特許拒絶査定不服審判
2024-014084
監視カメラシステム
- 審判番号
- 2024-014084
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-059367
- 請求日
- 2024年09月03日
- 審決日
- 2026年03月24日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】廣田 祐次
- 審判長/審判官
- 審判長 圓道 浩史
- 審判官 伊藤 隆夫
- 審判官 合田 幸裕
- 分類
- P18 .55 -WZ (H04N) / P18 .537-WZ (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024- 59367「監視カメラシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 7年10月15日出願公開、特開2025-156750〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和6年4月2日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 5月 2日付け:拒絶理由通知書
令和6年 6月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 8月 2日付け:拒絶査定
令和6年 9月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 5月 9日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和7年 6月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 8月 1日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書(当審)
令和7年 8月26日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和7年8月26日になされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年8月26日になされた手続補正(以下「本件第2補正」という。)を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件第2補正について
(1) 本件第2補正前の特許請求の範囲の記載
本件第2補正前の、令和7年6月12日になされた手続補正(以下「本件第1補正」という。)により補正された特許請求の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
監視カメラのビデオ映像を、インタ―ネット経由にて、AI&オペレーターセンターに送り、該AI&オペレーターセンターでは、AIが事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までを、複数の段階に分けて記録する監視カメラシステムの方法であって、前記のすべての部分映像をAIがオペレーターに連絡し、該オペレーターが前記のすべての部分映像を確認し、警察や消防に前記すべての部分映像を送ることができる監視カメラシステムの方法であって、オリジナル映像記録を早期に廃棄し、前記すべての部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムの方法。」
(2) 本件第2補正後の特許請求の範囲の記載
本件第2補正は、上記(1)の特許請求の範囲の記載を、次のとおり補正するものである(下線部は、補正箇所である。)。なお、記号「A」から「C」は、分説するために当審が付したものであり、各記号に対応する発明特定事項を「構成A」から「構成C」という。
「【請求項1】
A 監視カメラのビデオ映像を、インタ―ネット経由にて、AI&オペレーターセンターに送り、 該AI&オペレーターセンターでは、AIが事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までを、複数の段階に分けて記録する監視カメラシステムの方法であって、
B 前記のすべての部分映像をAIがオペレーターに連絡し、該オペレーターが前記のすべての部分映像を確認し、警察や消防に必要と考えられる部分映像を送ることができる監視カメラシステムの方法であって、
C オリジナル映像記録を早期に廃棄し、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムの方法。」
2 本件第2補正の適否について
上記1のとおり、本件第2補正は、
本件第2補正前の「前記のすべての部分映像をAIがオペレーターに連絡し、該オペレーターが前記のすべての部分映像を確認し、警察や消防に前記すべての部分映像を送ることができる監視カメラシステムの方法」を、本件第2補正後の構成Bの「前記のすべての部分映像をAIがオペレーターに連絡し、該オペレーターが前記のすべての部分映像を確認し、警察や消防に必要と考えられる部分映像を送ることができる監視カメラシステムの方法」へ変更する補正事項(以下「第2補正事項1」という。)、及び
本件第2補正前の「オリジナル映像記録を早期に廃棄し、前記すべての部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムの方法」を、本件第2補正後の構成Cの「オリジナル映像記録を早期に廃棄し、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムの方法」へ変更する補正事項(以下「第2補正事項2」という。)、
