特許拒絶査定不服審判
2024-010508
重合性液晶材料および重合された液晶フィルム
- 審判番号
- 2024-010508
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-507676
- 請求日
- 2024年06月26日
- 審決日
- 2026年01月22日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【請求人代理人】伊藤 克博
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-Z (C09K) / P18 .575-Z (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-507676「重合性液晶材料および重合された液晶フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月20日国際公開、WO2020/035401、令和 3年12月 9日国内公表、特表2021-534288〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)8月9日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年8月13日、欧州特許庁)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 3月17日 :翻訳文の提出
令和5年 8月16日付け:拒絶理由通知書
同年11月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 2月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月27日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
以下、2018年(平成30年)8月13日を「優先日」という。
第2 令和6年6月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年6月26日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年6月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年11月21日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「 【請求項1】
式MRM1~MRM27の化合物から成る群より選択される1種類以上の一反応性メソゲン化合物と、式DRMa1~DRMeの化合物から成る群より選択される1種類以上の二反応性メソゲン化合物と、1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物とを含む重合性LC材料であって、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~80重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~99重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物および二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、30~99.9重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における式S0~S2の化合物の合計濃度は、10~2000ppmの範囲内であり、ただし
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物、二反応性メソゲン化合物および式S0~S2の化合物の合計濃度は、100重量%以下である重合性LC材料。
【化1】
[図:0001436630000001.jpg]
【化2】
[図:0001436630000002.jpg]
【化3】
[図:0001436630000003.jpg]
【化4】
[図:0001436630000004.jpg]
(式中、
P0は、アクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ヘプタジエン、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレン基であり、
Lは、それぞれの出現で同一または異なってF、Cl、CNまたは1~5個のC原子を有するハロゲン化されてよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、それぞれ互いに独立に0または1~12の同一もしくは異なる整数であり、
zは、それぞれ独立に0または1であり、ただし隣接するxまたはyが0の場合、zは0であり、
R0は、1~15個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであるか、またはY0を表し、
Y0は、F、Cl、CN、NO2、OCH3、OCN、SCN、SF5、または1~4個のC原子を有するモノフッ素化、オリゴフッ素化もしくはポリフッ素化アルキルもしくはアルコキシであり、
Z0は、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-COO-、または単結合であり、
A0は、複数出現する場合は互いに独立に無置換であるか、1個、2個、3個もしくは4個の基Lで置換されている1,4-フェニレン、またはトランス-1,4-シクロヘキシレンであり、
uおよびvは、それぞれ互いに独立に、0、1または2であり、
wは、0または1であり、および
ただしベンゼンおよびナフタレン環は、1個以上の同一または異なる基Lで追加して置換され得る。)
【化5】
[図:0001436630000005.jpg]
【化6】
[図:0001436630000006.jpg]
(式中、
P0は、複数出現する場合は互いに独立に、アクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ヘプタジエン、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレン基であり、
Lは、それぞれの出現で同一または異なってF、Cl、CNまたは1~5個のC原子を有するハロゲン化されてよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、それぞれ互いに独立に0または1~12の同一もしくは異なる整数であり、
zは、それぞれ独立に0または1であり、ただし隣接するxまたはyが0の場合、zは0である。)
【化7】
[図:0001436630000007.jpg]
(式中、個々の基は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一にまたは異なって、以下の意味を有する:
【化8】
[図:0001436630000008.jpg]
であり、
Paは、重合性基であり、
Spは、1~12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンであり、ただし加えて1個または2個の隣接しないCH2基はO原子が互いに直接連結しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-で置き換えられてよく、
X1およびX2は、それぞれ独立に-O-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-または単結合を表し、
Ra~dは、それぞれ独立に1~20個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、
R1およびR2は、それぞれ独立にH、CH3、OH、ORaまたはO●を表し、および
nは、1および8の間の整数を表す。)」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
式MRM1~MRM27の化合物から成る群より選択される1種類以上の一反応性メソゲン化合物と、式DRMa1~DRMeの化合物から成る群より選択される1種類以上の二反応性メソゲン化合物と、1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物とを含む重合性LC材料であって、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~80重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~99重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物および二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、30~99.9重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における式S0~S2の化合物の合計濃度は、10~2000ppmの範囲内であり、ただし
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物、二反応性メソゲン化合物および式S0~S2の化合物の合計濃度は、100重量%以下であり、ただし
1種類以上の式NDaの化合物を含む重合性LC材料。
【化1】
[図:0001436630000009.jpg]
【化2】
[図:0001436630000010.jpg]
【化3】
[図:0001436630000011.jpg]
【化4】
[図:0001436630000012.jpg]
(式中、
P0は、アクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ヘプタジエン、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレン基であり、
Lは、それぞれの出現で同一または異なってF、Cl、CNまたは1~5個のC原子を有するハロゲン化されてよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、それぞれ互いに独立に0または1~12の同一もしくは異なる整数であり、
zは、それぞれ独立に0または1であり、ただし隣接するxまたはyが0の場合、zは0であり、
