特許拒絶査定不服審判
2022-003236
レンズ駆動装置、カメラ装置、及び電子機器
- 審判番号
- 2022-003236
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-070749外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月03日
- 審決日
- 2023年06月19日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】新思考電機有限公司
- 【請求人代理人】TRY国際弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 70749「レンズ駆動装置、カメラ装置、及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月29日出願公開、特開2020-177235〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)4月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年4月19日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 3年 5月31日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 9月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年12月 1日付け:拒絶査定
令和 4年 3月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年3月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年3月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
第一可動体であって、Z方向に光軸を有する第一レンズ体を収容するための第一貫通孔が設けられた第一レンズキャリアと、前記第一レンズキャリアの前記第一貫通孔を挟んだ前記Z方向と直交するY方向で対向する二辺に設けられる板状の一対の第一磁石と、を有する第一可動体と、
第二可動体であって、前記Z方向に光軸を有する第二レンズ体を収容するための第二貫通孔が設けられた第二レンズキャリアと、前記第二レンズキャリアの前記第二貫通孔を挟んだ前記Z方向と直交する前記Y方向で対向する二辺に設けられる板状の一対の第二磁石と、を有する第二可動体と、
前記Z方向及び前記Y方向と直交するX方向で互いに並置される前記第一可動体と前記第二可動体をそれぞれ前記Z方向に移動可能に支持する板ばねと
を備え、
前記第一磁石及び前記第二磁石は、それぞれ2つの磁石片から構成され、
前記第一磁石の前記Z方向の前側の前記磁石片及び前記第一磁石の前記Z方向の後側の前記磁石片は、前記Y方向の内側、外側の板面のそれぞれが異なる磁極に磁化されているとともに、その磁化の向きは前記Z方向の前側と後側とで逆転しており、
前記第二磁石の前記Z方向の前側の前記磁石片及び前記第二磁石の前記Z方向の後側の前記磁石片は、前記Y方向の内側、外側の板面のそれぞれが異なる磁極に磁化されているとともに、その磁化の向きは前記Z方向の前側と後側とで逆転しており、
前記第一磁石は、前記第一可動体の前記Z方向の駆動力を生み出すものであり、前記第二磁石は、前記第二可動体の前記Z方向の駆動力を生み出すものであり、
前記第一磁石は、前記第一レンズキャリアにおける前記Y方向で対向する前記二辺に設けられるとともに、前記X方向で前記第二レンズキャリアと対向する辺には磁石は設けられておらず、残りの他の辺には前記第一可動体の前記Z方向の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、
前記第二磁石は、前記第二レンズキャリアにおける前記Y方向で対向する前記二辺に設けられるとともに、前記X方向で前記第一レンズキャリアと対向する辺には磁石は設けられておらず、残りの他の辺には前記第二可動体の前記Z方向の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、
前記一対の第一磁石は、その端面を前記X方向で前記第二可動体に向けており、
前記一対の第二磁石は、その端面を前記X方向で前記第一可動体に向けており、
前記第一磁石の前記X方向で前記第二可動体に向いた前記端面又は前記第二磁石の前記X方向で前記第一可動体に向いた前記端面の少なくとも一方に、前記端面から出る磁力線の範囲を小さくする強磁性体を設けた
