2022-006698
電気回路装置の放熱構造
- 審判番号
- 2022-006698
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-531962外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月02日
- 審決日
- 2023年02月20日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デンカ株式会社
- 【請求人代理人】アクシス国際弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
本願は,2017年(平成29年) 8月 2日(優先権主張 平成28年 8月 2日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明は、令和3年 9月 9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】電気回路装置の外部へ露出する放熱板と、伝熱部材と、冷却器とが積層構造をなすように配置されて含まれる、電気回路装置の放熱構造であって、前記伝熱部材が、平均長径が3~60μm、アスペクト比が5~30であるセラミックス一次粒子が3次元的に一体構造をなしているセラミックス焼結体に樹脂組成物が含浸しているセラミックス樹脂複合体であり、前記伝熱部材が、前記放熱板および前記冷却器のうちの少なくとも一方と直接接触して積層するように配置されることを特徴とする、電気回路装置の放熱構造。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定(令和 4年 1月27日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
「理由2.(特許法第29条第2項)この出願の請求項1~5に係る発明は、この出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。請求項1~3については、引用文献1、2請求項4、5については、引用文献1~3記1.特開2015-96456号公報2.国際公開第2014/199650号(周知技術を示す文献)3.特開2005-150420号公報(周知技術を示す文献) 」
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1(特開2015-96456号公報)の記載
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を用いた放熱部材に関するものである。」
「【0003】両面放熱パワーモジュールでは、パワー素子から発生した熱を放熱板、セラミックス絶縁板を経由し、水冷された冷却板に伝えることで放熱が行われる。」
「【0017】・・・。加えて、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体表面に、接着性を有する熱可塑性樹脂層を付与することにより結果的に熱抵抗を低減することができるため自動車用両面放熱パワーモジュールに好適である。・・・【0018】本発明は、パワーデバイスなどの発熱性電子部品の放熱部材として好適に用いられ、特にプリント配線板の絶縁層、熱インターフェース材及び自動車用両面放熱パワーモジュールに用いられる、熱抵抗及び強度に優れた放熱部材を提供することにある。【0019】上記の課題を解決するために、本発明においては、以下の手段を採用する。(1)窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体30~90体積%と樹脂70~10体積%からなり、窒化ホウ素焼結体の気孔率が10~70%、窒化ホウ素焼結体の窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上、・・・樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に0.05~0.5mmの厚さの熱可塑性樹脂層を有する放熱部材。」
「【0026】<平均長径>窒化ホウ素焼結体中の窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上である。・・・。平均長径の上限については特に制限はないが、鱗片状窒化ホウ素粒子の平均長径を50μm以上にすることは難しく、上限としては、50μm程度が実際的である。」
「【0028】<気孔率及びその評価方法>本発明の窒化ホウ素焼結体において、窒化ホウ素粒子が30~90体積%からなる3次元に結合した組織を有することが樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の電気絶縁性及び熱伝導率の観点から望ましい。・・・」
「【0042】<樹脂含浸窒化ホウ素焼結体>本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体について説明する。本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は、窒化ホウ素焼結体に樹脂を含浸し、硬化させ、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を得た後、マルチワイヤーソー等の装置を用い、任意の厚さに切り出した板状の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体を用いることにより、好適に製造することができる。・・・」
「【0044】<含浸用樹脂>樹脂としては、・・・。特にエポキシ樹脂は、耐熱性と銅箔回路への接着強度が優れていることから、プリント配線板の絶縁層として好適である。」