を含むといえる。
以下、本件第2補正の適否について、検討する。
(1) 新規事項の追加について
ア 構成B及びCの解釈について
構成Bによれば、「該オペレーターが前記のすべての部分映像を確認し、警察や消防に必要と考えられる部分映像を送ることができる」。ここで、「前記のすべての部分映像」とは、構成Aにおける「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の部分映像を意味すると解される。また、構成Bにおける「必要と考えられる部分映像」とは、オペレーターが確認した「前記のすべての部分映像」のうち、オペレーター自身が必要と考えた部分映像、すなわち、「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の「部分映像」のうち、オペレーターにより「必要と考えられる部分映像」、を含むと解される。
一方、構成Cの「必要と考えられる部分映像」との記載についても、構成Bの「必要と考えられる部分映像」と同一の表現であることから、同様に、「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の「部分映像」のうち、オペレーターにより「必要と考えられる部分映像」、を含むと解するのが相当である。
そうすると、第2補正事項1及び2は、本件第2補正前の請求項1に記載された「監視カメラシステムの方法」を、オリジナル映像記録を早期に廃棄し、事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までの部分映像のうち、オペレーターにより必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムの方法を含むものに補正するといえる。
イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載について
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある(下線は強調のため当審で付した。)。
「【請求項1】
監視カメラのビデオ映像を、インタ-ネット経由にて、AI&オペレーターセンターに送り、 該AI&オペレーターセンターでは、AIが事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までを、複数の段階に分けて記録する監視カメラシステムであって、該実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認し、必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ることができる監視カメラシステムであって、オリジナル映像記録を早期に廃棄し、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステム。」
「【技術分野】
【0001】
従来の監視カメラシステムに対し、AIによる自動評価を加え、該AIが事件・事故の可能性のある動画をオペレーターに送り、該オペレーターの判断により、必要に応じ警察に通報するシステムの技術に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、監視カメラのビデオ映像を単に記録し、何かことがあれば、人海戦術にて、ビデオ録画の事後確認(証拠映像の取得)をしていましたが、即応性がない上に、該ビデオ録画の確認作業はとても辛いものがあった。
また、監視カメラのビデオ映像をそのまま丸ごと記録していたのでは、容量
の問題で早期に廃棄(更新)しなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
監視カメラのビデオ映像を、インタ-ネット経由にて、「AI&オペレーターセンター」に送り、 該「AI&オペレーターセンター」では、図1のように4つのモードで録画をする。
すなわち、該AIが該監視カメラから送付された該ビデオ映像を、オリジナルのままと、「小異変」(=目安:全体の異変の80%:日に一回程度発生と想定)、中異変(=目安:全体の異変の17%:週間で一回程度発生と想定)、大異変(=目安:全体の異変の3%程度:月に一回程度発生と想定)ごとに録画し、大異変発生時には、オペレーターに連絡をし、必要に応じオペレーターが警察への通報をするシステムを構築する。
また、容量の大きい監視カメラのオリジナル映像は、早期に廃棄し、小異変録画→中異変録画→大異変録画の順で、録画の保存時間を延長する。
【発明の効果】
【0006】
監視カメラの映像をリアルタイムでチェックしているので、事件や事故の発生の兆候や発生した直後での通報がなされ、事件や事故を未然に防ぐことができたり、早期解決を図ることができる。
何らかの理由でビデオ録画の確認をする際も、大異変→中異変→小異変の録画の順でチェックをすればよく、ビデオ録画の確認作業が楽になる。」
「【0008】
監視カメラのビデオ映像を、インタ-ネット通信にて、「AI&オペレーターセンター」に送り、 該「AI&オペレーターセンター」では、図1のように4つのモードで録画をする。
すなわち、該AIが該監視カメラから送付された該ビデオ映像を、オリジナルのままと、「小異変」(=目安:全体の異変の80%:日に一回程度発生と想定)、中異変(=目安:全体の異変の17%:週間で一回程度発生と想定)、大異変(=目安:全体の異変の3%程度:月に一回程度発生と想定)ごとに録画し、大異変発生時には、オペレーターに連絡をし、必要に応じオペレーターが警察への通報をするシステムを構築する。
