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特許拒絶査定不服審判

2022-010983

二次電池およびその製造方法

審判番号
2022-010983
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-509159外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年07月14日
審決日
2023年09月07日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-509159「二次電池およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月 4日国際公開、WO2018/180372〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、2018年3月9日(優先権主張 2017年3月28日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年9月16日付け:拒絶理由通知
令和3年11月22日 :手続補正書、意見書の提出
令和4年4月14日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年7月14日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年7月14日の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

令和4年7月14日の手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正について

令和4年7月14日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前には、

「【請求項1】
正極と、
前記正極と対向配置された負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
を有し、
前記正極および前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の少なくとも片面に形成された活物質層と、を有し、かつ、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記活物質層の表面に形成された絶縁層をさらに有し、
前記セパレータは、200℃での熱収縮率が5%未満であり、かつ、ガーレー値が0.3秒/100ml以下である二次電池。」

とあったものを、

「【請求項1】
正極と、
前記正極と対向配置された負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
を有し、
前記正極および前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の少なくとも片面に形成された活物質層と、を有し、かつ、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記活物質層の表面に形成された絶縁層をさらに有し、
前記セパレータは、200℃での熱収縮率が5%未満であり、かつ、ガーレー値が0.3秒/100ml以下であり、
前記正極の活物質層は、式(A)で表される正極活物資を含む二次電池。
LiyNi(1-x)MxO2 (A)
(但し、0≦x≦0.4、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及Bからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)」

とする補正を含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

2.補正の適否

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である正極の「活物質層」について、「式(A)で表される正極活物資を含む」

「(LiyNi(1-x)MxO2 (A)
(但し、0≦x≦0.4、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及Bからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)」ことの限定を付加するものである。

よって、上記補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。

(1)引用例の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由に引用された特開2017-50102号公報(以下、「引用例」という。)には、「二次電池」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。

ア.「【請求項1】

第1の金属箔およびその金属箔上に形成された第1の活物質層を有する第1の電極と、

第2の金属箔およびその金属箔上に形成された第2の活物質層を有し、前記第2の活物質層の面積は平面視で見て前記第1の活物質層の面積よりも大きく形成されている、前記第1の電極とは極性の異なる第2の電極と、

両電極の間に介在するように前記第1の電極上に形成された絶縁層と、

を備え、

前記第1の電極は、前記第1の金属箔上に前記第1の活物質層が形成された領域と、活物質層が形成されていない電気的接続部以外の領域とを有しており、

積層体の切断面を見たときに、前記第1の金属箔の端部が前記第2の金属箔の端部よりも外側に延出しており、かつ、

前記絶縁層は、前記第1の活物質層上に形成されるとともに、前記活物質が形成されていない領域においては前記第2の電極の端部よりも少なくとも外側となる位置まで形成されていることを特徴とする、二次電池。

・・・・(中 略)・・・・

【請求項7】

さらに、

前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。

【請求項8】

前記第1の電極が正極であり、前記第2の電極が負極である、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。」

イ.「【0011】

本発明の一形態に係るフィルム外装電池1は、積層体として構成された電池要素20と、それを電解質と一緒に収容するフィルム外装体10と、正極タブ51および負極タブ52(以下、これらを単に「電極タブ」ともいう)とを備えるリチウムイオン二次電池である。

【0012】

電池要素20は、複数の正極30と複数の負極40とがセパレータ25(省略してもよい)を間に挟んで交互に積層されたものである。正極30は、正極金属箔31の両面に正極活物質層32が形成されており、負極40も、同様に、負極金属箔41の両面に負極活物質層42が形成されている。電池要素20の全体的な外形は、特に限定されるものではないが、この例では偏平な略直方体である。」

ウ.「【0017】

セパレータは耐熱性を有するものが好ましく、具体的には、溶融または軟化が生じる融点および3%熱収縮する温度が200℃以下でないことが好ましい。セパレータが溶融するとセパレータの空隙が小さくなり、電解液のイオン伝導性が維持できなる。さらに完全にセパレータが溶融すると電極間の絶縁性を維持できなくなるためである。また、セパレータが収縮するとやはり電極間の絶縁性を維持できなくなる。この収縮は200℃において5%以下が好ましく3%以下が更に好ましい。」