R0は、1~15個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであるか、またはY0を表し、
Y0は、F、Cl、CN、NO2、OCH3、OCN、SCN、SF5、または1~4個のC原子を有するモノフッ素化、オリゴフッ素化もしくはポリフッ素化アルキルもしくはアルコキシであり、
Z0は、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-COO-、または単結合であり、
A0は、複数出現する場合は互いに独立に無置換であるか、1個、2個、3個もしくは4個の基Lで置換されている1,4-フェニレン、またはトランス-1,4-シクロヘキシレンであり、
uおよびvは、それぞれ互いに独立に、0、1または2であり、
wは、0または1であり、および
ただしベンゼンおよびナフタレン環は、1個以上の同一または異なる基Lで追加して置換され得る。)
【化5】
[図:0001436630000013.jpg]
【化6】
[図:0001436630000014.jpg]
(式中、
P0は、複数出現する場合は互いに独立に、アクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ヘプタジエン、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレン基であり、
Lは、それぞれの出現で同一または異なってF、Cl、CNまたは1~5個のC原子を有するハロゲン化されてよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、それぞれ互いに独立に0または1~12の同一もしくは異なる整数であり、
zは、それぞれ独立に0または1であり、ただし隣接するxまたはyが0の場合、zは0である。)
【化7】
[図:0001436630000015.jpg]
(式中、個々の基は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一にまたは異なって、以下の意味を有する:
【化8】
[図:0001436630000016.jpg]
であり、
Paは、重合性基であり、
Spは、1~12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンであり、ただし加えて1個または2個の隣接しないCH2基はO原子が互いに直接連結しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-で置き換えられてよく、
X1およびX2は、それぞれ独立に-O-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-または単結合を表し、
Ra~dは、それぞれ独立に1~20個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、
R1およびR2は、それぞれ独立にH、CH3、OH、ORaまたはO●を表し、および
nは、1および8の間の整数を表す。)
【化9】
[図:0001436630000017.jpg]
(式中、
Bは、それぞれの出現で互いに独立に-C≡C-、-CY1=CY2-または置換されてよい芳香族もしくはヘテロ芳香族基であり、
Y1,2は、それぞれ互いに独立にH、F、Cl、CNまたはR0であり、
qは、1~10の整数であり、
A1~4は、それぞれ互いに独立に非芳香族、芳香族またはヘテロ芳香族炭素環式またはヘテロ環式基から選択され、該基は1個以上の基R5で置換されてよく、ただし-(A1-Z1)m-、-(Z2-A2)n-、-(A3-Z3)o-および-(Z4-A4)p-は、それぞれ非芳香族基よりも多い芳香族基を含まず、
Z1~4は、それぞれ互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR00-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CH-、-CY1=CY2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR0R00または単結合であり、
R0およびR00は、それぞれ互いに独立にHまたは1~12個のC原子を有するアルキルであり、
mおよびnは、それぞれ互いに独立に0、1、2、3または4であり、
oおよびpは、それぞれ互いに独立に0、1、2、3または4であり、
R1~5は、それぞれ互いに独立にH、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X0、-C(=O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、P-Sp-、置換されてよいシリル、または1~40個のC原子を有し置換されてよく1個以上のヘテロ原子を含んでよいカルビルもしくはヒドロカルビルから選択される同一または異なる基であるか、またはPもしくはP-Sp-を表すか、またはPもしくはP-Sp-で置換されており、ただし化合物はPもしくはP-Sp-を表すか置換される1個以上の基R1~5を含み、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である。)」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「重合性LC材料」について、1種類以上の式NDaの化合物(式NDaは前記1(2)参照)を含むものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Iまでに分説する(構成A~CとIの化学式の詳細は記載を省略したので、前記1(2)を参照)。
<本件補正発明の分説>
A 式MRM1~MRM27の化合物から成る群より選択される1種類以上の一反応性メソゲン化合物と、
B 式DRMa1~DRMeの化合物から成る群より選択される1種類以上の二反応性メソゲン化合物と、
C 1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物とを含む重合性LC材料であって、
D 重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~80重量%の範囲内であり、
E 重合性LC材料中における二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~99重量%の範囲内であり、
F 重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物および二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、30~99.9重量%の範囲内であり、
G 重合性LC材料中における式S0~S2の化合物の合計濃度は、10~2000ppmの範囲内であり、ただし
H 重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物、二反応性メソゲン化合物および式S0~S2の化合物の合計濃度は、100重量%以下であり、ただし
I 1種類以上の式NDaの化合物を含む
X 重合性LC材料。
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
(ア) 【0011】~【0012】(技術分野、課題等)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、1種類以上の二反応性または多反応性メソゲン化合物と、1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物とを含む重合性LC材料に関する。
【化1】
[図:0001436630000018.jpg]
【0002】
式中、個々の基は請求項で与えられる通りの意味の1つを有する。更に本発明は、その調製方法、対応する重合性LC材料から得られる改良された熱およびUV安定性を有するポリマーフィルムと、その様なポリマーフィルムの調製方法と、ならびに光学的、電気光学的、装飾またはセキュリティーデバイスにおけるその様なポリマーフィルムおよび前記重合性LC材料の使用とにも関する。
【背景技術】
【0003】
均一な配向を有する異方性ポリマーフィルムを調製するための重合性液晶材料は、先行技術で知られている。これらのフィルムは通常、基板上に重合性液晶混合物の薄い層をコーティングし、混合物を均一な配向に配向させ、混合物を重合して調製される。フィルムの配向は、平面、即ち液晶分子が層に対して実質的に平行に配向している場合、ホメオトロピック(層に対して直角または垂直)またはチルトし得る。
【0004】
その様な光学的フィルムは例えば、欧州特許第0 940 707号明細書(特許文献1)、欧州特許第0 888 565号明細書(特許文献2)および英国特許第2 329 393号明細書(特許文献3)に記載されている。
【0005】
重合性液晶(LC:liquid crystal)材料は室温では安定しているが、温度が上昇すると劣化し得る。例えば一定時間加熱すると、分散または位相差などの光学的特性が低下するため、光学的フィルムの性能は時間の経過とともに低下する。このことは特に、低い重合度およびそれに対応するポリマー中の残留フリーラジカルの高含有量、ポリマーの収縮、および/または熱酸化劣化に起因し得る。
【0006】
熱酸化劣化とは、高温での酸化により触媒作用を受けるポリマーネットワークの破壊である。よく知られているように酸化防止添加剤または短期間の酸化防止剤は、高温にさらされた際にポリマーの熱酸化劣化を低減するために使用され得る。このことは光学的フィルムが高温のためにセル内用途に利用される場合、特に重要である。特にLCセルのポリイミド層をアニールする際、光学的フィルムは耐えなければならない。これに関して、文献の国際公開第2009/86911号(特許文献4)および日本特許第5354238号公報(特許文献5)には、市販の酸化防止剤Irganox(登録商標)1076を含む重合性液晶(LC)材料が記載されている。
【0007】
上記の材料は使用されるLC材料のために、得られるポリマーフィルムのUV安定性または熱耐久性がまだ十分に高くない、VIS光に対するそれらの透明性が制限される、それらは更なる添加剤の利用を必要とする、またはそれらの適用幅が制限されるなどの明らかな欠点を有する。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、いずれも従来技術の材料の欠点を示さないか、または示しても、より少ない程度しか示さない新規で好ましくは改良された重合性液晶材料または混合物が依然として求められている。
