2022-012106
フラットケーブル
- 審判番号
- 2022-012106
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-022911外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月04日
- 審決日
- 2023年04月24日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社プロテリアル
- 分類
- P18 .57 -Z (H01B) / P18 .55 -Z (H01B) / P18 .575-Z (H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、平成29年2月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
:拒絶査定(原査定)
第2 令和4年8月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年8月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線は、手続補正書の記載のとおりである。)
「【請求項1】複数本撚り合わせてなる導体と、前記導体の外周に被覆してなる絶縁体とを有している複数の心線と、前記複数の心線を撚り合せて形成されている複数の対撚線と、前記複数の対撚線を撚り合せてなる撚線と、前記撚線の外周を被覆するシースとを備える複数本のケーブルとを帯状に束ねてなるフラットケーブルであって、複数本の前記ケーブルの夫々のシースは、長手方向と短手方向の両方に沿って固着部と前記フラットケーブルを左右方向に屈曲させるための非固着部を介して断続的に固着されており、前記非固着部は、前記複数本のケーブルの夫々が相互に一体化されておらず、前記固着部は、隣接する前記ケーブルのシース同士が前記短手方向において融着して一体化しており、該ケーブルの夫々が相互に一体化されており、複数本の前記ケーブルの夫々のシースは、部分的に短手方向に沿って全部の前記ケーブルが固着されていないことを特徴とするフラットケーブル。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
令和3年6月4日提出の手続補正書により補正された、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(下線は、手続補正書の記載のとおりである。)
「【請求項1】複数本撚り合わせてなる導体と、前記導体の外周に被覆してなる絶縁体とを有している複数の心線と、前記複数の心線を撚り合せて形成されている複数の対撚線と、前記複数の対撚線を撚り合せてなる撚線と、前記撚線の外周を被覆するシースとを備える複数本のケーブルとを帯状に束ねてなるフラットケーブルであって、複数本の前記ケーブルの夫々のシースは、長手方向と短手方向の両方に沿って固着部と前記フラットケーブルを左右方向に屈曲させるための非固着部を介して断続的に固着されており、前記固着部の厚さは、隣接する前記ケーブルの夫々のシースの厚さの合計厚さよりも薄いことを特徴とするフラットケーブル。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な「前記固着部の厚さは、隣接する前記ケーブルの夫々のシースの厚さの合計厚さよりも薄いこと」との事項を除くものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。
また、本件補正が、「請求項の削除」、「誤記の訂正」、「明りょうでない記載の釈明」のいずれを目的としたものではないことも明らかである。
なお、請求人は審判請求書において、本件補正は新規事項の追加に該当するものではないと主張するのみで、補正の目的については何ら説明をしていない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定する「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」、「明りょうでない記載の釈明」のいずれを目的としたものにも該当しないから、特許法第17条の2第5項の規定を満たしていない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 補正後発明について