ことを特徴とするレンズ駆動装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年9月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
第一可動体であって、Z方向に光軸を有する第一レンズ体を収容するための第一貫通孔が設けられた第一レンズキャリアと、前記第一レンズキャリアの前記第一貫通孔を挟んだ対向する二辺に設けられる板状の一対の第一磁石と、を有する第一可動体と、
第二可動体であって、前記Z方向に光軸を有する第二レンズ体を収容するための第二貫通孔が設けられた第二レンズキャリアと、前記第二レンズキャリアの前記第二貫通孔を挟んだ対向する二辺に設けられる板状の一対の第二磁石と、を有する第二可動体と、
前記Z方向と直交する方向で互いに並置される前記第一可動体と前記第二可動体をそれぞれ前記Z方向に移動可能に支持する板ばねと、を備え、
前記第一磁石及び前記第二磁石は、それぞれ2つの磁石片から構成され、
前記第一磁石の前側の前記磁石片及び前記第一磁石の後側の前記磁石片は、内側、外側 の板面のそれぞれが異なる磁極に磁化されているとともに、その磁化の向きは前記Z方向の前側と後側とで逆転しており、
前記第二磁石の前側の前記磁石片及び前記第二磁石の後側の前記磁石片は、内側、外側の板面のそれぞれが異なる磁極に磁化されているとともに、その磁化の向きは前記Z方向の前側と後側とで逆転しており、
前記第一磁石は、前記第一可動体の駆動力を生み出すものであり、前記第二磁石は、前記第二可動体の駆動力を生み出すものであり、
前記第一磁石は、前記第一レンズキャリアにおける対向する前記二辺に設けられるとともに、残りの他の辺には前記第一可動体の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、
前記第二磁石は、前記第二レンズキャリアにおける対向する前記二辺に設けられるとともに、残りの他の辺には前記第二可動体の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、
前記第一磁石は、その端面を前記第二可動体に向けている
ことを特徴とするレンズ駆動装置。」
2 補正の適否
本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第一磁石」、「第二磁石」、「板ばね」及び「レンズ駆動装置」について、上記のとおり限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2017/0082823号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「
[図:0001404053000001.jpg]
」
(当審訳:
【0048】 図3および図4を参照すると、移動フレーム120はカバー121,第一の移動フレーム122、第二の移動フレーム123、および第三の移動フレーム124を含む場合がある。)
「
[図:0001404053000002.jpg]
」
(当審訳:
【0050】 図4を参照すると、第一の移動フレーム122には、第一のレンズ21aを含む第一の鏡筒22aを始動させる第一の始動装置122aを形成する場合がある。第一の移動フレーム122は、第一の鏡筒22aを光軸方向(Z軸方向)に移動させることができる。これのために、第一の磁石125aを、固定フレーム130(図3に示す)に位置する第一の駆動コイル(図5に示す)に対応して第一の移動フレーム122上に配置する場合がある。第一の磁石125aは、N極とS極が光軸方向にしたがって配置される構造を持つ場合がある。第一の磁石125aには、永久磁石などの電力無しで磁力を生成する部材を形成する場合がある。第一の移動フレーム122には、第一の磁石125aを挿入するための第一の溝122cを形成する場合がある。)
「
[図:0001404053000003.jpg]
[図:0001404053000004.jpg]
」
(当審訳:
【0053】 図4を参照すると、第二の移動フレーム123は、第二のレンズ21bを含む第二の鏡筒22bを光軸方向に移動することができる。このために、第二の移動フレーム123は、第二の鏡筒22bを始動させるための第二の始動装置123a、第二の移動フレーム123を光軸方向にガイドするための第二のガイド溝123b、固定フレーム130(図3に示す)に位置する第二の駆動コイル135b(図5に示す)に対応して配置される第二の磁石125b、第二の磁石125bを挿入するための第二の溝123c、および第五の磁石129に対応して位置する第二のヨーク126bを含む場合がある。このために、第二の移動フレーム123は第一の移動フレーム122の構造と同様な構造を有する。それゆえ、第二の移動フレーム123の詳細な説明は、説明の反復を避けるために省略する。)
「
