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特許拒絶査定不服審判

2022-014624

病理顕微鏡並びに、その表示モジュール、制御方法、装置及びコンピュータプログラム

審判番号
2022-014624
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-549545外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年09月15日
審決日
2023年08月21日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-549545「病理顕微鏡並びに、その表示モジュール、制御方法、装置及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月27日国際公開、WO2020/038245、令和 3年 7月 1日国内公表、特表2021-516373〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2019年(令和元年)8月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年(平成30年)8月21日(以下「優先日」という。)、中国)が国際出願日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 9月15日 :手続補正書
令和3年 9月15日付け:拒絶理由通知書
令和3年12月22日 :意見書、手続補正書
令和4年 5月11日付け:拒絶査定
令和4年 9月15日 :審判請求書、手続補正書
令和5年 3月13日 :上申書

第2 令和4年9月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年9月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「病理顕微鏡に適用される付加表示モジュールであって、
前記病理顕微鏡の入射光路に設けられ、前記入射光路からデジタル病理画像を収集するための画像収集ユニットと、
前記デジタル病理画像を人工知能AIで分析してAI分析情報を生成するための制御ユニットと、
前記病理顕微鏡の出射光路に設けられ、前記AI分析情報を前記病理顕微鏡の前記出射光路上に投影することで顕微鏡視野にAR病理画像として重畳され投影するように構成された拡張現実AR投影ユニットと
続きを表示(全13行)
を含み、
前記制御ユニットは、入力端が前記画像収集ユニットに電気的に接続され、出力端が前記拡張現実AR投影ユニットに電気的に接続され、
前記制御ユニットは、
少なくとも1つのAI分析モデルを取得し、前記デジタル病理画像の使用シーンに対応するターゲットAI分析モデルを決定し、前記ターゲットAI分析モデルを呼び出して前記デジタル病理画像をAI分析して前記AI分析情報を生成するステップ、及び
前記デジタル病理画像を、サーバに送信し、前記サーバから送られてくる前記AI分析情報を受信するステップであって、前記サーバは、AI分析モデルを記憶しており、前記AI分析モデルで前記デジタル病理画像に対するAI分析を実行することにより、AI分析情報を取得するものである、ステップ、
のうちの少なくとも1つを実行し、
前記付加表示モジュールは、前記制御ユニットに接続される音声収集ユニットを更に含み、
前記音声収集ユニットは、外部の音声信号を収集するものであり、
前記制御ユニットは、前記音声信号の制御命令を認識し、前記制御命令に基づいて前記AI分析の分析過程を制御する付加表示モジュール。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、令和3年12月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「病理顕微鏡に適用される付加表示モジュールであって、
前記病理顕微鏡の入射光路に設けられ、前記入射光路からデジタル病理画像を収集するための画像収集ユニットと、
前記デジタル病理画像を人工知能AIで分析してAI分析情報を生成するための制御ユニットと、
前記病理顕微鏡の出射光路に設けられ、前記出射光路において、前記AI分析情報を前記病理顕微鏡の顕微鏡視野に投影するための拡張現実AR投影ユニットと
続きを表示(全13行)
を含み、
前記制御ユニットは、入力端が前記画像収集ユニットに電気的に接続され、出力端が前記拡張現実AR投影ユニットに電気的に接続され、
前記制御ユニットは、
少なくとも1つのAI分析モデルを取得し、前記デジタル病理画像の使用シーンに対応するターゲットAI分析モデルを決定し、前記ターゲットAI分析モデルを呼び出して前記デジタル病理画像をAI分析して前記AI分析情報を生成するステップ、及び
前記デジタル病理画像を、サーバに送信し、前記サーバから送られてくる前記AI分析情報を受信するステップであって、前記サーバは、AI分析モデルを記憶しており、前記AI分析モデルで前記デジタル病理画像に対するAI分析を実行することにより、AI分析情報を取得するものである、ステップ、
のうちの少なくとも1つを実行し、
前記付加表示モジュールは、前記制御ユニットに接続される音声収集ユニットを更に含み、
前記音声収集ユニットは、外部の音声信号を収集するものであり、
前記制御ユニットは、前記音声信号の制御命令を認識し、前記制御命令に基づいて前記AI分析の分析過程を制御する付加表示モジュール。」

