特許拒絶査定不服審判
2022-002568
印刷システム
- 審判番号
- 2022-002568
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-026227外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月21日
- 審決日
- 2023年04月26日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱重工機械システム株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B41F) / P18 .57 -Z (B41F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 26227「印刷システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月29日出願公開、特開2019-142027〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月16日の出願であって、令和3年3月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年8月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年1月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、同年2月21日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和4年2月21日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和4年2月21日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和3年8月11日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至7を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至7へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
巻取紙から繰り出されるシートに対して印刷を行う印刷機と、
前記印刷機における印刷設定値を調整する調整装置と、
巻取紙の製造情報を取り込む情報取込装置と、
前記情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を記憶させる紙庫側記憶部と、
前記紙庫側記憶部の記憶された巻取紙の製造情報と印刷調整作業により得られた最適な印刷設定値とを関連付けて記憶させる印刷機側記憶部と、
印刷に使用する巻取紙の製造情報に基づいて前記印刷機側記憶部に記憶された最適な印刷設定値を取り出し、最適な印刷設定値に基づいて前記調整装置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記情報取込装置は、巻取紙の表面に記載された製造情報を取り込むことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記情報取込装置は、巻取紙の表面に記載されたバーコードを読み込むことで巻取紙の製造情報を取り込むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記情報取込装置は、巻取紙が紙庫に搬入されるときに巻取紙の製造情報を取り込むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項5】
巻取紙を繰り出したシートを印刷ユニットに供給すると共にシートの厚さを算出する給紙ユニットが設けられ、前記制御装置は、前記情報取込装置が取り込んだ巻取紙の製造情報を前記給紙ユニットが算出したシートの厚さにより補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記給紙ユニットは、紙継ぎ装置が設けられ、前記制御装置は、前記紙継ぎ装置の作動後に、紙継ぎがなされた巻取紙の製造情報に基づいて前記調整装置を制御することを特徴とする請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記制御装置は、途中まで使用した巻取紙の製造情報を前記紙庫側記憶部または前記印刷機側記憶部に記憶することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷システム。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
巻取紙から繰り出されるシートに対して印刷を行う印刷機と、
