特許拒絶査定不服審判
2023-017611
マッサージ機
- 審判番号
- 2023-017611
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-176186
- 請求日
- 2023年10月18日
- 審決日
- 2024年12月10日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ファミリーイナダ株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 立花 啓
- 審判官 安井 寿儀
- 分類
- P18 .121-Z (A61H) / P18 .575-Z (A61H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-176186号「マッサージ機」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日出願公開、特開2021- 52826号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 元年 9月26日の出願であって、令和 5年 5月17日付けの拒絶理由の通知に対し、令和 5年 7月19日に意見書が提出され、手続補正がされたが、令和 5年 7月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和 5年10月18日に審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 令和 5年10月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 5年10月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
使用者の身体を支持する身体支持部と、
前記使用者をマッサージするマッサージ部と、
前記マッサージ部にかかる負荷を検出する負荷検出部と、
あらかじめ前記負荷の異常パターンを少なくとも1つ記憶する記憶部と、
前記マッサージ部の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記マッサージ部の動作中に前記負荷検出部で検出した負荷のパターンである所定時間における負荷変動と、前記記憶部に記憶された前記負荷の異常パターンである所定時間における負荷変動と、を比較し、前記負荷検出部で検出した前記負荷のパターンが前記異常パターンに類似すると判定した場合には、前記マッサージ部の動作を停止させることを特徴とするマッサージ機。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和 5年 7月19日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
使用者の身体を支持する身体支持部と、
前記使用者をマッサージするマッサージ部と、
前記マッサージ部にかかる負荷を検出する負荷検出部と、
あらかじめ前記負荷の異常パターンを少なくとも1つ記憶する記憶部と、
前記マッサージ部の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記マッサージ部の動作中に前記負荷検出部で検出した負荷のパターンと、前記記憶部に記憶された前記負荷の異常パターンと、を比較し、前記負荷検出部で検出した前記負荷のパターンが前記異常パターンに類似すると判定した場合には、前記マッサージ部の動作を停止させることを特徴とするマッサージ機。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「負荷のパターン」及び「負荷の異常パターン」のそれぞれについて、「所定時間における負荷変動」であるとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2017-221251号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
「【0032】
図1に示すように、マッサージ機100の背凭れ部300は、被施療者の肩、腰、背中を支持するとともに、前後方向に起倒可能に形成される。また、背凭れ部300には、施療子(一対の揉み玉)350(図示略)がガイドレールに沿って上下方向に移動可能に内蔵されている。施療子350は、揉み、叩き、ローリングなどの多様な施療動作が可能なよう、一対の揉み玉で形成される。
【0033】
図1の座部200には、1または複数の反復膨張する膨縮袋250(エア施療部)(図示略)が内蔵され、該膨縮袋250により被施療者の臀部を支持しつつ施療する。また、脚載部900は、座部200および基台部400の前端に軸支され、脚載部900自体が回動可能に設けられている。
脚載部900においては、1または複数の反復膨張する膨縮袋950(図示略)が設けられており、該膨縮袋950により被施療者の脚を施療する。
【0034】
また、腕施療部500は、図1の座部200の左右両側に立設して設けられる。腕施療部500には、1または複数の反復膨張する膨縮袋550(図示略)が内蔵され、該膨縮袋550により被施療者の腕を支持しつつ施療する。」
「【0036】
図2に示すように、制御部600は、座部200に設けられた膨縮袋250の圧力を検出可能な圧力センサ255、背凭れ部300に設けられた膨縮袋350の圧力を検出可能な圧力センサ355、脚載部900に設けられた膨縮袋950の圧力を検出可能な圧力センサ955、および腕施療部500に設けられた膨縮袋550の圧力を検出可能な圧力センサ555からの圧力値を通信可能に設けられている。
また、図2に示すように、制御部600は、背凭れ部300に設けられた姿勢検出センサ360および肩位置検出センサ370と通信可能に設けられている。
さらに、図2に示すように、制御部600は、エアー部680に指示を送る。その結果、エアー部680から膨縮袋250、350、550、950へ気体が給気される。」
「【0052】
(緊急停止)
図8は、制御部600の緊急停止を行う場合の一例を示すフローチャートである。
【0053】
図8に示すように、制御部600は、膨縮袋550の圧力センサ555、膨縮袋250の圧力センサ255、膨縮袋950の圧力センサ955の少なくともいずれか1つの圧力変動が5%以上あるか否かを判定する(ステップS61)。
すなわち、通常、被施療者は、マッサージを受けて気持ちいい場合リラックスした状態となり、圧力変動が生じない。一方、被施療者が、マッサージを受けて痛みを感じた場合、痛みを感じて動くため、圧力変動が生じる。
このことを利用して、制御部600は、圧力変動に応じて被施療者の痛みの有無を検出している。
