特許拒絶査定不服審判
2021-017990
デコレータドライブおよび印刷版胴オートメーション
- 審判番号
- 2021-017990
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-500878
- 請求日
- 2021年12月27日
- 審決日
- 2022年12月27日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クラウン パッケイジング テクノロジー インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】倉澤 伊知郎
- 【請求人代理人】山本 泰史
- 【請求人代理人】鈴木 博子
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 比嘉 翔一
- 分類
- P18 .121-Z (B41F) / P18 .575-Z (B41F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-500878「デコレータドライブおよび印刷版胴オートメーション」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月18日国際公開、WO2018/013465、令和 1年 7月18日国内公表、特表2019-520247〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年7月10日(パリ条約による優先権主張2016年7月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年2月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年8月3日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月17日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和3年12月27日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年12月27日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和3年8月3日に出願された時の)特許請求の範囲の請求項1乃至21を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至9へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
缶デコレータであって、該缶デコレータは、
(i)インフィードから飲料缶を受け取り、(ii)対応するスピンドル上で各缶本体を支持し、回転させるようになっており、エンコーダを有するスピンドルディスクモータによって駆動されるスピンドルディスクと、
ブラケットドラムであって、(i)印刷胴から印刷ブラケット上にインクを受け入れ、(ii)缶を装飾するために、飲料缶と見当合わせして該ブラケットドラム上で印刷胴を回転させるようになっており、エンコーダを有するブラケットドラムモータによって駆動されるブラケットドラムと、
前記ブラケットドラムによって装飾された後に前記スピンドルディスクから飲料缶を受け取るようになっており、エンコーダを有する移送ホイールモータによって駆動される移送ホイールと、
前記移送ホイールから缶を受け取り、オーブンを通してチェーン上で缶を搬送するようになっており、エンコーダを有するピンチェーンドライブモータによって駆動されるピンチェーンドライブと、
エンコーダ情報を受け取り、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンドライブモータの速度を合わせまたは調節するようになっている制御器と、を含み、前記モータは、互いに対して独立に駆動可能である、缶デコレータ。
【請求項2】
前記モータの少なくとも1つ上の前記エンコーダは、アブソリュートエンコーダである、請求項1に記載の缶デコレータ。
【請求項3】
前記モータの各々上の前記エンコーダは、アブソリュートエンコーダである、請求項1または2に記載の缶デコレータ。
【請求項4】
前記モータは、サーボモータである、請求項1~3のいずれか1項に記載の缶デコレータ。
【請求項5】
オーバーワニスディスクをさらに含み、該オーバーワニスディスクは、前記スピンドルディスク上にある間に、缶にワニスを塗布するようになっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の缶デコレータ。
【請求項6】
前記モータの各々は、その他のモータがオフの間に作動されることができ、それによって、作動しているモータは、保守任務のために作動可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載の缶デコレータ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の缶デコレータの作動方法であって、該缶デコレータの作動方法は、缶の画像を向上させるために、缶画像情報に応答して、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンモータの少なくとも1つの速度を前記制御器によって調節するステップを含む、缶デコレータの作動方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の缶デコレータでピンチェーンを交換する方法であって、該方法は、前記スピンドルディスク、前記ブラケットドラム、および、前記移送ホイールを回転させることなく、前記ブラケットドラムモータに係合させることによって前記ピンチェーンドライブを前記制御器によって回転させるステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の缶デコレータでブラケットドラムを点検修理または保守する方法であって、該方法は、前記スピンドルディスク、前記移送ホイール、および、前記ピンチェーンドライブを回転させることなく、前記ブラケットドラムモータに係合させることによって前記ブラケットドラムを前記制御器によって回転させるステップを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の缶デコレータで使用されるブラケットドラムであって、該ブラケットドラムは、