2 補正の適否

本件補正は、「拡張現実AR投影ユニット」が、本件補正前の請求項1では「前記病理顕微鏡の出射光路に設けられ、前記出射光路において、前記AI分析情報を前記病理顕微鏡の顕微鏡視野に投影するための」ものであったのを、本件補正後の請求項1では「前記病理顕微鏡の出射光路に設けられ、前記AI分析情報を前記病理顕微鏡の前記出射光路上に投影することで顕微鏡視野にAR病理画像として重畳され投影するように構成された」ものに補正することによって、当該「拡張現実AR投影ユニット」に限定を付加するものである。そして、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明を、上記1(1)に記載された事項のとおりに認定する。

(2)引用文献の記載事項

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ア 引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2006-297060号公報(2006年(平成18年)11月2日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(なお、下線は当審が付したものである。以下同じ。)

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
左眼鏡筒及び右眼鏡筒からなる双眼鏡筒を有し、患部等の観察像を前記左眼鏡筒に導く左眼用光学系と前記観察像を前記右眼鏡筒に導く右眼用光学系とが設けられた顕微鏡本体を備え、前記左眼用光学系及び右眼用光学系のそれぞれに、半透過型のプリズムもしくはビームスプリッタが介装され、前記左眼用光学系及び右眼用光学系のうちの一方に、前記プリズムもしくはビームスプリッタを介して得られる観察像を撮像する外部モニタ用撮像カメラが設けられ、前記左眼用光学系及び右眼用光学系のうちの他方に、前記撮像カメラにより撮像された観察像に切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等を合成した映像を表示するための合成映像表示用モニタが設けられて、該モニタに映し出された合成映像を前記プリズムもしくはビームスプリッタを介して前記左眼用光学系及び右眼用光学系のうちの他方に属する鏡筒に導くようにされていることを特徴とする手術用顕微鏡。
【請求項2】
前記左眼用光学系及び右眼用光学系にそれぞれ備えられた前記プリズムもしくはビームスプリッタは、前記顕微鏡本体に着脱自在に装着可能で、かつ、前記撮像カメラ及び合成映像表示用モニタ等が着脱自在に取り付けられる、一つの着脱式光学ユニットとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の手術用顕微鏡。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した如くに、従来の手術用顕微鏡では、顕微鏡手術時に、指導者が術者に例えば切開すべき部位等を的確に指示することができず、また、遠隔地から手術指導を行う場合は、リアルタイムでの指示、ディスカッションを行うことができない、等の問題があった。
【0009】
また、前記特許文献1等に開示されている手術用顕微鏡のように、顕微鏡手術を行う術者の視野内に患部等の観察像とは異なる画像(内視鏡画像)を送ることができるようにされたものは、教育・研修あるいは遠隔地からの手術指導等を考慮したものではないので、前記問題を解消することはできない上、内視鏡画像を取り込んで元の観察像に重畳する画像生成処理部が全て手術用顕微鏡(顕微鏡本体)内に不離一体に組み込まれている(後付け不可能)ので、既存の手術用顕微鏡には適用できず、用途が限定され、特定の外科手術(特に脳神経外科)以外の手術(例えば眼科)に使用することは実際には難しく、また、内視鏡画像を術者の両眼に送る必要があるので(立体視するため)、光学系部品や電気回路部品が多く必要であり、装置コストが非常に高くなる嫌いがあった。
【0010】
本発明は、前記のような従来の問題を解消するべくなされたもので、その目的とするところは、顕微鏡手術時に、指導者が術者に例えば切開すべき部位等を的確に指示することができるとともに、遠隔地から該当患者をリアルタイムに診察しながらディスカッション、指導を行うことができ、加えて、部品ユニットの交換及び後付けを可能として、既存の手術用顕微鏡にも適用できるとともに、種々の手術や病理検査等にも利用でき、さらに、部品点数及び画質劣化を最小限として、装置コストを低く抑えることができるようにされた手術用顕微鏡及びそれを備えた診療システムを提供することにある。」
(ウ)「【発明の効果】
【0022】
本発明に係る手術用顕微鏡及びそれを備えた診療システムでは、顕微鏡観察像が例えば左眼用光学系に属する左眼鏡筒を介して術者の左眼に送られるとともに、この左眼用光学系に外部モニタ用撮像カメラが設けられ、該撮像カメラから観察像を表す映像信号をモニタ付きコンピュータ(あるいはスーパーインポーズ装置)に送り、該コンピュータ(あるいはスーパーインポーズ装置)において、前記観察像に切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等を合成した合成映像を制作し、この制作された合成映像を表す映像信号を、例えば右眼用光学系に設けられた合成映像表示用モニタに送り、該モニタに映し出された合成映像を例えば前記観察像(元画像)に重畳して右眼鏡筒を介して術者の右眼に送るようにされる。
