特許拒絶査定不服審判
2025-006572
補正装置及びプログラム
- 審判番号
- 2025-006572
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-092736
- 請求日
- 2025年04月28日
- 審決日
- 2026年05月08日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本放送協会
- 【請求人代理人】弁理士法人キュリーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 樫本 剛
- 審判官 坂東 大五郎
- 分類
- P18 .55 -Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-92736「補正装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和5年7月21日出願公開、特開2023-101834〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年11月2日に出願した特願2018-207585号の一部を令和5年6月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和5年 6月 5日 :上申書の提出
令和6年 5月 9日付け:拒絶理由通知書
同年 7月16日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月14日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年10月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 1月21日付け:補正却下の決定、拒絶査定
同年 4月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和7年4月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年4月28日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
令和7年4月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、令和6年7月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~2を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1~2に補正するものであり、本件補正は、本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする次の補正を含むものである。
なお、下線部は補正箇所である。
〔本件補正前の請求項1〕
複数の参照画像を用いて双予測を行うことにより、対象のブロックに対応する予測画像のブロックを生成する動き補償予測部と、
前記双予測を行う場合に限り、前記複数の参照画像間の類似度を示す評価値を前記ブロックよりも小さい単位であって複数の画素からなる小ブロックごとに算出する評価部と、
前記対象のブロックに対応する予測残差を取得する取得部と、
前記取得された予測残差を前記予測画像のブロックと合成して前記対象のブロックを再構成する合成部と、を備え、
前記評価部は、前記複数の参照画像間の画素単位での差分絶対値を算出し、当該画素単位での差分絶対値に応じて前記評価値を算出し、
前記評価部が算出する前記評価値と閾値とを比較し、比較結果に応じて、前記合成部の合成対象を前記小ブロック単位で補正するために用いられる、補正装置。
〔本件補正後の請求項1〕
複数の参照画像を用いて双予測を行うことにより、対象のブロックに対応する予測画像のブロックを生成する動き補償予測部と、
前記双予測を行う場合に限り、前記複数の参照画像間の画素単位での差分絶対値を算出し、当該画素単位での差分絶対値に応じて算出する相似度を示す評価値を前記ブロックよりも小さい単位であって複数の画素からなる小ブロックごとに算出する評価部と、
前記対象のブロックに対応する予測残差を取得する取得部と、
前記取得された予測残差を前記予測画像のブロックと合成して前記対象のブロックを再構成する合成部と、を備え、
前記評価部は、前記評価値と閾値とを比較し、
前記比較結果は、前記合成部の合成対象を前記小ブロック単位で補正するために用いられる、補正装置。
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、評価部において前記ブロック(対象のブロック)よりも小さい単位である小ブロックごとに算出され、閾値と比較される「評価値」を、「前記複数の参照画像間の画素単位での差分絶対値を算出し、当該画素単位での差分絶対値に応じて算出する相似度を示す」ものに特定する事項(以下「補正事項」という。)を含むものである。
