特許拒絶査定不服審判
2022-018716
マッサージ装置
- 審判番号
- 2022-018716
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-186226外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月21日
- 審決日
- 2023年07月19日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 MTG
- 【請求人代理人】弁理士法人清原国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-186226号「マッサージ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020- 54542号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 5月17日付け 拒絶理由通知
令和 4年 7月20日提出 意見書,手続補正書
令和 4年 8月15日付け 拒絶査定
令和 4年11月21日提出 審判請求書,手続補正書
令和 4年12月23日提出 審判請求書の補正
令和 5年 5月24日提出 上申書
第2 令和4年11月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年11月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「エアの供給により膨張可能なエアセルと、
前記エアセルの下方に配置された、前記エアセルの下方への膨張を防止するためのエアセル保持板と、
前記エアセル保持板の下方に配置された、前記エアセルと前記エアセル保持板を固定するための固定ベースであって、前記エアセル保持板よりも柔らかい固定ベースと、
を含み、
前記エアセルと、前記エアセル保持板と、前記固定ベースとが一体化され、
前記固定ベースの下方には、クッション部材が前記固定ベースと一体として設けられていることを特徴とする、マッサージ装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年7月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである
「エアの供給により膨張可能なエアセルと、
前記エアセルの下方に配置されたエアセル保持板と、
前記エアセル保持板の下方に配置された、前記エアセルと前記エアセル保持板を固定するための固定ベースであって、前記エアセル保持板よりも柔らかい固定ベースと、
を含み、
前記エアセルと、前記エアセル保持板と、前記固定ベースとが一体化され、
前記固定ベースの下方には、クッション部材が前記固定ベースと一体または別体として設けられていることを特徴とする、マッサージ装置。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1記載の「エアセル保持板」を「前記エアセルの下方への膨張を防止するためのエアセル保持板」に限定すると共に、「クッション部材が前記固定ベースと一体または別体として設けられている」の記載を「クッション部材が前記固定ベースと一体として設けられている」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-58563号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
ア「【0001】
この発明は、人体に押圧力を加えてマッサージを行うマッサージ装置に関するものである。」
イ「【0018】
図1に示す10は、人体に当接して押圧力を付与し、人体当接面をマッサージするマッサージ装置である。このマッサージ装置10は、いわゆるエア・マッサージ装置であって、エア給排気装置14(図6参照)から供給されるエアを利用してマッサージを行うものである。
【0019】
また、このマッサージ装置10は人体の身長方向に沿って形成されると共に、首肩部をマッサージする首肩用マッサージユニット20と、この首肩用マッサージユニット20の移動を阻止する移動阻止手段と、この移動阻止手段と首肩用マッサージユニット20とを連結する連結部材40とを備えている。
【0020】
そして、この移動阻止手段は、人体の肩部よりも脚部側に位置しており、人体の首肩部以外の部位、例えば尻部をマッサージする尻用マッサージユニット(脚部側マッサージユニット)30を有している。
【0021】
首肩用マッサージユニット20は、図2に示すように、ベース部材(基台)21と、このベース部材21上に設けられて人体をマッサージする一対の施療ユニット22、22とを有している。
【0022】
ベース部材21は硬質の板材であり、例えばプラスチック製のダンボール板によって形成されている。そして、このベース部材21は、人体幅方向の長さが人体の肩幅よりも長くされると共に、人体身長方向の長さが人体の頭部を載置可能な長さに形成されている。」
ウ「【0023】
各施療ユニット22、22は、エアによって膨縮するエアバッグ23と、このエアバッグ23上に配設された施療部材24と、この施療部材24をベース部材21に対して回動可能に取付けるヒンジ部材25とをそれぞれ有している。」
エ「【0031】