【0010】
有利には、その様な重合性LC材料は好ましくは、様々な均一に配向されたポリマーフィルムなどのポリマーネットワークの調製に適用可能であるべきであり、そして特に同時に好ましくは、
・基板への好ましい接着性を示し、
・VIS光に対して非常に透明であり、
・経時的に黄色着色(黄変)が低減され、および
・好ましい高温安定性または耐久性を示し、加えて、
・好ましい高いUV安定性または熱耐久性を示すべきであり、加えて、
・均一に配向されたポリマーフィルムは、適合した、よく知られている大量生産の方法で製造されるべきである。
…(中略)…
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに本発明の発明者らは、請求項1に記載の重合性LC材料を使用することで、1つ以上、好ましくは上記要件の全ての目的が好ましくは同時に達成できることを見出した。」
(イ) 【0013】、【0014】(発明を実施するための形態)
「【発明を実施するための形態】
【0013】
要するに本発明は、1種類以上の二反応性または多反応性メソゲン化合物と、1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物とを含む重合性LC材料に関する。
【化2】
[図:0001436630000019.jpg]
【0014】
式中、個々の基は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一にまたは異なって、以下の意味を有する:
【化3】
[図:0001436630000020.jpg]
であり、
Paは、重合性基、好ましくは(メタ)アクリレート基であり、
Spは、1~12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンであり、ただし加えて1個または2個の隣接しないCH2基はO原子が互いに直接連結しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-で置き換えられてよく、
X1およびX2は、それぞれ独立に-O-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-または単結合、好ましくは-O-、-CO-O-、-O-CO-を表し、
Ra~dは、それぞれ独立に1~20個のC原子、好ましくは1~15個のC原子、非常に好ましくは1~12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、
R1およびR2は、それぞれ独立にH、CH3、OH、ORaまたはO●を表し、および
nは、1および8の間の整数を表す。」
(ウ) 【0340】~【0358】(実施例)
「【実施例】
【0340】
【0340】
<一般的な手順>
混合物をトルエン/シクロヘキサノン(7/3)中の固形分33.3%に溶解する。この溶液を、ラビングされたPIでコーティングされた未処理のガラス基板上に2000rpmでスピンコーティングする。フィルムを68℃で120秒間アニールし、 統合型コンベア、H電球を用いて、N2雰囲気下で硬化させる(95%出力、10m/分、約300mJ/cm2、UV B)。
【0341】
フィルムを感圧接着剤にラミネートし表面が開いた状態で放置して、全フィルムスタックはガラス/ポリマーフィルム/感圧接着剤であり、フィルムについて耐久性実験を行う。
【0342】
硬化されたフィルムの位相差および分散の差のUVストレス依存性を測定するために、Axoscanエリプソメータを使用して初期位相差および分散を決定する。次いでフィルムに、SuntestXLS+で198時間ストレス(350W/m2)を与える。試験後、位相差特性および分散を再び決定する。耐久性は、UV試験前後のRinおよび分散(R450/550)の差によって定量化される。
【0343】
<例1>
以下の混合物M1を以下の表に従い調製する。
【0344】
【表1】
[図:0001436630000021.jpg]
【0345】
混合物M1を3部に分け、それぞれ各部を
【化53】
[図:0001436630000022.jpg]
と混合し、1部はそのままとする。
【0346】
上に記載した通り、それぞれの混合物を溶解、コーティング、硬化させ、位相差および分散の変化を日照試験の前後で決定する。結果を以下の表にまとめる。
【0347】
【表2】
[図:0001436630000023.jpg]
【0348】
<例2>
上に記載した通りの混合物M1を調製し、4部に分け、
【化54】
[図:0001436630000024.jpg]
と混合し、1部はそのままとする。
【0349】
上に記載した通り、それぞれの混合物を溶解、コーティング、硬化させ、位相差および分散の変化を日照試験の前後で決定する。結果を以下の表にまとめる。
【0350】
【表3】
[図:0001436630000025.jpg]
【0351】
<例3>
以下の混合物M2を以下の表に従い調製する。
【0352】
【表4】
[図:0001436630000026.jpg]
【0353】
混合物M2を3部に分け、900ppmの安定剤-1および1500ppmの安定剤-2と混合し、1部はそのままとする。上に記載した通り、それぞれの混合物を溶解、コーティング、硬化させ、位相差および分散の変化を日照試験の前後で決定する。結果を以下の表にまとめる。
【0354】
【表5】
[図:0001436630000027.jpg]
【0355】
<例4>
以下の混合物M3を以下の表に従い調製する。
【0356】
【表6】
[図:0001436630000028.jpg]
【0357】
混合物M3を4部に分け、900ppmの安定剤-1、1500ppmの安定剤-2および900ppmの
【化55】
[図:0001436630000029.jpg]
と混合し、1部はそのままとする。上に記載した通り、それぞれの混合物を溶解、コーティング、硬化させ、位相差および分散の変化を日照試験の前後で決定する。結果を以下の表にまとめる。
【0358】
【表7】
[図:0001436630000030.jpg]
」
(2) 各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である特開2007-16207号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
a 請求項1
「【請求項1】
第1成分として式(1)で表される少なくとも1つの化合物、第2成分として式(4)で表される少なくとも1つの化合物、並びに第3成分として式(5)、式(6)および式(7-1)~式(7-6)のそれぞれで表される化合物の群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する重合性液晶組成物:
[図:0001436630000031.jpg]
ここに、Z1は独立して水素、メチル、フッ素、またはトリフルオロメチルであり;X1は独立して水素、フッ素、塩素、メチル、トリフルオロメチル、またはシアノであり;A1は1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレン、2,3-ビス(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、2,6-ナフチレン、9-メチルフルオレン-2,7-ジイル、9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジイル、式(2)で表される2価の基、または式(3)で表される2価の基であり;Y1は独立して-COO-、-OCO-、-CH2CH2COO-、-OCOCH2CH2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2O-、または-OCH2-であり;そして、nは独立して1~10の整数である:
[図:0001436630000032.jpg]
ここに、Z2は水素、メチル、フッ素、またはトリフルオロメチルであり;X2は独立して水素またはフッ素であり;X3は独立して水素またはフッ素であり;X4はトリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1~10のアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり;Y2は単結合、-COO-、-OCO-、-CH2CH2COO-、-OCOCH2CH2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2O-、または-OCH2-であり;そして、nは1~10の整数である:
[図:0001436630000033.jpg]
ここに、R11、R15、R21、R25、R31およびR35は、独立して水素、水酸基、アリルオキシ、炭素数1~10のアルキル、または炭素数1~20のアルコキシであり、そしてこのアルコキシにおいて、任意の-CH2-は-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、そして末端のメチルはフェニルで置き換えられてもよく;R12、R14、R22、R24、R32およびR34は、独立して水素、水酸基、炭素数1~10のアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり、そしてこのアルキルにおいて、末端のメチルはフェニルで置き換えられてもよく;R13、R23およびR33は、独立して水素、塩素、水酸基、フェニル、ビフェニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~40のアルコキシ、または式(A)で表される基であり、そしてこのアルコキシにおいて、1つの水素は水酸基で置き換えられてもよく、任意の-CH2-は-O-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、そして末端のメチルは水酸基またはフェニルで置き換えられてもよく:
[図:0001436630000034.jpg]
ここに、R4は炭素数1~8のアルキレンであり;そしてR5は水素またはメチルである:
[図:0001436630000035.jpg]