令和4年8月4日にされた手続補正は、上記第2のとおり、「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」及び「明りょうでない記載の釈明」のいずれを目的としたものにも該当しないという理由で却下すべきものである。
しかしながら、本願が、新規事項の追加を理由に拒絶査定されている事情(すなわち補正の制限により、指摘された新規事項を削除できないという事情)に鑑み、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとし、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「補正後発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
1 補正後発明
補正後発明は、前記第2[理由]1(1)の記載とおりのものである。
2 引用文献1の記載、及び引用発明
(1) 引用文献1
令和3年4月6日付け拒絶理由通知書で引用文献1として引用された特開2001-297637号公報(以下「引用文献1」という。)には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審において付与した。)
ア 「【0018】【実施例】以下に本発明を実施例により詳細に説明する。(実施例1)軟銅線1をポリエチレン層(厚さ0.2mm)2で絶縁被覆した絶縁導体(外径0.94mm)3を2本対撚りした2個の対T1 、T2 (特性インピータンスは100Ω、2個の対の対撚り方向は同じとする)を作製し、これを上撚りし、さらに外部シース(ポリ塩化ビニール、厚さ0.5mm)4を施して2対ケーブル12を製造した(図1参照)。対撚り方向と上撚り方向は同じ方向とし、対撚りピッチPt1、Pt2、上撚りピッチPuはそれぞれ8.6mm、10.0mm、30mmに設定した。ここではA式が満足されている。・・・(中略)・・・【0022】(実施例5)実施例1で作製した2対ケーブル12を4本平行に融着してリボン状の8対ケーブル18を製造した(図6参照)。」
「【図6】[図:0001399078000001.jpg]」
イ 引用発明
上記の記載によると引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「2対ケーブル12を4本平行に融着して製造したリボン状の8対ケーブル18(段落0022、図6)であって、2対ケーブル12、軟銅線1をポリエチレン層2で絶縁被覆した絶縁導体3を2本対撚りした2個の対T1 、T2を作製し、これを上撚りし、さらに外部シース4を施して製造した(段落0018)、リボン状の8対ケーブル18。」
3 対比
補正後発明と引用発明とを対比する。
(1) 引用発明の「軟銅線1をポリエチレン層2で絶縁被覆した絶縁導体3」は、「導体と、前記導体の外周に被覆してなる絶縁体とを有している」「心線」といえる。
(2) 引用発明の「軟銅線1をポリエチレン層2で絶縁被覆した絶縁導体3を2本対撚りした2個の対T1 、T2」は、「複数の心線を撚り合せて形成されている複数の対撚線」といえる。
(3) 引用発明の「2個の対T1 、T2」を上撚りしたものは、「前記複数の対撚線を撚り合せてなる撚線」といえる。
(4) 引用発明の「2個の対T1 、T2」を上撚りしたものに施される「外部シース4」は、「前記撚線の外周を被覆するシース」といえる。
(5) 「リボン状の8対ケーブル18」である引用発明は、「複数本のケーブルとを帯状に束ねてなるフラットケーブル」に係る発明といえる点で補正後発明と共通する。
(6) 一致点・相違点
以上を踏まえると、補正後発明と引用発明とは次の点で一致し、相違する。
ア 一致点
「導体と、前記導体の外周に被覆してなる絶縁体とを有している複数の心線と、前記複数の心線を撚り合せて形成されている複数の対撚線と、前記複数の対撚線を撚り合せてなる撚線と、前記撚線の外周を被覆するシースとを備える複数本のケーブルとを帯状に束ねてなるフラットケーブル。」
イ 相違点1
一致点である導体について、補正後発明の導体が「複数本撚り合わせてなる」のに対し、引用発明の絶縁導体3の導体が複数本撚り合わせたものではなく「軟銅線1」である点。
ウ 相違点2
補正後発明が「複数本の前記ケーブルの夫々のシースは、長手方向と短手方向の両方に沿って固着部と前記フラットケーブルを左右方向に屈曲させるための非固着部を介して断続的に固着されており、
