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特許拒絶査定不服審判

2022-004677

エフェクト顔料

審判番号
2022-004677
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-032410外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月30日
審決日
2024年01月24日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (C09C) / P18 .121-Z (C09C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017- 32410「エフェクト顔料」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-149946〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年2月23日(パリ条約による優先権主張2016年2月23日(以下「優先日」という。)(EP)欧州特許庁)を出願日とする出願であって、令和2年11月26日付けで拒絶理由が通知され、令和3年6月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、同年同月30日に拒絶査定の謄本が送達された。 これに対して、令和4年3月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年3月30日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正後の特許請求の範囲 令和4年3月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 Al2O3薄片をベースにしたエフェクト顔料であって、該エフェクト顔料は、銀色、青色、または赤色の干渉色および/または質感色を有し、Al2O3薄片は、金属酸化物または金属酸化物の混合物の1以上の層でコーティングされており、Al2O3薄片のAl2O3の量と、コーティング層の金属酸化物の量との比が、全エフェクト顔料を基準として27:73から83:17の範囲であることを特徴とする、エフェクト顔料。 【請求項2】 エフェクト顔料の干渉色および/または質感色が銀色の場合、Al2O3薄片のAl2O3の量と被覆層の金属酸化物の量の比は、全エフェクト顔料を基準として、60:40~80:20の範囲であり、 エフェクト顔料の干渉色および/または質感色が青色の場合、Al2O3薄片のAl2O3の量と被覆層の金属酸化物の量の比は、全エフェクト顔料を基準として、35:65~60:40の範囲であり、および エフェクト顔料の干渉色および/または質感色が赤色の場合、Al2O3薄片のAl2O3の量と被覆層の金属酸化物の量の比は、全エフェクト顔料を基準として、35:65~65:35の範囲である請求項1記載のエフェクト顔料。 【請求項3】 Al2O3薄片の表面が、1つまたは2つの金属酸化物層でコーティングされていることを特徴とする、請求項1または2に記載のエフェクト顔料。 【請求項4】 Al2O3薄片が、TiO2、ZrO2、SiO2、SnO2、In2O3、ZnO、またはこれらの組合せでドープされていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項5】 ドープ量が、Al2O3薄片に対して0.01~5重量%であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項6】 TiO2またはZnOでドープされていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項7】 Al2O3薄片の粒子の厚さが130~500nmの範囲であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項8】 Al2O3薄片の厚さ分布の標準偏差が、80未満であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項9】 Al2O3薄片が、下記の層順序: Al2O3薄片+TiO2 Al2O3薄片+TiO2/Fe2O3 Al2O3薄片+Fe2O3 Al2O3薄片+Fe3O4 Al2O3薄片+TiO2+Fe2O3 Al2O3薄片+TiO2+Fe3O4 Al2O3薄片+TiO2+SiO2+TiO2 Al2O3薄片+TiO2+MgO・SiO2+TiO2 Al2O3薄片+Fe2O3+SiO2+TiO2 Al2O3薄片+TiO2/Fe2O3+SiO2+TiO2 Al2O3薄片+TiO2+SiO2+TiO2/Fe2O3 Al2O3薄片+TiO2/Fe2O3+SiO2+TiO2/Fe2O3 Al2O3薄片+TiO2+SiO2 Al2O3薄片+TiO2+SiO2/Al2O3 Al2O3薄片+TiO2+Al2O3 Al2O3薄片+SnO2 Al2O3薄片+SnO2+Fe2O3 Al2O3薄片+SnO2+TiO2 Al2O3薄片+ZrO2 Al2O3薄片+TiO2+プルシアンブルー