【0054】
次に、制御部600は、3秒以内に再度、圧力変動が5%以上あるか否かを判定する(ステップS62)。
ここで、制御部600は、圧力変動が再度生じた場合、確実に被施療者が痛みを感じていると推定する。
【0055】
次いで、制御部600は、圧力変動が再度生じた場合(ステップS62のYesの場合)、マッサージを停止する(ステップS63)。圧力変動が再度生じない場合(ステップS62のNoの場合)、制御部600は、操作部700の表示部に「痛みはないですか?」の表示または音声により「痛くないですか?」と発生させてもよい(ステップS64)。」
これらの記載によれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「被施療者の肩、腰、背中を支持する背凭れ部300と、
被施療者の臀部、脚、腕を施療する膨縮袋250、950、550と、
膨縮袋250、950、550の圧力を検出可能な圧力センサ255、955、555と、
膨縮袋250、950、550へ気体を給気する指示を送る制御部600と、を有し、
制御部600は、圧力センサ255、955、555の少なくともいずれか1つの圧力変動が5%以上あり、3秒以内に再度、圧力変動が5%以上ある場合には、マッサージを停止するマッサージ機100。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「被施療者の肩、腰、背中を支持する背凭れ部300」は、使用者の身体を支持するものであるから、本件補正発明の「使用者の身体を支持する身体支持部」に相当する。
イ 引用発明の「被施療者の臀部、脚、腕を施療する膨縮袋250、950、550」は、使用者をマッサージするものであるから、本件補正発明の「使用者をマッサージするマッサージ部」に相当する。
ウ 本件補正発明における「マッサージ部にかかる負荷を検出する負荷検出部」は、本件明細書の段落0035に「負荷検出部25は、マッサージ部15としてのエアセル20に供給される空気の圧力を検出する空圧センサー25aである。」とあるとおり、マッサージ部の空気の圧力を検出するセンサを含むものであるから、引用発明の「膨縮袋250、950、550の圧力を検出可能な圧力センサ255、955、555」は、本件補正発明の「マッサージ部にかかる負荷を検出する負荷検出部」に相当する。
エ 上記イのとおり、引用発明の「膨縮袋250、950、550」は、本件補正発明の「マッサージ部」に相当する。また、膨縮袋へ気体を給気する指示を送ることは、膨縮袋の動作を制御することであるから、引用発明の「膨縮袋250、950、550へ気体を給気する指示を送る制御部600」は、本件補正発明の「マッサージ部の動作を制御する制御部」に相当する。
したがって、両者は、
「使用者の身体を支持する身体支持部と、
前記使用者をマッサージするマッサージ部と、
前記マッサージ部にかかる負荷を検出する負荷検出部と、
前記マッサージ部の動作を制御する制御部と、を有するマッサージ機。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本件補正発明は、「あらかじめ前記負荷の異常パターンを少なくとも1つ記憶する記憶部」を有し、「前記制御部は、前記マッサージ部の動作中に前記負荷検出部で検出した負荷のパターンである所定時間における負荷変動と、前記記憶部に記憶された前記負荷の異常パターンである所定時間における負荷変動と、を比較し、前記負荷検出部で検出した前記負荷のパターンが前記異常パターンに類似すると判定した場合には、前記マッサージ部の動作を停止させる」のに対し、引用発明は、「制御部600は、圧力センサ255、955、555の少なくともいずれか1つの圧力変動が5%以上あり、3秒以内に再度、圧力変動が5%以上ある場合には、マッサージを停止する」点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、引用文献の段落【0053】等に記載されるとおり、被施療者が、痛みを感じた場合に動くことを圧力変動に基づいて判定するものである。ここで、上記(3)ウのとおり、本件補正発明における「負荷検出部」は、マッサージ部の空気の圧力を検出するセンサを含むものであるから、負荷検出部により検出される「負荷」は、マッサージ部の空気の圧力を含むものであり、引用発明の「圧力変動」は、本件補正発明の「負荷変動」に相当するものである。そして、制御技術一般において、所定時間における変動のパターンを、あらかじめ記憶しているパターンと比較し、両者が類似している場合に特定の事象が生じていることを判定することは、例示するまでもない慣用手段であるから、引用発明において、圧力センサ255、955、555の少なくともいずれか1つの圧力変動が5%以上あり、3秒以内に再度、圧力変動が5%以上あることを判定するために、当該慣用手段を採用し、あらかじめ圧力変動が5%以上あり、3秒以内に再度、圧力変動が5%以上ある場合を異常パターンとして記憶する記憶部を設け、所定時間における圧力センサ255、955、555の少なくともいずれか1つの圧力変動と、記憶部に記憶された異常パターンである所定時間における圧力変動とを比較し、両者が類似すると判定した場合には、被施療者が痛みを感じていると判定し、マッサージ部の動作を停止するものとすることで、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び慣用手段の奏する効果から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和 5年10月18日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和 5年 7月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。
(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献:特開2017-221251号公報
3 当審の判断
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(1)で検討した本件補正発明から、「負荷のパターン」及び「負荷の異常パターン」のそれぞれについて、「所定時間における負荷変動」であるとの限定事項を実質的に削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明は、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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