そして、ブラケット25aは、エアバッグ23上に配置されて、このエアバッグ23と共に複数のネジ26によってベース部材21に固定されている。」
オ「【0042】
連結部材40は、例えば合成樹脂によって形成された平坦な板材であり、人体身長方向に伸縮しない強度を有している。なお、ここでは厚みが2~3mm程度のポリプロピレン製の板材である。
【0043】
この連結部材40は、図1に示すように、首肩用マッサージユニット20及び尻用マッサージユニット30の人体幅方向の両側部にそれぞれ位置している。そして、各連結部材40の一方の端部41に首肩用マッサージユニット20のベース部材21が取り付けられ、他方の端部42に尻用マッサージユニット30のベース部材31が取り付けられている。
【0044】
また、この連結部材40の両端41、42は、それぞれ各マッサージユニット20、30のベース部材21、31の裏面側に形成された切欠部に嵌合され、図示しないネジを介してベース部材21、31に固定されている。」
カ「【0046】
このマッサージ装置10を使用するには、まず、図7に示すように、ウレタンマットや布団等のマット部材15の上面15aにマッサージ装置10を載置する。」
キ「【0074】
さらに、上述の実施の形態では、エアバッグと人体に当接する施療部材とが別体となっているが、エアによって膨縮するエアバッグが人体に当接する施療部材(施療面)であってもよい。この場合、エアバッグの表面が人体に当接するので、比較的広い範囲をマッサージすることが可能となる。」
ク「
[図:0001401454000001.jpg]
」
ケ「
[図:0001401454000002.jpg]
」
コ「
[図:0001401454000003.jpg]
」
サ 上記ク、ケの図面の記載から、ベース部材21はエアバッグ23の下方に配置されていることが看取できる。
(3)引用発明
上記ア~キの下線部の記載、ク~コの図面の記載及びサの認定からすれば、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「エアによって膨縮するエアバッグ23と、
前記エアバッグ23の下方に配置された硬質の板材であり、例えばプラスチック製の段ボール板によって形成されるベース部材21と、
前記ベース部材21の裏面側に形成された切欠部に嵌合され、ネジを介してベース部材21に固定されている連結部材40であって、人体身長方向に伸縮しない強度を有し厚みが2~3mm程度のポリプロピレン製の板材である連結部材40と、
を含み、
連結部材40は、ネジを介してベース部材21に固定され、エアバッグ23は複数のネジ26によってベース部材21に固定され、
ウレタンマットや布団等のマット部材15の上面15aに載置されているマッサージ装置10。」
(4)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「エアによって膨縮するエアバッグ23」は、エアによって膨縮するのであるから、エアの供給により膨張可能であることは明らかであり、本件補正発明の「エアの供給により膨張可能なエアセル」に相当する。
イ 引用発明のベース部材21は、「エアバッグ23の下方に配置され」るものであり、「硬質の板材」で構成されているのであるから、構造上、上方に配置されたエアバッグ23の下方への膨張を防止していることは明らかである。
よって、引用発明の「エアバッグ23の下方に配置された硬質の板材であり、例えばプラスチック製の段ボール板によって形成されるベース部材21」は、本件補正発明の「エアセルの下方に配置された、前記エアセルの下方への膨張を防止するためのエアセル保持板」に相当する。
ウ 引用発明の「連結部材40」は、「ベース部材21の裏面側に形成された切欠部に嵌合される」のであるから、ベース部材21の下方に配置されており、「ネジを介してベース部材21に固定され」、「エアバッグ23に複数のネジ26によってベース部材21に固定され」ているのであるから、「エアバッグ23とベース部材21を固定するため」のものといえる。また、当該「連結部材40」は、「人体身長方向に伸縮しない強度を有し厚みが2~3mm程度のポリプロピレン製の板材である」のに対し、「ベース部材21」は、「硬質の板材であり、例えばプラスチック製の段ボール板によって形成され」ているから、連結部材40が「ベース部材21よりも柔らかい」ことが推認される。
よって、引用発明の「ベース部材21の裏面側に形成された切欠部に嵌合され、ネジを介してベース部材21に固定されている連結部材40であって、人体身長方向に伸縮しない強度を有し厚みが2~3mm程度のポリプロピレン製の板材である連結部材40」は、本件補正発明の「エアセル保持板の下方に配置された、エアセルとエアセル保持板を固定するための固定ベースであって、前記エアセル保持板よりも柔らかい固定ベース」に相当する。
エ 引用発明の「エアバッグ23」は複数のネジ26によって「ベース部材21」に固定され、「連結部材40」はネジを介して「ベース部材21」に固定されているのであるから、引用発明の「エアバッグ23」と、「ベース部材21」と、「連結部材40」とは,一体化されているといえ、引用発明の「連結部材40は、ネジを介してベース部材21に固定され、エアバッグ23は複数のネジ26によってベース部材21に固定され」ていることは、本件補正発明の「前記エアセルと、前記エアセル保持板と、前記固定ベースとが一体化され」ていることに相当する。