または Al2O3薄片+TiO2+カルミンレッド でコーティングされていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項10】 Al2O3薄片が、ルチルまたはアナターゼ型のTiO2でコーティングされていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項11】 Al2O3薄片が、ルチル型のTiO2でコーティングされていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項12】 表面に保護層を含有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項13】 保護層が、少なくとも1種の希土類金属酸化物と、ケイ素、アルミニウム、もしくはジルコニウム、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、有機化合物とを含有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項14】 有機成分が、有機カップリング剤、有機官能性シラン、アミノ化合物、有機リン化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項15】 保護層中の希土類金属酸化物が、酸化セリウムであることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項16】 エフェクト顔料中の希土類金属酸化物の量が、2重量%以下であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項17】 保護層が、少なくとも1種の希土類金属酸化物を0.2~2重量%、SiO2を0.2~2重量%、Al2O3および/またはZrO2を0.2~4重量%、および有機成分を1~10重量%含有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項18】 保護層が、0.5~10nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項19】 塗料、コーティング、自動車用コーティング、自動車用仕上げ、工業用コーティング、塗料、粉末コーティング、印刷インク、セキュリティ用印刷インク、プラスチック、セラミック材料、化粧品、ガラス、紙、紙コーティング、電子写真印刷プロセス用のトナー、種子、温室用シート材料および防水布、機械またはデバイスの絶縁用の熱伝導性自立型電気絶縁フレキシブルシートの分野の配合物における、紙およびプラスチックのレーザマーキングでの吸収剤としての、プラスチックのレーザ溶接での吸収剤としての、水、有機および/または水性溶媒を含む顔料ペーストにおける、顔料調製物および乾燥調製物における、請求項1から18のいずれか一項に記載のエフェクト顔料の使用。 【請求項20】 請求項1から18のいずれか一項に記載の1種以上のエフェクト顔料を、配合物全体に対して0.01から95重量%の量で含有する配合物。 【請求項21】 水、ポリオール、極性もしくは無極性油、脂肪、ワックス、被膜形成剤、ポリマー、コポリマー、界面活性剤、フリーラジカルスカベンジャー、酸化防止剤、安定化剤、臭気増強剤、シリコーン油、乳化剤、溶媒、保存剤、増粘剤、レオロジー添加剤、香料、着色剤、エフェクト顔料、UV吸収剤、界面活性補助剤、および/または化粧品用活性成分、充填剤、結合剤、真珠様顔料、カラー顔料、および有機染料の群から選択される少なくとも1つの成分を含有することを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の1種以上のエフェクト顔料を含有する配合物。」 2 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 Al2O3薄片をベースにしたエフェクト顔料であって、Al2O3薄片が、金属酸化物または金属酸化物の混合物の1以上の層でコーティングされ、Al2O3薄片のAl2O3の量と、コーティング層の金属酸化物の量との比が、全エフェクト顔料を基準として27:73から83:17の範囲であることを特徴とする、エフェクト顔料。 【請求項2】 Al2O3薄片の表面が、1つまたは2つの金属酸化物層でコーティングされていることを特徴とする、請求項1に記載のエフェクト顔料。 【請求項3】 Al2O3薄片が、TiO2、ZrO2、SiO2、SnO2、In2O3、ZnO、またはこれらの組合せでドープされていることを特徴とする、請求項1または2に記載のエフェクト顔料。 