特許拒絶査定不服審判
2025-001064
ヘアドライヤ
- 審判番号
- 2025-001064
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-199120
- 請求日
- 2025年01月24日
- 審決日
- 2026年06月26日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 MTG
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 審判長/審判官
- 審判長 川口 真一
- 審判官 芝井 隆
- 審判官 村上 聡
- 分類
- P18 .121-Z (A45D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-199120「ヘアドライヤ」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 1月19日出願公開、特開2024- 9236〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月18日に出願した特願2019-49581号の一部を令和5年11月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年12月15日 :手続補正書、上申書の提出
令和6年 7月19日付け :拒絶理由通知書
令和6年 9月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年10月11日付け :拒絶査定
令和7年 1月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和7年1月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の結論]
令和7年1月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「ハウジングを備えたヘアドライヤであって、
前記ハウジングは、基端部にモータ及び前記モータによって回転されるファンを内蔵したモータ室を有するとともに、前記モータ室から前方に向かって延びる送風筒を有し、
前記送風筒の内部に、人体を加温するための熱源を設けるとともに、使用者の頭皮や頭髪の温度を検出する温度センサを設け、
前記送風筒の内部に遠赤外線発生体を設け、
前記遠赤外線発生体を前記熱源に付設し、
前記温度センサの検出結果に応じて、前記熱源の発熱温度を自動的に調節するヘアドライヤ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年9月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-5の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
ハウジングを備えたヘアドライヤであって、
前記ハウジングは、基端部にモータ及び前記モータによって回転されるファンを内蔵したモータ室を有するとともに、前記モータ室から前方に向かって延びる送風筒を有し、
前記送風筒の内部に、人体を加温するための熱源を設けるとともに、使用者の頭皮や頭髪の温度を検出する温度センサを設けた、
ヘアドライヤ。
【請求項2】
前記温度センサは、前記送風筒の前側に位置し、前方を指向する請求項1に記載のヘアドライヤ。
【請求項3】
前記温度センサの検出結果に応じて、前記熱源の発熱温度を自動的に調節する請求項1又は請求項2に記載のヘアドライヤ。
【請求項4】
前記送風筒の内部に、遠赤外線発生体を設けた請求項1に記載のヘアドライヤ。
【請求項5】
前記遠赤外線発生体を前記熱源に付設した請求項4に記載のヘアドライヤ。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項5(請求項1を引用する請求項4を引用している)の「温度センサ」について、その機能を、具体的に、本件補正前の請求項3で特定されていたように「前記温度センサの検出結果に応じて、前記熱源の発熱温度を自動的に調節する」と限定するものであり、また、本件補正前の請求項5に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正後の本願発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平7-255524号公報(平成7年10月9日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0015】図1は、ヘアードライヤー5を示し、このヘアードライヤー5はハウジング10と、空気流入口11と空気流出口12との間に配置した空気循環手段13とを有し、この空気循環手段13には、循環空気を加熱する手段14を設ける。空気循環手段13は、例えば、ファンによって構成されている。空気循環手段13および手段14は、それぞれ電源16に接続し、スイッチ手段15によりスイッチが入り、空気を加熱する。ヘアードライヤーの操作中、使用者は空気流出口12から出る温風流17をヘア8に向ける。