エ.「【0030】

[正極]

正極は、電池内における高電位側の電極であり、金属箔で形成される正極金属箔と、正極金属箔の両面に塗工された正極活物質とを有している。正極活物質は正極用結着剤によって正極金属箔を覆うように結着される。正極金属箔は、正極端子と接続する延長部を有して形成され、この延長部には正極活物質は塗工されない。

【0031】

正極活物質としては、リチウムを吸蔵放出し得る材料であれば特に限定されないが、高エネルギー密度化の観点からは、高容量の化合物を含むことが好ましい。高容量の化合物としては、リチウム酸ニッケル(LiNiO2)またはリチウム酸ニッケルのNiの一部を他の金属元素で置換したリチウムニッケル複合酸化物が挙げられ、下式(A)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物が好ましい。

【0032】

LiyNi(1-x)MxO2 (A)

(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)

【0033】

高容量の観点では、Niの含有量が高いこと、即ち式(A)において、xが0.5未満が好ましく、さらに0.4以下が好ましい。このような化合物としては、例えば、LiαNiβCoγMnδO2(0<α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、LiαNiβCoγAlδO2(0<α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)などが挙げられ、特に、LiNiβCoγMnδO2(0.75≦β≦0.85、0.05≦γ≦0.15、0.10≦δ≦0.20)が挙げられる。より具体的には、例えば、LiNi0.8Co0.05Mn0.15O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.8Co0.1Al0.1O2等を好ましく用いることができる。」

オ.「【0058】

(絶縁層)

絶縁層70は、正極活物質層32が形成された領域31aと、活物質層32が形成されていない領域31bとを覆うように形成されている。図4では絶縁層70が全体にわたって略均一な厚みである例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図7に示すように、絶縁層70の表面が略同一高さとなるように形成され、厚みは部分によって異なっている形態としてもよい。

【0059】

絶縁層70は、一形態で、正極活物質層32の全面を覆うように形成される。しかしながら必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばセパレータ25が配置されている場合にはセパレータ25によって電極どうしが絶縁されることとなるので、絶縁層70を全面的に形成する必要はなく、したがって、絶縁層70を正極活物質層32上の一部にのみ形成するようにしてもよい。具体的には、例えば、正極活物質層32の外周部に沿うような略ロ字状の絶縁層としてもよい。この場合、絶縁層が形成されない開口部領域についてはセパレータ25によって絶縁するようにすればよい。」

カ.「

[図:0001404221000001.jpg]

」

上記「ア.」ないし「カ.」から以下のことがいえる。

・上記引用例に記載の「二次電池」は、上記「ア.」、「イ.」の記載、及び「カ.」の図3、4によれば、第1の金属箔(正極金属箔)およびその金属箔上に形成された第1の活物質層(正極活物質層)を有する第1の電極(正極)と、第2の金属箔(負極金属箔)およびその金属箔上に形成された第2の活物質層(負極活物質層)を有する第2の電極(負極)と、第1の電極(正極)と第2の電極(負極)との間に配置されたセパレータと、を備え、両電極の間に介在するように第1の電極(正極)上に絶縁層が形成されてなるものである。

・上記「オ.」の記載、及び「カ.」の図4によれば、第1の電極(正極)上に形成された絶縁層は、第1の活物質層(正極活物質層)の全面を覆うように形成されてなるものである。

・上記「ウ.」の記載によれば、セパレータは耐熱性を有するものが好ましく、熱収縮が200℃において好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。

・上記「エ.」の記載によれば、正極活物質は式 LiyNi(1-x)MxO2(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物が好ましく、高容量の観点ではNiの含有量が高いこと、即ち式中のxが0.4以下がさらに好ましく、このような化合物は例えば、LiNi0.8Co0.05Mn0.15O2等である。