上記補正事項が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるかについて、以下検討する。
(1)当初明細書等の記載
当初明細書等には、補正事項に関連するものとして次の記載がある。なお、下線は当審において付されたものである。
「【0077】
評価部111は、符号化対象ブロック内の各画素位置ijの確度Rijからなるマップ情報をエントロピー符号化部103Aに出力する。」
「【0088】
確度並び替え部103dは、ソート部103aから入力された確度インデックス情報に基づいて、予測残差並び替え部103bと同様な方法で、評価部111から入力されたマップ情報を1次元に並び替える。具体的には、確度並び替え部103dは、確度の低い画素位置(すなわち、参照画像間の類似度の低い画素位置)から順にマップ情報を一次元の信号として出力する。この出力信号を、ここでは「確度列」と呼ぶ。確度並び替え部103dは、かかる確度列を判定部103eに出力する。
【0089】
判定部103eは、確度並び替え部103dから入力された確度列と、予測残差予測残差並び替え部103bから入力された量子化予測残差列の絶対値とから、確度列と量子化予測残差列との間の相関を表す相似度を求め、相似度が閾値Th以上(あるいは、より大きい場合)は、マップ情報に基づく並び替えの適用を示す信号を切替部103fに出力し、相似度が閾値Th未満(あるいは以下)の場合は、マップ情報に基づく並び替えの不適用を示す信号を切替部103fに出力する。
【0090】
ここで、確度列及び量子化予測残差列から求める相似度の例1乃至3を以下に示す。以下では、変換スキップブロックの画素数をN、確度列をpi、確度列を逆順に並べた数列(逆順確度列)をqi(すなわち、qi=pN-1-i)、量子化予測残差列をdi、求める相似度をRとして説明する。iはインデックスであり、の範囲を取る。
【0091】
(1)判定部103eで用いる相似度の例1
相似度として、逆順確度列と、量子化予測残差列の絶対値とのコサイン類似度を用いた例を示す。
【0092】
【数1】
[図:0001437081000001.jpg]
【0093】
(2)判定部103eで用いる相似度の例2
別の例として、L2距離を用いた相似度の例を示す。
【0094】
【数2】
[図:0001437081000002.jpg]
【0095】
ここで、Qiはqiを0~1の範囲に正規化した確度列である(0が最も確度が低く、1が最も確度が高い)。確度の正規化は、評価部111における正規化と同様である。なお、確度列がもともと正規化されていた場合はQi=qiとなる。また、Diは、量子化予測残差列の絶対値を0~1の範囲に正規化した数列である。対象とする画像フォーマットの取り得る最大の画素値をminL、最小値をmaxLとしたとき、Diは、例えば、
【0096】
【数3】
[図:0001437081000003.jpg]
【0097】
として求めることができる。
【0098】
(3)判定部103eで用いる相似度の例3
さらに別の例としてL1距離を用いた相似度の例を示す。
【0099】
【数4】
[図:0001437081000004.jpg]
【0100】
このように相似度としては、2つの数列の間で計算可能なさまざまな類似度や距離を用いることができる。類似度(2つの数列が似ているほど値が大きい指標)の場合は正規化した値を相似度として用いればよく、距離(2つの数列が似ているほど値が小さくなる指標)の場合は正規化した距離を1から減算した値を相似度として用いればよい。」
「【0150】
<12.変更例3>
上述した実施形態において、予測残差を画素単位で並び替える一例を説明したが、予測残差を画素グループ(小ブロック)単位で並び替えてもよい。かかる小ブロックは、4×4の画素からなるブロックであり、CGと称されることがある。
【0151】
図13は、実施形態の変更例3に係る画像符号化装置1Bの構成を示す図である。図13に示すように、画像符号化装置1Bは、予測残差を画素グループ(小ブロック)単位で並び替える並び替え部112を備える。並び替え部112は、対象ブロック(CU)が双予測を用いて予測画像を生成するものであって、当該CUが変換スキップモードを適用するものである場合には、上述した誤差マップに基いて、当該CUの予測残差に対して小ブロック単位(4×4)での並び換えを行う。
【0152】
図14は、実施形態の変更例3に係る並び替え部112の動作の一例を示す図である。
【0153】
図14(A)に示すように、画像符号化装置1Bの減算部101は、CUに対応する予測残差を算出する。図14(A)の例では、CU内の右上領域に予測残差が存在する。CU内の右上領域は、参照画像間の類似度が低い領域であって、予測精度(確度)が低い領域であるとみなすことができる。