【0009】
監視カメラのビデオ映像を、インタ-ネット通信にて、「AI&オペレータセン
ター」に送り、 該「AI&オペレーターセンター」では、図1のように4つのモードで録画をする。
すなわち、該AIが該監視カメラから送付された該ビデオ映像を、オリジナルのままと、「小異変」(=目安:全体の異変の80%:日に一回程度発生と想定)、中異変(=目安:全体の異変の17%:週間で一回程度発生と想定)、大異変(=目安:全体の異変の3%程度:月に一回程度発生と想定)ごとに録画する。
(中略)
尚最初は、小異変・中異変程度の内容と考えられても、実際の事件や事故につながることが統計的にわかってきたら(=AIが学習したら)大異変に変更し、AI→オペレーター→警察に早期に伝わるようにする。
大異変の場合、実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認し、必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ることができる監視カメラシステムとなっている。
オリジナル映像の全記録では、メモリー領域をすぐに食ってしまうので、該オリジナル映像記録を早期に廃棄し、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムにして、メモリー領域を節約しながら、必要なエッセンスのみを残し、後で解析が楽になるようにする。」
また、図1の左欄からは、「AI&オペレーターセンター」について、AIが4種の録画指示を行い、「監視カメラから送付されたオリジナルの映像を録画」した映像の「保存期間」を「短」くするとともに、「小異変録画」、「中異変録画」、「大異変録画」の順で、「保存期間」を「長」くすること、及び、「オペレーター」や「警察」との記載は「大異変録画」にのみ併記されていること、が看取できる。
さらに、図1の右欄の「<顔認証+>=「AI&オペレーター」システムへの移行」には、「すなわち、該AIがビデオ映像を「小異変」(=目安:全体の異変の80%:1日一回程度発生と想定)、中異変(=目安:全体の異変の17%:1週間一回程度発生と想定)、大異変(=目安:全体の異変の3%:1月に一回程度発生と想定)ごとにメモリーし、大異変発生時には、オペレーターに連絡し、そのうちオペレーターが通報レベルと判断するのは10%程度と想定しています。」(第3段落)、及び「もし事件や事故が起こった場合の事後確認でも、大異変動画→中異変動画→小異変動画→元のビデオ動画の順でみることで、ビデオの確認現場ではとても楽になると考えています。」(第4段落)といった記載がある。
ウ 当初明細書等に記載された事項
(ア)
上記イの段落0005及び図1左欄には、監視カメラのオリジナル映像は、早期に廃棄し、小異変録画、中異変録画、大異変録画の順で、録画の保存時間を延長することが記載されている。
ここで、段落0005、0008、及び図1左欄の記載によれば、「オリジナル映像録画」、「小異変録画」、「中異変録画」、「大異変録画」といった4つのモードは、「AI」が指示するものと解される。
そうすると、当初明細書等には、監視カメラのオリジナル映像を早期に廃棄し、AIが指示するモードに応じて、小異変録画、中異変録画、大異変録画の順で、録画の保存時間を延長する監視カメラシステムの方法が記載されているといえる。
(イ)
当初明細書等の請求項1には、「AIが事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までを、複数の段階に分けて記録する監視カメラシステムであって、該実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認し、必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ることができる監視カメラシステムであって、オリジナル映像記録を早期に廃棄し、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステム。」との記載がある。
また、当初明細書等の段落0009には、「大異変の場合、実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認し、必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ることができる監視カメラシステムとなっている。・・・該オリジナル映像記録を早期に廃棄し、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムにして、メモリー領域を節約しながら、必要なエッセンスのみを残し、後で解析が楽になるようにする。」との記載がある。
ここで、当初明細書等の請求項1や段落0009に記載された「必要と考えられる部分映像」は、「必要に応じて、警察や消防に・・・送る」「該部分映像」(請求項1、段落0009)、すなわち、「大異変の場合、・・・AIがオペレーターに送」る(段落0009)「実際に発生している事件や事故の部分映像」(請求項1、段落0009)の少なくとも一部を意味すると解し得る。このような解釈は、図1右欄の「大異変発生時には、オペレーターに連絡し、そのうちオペレーターが通報レベルと判断するのは10%程度と想定しています。」との記載とも整合する。
しかしながら、当初明細書等全体の記載をみても、オペレーターにより必要と考えられたことに応じて、部分映像の保存期間を長く設定又は変更することは、記載も示唆もされていない。