【0023】
そのため、術者は顕微鏡から目を離すことなく、指導者が指示する切開部位等を的確に認識することができ、その結果、正確に手術を行うことができる。
【0024】
また、撮像カメラから通信回線を介して前記観察像を表す映像信号をパーソナルコンピュータ等のモニタ付きコンピュータあるいはスーパーインポーズ装置に送り、該コンピュータあるいはスーパーインポーズ装置において、前記観察像に切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等を合成した合成映像を制作し、この制作された合成映像を表す映像信号を通信回線を介して合成映像表示用モニタに送って再生することができるので、遠隔地から該当患者をリアルタイムに診察しながらディスカッション、指導を行うことができる。」
(エ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る手術用顕微鏡の一実施形態を示す斜視図である。本実施形態では、手術用顕微鏡を眼科で利用する場合を説明する。
続きを表示(全16行)
【0027】
図示の手術用顕微鏡10は、多段アーム式の支持ユニット15で天井等から吊持された顕微鏡本体(鏡体)20及び該顕微鏡本体20の側方に連接された副顕微鏡本体60を備えている。顕微鏡本体20は、左眼鏡筒25A及び右眼鏡筒25Bからなる双眼鏡筒25を有し、図3に示される如くに、患部(ここでは、患者の眼球)の顕微鏡観察像を左眼鏡筒25Aを介して術者の左眼に導く左眼用光学系(光路で示されている)22Aと前記観察像を右眼鏡筒25Bを介して術者の右眼に導く右眼用光学系(光路で示されている)22Bとが設けられている。
【0028】
そして、前記左眼用光学系22A及び右眼用光学系22Bのそれぞれに、透過光量:反射光量を適宜の比率(例えば1:1)に分離するキューブ型のビームスプリッタ32A、32Bが介装されている。このビームスプリッタ32A、32Bは、図2に示される如くに、前記顕微鏡本体に着脱自在に装着可能で、かつ、後述する撮像カメラ40及び合成映像表示用モニタ50等が着脱自在に取り付けられる、一つの着脱式光学ユニット30として構成されている。
【0029】
前記左眼用光学系22Aにおいては、顕微鏡観察像がビームスプリッタ32Aを透過し、左眼鏡筒25Aを介して術者の左眼に導かれる(図4(A)に示される如くの映像)とともに、前記ビームスプリッタ32Aで反射され、かつ、反射ミラー35Aに反射されて外部モニタ用撮像カメラ(CCDビデオカメラ)40に入り、該撮像カメラ40により撮像される。この撮像カメラ40により撮像された前記観察像を表す映像信号は、ビデオケーブル42を介して、液晶モニタ72、キーボード74、トラックパッド75、ボタン76、ビデオ入出力端子(図示省略)等を備えたモニタ付きコンピュータ70(ここでは、ブック型のパーソナルコンピュータ)に送信される。
【0030】
そして、該コンピュータ70において、予めインストールされているスーパーインポーズ機能付きの映像合成編集用のアプリケーションソフトウエア(市販の汎用品で可)を使用して、前記観察像に切開部位、操作指示等を示す印M、文字情報L、ポインタP等を合成した合成映像を制作し、この制作された合成映像を表す映像信号を、ビデオケーブル52を介して、前記右眼用光学系22Bに設けられた合成映像表示用モニタ50に送信し、該モニタ50で前記合成映像を映し出すようになっている。
【0031】
ここで、前記右眼用光学系22Bにおいては、前記モニタ50に映し出された合成映像が反射ミラー35Bで反射され、さらに前記ビームスプリッタ32Bで反射されて、前記ビームスプリッタ32Bを透過する前記観察像(光路22v)に重畳され、この重畳された観察像が右眼鏡筒25Bを介して術者の右眼に導かれる。したがって、術者の右眼には、図4(B)に示される如くの映像が映ることになる。
【0032】
なお、モニタ50に映し出される合成映像は、左眼用光学系22Aの観察像(光路22u)を元画像としているので、この合成映像を上記のようにビームスプリッタ32B部分で右眼光学系22Bの観察像(光路22v)に重畳して術者の右眼に送るようにすると、術者の立体視に悪影響を与えるおそれがある。この場合、コンピュータ70において合成映像を編集制作してモニタ50に出力する際に、入力された元画像部分(左眼用光学系22Aの観察像)の濃度を薄くするか、あるいは、元画像部分を消す等してモニタ50に出力すれば(したがって、モニタ50には、切開部位、操作指示等を示す印M、文字情報L、ポインタP等が普通に映し出されるのに対し、元画像部分は薄く映し出されるか、全く映し出されない)、前記悪影響を小さくすることができる。また、コンピュータ70においては、前記切開部位や操作指示等を示す印M、文字情報L、ポインタP等の濃度、大きさ等は任意に設定することができるので、それらも、術者の立体視に悪影響を与えないように設定することが望ましい。」