以上のことから、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「正極金属箔およびその金属箔上に形成された正極活物質層を有する正極と、負極金属箔およびその金属箔上に形成された負極活物質層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、を備え、
前記正極上には前記正極活物質層の全面を覆うように形成された絶縁層をさらに備え、
前記セパレータは、熱収縮が200℃においてより好ましくは3%以下であり、
前記正極における正極活物質は、式 LiyNi(1-x)MxO2(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物であり、高容量の観点では式中のxが0.4以下がより好ましく、例えばLiNi0.8Co0.05Mn0.15O2である、二次電池。」

(2)対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア.二次電池について

引用発明における「正極」、「負極」、正極と負極との間に配置された「セパレータ」は、それぞれ本願補正発明でいう「正極」、「負極」、正極と負極との間に配置された「セパレータ」に相当し、引用発明における「負極」にあっても、正極と対抗配置されていることは自明なことである。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「正極と、前記正極と対向配置された負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、を有」するものである点で一致する。

また、引用発明における「正極」は、正極金属箔およびその金属箔上に形成された正極活物質層を有するものであるところ、かかる「正極金属箔」、その金属箔上に形成された「正極活物質層」は、それぞれ本願補正発明でいう「集電体」、集電体の少なくとも片面に形成された「活物質層」に相当し、同様に、引用発明における「負極」は、負極金属箔およびその金属箔上に形成された負極活物質層を有するものであるところ、かかる「負極金属箔」、その金属箔上に形成された「負極活物質層」は、それぞれ本願補正発明でいう「集電体」、集電体の少なくとも片面に形成された「活物質層」に相当

する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記正極および前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の少なくとも片面に形成された活物質層と、有」する点でも一致する。

イ.絶縁層について

引用発明における「絶縁層」は、正極活物質層の全面を覆うように形成されてなるものであり、本願補正発明でいう正極の活物質層の表面に形成された「絶縁層」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記活物質層の表面に形成された絶縁層をさらに有」する点で一致する。

ウ.セパレータについて

引用発明における「セパレータ」は、熱収縮が200℃においてより好ましくは3%以下であり、本願補正発明で特定する「5%未満」の範囲に含まれる。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記セパレータは、200℃での熱収縮率が5%未満」である点で共通する。

ただし、セパレータについて、本願補正発明では「ガーレー値が0.3秒/100ml以下」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。

エ.正極活物質について

引用発明における「正極活物質」は、式 LiyNi(1-x)MxO2(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物であり、高容量の観点では式中のxが0.4以下がより好ましく、例えばLiNi0.8Co0.05Mn0.15O2であるところ、かかる「LiNi0.8Co0.05Mn0.15O2」は、本願補正発明でいう式(A)である「LiyNi(1-x)MxO2」においてx=0.2、y=1、MがCo及びMnである場合に相当し、xの値とy値はそれぞれ本願補正発明で特定する「0≦x≦0.4」、「0<y≦1.2」の範囲に含まれる。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記正極の活物質層は、式(A)で表される正極活物資を含む」

「LiyNi(1-x)MxO2 (A)
(但し、0≦x≦0.4、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及Bからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)」点で一致するといえる。

よって、本願補正発明と引用発明とは、

「正極と、
前記正極と対向配置された負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
を有し、
前記正極および前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の少なくとも片面に形成された活物質層と、を有し、かつ、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記活物質層の表面に形成された絶縁層をさらに有し、
前記セパレータは、200℃での熱収縮率が5%未満であり、
前記正極の活物質層は、式(A)で表される正極活物資を含む二次電池。
LiyNi(1-x)MxO2 (A)
(但し、0≦x≦0.4、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及Bからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]

セパレータについて、本願補正発明では「ガーレー値が0.3秒/100ml以下」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。

(3)判断

上記相違点について検討する。

本願補正発明がセパレータのガーレー値の上限値を「0.3秒/100ml」に特定することに関して、本願明細書には、段落【0101】に唯一の実施例におけるガーレー値が「0.3秒/100ml」であることが記載されているものの、段落【0076】に「セパレータ13は、200℃での熱収縮率が5%未満であり、かつ、ガーレー値が10秒/100ml以下であるように構成される。」と記載されており、「0.3秒/100ml」を上限値とすることについての記載はないことを踏まえると、上限値の「0.3秒/100ml」に臨界的意義を認めることはできない。