前記非固着部は、前記複数本のケーブルの夫々が相互に一体化されておらず、
前記固着部は、隣接する前記ケーブルのシース同士が前記短手方向において融着して一体化しており、該ケーブルの夫々が相互に一体化されており、
複数本の前記ケーブルの夫々のシースは、部分的に短手方向に沿って全部の前記ケーブルが固着されていない」ことを特定しているのに対し、引用発明は、2対ケーブル12が4本平行に融着しており、非固着部を有さない点。
4 相違点の検討
(1) 相違点1について
ア 引用文献2の記載
令和3年4月6日付け拒絶理由通知書で引用文献2として引用された特開2006-032194号公報(以下「引用文献2」という。)には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すため当審において付与した。)
「【0019】図1において、本発明のツイストペアケーブルは、例えば4対の対撚線1を撚り合させて成る集合体2と、集合体2の外周に順次設けられた不織布などによる押え巻層3、遮蔽層4および塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂の押出被覆などにより形成されるシ-ス5とを備えている。【0020】各対撚線1は、軟銅撚線や錫めっき軟銅撚線等の可撓性を有する導体61の外周に絶縁体62を設けて成る絶縁コア線6を2本撚り合わせたもので構成され、各対撚線1はそれぞれ異なるピッチでより合わされている。」
「【図1】[図:0001399078000002.jpg]」
イ 検討
上記の記載から、(引用発明の対T1 、T2に相当する)各対撚線1の(引用発明の絶縁導体3に相当する)絶縁コア線6の心線として、「軟銅撚線や錫めっき軟銅撚線等の可撓性を有する導体61」、すなわち、撚線からなる導体を用いることは公知技術である。
そうすると、引用発明の絶縁導体3の心線である「軟銅線1」を、「複数本撚り合わせてなる」ものとすることは、当業者が容易に想到し得る事項といえる、
(2) 相違点2について
ア 引用文献5の記載
令和3年4月6日付け拒絶理由通知書で引用文献5として引用された特開昭52-129987号公報(以下「引用文献5」という。)には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すため当審において付与した。)
「3 発明の詳細な説明本発明は電気的接続等に用いられるフラットケーブルに係り、特に剥離性、可撓性を良くしたフラットケーブルの改良に関する。一般に電子機器等において電気的に接続するためにフラットケーブルが使用されている。このフラットケーブルは第1図乃至第2図に示される様に、絶縁被覆された複数の線芯1を並列に並べて、その側面を接着或いは溶着にて一体的に固着したもの、或いは押出し製法によつて複数の導線を並列に並べて一体に絶縁被覆を施したもの等がある。電子機器にこのフラットケーブルを使用する場合、その一端に圧入式のコネクタを取り付け、電気的接続に用される。しかしながら、この様な従来のフラットケーブルは屈曲性に対して方向性があり、長手方向に対してある角度を待たせて折り曲げる場合には特に屈曲性、可撓性が良くない。例えば、長手方向に対して直角に折り曲げる場合には、第3図に示す様に折り返して曲げている。続きを表示(全16行)・・・(中略)・・・本発明の目的は、上述した様な従来技術の欠点を除去し、剥離性、屈曲性の良いフラットケーブルを提供することにある。従つて、本発明の特徴とするところは、絶縁被覆が施された複数の線芯が並列に一体化されたフラットケーブルにおいて、線心間にその長手方向に対し所定間隔の裂け目部分を有するところにある。また、フラットケーブルの折り曲げ部の線芯間に裂け目部分を有するところにある。この様にすることによつてフラットケーブルの剥離性及び可撓性を改良せんとするものである。以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。第4図は本発明の一実施例によるフラットケーブルを示す図であり、第5図は第4図のIV-IV断面図である。導線に絶縁被覆が施された線心1が複数本並列に並べられ一体化されている。各線心間は接着された部分2と裂け目部分3を有する。各線心間に裂け目3を設けた部分の長さはlであつて接着部分の長さSを隔てて再び長さlの裂け目部分3を設けてある。この裂け目部分を設けるには、通常、当業者に知られている様な押出し方式を用いる。つまりフラットケーブルを製造する場合に、押出し段階においてカッター等で各線心間に長さlの裂け目3を間隔S毎に施すことによつて製造される。