【0154】
図14(B)に示すように、画像符号化装置1Bの評価部111又は並び替え部112は、誤差マップを4×4のCG単位に分割し、CG単位での誤差の平均値CGmapを下記の式(4)により算出する。
【0155】
【数5】
[図:0001437081000005.jpg]
【0156】
そして、並び替え部112は、誤差の平均値CGmapが高い順にCGを並び替えてインデックスを付与する。言い換えると、並び替え部112は、参照画像間の類似度が低い順にCGを並び替えてインデックスを付与する。図14(B)の例において、各CG内の数字は並び替え後のインデックスを表す。右上領域のCGの平均値CGmapが大きいため、スキャン(符号化)の優先順位が高く設定されている。次に、並び替え部112は、図14(C)に示すように、インデックスが小さい順にスキャン(符号化)されるようにCGを並べ替える。その結果、並び替え部112は、図14(D)に示すように、CG単位で並び替えた予測残差を量子化部102bに出力する。
【0157】
量子化部102bは、並び替え部112から入力された予測残差に対して量子化を行って、量子化した量子化予測残差をエントロピー符号化部103Bに出力する。エントロピー符号化部103Bは、誤差の平均値CGmapが高い順にCGを符号化して符号化データを生成する。
【0158】
なお、並び替え部112は、逆量子化部104aが出力する復元予測残差に対して、元のCGの並び順に戻すようにCG単位で並び替えを行い、CG単位で並び替えた復元予測残差を合成部105に出力する。
【0159】
図15は、実施形態の変更例3に係る画像復号装置2Bの構成を示す図である。図15に示すように、画像復号装置2Bは、逆量子化部201aが出力する復元予測残差をCG単位で並び替える並び替え部209を備える。
【0160】
並び替え部209は、対象ブロック(CU)が双予測を用いて予測画像を生成するものであって、当該CUが変換スキップモードを適用するものである場合には、上述した誤差マップに基いて、当該CUの予測残差に対してCG単位での並び換えを行う。
【0161】
具体的には、画像復号装置2Bの評価部208又は並び替え部209は、誤差マップを4×4のCG単位に分割し、CG単位での誤差の平均値CGmapを上記の式(5)により算出する。そして、並び替え部209は、CG単位での誤差の平均値CGmapに基づいて、画像復号装置2Aの並び替え部112が行う並び替え処理の逆処理を行い、並び替え後の予測残差を合成部202に出力する。
【0162】
なお、本変更例において、相似度に基づく判定及び切替を行う場合は、画素グループ(CG)内の予測残差の絶対値の平均値を、上述した実施形態における予測残差列の1つの要素として扱えばよい。」
また、審判請求人は、審判請求書の「3.補正の概要」において、
「 請求項1及び2を、本願明細書の段落[0069]-[0073]、[0089]、[0140]-[0150]の記載に基づいて補正致しました。
これらの補正は、いずれも出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であって新規事項を追加するものではなく、且つ特許請求の範囲の限定的減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的としたものであるため、適法な補正であると思料致します。」
と主張しているところ、当初明細書等の【0069】~【0073】、【0140】~【0149】の記載は次のとおりである。
「【0069】
差分算出部111aは、動き補償予測部109から入力された参照画像1及び2の差分値(具体的には、差分値の絶対値。以下同様)を画素単位で算出し、算出した差分値を正規化部111bに出力する。
【0070】
ここで、差分値が大きいほど類似度が低く、予測の確度が低いといえる。差分値が小さいほど類似度が高く、予測の確度が高いといえる。差分算出部111aは、各参照画像に対してフィルタ処理を行ったうえで差分値を算出してもよい。差分算出部111aは、二乗誤差等の統計量を算出し、かかる統計量を出力してもよい。
【0071】
正規化部111bは、差分算出部111aから入力された画素単位での差分値を、符号化対象ブロック内で最大となる差分値(すなわち、符号化対象ブロック内の差分値の最大値)で正規化して出力する。正規化部111bは、量子化の粗さを定める量子化パラメータ(Qp)と、直交変換係数ごとに異なる量子化値が適用される量子化行列との少なくとも一方に基づいて、正規化部111bから入力された差分値を調整して出力してもよい。
【0072】
評価部111は、符号化対象ブロック内の画素単位での確度Rijを例えば下記の式(1)のように算出する。
【0073】
Rij=1-(abs(Xij-Yij)/maxD×Scale(Qp)) ・・・(1)