ここに、R41、R42、R43、R44、R45、およびR46は独立して水素、ハロゲン、または炭素数1~20のアルキルであって、このアルキルにおいて、1つの-CH2-は-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、そして末端の-CH3はフェニルで置き換えられてもよい:
[図:0001436630000036.jpg]
ここに、R51は独立して水素、オキシラジカル、炭素数1~16のアルキル、炭素数1~16のアルコキシ、または炭素数1~16のアルキルカルボニルであり;kは2~20の整数であり;そして、R52は水素または炭素数1~10のアルキルである:
[図:0001436630000037.jpg]
ここに、R53の少なくとも1つは式(B)で表される基であって、残りのR53は独立して炭素数1~20のアルキルであり;そして、R51は前記と同じ意味を有する:
[図:0001436630000038.jpg]
ここに、Aは前記の式(B)で表される基であり;R54はアミノ、炭素数1~20のアルキルアミノ、モルフォリノ、ピペリジノ、またはピロリジニルであり;pは2~5の整数であり;そして、hは独立して2~20の整数である:
[図:0001436630000039.jpg]
ここに、R55は水素またはメチルであり;A1は水素または下記の式(C)で表される基であり;hは独立して2~20の整数であり;そして、mは2~20の整数である:
[図:0001436630000040.jpg]
ここに、Aは前記の式(B)で表される基である。」
b 【0001】~【0012】
「【0001】
本発明はトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびヒンダートアミン系化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する重合性液晶組成物およびこれから得られる液晶フィルムに関する。このフィルムを用いた光学補償フィルム、光学素子および液晶表示装置にも関する。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、溶液状態において安定性に優れ、かつ支持基板上に良好な塗工性を示し、均一なホメオトロピック配向性を有する重合性液晶組成物を提供することである。更に本発明は、この重合性液晶組成物からなる配向が制御された液晶層、この重合性液晶組成物を重合して得られる液晶フィルム、およびこのフィルムを用いた光学補償フィルムを提供することを目的とする。そして、この光学補償フィルムを含む液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP(Plasma Display Panel)などの画像表示装置を提供することも本発明の目的である。
…(中略)…
【発明の効果】
【0012】
重合性液晶化合物に、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびヒンダートアミン系化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を加えることにより、溶液の安定性に優れ、かつ支持基板への塗工性に優れた重合性液晶組成物が得られる。さらに本発明の重合性液晶組成物から得られる液晶フィルムは、均一なホメオトロピック配向性を示し、そして支持基板への良好な密着性を示す。」
c 【0031】~【0033】
「【0031】
本発明の組成物の構成について説明する。
前記のように、この組成物は第1成分として化合物(1)、第2成分として化合物(4)、そして第3成分として化合物(5)、化合物(6)および化合物(7-1)~化合物(7-6)から選ばれる化合物を含有する。この組成物は少なくとも3つの化合物を含有する。第1成分~第3成分はそれぞれ複数の化合物であってもよい。この組成物は、化合物(1)および化合物(4)とは異なるその他の重合性化合物を含有してもよい。その他の重合性化合物を加えることにより、特性をさらに調整することができる。この組成物は、重合開始剤、界面活性剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
【0032】
本発明の組成物における成分の割合について説明する。第1成分の好ましい割合は10~95%であり、より好ましい割合は10~80%である。第2成分の好ましい割合は5~30%であり、より好ましい割合は5~20%である。第3成分の好ましい割合は、第1成分と第2成分の合計量に対する重量比で0.01~0.30であり、より好ましくは0.03~0.20であり、さらに好ましくは0.05~0.15である。
【0033】
本発明の組成物は、第1成分と第2成分に加えてその他の重合性化合物を含んでもよい。その他の重合性化合物の好ましい添加量は、第1成分と第2成分の合計量に対する重量比で0~0.20であり、好ましくは0~0.10である。界面活性剤、重合開始剤などの添加剤の使用量は目的を達する最小量でよい。」
d 【0055】
「【0055】
式(5)で示される化合物はトリアジン系の化合物である。化合物(5)の具体例を次に示す。
[図:0001436630000041.jpg]
」
e 【0149】~【0151】
「【実施例1】
【0149】
[MIX1]
[図:0001436630000042.jpg]
化合物(1-9)は特開2003-238491公報に記載の方法で合成した。
化合物(4-1-1)はMacromolecules, 3938-3943, (23), (1990)に記載の方法で合成した。
【0150】
上記の混合物MIX1に対して、重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907、およびトリアジン系化合物として重量比0.10のチヌビン400(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)を添加した。この組成物にシクロヘキサノンを加えて、溶剤の割合が85重量%である重合性液晶組成物の溶液を得た。これを組成物溶液(1)とする。なお、チヌビン400はトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物に1-メトキシ-2-プロパノールを加えたものであり、重量比はトリアジン化合物:1-メトキシ-2-プロパノール=85:15である。
【0151】
次に、この組成物溶液(1)を、ガラス基板(松波スライドガラス:S-1112)上にスピンコートにより塗布した。この基板を70℃で3分間加熱し、溶剤が除去された塗膜を紫外線により窒素気流下で重合させて、均一なホメオトロピック配向を有する液晶フィルムを得た。この組成物溶液(1)の保存安定性は良好であり、その色合いの変化はほとんど観察されなかった。」
(イ) 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、実施例1に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「重合性液晶組成物であって、(【0150】)
混合物MIX1に対して、重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907、およびトリアジン系化合物として重量比0.10のチヌビン400(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)を添加したものであり、
[MIX1]
[図:0001436630000043.jpg]
チヌビン400はトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物に1-メトキシ-2-プロパノールを加えたものであり、重量比はトリアジン化合物:1-メトキシ-2-プロパノール=85:15である
重合性液晶組成物。(【0149】、【0150】及び【0055】)
[図:0001436630000044.jpg]
」
イ 引用文献4に記載された事項及び引用文献4技術事項の認定
(ア) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である国際公開第2018/060110号(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当合議体が付したものである。括弧内に和訳として、引用文献4のファミリー文献である特表2019-532167号公報の記載をそのまま段落番号とともに示した。)。
a 39頁1行~47頁34行
「
[図:0001436630000045.jpg]
[図:0001436630000046.jpg]
[図:0001436630000047.jpg]
[図:0001436630000048.jpg]
[図:0001436630000049.jpg]
[図:0001436630000050.jpg]
[図:0001436630000051.jpg]
[図:0001436630000052.jpg]
[図:0001436630000053.jpg]
」
(【0141】
さらに好ましい態様において、とくに負の光学的分散適用のため、上に記載のとおりの重合性LC材料は加えて、式ND、
【化21】
[図:0001436630000054.jpg]
で表される1以上の化合物を含むが、
【0142】
式中
U1、2は、互いに独立して、
【化22】
[図:0001436630000055.jpg]
(これらの鏡像も包含する)から選択され、式中環U1およびU2は各々、軸結合(the axial bond)を介して基-(B)q-へ結合されており、およびこれらの環中1個または2個の非隣接CH2基は任意に、Oおよび/またはSによって置き換えられていてもよく、および環U1およびU2は任意に、1個以上の基Lによって置換されていてもよく、
【0143】
Q1,2は、互いに独立して、CHまたはSiHであり、
Q3は、CまたはSiであり、
Bは、各存在において、相互に独立して、-C≡C-、-CY1=CY2-または任意に置換されていてもよい芳香族基もしくはヘテロ芳香族基であり、
Y1、2は、互いに独立して、H、F、Cl、CNまたはR0であり、
qは、1から10までの整数、好ましくは1、2、3、4、5、6または7であり、
【0144】
A1~4は、互いに独立して、非芳香族、芳香族もしくはヘテロ芳香族の炭素環式基またはヘテロ環式基から選択されるが、これらは任意に、1以上の基R5によって置換されていてもよく、および式中-(A1-Z1)m-U1-(Z2-A2)n-および-(A3-Z3)o-U2-(Z4-A4)p-の各々は、非芳香族基より多く芳香族基を含有せず、および好ましくは、1より多くの芳香族基を含有せず、