もちろん、対撚り線、ガット撚り線などの線芯を複数本並列に並べて接着或いは溶着等によつて一体的に成形されたフラットケーブルに対してもその長手方向に所定間隔で各線芯間に裂け目を設けることもできる。この様に複数の線心が並列に一体化されたフラットケーブルに所定間隔で各線心間に裂け目を設けることにより、フラットケーブルの屈曲性が良くなり、また各線心の剥離が容易となり、作業者は単に手で裂くのみで剥離することができる。尚、上記した裂け目部分の長さl及び接着部分の長さSは実施に際して任意に決められることは言うまでもない。さて、本発明は上記実施例にのみ限定されないことは以下の説明から理解されよう。・・・(中略)・・・また、第7図乃至第8図に示す様に幅方向に対して一体的に接着された部分2と裂け目部分3(同図斜線部分)を互い違いに設けてもよい。・・・(中略)・・・尚、フラットケーブルに裂け目部分を設けることは、その製造段階において、裂け目を設ける部分に対して特にその線芯間を接着或いは溶着等によつて一体化しない様にすればよいことも言うまでもなかろう。以上の説明から明らかな様に、本発明によれば剥離性、屈曲性のよい改良されたフラットケーブルを提供できる。」(1ページ左下欄18行~2ページ右下欄9行)
「第7図、第8図[図:0001399078000003.jpg]」
イ 検討
上記引用文献5の記載によると、
「絶縁被覆された複数の線心1を並列に並べて、その側面を接着或いは溶着にて一体的に固着したもの、或いは押出し製法によつて複数の導線を並列に並べて一体に絶縁被覆を施したもの」であるフラットケーブルには、「屈曲性に対して方向性があり、長手方向に対してある角度を待たせて折り曲げる場合には特に屈曲性、可撓性が良くない」という課題があり、この課題を、絶縁被覆が施された複数の線心が並列に一体化されたフラットケーブルにおいて、線心間にその長手方向に対し所定間隔の裂け目部分を、図7、8に示されるように、幅方向に対して一体的に接着された部分2と裂け目部分3を互い違いに設けることにより解決すること、は公知技術といえる。(引用文献5において「線心」と「線芯」とは同じ事項を意味するものと認められるから、以下引用文献5を引用する場合に表記を「線心」に統一した。)
そして、「2対ケーブル12を4本平行に融着して製造したリボン状の8対ケーブル18」である引用発明も、屈曲性に対して方向性があるという課題を有するフラットケーブルといえるから、引用発明に引用文献5記載の公知技術を採用する動機付けは存在する。
そうすると、引用発明の2対ケーブル12同士が融着された部分について、その長手方向に対し所定間隔の裂け目部分を、幅方向に対して一体的に融着された部分と裂け目部分を互い違いに設け、相違点2に係る補正後発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。
(3) 請求人の主張について
請求人の主張は、「しかしながら、あくまでも引用文献5に記載の発明は絶縁被覆された複数の線芯間に接着部分と裂け目部分を有するものであり、複数本のケーブルを帯状に束ねてなるフラットケーブルに関するものではありません。」(審判請求書6ページ15~17行)、「引用文献5には、並列線心同士を接着部分を介して接着するフラットケーブルについて記載されております。」(審判請求書9ページ12~13行)、「つまり、同引用文献には、いずれも並列に並んだ線心間に接着部分と非接着部分とを有するフラットケーブルの構成が開示されております。」(審判請求書9ページ21~22行)との前提に基づくものである。
しかしながら、引用文献5には「もちろん、対撚り線、ガット撚り線などの線心を複数本並列に並べて接着或いは溶着等によつて一体的に成形されたフラットケーブルに対してもその長手方向に所定間隔で各線心間に裂け目を設けることもできる。」(2ページ右上欄14~18行)との記載もある。
そして上記「対撚り線」については単に線心(線芯)ではなく「ケーブル」といえるから、請求人の主張の前提を採用することはできない。
そうすると、当該前提に基づく「ここで、引用文献1に記載の発明と引用文献5乃至8に記載の発明との対応関係を整理しますと、引用文献1に記載の発明は、2本の絶縁導体を撚り合わせた対を、2個撚り合わせた通信ケーブルですので、引用文献5乃至8に記載の発明の「線心」は、同引用文献に記載の発明の「絶縁導体」に対応するものと思料致します。