但し、Xijは参照画像1の画素位置ijの画素値であり、Yijは参照画像2の画素位置ijの画素値であり、absは絶対値を得る関数である。」
「【0140】
また、予測残差とマップ情報との間の相関を表す相似度が閾値未満である場合は、予め規定された順に並び替えを行うことにより、符号化効率をさらに改善することができる。具体的には、複数の参照画像間の類似度の低い画素位置は大きな予測残差を有するという仮定が成立しないような場合であって、相似度が閾値未満である場合には、マップ情報に基づく並び替えを不適用とし、従来の対角スキャンに従った順に量子化予測残差を符号化する。これにより、マップ情報に基づく並び替えを適用することによる符号化効率の悪化を回避できる。
【0141】
<10.変更例1>
図12は、実施形態の変更例1に係る重複動き補償の一例を示す図である。
【0142】
画像符号化装置1Aの評価部111及び画像復号装置2Aの評価部208は、以下に示す方法でマップ情報として誤差マップを生成し、並べ替え部112に入力してもよい。誤差マップを並び替え部112に入力する場合には、誤差マップの値が大きい領域を類似度が低い領域とし、誤差マップの値が小さい領域を類似度が高い領域として、並べ替え部112は量子化予測残差の並び換え処理を行う。
【0143】
双予測モードの予測画像の生成に用いる2つの参照画像(参照先ブロック)の輝度信号をL0[i,j]及びL1[i,j](但し、[i,j]は対象ブロック内の座標)とすると、下記の式(2)により誤差マップmap[i,j]及びその最大値max_mapを算出する。
【0144】
map [i,j] = abs (L0 [i,j] - L1 [i,j])
max_map = max (map [i,j]) ・・・(2)
【0145】
式(2)のmax_mapが6ビット精度を超える(64を超える)場合には、下記の式(3)により、max_mapが6ビット精度に収まるように設定したshiftにより誤差マップ及び最大値を更新する。
【0146】
max_map = max_map >> shift
map [i,j] = map [i,j] >> shift ・・・(3)
【0147】
<11.変更例2>
画像符号化装置1Aの動き補償予測部109及び画像復号装置2Aの動き補償予測部206は、対象ブロック(CU)を複数の小ブロックに分割し、小ブロックごとに異なる動きベクトルを適用可能とし、小ブロックごとに片方向予測、双予測を切り替え可能であってもよい。かかる場合、片方向予測及び双方向予測の両方を用いて予測画像を生成するCUに対しては、画像符号化装置1Aの評価部111及び画像復号装置2Aの評価部208がマップ情報を算出しないものとしてもよい。一方、全ての小ブロックについて双予測により予測画像を生成している場合には、画像符号化装置1Aの評価部111及び画像復号装置2Aの評価部208は、マップ情報を生成する。
【0148】
また、画像符号化装置1Aの動き補償予測部109及び画像復号装置2Aの動き補償予測部206は、動きベクトルの異なるブロック境界における予測画像の不連続性低減のために、重複動き補償(OBMC:Ooverlapped Block Motion Compensation)を行ってもよい。画像符号化装置1Aの評価部111及び画像復号装置2Aの評価部208は、マップ情報生成の際に、OBMCによる参照画素の補正を考慮してもよい。
【0149】
例えば、OBMCの補正に用いる周囲のブロックの予測モードが双予測である場合には、画像符号化装置1Aの評価部111及び画像復号装置2Aの評価部208は、OBMCの補正が影響する予測画像の領域について、周辺ブロックの双予測の予測画像生成に用いる参照画像(L0及びL1)の動きベクトルを用いてマップ情報を補正する。具体的には、ブロック境界領域について、隣り合うブロックの動きベクトルが双予測である場合には、隣り合うブロックのマップ情報との位置に応じた加重平均をする。隣り合うブロックがイントラモードの場合や、片方向予測の場合には、マップ情報の補正は行わない。図12のケースでは、上側のブロック境界についてはL0aとL1aを用いてマップ情報を生成し、その下側の領域について(当該CUと重なり合う領域について)当該CUのマップ情報との加重平均をする。下側や右側、左側CUの予測モードが片方向予測であるので、それらのCUと重なり合う領域についてはマップ情報の補正は行わない。」
(2)補正事項について
