特許拒絶査定不服審判
2019-007427
ワイヤーハーネス
- 審判番号
- 2019-007427
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-139433外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年06月05日
- 審決日
- 2020年08月18日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社オートネットワーク技術研究所
- 【請求人代理人】吉竹 英俊
- 【請求人代理人】有田 貴弘
- 【請求人】住友電装株式会社
- 【請求人代理人】吉竹 英俊
- 【請求人代理人】有田 貴弘
- 【請求人】住友電気工業株式会社
- 【請求人代理人】吉竹 英俊
- 【請求人代理人】有田 貴弘
- 分類
- P18 .55 -WY (H01B) / P18 .57 -WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-139433「ワイヤーハーネス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-181856、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月1日に出願した特願2017-109084号(国内優先権主張 平成28年11月11日)の一部を平成30年7月25日に新たに特許出願したものであって、同年10月31日に手続補正がなされ、平成31年1月11日付け拒絶理由通知に対して同年2月19日に手続補正がなされたが、同年2月26日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、令和1年6月5日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年6月5日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであるところ、本件補正前の特許請求の範囲及び本件補正の特許請求の範囲の記載は、それぞれ以下のとおりである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲(平成31年2月19日の手続補正による特許請求の範囲)
「【請求項1】
シート状に形成された機能性外装部材と、
前記機能性外装部材の一方主面側に配設された少なくとも1本の電線と、
前記機能性外装部材に対して前記電線を縫い付けている縫糸と、
を備え、
前記電線は、前記機能性外装部材に対して直線状に延びる電線を含み、
前記機能性外装部材は、シート全体としての前記直線状に延びる電線の延在方向に沿う方向の引張強度が、これと直交する方向の引張強度よりも高強度である、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネスであって、
前記機能性外装部材は、延伸フィルム又は長繊維不織布である、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネスであって、
前記機能性外装部材には、一方に長い圧縮部分が、長手方向が一致する態様で複数形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記電線として、曲がった経路を有する電線と前記直線状に延びる電線とが前記機能性外装部材に縫い付けられている、ワイヤーハーネス。」
(2)本件補正の特許請求の範囲(下線は補正箇所を示す。)
「【請求項1】
シート状に形成された機能性外装部材と、
前記機能性外装部材の一方主面側に配設された少なくとも1本の電線と、
前記機能性外装部材に対して前記電線を縫い付けている縫糸と、
を備え、
前記電線は、前記機能性外装部材に対して全体に直線状に延びる電線を含み、
前記機能性外装部材は、シート全体としての前記全体に直線状に延びる電線の延在方向に沿う方向の引張強度が、これと直交する方向の引張強度よりも高強度である、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネスであって、
前記機能性外装部材は、延伸フィルム又は長繊維不織布である、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネスであって、
前記機能性外装部材には、一方に長い圧縮部分が、長手方向が一致する態様で複数形成されている、ワイヤーハーネス。」
2 本件補正の適否の判断
本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正の目的について検討する。
本件補正前の請求項1の「直線状に延びる電線」という発明特定事項が、本件補正によって「全体に直線状に延びる電線」とされた。
しかし、例えば波形状をした電線が延在方向に長く形成されていたものも「全体に直線状に延びる」電線といえるから、「全体に直線状に延びる電線」は、「直線状に延びる電線」とは厳密にいえないものまで含んでしまう。
そうすると、「全体に直線状に延びる電線」は、「直線状に延びる電線」の下位概念に相当する事項ではないから、請求項1についての補正は特許請求の範囲を減縮するものに該当しない。
また、請求項1についての補正は、請求項の削除を目的とするものにも、誤記の訂正を目的とするものにも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成31年2月19日の手続補正による特許請求の範囲(前記「第2 補正の却下の決定」の[補正の却下の決定の理由]の「1 (1)」を参照。)の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものである。
第4 原査定の理由について
1 原査定の概要(特許法第17条の2第3項)
平成31年2月26日付け拒絶査定の概要は以下のとおりである。
請求項1は「前記電線は、前記機能性外装部材に対して直線状に延びる電線を含み、前記機能性外装部材は、シート全体としての前記直線状に延びる電線の延在方向に沿う方向の引張強度が、これと直交する方向の引張強度よりも高強度である」(下線部は補正箇所を示す)と補正された。(局所的にみれば直線状の部分が存在するが全体的にみれば曲がっている電線でもよい規定になっていることに注意されたい。)
しかしながら、当初明細書等(段落【0108】)には、直線状に延びる部分と曲がって延びている部分を含む電線の場合に、直線状に延びる電線の延在方向に沿う方向の引張強度が、これと直交する方向の引張強度よりも高強度であることまでは開示されていない。
よって、当該補正がなされた請求項1乃至4に記載した事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内にない。
2 当審の判断
本願の明細書において、「直線状」の記載が認められるのは以下のとおりである。なお、当該記載部分に下線を付与した。
「 【0048】
また図1に示す例では、電線12が直線状に配設されている。もっとも、電線12は曲がって配設されていてもよい。そして、ワイヤーハーネス10に電線12が複数含まれる場合、直線状に配設される電線12と、曲がって配設される電線12とが共に存在していてもよい。この場合、機能性外装部材30上で複数の電線12に分岐が形成されていてもよい。」
「 【0112】
また、機能性外装部材30が上記第1方向及び第2方向において伸びやすさが異なるものである場合もあり得る。例えば、機能性外装部材30を取付ける部分において電線12が直線状に延在するように配設される場合、機能性外装部材30において伸びにくい方向を電線12の延在方向とすることが好ましい。これにより、電線12が直線状に延在した状態に維持しやすくなる。また、伸びにくい分、機能性外装部材30が電線12にかかる引張力の一部を負担するにあたり、その割合が高くなる。このため、テンションメンバとしての効果も期待できる。また、機能性外装部材30を電線12周りに巻付けたり、電線12をリンフォースメント等の棒状部材に沿わせた状態で機能性外装部材30を棒状部材の周りに巻付けたりする場合に、機能性外装部材30の伸びやすい方向に巻付けることができるため、巻付け易くなる。」
上記段落【0048】によれば、「直線状」に配設されていることは、「曲がって」配設されてことと明確に区別をされている。また、「直線状」を示す図1を参照すると、電線は曲がることなく一直線に配設されていることが読み取れる。
また、上記段落【0112】によれば、機能性外装部材は第1方向及び第2方向で伸びやすさが異なるものであるところ(段落【0108】を参照すると、第1方向と第2方向は相互に直交する方向である。)、電線が「直線状」に延在するように配設されるということは、機能性外装部材において伸びにくい方向(第1方向か第2方向のどちらか)に延在するように配設されるということが読み取れる。仮に電線の一部が曲がっても良いと解釈すると、第1方向及び第2方向にも延在することになるので、当該段落の記載と整合しなくなる。
以上のとおり、「直線状」に延びる電線とは、直線に延びる部分と曲がって延びている部分を含む電線と解釈するのではなく、曲がって延びている部分を含まない一方向に延在する電線であると解すことができる。
よって、本願の請求項1ないし4に係る発明は、直線状に延びる部分と曲がって延びている部分を含む電線と解釈した原査定の理由である特許法第17条の2第3項違反には該当しない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし4に係る発明は、原査定の理由によって拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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