【0016】本発明によれば、ヘアが発生する熱輻射を計測するための手段20を、例えば、赤外線センサーとし、温風流17の経路に配置する。センサー20は加熱手段14を制御するための手段18に接続してあり、手段18は計測されたヘアでの温度に基づいて制御を行う。
【0017】この制御を実施するため、所定の温度に固定し、ヘアの温度がその設定温度となる場合、制御手段18は、加熱手段14および空気循環(ブロー)手段13のうち、少なくとも一方の動作を減少または停止する。センサーは、このセンサーが温風流を十分に受けるヘア部分の温度変化を検出できるように構成配置する。」
「【0019】センサーは温風流の対称軸線X-Xに配置することが望ましいが、しかし代案として、この軸線の外側であってもよい。
【0020】センサーは、ヘアが放出する赤外線放射を計測でき、そして、温風流の経路に収納できると同時に、温風流への妨害がほんの僅かであるものであれば、どのようなものでも使用できる。」
【図1】
[図:0001438862000001.jpg]
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 段落【0015】に、ヘアードライヤー5はハウジング10を有するものであることが記載されている。
b 段落【0015】に、ヘアードライヤー5は、ファンによって構成される空気循環手段13、空気流出口12を有することが記載されている。
c 図1から、ハウジング10の後端にある空気流入口11の近傍に空気循環手段13が配置されること、ハウジング10が当該空気循環手段13を内蔵する部分を有すること、また、ハウジング10に空気循環手段13から前方に向かって延びる部分を有することが看て取れる。また、空気循環手段13は、モータにより回転されるものであることが看て取れる。
d 段落【0015】-【0016】に、ヘアードライヤー5に、加熱手段14を有すること、また、段落【0016】に、温風流17の経路に、ヘアが発生する熱輻射を計測するためのセンサー20を設けることが記載されている。また、段落【0020】に、センサー20を温風流の経路に収納できることが記載されている。
e 図1から、ハウジング10の空気循環手段13から前方に向かって延びる部分の内部に、加熱手段14が設けられ、ハウジング10の空気循環手段13から前方に向かって延びる部分の先端に、センサー20を設けていることが看て取れる。
f 段落【0016】に、加熱手段14を制御するための制御手段18にセンサー20が接続され、当該制御手段18が計測されたヘアの温度に基づいて制御を行うことが記載されている。また、段落【0017】に、制御手段18の制御として、所定の温度になると、加熱手段14の動作を減少又は停止することが記載されている。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ハウジング10を備えたヘアードライヤー5であって、
前記ハウジング10は、ハウジング10の後端にある空気流入口11の近傍に空気循環手段13を回転させるモータ及び前記モータによって回転される空気循環手段13であるファンを内蔵した第1の部分を有するとともに、前記第1の部分から前方に向かって延びる第2の部分を有し、
前記第2の部分の内部に、人体を加温するための加熱手段14を設けるとともに、第2の部分の先端に使用者のヘアの温度を検出するセンサー20を設け、
センサー20の計測したヘアの温度に基づいて、制御手段18による制御により加熱手段14の動作を減少又は停止するヘアードライヤー5。」
イ 引用文献2
(ア)新たに引用する本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である登録実用新案第3110484号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審により付加した。)。
「【技術分野】
【0001】
本考案は、遠赤外線を放射することができるヘアドライヤーに関するものである。」
「【0022】
上記両ケース2a,2bの内部空間のうち、上記空気吸い込み用後蓋3と空気吹き出し口部7aとを連通する空間およびこの空気吹き出し口部7aに連通する空気吹き出しノズル11の内部空間が空気吹き出し通路8に形成されており(図3参照)、この空気吹き出し通路8のうち、上記両ケース2a,2bの内部空間にモータ6,このモータ6の前側に配設された電気式のオゾン非発生タイプのマイナスイオン発生器19(図6参照),加熱手段等が配設されている。この加熱手段は、上記空気吹き出し通路8の軸芯に対し周方向に所定の間隔で組み付けられる複数枚の平板状雲母板21~23(ヒータ支受体)と、これら平板状雲母板フレーム21~23の外周部に巻回,固定されるニクロム線等の電熱コイル(コイル状ヒータ)24(図6では、電熱コイル24の一部のみを図示している)等で構成されており、上記平板状雲母板21~23のうち、1枚の平板状雲母板23には、長方形タイル状に形成された2枚の(厚み1.5mm程度の)遠赤外線放射セラミックス板(遠赤外線放射手段)25がねじ25a止め,固定されている(図7参照)。これら両遠赤外線放射セラミックス板25は、バインダーとなる耐高温PP材料で酸化ナトリウム粉末(粒径はナノ[10-9]mサイズ)を固めた固結体で構成されている。なお、上記空気吹き出し口部7aに空気吹き出しノズル11を固定していない場合には、上記両ケース2a,2bの内部空間のうち、上記空気吸い込み用後蓋3と空気吹き出し口部7aとを連通する空間が空気吹き出し通路8となる。」