【請求項4】 ドープ量が、Al2O3薄片に対して0.01~5重量%であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項5】 TiO2またはZnOでドープされていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項6】 Al2O3薄片の粒子の厚さが130~500nmの範囲であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項7】 Al2O3薄片の厚さ分布の標準偏差が、80未満であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項8】 Al2O3薄片が、下記の層順序: Al2O3薄片+TiO2 Al2O3薄片+TiO2/Fe2O3 Al2O3薄片+Fe2O3 Al2O3薄片+Fe3O4 Al2O3薄片+TiO2+Fe2O3 Al2O3薄片+TiO2+Fe3O4 Al2O3薄片+TiO2+SiO2+TiO2 Al2O3薄片+TiO2+MgO・SiO2+TiO2 Al2O3薄片+Fe2O3+SiO2+TiO2 Al2O3薄片+TiO2/Fe2O3+SiO2+TiO2 Al2O3薄片+TiO2+SiO2+TiO2/Fe2O3 Al2O3薄片+TiO2/Fe2O3+SiO2+TiO2/Fe2O3 Al2O3薄片+TiO2+SiO2 Al2O3薄片+TiO2+SiO2/Al2O3 Al2O3薄片+TiO2+Al2O3 Al2O3薄片+SnO2 Al2O3薄片+SnO2+Fe2O3 Al2O3薄片+SnO2+TiO2 Al2O3薄片+ZrO2 Al2O3薄片+TiO2+プルシアンブルー または Al2O3薄片+TiO2+カルミンレッド でコーティングされていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項9】 Al2O3薄片が、ルチルまたはアナターゼ型のTiO2でコーティングされていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項10】 Al2O3薄片が、ルチル型のTiO2でコーティングされていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項11】 表面に保護層を含有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項12】 保護層が、少なくとも1種の希土類金属酸化物と、ケイ素、アルミニウム、もしくはジルコニウム、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種の金属酸化物と、有機化合物とを含有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項13】 有機成分が、有機カップリング剤、有機官能性シラン、アミノ化合物、有機リン化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項14】 保護層中の希土類金属酸化物が、酸化セリウムであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項15】 エフェクト顔料中の希土類金属酸化物の量が、2重量%以下であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項16】 保護層が、少なくとも1種の希土類金属酸化物を0.2~2重量%、SiO2を0.2~2重量%、Al2O3および/またはZrO2を0.2~4重量%、および有機成分を1~10重量%、それぞれ保護層を基準として含有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項17】 保護層が、0.5~10nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載のエフェクト顔料。 【請求項18】 塗料、コーティング、自動車用コーティング、自動車用仕上げ、工業用コーティング、塗料、粉末コーティング、印刷インク、セキュリティ用印刷インク、プラスチック、セラミック材料、化粧品、ガラス、紙、紙コーティング、電子写真印刷プロセス用のトナー、種子、温室用シート材料および防水布、機械またはデバイスの絶縁用の熱伝導性自立型電気絶縁フレキシブルシートの分野の配合物における、紙およびプラスチックのレーザマーキングでの吸収剤としての、プラスチックのレーザ溶接での吸収剤としての、水、有機および/または水性溶媒を含む顔料ペーストにおける、顔料調製物および乾燥調製物における、請求項1から17のいずれか一項に記載のエフェクト顔料の使用。 【請求項19】 請求項1から17のいずれか一項に記載の1種以上のエフェクト顔料を、配合物全体に対して0.01から95重量%の量で含有する配合物。 【請求項20】 水、ポリオール、極性もしくは無極性油、脂肪、ワックス、被膜形成剤、ポリマー、コポリマー、界面活性剤、フリーラジカルスカベンジャー、酸化防止剤、安定化剤、臭気増強剤、シリコーン油、乳化剤、溶媒、保存剤、増粘剤、レオロジー添加剤、香料、着色剤、エフェクト顔料、UV吸収剤、界面活性補助剤、および/または化粧品用活性成分、充填剤、結合剤、真珠様顔料、カラー顔料、および有機染料の群から選択される少なくとも1つの成分を含有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の1種以上のエフェクト顔料を含有する配合物。」 