むしろ、当初明細書等の請求項1や段落0009の上記記載と、段落0005の「容量の大きい監視カメラのオリジナル映像は、早期に廃棄し、小異変録画→中異変録画→大異変録画の順で、録画の保存時間を延長する。」との記載の類似性を考慮すると、当初明細書等の請求項1や段落0009の「必要と考えられる部分映像」とは、「AI」が指示するモードに応じて(上記(ア))、「大異変録画」した部分映像を意味するか、あるいは、「監視カメラのオリジナル映像」を除外した、「小異変録画」した部分映像、「中異変録画」した部分映像、及び「大異変録画」した部分映像を意味すると解するのが自然といえる。
そうすると、当初明細書等には、監視カメラのオリジナル映像を早期に廃棄し、AIが指示するモードに応じて、少なくとも大異変録画した部分映像を長期保存が可能な監視カメラシステムの方法が記載されているといえる。
(ウ) まとめ
上記(イ)及び(ウ)をまとめると、当初明細書等には、監視カメラのオリジナル映像を早期に廃棄し、AIが指示するモードに応じて、小異変録画、中異変録画、大異変録画の順で、録画の保存時間を延長する監視カメラシステムの方法、及び、監視カメラのオリジナル映像を早期に廃棄し、AIが指示するモードに応じて、少なくとも大異変録画した部分映像を長期保存が可能な監視カメラシステムの方法が記載されているといえる。
エ 新規事項の追加についての判断
(ア) 第2補正事項1について
a 第2補正事項1によって導入される監視カメラシステムの方法について
上記アのとおり、「前記のすべての部分映像」とは、構成Aにおける「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の部分映像を意味すると解される。また、構成Bの「必要と考えられる部分映像」とは、「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の「部分映像」のうち、オペレーターにより「必要と考えられる部分映像」、を含むと解される。
そうすると、第2補正事項1は、「該オペレーターが」「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」「のすべての部分映像を確認し、警察や消防に」「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の「部分映像」のうち、オペレーターにより「必要と考えられる部分映像を送ることができる監視カメラシステムの方法」を導入するものといえる。
そして、当該導入される監視カメラシステムの方法には、例えば、「オペレーター」が、「AI」から「連絡」された「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の「すべての部分映像」を「確認」した後に、「必要と考えられる部分映像」として「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像」を「警察や消防に」「送ることができる監視カメラシステムの方法」が含まれる。
b 「確認」することについて
当初明細書等には、「何らかの理由でビデオ録画の確認をする際も、大異変→中異変→小異変の録画の順でチェックをすればよく、ビデオ録画の確認作業が楽になる」(段落0006)、及び「もし事件や事故が起こった場合の事後確認でも、大異変動画→中異変動画→小異変動画→元のビデオ動画の順でみることで、ビデオの確認現場ではとても楽になる」(図1右欄第4段落)といった記載があるが、この確認過程において「何らかの理由」による「ビデオ録画の確認」や、「事件や事故が起こった場合の事後確認」が十分なされたと判断された場合には、「何らかの理由」や事後確認対象の「事件や事故」に関係しない以降のビデオ録画の確認は行わず、確認作業を終了することは明らかである。
そして、当初明細書等には、発明が解決しようとする課題として、「何かことがあれば、人海戦術にて、ビデオ録画の事後確認(証拠映像の取得)をしていましたが、即応性がない上に、該ビデオ録画の確認作業はとても辛いものがあった」こと(段落0004)が記載されており、また、発明の効果として、「何らかの理由でビデオ録画の確認をする際も、大異変→中異変→小異変の録画の順でチェックをすればよく、ビデオ録画の確認作業が楽になる」こと(段落0006)が記載されている。よって、「何らかの理由」による「ビデオ録画の確認」や、「事件や事故が起こった場合の事後確認」を行う場合に、「必要と考えられる部分映像を」「警察や消防に」「送る」前に、常に、「オペレーター」が、「AI」から「連絡」された「すべての部分映像」を「確認」することは、ビデオ録画の確認作業を楽にするという本願発明の技術思想に反しており、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。
c 「部分映像を送る」ことについて
当初明細書等には、「大異変の場合、実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認し、必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ることができる」(段落0009)との記載があるから、「オペレーター」が、「大異変の場合」に「AI」から送られた「実際に発生している事件や事故の部分映像」を「確認」し、「必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ること」が記載されている。
また、当初明細書等の図1の左欄からは、「オペレーター」や「警察」との記載は「大異変録画」にのみ併記されていること、が看取できる。