[図:0001404053000005.jpg]
」
(当審訳:
「【0066】 図4および図5を参照すると、電力を第一の駆動コイル135aに供給すると、第一の移動フレーム122に位置する第一の磁石125aは光軸方向に移動できる。さらに、電力を第二の駆動コイル135bに供給すると、第二の移動フレーム123に位置する第二の磁石125bは光軸方向に移動できる。第一の駆動コイル135aおよび第二の駆動コイル135bに供給される電流方向次第で、第一の移動フレーム122に位置する第一の磁石125aと第二の移動フレーム123に位置する第二の磁石125bは光軸方向に正にまたは負に移動できる。」
【0050】及び【0053】を参照しつつ、FIG.4をみると、第一の移動フレーム122には、第一のレンズ21aを収容するための貫通孔が第一の鏡筒22aに設けられ、第二の移動フレーム123と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125aが設けられること、及び第二の移動フレーム123には、第二のレンズ21bを収容するための貫通孔が第二の鏡筒22bに設けられ、第一の移動フレーム122と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125bが設けられることが、把握できる。
[図:0001404053000006.jpg]
イ したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
「第一の移動フレーム122、第二の移動フレーム123を含み、(【0048】)
第一の移動フレーム122は、第一のレンズ21aを含む第一の鏡筒22aを光軸方向(Z軸方向)に移動させることができ、(【0050】)
第二の移動フレーム123は、第二のレンズ21bを含む第二の鏡筒22bを光軸方向に移動することができ、(【0053】)
第一の移動フレーム122には、第一のレンズ21aを収容するための貫通孔が第一の鏡筒22aに設けられ、第二の移動フレーム123と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125aが設けられ、
第二の移動フレーム123には、第二のレンズ21bを収容するための貫通孔が第二の鏡筒22bに設けられ、第一の移動フレーム122と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125bが設けられ、(FIG.4)
第一の磁石125aは、N極とS極が光軸方向にしたがって配置される構造を持ち、(【0050】)
第二の移動フレーム123は第一の移動フレーム122の構造と同様な構造を有し、(【0053】)
電力を第一の駆動コイル135aに供給すると、第一の移動フレーム122に位置する第一の磁石125aは光軸方向に移動でき、
電力を第二の駆動コイル135bに供給すると、第二の移動フレーム123に位置する第二の磁石125bは光軸方向に移動できる(【0066】)
移動フレーム120。(【0048】)」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「第一の移動フレーム122」は、本件補正発明の「第一可動体」に、
引用発明の「第一のレンズ21a」は、本件補正発明の「第一レンズ体」に、
引用発明の「第-のレンズ21aを収容するための貫通孔」は、本件補正発明の「第一貫通孔」に、
引用発明の「第一の鏡筒22a」は、本件補正発明の「第一レンズキャリア」に、
引用発明の「板状の一対の第一の磁石125a」は、本件補正発明の「板状の一対の第一磁石」に、
引用発明の「第二の移動フレーム123」は、本件補正発明の「第二可動体」に、
引用発明の「第二のレンズ21b」は、本件補正発明の「第二レンズ体」に、
引用発明の「第二のレンズ21bを収容するための貫通孔」は、本件補正発明の「第二貫通孔」に、
引用発明の「第二の鏡筒22b」は、本件補正発明の「第二レンズキャリア」に、
引用発明の「板状の一対の第一の磁石125a」は、本件補正発明の「板状の一対の第二磁石」に、
引用発明の「移動フレーム120」は、本件補正発明の「レンズ駆動装置」に、
それぞれ相当する。
イ 本件補正発明の「第一可動体であって、Z方向に光軸を有する第一レンズ体を収容するための第一貫通孔が設けられた第一レンズキャリアと、前記第一レンズキャリアの前記第一貫通孔を挟んだ前記Z方向と直交するY方向で対向する二辺に設けられる板状の一対の第一磁石と、を有する第一可動体」の構成について
引用発明の「第一の移動フレーム122は、第一のレンズ21aを含む第一の鏡筒22aを光軸方向(Z軸方向)に移動させることができ、」「第一の移動フレーム122には、第一のレンズ21aを収容するための貫通孔が第一の鏡筒22aに設けられ、第二の移動フレーム123と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125aが設けられ」ている。