【0145】
Z1~4は、互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR00-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CH-、-CY1=CY2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR0R00または単結合であり、
【0146】
R0およびR00は、互いに独立して、H、または1~12個のC原子をもつアルキルであり、
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
oおよびpは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
【0147】
R1~5は、互いに独立して、H、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X0、-C(=O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、P-Sp-、任意に置換されていてもよいシリル、または1~40個のC原子をもつカルビルもしくはヒドロカルビル(任意に置換されていてもよく、および任意に、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい)から選択される同一のまたは異なる基であるか、あるいはPまたはP-Sp-を示すか、あるいはPまたはP-Sp-によって置換されており、ここで化合物は、PもしくはP-Sp-を示すかまたはPもしくはP-Sp-によって置換されている少なくとも1個の基R1~5を含み、
【0148】
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である。
【0149】
好ましくは、式ND中の架橋基Bを形成する部分基(the subgroups)は、好ましくは、120°以上の、好ましくは180°の範囲にある結合角を有する基から選択される。極めて好ましいのは、これらの隣接基にパラ位で接続された-C≡C-基または二価芳香族基、例として、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、インダン-2,6-ジイルまたはチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル等である。
【0150】
さらに可能な部分基は、-CH=CH-、-CY1=CY2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-および-CH=CR0-(式中Y1、Y2、R0は、上に与えられる意味を有する)を包含する。
【0151】
好ましくは、架橋基、つまり式ND中の-(B)q-は、-C≡C-、任意に置換されていてもよい1,4-フェニレン、および任意に置換されていてもよい9H-フルオレン-2,7-ジイルからなる群から選択される1以上の基を含む。部分基、つまり式ND中のBは、好ましくは、-C≡C-、任意に置換されていてもよい1,4-フェニレン、および任意に置換されていてもよい9H-フルオレン-2,7-ジイルからなる群から選択されるが、ここでフルオレン基中、9位におけるH原子は任意に、カルビル基またはヒドロカルビル基によって置き換えられていてもよい。
【0152】
極めて好ましくは、架橋基、つまり式NDの-(B)q-は、-C≡C-、-C≡C-C≡C-、-C≡C-C≡C-C≡C-、-C≡C-C≡C-C≡C-C≡C-、
【化23】
[図:0001436630000056.jpg]
または
【化24】
[図:0001436630000057.jpg]
から選択され、式中rは、0、1、2、3または4であり、およびLは、下に記載されるとおりの意味を有する。
【0153】
好ましくは、式ND中のU1およびU2等の、メソゲン基の非芳香族環(ここに架橋基が付着されている)は、好ましくは、
【化25】
[図:0001436630000058.jpg]
から選択され、式中R5は、式NDにおいて定義されているとおりである。
【0154】
好ましくは、式ND中の芳香族基A1~4は、単核性(mononuclear)、すなわちたった1つの芳香族環(例えばフェニルまたはフェニレン等)を有していても、または多核性(polynuclear)、すなわち2つ以上の縮合環(例えばナフチルまたはナフチレン等)を有していてもよい。とくに好ましいのは、最大25個のC原子をもつ単-、二-または三環式の芳香族基またはヘテロ芳香族基であって、これらはまた、縮合環をも含んでいてもよく、およびこれらは任意に、置換されていてもよい。
【0155】
好ましくは、式NDで表される化合物中の非芳香族の炭素環式およびヘテロ環式の環A1~4は、飽和の(また「完全に飽和の」とも言及される)もの(すなわちこれらは、単結合によって接続されたC原子またはヘテロ原子しか含有していない)、および不飽和の(また「部分的に飽和の」とも言及される)もの(すなわちこれらはまた、二重結合によって接続されたC原子またはヘテロ原子をも含む)を包含する。非芳香族環はまた、1個以上のヘテロ原子(好ましくはSi、O、NおよびSから選択される)をも含んでいてもよい。
【0156】
好ましくは、非芳香族および芳香族の環、つまり式ND中のA1~4は、トランス-1,4-シクロヘキシレンおよび1,4-フェニレンから選択されるが、これらは任意に、1以上の基Lで置換されていてもよい。
【0157】
極めて好ましいのは、式NDで表される化合物であって、式中mおよびpは、1であり、およびnおよびoは、1または2である。さらに好ましいのは、式NDで表される化合物であって、式中mおよびpは、1または2であり、およびnおよびoは、0である。さらに好ましいのは、m、n、oおよびpが2である化合物である。
【0158】
式NDで表される化合物において、メソゲン基中芳香族および非芳香族の環式基に接続する連結基、つまりZ1~4は、好ましくは-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR0-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CH-、-CY1=CY2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR0R00または単結合から、極めて好ましくは-COO-、-OCO-および単結合から、選択される。
【0159】
好ましくは、式NDで表される化合物において、Lなどの環上の置換基は、好ましくは、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X、-C(=O)OR0、-C(=O)R0、-NR0R00、-OH、-SF5、任意に置換されていてもよいシリル、アリールまたはヘテロアリール(1~12個の、好ましくは1~6個のC原子をもつ)、および直鎖または分枝のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(1~12個の、好ましくは1~6個のC原子をもつ)から選択され、式中1個以上のH原子は任意に、FまたはClによって置き換えられていてもよく、式中R0およびR00は、式NDにおいて定義されたとおりであり、およびXはハロゲンである。
【0160】
好ましくは、式NDで表される化合物は、2以上の重合性基PまたはP-Sp-(多機能の重合性基)によって置換されている、1以上の末端基(R1~4等の)、または置換基(R5等の)を含む。このタイプの好適な多機能の重合性基は、例えばUS 7,060,200 B1またはUS 2006/0172090 A1に開示されている。
【0161】
式NDで表される極めて好ましい化合物は、以下の下位式で表されるものである:
【化26】
[図:0001436630000059.jpg]
【0162】
【化27】
[図:0001436630000060.jpg]
【0163】
【化28】
[図:0001436630000061.jpg]
【0164】
【化29】
[図:0001436630000062.jpg]
【0165】
【化30】
[図:0001436630000063.jpg]
式中R1~5、A1~4、Z1~4、B、m、n、o、pおよびqは、上に与えられる意味の1つを有する。)
b 120頁
「
[図:0001436630000064.jpg]
」
(【0379】
混合物M3
【表8】
[図:0001436630000065.jpg]
)
(イ) 引用文献4技術事項の認定
前記アに摘記した引用文献4の記載事項を総合すると、引用文献4には、式NDaで表される化合物に係る次の技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献4技術事項>
「負の光学的分散適用のため、
重合性LC材料は、下記で表される1以上の化合物を含むこと。
[図:0001436630000066.jpg]
(Bは、各存在において、相互に独立して、-C≡C-、-CY1=CY2-または任意に置換されていてもよい芳香族基もしくはヘテロ芳香族基であり、
Y1、2は、互いに独立して、H、F、Cl、CNまたはR0であり、
qは、1から10までの整数、好ましくは1、2、3、4、5、6または7であり、
A1~4は、互いに独立して、非芳香族、芳香族もしくはヘテロ芳香族の炭素環式基またはヘテロ環式基から選択されるが、これらは任意に、1以上の基R5によって置換されていてもよく、および式中-(A1-Z1)m-U1-(Z2-A2)n-および-(A3-Z3)o-U2-(Z4-A4)p-の各々は、非芳香族基より多く芳香族基を含有せず、および好ましくは、1より多くの芳香族基を含有せず、
Z1~4は、互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR00-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CH-、-CY1=CY2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR0R00または単結合であり、
R0およびR00は、互いに独立して、H、または1~12個のC原子をもつアルキルであり、
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
oおよびpは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