上記(1)の【0089】の記載によれば、「相似度」は、「相似度が閾値Th以上(あるいは、より大きい場合)」又は「相似度が閾値Th未満(あるいは以下)の場合」のいずれであるかを判断するために、閾値Thと比較されるものと解されるから、「相似度を示す評価値」が閾値と比較されるものであることまでは、当初明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、上記(1)の【0077】、【0088】~【0089】の記載によれば、「相似度」は、「符号化対象ブロック内の各画素位置ijの確度Rijからなるマップ情報」を確度の低い画素位置(すなわち、参照画像間の類似度の低い画素位置)から順に一次元の信号とした「確度列」と、「量子化予測残差列」との間の相関を表すもの(例えば、【0090】~【0100】の【数1】~【数4】において「R」として示されているもの)であるから、符号化対象ブロック毎に1つの値が算出されるものであって、対象のブロックよりも小さい単位である小ブロックごとに算出されるものではない。
なお、上記(1)の【0150】、【0162】には、予測残差を画素単位ではなく画素グループ(小ブロック)単位で並び替えてもよいこと、及び、相似度に基づく判定を行う場合に、画素グループ内の予測残差の絶対値の平均値を、上述した実施形態における予測残差列の1つの要素として扱えばよいことが記載されているが、これらの構成を採用した場合には、上記確度列及び量子化予測残差列を構成する単位が対象のブロックよりも小さい単位である小ブロック単位となるだけであるから、当該両列間の相関を表す相似度(R)は、上記画素単位の場合と同様に、符号化対象ブロック毎に1つの値が算出されるものとなり、小ブロックごとに算出されるものとはならない。
また、上記(1)の【0147】には、対象ブロック(CU)を複数の小ブロックに分割し、小ブロックごとに片方向予測、双予測を切り替え可能であってもよく、全ての小ブロックについて双予測により予測画像を生成しているCUに対してマップ情報を生成することが記載されているが、当該構成を採用した場合にも、上記マップ情報を一次元の信号とした確度列及び量子化予測残差列を構成する単位が対象のブロックよりも小さい単位である小ブロック単位となるだけであるから、当該両列間の相関を表す相似度(R)は、上記画素単位の場合と同様に、符号化対象ブロック毎に1つの値が算出されるものとなり、小ブロックごとに算出されるものとはならない。
さらに、当初明細書等における上記以外の箇所にも、「相似度を示す評価値」が、対象のブロックよりも小さい単位である小ブロックごとに算出されるものであることは記載されていない。
また、「相似度を示す評価値」が対象のブロックよりも小さい単位である小ブロックごとに算出されるものであることは、当初明細書等から自明な事項でもない。
以上から、「相似度を示す評価値」が、対象のブロックよりも小さい単位である小ブロックごとに算出されるものであること、すなわち、対象のブロックよりも小さい単位である小ブロックごとに算出される「評価値」が「相似度を示す」ものであることは、当初明細書等に記載されていないし、当初明細書等から自明な事項でもない。
よって、上記補正事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではない。
なお、審判請求人は、審判請求書の「4.1.理由(新規事項)について」において、
「・・・手続補正書において、補正前の請求項1における「前記複数の参照画像間を用いた双予測の予測精度を評価する評価値」との記載を「前記複数の参照画像間の画素単位での差分絶対値を算出し、当該画素単位での差分絶対値に応じて算出する相似度を示す評価値」との記載に補正致しました。
このような補正により、「閾値」と比較する対象が「前記複数の参照画像間を用いた双予測の予測精度を評価する評価値」ではなく、「相似度を示す評価値」となりますので、ご指摘の記載不備は解消したと思料致します。」
との主張を行っている。
しかしながら、先に示したとおり、本件補正後の請求項1における評価値は、対象のブロックよりも小さい単位である小ブロックごとに算出されるものとされており、そのような評価値が相似度を示すものであることは、当初明細書等に記載されていないし、当初明細書等から自明な事項でもない。
よって、審判請求人による上記主張は採用することができない。
3 本件補正についてのむすび
上記2のとおり、上記補正事項は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものではなく、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~2に係る発明は、令和6年7月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
なお、下線部は補正箇所である。
〔本願発明〕
複数の参照画像を用いて双予測を行うことにより、対象のブロックに対応する予測画像のブロックを生成する動き補償予測部と、
前記双予測を行う場合に限り、前記複数の参照画像間の類似度を示す評価値を前記ブロックよりも小さい単位であって複数の画素からなる小ブロックごとに算出する評価部と、
前記対象のブロックに対応する予測残差を取得する取得部と、
前記取得された予測残差を前記予測画像のブロックと合成して前記対象のブロックを再構成する合成部と、を備え、