オ 引用発明の「ウレタンマットや布団等のマット部材15」は、機能及び構造上、本件補正発明の「クッション部材」に相当し、引用発明のマッサージ装置10は、当該ウレタンマットや布団等のマット部材15に載置されることから、連結部材40の下方に当該ウレタンマットや布団等のマット部材15が設けられることは構造上明らかであり、引用発明の「ウレタンマットや布団等のマット部材15の上面15aに載置されている」ことと、本件補正発明の「固定ベースの下方には、クッション部材が前記固定ベースと一体として設けられている」こととは、「固定ベースの下方に、クッション部材が設けられている」点で一致する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「エアの供給により膨張可能なエアセルと、
前記エアセルの下方に配置された、前記エアセルの下方への膨張を防止するためのエアセル保持板と、
前記エアセル保持板の下方に配置された、前記エアセルと前記エアセル保持板を固定するための固定ベースであって、前記エアセル保持板よりも柔らかい固定ベースと、
を含み、
前記エアセルと、前記エアセル保持板と、前記固定ベースとが一体化され、
前記固定ベースの下方に、クッション部材が設けられている、マッサージ装置。」
【相違点】
固定ベースの下方にクッション部材を設けることにおいて、本件補正発明では、クッション部材が固定ベースと一体として設けられているのに対し、引用発明では、連結部材40がマット部材15の上面15aに載置されている点。
(5)判断
以下、上記相違点について検討する。
引用発明に係るマッサージ装置も、マット部材15上に横臥して利用するものであり、また、引用文献1の段落【0065】に記載されているように、引用発明は利用者の的確な位置をマッサージするものであって、当該マット部材15上の特定の位置に横臥した利用者と当該マット部材15に載置されたエアバッグ23の位置が特定の関係となることが必要であるから、そのために連結部材40をマット部材15の上面15aに接着剤等の周知の手段により固定し一体とすることは、当業者であれば容易に想到できることと認められる。
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
なお、令和5年5月24日提出の上申書において、出願人は請求項2及び請求項3を請求項1に加入する減縮補正をする用意がある旨主張しているので、以下、請求項2及び3に係る構成での限定により進歩性を備えるものとなるかについて予備的に検討する。
まず、請求項2で新たに追加される「前記エアセルと、前記エアセル保持板と、前記固定ベースとが螺合によって一体化されている」構成は、引用文献1の段落【0031】及び【0044】(上記(2)エ、オ参照。)に、エアバッグ23とベース部材21及びベース部材21と連結部材40がネジにより固定されている点が記載されているから、上記請求項2で追加された構成は、引用文献1に記載された構成である。
また、請求項3で新たに追加される「前記エアセルは、使用者が前記マッサージ装置に横臥した際に、横臥した前記使用者の胸部から腹部にかかる部分に、前記使用者の身体の高さ方向に2つ設けられ、2つの前記エアセルの間に、前記使用者の身体の幅方向に延びるように体動センサが設けられている」構成は、エアセルの設置位置をどこにするかは実施に際しての設計的事項にすぎず(具体的に、エアセルを、横臥した使用者の胸部から腹部にかかる部分に、使用者の身体の高さ方向に2つ設ける点については、拒絶査定の引用文献2(特開2006-95179号公報)の段落【0026】の(変形例3)を参照。)、また、使用者の身体の幅方向に延びるように体動センサ(圧力センサ11)を設ける点は上記引用文献2の段落【0026】及び図6に記載されており、具体的にどこに体動センサを設けるかは実施に際しての設計的事項にすぎないから、上記請求項3で追加された構成は、引用発明及び上記引用文献2の記載に基いて、当業者が容易に想到できたものである。
よって、仮に請求項2及び請求項3を請求項1に加入したとしても、特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。
(6)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年11月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和4年7月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、拒絶の理由として概ね次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2005-58563号公報
3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明のエアセル保持板について「前記エアセルの下方への膨張を防止する」との限定を削除すると共に、クッション部材が固定ベースと「一体」として設けられているとしたのを、「一体または別体」として設けられているとしたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(4)、(5)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-018716