従って、通信ケーブルの開発に従事する当業者であれば、引用文献1に記載の発明における「絶縁導体を撚り合わせた対」に対して、引用文献5乃至引用文献8に記載の発明における「線心」同士を接着部分を介して接合する構造を採用した結果、「絶縁導体」同士を接着部分を介して接合する対構成に至ると考えるのが自然であり、かかる引用文献に記載の構成を組み合わせても、複数本のケーブルの夫々が相互に一体化されていない「非固着部」と隣接する前記ケーブルのシース同士が前記短手方向において融着して一体化しており、該ケーブルの夫々が相互に一体化されている「固着部」という本願発明の特有の構成には容易に想到し得ないものと思料致します。」(審判請求書9ページ23行~10ページ7行)との主張についても採用することはできない。
また、「このように、当業者は引用文献1乃至10に記載の発明を根拠として本願発明の特有の構成に容易に想到し得ない以上、左右方向の屈曲を容易に行えるフラットケーブルを提供することができる本願発明の作用効果は、引用文献1乃至10に記載の発明にはない格別の作用効果であるものと思料致します。」(審判請求書10ページ8~11行)との作用効果については、引用文献5記載の公知技術から予測可能なものといえる。
(4) 補正後発明についてのむすび
上記のとおり、補正後発明は、引用発明、及び、引用文献2、5に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、その目的が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであったとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第4 原査定について
1 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、令和3年6月4日提出の手続補正書でした、請求項1について、フラットケーブルの「固着部の厚さ」に関して、「前記固着部の厚さは、隣接する前記ケーブルの夫々のシースの厚さの合計厚さよりも薄い」とする補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないという、令和3年11月2日付け拒絶理由通知書に記載したものである。
2 当審の判断
(1) 当初明細書等の記載
当初明細書等には次の記載がある。
「【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、複数本のケーブルを帯状に束ねてなるフラットケーブルに関する。続きを表示(全66行)【背景技術】【0002】図5に示す通り、従来のフラットケーブル400は、複数本のケーブル401を帯状に束ねて形成されている。ケーブル401は、例えば、4本の対撚線402を撚り合わせてなる撚線403と、撚線403の外周に樹脂を被覆してなるシース404と、を有している。対撚線402は、例えば、2本の心線405を撚り合わせて形成されている。心線405は、例えば、複数本の素線を撚り合わせてなる導体406と、導体406の外周に樹脂を被覆してなる絶縁体407と、を有している。特に、複数本のケーブル401の夫々は、長手方向に沿って固着部408を介して連続的に固着されている(例えば、特許文献1を参照)。【先行技術文献】【特許文献】【0003】【特許文献1】 特許第5857993号公報【特許文献2】 特開平6-251638号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、従来のフラットケーブル400では、複数本のケーブル401の夫々が長手方向に沿って固着部408を介して連続的に一体的に固定されているため、上下方向(厚さ方向)の屈曲は容易であるものの、左右方向(幅方向)の屈曲は上下方向の屈曲と比較して必ずしも容易であるとは言えない。【0005】そこで、本発明の目的は、従来よりも左右方向の屈曲を容易に行えるフラットケーブルを提供することにある。【課題を解決するための手段】【0006】本発明は、複数本のケーブルを帯状に束ねてなるフラットケーブルであって、複数本の前記ケーブルの夫々は、長手方向と短手方向の両方に沿って断続的に固着されているフラットケーブルである。【0007】複数本の前記ケーブルの夫々は、長手方向に沿って等間隔に断続的に固着されていると共に短手方向に沿って数本飛ばしに断続的に固着されていることが望ましい。【0008】複数本の前記ケーブルの夫々は、部分的に短手方向に沿って全部の前記ケーブルが固着されていないことが望ましい。