「【0045】<熱可塑性樹脂層>任意の方向に対して優位な熱伝導率を有した板状の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体に対して、可塑性を示す樹脂又は可塑性を示す樹脂と無機充填材を各種コーターやスクリーン印刷等の一般的な製膜装置を用いて塗布し、熱処理等を行って、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に熱可塑性樹脂層を設けることができる。」
「【0054】本発明の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に0.05~0.5mmの厚さの熱可塑性樹脂層を有する放熱部材は、パワーデバイスなどの発熱性電子部品の放熱部材として好適に用いることができる。特にプリント配線板の絶縁層及び熱インターフェース材及び自動車用両面放熱パワーモジュールに用いることができる。」
(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
a 放熱部材を用いて、パワー素子から発生した熱を放熱板を経由し、水冷された冷却板に伝える自動車用両面放熱パワーモジュールであること(【0003】、【0017】、【0018】、【0054】)。
b 放熱部材は、セラミック焼結体であり、含浸される樹脂は絶縁性を考慮して選択されていることから、絶縁性を有することは明らかである。そうすると、引用文献1に記載された放熱部材は、パワー素子から発生した熱を放熱板、セラミックス絶縁板を経由し、水冷された冷却板に伝える放熱構造において、セラミック絶縁板として利用されるといえる。
したがって、放熱部材は、パワー素子から発生した熱を放熱する放熱板と、水冷された冷却板との間に配置されるといえる(【0003】、【0028】、【0044】)。
c 放熱部材は、窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体30~90体積%と樹脂70~10体積%からなること(【0019】)。
d 窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上で上限が50μm程度であること(【0019】、【0026】)。
e 樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は板状であり、少なくとも片側に熱可塑性樹脂層を有すること(【0019】、【0045】)。
f 放熱部材は、窒化ホウ素焼結体に樹脂を含浸して製造することができること(【0039】)。
(3)引用発明
上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「放熱部材を用いて、パワー素子から発生した熱を放熱板を経由し、水冷された冷却板に伝える自動車用両面放熱パワーモジュールであって、放熱部材は、パワー素子から発生した熱を放熱する放熱板と、水冷された冷却板との間に配置され、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体に樹脂を含浸して製造することができ、窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体30~90体積%と樹脂70~10体積%からなり、窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上で上限が50μm程度であり、樹脂含浸窒化ホウ素焼結体は板状であり、少なくとも片側に熱可塑性樹脂層を有する、自動車用両面放熱パワーモジュール。」
2 引用文献2(国際公開2014/199650号)の記載
(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「[0015] ・・・アスペクト比が大きな窒化ホウ素の一次粒子2から形成される。・・・」
。」
「[0050][表1][図:0001396922000001.jpg]」
(2)上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
「平均長径が12μmでアスペクト比が15.3である窒化ホウ素の一次粒子、あるいは平均長径が10でアスペクト比が25.4である窒化ホウ素の一次粒子。」
第5 対比
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の自動車用両面放熱パワーモジュールは、「放熱部材を用いて、パワー素子から発生した熱を放熱板を経由し、水冷された冷却板に伝え」、放熱部材が「パワー素子から発生した熱を放熱する放熱板と、水冷された冷却板との間に配置される」ものであるから、パワー素子、放熱板、放熱部材及び冷却板が、この順に積層構造をなすように配置されているといえる。
ここで、引用発明の「放熱板」はパワー素子から発生した熱を放熱することから、パワー素子の外部に露出しているといえる。そうすると、引用発明の「放熱板」は、本願発明の「電気回路装置の外部へ露出する放熱板」に相当する。
また、引用発明の「放熱部材」及び「水冷された冷却板」は、本願発明の「伝熱部材」及び「冷却器」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「電気回路装置の外部へ露出する放熱板と、伝熱部材と、冷却器とが積層構造をなすように配置されて含まれる」点で一致する。
(2)引用発明の「放熱部材」は「窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上で上限が50μm程度である」ものである。
ここで、本願明細書には【0023】に「前記セラミックス樹脂複合体は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも一種のセラミックス一次粒子が、3次元的に連続した一体構造をなしている焼結体(以下、セラミックス一次粒子焼結体という。またセラミックス一次粒子が、窒化ホウ素である場合は、窒化ホウ素一次粒子焼結体といい、窒化アルミニウムである場合は、窒化アルミニウム一次粒子焼結体といい、窒化ケイ素である場合は、窒化ケイ素一次粒子焼結体という。)が好ましい。」と記載されている。