そうすると、当初明細書等には、「オペレーター」が、「AI」から「連絡」された「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の「すべての部分映像」を「確認」した後に、「必要と考えられる部分映像」として、例えば「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像」を「警察や消防に」「送ることができる」ことは記載されていない。
d まとめ
上記aからcのとおり、第2補正事項1により導入される、「該オペレーターが」「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」「のすべての部分映像を確認し、警察や消防に」「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」の「部分映像」のうち、オペレーターにより「必要と考えられる部分映像を送ることができる監視カメラシステムの方法」は、当初明細書等に記載されていない。
(イ) 第2補正事項1及び2について
第2補正事項1及び2によって導入される、オリジナル映像記録を早期に廃棄し、事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までの部分映像のうち、オペレーターにより必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムの方法(上記ア)は、当初明細書等には記載されていない。
すなわち、第2補正事項1及び2によって導入される監視カメラシステムの方法は、「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像」を含む「すべての部分映像」のうち、オペレーターにより「必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な」ものであるから、例えば、「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像」のみを長期保存可能とする一方、「実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像」を長期保存しない監視カメラシステムの方法を含むものである。
一方、当初明細書等には、監視カメラのオリジナル映像を早期に廃棄し、AIが指示するモードに応じて、小異変録画、中異変録画、大異変録画の順で、録画の保存時間を延長する事項、及び、監視カメラのオリジナル映像を早期に廃棄し、AIが指示するモードに応じて、少なくとも大異変録画した部分映像を長期保存が可能な監視カメラシステムの方法が記載されているといえる(上記ウ(ウ))が、オペレーターにより「必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な」監視カメラシステムの方法は、記載も示唆もされていない。
(ウ) 新規事項の追加についての判断のまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおり、第2補正事項1及び2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでないから、第2補正事項1及び2を含む本件第2補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
オ 請求人の主張について
請求人は、令和7年8月26日に提出された意見書において、本件第2補正に関連して、「『「必要と考えられる部分映像」とは、「AIオペレーターセンター」に存在するどのような「部分映像」を意味するのか不明である。』の指摘に対して「前記すべての部分映像」に変更します。」、及び「「部分映像」の定義や範囲が明確でないという指摘に対して、全ての個所で「前記すべての部分映像」に変更したものの、請求項後半の部分映像に関しては「必要と考えられる」を残し、請求項全体として矛盾のない形とします。」などと主張しているが、本件第2補正が当初明細書等のどの記載を根拠とするのか示していない。
そして、請求人の上記主張を考慮しても、本件第2補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていると認めるに足りる根拠は見いだせない。
3 補正の却下の決定の理由についてのむすび
以上のとおり、本件第2補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているものと認められるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件第2補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件第1補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、上記第2の1(1)のとおりのものであると認められる。
(1) 本件第1補正について
ア 本件第1補正前の特許請求の範囲の記載
本件第1補正前の、令和6年9月3日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