そうすると、引用発明は上記構成を備えているといえる。
ウ 本件補正発明の「第二可動体であって、前記Z方向に光軸を有する第二レンズ体を収容するための第二貫通孔が設けられた第二レンズキャリアと、前記第二レンズキャリアの前記第二貫通孔を挟んだ前記Z方向と直交する前記Y方向で対向する二辺に設けられる板状の一対の第二磁石と、を有する第二可動体」の構成について
引用発明の「第二の移動フレーム123は、第二のレンズ21bを含む第二の鏡筒22bを光軸方向に移動することができ、」「第二の移動フレーム123には、第二のレンズ21bを収容するための貫通孔が第二の鏡筒22bに設けられ、第一の移動フレーム122と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125bが設けられ」ている。
そうすると、引用発明は上記構成を備えているといえる。
エ 本件補正発明の「前記第一磁石は、前記第一可動体の前記Z方向の駆動力を生み出すものであり、前記第二磁石は、前記第二可動体の前記Z方向の駆動力を生み出すものであり」の構成について
引用発明の移動フレーム120は、「電力を第一の駆動コイル135aに供給すると、第一の移動フレーム122に位置する第一の磁石125aは光軸方向に移動でき、電力を第二の駆動コイル135bに供給すると、第二の移動フレーム123に位置する第二の磁石125bは光軸方向に移動できる」ものであることから、第一の磁石125aは、第一の移動フレーム122を光軸方向に移動させる駆動力を生み出すといえ、第二の磁石125bは、第二の移動フレーム123を光軸方向に移動させる駆動力を生み出すといえる。
そうすると、引用発明は上記構成を備えているといえる。
オ 本件補正発明の「前記第一磁石は、前記第一レンズキャリアにおける前記Y方向で対向する前記二辺に設けられるとともに、前記X方向で前記第二レンズキャリアと対向する辺には磁石は設けられておらず、残りの他の辺には前記第一可動体の前記Z方向の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、前記第二磁石は、前記第二レンズキャリアにおける前記Y方向で対向する前記二辺に設けられるとともに、前記X方向で前記第一レンズキャリアと対向する辺には磁石は設けられておらず、残りの他の辺には前記第二可動体の前記Z方向の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、」「前記一対の第一磁石は、その端面を前記X方向で前記第二可動体に向けており、前記一対の第二磁石は、その端面を前記X方向で前記第一可動体に向けており」の構成について
引用発明の移動フレーム120は、「第一の移動フレーム122には、第一のレンズ21aを収容するための貫通孔が第一の鏡筒22aに設けられ、第二の移動フレーム123と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125aが設けられ、第二の移動フレーム123には、第二のレンズ21bを収容するための貫通孔が第二の鏡筒22bに設けられ、第一の移動フレーム122と対向する側部以外の当該貫通孔を挟んだ対向する部分のみに板状の一対の第一の磁石125bが設けられ」ていることから、板状の一対の第一の磁石125aは、第一の移動フレーム122における光軸方向で対向する部分に設けられ、第二の移動フレーム123と対向する側部及び残りの他の場所には設けられていないといえ、板状の一対の第一の磁石125bは、第二の移動フレーム123における光軸方向で対向する部分に設けられ、第一の移動フレーム122と対向する側部及び残りの他の場所には設けられていないといえ、また、板状の一対の第一の磁石125aは、その端面を第二の移動フレーム123に向け、板状の一対の第一の磁石125bは、その端面を第一の移動フレーム122に向けているとえる。
そうすると、引用発明は上記構成を備えているといえる。
カ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「第一可動体であって、Z方向に光軸を有する第一レンズ体を収容するための第一貫通孔が設けられた第一レンズキャリアと、前記第一レンズキャリアの前記第一貫通孔を挟んだ前記Z方向と直交するY方向で対向する二辺に設けられる板状の一対の第一磁石と、を有する第一可動体と、
第二可動体であって、前記Z方向に光軸を有する第二レンズ体を収容するための第二貫通孔が設けられた第二レンズキャリアと、前記第二レンズキャリアの前記第二貫通孔を挟んだ前記Z方向と直交する前記Y方向で対向する二辺に設けられる板状の一対の第二磁石と、を有する第二可動体と、