前記印刷機における印刷設定値を調整する調整装置と、
紙庫に搬入される巻取紙の製造情報を取り込む情報取込装置と、
巻取紙の製造情報を記憶する紙庫側記憶部と、
前記情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を前記紙庫側記憶部に記憶させる紙庫制御装置と、
巻取紙の製造情報と印刷調整作業により得られた最適な印刷設定値とを関連付けて記憶させる印刷機側記憶部と、
前記紙庫制御装置を介して入力された前記紙庫で管理されて前記紙庫側記憶部に記憶されている巻取紙の製造情報を前記印刷機側記憶部に記憶させると共に、印刷に使用する巻取紙の製造情報が入力されたときに、入力された巻取紙の製造情報に基づいて前記印刷機側記憶部に記憶された最適な印刷設定値を取り出し、最適な印刷設定値に基づいて前記調整装置を制御する印刷機制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記情報取込装置は、巻取紙の表面に記載された製造情報を取り込むことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記情報取込装置は、巻取紙の表面に記載されたバーコードを読み込むことで巻取紙の製造情報を取り込むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記情報取込装置は、巻取紙が紙庫に搬入されるときに巻取紙の製造情報を取り込むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項5】
巻取紙を繰り出したシートを印刷ユニットに供給すると共にシートの厚さを算出する給紙ユニットが設けられ、前記制御装置は、前記情報取込装置が取り込んだ巻取紙の製造情報を前記給紙ユニットが算出したシートの厚さにより補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記給紙ユニットは、紙継ぎ装置が設けられ、前記制御装置は、前記紙継ぎ装置の作動後に、紙継ぎがなされた巻取紙の製造情報に基づいて前記調整装置を制御することを特徴とする請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記制御装置は、途中まで使用した巻取紙の製造情報を前記紙庫側記憶部または前記印刷機側記憶部に記憶することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷システム。」
2 補正の適否について
(1)本件補正事項
本件補正後の請求項1についての本件補正事項は、本件補正前の請求項1の「印刷システム」の発明特定事項である「巻取紙」について、「紙庫に搬入される」と限定し(以下「補正事項1」という。)、「紙庫側記憶部」について、「巻取紙の製造情報を記憶する」と限定し(以下「補正事項2」という。)、「前記情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を前記紙庫側記憶部に記憶させる紙庫制御装置」との特定事項を追加し(以下「補正事項3」という。)、「紙庫側記憶部に記憶されている巻取紙の製造情報」について「前記紙庫制御装置を介して入力された前記紙庫で管理されて前記紙庫側記憶部に記憶されている巻取紙の製造情報を前記印刷機側記憶部に記憶させると」と限定し(以下「補正事項4」という。)、「巻取紙の製造情報に基づいて前記印刷機側記憶部に記憶された最適な印刷設定値を取り出」す作用について、「印刷に使用する巻取紙の製造情報が入力されたときに、入力された」巻取紙の製造情報に基づいて行うと限定し(以下「補正事項5」という。)、最適な印刷設定値に基づいて前記調整装置を制御する「制御装置」について「印刷」制御装置と限定する(以下「補正事項6」という。)ものである。
(2)補正目的について
特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明りようでない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで、事案に鑑みて、上記補正事項3及び4から、検討する。
ア 上記補正事項3及び4の「紙庫制御装置」は、本件補正前の「印刷システム」には記載されていない事項であるところ、本件補正前の「印刷システム」が備えることが明らかな事項でもない。
イ すなわち、本件補正前の請求項1に、上記補正事項3及び4の「前記情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を前記紙庫側記憶部に記憶させる紙庫制御装置」及び「前記紙庫制御装置を介して入力された前記紙庫で管理されて前記紙庫側記憶部に記憶されている巻取紙の製造情報を前記印刷機側記憶部に記憶させると」が新たに特定されることになった。