3 補正の適否 (1)補正後の請求項2についての補正 本件補正前後の特許請求の範囲を比較すると、本件補正後の請求項2についての補正は、 「エフェクト顔料の干渉色および/または質感色が銀色の場合、Al2O3薄片のAl2O3の量と被覆層の金属酸化物の量の比は、全エフェクト顔料を基準として、60:40~80:20の範囲であり、 エフェクト顔料の干渉色および/または質感色が青色の場合、Al2O3薄片のAl2O3の量と被覆層の金属酸化物の量の比は、全エフェクト顔料を基準として、35:65~60:40の範囲であり、および エフェクト顔料の干渉色および/または質感色が赤色の場合、Al2O3薄片のAl2O3の量と被覆層の金属酸化物の量の比は、全エフェクト顔料を基準として、35:65~65:35の範囲である」 という事項により特定される「エフェクト顔料」に係る請求項を、請求項1を引用する形式で新たに請求項2として追加するものである。また、それに伴って、本件補正前の請求項2~20を、請求項3~21として繰り下げて引用関係を整理するとともに、これらの請求項において請求項2も引用するように変更するものである。 (2) 本件補正の目的について ア まず、本件補正の目的が特許請求の範囲の減縮に該当するか否かを検討すると、特許法17条の2第5項2号は、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項に限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定しており、同括弧書きの文言によれば、2号において補正が認められる特許請求の範囲の減縮といえるためには、補正後の請求項が補正前の請求項に記載された発明を限定する関係にあること、並びに、補正前の請求項と補正後の請求項との間において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを必要とするものである。そうすると、この「限定する」ものであるかどうか、「同一である」かどうかは、いずれも、特許請求の範囲に記載された当該請求項について、その補正の前後を比較して判断すべきものであり、補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっていることを当然の前提としているといえる。 そこで、本件補正後の請求項1~21についてみるに、その記載振りからすると、本件補正後の請求項1、3~21はそれぞれ、本件補正前の請求項1、2~20に対応していると認められるが、本件補正後の請求項2には、対応させるべき補正前の請求項が存在せず、上記請求項2についての補正は、新たな事項を追加して請求項を増加するものと認められるから、特許請求の範囲の減縮を目的としているものとはいえない。 イ また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。 (3) 補正の却下のむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は前記したとおり却下されたので、本願請求項1~20に係る発明は、本件補正前の令和3年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 Al2O3薄片をベースにしたエフェクト顔料であって、Al2O3薄片が、金属酸化物または金属酸化物の混合物の1以上の層でコーティングされ、Al2O3薄片のAl2O3の量と、コーティング層の金属酸化物の量との比が、全エフェクト顔料を基準として27:73から83:17の範囲であることを特徴とする、エフェクト顔料。」 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、 「令和2年11月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-2」であって、要するに、 理由1:(新規性)本願発明は以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2:(進歩性)本願発明は以下の引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 というものである。 引用文献1:特開2014-218425号公報 3 引用文献の記載事項及び引用発明 (1)引用文献1の記載事項 引用文献1には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、α-Al2O3フレークに関し、また塗料、工業用塗料、自動車用塗料、印刷インキ、化粧品処方におけるその使用、特に効果顔料のための透明基材としてその使用に関する。」 「【0024】 本発明に係るAl2O3フレークは、500nm未満の厚さ、好ましくは130~400nm、特に150~350nmの厚さを有する。 【0025】 本発明に係るAl2O3フレークは、好ましくは30~200の、特に50~150のアスペクト比(直径/厚さ比)を有する。」 「【0037】 本発明に係るAl2O3フレークは、効果顔料の製造における基材として非常に適している。この目的のために、Al2O3フレークは好ましくは、例えば、TiO2、ZrO2、SnO2、ZnO、Ce2O3、Fe2O3、Fe3O4、FeTiO5、Cr2O3、CoO、Co3O4、VO2、V2O3、NiOのような金属酸化物の、さらには亜酸化チタン(酸化状態が4未満(4<)から2に部分的に還元されたTiO2、例えばTi3O5、Ti2O3、TiOのような低酸化物)、酸窒化チタン、FeO(OH)の層、例えばAl、Fe、Cr、Ag、Au、Pt又はPdを含む薄い半透明の金属層、またはそれらの組み合わせのような、少なくとも1つの高屈折率層でコーティングされる。