印刷胴と、
印刷胴にインクを提供するためのインク着け器と、
印刷胴からインクを受け取るためのブラケットと、
印刷胴を軸線方向に位置決めするための軸線方向アクチュエータと、
印刷胴を半径方向に位置決めするための半径方向アクチュエータと、を含み、
それによって、前記軸線方向アクチュエータおよび前記半径方向アクチュエータは、制御システムへの入力に基づいて飲料缶に対して画像を見当合わせすべく印刷胴の位置決めを調節する、ブラケットドラム。
【請求項11】
前記軸線方向アクチュエータおよび前記半径方向アクチュエータは、サーボモータである、請求項10に記載のブラケットドラム。
【請求項12】
前記軸線方向アクチュエータおよび前記半径方向アクチュエータを制御するための入力は、人間の観察に基づいて人間と機械のインターフェースに入力される、請求項10または11に記載のブラケットドラム。
【請求項13】
前記軸線方向アクチュエータおよび前記半径方向アクチュエータを制御するための入力は、顕微鏡からの缶画像の測定に基づいて人間と機械のインターフェースに入力される、請求項10または11に記載のブラケットドラム。
【請求項14】
前記軸線方向アクチュエータおよび前記半径方向アクチュエータを制御するための入力は、印刷の後に缶の画像を写すカメラからのものである、請求項10または11に記載のブラケットドラム。
【請求項15】
前記カメラからの入力は、人間オペレータの動作により、または、よらずに、前記軸線方向アクチュエータおよび前記半径方向アクチュエータに自動的に供給される、請求項14に記載のブラケットドラム。
【請求項16】
請求項10に記載のブラケットドラムで印刷胴の位置を調節する方法であって、該方法は、
印刷胴の少なくとも1つの軸線方向および/または半径方向位置に対する調節を決定するステップと、
前記少なくとも1つの印刷胴に関連した前記軸線方向アクチュエータおよび/または前記半径方向アクチュエータに信号を送るステップと、
前記信号に応答して、前記軸線方向アクチュエータおよび/または前記半径方向アクチュエータを移動させることによって、前記軸線方向および/または半径方向位置を調節するステップと、を含む、方法。
【請求項17】
前記調節を決定するステップは、画像の見当合わせを確認し、前記信号を発生させ、前記信号を送るステップを実行する制御システムのインターフェースに調節データを入力する人間の動作を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記調節を決定するステップは、顕微鏡を通して画像の見当合わせを確認し、前記信号を発生させ、前記信号を送るステップを実行する制御システムのインターフェースに調節データを入力する人間の動作を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記調節を決定するステップは、画像の見当合わせ情報を確認し、画像の見当合わせ情報に基づいて調節データを決定し、画像の見当合わせ情報に基づいて信号を発生させるカメラを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記軸線方向アクチュエータは、サーボモータであり、かつ、前記半径方向アクチュエータは、サーボモータであり、前記サーボモータは、前記調節するステップを実行するように作動する、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ブラケットドラムは、複数の印刷胴を有し、印刷胴の各々は、軸線方向アクチュエータおよび半径方向アクチュエータを含む、請求項10~15のいずれか1項に記載のブラケットドラム。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
缶デコレータであって、該缶デコレータは、
(i)インフィードから飲料缶を受け取り、(ii)対応するスピンドル上で各缶本体を支持し、回転させるようになっており、エンコーダを有するスピンドルディスクモータによって回転されるスピンドルディスクと、
ブラケットドラムであって、(i)印刷胴から印刷ブラケット上にインクを受け入れ、(ii)缶を装飾するために、飲料缶と見当合わせして該ブラケットドラム上で印刷胴を回転させるようになっており、エンコーダを有するブラケットドラムモータによって回転されるブラケットドラムと、
前記ブラケットドラムによって装飾された後に前記スピンドルディスクから飲料缶を受け取るようになっており、エンコーダを有する移送ホイールモータによって回転される移送ホイールと、
前記移送ホイールから缶を受け取り、オーブンを通してチェーン上で缶を搬送するようになっており、エンコーダを有するピンチェーンドライブモータによって駆動されるピンチェーンドライブと、
エンコーダ情報を受け取り、個々に、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンドライブモータの速度を合わせまたは調節するようになっている制御器と、を含み、前記モータは、互いに対して独立に駆動可能である、缶デコレータ。
【請求項2】
前記モータの少なくとも1つ上の前記エンコーダは、アブソリュートエンコーダである、請求項1に記載の缶デコレータ。
【請求項3】