ウ してみると、本件補正により、本件補正後の請求項1及び請求項1を直接的に又は間接的に引用する請求項2乃至7に、「前記情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を前記紙庫側記憶部に記憶させる紙庫制御装置」及び「前記紙庫制御装置を介して入力された前記紙庫で管理されて前記紙庫側記憶部に記憶されている巻取紙の製造情報を前記印刷機側記憶部に記憶させると」を発明特定事項として追加したことは、それぞれ、本件補正前の請求項1及び請求項1を直接的に又は間接的に引用する請求項2乃至7における発明特定事項を限定したものではなく、いわゆる外的付加に相当するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことは明らかである。
また、上記補正事項3及び4が、上記第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。
なお、審判請求人は、審判請求書において、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至7の補正が新規事項の追加でないことしか主張せず、本件補正が、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれの目的に該当するかについては、何らの説明もしていない。
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかない。
(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年8月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
巻取紙から繰り出されるシートに対して印刷を行う印刷機と、
前記印刷機における印刷設定値を調整する調整装置と、
巻取紙の製造情報を取り込む情報取込装置と、
前記情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を記憶させる紙庫側記憶部と、
前記紙庫側記憶部の記憶された巻取紙の製造情報と印刷調整作業により得られた最適な印刷設定値とを関連付けて記憶させる印刷機側記憶部と、
印刷に使用する巻取紙の製造情報に基づいて前記印刷機側記憶部に記憶された最適な印刷設定値を取り出し、最適な印刷設定値に基づいて前記調整装置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷システム。
」(以下「本願発明」という。)
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、令和3年3月30日付けの拒絶理由通知書により通知された次に示すものを含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2002-210922号公報
2.新聞印刷ハンドブック第3版,新聞印刷ハンドブック第3版,2015年4月1日(周知技術を示す文献)
3 引用例等
(1)引用例
本願の出願日前の平成14年7月31日に頒布された特開2002-210922号公報(以下「引用例」という)、には、次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項3】 輪転印刷機の各印刷ユニットに備えた印刷速度制御装置と、インフィード部、冷却部、ウェブパス部に備えたテンション制御装置と、印刷物の見当合わせを行うコンペンセーターと、印刷物の折り重ね用三角板とを備えた輪転印刷機における制御装置において
印刷におけるウェブテンション、コンペンセーター位置、三角板位置などの制御データを、紙幅、紙質、紙厚などの紙種データと対にして複数対記憶し、前記紙種データが与えられたとき、対応する制御データ、または近似する紙種データに対応する制御データを出力する生産管理装置と、該生産管理装置が出力した近似する紙種データに対応する制御データから使用する紙種に対応する制御データを算出する制御設定値演算装置とを備え、該制御設定値演算装置の算出した制御データをプリセットして前記各印刷ユニットに備えた印刷速度制御装置と前記テンション制御装置を制御してテンションを一定に制御し、さらにコンペンセーターローラ位置、三角板位置を制御する本機制御装置を設けたことを特徴とする輪転印刷機の制御装置。
【請求項4】 前記生産管理装置は、印刷調節速度と生産印刷速度におけるウェブテンション、コンペンセーター位置、三角板位置などの制御データを、紙幅、紙質、紙厚などの紙種データと対にして記憶していることを特徴とする請求項3に記載した輪転印刷機の制御装置。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、輪転印刷機における印刷開始時の立ち上がりの早期安定化を可能とする、輪転印刷機の制御方法及び装置に関するものである。」