監視カメラ及び記録媒体を有するAI&オペレーターセンターの構成にて、監視カメラがビデオ映像を、インタ―ネット経由にて、AI&オペレーターセンターに送り、 該AI&オペレーターセンターでは、AIが事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までを、複数の段階、大異変、中異変、小異変に分けて記録する監視カメラシステムであって、該実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該送付された部分映像を確認し、必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ることができる監視カメラシステムであって、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステム。」
イ 本件第1補正後の特許請求の範囲の記載
本件第1補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記第2の1(1)のとおりである。
ウ 本件第1補正の補正事項
本件第1補正は、
本件第1補正前の「該AI&オペレーターセンターでは、AIが事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までを、複数の段階、大異変、中異変、小異変に分けて記録する監視カメラシステムであって、該実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該送付された部分映像を確認」することを、本件第1補正後の「該AI&オペレーターセンターでは、AIが事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像までを、複数の段階に分けて記録する監視カメラシステムの方法であって、前記のすべての部分映像をAIがオペレーターに連絡し、該オペレーターが前記のすべての部分映像を確認」することへ変更する補正事項(以下「第1補正事項1」という。)、
本件第1補正前の「必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送ること」を、本件第1補正後の「警察や消防に前記すべての部分映像を送ること」へ変更する補正事項(以下「第1補正事項2」という。)、及び
本件第1補正前の「必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な」ことを、本件第1補正後の「オリジナル映像記録を早期に廃棄し、前記すべての部分映像のみを長期保存が可能な」ことへ変更する補正事項(以下「第1補正事項3」という。)、
を含むといえる。
2 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶の理由である、令和7年8月1日付け拒絶理由通知書の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、本件第1補正は、上記第1補正事項1~3の各補正事項が、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。
3 当審拒絶理由についての判断
(1) 第1補正事項1について
当初明細書等には、「大異変発生時には、オペレーターに連絡をし」(段落0005、0008)、及び「大異変の場合、実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認し」(段落0009)といった記載があるから、「大異変発生時には、」「実際に発生している事件や事故の部分映像をAIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認」することが記載されている。
また、当初明細書等には、「該「AI&オペレーターセンター」では、図1のように4つのモードで録画をする」(段落0005、0008、0009)、「該AIが該監視カメラから送付された該ビデオ映像を・・・「小異変」(=目安:全体の異変の80%:日に一回程度発生と想定)、中異変(=目安:全体の異変の17%:週間で一回程度発生と想定)、大異変(=目安:全体の異変の3%:月に一回程度発生と想定)ごとに録画」(段落0005、0008、0009)、及び「該AIがビデオ映像を「小異変」(=目安:全体の異変の80%:1日一回程度発生と想定)、中異変(=目安:全体の異変の17%:1週間一回程度発生と想定)、大異変(=目安:全体の異変の3%:1月に一回程度発生と想定)ごとにメモリーし」(図1右欄第3段落)といった記載があり、「AI&オペレーターセンター」では、「AI」が、「小異変」、「中異変」、「大異変」ごとに「録画」し、また、「メモリー」することが記載されている。
ここで、当初明細書等には、「何らかの理由でビデオ録画の確認をする際も、大異変→中異変→小異変の録画の順でチェックをすればよく、ビデオ録画の確認作業が楽になる」(段落0006)、及び「もし事件や事故が起こった場合の事後確認でも、大異変動画→中異変動画→小異変動画→元のビデオ動画の順でみることで、ビデオの確認現場ではとても楽になる」(図1右欄第4段落)といった記載があるが、「何らかの理由」による「ビデオ録画の確認」や、「事件や事故が起こった場合の事後確認」が十分なされたと判断された場合には、「何らかの理由」や「事件や事故」に関係しない他のビデオ録画の確認は行わず、確認作業を終了することは明らかであり、「すべての部分映像」について「AIがオペレーターに連絡し、該オペレーター」が「確認」することは記載されていない。
さらに、当初明細書等には、「最初は、小異変・中異変程度の内容と考えられても、実際の事件や事故につながることが統計的にわかってきたら(=AIが学習したら)大異変に変更し、AI→オペレーター・・・に早期に伝わるようにする」(段落0009)という記載があるが、AIが学習してもなお「小異変・中異変程度」と考えられる「部分画像」が存在することは明らかであり、そのような「部分画像」についてまで、「オペレーター」に「連絡」することは記載されていない。