前記モータの各々上の前記エンコーダは、アブソリュートエンコーダである、請求項1または2に記載の缶デコレータ。
【請求項4】
前記モータは、サーボモータである、請求項1~3のいずれか1項に記載の缶デコレータ。
【請求項5】
オーバーワニスディスクをさらに含み、該オーバーワニスディスクは、前記スピンドルディスク上にある間に、缶にワニスを塗布するようになっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の缶デコレータ。
【請求項6】
前記モータの各々は、その他のモータがオフの間に作動されることができ、それによって、作動しているモータは、保守任務のために作動可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載の缶デコレータ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の缶デコレータの作動方法であって、該缶デコレータの作動方法は、缶の画像を向上させるために、缶画像情報に応答して、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンモータの少なくとも1つの速度を前記制御器によって調節するステップを含む、缶デコレータの作動方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の缶デコレータでピンチェーンを交換する方法であって、該方法は、前記スピンドルディスク、前記ブラケットドラム、および、前記移送ホイールを回転させることなく、前記ブラケットドラムモータに係合させることによって前記ピンチェーンドライブを前記制御器によって回転させるステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の缶デコレータでブラケットドラムを点検修理または保守する方法であって、該方法は、前記スピンドルディスク、前記移送ホイール、および、前記ピンチェーンドライブを回転させることなく、前記ブラケットドラムモータに係合させることによって前記ブラケットドラムを前記制御器によって回転させるステップを含む、方法。」
2 補正の適否について
(1)本件補正により、本件補正前の請求項1の「缶デコレータ」の発明特定事項である「スピンドルディスクモータによって駆動されるスピンドルディスク」について、「スピンドルディスクモータによって回転されるスピンドルディスク」と補正し(以下「補正事項1-1」という。)、「ブラケットドラムモータによって駆動されるブラケットドラム」について、「ブラケットドラムモータによって回転されるブラケットドラム」と補正し(以下「補正事項1-2」という。)、「移送ホイールモータによって駆動される移送ホイール」について、「移送ホイールモータによって回転される移送ホイール」と補正し(以下「補正事項1-3」という。)、「駆動」なる事項を「回転」と補正し、その動く方向を限定し、「前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンドライブモータの速度を合わせまたは調節するようになっている制御器」について、「個々に」と限定する事項が追加(以下「補正事項1-4」という。)された。
(2)そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3)そうすると、請求項1に係る補正である補正事項1-1乃至1-4は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(4)また、補正事項1-1乃至1-4は、願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0014】の「作動中、上記の缶デコレータを作動させる方法によれば、缶の画像を向上させるために、缶画像情報に応答して、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンモータの少なくとも1つの速度を調節することができる。さらに、缶デコレータのピンチェーンは、前記スピンドルディスク、前記ブラケットドラム、および、前記移送ホイールを回転させることなく、前記ブラケットドラムモータに係合させることによって前記ピンチェーンドライブを回転させることによって交換することができる。ブラケットドラムは、前記スピンドルディスク、前記移送ホイール、および、前記ピンチェーンドライブを回転させることなく、前記ブラケットドラムモータに係合させることによって前記ブラケットドラムを回転させることによって、点検修理または保守することができる。」、段落【0020】の「図1を参照すると、未装飾の缶本体は、最初、缶インフィードコンベアからスピンドルディスク20に送られる。スピンドルディスク20は、マンドレルまたはスピンドル組立体上で缶本体を支持し、ブラケットドラム30の印刷ブラケットに接触させる。スピンドルディスク20は、エンコーダ、好ましくはアブソリュートエンコーダを有するスピンドルディスクサーボモータ(図面に図示されていない)に連結されている中央シャフトを有する。用語「エンコーダ」は、本願では、回転する機械および電気モータの当業者によって理解されるであろう、在来のインクリメンタルエンコーダおよびアブソリュートエンコーダのような、シャフトまたはローターの位置を決定するための任意の装置に言及するために使用されている。」、段落【0021】の「ブラケットドラム30は、印刷ブラケットにインクおよび画像を供給する複数のインク着けシステム内で半径方向に回転する。各インク着け器70は、1つの色インクと関連しており、各インク着け器は、他の構成要素と見当合わせして回転するそれ自身の印刷胴80と関連している。ブラケットドラムは、アブソリュートエンコーダを有するブラケットドラムサーボモータによって駆動されるシャフトを有する。」の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に係る発明(令和3年12月27日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1(2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】乃至【請求項9】(以下、それぞれ「本件補正発明1」乃至「本件補正発明9」という。))における本件補正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正発明1は、上記「1(2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載された事項により特定されるものと認められる。