前記第一磁石は、前記第一可動体の前記Z方向の駆動力を生み出すものであり、前記第二磁石は、前記第二可動体の前記Z方向の駆動力を生み出すものであり、
前記第一磁石は、前記第一レンズキャリアにおける前記Y方向で対向する前記二辺に設けられるとともに、前記X方向で前記第二レンズキャリアと対向する辺には磁石は設けられておらず、残りの他の辺には前記第一可動体の前記Z方向の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、
前記第二磁石は、前記第二レンズキャリアにおける前記Y方向で対向する前記二辺に設けられるとともに、前記X方向で前記第一レンズキャリアと対向する辺には磁石は設けられておらず、残りの他の辺には前記第二可動体の前記Z方向の駆動力を生み出す磁石は設けられておらず、
前記一対の第一磁石は、その端面を前記X方向で前記第二可動体に向けており、
前記一対の第二磁石は、その端面を前記X方向で前記第一可動体に向けている
レンズ駆動装置。」
【相違点1】
本件補正発明は、「前記Z方向及び前記Y方向と直交するX方向で互いに並置される前記第一可動体と前記第二可動体をそれぞれ前記Z方向に移動可能に支持する板ばね」を設けているのに対し、引用発明は、板ばねを設けていない点。
【相違点2】
第一磁石及び第二磁石について、本件補正発明は、「それぞれ2つの磁石片から構成され、そのZ方向の前側の磁石片及び第一磁石のZ方向の後側の磁石片は、Y方向の内側、外側の板面のそれぞれが異なる磁極に磁化されているとともに、その磁化の向きはZ方向の前側と後側とで逆転して」いるのに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。
【相違点3】
本件補正発明は、「前記第一磁石の前記X方向で前記第二可動体に向いた前記端面又は前記第二磁石の前記X方向で前記第一可動体に向いた前記端面の少なくとも一方に、前記端面から出る磁力線の範囲を小さくする強磁性体を設け」ているのに対し、引用発明は、強磁性体を設けていない点。
(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
第1カメラユニットと第2カメラユニットを有するカメラシステムにおいて、2つの光学モジュールをそれぞれ移動可能に支持する板バネを設けることは、周知技術(必要ならば、米国特許出願公開第2017/0094187号明細書(特に、[0176]、[0251]、[0256]参照)、中国特許出願公開第107783352号明細書(特に、図2参照)を参照されたい。)である。
そして、引用発明の第一の移動フレーム122は、第一のレンズ21aを含む第一の鏡筒22aを光軸方向(Z軸方向)に移動させることができ、第二の移動フレーム123は、第二のレンズ21bを含む第二の鏡筒22bを光軸方向に移動することができるものであることから、第一の移動フレーム122又は第二の移動フレーム123を移動可能に支持して光軸方向に移動させるために引用発明に周知技術を適用し、第一の移動フレーム122と第二の移動フレーム123をそれぞれ光軸方向に移動可能に支持する板バネを設けるようになすことは、当業者が適宜なし得た事項である。
イ 相違点2について
(ア)引用発明の「第一の磁石125aは、N極とS極が光軸方向にしたがって配置される構造を持ち、第二の移動フレーム123は第一の移動フレーム122の構造と同様な構造を有し」ている。また、引用文献1のFIG.4から、一対の第一の磁石125aは、それぞれ、光軸方向に2つの部材から構成されること、及び一対の第一の磁石125bは、それぞれ、光軸方向に2つの部材から構成されていることが、見て取れる。
そうすると、第一の磁石125aの光軸方向の被写体側の部材と第一の磁石125aの光軸方向の撮像素子側の部材は異なる磁極に磁化されているといえ、第二の磁石125bの光軸方向の被写体側の部材と第二の磁石125bの光軸方向の撮像素子側の部材は異なる磁極に磁化されているといえる。
したがって、相違点2は、実質的な相違点とはいえない。
(イ)仮に、実質的な相違点であった場合について検討する。
第1カメラユニットと第2カメラユニットを有するカメラシステムにおいて、第1カメラユニットの横方向の磁石を第1の対の磁石と第2の対の磁石で構成し、第1の対の磁石と第2の対の磁石は、光軸方向に配置され、光軸方向の磁石は反対極性であり、第2カメラユニットの横方向の磁石を第1の対の磁石と第2の対の磁石で構成し、第1の対の磁石と第2の対の磁石は、光軸方向に配置され、光軸方向の磁石は反対極性であることは、周知技術(必要ならば、米国特許出願公開第2017/0094187号明細書(特に、[0225]~[0227]、FIG.10a~FIG.10c参照)、中国特許出願公開第107783352号明細書(特に、[0068]、図10c参照)を参照されたい。)である。