「【0024】
上記構成において、切り替えスイッチ12をオン作動させると、モータ6が駆動し、空気吸い込み用後蓋3から空気を取り入れ、空気吹き出し通路8に送る。また、上記オン作動により、加熱手段が作動し、空気吹き出し通路8に送られた空気が加熱手段のヒータ24で加熱されるとともに、この加熱で両遠赤外線放射セラミックス板25から遠赤外線が放射され、この放射によっても空気が加熱される。また、上記オン作動により、マイナスイオン発生器19が作動し、マイナスイオン電極からマイナスイオンが多量に発生する。そして、上記ノズル11から、マイナスイオンを多量に含んだ熱風が外部に吹き出され、頭皮,毛髪等に直接当てられる。
【0025】
上記のように、この実施の形態では、マイナスイオンを多量に含んだ熱風を頭皮,毛髪等に直接当てることができる。しかも、使用時に、加熱手段を加熱することで、空気吹き出し通路8を通る空気を加熱するだけでなく、遠赤外線放射手段から遠赤外線を放射させてこの放射によっても空気を加熱することができるため、頭皮,毛髪等をはやく乾かすことができる。このため、省電力を図ることができるうえ、送風筒7が熱くならず、手で持つことができる。しかも、熱風と遠赤外線の加熱作用との相乗効果で頭皮,毛髪等を乾かすため、加熱手段の熱だけで頭皮,毛髪等を乾かすのを嫌う者でも、安心して使用することができる。」
【図3】
[図:0001438862000002.jpg]
【図6】
[図:0001438862000003.jpg]
(イ)以上の記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
段落【0022】に、両ケース2a,2bの内部空間のうち、上記空気吸い込み用後蓋3と空気吹き出し口部7aとを連通する空間及びこの空気吹き出し口部7aに連通する空気吹き出しノズル11の内部空間が空気吹き出し通路8として形成され、この空気吹き出し通路8に複数の平板状雲母板21-23を設け、この平板状雲母板21-23に電熱コイル24を巻回し固定するとともに、1枚の平板状雲母板23に遠赤外線放射セラミックス板25が固定されることが記載されている。
以上に照らすと、引用文献2には、ヘアドライヤーにおいて、空気吹き出し通路8の内部に遠赤外線放射セラミックス板25を設け、当該遠赤外線放射セラミックス板25を電熱コイル24が巻回し固定された平板状雲母板21-23に付設することが記載されていると認められる。
ウ 引用文献3
(ア)新たに引用する本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開昭63-238806号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審により付加した。)。
a 「〔産業上の利用分野〕
本発明は頭髪等を乾燥しセットすることを主目的とした機器に関し、」(1頁左下欄12-14行)
b 「7は複数個の通気穴8を有する蜂の巣状の正特性サーミスタのような板状発熱体で、熱を与える方向の端面に長波長帯域の遠赤外線を発生する例えば硅酸塩を主材として焼結して得られる板状遠赤放射体9を当接し、電極板10,11を介して送風筒6に圧入固定される。」(2頁左下欄2-7行)
c 「頭髪を乾燥、セットするに当り先ずピン部を毛髪群内にさしこむ。モータ1と発熱体7に通電すると発熱体7の温度はすぐ上昇し輻射熱および伝導熱により遠赤放射体9も加熱される。ファン2は空気を通気穴8を通して熱気にし、さらに、通風路13を介して毛髪に吹付ける。
さて遠赤放射体9は加熱されて盛んに遠赤外線13を放射する。これは毛髪14に投射されるとその深奥部14aにおいて発熱作用を起こす。一方遠赤放射体9の通風路17を通って毛髪に吹付けられる空気16の保有する熱は比較的波長が短いので毛髪単体の表層14bを加熱する。また15の如く例えば水滴が付着している際は、放射された遠赤外線は水滴の深奥部を激しく加熱する。一方吹付けられる空気は水滴の表層を加熱する。両者によって水滴は速やかに蒸発するがガス化した水分は吹付けられる空気流に押し払われ、次から次に蒸発を促し、乾燥が速やかに行われるのである。これらの機能はビン部が頭髪を深く分けて複数の通気空洞を作るから、相乗的に効果を倍増する。」(2頁左下欄18行-右下欄18行)
【第1図】
[図:0001438862000004.jpg]
(イ)上記bの記載に照らせば、正特性サーミスタのような板状発熱体7及び、板状発熱体7が熱を与える方向の端面に長波長帯域の遠赤外線を発生する板状遠赤放射体9を当接して送風筒6に圧入固定されることが記載されているといえる。