(オ)図3、図4(A)及び(B)は、次のとおりである。

「【図3】
[図:0001406286000001.jpg]
【図4】
[図:0001406286000002.jpg]
」

イ 引用文献1に記載された技術的事項

(ア)引用文献1の【0029】、【0030】及び【図3】から、着脱式光学ユニット30とコンピュータ70とそれらを電気的に接続するビデオケーブル42、52とからなるシステムが記載されていると認められる。

(イ)引用文献1の【0022】及び【0032】から、顕微鏡観察像が左眼用光学系に属する左眼鏡筒を介して術者の左眼に送られるとともに、この左眼用光学系に外部モニタ用撮像カメラが設けられ、該撮像カメラから観察像を表す映像信号をモニタ付きコンピュータに送り、該コンピュータにおいて、切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等に係る映像を制作し、制作された前記映像のみであり観察像を含まない映像を表す映像信号を、右眼用光学系に設けられた合成映像表示用モニタに送り、該モニタに映し出された映像を例えば前記観察像(元画像)に重畳して右眼鏡筒を介して術者の右眼に送ることが記載されていると認められる。

ウ 引用文献1に記載された発明

上記ア及びイから、引用文献1には、請求項1を引用する請求項2に記載された手術用顕微鏡を備えるシステムにおいて、当該システムが、着脱式光学ユニット30とコンピュータ70とそれらを電気的に接続するビデオケーブル42、52とからなるものであり、当該手術用顕微鏡は、病理検査に利用できるものであって(【0010】)、着脱式光学ユニット30に含まれる合成映像表示用モニタ50には元画像部分が消されて出力される(【0032】)態様について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、括弧内は認定の根拠とした段落番号などを参考までに示す。以下同じ。)

「左眼鏡筒及び右眼鏡筒からなる双眼鏡筒を有し、患部等の観察像を前記左眼鏡筒に導く左眼用光学系と前記観察像を前記右眼鏡筒に導く右眼用光学系とが設けられた顕微鏡本体を備え、前記左眼用光学系及び右眼用光学系のそれぞれに、半透過型のプリズムもしくはビームスプリッタが介装され、前記左眼用光学系に、前記プリズムもしくはビームスプリッタを介して得られる観察像を撮像する外部モニタ用撮像カメラが設けられ、前記右眼用光学系に、前記撮像カメラにより撮像された観察像に切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等を合成した映像を表示するための合成映像表示用モニタが設けられて、該モニタに映し出された合成映像を前記プリズムもしくはビームスプリッタを介して前記右眼用光学系に属する鏡筒に導くようにされている手術用顕微鏡であって、(【請求項1】)
前記左眼用光学系及び右眼用光学系にそれぞれ備えられた前記プリズムもしくはビームスプリッタは、前記顕微鏡本体に着脱自在に装着可能で、かつ、前記撮像カメラ及び合成映像表示用モニタが着脱自在に取り付けられる、一つの着脱式光学ユニットとして構成されている手術用顕微鏡、(【請求項2】)
を備えるシステムにおいて、(上記イ(ア))
前記システムは、着脱式光学ユニット30とコンピュータ70とそれらを電気的に接続するビデオケーブル42、52とからなるものであり、(上記イ(ア))
前記手術用顕微鏡は、病理検査に利用できるものであり、(【0010】)
顕微鏡観察像が左眼用光学系に属する左眼鏡筒を介して術者の左眼に送られるとともに、この左眼用光学系に外部モニタ用撮像カメラが設けられ、該撮像カメラから観察像を表す映像信号をモニタ付きコンピュータに送り、該コンピュータにおいて、切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等に係る映像を制作し、制作された映像のみであり観察像を含まない映像を表す映像信号を、右眼用光学系に設けられた合成映像表示用モニタに送り、該モニタに映し出された映像を例えば前記観察像(元画像)に重畳して右眼鏡筒を介して術者の右眼に送るようにされており、(上記イ(イ))
入力された元画像部分を消して合成映像表示用モニタ50に出力するので、合成映像表示用モニタ50には、切開部位、操作指示等を示す印M、文字情報L、ポインタP等が普通に映し出されるのに対し、元画像部分は全く映し出されないものであり、(【0032】)
顕微鏡本体20は、左眼鏡筒25A及び右眼鏡筒25Bからなる双眼鏡筒25を有し、患部の顕微鏡観察像を左眼鏡筒25Aを介して術者の左眼に導く左眼用光学系22Aと前記観察像を右眼鏡筒25Bを介して術者の右眼に導く右眼用光学系22Bとが設けられており、(【0027】)
術者は顕微鏡から目を離すことなく、指導者が指示する切開部位等を的確に認識することができる、(【0023】)
システム。」