前記評価部は、前記複数の参照画像間の画素単位での差分絶対値を算出し、当該画素単位での差分絶対値に応じて前記評価値を算出し、
前記評価部が算出する前記評価値と閾値とを比較し、比較結果に応じて、前記合成部の合成対象を前記小ブロック単位で補正するために用いられる、補正装置。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、概略次の理由を含むものである。
(新規事項)
本願発明の「前記評価値と閾値とを比較し、」という事項(以下「前回補正事項」という。)は、当初明細書等には記載されていないし、自明でもないから、令和6年7月16日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3 判断
本願発明において、閾値と比較される「前記評価部が算出する前記評価値」とは、「前記複数の参照画像(双予測に用いられる複数の参照画像)間の類似度を示す評価値」のこととされている。
当初明細書等に相似度が閾値と比較されることが記載されていることは、上記第2の2(2)で示したとおりであるが、前記「複数の参照画像(双予測に用いられる複数の参照画像)間の類似度」を閾値と比較することは、当初明細書等に記載されていない。
また、双予測に用いられる複数の参照画像間の類似度を閾値と比較することは、当初明細書等から自明な事項でもない。
したがって、本願発明における「前記評価値と閾値とを比較し、」との構成は、当初明細書等に記載されていないし、当初明細書等から自明な事項でもない。
なお、審判請求人は、令和6年7月16日付け意見書の「1.補正について」において、
「 請求項1は、本願明細書の[0089]-[0101]、[0138]-[0140]等の記載に基づいて補正をしたものです。
これらの補正は、いずれも出願当初明細書等に記載された事項の範囲内であって、新規事項を追加するものではなく、適法な補正であると思料致します。」
との主張を行っている。
前記【0089】~【0100】の記載は、上記第2の2(1)に記載したとおりであり、前記【0101】、【0138】~【0139】の記載は次のとおりである。
「【0101】
なお、相似度と比較する閾値Thは、あらかじめ定めた定数であってもよいし、可変の値であってもよい。可変の値とする場合、符号化データに当該閾値を含めて伝送してもよい。」
「【0138】
<9.実施形態のまとめ>
画像符号化装置1Aにおいて、評価部111は、複数の参照画像間の類似度を画素単位で評価し、評価結果の情報(マップ情報)をエントロピー符号化部103Aに出力する。エントロピー符号化部103Aは、量子化予測残差とマップ情報との間の相関を表す相似度を算出し、相似度が閾値以上である場合は、マップ情報に基づいて、量子化部102bから入力された量子化予測残差を、参照画像間の類似度の低い画素位置から順に符号化する。参照画像間の類似度の低い画素位置から順に量子化予測残差を符号化することにより、有意係数を優先的に符号化し、より早期に終了フラグを付与することができる。これにより、変換スキップブロックに対して効率的なエントロピー符号化を行うことを可能とし、符号化効率を改善することができる。
【0139】
画像復号装置2Aにおいて、評価部208は、複数の参照画像間の類似度を画素単位で評価し、評価結果の情報(マップ情報)をエントロピー符号復号部200Aに出力する。エントロピー符号復号部200Aは、符号化データを復号して画素単位で量子化予測残差を取得し、量子化予測残差とマップ情報との間の相関を表す相似度を算出し、相似度が閾値以上である場合は、マップ情報に基づいて量子化予測残差を並べ替えて出力する。このように、評価部208による評価の結果に基づいて量子化予測残差を並べ替えることにより、並び替えの詳細を指定する情報が画像符号化装置から伝送されなくても、エントロピー符号復号部200Aが自律的に量子化予測残差を並べ替えることができる。これにより、並び替えの詳細を指定する情報を画像符号化装置1から伝送する必要がないため、符号化効率の低下を回避することができる。」
しかしながら、先に示したとおり、本願発明における「前記評価値と閾値とを比較し、」との構成は、当初明細書等(上記主張において示されている記載箇所を含む)に記載されていないし、当初明細書等から自明な事項でもないから、審判請求人による上記主張は採用することができない。
したがって、前回補正事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、令和6年7月16日にされた手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
第4 むすび
以上のとおり、令和6年7月16日にされた手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-006572