TiO2層は、ルチル形態またはアナターゼ形態であってよい。一般に、TiO2がルチル形態であると、最高の品質と艶(gloss)および同時に最も安定した効果顔料が得られる。ルチル形態のものを得るために、TiO2をルチル型に導くことができる添加剤を用いることができる。有用なルチル誘導剤は、US4038099およびUS5433779及びEP0271767に開示されている。好ましいルチル誘導剤はSnO2である。 【0038】 Al2O3フレークに基づく好ましい効果顔料は、金属酸化物の一つ以上の層、好ましくはただ一つの金属酸化物層でコーティングされており、TiO2、Fe2O3、Fe3O4、SnO2、ZrO2またはCr2O3によってコーティングされていることが特に好ましい。特にTiO2、Fe2O3,およびそれらの混合物でコーティングされたAl2O3フレークが好ましい。 【0039】 各高屈折率層の厚さは、所望の干渉色に依存する。Al2O3フレークの表面上の各層の厚さは、好ましくは20~400nm、好ましくは30~300nm、特に好ましくは30~200nmである。 【0040】 Al2O3フレークの表面上の層の数は、好ましくは1又は2であり、さらに3、4、5、6または7つの層である。 【0041】 特に、Al2O3フレークの表面上の高および低屈折率層からなる干渉パッケージは、増加した艶、及びさらに増加した干渉色またはカラーフロップを有する効果顔料をもたらす。」 「【0076】 実施例1:Al2O3フレークの製造 硫酸アルミニウム18水和物74.6g、ポリ塩化アルミニウム(PAC:セントラル硝子株式会社、Al2O3として10%溶液)57.1g、無水硫酸ナトリウム57.3g、および硫酸カリウム46.9gを、60℃超に加熱することによって脱イオン水300mlに溶解させる。硫酸チタニルの34.4%溶液3.0gをその溶液に添加する。得られた溶液を水溶液(a)と指定する。 【0077】 リン酸三ナトリウム12水和物0.45gと炭酸ナトリウム55.0gを脱イオン水300mlに添加する。得られた溶液を水溶液(b)と指定する。 【0078】 水溶液(b)を撹拌しながら水溶液(a)に添加し、約60℃に保つ。撹拌を1時間続ける。溶液(a)及び溶液(b)から得られた混合物はスラリーである。このスラリーを蒸発乾固させ、乾燥した生成物を1150℃で6時間加熱する。加熱された生成物に水を添加して遊離硫酸を溶解させる。不溶性固体を濾別し、水で洗浄する。最後に、その生成物を乾燥させる。 【0079】 得られたアルミナフレークを、X線回折法により調べる。回折パターンは、コランダム構造(α-アルミナ構造)に起因するピークのみを有する。 【0080】 得られたAl2O3フレークは、D50値16.0μm、D90値30.8μm、および200nmの厚さを有する。そのα-Al2O3フレークの厚さ分布は28nmである。」 「【0087】 実施例1.1:Al2O3フレークのコーティング 実施例1のアルミナフレーク20gを、脱イオン水400ml中に懸濁する。得られた懸濁液(約65℃に保持)に対してリットル当たり125gのTiCl4を含有する溶液を添加する。同時に、NaOHの10%溶液を添加してpHを2.1に維持する。得られた生成物が銀色を呈したとき、TiCl4溶液の添加を停止する。懸濁固形物を濾別し、水で洗浄し、乾燥させる。最後に、乾燥した固形物を850℃で30分間か焼して、高度に白っぽくて艶のある真珠光沢顔料を得る。光沢角(luster angle)において、その艶のある外観が、比較例1.1と比較して、より広い角度で見ることができる。」 「【0094】 実施例1.4:Al2O3フレークのコーティング 実施例1のアルミナフレーク20gを、脱イオン水400ml中に懸濁する。(約65℃に保持された)得られた懸濁液に対して、リットル当たり125gのTiCl4を含有する溶液を添加する。同時に、NaOHの10%溶液を添加してpHを2.1に維持する。得られた生成物が黄みがかった色を呈したとき、TiCl4溶液の添加を停止する。次いで、得られた懸濁液に対して、リットル当たり50gのNa2SiO3を含有する溶液を添加する。同時に、HClの10%溶液を添加して、pHを7に維持する。次いで得られた懸濁液に対してリットル当たり125gのTiCl4を含有する溶液を、添加する。同時に、NaOHの10%溶液を添加して、pHを2.1に維持する。得られた生成物が青みがかった色を呈したとき、TiCl4溶液の添加を停止する。懸濁固形物を濾別し、水で洗浄し、乾燥させる。最後に、乾燥した固形物を850℃で30分間か焼して、高度に青みがかった艶のある真珠光沢顔料を得る。光沢角において、比較例1.4と比較して、より強く青みがかった色およびより高度に艶のある外観を、より広い角度で見ることができる。」 (2)引用文献1に記載された発明 ア 引用文献1の段落【0001】には、「本発明は、α-Al2O3フレークに関し、」「特に効果顔料のための透明基材としてその使用に関する。」ことが記載されている。 