(3)対比

ア 本件補正発明の「病理顕微鏡に適用される付加表示モジュールであって、」との特定事項について

(ア)引用発明の「システム」は、「着脱式光学ユニット30とコンピュータ70とそれらを電気的に接続するビデオケーブル42、52からなる」ものであり、当該「着脱式光学ユニット30」は、「顕微鏡本体に着脱自在に装着可能」であり、しかも、「合成映像を前記プリズムもしくはビームスプリッタを介して前記右眼用光学系に属する鏡筒に導くようにされている」から、当該「システム」は、本件補正発明の「付加表示モジュール」に相当する。

そして、引用発明の「システム」は、「病理検査に利用できる」「手術用顕微鏡」に係るものであるから、引用発明の「手術用顕微鏡」は本件補正発明の「病理顕微鏡」に相当し、当該「システム」は、本件補正発明の「病理顕微鏡に適用される」との事項を満たす。

(イ)よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たす。

イ 本件補正発明の「前記病理顕微鏡の入射光路に設けられ、前記入射光路からデジタル病理画像を収集するための画像収集ユニットと、」との特定事項について

(ア)引用発明の「左眼用光学系」に設けられた「前記プリズムもしくはビームスプリッタを介して得られる観察像を撮像する外部モニタ用撮像カメラ」は、本件補正発明の「画像収集ユニット」に相当する。

(イ)引用発明では、「前記左眼用光学系に、前記プリズムもしくはビームスプリッタを介して得られる観察像を撮像する外部モニタ用撮像カメラが設けられ」ているところ、上記ア(ア)のとおり、引用発明の「手術用顕微鏡」は本件補正発明の「病理顕微鏡」に相当することにも照らせば、当該「外部モニタ用撮像カメラ」が設けられている「左眼光学系」は、本件補正発明の「前記病理顕微鏡の入射光路」に相当するといえる。そして、当該「外部モニタ用撮像カメラ」は「観察像を撮像する」ことから、当該「外部モニタ用撮像カメラ」が「撮像」したデータは、本件補正発明の「デジタル病理画像」に相当するとともに、引用発明は、本件補正発明でいう「前記入射光路からデジタル病理画像を収集する」ものといえる。

(ウ)よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たす。

ウ 本件補正発明の「前記デジタル病理画像を人工知能AIで分析してAI分析情報を生成するための制御ユニットと、」との特定事項について

(ア)引用発明の「コンピュータ」は、制御を行うものといえるから、本件補正発明の「制御ユニット」に相当する。

(イ)引用発明は、「該コンピュータにおいて、切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等に係る映像を制作し、制作された映像のみであり観察像を含まない映像を表す映像信号を、」「合成映像表示用モニタに送」るものである。そして、引用発明の「手術用顕微鏡」が「病理検査に利用できるもの」であることに照らせば、上記の「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」には病理的な関心領域に係る情報が想定されていることが、当業者にとって明らかである。

