPE)-密度約0.93から約0.95g/ccを有するポリエチレンコポリマー;
3)線状低密度ポリエチレン(LLDPE)-密度約0.915から約0.93g/ccを有するポリエチレンコポリマー;及び
4)シーラントポリエチレン-熱成形シールの調製に適したポリエチレン材料、特に、1)密度約0.88から0.915g/ccを有するポリエチレンコポリマー(「VLDPE」);及び2)高圧低密度ポリエチレン(LD)-高圧法にてフリーラジカル開始剤を用いて調製され、密度約0.91から約0.93g/ccを有するポリエチレンホモポリマー、からなる群から選択されるポリエチレン
が含まれる。」
「【0011】
多-層外側ウェブ又はウェブA
一般に、SUPの外側ウェブを形成するのに用いられる厚い単層HDPEフィルムは、構造体に適切な剛性を付与するのに使用することができる。しかし、HDPEの厚い層には、光学的特性が低いという欠点がある。このことは、SUPを不透明にする外側ウェブの外側(スキン)の側を印刷することによって解決できる。しかし、この設計では、印刷が、SUPの輸送及び取扱いの間に、容易に傷つき且つ損傷する可能性があるので、乱暴な扱い対して余り耐性がない。
一実施形態では、本発明は、少なくとも1層(「層A.1」)が、HDPEから調製され、且つ少なくとも1層(「層A.2」)が、より低密度のポリエチレン(例えば、LLDPE、LD又はVLDPE)から調製される同時押出多層フィルムを外側ウェブに対して使用することによって、これらの問題を軽減する。
一実施形態では、HDPEは、メルトインデックス(I2)0.1から10(特に、0.3から3)グラム/10分を有することによって、更に特徴付けられる。
一実施形態では、LLDPEは、メルトインデックス(I2)0.1から5(特に、0.3から3)グラム/10分を有することによって、更に特徴付けられる。
一実施形態では、LLDPEは、シングルサイト触媒(例えば、メタロセン触媒)を用いて調製されることによって、分子量分布(Mw/Mn)(即ち、重量平均分子量を数平均分子量によって割算したもの)約2から約4を有することによって、更に特徴付けられる。このタイプのLLDPEは、典型的に、sLLDPEと称される。」
「【0013】
別の実施形態では、ウェブAに用いられるLLDPEは、メルトインデックス(I2)0.2から5、特に、0.2から0.8を有する少量(0.2から10重量%)のLDポリエチレンとブレンドされる。これらのLLDPE及びLLDPE及びLDの特定のブレンド物は、LLDPE単独(特に、LLDPEがsLLDPEの場合)と比べて、優れた光学的特性及び優れた剛性を有することが観察されている。・・・
・・・
【0016】
・・・
これらのLLDPE/HDPE/核形成剤のブレンドもはまた、100%LLDPEよりも、優れた光学的特性及び高いモジュラス(高い剛性(stiffness))をもたらすことが見出されている。
別の実施形態では、外側ウェブは、タイプA/B/Aの同時押出フィルムである3層であり、AがHDPEであり、Bが低密度ポリエチレン、特に、上記のLLDPE組成物(LDとブレンドしたLLDPE組成物、及びHD及び核形成剤とブレンドしたLLDPE組成物を含む。)である。これらのフィルムは、良好な硬性をもたらす。」
「【0037】
・・・
パート2 材料リスト
以下のポリエチレン樹脂を、実施例にて使用した。
【表1】
[図:0001437632000005.jpg]
先頭記号ZNは、ポリエチレンが、チーグラー ナッタ触媒系を用いて調製されたことを示す。先頭記号SSCは、ポリエチレンが、シングルサイト触媒系を用いて調製されたことを示す。(nuc)の用語は、樹脂が、核形成剤(目標点1200重量ppmの、Milliken Chemicalsによって商標HYPERFORM(登録商標)20Eの下で販売されている商業的に入手可能な核形成剤)を含有していることを示す。」
「【0042】
最終的な積層構造体
最終的な積層構造体は、第1(外側)ウェブを第2(内側)ウェブに積層することによって調製される。
表4は、2つの最終的な構造体の代表的なデータを示している。
【表5】
[図:0001437632000006.jpg]
」
(イ)引用文献4の記載から認定できる事項
a 上記(ア)の【0005】及び【0011】の記載から、
HDPEはメルトインデックス0.3~3グラム/10分、密度約0.95~0.97g/ccであり、
LDPEはメルトインデックス0.2~0.8グラム/10分、密度約0.91~0.93g/ccであり、
LLDPEはメルトインデックス0.3~3グラム/10分、密度約0.915~0.93g/ccであり、