イ 引用文献1の段落【0037】には、「本発明に係るAl2O3フレークは、効果顔料の製造における基材として非常に適している」こと、「この目的のために、Al2O3フレークは好ましくは、例えば、TiO2・・・のような金属酸化物・・・の層、・・・のような、少なくとも1つの高屈折率層でコーティングされる。」ことが記載されており、同段落【0039】には、「各高屈折率層の厚さは、所望の干渉色に依存する。Al2O3フレークの表面上の各層の厚さは、」「特に好ましくは30~200nmである。」ことが記載されている。 ウ そして、引用文献1には、Al2O3フレークの表面上をTiO2のような金属酸化物の層でコーティングされた効果顔料の具体的な実施例として、同段落【0087】には、実施例1.1のAl2O3フレークのコーティングとして、「実施例1のアルミナフレーク20gを、脱イオン水400ml中に懸濁する。得られた懸濁液(約65℃に保持)に対してリットル当たり125gのTiCl4を含有する溶液を添加する。同時に、NaOHの10%溶液を添加してpHを2.1に維持する。得られた生成物が銀色を呈したとき、TiCl4溶液の添加を停止する。懸濁固形物を濾別し、水で洗浄し、乾燥させる。最後に、乾燥した固形物を850℃で30分間か焼して、高度に白っぽくて艶のある真珠光沢顔料を得る。」ことが記載されており、ここで、実施例1のAl2O3フレークは、同段落【0080】より、「得られたAl2O3フレークは、D50値16.0μm、D90値30.8μm、および200nmの厚さを有する。そのα-Al2O3フレークの厚さ分布は28nmである。」ことが記載されている。 エ すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「Al2O3フレークを基材とする効果顔料であって、D50値16.0μm、D90値30.8μm、および200nmの厚さを有し、厚さ分布は28nmであるAl2O3フレークの表面上に高屈折率層であるTiO2金属酸化物層でコーティングされた、効果顔料」 4 対比・判断 (1) 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「Al2O3フレーク」、「効果顔料」、「Al2O3フレークを基材とする効果顔料」はそれぞれ、本願発明の「Al2O3薄片」、「エフェクト顔料」、「Al2O3薄片をベースにしたエフェクト顔料」に相当する。 また、引用発明の「TiO2金属酸化物層」、「Al2O3フレークの表面上に高屈折率層であるTiO2金属酸化物層でコーティングされた」は「コーティング層」、「Al2O3薄片が、金属酸化物または金属酸化物の混合物の1以上の層でコーティングされ」に相当する。 してみると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「Al2O3薄片をベースにしたエフェクト顔料であって、Al2O3薄片が、金属酸化物または金属酸化物の混合物の1以上の層でコーティングされた、エフェクト顔料。」 <相違点> 本願発明では、Al2O3薄片のAl2O3の量と、コーティング層の金属酸化物の量との比が、全エフェクト顔料を基準として27:73から83:17の範囲であるのに対し、引用発明ではそのような特定がされていない点。 (2) 相違点について検討する。引用発明のAl2O3フレークの厚さは200nmであり、Al2O3フレークの表面上に設けられたTiO2金属酸化物層の厚さについて特定されていないが、引用文献1の段落【0039】には、「Al2O3フレークの表面上の各層の厚さは、特に好ましくは30~200nmである。」との記載からみて、TiO2金属酸化物層はAl2O3フレークの表面上に30~200nmの厚さでコーティングされているといえる。 ここで、Al2O3フレークの形状について、同段落【0025】には「本発明に係るAl2O3フレークは、好ましくは30~200の、特に50~150のアスペクト比(直径/厚さ比)を有する」と記載されていることから、Al2O3フレークの直径方向の表面積に対して厚さ方向の表面積はかなり小さい。そうすると、Al2O3フレークのAl2O3の量と、TiO2金属酸化物層のTiO2の量の比の算出において、Al2O3フレークの直径方向の表裏面にコーティングされたTiO2金属酸化物層の量に対して、Al2O3フレークの厚さ方向の表面にコーティングされたTiO2金属酸化物層の量の影響はほとんどないといえる。 してみれば、Al2O3フレークのAl2O3の量とTiO2金属酸化物層のTiO2の量との比は、表面積が同じであることから、Al2O3フレークの厚さ×Al2O3の密度と、TiO2金属酸化物層の厚さ×2×TiO2の密度で概算することができる。Al2O3薄片の厚さを200nm、TiO2金属酸化物層の厚さを30~200nm、Al2O3の密度(昭和電工ホームページ、「αアルミナの真比重:3.98」、レゾナックホームページ<https://www.sdk.co.jp/assets/files/products/1201/1201_02.pdf>)を3.98g/cm3、TiO2の密度(「酸化チタン(ルチル型)の比重4.20」、化学便覧応用編 改訂2版 p1110)を4.20g/cm3で計算すると、Al2O3の量とTiO2の量は(200×3.98):(200×2×4.20)~(200×3.98):(30×2×4.20)≒32:68~76:24となり、本願発明の「Al2O3薄片のAl2O3の量と、コーティング層の金属酸化物の量との比が、全エフェクト顔料を基準として27:73から83:17の範囲」を充足する。 