したがって、引用文献3には、頭髪等を乾燥しセットすることを主目的とした機器、つまり、ヘアドライヤーに関し、送風筒6の内部に板状遠赤放射体9を設け、当該板状遠赤放射体9を板状発熱体7に当接させることが記載されていると認められる。
エ 引用文献4
(ア)新たに引用する本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2017-108786号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審により付加した。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭や美容院・理髪店などで用いられるヘアドライヤーに関する。」
「【0029】
図5および図6に示すように、本体部1には、送風ファン27と、この送風ファン27を駆動するモータ32と、送風ファン27から送り出される風の通路に配置された発熱部25とが内蔵されている。送風ファン27の周囲には整流翼26が設けられ、モータ32の周囲には絶縁板31が設けられ、発熱部25と本体部1(ケース1a)との間には遮熱板24が設けられている。また、ハンドル部2には、主操作ボタン7と連動して回路の開閉を行うスライドスイッチ29が内蔵されている。図5と図6では表れていないが、ハンドル部2には、補助操作ボタン8と連動して回路の開閉を行うマイクロスイッチ30(図7参照)も内蔵されている。
【0030】
発熱部25は、送風ファン27と空気吹出し口3との間に設けられており、図7に示すように、ヒータプレート25aを備えている。このヒータプレート25aは、直交する4枚のプレートからなり、空気吹出し口3側からみて十字形となっている。ヒータプレート25aには、ニクロム線などからなるヒータ(図示省略)が装備される。」
「【0032】
遠赤外線発生部材22は、発熱部25に対して空気吹出し口3側に配置され、図5に示すように、マイナスイオン発生部材21よりも内側に位置している。図9に示すように、遠赤外線発生部材22は、縦格子22aおよび横格子22bと、これらの格子22a、22bにより形成される多数の通風孔22c(第2の通風孔)と、凹部からなる位置決め用の係合部22d(第2の係合部)とを有している。この遠赤外線発生部材22は、遠赤外線を発生する温光石のような天然鉱石のパウダーを練り込んだ、円盤状のセラミック(第2のセラミック)からなる。この場合も、パウダーの含有率は30%であり、後述するようにこの値が最も好ましい。
【0033】
図5に示すように、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22とは、空気吹出し口3の近傍に、互いに近接して設けられている。また、図7、図8および図9に示すように、マイナスイオン発生部材21と遠赤外線発生部材22とは、形状と寸法が同一であり、図5に示すように、1個の共通のホルダー23に保持されている。」
「【0045】
このようにして、空気吹出し口3からは、温風とともにマイナスイオンが放出され、また、遠赤外線も放出される。マイナスイオンは、頭髪の水分を保持したり、頭髪の静電気を除去したりする働きがあり、遠赤外線は、皮膚の奥深くまで浸透して血行を良くしたり、細胞を活性化したりする働きがある。」
【図6】
[図:0001438862000005.jpg]
【図7】
[図:0001438862000006.jpg]
(イ)以上の記載に照らせば、引用文献4には、ヘアドライヤーに関し、送風ファン27から送り出される風の通路に発熱部25が内蔵され、この発熱部25の空気吹き出し口3側に遠赤外線発生部材22が配置されることが記載されている。
してみれば、引用文献4には、ヘアドライヤーに関し、風の通路に遠赤外線発生部材22を内蔵し、当該遠赤外線発生部材22を発熱部25の空気吹き出し口3側に配置することが記載されていると認められる。
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ハウジング10」、「ヘアードライヤー5」は、本件補正発明の「ハウジング」、「ヘアドライヤ」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、ハウジングを備えたヘアドライヤである点で一致する。
(イ)引用発明の「ハウジング10の後端にある空気流入口11の近傍」、「空気循環手段13を回転させるモータ」、「空気循環手段13であるファン」、「ファンを内蔵した第1の部分」、「第1の部分から前方に向かって延びる第2の部分」は、それぞれ本件補正発明の「基端部」、「モータ」、「ファン」、「モータ室」、「送風筒」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、ハウジングは、基端部にモータ及び前記モータによって回転されるファンを内蔵したモータ室を有するとともに、前記モータ室から前方に向かって延びる送風筒を有する点で一致する。