ウ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら実際には印刷紙の紙幅だけでなく、紙質が変わると紙幅が同じでも紙の伸び量が変わって最適なコンペンセーター位置が異なってくるため、紙幅だけでコンペンセーター位置を決めると紙がゆるんだり張りすぎたりし、損紙を増やす原因となる。また印刷速度が変わると、前記したようにウェブテンションが変わって紙の伸び量が変化し、タック(印刷インキの粘り)により印刷紙がローラに取られて断裁位置がずれたりするが、これは前記したようにカットオフコントローラでコンペンセーター位置が自動的に制御されるので、コンペンセーター位置はプリセットした値と異なってくる。仮にこの時点でオペレータ操作によってコンペンセーター位置を記憶すると、印刷機立ち上げ時の最適なコンペンセーター位置と異なるために、次回立ち上げ時にこの値を使うと、紙がゆるむなどして損紙を増やす原因となる。
【0006】また印刷立ち上げ時は、一般的に生産印刷速度より遅い印刷調節速度で色調の調節や見当合わせなどが行われ、それに合わせてこれらウェブテンションやコンペンセーター位置、三角板位置、ターンバー位置を調節する必要があり、前記した生産印刷の速度に合わせた値でこれらウェブテンションやコンペンセーター位置、三角板位置、ターンバー位置を設定すると、印刷紙がゆるむなどして損紙を増やす原因となる。
【0007】そのため本発明においては、印刷紙の紙幅、紙質、紙厚に対する最適なウェブテンションやコンペンセーター位置、三角板位置、ターンバー位置を、短時間で調節して印刷開始時の立ち上がりを早期に安定化させることを課題とする。」
エ 「【0016】図1は本発明の実施の形態を示したシャフトレス輪転機の制御装置の概略ブロック図である。同図において、1は紙幅、紙質、紙厚などの紙種データと、それに対応した印刷調整速度、生産印刷速度などに応じたテンションパターン、コンペンセーター位置プリセット値パターン、三角板の紙幅連動位置プリセット値パターン、ターンバー位置などの制御データをテーブルとして記憶し、入力された紙種に対応した制御データを検索するか、もしくは同一のデータがない場合は近いデータを制御設定値演算装置2に送る生産管理装置で、この生産管理装置1は、輪転機の工場出荷前の調整値、及び以前の印刷で得られた制御データなどを記憶している。
【0017】2は生産管理装置から送られてきたテンションパターン、コンペンセーター位置プリセット値パターン、三角板の紙幅連動位置プリセット値パターン、ターンバー位置などの制御データが、入力された紙種データに対応したものであるときはそのまま、対応したデータでなく、近似値の場合は現在のジョブに対応した値を計算して本機制御装置3に送り出す制御設定値演算装置、3は輪転機(本機)全体を制御する本機制御装置、4は本機制御装置3からの指示でインフィード部17、印刷ユニット20、21、22、23を制御する印刷部側制御装置、5は冷却部25、ウェブパス部28、折り部31を制御する冷却・ウェブパス・折り部制御装置、6、12、14は紙引き用のドラグローラ18、27、30の駆動回路、7、13、15はテンション検出装置19、26、29からの信号からテンション値を算出するテンション検出回路、8、9、10、11は印刷ユニット20、21、22、23のモータの駆動回路、16は折り部31のローラ32の駆動回路、24は印刷の終わったウェブ上のインキを乾燥させる乾燥部である。
【0018】このうち印刷ユニット20、21、22、23には、版胴の回転同期と速度の同期をとるため、版胴やブランケット胴に図示していないエンコーダなどの回転センサを設け、その信号を元に版胴の回転同期と速度の同期をとるようにしてある。
【0019】このように構成した輪転機制御装置における運転は、次の順序で行う。まず生産管理装置1に記憶されている紙種データから、現在のジョブに一致する紙幅、紙質、紙厚などの紙種データを取得する。そしてその紙種データに対応した目標テンションテーブルから、紙種に一致する目標テンションパターンを選択し、制御設定値演算装置2に送る。」
オ 「
[図:0001398823000001.jpg]
」
カ 上記エ及びオより、紙はローラ32にも巻き取られるものであるから、巻取紙から繰り出された紙であることは明らかといえる。
キ 上記エ及びオより、印刷部側制御装置4は、紙引き用のドラグローラ18の駆動回路6及び印刷ユニット20、21、22、23のモータの駆動回路8、9、10、11を制御するものであるから、印刷速度制御装置に対応する。
ク 上記エ及びオより、冷却・ウェブパス・折り部制御装置5は、紙引き用のドラグローラ18、27、30の駆動回路12及び14、折り部31のローラ32の駆動回路16、印刷の終わったウェブ上のインキを乾燥させる乾燥部24を制御するものであるからテンション制御装置に対応する。
上記ア乃至オの記載事項及び上記カの認定事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められ。