してみれば、前記相違点は実質的な相違点ではない。 (3) したがって、本願発明は、引用発明であるか、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 審判請求人の主張について (1) 審判請求人は、審判請求書の(3)d)において、「実施例1.1には、真珠様光沢顔料の製造方法が記載され、「Al2O3フレークのコーティング」の表題の下に、明らかに単層の酸化チタン膜の形成が実施されており、コーティング層内には干渉パッケージが形成されていないことは当業者には明らかである。したがって、この実施例1.1で形成されている真珠光沢顔料は、高度に白っぽくて艶のあるものであると記載され、干渉色を有するエフェクト顔料ではない。」、「本願発明のエフェクト顔料は、銀色、青色、または赤色の干渉色および/または質感色を有することを規定したので、エフェクト顔料が干渉色を有するか否かという本願発明と引用文献1に開示された発明の相違点は、明確化された。」旨主張している。 しかしながら、当該主張の根拠となる「該エフェクト顔料は、銀色、青色、または赤色の干渉色および/または質感色を有し」なる特定事項は令和4年3月30日にされた手続補正の補正によるものであり、当該手続補正は上記第2での検討のとおり、補正却下されていることから、当該主張は採用できない。 仮に、本件補正が認容されたとして、補正された請求項1に係る発明の新規性・進歩性について検討すると、引用発明ではエフェクト顔料が干渉色および/または質感色を有することが特定されていない点で相違するが、引用文献1の段落【0039】には「各高屈折率層の厚さは、所望の干渉色に依存する。Al2O3フレークの表面上の各層の厚さは、好ましくは20~400nm、好ましくは30~300nm、特に好ましくは30~200nmである。」と記載されているように、引用発明におけるAl2O3フレークの表面上に高屈折率層であるTiO2金属酸化物層でコーティングしたエフェクト顔料についてもコーティング層の厚さは所望の干渉色にあわせた厚さとなっているといえることから、この点は実質的な相違点ではなく、あるいは、所望の干渉色にあわせて厚さを調整することは当業者が適宜なしうるものである。 また、引用文献1の段落【0041】には、「特に、Al2O3フレークの表面上の高および低屈折率層からなる干渉パッケージは、増加した艶、及びさらに増加した干渉色またはカラーフロップを有する効果顔料をもたらす。」ことが記載され、同段落【0094】には、本願の実施例5と同様の「TiO2+SiO2+TiO2」の高および低屈折率層からなる干渉パッケージをコーティング層とした「より強く青みがかった色およびより高度に艶のある外観を、より広い角度でみることができる」エフェクト顔料が実施例1.4として記載されていることから、引用発明において干渉パッケージのコーティング層を適用することは当業者が容易に想到しうるものである。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 (2) また、審判請求人は審判請求書の(3)d)において、「また、例え比較するとしても、アルミナの密度はアルミナの純度によって相当異なる値を持つものである。したがって、正確なアルミナの純度と粒子サイズを知ることなく、かつ干渉色を有さないエフェクト顔料についての、Al2O3の量と、コーティング層の金属酸化物の量との比を計算しても意味ある比較はできるものではない。」旨主張している。 しかしながら、引用発明のAl2O3フレークは、引用文献1の段落【0076】の記載からみて、本願の実施例1と同様の方法により製造されたものであり、その製造方法からみてドーパントとしてTiを微量含有するが、他の不純物はほとんど含有していない純度の高いAl2O3フレークが製造されていると読み取れることから、上記4での計算に用いたAl2O3の密度から大きくずれることは想定されない。また、粒子サイズについても、上記4での検討のとおり、「Al2O3フレークのAl2O3の量と、TiO2金属酸化物層のTiO2の量の比の算出において、Al2O3フレークの直径方向の表裏面にコーティングされたTiO2金属酸化物層の量に対して、Al2O3フレークの厚さ方向の表面にコーティングされたTiO2金属酸化物層の量の影響はほとんどない」とした前提は、Al2O3フレークは薄片状であり、そのアスペクト比(直径/厚さ比)から、Al2O3フレークの直径方向の表面積に対して厚さ方向の表面積はかなり小さいことに基づくものであり、粒子サイズが変わったとしてもアスペクト比が特定の数値範囲内であれば、Al2O3フレークの直径方向の表面積に対して厚さ方向の表面積はかなり小さいことに変わりはないことから、当該前提が変わることは想定されない。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、本願発明は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-004677

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