(ウ)引用発明の「加熱手段14」は、第2の部分の内部に設けられるものであるから本件補正発明の「熱源」に相当する。また、引用発明のセンサー20は、第2の部分の内部とまでは明示的に特定されていないが第2の部分に設けられ、また、頭皮の温度を検出することまでは明示的に特定されていないが、ヘアの温度を検出するものであるから、本件補正発明の「温度センサ」と、引用発明の「センサー20」は、「送風筒に、頭髪の温度を検出するために設けられる」限度において一致する。
(エ)引用発明のものも、センサー20(温度センサ)の計測したヘアの温度に基づいて、制御手段18による制御により、加熱手段14(熱源)の動作を減少又は停止するものであるから、本件補正発明と引用発明とは、「温度センサの検出結果に応じて、前記熱源の発熱温度を自動的に調節する」点で一致する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「ハウジングを備えたヘアドライヤであって、
前記ハウジングは、基端部にモータ及び前記モータによって回転されるファンを内蔵したモータ室を有するとともに、前記モータ室から前方に向かって延びる送風筒を有し、
前記送風筒の内部に、人体を加温するための熱源を設けるとともに、前記送風筒に、使用者の頭髪の温度を検出する温度センサを設け、
前記温度センサの検出結果に応じて、前記熱源の発熱温度を自動的に調節するヘアドライヤ。」
【相違点】
<相違点1>
本件補正発明は、温度センサが送風筒の内部に設けられるのに対し、引用発明ではセンサー20が第2の部分の内部に設けられることが明示的に特定されていない点。
<相違点2>
本件補正発明は、温度センサが使用者の頭皮や頭髪の温度を検出するものであるのに対し、引用発明のものはセンサー20がヘアの温度を検出するものであるが、頭皮の温度を検出するものであることは明示的に特定されていない点。
<相違点3>
本件補正発明は、「前記送風筒の内部に遠赤外線発生体を設け、前記遠赤外線発生体を前記熱源に付設」するものであるのに対し、引用発明は遠赤外線発生体を設けているものでない点。
(4)判断
以下、相違点について判断する。
ア 相違点1について
ヘアドライヤの技術分野において、温度センサを送風筒の内部に配置するようなことは、センサの配置位置として周知な配置位置である(必要であれば、特開平5-199915号公報の温度測定手段1の配置(特に、図3、4等)などを参照のこと。)。してみれば、引用発明のセンサー20を第2の部分の内部に設けることは、単に周知な配置位置を採用したにすぎず、当業者であれば容易になし得たことである。
さらに、引用文献1の段落【0017】には、「センサーは、このセンサーが温風流を十分に受けるヘア部分の温度変化を検出できるように構成配置する」ことが記載されており、このような機能を奏する範囲でその位置を適宜変更してもよいことは明らかである。また、引用文献1の段落【0020】に、「センサーは、ヘアが放出する赤外線放射を計測でき、そして、温風流の経路に収納できる」と記載されており、ハウジング10の第2の部分(上記2(3)ア(イ)参照)の内部に配置することも示唆されているといえる。そうしてみると、引用発明のセンサー20を第2の部分の内部に設けることは、上記示唆に基づき好適な配置位置を選択したにすぎず、当業者であれば容易になし得たことである。
イ 相違点2について
引用発明のセンサー20は、ヘアの温度を測定するものであり頭皮の温度を測定するものであることは明示的に特定されていないが、引用文献1の段落【0016】にセンサー20が赤外線センサーであることが記載されており、当該赤外線センサーを用いた場合、頭皮からの輻射熱も併せて検出していることは明らかである。また、引用文献1の段落【0003】-【0004】には、ヘアの悪化のみならず頭皮の焼き付きを避けるためにヘア温度の計測をすることが記載されており、引用発明も頭皮の焼き付きの防止をも考慮したものであるといえる。そうしてみると、引用発明のセンサー20も頭皮の温度を検出しているものといえるとともに、頭皮の温度を検出するようにすることは当業者であれば容易になし得たことである。
ウ 上記相違点3について
上記2(2)イ-エで検討したように、ヘアドライヤの技術分野において送風筒の内部に遠赤外線発生体を設けることは、周知技術(引用文献2-4)である。また、遠赤外線発生体を熱源に付設することについても、遠赤外線発生体は熱源からの熱により遠赤外線を発生するものであるから熱源付近に設けることは当然に考慮すべきことであり、また、その際に熱源に付設する構成とすることは、引用文献2にも記載されているように(上記2(2)イ(イ)参照)当然に採用し得る構成の一態様にすぎない。
そうしてみると、引用文献1のヘアードライヤー5に、上記周知技術を適用し、第2の部分の内部に遠赤外線発生体を設け、当該遠赤外線発生体を加熱手段14に付設する構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