R1~5は、互いに独立して、H、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X0、-C(=O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、P-Sp-、任意に置換されていてもよいシリル、または1~40個のC原子をもつカルビルもしくはヒドロカルビル(任意に置換されていてもよく、および任意に、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい)から選択される同一のまたは異なる基であるか、あるいはPまたはP-Sp-を示すか、あるいはPまたはP-Sp-によって置換されており、ここで化合物は、PもしくはP-Sp-を示すかまたはPもしくはP-Sp-によって置換されている少なくとも1個の基R1~5を含み、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である。)」
ウ 引用文献5~7に記載された事項及び技術常識Aの認定
(ア) 引用文献5に記載された事項
本審決であたらに引用する、優先日前に発行された文献である特開2012-224632号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
式I
【化1】
[図:0001436630000067.jpg]
式中
…(中略)…
R11は、O-R13、O・またはOH、好ましくは、O-R13またはO・、特に好ましくは、O・、イソプロポキシ、シクロヘキシルオキシ、アセトフェノキシまたはベンゾキシ、極めて特に好ましくは、O・を示し、
…(中略)…
R13は、各々存在する場合には、互いに独立して、1~20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖を示し、ここで、1個の-CH2-基または複数の-CH2-基は、-O-または-(C=O)-により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の-CH2-基は、-O-により置き換えられていてはならず、…(後略)
【請求項2】
式I-1~I-9
…(中略)…
【化7】
[図:0001436630000068.jpg]
…(中略)…
で表される化合物の群から選択される、式Iで表される化合物。」
「【0034】
驚くべきことに、式Iで表される化合物により、熱安定剤を添加せずに単独で使用された場合であっても、UV曝露にもまた加熱にも、液晶混合物の、かなりの、多くの場合においては十分な、安定化がもたらされることが見出された。」
(イ) 引用文献6に記載された事項
本審決であたらに引用する、優先日前に発行された文献である特開2014-84462号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
a) 式Iで表される1種または2種以上の化合物
【化1】
[図:0001436630000069.jpg]
式中
…(中略)…
R11は、O-R13、O・またはOHを示し、
…(中略)…
R13は、それぞれの出現において、互いに独立して、1~20個のC原子を有する直鎖のまたは分枝のアルキル鎖、ここで1つの-CH2-基または複数の-CH2-基は-O-または-C(=O)-により置き換えられていてもよいが、2つの隣接する-CH2-基は-O-により置き換えられることができない、を示す、…(後略)
【請求項2】
式I-1~I-9
…(中略)…
【化8】
[図:0001436630000070.jpg]
…(中略)…
で表される化合物の群から選択される式Iで表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の媒体。」
「【0046】
驚くべきことに、式Iで表される化合物は、追加の熱安定剤なしの単独で用いられる場合でさえも、かなりの、多くの場合において適切な、UV曝露に対するおよびならびに加熱に対する両方の、液晶混合物の安定性をもたらすことがここに見出された。」
(ウ) 引用文献7に記載された事項
本審決であたらに引用する、優先日前に発行された文献である特開2014-84460号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
a) 式Iで表される1種または2種以上の化合物
【化1】
[図:0001436630000071.jpg]
式中
…(中略)…
R11は、O-R13、O・またはOHを示し、
…(中略)…
R13は、それぞれの出現において、互いに独立して、1~20個のC原子を有する直鎖のまたは分枝のアルキル鎖、ここで1つの-CH2-基または複数の-CH2-基は-O-または-C(=O)-により置き換えられていてもよいが、2つの隣接する-CH2-基は-O-により置き換えられることができない、を示す、…(後略)
【請求項2】
式I-1~I-9
…(中略)…
【化7】
[図:0001436630000072.jpg]
…(中略)…
で表される化合物の群から選択される式Iで表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の媒体。」
「【0039】
驚くべきことに、式Iで表される化合物は、追加の熱安定剤なしの単独で用いられる場合でさえも、かなりの、多くの場合において適切な、UV曝露に対するおよびならびに加熱に対する両方の、液晶混合物の安定性をもたらすことがここに見出された。」
(エ) 技術常識Aの認定
前記(ア)~(ウ)に摘記した引用文献5~引用文献7の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識A」という。)。
<技術常識A>
「式I-1で表される化合物は、多くの場合において、UV曝露及び加熱に対する液晶混合物の安定性をもたらすこと。
[図:0001436630000073.jpg]
R11は、O-R13、O・またはOHを示し、
R13は、それぞれの出現において、互いに独立して、1~20個のC原子を有する直鎖のまたは分枝のアルキル鎖を示す。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(重合性LC材料)
「重合性LC材料」の発明である本件補正発明と「重合性液晶組成物」の発明である引用発明は、「重合性LC材料」の発明である点において一致する。
(イ) 構成A及び構成Dの観点(一反応性メソゲン化合物)
a 構成Aは、「式MRM1~MRM27の化合物から成る群より選択される1種類以上の一反応性メソゲン化合物」を含むことである。
構成Dは、「重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~80重量%の範囲内であ[る]」ことである。
(式MRM1~MRM27については、前記1(2)の本件補正後の請求項1の記載を参照)
b 引用発明における式(4-1-1)の化合物である「
[図:0001436630000074.jpg]
」は、本件補正発明にいうところの次の化合物に相当するから、本件補正発明と引用発明は構成Aの観点において一致する。
「
[図:0001436630000075.jpg]
P0:アクリル基
x:6
z:1
w:0
R0:Y0のCN」
c 次に、引用発明の重合性液晶組成物における一反応性メソゲン化合物である式(4-1-1)の化合物の濃度を計算する。
引用発明において、混合物MIX1における式(4-1-1)の化合物の割合は20%である。
そして、重合開始剤イルガキュアー907は、混合物MIX1に対して重量比0.03である。
また、チヌビン400は、混合物MIX1に対して、重量比0.1である。
そうすると、引用発明の重合性液晶組成物における一反応性メソゲン化合物(式(4-1-1)の化合物)の濃度は、次の式で計算され、20%となるから、本件補正発明と引用発明は構成Dの観点において一致する。
20/(100+0.03+0.1)×100=19.9
(ウ) 構成B及び構成Eの観点(二反応性メソゲン化合物)
a 構成Bは、「式DRMa1~DRMeの化合物から成る群より選択される1種類以上の二反応性メソゲン化合物」を含むことである。
構成Eは、「重合性LC材料中における二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~99重量%の範囲内であ[る]」ことである。
(式DRMa1~DRMeについては、前記1(2)の本件補正後の請求項1の記載を参照)
b 引用発明における式(1-17)の化合物である「
[図:0001436630000076.jpg]
(1-9)」は、本件補正発明にいうところの次の化合物に相当するから、本件補正発明と引用発明は構成Bの観点において一致する。
「
[図:0001436630000077.jpg]
P0:アクリル基
x:6
z:1
L:1個のC原子を有するハロゲン化されたアルキル
r:0又は2」
c 次に、引用発明の重合性液晶組成物における二反応性メソゲン化合物の濃度を計算する。
引用発明における混合物MIX1において、二反応性メソゲン化合物は、式(1-9)の化合物及び式(1-17)の化合物である。
混合物MIX1における式(1-9)の化合物の割合は60%であり、式(1-17)の化合物の割合は20%である。
そして、重合開始剤イルガキュアー907は、混合物MIX1に対して、重量比0.03である。
また、チヌビン400は、混合物MIX1に対して、重量比0.1である。
そうすると、引用発明の重合性液晶組成物における二反応性メソゲン化合物(式(1-9)の化合物及び式(1-17)の化合物の濃度は、次の式で計算され、80%となるから、本件補正発明と引用発明は構成Dの観点において一致する。
(60+20)/(100+0.03+0.1)×100=79.9%
(エ) 構成Fの観点(一反応性・二反応性メソゲン化合物の合計濃度)
a 構成Fは、「重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物および二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、30~99.9重量%の範囲内であ[る]」ことである。
b 引用発明の重合性液晶組成物における一反応性メソゲン化合物及び二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、前記(イ)及び(ウ)の場合と同様に次の式で計算され、99.9%となるから、本件補正発明と引用発明は構成Fの観点において一致する。