このように病理的な関心領域に係る情報が当然に想定されている引用発明の「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」は、本件補正発明の「デジタル病理画像を人工知能AIで分析して」「生成」された「AI分析情報」とは、「デジタル病理画像」を「分析して」「生成」された、病理的な関心領域に係る情報(以下「病理関心領域情報」という。)であることで共通する。一方で、デジタル病理画像を分析して生成された病理関心領域情報が、本件補正発明は、「制御ユニット」が「デジタル病理画像」を「人工知能AIで分析して」「生成」したものであるのに対し、引用発明は、「指導者が指示する切開部位等を的確に認識することができる」ものであることから、病理的な関心領域に係る情報が当然に想定されている「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」に係る情報が「指導者」の「指示」により生成されるものである。

エ 本件補正発明の「前記病理顕微鏡の出射光路に設けられ、前記AI分析情報を前記病理顕微鏡の前記出射光路上に投影することで顕微鏡視野にAR病理画像として重畳され投影するように構成された拡張現実AR投影ユニットと」との特定事項について

(ア)引用発明の「右眼用光学系に設けられた合成映像表示用モニタ」及び「右眼用光学系」に「介装され」る「半透過型のプリズムもしくはビームスプリッタ」からなるものは、本件補正発明の「拡張現実AR投影ユニット」に相当する。

(イ)引用発明の「右眼用光学系」は、「前記観察像を前記右眼鏡筒に導く」ものであるところ、上記ア(ア)のとおり、引用発明の「手術用顕微鏡」は本件補正発明の「病理顕微鏡」に相当することにも照らせば、当該「右眼用光学系」は、本件補正発明の「病理顕微鏡の出射光路」に相当する。

(ウ)引用発明の「切開部位、操作指示等を示す印M、文字情報L、ポインタP等に係る映像」は、上記ウ(イ)を踏まえると、「病理関心領域情報」を示す画像といえるところ、当該画像は、本件補正発明の「AR病理画像」と「病理画像」である点で共通するといえる。さらに、当該画像は、「観察像(元画像)に重畳して右眼鏡筒を介して術者の右眼に送る」ものであることから、AR(拡張現実)技術に係るものであるといえる。そうすると、当該画像は、本件補正発明の「AR病理画像」に相当する。

オ 本件補正発明の「前記制御ユニットは、入力端が前記画像収集ユニットに電気的に接続され、出力端が前記拡張現実AR投影ユニットに電気的に接続され、」との特定事項について

引用発明は、「着脱式光学ユニット30」と「コンピュータ70」と「それらを電気的に接続するビデオケーブル42、52」とからなるところ、「該撮像カメラから観察像を表す映像信号をモニタ付きコンピュータに送り、該コンピュータにおいて、・・・映像を制作し、制作された映像のみであり観察像を含まない映像を表す映像信号を、右眼用光学系に設けられた合成映像表示用モニタに送」るものであるから、本件補正発明の上記特定事項を満たすといえる。

カ 本件補正発明の「前記制御ユニットは、

少なくとも1つのAI分析モデルを取得し、前記デジタル病理画像の使用シーンに対応するターゲットAI分析モデルを決定し、前記ターゲットAI分析モデルを呼び出して前記デジタル病理画像をAI分析して前記AI分析情報を生成するステップ、及び

前記デジタル病理画像を、サーバに送信し、前記サーバから送られてくる前記AI分析情報を受信するステップであって、前記サーバは、AI分析モデルを記憶しており、前記AI分析モデルで前記デジタル病理画像に対するAI分析を実行することにより、AI分析情報を取得するものである、ステップ、

のうちの少なくとも1つを実行し、」との特定事項について

引用発明は、上記ウ(イ)で説示したとおり、病理的な関心領域に係る情報が当然に想定されている「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」に係る情報が「指導者」の「指示」により生成されるものである。そして、引用発明の「コンピュータ」(本件補正発明の「制御ユニット」に相当。)は、「指導者」の「指示」に基づいて「合成映像表示用モニタ50」に出力する「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等に係る映像」を「制作」するものであるといえるが、「デジタル病理画像」を「人工知能AIで分析して」作成情報を「生成」していない。