MDPEは密度約0.93~0.95g/ccであることがわかる。
b 上記aの認定事項及び上記(ア)の【0037】【表1】を照らし合わせると、【0042】の【表5】(表4)の「ZN-1(nuc)」はHDPEを含み、「ZN-2」はMDPEを含み、「SSC-1(nuc)」はHDPEを含み、「ZN-3」はLDPEを含むことがわかる。
c 上記bの認定事項及び上記(ア)の【0016】の記載を照らし合わせると、【0042】の【表5】(表4)において、HDPE組成物を含む層である「ZN-1(nuc)」が外側に配置されていることがわかる。
(ウ)引用文献4に記載された事項
上記(ア)及び(イ)を踏まえ、特に【0042】【表5】(表4)のサンプル4.1に着目すると、引用文献4には以下の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。
「外側ウェブと内側ウェブが積層される食品及び飲料を包装するための積層構造体において、前記外側ウェブが、HDPE組成物を含む層A.1と、密度約0.93~0.95g/ccであるMDPEを含む層A.2を含むとともに、HDPE組成物を含む層A.1が外側に配置される層構成とすること。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明Bの「基材層」は、本件補正発明の「ポリエチレン樹脂により構成される延伸樹脂フィルムであ」る「基材本体」と、「基材本体」である限りにおいて一致する。
引用発明Bの「蒸着層」、「接着剤層」、「バリア(蒸着)層」はそれぞれ、本件補正発明の「第1の蒸着膜」、「接着層」、「第2の蒸着膜」、に相当する。
引用発明Bの「シーラント層」は、本件補正発明の「ポリエチレン樹脂層」と、「樹脂層」である限りにおいて一致する。
引用発明Bの「基材層と、蒸着層と」を「積層してなる」層構成は、本件補正発明の「基材本体および第1の蒸着膜を備え」ている「基材」に相当する。
引用発明Bの「バリア(蒸着)層と、シーラント層とを」積層してなる層構成は、本件補正発明の「第2の蒸着膜およびポリエチレン樹脂層を備え、前記第2の蒸着膜が、前記ポリエチレン樹脂層に接して設けられて」いる「ヒートシール層」と、「第2の蒸着膜および樹脂層を備え、前記第2の蒸着膜が、前記樹脂層に接して設けられて」いる「ヒートシール層」である限りにおいて一致する。
そうすると、引用発明Bの「基材層と、蒸着層と、バリアコート層と、接着剤層と、バリア(蒸着)層と、シーラント層とをこの順に積層してなる、包装材料を形成する酸素バリア性積層体」は、本件補正発明の「基材と、接着層と、ヒートシール層とを少なくとも備える包装材料用積層体」に相当する。
以上を総合すると、本件補正発明と引用発明Bの一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「基材と、接着層と、ヒートシール層とを少なくとも備える包装材料用積層体であって、
前記基材が、基材本体および第1の蒸着膜を備え、
前記ヒートシール層が、第2の蒸着膜および樹脂層を備え、前記第2の蒸着膜が、前記樹脂層に接して設けられている、包装材料用積層体。」
[相違点1]
ヒートシール層が備える樹脂層について、本件補正発明では、「ポリエチレン樹脂層」であるのに対し、引用発明Bでは、樹脂の種類が不明な点。
[相違点2]
基材本体について、本件補正発明では、「ポリエチレン樹脂により構成される延伸樹脂フィルムであ」るのに対し、引用発明Bでは、材料の種類及び延伸の有無が不明な点。
[相違点3]
基材本体が、本件補正発明では、「少なくとも、高密度ポリエチレンを含む層及び中密度ポリエチレンを含む層を備えた多層構造を有しており、前記基材本体の外側に、前記高密度ポリエチレンを含む層を備え」ているのに対し、引用発明Bでは、層構成が不明な点。
[相違点4]
本件補正発明では、「前記第1の蒸着膜の厚みが、前記基材本体の厚みよりも小さく、前記第2の蒸着膜の厚みが、前記ポリエチレン樹脂層の厚みよりも小さ」いのに対し、引用発明Bでは、基材層と蒸着層、及び、バリア(蒸着)層とシーラント層の厚みの大小関係が不明な点。
[相違点5]
本件補正発明では、「前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレン樹脂の含有量が、80質量%以上である」のに対し、引用発明Bでは、かかる構成を有するか不明な点。
(4)判断
ア 相違点1、2、5について
事案に鑑み相違点1、2、5についてまとめて検討する。