そうすると、引用文献1には、「第一の磁石125aは、N極とS極が光軸方向にしたがって配置される構造を持ち」との示唆があることから、引用発明に上記周知技術を考慮し、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
ウ 相違点3について
永久磁石の端面にヨーク部を配置し、漏れ磁束を低減させることは、周知技術(必要ならば、特開2016-20939号公報(特に、【0097】、【0098】及び図12参照)、国際公開第2016-006168号(特に、[0098]~[0100]及び図12参照)、特開2017-49343号公報(特に、【0042】~【0044】及び図6参照)を参照されたい。)である。
そして、引用発明において、第一の移動フレーム122と第二の移動フレーム123は、光軸方向に別々に移動させるものであるから、第一の移動フレーム122に位置する第一の磁石125aと第二の移動フレーム123に位置する第二の磁石125bが互いに影響を及ぼさないように、第一の移動フレーム122に位置する第一の磁石125aと第二の移動フレーム123に位置する第二の磁石125bとの間に生じる磁力は、できるだけ小さい方が望ましいことは明らかである。
そうすると、当業者は、引用発明において、上記周知技術を考慮し、第一の磁石125aの第二の移動フレーム123に向いた端面又は第二の磁石125bの第一の移動フレーム122に向いた端面に、漏れ磁束を低減させるヨーク部を配置する動機が存在するといえる。
してみれば、引用発明において、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)審判請求人の主張について
ア 本件審判請求人は、令和4年3月3日付けで提出された審判請求書において、
(ア)「引用文献1に記載の発明は、強磁性体に相当するものであるfirst yoke 126a及びsecond yoke126bを有しますが、これらのヨークの位置は、first moving frame122、及びsecond moving frame123におけるY方向の真中であります。ヨークが、first moving frame122、及びsecond moving frame123におけるY方向の真中の位置に設けられていることが、引用文献1に明示されているのですから、引用文献1に記載の発明と引用文献2-3に記載の発明を組み合わせて、新請求項1に係る発明に想到することは不可能であります。」、
(イ)「新請求項1に係る発明は、「第一磁石のX方向で第二可動体に向いた端面又は第二磁石のX方向で第一可動体に向いた端面の少なくとも一方に、端面から出る磁力線の範囲を小さくする強磁性体を設けた」という構成を有しております。新請求項1は、この構成により、本願の段落0049に記載した、「磁石同士の干渉を起こりにくくすることができる」という格別の効果を奏することができます。」、
と主張している。
イ 上記主張について、以下検討する。
上記(ア)及び(イ)の主張については、前記(4)ウで説示したとおりである。
また、引用文献1のfirst yoke126a及びsecond yoke126bは、fifth magnet129(第五の磁石129)に対応して対応して配置されるものであり、第一の磁石125a及び第二の磁石125bに対応して配置されたものではない。
以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年3月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年9月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ない7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由の概略は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
1.米国特許出願公開第2017/0082823号明細書
2.米国特許出願公開第2017/0094187号明細書(周知技術を示す文献)
3.中国特許出願公開第107783352号明細書(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)で記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第一磁石」、「第二磁石」、「板ばね」及び「レンズ駆動装置」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由2]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-003236