キ 本件補正発明の「前記付加表示モジュールは、前記制御ユニットに接続される音声収集ユニットを更に含み、

前記音声収集ユニットは、外部の音声信号を収集するものであり、

前記制御ユニットは、前記音声信号の制御命令を認識し、前記制御命令に基づいて前記AI分析の分析過程を制御する」との特定事項について

引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たさない。

(4)一致点及び相違点の認定

上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「病理顕微鏡に適用される付加表示モジュールであって、
前記病理顕微鏡の入射光路に設けられ、前記入射光路からデジタル病理画像を収集するための画像収集ユニットと、
制御ユニットと、
前記病理顕微鏡の出射光路に設けられ、病理関心領域情報を前記病理顕微鏡の前記出射光路上に投影することで顕微鏡視野にAR病理画像として重畳され投影するように構成された拡張現実AR投影ユニットと
を含み、
前記制御ユニットは、入力端が前記画像収集ユニットに電気的に接続され、出力端が前記拡張現実AR投影ユニットに電気的に接続される、
付加表示モジュール。」

<相違点1>

「顕微鏡視野にAR病理画像として重畳され投影」される対象である病理関心領域情報が、

本件補正発明は、「入力端が前記画像収集ユニットに電気的に接続され、出力端が前記拡張現実AR投影ユニットに電気的に接続される」「制御ユニット」が「前記デジタル病理画像を人工知能AIで分析して」生成した「AI分析情報」であって、当該「AI分析情報」が「少なくとも1つのAI分析モデルを取得し、前記デジタル病理画像の使用シーンに対応するターゲットAI分析モデルを決定し、前記ターゲットAI分析モデルを呼び出して前記デジタル病理画像をAI分析して前記AI分析情報を生成するステップ、及び前記デジタル病理画像を、サーバに送信し、前記サーバから送られてくる前記AI分析情報を受信するステップであって、前記サーバは、AI分析モデルを記憶しており、前記AI分析モデルで前記デジタル病理画像に対するAI分析を実行することにより、AI分析情報を取得するものである、ステップ、のうちの少なくとも1つを実行」して生成されるのに対して、

引用発明は、本件補正発明でいう「入力端が前記画像収集ユニットに電気的に接続され、出力端が前記拡張現実AR投影ユニットに電気的に接続される」ものといえる「コンピュータ70」が備わっているものの、病理的な関心領域に係る情報が当然に想定されている「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」の生成が、当該「コンピュータ70」によるのではなく、指導者の指示によりなされる点。

<相違点2>

本件補正発明は、「前記制御ユニットに接続される音声収集ユニットを更に含み、前記音声収集ユニットは、外部の音声信号を収集するものであり、前記制御ユニットは、前記音声信号の制御命令を認識し、前記制御命令に基づいて前記AI分析の分析過程を制御する」のに対して、引用発明は、そもそも、「音声収集ユニット」を備えていない点。

(5)判断

ア 相違点1について

(ア)引用発明から出発した当業者が相違点1に係る本件補正発明の構成に至るためには、引用発明において、(i)病理的な関心領域に係る情報が当然に想定されている「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」を、指導者の指示により生成するのではなく、「コンピュータ70」によって、AI分析により生成するようにすること、(ii)その際のAI分析を、1つのAI分析モデルを取得し、前記1つのAI分析モデルを使用シーンに対応するターゲットAI分析モデルとして決定し、ターゲットAI分析モデルにより「外部モニタ用撮像カメラ」が「撮像」したデータをAI分析して生成するようにして行うこと、に至れば足りると解される。

(イ)そこで検討すると、引用発明においては、病理的な関心領域に係る情報が当然に想定されている「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」を得る必要があるところ、このような病理検査において、人による分析で生じる時間的、経済的、業務負担及び結果のバラツキという課題が存在すること、さらに、このような課題をAIによる分析により解決することは、周知技術である(例えば、原査定が提示した韓国登録特許第10-1889725号公報([0005]・[0006])の記載を参照。)。

そして、AI分析を行う際に、AI分析を実行する装置が、機械学習によって作成された識別モデルを取得すること(例えば、原査定が提示した国際公開第2018/001689号(第22頁第18行~20行、同頁27行~30行、第23頁第3行~12行、FIG.6)の記載、及び、原査定が提示した国際公開第2018/116851号([0011]~[0014]、[0041]、[図2])の記載を参照。)、また、AI分析を実行する装置が、識別モデルを用いてAI分析を行うこと(例えば、上記国際公開第2018/001689号(第22頁27行~30行、)、上記国際公開第2018/116851号([0013]・[0014])及び上記韓国登録特許第10-1889725号公報([0006])の各記載を参照。)も、いずれも周知技術である。加えて、一般に、何らかの分析を行う際に、複数の分析モデルを取得した上で、適切な分析モデルを選択することも、例示するまでもなく周知技術である。