(100/(100+0.03+0.1)×100=99.87%
(オ) 構成C及び構成Gの観点(式S0、S1又はS2の化合物)
a 構成Cは、「1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物」を含むことである。
構成Gは、「重合性LC材料中における式S0~S2の化合物の合計濃度は、10~2000ppmの範囲内であ[る]」ことである。
(式S0~S2については、前記1(2)の本件補正後の請求項1の記載を参照)
b 引用発明において、チヌビン400はトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物に1-メトキシ-2-プロパノールを加えたものであり、重量比はトリアジン化合物:1-メトキシ-2-プロパノール=85:15である。
そうすると、引用発明の重合性液晶組成物におけるトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物の濃度は、前記(イ)~(エ)の場合と同様に次の式で計算され、849ppmとなる。
(0.1×0.85)/(100+0.03+0.1)×100=0.0849%(849ppm)
である。
c 前記bも踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成C及び構成Gの観点について、次に示す点において相違する。
<構成C及び構成Gの観点の相違点>
本件補正発明においては、
「1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物のに対して、
[図:0001436630000078.jpg]
(式中、個々の基は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一にまたは異なって、以下の意味を有する:
[図:0001436630000079.jpg]
であり、
Paは、重合性基であり、
Spは、1~12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンであり、ただし加えて1個または2個の隣接しないCH2基はO原子が互いに直接連結しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-で置き換えられてよく、
X1およびX2は、それぞれ独立に-O-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-または単結合を表し、
Ra~dは、それぞれ独立に1~20個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、
R1およびR2は、それぞれ独立にH、CH3、OH、ORaまたはO●を表し、および
nは、1および8の間の整数を表す。」を含み、「重合性LC材料中における式S0~S2の化合物の合計濃度は、10~2000ppmの範囲内であ[る]」
引用発明においては、
トリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物を、849ppm含む点。
(カ) 構成Hの観点(両メソゲン、S0~S2の合計濃度)
a 構成Hは、「重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物、二反応性メソゲン化合物および式S0~S2の化合物の合計濃度は、100重量%以下であ[る]」ことである。
b 引用発明において、重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の式(4-1-1)、二反応性メソゲン化合物の式(1-9)の化合物及び式(1-17)の化合物並びにトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物の合計濃度が100重量%以下であることは、明らかである。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次に示す相違点において相違すると認められる。
本件補正発明においては、
「重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物、二反応性メソゲン化合物および式S0~S2の化合物の合計濃度は、100重量%以下であ[る]」のに対して、
引用発明においては、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の式(4-1-1)、二反応性メソゲン化合物の式(1-9)の化合物及び式(1-17)の化合物並びにトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物の合計濃度は、100重量%以下である点。
(キ) 構成Iの観点(式NDaの化合物について)
a 構成Iは、「1種類以上の式NDaの化合物を含む」ことである。
(式NDaについては、前記1(2)の本件補正後の請求項1の記載を参照)
b 本件補正発明と引用発明は、構成Iの観点である次の点において相違する。
本件補正発明においては、
「1種類以上の式NDaの化合物を含む」のに対して、
引用発明においては、
1種類以上の式NDaの化合物を含まない点。
(式NDaについては、前記1(2)の本件補正後の請求項1の記載を参照)
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「式MRM1~MRM27の化合物から成る群より選択される1種類以上の一反応性メソゲン化合物と、
式DRMa1~DRMeの化合物から成る群より選択される1種類以上の二反応性メソゲン化合物とを含む重合性LC材料であって、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~80重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、5~99重量%の範囲内であり、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物および二反応性メソゲン化合物の合計濃度は、30~99.9重量%の範囲内である重合性LC材料。
(式MRM1~MRM27及び式DRMa1~DRMeについては、前記1(2)の本件補正後の請求項1の記載を参照)」の発明である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明においては、
「1種類以上の式S0、S1またはS2の化合物
【化7】
[図:0001436630000080.jpg]
(式中、個々の基は、それぞれ互いに独立に、それぞれの出現において同一にまたは異なって、以下の意味を有する:
【化8】
[図:0001436630000081.jpg]
であり、
Paは、重合性基であり、
Spは、1~12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンであり、ただし加えて1個または2個の隣接しないCH2基はO原子が互いに直接連結しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-で置き換えられてよく、
X1およびX2は、それぞれ独立に-O-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-または単結合を表し、
Ra~dは、それぞれ独立に1~20個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、
R1およびR2は、それぞれ独立にH、CH3、OH、ORaまたはO●を表し、および
nは、1および8の間の整数を表す。)」を含み、
「重合性LC材料中における式S0~S2の化合物の合計濃度は、10~2000ppmの範囲内であり」
「重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物、二反応性メソゲン化合物および式S0~S2の化合物の合計濃度は、100重量%以下であ[る]」のに対して、
引用発明においては、
トリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物を、849ppm含み、
重合性LC材料中における一反応性メソゲン化合物の式(4-1-1)、二反応性メソゲン化合物の式(1-9)の化合物、及び式(1-17)の化合物並びにトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物の合計濃度は、100重量%以下である点。
b 相違点2
本件補正発明においては、
「1種類以上の式NDaの化合物を含む」のに対して、
引用発明においては、
1種類以上の式NDaの化合物を含まない点。
「【化9】
[図:0001436630000082.jpg]
(式中、
Bは、それぞれの出現で互いに独立に-C≡C-、-CY1=CY2-または置換されてよい芳香族もしくはヘテロ芳香族基であり、
Y1,2は、それぞれ互いに独立にH、F、Cl、CNまたはR0であり、
qは、1~10の整数であり、
A1~4は、それぞれ互いに独立に非芳香族、芳香族またはヘテロ芳香族炭素環式またはヘテロ環式基から選択され、該基は1個以上の基R5で置換されてよく、ただし-(A1-Z1)m-、-(Z2-A2)n-、-(A3-Z3)o-および-(Z4-A4)p-は、それぞれ非芳香族基よりも多い芳香族基を含まず、
Z1~4は、それぞれ互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR00-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CH-、-CY1=CY2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR0R00または単結合であり、
R0およびR00は、それぞれ互いに独立にHまたは1~12個のC原子を有するアルキルであり、
mおよびnは、それぞれ互いに独立に0、1、2、3または4であり、
oおよびpは、それぞれ互いに独立に0、1、2、3または4であり、
R1~5は、それぞれ互いに独立にH、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X0、-C(=O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、P-Sp-、置換されてよいシリル、または1~40個のC原子を有し置換されてよく1個以上のヘテロ原子を含んでよいカルビルもしくはヒドロカルビルから選択される同一または異なる基であるか、またはPもしくはP-Sp