【発明の効果】【0009】本発明によれば、従来よりも左右方向の屈曲を容易に行えるフラットケーブルを提供することができる。【図面の簡単な説明】【0010】【図1】本発明のフラットケーブルの固着パターンを示す平面図である。【図2】本発明のフラットケーブルの構造を示すA-A線断面図である。【図3】本発明のフラットケーブルの固着パターンを示す平面図である。【図4】本発明のフラットケーブルの固着パターンを示す平面図である。【図5】従来のフラットケーブルの構造を示す断面図である。【発明を実施するための形態】【0011】以下、本発明の実施の形態を添付図面に順って説明する。【0012】[第1の実施の形態]図1及び2に示す通り、本発明の実施の形態に係るフラットケーブル100は、複数本のケーブル101を帯状に束ねて形成されている。ケーブル101は、例えば、4本の対撚線102を撚り合わせてなる撚線103と、撚線103の外周にポリエチレン樹脂を被覆してなるシース104と、を有している。対撚線102は、例えば、2本の心線105を撚り合わせて形成されている。心線105は、例えば、複数本の銅素線を撚り合わせてなる導体106と、導体106の外周にポリエチレン樹脂を被覆してなる絶縁体107と、を有している。特に、複数本のケーブル101の夫々は、長手方向と短手方向の両方に沿って固着部108と非固着部109とを介して断続的に固着されている。【0013】固着部108と非固着部109は、千鳥配列に配置されている。即ち、固着部108と非固着部109は、フラットケーブル100の長手方向に沿って所定の距離(例えば、10cm)毎に交互に配置されていると共にフラットケーブル100の短手方向に沿って所定の本数(例えば、1本)毎に交互に配置されている。【0014】フラットケーブル100を製造する際は、例えば、第1段階として、複数本のケーブル101を並列に配置すると共に長手方向に沿って融着部又は接着部を介して連続的に融着又は接着し、第2段階として、長手方向と短手方向の両方に沿って融着部又は接着部に断続的に切り込みを入れることにより、長手方向と短手方向の両方に沿って固着部108と非固着部109とを交互に配置する。【0015】フラットケーブル100では、複数本のケーブル101の夫々が長手方向と短手方向の両方に沿って固着部108と非固着部109とを介して断続的に固着されているため、複数本のケーブル101の夫々が相互に硬く一体化されていない。【0016】従って、フラットケーブル100によれば、複数本のケーブル101の夫々があたかも1本毎に独立しているかのように柔軟性に優れており、左右方向の屈曲時に複数本のケーブル101の夫々が相互に屈曲を阻害し難く、左右方向の屈曲を上下方向の屈曲と同様に容易に行える。【0017】[第2の実施の形態]図3に示す通り、本発明の実施の形態に係るフラットケーブル200は、フラットケーブル100と同様に、複数本のケーブル101を帯状に束ねて形成されている。但し、複数本のケーブル101の夫々は、部分的に短手方向に沿って全部のケーブル101が固着されておらず、フラットケーブル200は、フラットケーブル100と比較すると、フラットケーブル200の短手方向に沿って1つの固着部108も存在しない非固着領域201を備えている点で相違している。【0018】フラットケーブル200では、非固着領域201を備えているため、フラットケーブル100よりも更に柔軟性に優れており、左右方向の屈曲時に複数本のケーブル101の夫々が相互に屈曲を阻害し難く、フラットケーブル100以上に、左右方向の屈曲を上下方向の屈曲と同様に容易に行える。【0019】[第3の実施の形態]図4に示す通り、本発明の実施の形態に係るフラットケーブル300は、フラットケーブル100と同様に、複数本のケーブル101を帯状に束ねて形成されているものの、フラットケーブル100と比較すると、固着部108と非固着部109とがフラットケーブル300の短手方向に沿って始点と終点とを所定の距離(例えば、5cm)だけ違えて斜めに配置されている点で相違している。【0020】フラットケーブル300では、フラットケーブル100と同様に、複数本のケーブル101の夫々が長手方向と短手方向の両方に沿って固着部108と非固着部109とを介して断続的に固着されているため、複数本のケーブル101の夫々が相互に硬く一体化されていない。