そうすると、引用発明において、上記周知な課題を解決するために、上記各周知技術に基づいて、上記(ii)に係るAI分析を行うようにすることは、当業者が容易に至ることである。そして、その際のAI分析を引用発明の「コンピュータ70」において実行することは、AI技術がコンピュータ上で実現される技術である以上、通常選択されることにすぎないから、当業者は、上記(i)に係る構成にも至る。

(ウ)よって、引用発明及び上記各周知技術に基づいて相違点1に係る本件補正発明の構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

一般に、装置を操作する手段として、音声入力を用いることは周知技術である(例えば、特開2006-071430号公報(【請求項3】、【請求項4】)の記載を参照。)。そして、音声入力により装置を操作する際に、どのような内容を操作対象にするかは、当業者が適宜設計し得る事項といえる。

そうすると、引用発明の「システム」において、上記周知技術を適用して、相違点2に係る本件補正発明の構成をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)本件補正発明の効果について

相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の作用効果は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、本件補正発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができたものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(7)請求人の主張について

ア 請求人は、引用発明が何かしらの処理をした画像を用いていないものである旨主張し、その根拠として、引用発明で合成される画像は「切開部位、操作指示等を示す印、文字情報、ポインタ等」のみであり、本件補正発明のような「AI分析画像」とは異なることを挙げる。

請求人の主張は判然としないところがあるが、上記主張における「何かしらの処理」をした画像が本件補正発明でいう「AI分析情報」に基づく画像であるならば、引用発明において、そのように構成することは、上記(5)アで説示したとおり当業者が容易に想到し得たことである。

イ 請求人は、引用発明の「映像」が「合成映像表示用モニタ」に映し出されるものであって、本件補正発明のように「病理顕微鏡の顕微鏡視野内」で「直接的に統合」されるものではない旨主張する。

しかしながら、引用発明では、「該モニタに映し出された映像を例えば前記観察像(元画像)に重畳して右眼鏡筒を介して術者の右眼に送るようにされて」いるから、引用発明も、請求人がいう「病理顕微鏡の顕微鏡視野内」で「直接的に統合」されるものといえる。この点、請求人の主張する「病理顕微鏡の顕微鏡視野内」で「直接的に統合」されることの意味が、観察画像とAR病理画像とが顕微鏡視野内で初めて統合される(換言すれば、AR病理画像が生成された段階では、統合されていない。)ということであるならば、本件補正発明にはその旨特定されていないし、それを措くとしても、引用発明も、「入力された元画像部分を消して合成映像表示用モニタ50に出力する」ものであるから、請求人が主張するのと同様の状態となっている。

ウ 請求人は、引用発明が、仮にAI分析を行っているとしても、依然として視野を顕微鏡とモニタ等で繰り返して切り替える必要があり、病理顕微鏡の使用中の高リアルタイム性を図っているものではない旨主張する。

しかしながら、上記イで説示したとおり、引用発明は、「該モニタに映し出された映像を例えば前記観察像(元画像)に重畳して右眼鏡筒を介して術者の右眼に送るようにされて」いるから、視野を顕微鏡とモニタ等で繰り返して切り替える必要があるものではないといえる。

エ 請求人は、AIを用いて分析することが周知であるとしても医師が視線を切り替える必要がある問題点を解決する課題を解決する本件補正発明は当業者が容易に想到し得るものではない旨主張する。

しかしながら、上記イ及びウで説示したとおりである。

オ 請求人は、引用発明は、左眼用光学系における像により作成されたマークを右眼用光学系における像に重畳していることから、重畳画像が正確とはならない旨主張する。

しかしながら、本件補正発明には、「入射光路」(AI分析を行う対象である「デジタル病理画像」を収集する「画像収集ユニット」が設けられている。)で収集される画像と「出射光路」(「顕微鏡視野」に係るものである。)で観察できる画像との同一性に係る特定がなされていないことから、請求人の主張は、本件補正発明の特定事項に基づくものではない。

(8)まとめ

したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和4年9月15日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年12月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由は、本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含んでいる。

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明における「拡張現実ARユニット」において、実質的には、「AI分析情報」を「顕微鏡視野に投影する」事項から、「前記出射光路上に投影すること」及び「AR病理画像として重畳され」ることに係る限定事項を省いた発明である。

そうすると、本願発明の発明特定事項を実質的に全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(5)に記載したとおり、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-014624

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