-を表すか、またはPもしくはP-Sp-で置換されており、ただし化合物はPもしくはP-Sp-を表すか置換される1個以上の基R1~5を含み、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である。)」
(4) 判断
ア 相違点1について
(ア) 引用発明における「トリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物」の位置づけについて検討する。
(イ) これらは、引用文献1の【0055】を参照すると、「トリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物」は、式(5)で示される化合物の具体例であることが把握できる。
(ウ) そして、引用文献1の請求項1の記載から理解されるように、引用発明における式(5)で表される化合物は、第3成分選択肢の一つであり、第3成分として、次の式(7-1)で表される化合物が記載されている。
「
[図:0001436630000083.jpg]
ここに、R51は独立して水素、オキシラジカル、炭素数1~16のアルキル、炭素数1~16のアルコキシ、または炭素数1~16のアルキルカルボニルであり;kは2~20の整数であ[る]」
(エ) そうすると、トリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)に代えて、第3成分の式(7-1)の化合物のなから適宜のもの、例えば式(7-1)の化合物で、R51として、オキシラジカル又は炭素数1~16のアルコキシ、kとして、2~12のもの(以下「トリアジン系化合物代替物」という。)を選択することは、当業者が容易になし得た設計変更にすぎない。
(オ) さらに、引用発明のトリアジン系化合物(5-1)と化合物(5-2)の混合物の濃度が849ppmであることに照らし、「トリアジン系化合物代替物」の濃度をこれと同程度の範囲で好適化して選択し、10~2000ppmの範囲内にすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
(カ) そして、「式(7-1)で表される化合物で、R51として、オキシラジカル又は炭素数1~16のアルコキシ、kとして、2~12のもの」は、本件補正発明における次のものに相当する。
「
[図:0001436630000084.jpg]
(式中の、Spは、2~12個のC原子を有する直鎖状のアルキレンであり、
X1およびX2は、それぞれ独立に-CO-O-、-O-CO-を表し、
Ra~dは、それぞれ独立に1個のC原子を有する直鎖状のアルキルを表し、
R1およびR2は、それぞれ独立にORaまたはO●を表[す](Ra、bは、それぞれ独立に1~16個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表[す]。)。)」
(キ) 以上のとおりであるから、引用発明において相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得た設計変更にすぎない。
イ 相違点2について
(ア) 引用文献4には、相違点2に相当する次の引用文献4技術事項が記載されている。
<引用文献4技術事項>
「負の光学的分散適用のため、
重合性LC材料は、下記で表される1以上の化合物を含むこと。
[図:0001436630000085.jpg]
(Bは、各存在において、相互に独立して、-C≡C-、-CY1=CY2-または任意に置換されていてもよい芳香族基もしくはヘテロ芳香族基であり、
Y1、2は、互いに独立して、H、F、Cl、CNまたはR0であり、
qは、1から10までの整数、好ましくは1、2、3、4、5、6または7であり、
A1~4は、互いに独立して、非芳香族、芳香族もしくはヘテロ芳香族の炭素環式基またはヘテロ環式基から選択されるが、これらは任意に、1以上の基R5によって置換されていてもよく、および式中-(A1-Z1)m-U1-(Z2-A2)n-および-(A3-Z3)o-U2-(Z4-A4)p-の各々は、非芳香族基より多く芳香族基を含有せず、および好ましくは、1より多くの芳香族基を含有せず、
Z1~4は、互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR00-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CH-、-CY1=CY2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR0R00または単結合であり、
R0およびR00は、互いに独立して、H、または1~12個のC原子をもつアルキルであり、
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
oおよびpは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
R1~5は、互いに独立して、H、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X0、-C(=O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、P-Sp-、任意に置換されていてもよいシリル、または1~40個のC原子をもつカルビルもしくはヒドロカルビル(任意に置換されていてもよく、および任意に、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい)から選択される同一のまたは異なる基であるか、あるいはPまたはP-Sp-を示すか、あるいはPまたはP-Sp-によって置換されており、ここで化合物は、PもしくはP-Sp-を示すかまたはPもしくはP-Sp-によって置換されている少なくとも1個の基R1~5を含み、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合である。)」
(イ) したがって、引用発明において、負の光学的分散とするために、引用文献4技術事項を採用して、添加量を適宜調整し、構成A~Hに加えて相違点2に係る本件補正発明の構成Iを備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 効果について
次の技術事項は、最先の優先日前において技術常識である(技術常識A(前記(2)ウ(エ)参照)。
「式I-1で表される化合物は、多くの場合において、UV曝露及び加熱に対する液晶混合物の安定性をもたらすこと。
[図:0001436630000086.jpg]
R11は、O-R13、O・またはOHを示し、
R13は、それぞれの出現において、互いに独立して、1~20個のC原子を有する直鎖のまたは分枝のアルキル鎖を示す。」
そうすると、本件補正発明が示すUV安定性又は熱耐久性は、当業者が予測できるものであり、本件補正発明の構成が奏する効果として、当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果であるとはいえない。
そのほか、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の構成が奏する効果として、当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
エ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記ウにおいて検討したとおり、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
式NDaの化合物は、特に負の光学分散用途において優れた性能を実現し、より具体的には本願実施例において式NDaの化合物として、その下位概念である式RM-6の化合物を採用して負の光学分散を有するフィルムが作製されており、それらフィルムの位相差および分散の変化が日照試験の前後で決定されており、それら変化が極めて小さいこと、即ちフィルムが優れた耐久性を有していることが確認されているが、一方、引用文献には特に負の光学分散用途において式NDaの化合物を採用して優れた耐久性を有するフィルムを実現することは記載も示唆もされていない旨主張する。
(イ) 請求人の主張についての検討
請求人の主張は相違点2に係るものであるところ、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4には、負の光学的分散適用のため、重合性LC材料に式NDaの化合物を採用することが記載されており、かかる技術事項に基づいて相違点2が容易に想到し得たものであることは、前記(4)イに示したとおりである。
また、本願の実施例及び比較例はともに、RM-6の化合物を採用したものであり、本願の実施例及び比較例からは、RM-6の化合物を採用することで、優れた耐久性を有するフィルムを実現できているかどうかは分からないし、請求人の主張する効果が発見困難なものであり、前記想到の容易性を否定してまで進歩性を認めるべき事情(顕著性)があるとは認められない。
したがって、請求人の主張は、前記エの結論を左右するものではない。
カ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(4)カのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由である理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2007-16207号公報
3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
引用文献1に記載された事項及び引用発明は、前記第2の3(2)アに示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から本件補正前の請求項1に記載された「重合性LC材料」について、「1種類以上の式NDaの化合物を含む」ことの限定を省いたものである
そうすると、本願発明の引用発明は、前記第2の3(3)イ(ア)の一致点において一致し、前記2の3(3)イ(イ)に示す相違点1において相違する。
そして、前記第2の3(4)アにおいて説示したとおり、相違点1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010508