【0021】従って、フラットケーブル300によれば、フラットケーブル100と同様に、複数本のケーブル101の夫々があたかも1本毎に独立しているかのように柔軟性に優れており、左右方向の屈曲時に複数本のケーブル101の夫々が相互に屈曲を阻害し難く、左右方向の屈曲を上下方向の屈曲と同様に容易に行える。【0022】なお、フラットケーブル100,200,300の何れでも、複数本のケーブル101の夫々は、長手方向に沿って等間隔に断続的に固着されていると共に短手方向に沿って数本飛ばしに断続的に固着されており、長手方向の全体に亘って柔軟性を略均一化することができるため、フラットケーブル100,200,300の何れの位置でも、左右方向の屈曲を上下方向の屈曲と同様に容易に行える。【0023】以上の通り、本発明によれば、従来よりも左右方向の屈曲を容易に行えるフラットケーブル100,200,300を提供することができる。なお、フラットケーブル100,200,300は、従来よりも柔軟性に優れており、上下方向の屈曲と左右方向の屈曲のみならず、全方向の屈曲を従来よりも容易に行える。」
「【図1】[図:0001399078000004.jpg]」
「【図2】[図:0001399078000005.jpg]」
「【図5】[図:0001399078000006.jpg]」
(2) 検討
当初明細書等には、シースに関して「ケーブル401は、例えば、4本の対撚線402を撚り合わせてなる撚線403と、撚線403の外周に樹脂を被覆してなるシース404と、を有している。」(段落0002)、「ケーブル101は、例えば、4本の対撚線102を撚り合わせてなる撚線103と、撚線103の外周にポリエチレン樹脂を被覆してなるシース104と、を有している。」(段落0012)と記載されている。
そうすると、当初明細書等に記載された「シース」は、「撚線403の外周を被覆するポリエチレンなどの樹脂」であると理解できる。
そして、当初明細書等には、固着部に関して「フラットケーブル100を製造する際は、例えば、第1段階として、複数本のケーブル101を並列に配置すると共に長手方向に沿って融着部又は接着部を介して連続的に融着又は接着し、第2段階として、長手方向と短手方向の両方に沿って融着部又は接着部に断続的に切り込みを入れることにより、長手方向と短手方向の両方に沿って固着部108と非固着部109とを交互に配置する。」(段落0014)と記載されている。
そうすると、当初明細書等において、固着部の厚さ、すなわち、切れ込みを入れない場合の隣接するケーブル101の撚線403間の距離は、切れ込みを入れた場合である非固着部109における、隣接するケーブル101の「撚線403の外周を被覆するポリエチレンなどの樹脂」(シース104)の厚さの合計厚さと何ら変わらない。
また、当初明細書等において、固着部の厚さを、隣接するケーブル101の夫々の「撚線403の外周を被覆するポリエチレンなどの樹脂」(シース104)の厚さの合計厚さよりも薄くすることを示唆する記載もない。
したがって、フラットケーブルの「固着部の厚さ」に関して、「前記固着部の厚さは、隣接する前記ケーブルの夫々のシースの厚さの合計厚さよりも薄い」とする令和3年6月4日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえ、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
(3) 請求人の説明
請求人は令和3年6月4日提出の意見書(1ページ下から4行~2ページ1行)で、次のとおり補正についての説明している。
「(2)補正の根拠の明示本書と同日付けで提出した手続補正書における請求項1の「前記固着部の厚さは、隣接する前記ケーブルの夫々のシースの厚さの合計厚さよりも薄い」との補正事項は、出願当初の第2図に基づくものであることから、新規事項の追加に該当するものではないものと思料致します。」
しかしながら、当初明細書等の図2は、段落0014に記載された「融着部又は接着部」からなる「固着部」及び「融着部又は接着部」に切り込みを入れた「非固着部」の構成を概念的に示したものであって、「固着部」の厚さを正確に表現したものとは認められず、また、シース同士を「融着又は接着」すると、その部分の厚さがシースの厚さの合計よりも薄くなることが技術常識であると認めるに足る根拠もないから、請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、令和3年6月4日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-012106