「輪転印刷機の各印刷ユニットに備えられ印刷ユニットのモータの駆動回路を制御する印刷速度制御装置と、インフィード部、冷却部、ウェブパス部に備えられ紙引き用のドラグローラの駆動回路、折り部のローラの駆動回路を制御するテンション制御装置と、印刷物の見当合わせを行うコンペンセーターと、印刷物の折り重ね用三角板とを備えた輪転印刷機における制御装置において、
印刷におけるウェブテンション、コンペンセーター位置、三角板位置などの制御データを、巻取紙から繰り出された紙の紙幅、紙質、紙厚などの紙種データと対にして複数対記憶し、前記紙種データが与えられたとき、対応する制御データ、または近似する紙種データに対応する制御データを出力する生産管理装置と、該生産管理装置が出力した近似する紙種データに対応する制御データから使用する紙種に対応する制御データを算出する制御設定値演算装置とを備え、該制御設定値演算装置の算出した制御データをプリセットして前記各印刷ユニットに備えた印刷速度制御装置と前記テンション制御装置を制御してテンションを一定に制御し、さらにコンペンセーターローラ位置、三角板位置を制御する本機制御装置を設け、
前記生産管理装置は、印刷調節速度と生産印刷速度におけるウェブテンション、コンペンセーター位置、三角板位置などの制御データを、紙幅、紙質、紙厚などの紙種データと対にして記憶している、輪転印刷機の制御装置。」
(2)周知例
本願の出願日前に頒布された“一般社団法人日本新聞協会技術委員会、「新聞印刷ハンドブック 第3版」、日本、一般社団法人日本新聞協会、2015年4月1日発行、133及び151頁”(以下「周知例」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「第5章
紙庫・給紙設備
5-1 概要
巻取紙を縦屋内に搬入して保管、出庫して給紙部へ搬送するまでの関連設備と、巻き取り紙の入庫からしよう完了までを一元管理するシステム」(133頁項目、左上欄1~5行)
イ 「5-2 搬入・入庫設備
…巻き取り紙のワンプ表面に貼り付けられたバーコードを読み取り、巻き取り紙の情報を登録して紙庫に搬送する。」(133頁左下欄1行~右下欄1行)
ウ 「5-6 紙庫給紙管理システム
…巻き取り紙を入庫する際にバーコードを読み取り、巻き取り紙の銘柄、サイズ、製造月日、製造マシン番号、ロット番号、連数などの固有データを自動入力することで、システムによる管理ができる。」(151頁左欄1~9行)
上記ア乃至ウの記載事項から、周知例には、次の事項(以下「周知技術」という。)が記載されているものと認められ。
「巻き取り紙の銘柄、サイズ、製造月日、製造マシン番号、ロット番号、連数などの固有データを登録し、管理する紙庫給紙管理システム。」
4 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「輪転印刷機」は、前者の「巻取紙から繰り出されるシートに対して印刷を行う印刷機」に相当する。
(2)前者における「印刷機における印刷設定値を調整する調整装置」とは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)には、「印刷機制御装置11は、バーコードリーダ104が取り込んだ巻取紙Wの製造情報に基づいて調整装置21,22,23,24,25,26を制御することで、印刷機Pにおける印刷設定値を調整する。」(【0058】参照。)と記載されていることから、「制御装置」により制御されるものであるから、後者の「印刷速度制御装置により制御される『輪転印刷機の各印刷ユニットに備えられ印刷ユニットのモータの駆動回路』、並びにテンション制御装置により制御される『インフィード部、冷却部、ウェブパス部に備えられ紙引き用のドラグローラの駆動回路』及び『折り部のローラの駆動回路』」が相当する。
(3)後者の「本機制御装置」は、「印刷におけるウェブテンション、コンペンセーター位置、三角板位置などの制御データを、巻取紙から繰り出された紙の紙幅、紙質、紙厚などの紙種データと対にして複数対記憶」するものであるから、後者の「本機制御装置」は、前者の「巻取紙の製造情報と印刷調整作業により得られた最適な印刷設定値とを関連付けて記憶させる印刷機側記憶部」を備えているといえる。
(4)上記(2)及び(3)の検討より、後者の「印刷速度制御装置とテンション制御装置を制御する『本機制御装置』」は、前者の「印刷に使用する巻取紙の製造情報に基づいて印刷機側記憶部に記憶された最適な印刷設定値を取り出し、最適な印刷設定値に基づいて前記調整装置を制御する制御装置」に相当する。
(5)後者の「輪転印刷機の制御装置」とは、明細書等には、「図1は本発明の実施の形態を示したシャフトレス輪転機の制御装置」(【0016】参照。)と記載されていることから、後者の「輪転印刷機の制御装置」が図1に示された「シャフトレス輪転機の制御装置」を指していることは明らかであるところ、当該「制御装置」が輪転印刷機、インフィード部、冷却部、ウェブパス部、折り部を含むものであるから、前者の「印刷システム」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