そして、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2012-132121)には、非水系エネルギーデバイス用の熱収縮率が小さい(1%以下)セパレータであって、ガーレー透気度は小さいほどイオンの移動がおこりやすく、電気的内部抵抗が高くならないことから、ガーレー透気度が低い値のものを用いる(実施例では1.6~6.4s/100ml)ようにした技術事項が記載(特に段落【0009】、【0018】~【0019】、【0043】~【0053】を参照)されているといえ、引用発明においても電気的内部抵抗が低い方が望ましいことは当然であるから、かかる技術事項を踏まえ、セパレータのガーレー値(ガーレー透気度)が極力低いもの、例えば0.3秒/100ml以下のものを用い、相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

ここで、請求人は審判請求書において、「引用文献1に記載の発明は、『電極のバリが対極に接触することにより生じうる問題の発生を防止』([0006])することを目的とし、正極の活物質上に絶縁層を形成するものですが、絶縁層について段落[0059]には、正極と負極との間にセパレータが配置されている場合は、絶縁層を正極活物質層の前面を覆うように形成する必要はなく、正極活物質層の外周部に沿って略ロ字状に形成されることが記載されています。よって、引用文献1に記載の二次電池において引用文献2に記載のセパレータを適用した場合は、絶縁層は活物質層の外周部に沿って形成されていると考えるのが妥当です。このことは、引用文献1に記載の発明の本質が、電極の側縁部に生じるバリによる短絡を防止することを目的としてなされたものであることからも明らかです。しかし、引用文献2に記載のセパレータは、上述のように低いガーレー値を有しており、そのようなセパレータを、活物質層が外周部に沿って絶縁層が形成された電極間のセパレータとして用いたとしても、金属析出等による内部短絡を抑制することは困難であり、本願発明の目的に反する結果となることが十分に予想されます。」などと主張している(なお、下線を付した記載部分は「引用文献1に記載の発明」の誤記であると解される。)。

しかしながら、引用文献1の段落【0059】には「絶縁層70は、一形態で、正極活物質層32の全面を覆うように形成される。しかしながら必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばセパレータ25が配置されている場合にはセパレータ25によって電極どうしが絶縁されることとなるので、絶縁層70を全面的に形成する必要はなく、したがって、絶縁層70を正極活物質層32上の一部にのみ形成するようにしてもよい。具体的には、例えば、正極活物質層32の外周部に沿うような略ロ字状の絶縁層としてもよい。」と記載されているのであって、引用文献1に記載された発明において、セパレータを用いる場合に、絶縁層を正極活物質層の全面を覆うように形成するか、あるいは正極活物質層上の一部のみ(例えば正極活物質層の外周部に沿うような略ロ字状)に形成するかは任意であり、正極活物質層の外周部に沿って形成しなければ発明の課題を解決できないといった事情が認められるわけでもないことから、セパレータを用いる場合の引用文献1に記載された発明が、正極活物質層の外周部に沿って形成される絶縁層を備える態様だけに限られるものではないことは明らかである。

よって、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願補正発明が奏する効果についてみても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

3.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

令和4年7月14日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年11月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
正極と、
前記正極と対向配置された負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
を有し、
前記正極および前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の少なくとも片面に形成された活物質層と、を有し、かつ、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記活物質層の表面に形成された絶縁層をさらに有し、
前記セパレータは、200℃での熱収縮率が5%未満であり、かつ、ガーレー値が0.3秒/100ml以下である二次電池。」

2.原査定の概要

本願の請求項1に対する原査定(令和4年4月14日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1:特開2017-50102号公報
引用文献2:特開2012-132121号公報

3.引用例、引用発明

原査定の拒絶の理由で引用された引用例(引用文献)、及び引用発明は、前記「第2 [理由2]2.(1)」に記載したとおりである。

4.対比・判断

本願発明は、前記「第2 [理由]2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である正極の「活物質層」について、「式(A)で表される正極活物資を含む」

「(LiyNi(1-x)MxO2 (A)
(但し、0≦x≦0.4、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及Bからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)」ことの限定を省いたものに相当する。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由]2.(3)」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-010983

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