特許拒絶査定不服審判
2023-008183
抵抗率勾配を有する絶縁体
- 審判番号
- 2023-008183
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-572889外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年05月18日
- 審決日
- 2024年04月15日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ヒタチ・エナジー・リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .55 -WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-572889「抵抗率勾配を有する絶縁体」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 9日国際公開、WO2020/007871、令和 3年12月 9日国内公表、特表2021-534536、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)7月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年7月2日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 1月22日 :34条補正の翻訳文の提出
令和4年 8月23日付け:拒絶理由通知書
令和4年11月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12月 5日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和5年 3月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 3月17日付け:令和5年3月6日付け手続補正書でした補正
の却下の決定、拒絶査定
令和5年 5月18日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和5年3月17日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
(新規事項)令和4年11月28日付け手続補正書でした補正は、次の点で翻訳文等(国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。))に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
上記補正は、請求項3の記載の一部を「前記第2の抵抗率の材料の粒子は、Cr2O3、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、TiO2、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイト、のうちのいずれかのまたは組合せの粒子を含む」という記載に変更する補正であるが、当該記載に関して、翻訳文等(段落【0015】、【0036】、【0059】、【0070】)には「低抵抗率材料(第2の抵抗率の材料)」としてCr2O3を採用することは開示されていないから、当該補正がなされた請求項3に記載した事項は、翻訳文等に記載した事項の範囲内にないことが明らかである。
第3 審判請求時に補正された特許請求の範囲
審判請求時の補正は、令和4年11月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲を、さらに、令和5年5月18日提出の手続補正書により補正するものであって、当該補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
複合絶縁体(1)であって、
・ 絶縁性の長尺コア(2)と、
・ 前記長尺コア(2)を取囲む第1の抵抗率の材料の保護層(3)とを備え、前記保護層(3)はシェッド形状を有する外面(4)を含み、前記複合絶縁体はさらに、
・ 前記長尺コア(2)と前記保護層(3)との間に配置されて前記保護層(3)を前記長尺コア(2)に接着させる接着プライマー層(5)を備え、前記接着プライマー層(5)はカップリング剤(6)および第2の抵抗率の材料の粒子(7)を含む第1の接着プライマー層(5)を含み、前記第2の抵抗率は前記第1の抵抗率よりも低く、前記接着プライマー層(5)は前記第2の抵抗率の材料の粒子(7)を含まない第2の接着プライマー層(5)をさらに備える、複合絶縁体。
【請求項2】
第2の抵抗率の材料の粒子(7)を含む前記接着プライマー層(5)の表面抵抗率は108~1014Ω/スクエアであり、好ましくは1010~1012Ω/スクエアである、請求項1に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項3】
前記第2の抵抗率の材料の粒子は、Cr2O3、
酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、TiO2、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイト、のうちのいずれかのまたは組合せの粒子を含む、請求項1または2に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項4】
前記カップリング剤(6)は、オルガノシランを含むシラン、チタン酸塩、オルトケイ酸エステルまたは金属オルトエステル、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項5】
前記接着プライマー層(5)中の前記第2の抵抗率の材料の粒子(7)の割合は、浸透粒子ネットワークを形成するのに十分に高く、<40体積%である、請求項1から4のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項6】
前記接着プライマー層(5)の厚みは0.01~500マイクロメートルであり、好ましくは0.1~100マイクロメートルである、請求項1から5のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項7】
前記保護層(3)は前記第1の抵抗率のポリマー基材を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項8】
前記保護層(3)はシリコーンゴムを含む、請求項7に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項9】
前記長尺コア(2)はガラス繊維強化複合管を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項10】
複合絶縁体(1)を製造する方法であって、前記方法は、
・ 溶媒と、カップリング剤(6)と、第1の抵抗率の材料の粒子(7)とを含む第1の溶液を調製すること(S1)と、
・ 絶縁性の長尺コア(2)の封体部表面の少なくとも一部に前記第1の溶液を塗布すること(S2)によって1つ以上の第1の接着プライマー層(5)を形成することと、
・ 前記封体部表面の残部に前記溶媒および前記カップリング剤(6)を含むが前記第1の抵抗率の材料の粒子(7)を含まない第2の溶液を塗布すること(S4)によって1つ以上の第2の接着プライマー層(5)を形成することと、
・ 前記長尺コア(2)上の前記第1および第2の接着プライマー層(5)の上に第2の抵抗率の材料の保護層(3)を塗布すること(S3)とを備え、前記第2の抵抗率は前記第1の抵抗率よりも高く、前記保護層(3)はシェッド形状を有する外面(4)を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の溶液を塗布すること(S2)は、前記長尺コア(2)の前記封体部表面の上に前記第1の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の溶液を塗布すること(S4)は、前記長尺コア(2)の前記封体部表面の上に前記第2の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む、請求項10または11に記載の方法。」
第4 当審の判断
1 審判請求時の補正について
審判請求時の補正の結果、特許請求の範囲の請求項3は、「Cr2O3、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)」との記載を含むものとされている。
一方、翻訳文等において、明細書の段落【0015】には、次の記載がある。
「いくつかの態様によれば、低抵抗率材料の粒子は、Cr2O3酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、TiO2、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイト、のうちのいずれかのまたは組合せの粒子を含む。」
ここで、「Cr2O3酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)」との記載が、酸化クロム(Cr2O3)と酸化鉄とで構成された単一の物質を記載したものではなく、酸化クロム及び酸化鉄の個別の記載である「Cr2O3、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)」の誤記であることは、Cr2O3、Fe2O3、Fe3O4がいずれも安定な酸化物であるという技術常識から、当業者には明らかである。
よって、審判請求時に補正された特許請求の範囲の請求項3に記載されている「Cr2O3、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)」については、実質的に翻訳文等に記載されているから、審判請求時の補正は、特許請求の範囲の請求項3について新規事項を追加する(翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入する)ものではない。
2 原査定について
原査定は、令和4年11月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項3に新規事項が追加されている旨を指摘するものであるところ、当該補正された特許請求の範囲をさらに補正した審判請求時の補正の前後で、請求項3の記載に実質的な差異はない。
そうすると、上記1で検討したように、審判請求時の補正が特許請求の範囲の請求項3について新規事項を追加するものではない以上、令和4年11月28日提出の手続補正書による補正も、特許請求の範囲の請求項3に新規事項を追加するものではない。
よって、原査定を維持することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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