そうすると、「AI&オペレーターセンター」に「録画」及び「メモリー」されたすべての「部分映像」を「AIがオペレーターに送り、該オペレーターが該部分映像を確認」すること、すなわち「事件につながる可能性のある、小さな兆候の部分映像から、実際に発生している事件や事故等の重要な部分映像まで」「のすべての部分映像をAIがオペレーターに連絡し、該オペレーターが前記のすべての部分映像を確認」するという事項は、当初明細書等に記載されていない。
そして、当初明細書等には、発明が解決しようとする課題として、「何かことがあれば、人海戦術にて、ビデオ録画の事後確認(証拠映像の取得)をしていましたが、即応性がない上に、該ビデオ録画の確認作業はとても辛いものがあった」こと(段落0004)が記載されており、また、発明の効果として、「何らかの理由でビデオ録画の確認をする際も、大異変→中異変→小異変の録画の順でチェックをすればよく、ビデオ録画の確認作業が楽になる」こと(段落0006)が記載されている。よって、「すべての部分映像」を「連絡」して「オペレーター」が「確認」することは、ビデオ録画の確認作業を楽にするという本願発明の技術思想に反しており、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。
したがって、第1補正事項1は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものでない。
(2) 第1補正事項2について
当初明細書等には、「大異変発生時には、オペレーターに連絡をし、必要に応じオペレーターが警察への通報をする」(段落0005、0008)、「大異変の場合、・・・必要に応じて、警察や消防に該部分映像を送る」(段落0009)、及び「大異変発生時には、オペレーターに連絡し、そのうちオペレーターが通報レベルと判断するのは10%程度と想定」(図1右欄第3段落)といった記載があるが、「警察や消防に前記すべての部分映像を送ること」は記載されていない。
また、当初明細書等には、「最初は、小異変・中異変程度の内容と考えられても、実際の事件や事故につながることが統計的にわかってきたら(=AIが学習したら)大異変に変更し、・・・オペレーター→警察に早期に伝わるようにする」(段落0009)という記載があるが、AIが学習してもなお「小異変・中異変程度」と考えられる「部分画像」が存在することは明らかであり、そのような「部分画像」についてまで、「警察」に「送る」ことは記載されていない。
したがって、第1補正事項2は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものでない。
(3) 第1補正事項3について
当初明細書等には、「容量の大きい監視カメラのオリジナル映像は、早期に廃棄し、小異変録画→中異変録画→大異変録画の順で、録画の保存時間を延長する」(段落0005)、及び「オリジナル映像の全記録では、メモリー領域をすぐに食ってしまうので、該オリジナル映像記録を早期に廃棄し、必要と考えられる部分映像のみを長期保存が可能な監視カメラシステムにして、メモリー領域を節約しながら、必要なエッセンスのみを残し、後で解析が楽になるようにする」(段落0009)といった記載があり、また、「AI&オペレーターセンター」の「保存期間」として、「監視カメラから送付されたオリジナルの映像を録画」した映像、「小異変録画」した映像、「中異変録画」した映像、「大異変録画」した映像の順で、「保存期間」が長くなることが示されている(図1左欄)が、「必要と考えられる部分映像のみ」ではなく、「すべての部分映像」を「長期保存」することは記載されていない。
また、当初明細書等には、発明が解決しようとする課題として、「監視カメラのビデオ映像をそのまま丸ごと記録していたのでは、容量の問題で早期に廃棄(更新)しなければならなかった」こと(段落0004)が記載されており、また、発明の効果として、「メモリー領域を節約しながら、必要なエッセンスのみを残し、後で解析が楽になるようにする」こと(段落0009)が記載されている。よって、「すべての部分映像」を「長期保存」することは、「メモリー領域を節約しながら、必要なエッセンスのみを残」すという本願発明の技術思想に反しており、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえない。
したがって、第1補正事項3は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものでない。
(4) 当審拒絶理由についての判断のまとめ
以上のとおり、本件第1補正に含まれる、上記第1補正事項1~3の各補正事項は、当初明細書等に記載されていない。
したがって、本件第1補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
4 請求人の主張
請求人は、上記第1補正事項1~3の各補正事項について、令和7年6月12日に提出された意見書において、「「部分映像」の定義や範囲が明確でないという指摘に対しては、「前記すべての部分映像」に修正し、矛盾のない形とします。」と主張している。
しかしながら、上記主張は当初明細書等のどの記載を根拠としているか示しておらず、また、上記第1補正事項1~3の各補正事項は、上記3のとおり、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるといえない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-014084