【一致点】
「巻取紙から繰り出されるシートに対して印刷を行う印刷機と、
前記印刷機における印刷設定値を調整する調整装置と、
巻取紙の製造情報と印刷調整作業により得られた最適な印刷設定値とを関連付けて記憶させる印刷機側記憶部と、
印刷に使用する巻取紙の製造情報に基づいて前記印刷機側記憶部に記憶された最適な印刷設定値を取り出し、最適な印刷設定値に基づいて前記調整装置を制御する制御装置と、
を備える印刷システム。」
で一致し、以下の点で相違する。
【相違点】
本願発明の「印刷システム」が、「巻取紙の製造情報を取り込む情報取込装置」、「前記情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を記憶させる紙庫側記憶部」、「前記紙庫側記憶部の記憶された」巻取紙の製造情報と印刷調整作業により得られた最適な印刷設定値とを関連付けて記憶させる印刷機側記憶部とを備えるのに対し、引用発明の「輪転印刷機の制御装置」は、「印刷におけるウェブテンション、コンペンセーター位置、三角板位置などの制御データを、巻取紙から繰り出された紙の紙幅、紙質、紙厚などの紙種データとを対にして複数対記憶」するものである点。
ここで、上記周知技術の「紙庫給紙管理システム」は、「巻き取り紙の銘柄、サイズ、製造月日、製造マシン番号、ロット番号、連数などの固有データを登録し、管理する」ものであるから、上記相違点に係る本願発明の「巻取紙の製造情報を取り込む情報取込装置」及び「情報取込装置により取り込まれた巻取紙の製造情報を記憶させる紙庫側記憶部」は周知技術といえる。 ここで、引用発明の「紙」は、巻取紙から繰り出されたものであることからすれば、引用発明の上流に紙庫給紙管理システム、すなわち、上記周知技術を適用することは当業者が適宜なし得るものである。
そして、引用発明が紙種データを記憶していることからすれば、引用発明に上記周知技術を適用するに際しては、当然、紙庫給紙管理システムから輪転印刷機に対し紙種データが送られることとなる。
してみると、引用発明に上記周知技術を適用し、上記相違点に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明及び上記周知技術から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(6)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、“本発明は、紙庫制御装置が紙庫だけを管理し、印刷機制御装置が印刷機だけを制御し、紙庫制御装置と印刷機制御装置との間で必要な情報をやり取りするものであり、このような構成は、引用文献4,6には、記載されていない。本発明は、市中に出回っている巻取紙の製造情報ではなく、紙庫に管理されている巻取紙の製造情報を用い、最適な印刷設定値とを関連付けて記憶し、必要に応じて取り出すものであり、このような本発明特有の構成について、引用文献4,6には記載されていない。引用文献4には、生産管理装置1が、製造情報と最適な印刷設定値とを関連付けて記憶することが記載されているものの、この製造情報が紙庫に管理されている巻取紙の製造情報であるとは記載されていない。
本発明の印刷機側記憶部は、紙庫ある巻取紙の製造情報と最適な印刷設定値とを関連付けて記憶するものであり、印刷機が使用する巻取紙に対する情報だけを記憶する。市中に出回っているものの、印刷機が使用しない巻取紙に対する情報は不要である。本発明は、紙庫で管理されている巻取紙の製造情報と最適な印刷設定値とを関連付けて記憶するものであり、調整作業を容易に行うことができる。本発明は、上述した特有の構成により、紙庫側記憶部に記憶された紙庫にある巻取紙の製造情報を印刷機制御装置へ自動入力することで、リアルタイムで、印刷作業に使用する巻取紙に応じた印刷機の調整のための印刷設定値を最適値に変更することができる。従来は、作業者の手作業により巻取紙の製造情報や印刷設定値を入力しており、本発明を適用することで、データの入力ミスをなくすことができると共に、必要なデータの入力時間や印刷機の調整時間を大幅に短縮することができる。また、印刷開始時の損紙を低減することができ、ランニングコストを抑えることができる。”旨、主張する。
しかし、上記「3(2)」に示されているとおり、周知技術は、紙庫に搬入された巻き取り紙のワンプ表面に貼り付けられたバーコードが読み取られることで、当該取り紙の固有データが登録、管理されるのであるから、市中に出回っているものの、印刷機が使用しない巻取紙に対する情報は、記憶されていないことは明らかである。
してみると、上記請求人の主張は採用できない。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-002568