エ そして、これらの相違点を総合勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2-4に記載された周知技術や温度センサの配置に関する周知技術の奏する効果から予想される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
ここで、念のために、請求人の主張について検討する。請求人は、令和7年1月24日に提出した審判請求書で以下のように主張している。
「本願請求項1の「前記送風筒の内部に遠赤外線発生体を設け」「前記遠赤外線発生体を前記熱源に付設し」たヘアドライヤは、熱源の発熱温度が自動的に調節されて送風の温度が低下した場合でも、遠赤外線発生体から発生した遠赤外線により、頭髪乾燥や頭髪スタイルのセットなどをサポートし、ヘアドライヤの消費電力を節約することが可能となります。
このため、本願請求項1に係るヘアドライヤは、温度が自動的に調節されて送風の温度が低下した場合でも、遠赤外線が頭髪乾燥や頭髪スタイルのセットなどをサポートし、短時間で効率よく行うことが可能となります。さらに、遠赤外線は、距離を隔てていても頭皮に到達しやすく、頭皮を適度に暖めて血行促進に有用です。」
「また、熱源の発熱温度が自動的に調節されて送風の温度が低下した場合でも、遠赤外線発生体から発生した遠赤外線が頭髪乾燥や頭髪スタイルのセットなどをサポートするという相乗的な作用効果は、仮に熱源に付設した遠赤外線発生体を設けることは広く行われているとの指摘を踏まえても当業者が予測することができない顕著な効果です。」
上述のように、請求人は、熱源からの発熱温度が自動的に調整されて送風温度が低下した場合でも、遠赤外線発生から発生した遠赤外線が頭髪乾燥や頭髪スタイルのセットをサポートできるという相乗的な作用があることや消費電力を節約できることなどを主張している。
しかしながら、引用文献2の段落【0006】に「本考案のヘアドライヤーでは、使用時に、加熱手段を加熱することで、空気吹き出し通路を通る空気を加熱することができるだけでなく、上記加熱により遠赤外線放射手段から遠赤外線を放射して上記空気吹き出し通路を通る空気を加温することもできるため、空気吹き出し通路から供給される熱風および遠赤外線の加温作用で対象者の頭皮,毛髪等をはやく乾かすことができる。このとき、上記加熱手段による加熱温度を従来の温度より低く設定しても、その温度で遠赤外線放射手段から遠赤外線を放射させて頭皮,毛髪等をはやく乾かすことができるため、上記加熱手段の加熱温度を従来より低温に設定することができる。したがって、省電力を図ることができるうえ、上記加熱手段に対応する上記ケース本体の部分が従来ほど高温にならず、ケース本体の各部を手で持つことができる。しかも、熱風と遠赤外線の加温作用との相乗効果で頭皮,毛髪等を乾かすため、加熱手段の熱だけで頭皮,毛髪等を乾かすのを嫌う者でも、安心して使用することができる。」ことが記載されている。
このように、熱源と遠赤外線発生手段を併用する場合、熱源の温度を低くすることができることや、その場合に遠赤外発生手段により頭髪乾燥などをサポートし得ることや消費電力を節約できることは、当業者であれば当然に予想し得る程度のものである。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2-4に記載された周知技術や温度センサの配置に関する周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年1月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年9月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献5-6に開示されたような周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開平7-255524号公報
引用文献5:特開2010-131260号公報(周知技術を示す文献:拒絶査定時の引用文献2)
引用文献6:特開平5-199915号公報(周知技術を示す文献:拒絶査定時の引用文献3)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記送風筒の内部に遠赤外線発生体を設け、前記遠赤外線発生体を前記熱源に付設し、前記温度センサの検出結果に応じて、前記熱源の発熱温度を自動的に調節する」なる限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]の2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2-4に開示された周知技術や温度センサの配置に関する周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、当該引用文献2-4に開示された周知技術は、本件補正により追加された「前記送風筒の内部に遠赤外線発生体を設け」なる構成に対するものであるから、本願発明は、引用発明及び温度センサの配置に関する周知技術(引用文献5-6を参照)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-001064