本願出願当時において、積層体の各層をポリエチレンとする、いわゆるモノマテリアル化によりリサイクル性を向上させることは、上記(2)イ(エ)で示したとおり本願出願時における周知技術(周知技術1)であり、引用文献Bの【0018】、【0039】の記載を併せて参照することで、引用発明Bにおいて、基材層とシーラント層をポリエチレン樹脂とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、そのようにした引用発明Bにおいて、上記周知技術1のリサイクル性向上の観点を踏まえると、酸素バリア性積層体全体におけるポリエチレン樹脂の含有量を80質量%以上とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
加えて、引用発明Bの基材層を延伸したものとすることは、引用文献Bの【0018】の記載をまつまでもなく通常採用し得る構成に過ぎない。
したがって、引用発明Bにおいて、引用文献Bの記載及び周知技術1を参照することで、相違点1、2、5に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点3について
包装材料に用いる積層体としてポリエチレンは広く用いられているところ、引用文献Bの【0017】~【0018】の記載を踏まえると、引用文献Bにおいても、基材層を種類の異なるポリエチレン樹脂からなる多層構成とすることが示唆されているといえ、その際に具体的にどのような種類の樹脂を用いるかは基材層に求める性能等に応じて適宜決定し得るところ、例えば上記(2)ウ(ウ)に引用文献4記載事項として示した、外側ウェブとして、HDPE組成物を含む層A.1と、MDPEを含む層A.2を含むとともに、HDPE組成物を含む層A.1が外側に配置される層構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、引用発明Bにおいて、引用文献Bの記載及び引用文献4記載事項を参照することで、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点4について
蒸着膜が当該蒸着膜が形成される樹脂層よりも薄いことは一般的なことに過ぎない。
そうすると、相違点4は実質的な相違点ではない。
仮にそうではなかったとしても、相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明B、引用文献Bの記載、引用文献4記載事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~4に係る発明は、令和5年9月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審において通知した拒絶理由
当審において令和8年2月20日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は以下の理由を含むものである。
本願発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献Bに記載された発明、引用文献Bの記載及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
[引用文献一覧]
引用文献B:特開2018-16012号公報
引用文献1:韓国登録特許第10-1293222号公報(周知技術を示す文献)
引用文献2:米国特許出願公開第2016/0332430号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献3:「大日本印刷、リサイクルに適した単一素材(モノマテリアル)のフィルムパッケージ2種を開発」,日本経済新聞,2018年9月6日,[検索日2023年11月17日],インターネット<URL:https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP489810_W8A900C1000000/>(周知技術を示す文献)
3 引用文献の記載事項等
当審拒絶理由で引用された引用文献B及び引用文献1~3の記載事項等は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「基材本体」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明B、引用文献Bの記載、引用文献4記載事項及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、引用文献4記載事項は上記限定事項に係る構成に対応して引用したものであるから、本願発明は、引用発明B、引用文献Bの記載及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-015798