そうすると、引用発明の「平均粒径が10μm以上で上限が50μm程度」である「窒化ホウ素粒子」は、本願発明の「平均長径が3~60μm」である「セラミックス一次粒子」に含まれる。
また、引用発明の放熱部材は上述のとおりセラミックス一次粒子に相当する「窒化ホウ素粒子」が「3次元に結合した窒化ホウ素焼結体」であるから、引用発明の「窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体」は、本願発明の「セラミックス一次粒子が3次元的に一体構造をなしているセラミックス焼結体」に相当する。
加えて、引用発明の「放熱部材」は「窒化ホウ素粒子が3次元に結合した窒化ホウ素焼結体」に「樹脂を含浸して製造する」ものである。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記伝熱部材が、平均長径が3~60μmであるセラミックス一次粒子が3次元的に一体構造をなしているセラミックス焼結体に樹脂組成物が含浸しているセラミックス樹脂複合体」である点で一致する。
(3)引用発明の自動車用両面放熱パワーモジュールは、放熱部材が「板状の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の少なくとも片側に熱可塑性樹脂層」を有することから、熱可塑性樹脂層を片側のみに有するものを含むといえる。また、引用発明の自動車用両面放熱パワーモジュールは、放熱部材が「放熱板と、水冷された冷却板との間に配置される」ものである。
そうすると、引用発明において、熱可塑性樹脂層を片側のみに有する放熱部材の他方の面は、放熱板あるいは冷却板のいずれかに直接接触して配置されるものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記伝熱部材が、前記放熱板および前記冷却器のうちの少なくとも一方と直接接触して積層するように配置される」点で一致する。
(4)以上の(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明は、「電気回路装置の放熱構造」である点で共通するといえる。
2 一致点及び相違点
上記「1 対比」で検討した事項を踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「電気回路装置の外部へ露出する放熱板と、伝熱部材と、冷却器とが積層構造をなすように配置されて含まれる、電気回路装置の放熱構造であって、前記伝熱部材が、平均長径が3~60μmであるセラミックス一次粒子が3次元的に一体構造をなしているセラミックス焼結体に樹脂組成物が含浸しているセラミックス樹脂複合体であり、前記伝熱部材が、前記放熱板および前記冷却器のうちの少なくとも一方と直接接触して積層するように配置される電気回路装置の放熱構造。」
【相違点】
セラミック一次粒子について、本願発明は「平均長径が3~60μm、アスペクト比が5~30である」のに対し、引用発明では、窒化ホウ素粒子の平均長径が10μm以上で上限が50μm程度であると特定されているが、窒化ホウ素粒子の「アスペクト比」について特定されていない点。
第6 判断
以下、相違点について検討する。
引用発明は、窒化ホウ素粒子を平均長径で特定していることから、当該窒化ホウ素粒子が所定のアスペクト比を有すると想定されることは明らかである。
そして、引用文献2には、平均長径が12μmでアスペクト比が15.3である窒化ホウ素の一次粒子、あるいは平均長径が10μmでアスペクト比が25.4である窒化ホウ素の一次粒子が記載されている。
そうすると、引用発明において、引用文献2に記載された技術に基づき、平均長径が10μm以上で上限が50μm程度である窒化ホウ素が有するアスペクト比を、上記した程度のアスペクト比とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求書での主張
1 請求人の主張
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審判請求人は、審判請求書において、引用文献の記載について、概ね以下の点を主張している。
(主張1)
「主引例たる引用文献1は、板状の樹脂含浸窒化ホウ素焼結体に対して熱可塑性樹脂層を設けて、熱抵抗を低くすることを謳う発明に関する。引用文献1における熱抵抗とは、界面熱抵抗である(引用文献1の段落0017、0037、0045、0049参照)。」という点。
(主張2)
「引用文献1では、回路の入/切サイクルにともなう熱老朽化の問題が考えられるほか、界面に圧力が掛かったときには構造として不安定となる問題がありえる。このような熱可塑性樹脂を介した界面の存在は、本願請求項1の直接接触による積層とは相違する。」という点。
2 検討
上記主張について検討する。
(1)上記「(主張1)」について、引用文献1には【0037】に「樹脂含浸窒化ホウ素焼結体の熱抵抗測定は、ASTM-D5470に準拠して測定し、本測定の熱抵抗値はバルクの熱抵抗と接触面の界面熱抵抗を含んだ値となっている。」と記載されていることから、引用文献1における熱抵抗はバルクの熱抵抗を含むものである。
(2)上記「(主張2)」について、上記「第5 対比」の(3)で言及したように、「引用発明において、熱可塑性樹脂層を片側のみに有する放熱部材の他方の面は、放熱板あるいは冷却板のいずれかに直接接触して配置される」ものであるといえる。また、上記「第2 本願発明」に示したように、本願発明は「前記伝熱部材が、前記放熱板および前記冷却器のうちの少なくとも一方と直接接触して積層するように配置される」ものである。
したがって、引用発明は、「前記伝熱部材が、前記放熱板および前記冷却器のうちの少なくとも一方と直接接触して積層するように配置される」点で、本願発明と一致する。
(3)以上のとおりであるから、審判請求書による上記主張はいずれも採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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