(2)引用例
ア 引用例
本願の優先日前に頒布された公開公報である特表2013-544675号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状容器の周面にパターンを印刷するためのシステムであって、 複数のマンドレルがその上に配置されたマンドレルホイールであって、該マンドレルホイールの周囲に沿って各マンドレルが個々の円筒状容器を保持するように機能する、マンドレルホイールと、
複数の印刷用ブランケットがその上に配置された印刷用ブランケットホイールであって、該印刷用ブランケットホイールは調整可能であり、各印刷用ブランケットは、前記マンドレルホイールのマンドレルによって保持された個々の円筒状容器の周面にパターンを印刷するように機能する、印刷用ブランケットホイールと、
個々の円筒状容器に印刷されたパターンに欠陥又は変動がないか、前記円筒状容器を検査するように機能する検査システムであって、個々の円筒状容器を保持していた個々のマンドレルと、その個々の円筒状容器に印刷を施した対応する印刷用ブランケットとを特定するように機能し、さらに、欠陥又は変動情報を生成するように機能する、検査システムと、
前記欠陥又は変動情報を受け取って、当該システムの修正を図るように機能する、制御システムと、
を備えるシステム。
…
【請求項7】
前記円筒状容器は缶である、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。」
(イ)「【背景技術】
【0002】
世界的に、2ピース缶の製造ラインには、通常、印刷装飾機、すなわち「デコレータ」として当業者によく知られているもの、が組み込まれている。デコレータは、飲料缶の外側円筒面の全体にまでインク印刷することができる大型マシンである。デコレータは、何十年も前からあって、その間に速度が着実に向上しており、そのようなデコレータの現状技術の例によると、毎分3,000缶(CPM:Cans Per Minute)を超える速度で装飾することが可能である。このようなマシンは、そのような極めて高速で機能することが可能である必要があることから、その機能的な側面又はサブシステムの多くで、回転機械部品を採用している。実際に、ほとんどのデコレータで、メイン「印刷用ホイール」は回転式である。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
手動と自動の両方による数多くの様々な検査技術が開発及び/又は実施されている。当業界では、高速のカメラによる様々なタイプの検査システムが試行されている。そのようなシステムのいくつかは、装飾された缶又は印刷用ブランケットの高速画像をスナップ撮影するものであるが、画像の解析は、それを表示画面上で見ることによる人間の判断に委ねられる。これまで、様々なタイプのシステムが、デコレータの問題の真の原因を解決してその修正のための対策を取ることを可能にするのに極めて有益となり得る何らかの重要な情報を得ることに失敗している。」
(エ)「【0051】
想定される実施形態の更に高性能なバージョンでは、検査結果及びプロセスの監視が更に自動化される。調整が必要となり得る機械部品の多くは、様々なタイプのサーボモータによって作動させるか又は駆動することが可能であり、これによって、マシンを停止させることなく、さらには人間の介入なく、調整を行うことが可能となる。このような調整は、実際に、人間が調整を行う場合にはマシンを停止させることが必要となり得るような調整であっても、マシンを作動させたまま調整することができるように計らうことが可能である。検査システムが、個々の機械部品、機構部、及びサブシステムについて、装飾プロセスに関する統計情報を収集及び分析することが可能である場合は、装飾プロセスを最適化するための、そのような情報の適切な利用を、本発明によって自動化することが可能である。遠隔制御可能な電動式調整を備える新しいマシンをゼロから構築することが可能であり、あるいは、そのような望ましい電動式調整を従来のデコレータに組み込んで再構築及び改造することが可能である。
…
【0053】
例として、図1は、典型的な8色缶デコレータの側面から見た機能構造図を示している。本例では、矢印で示すように、メイン印刷用ブランケットホイール(10)が(この図で)反時計回りに回転する。印刷用ブランケット(12)は、一般に粘着裏面を有してポリエステル材で形成されており、印刷用ブランケットホイール(10)の周囲に貼付されている。ホイール(10)が回転すると、インカーホイール(20)に取り付けられた凸状3D印刷版によって、それぞれの印刷用ブランケット(12)にインクが施され、このとき、それぞれのインカーホイール(20)に対応するインカー壷(25)は、インカーホイール(20)にそれぞれ取り付けられた個々の印刷版に対して、インクの均一な塗膜を滑らかにするように機能する。図1では、円筒状容器又は缶(81)の上に印刷されるそれぞれの色のインクを施すのに用いられる8つの異なるインカー(25)を示している。インク付けが終了した印刷版(11)が回転するマンドレルに近づくと、容器又は缶の外周面に印刷できる状態になる。マンドレルホイール(30)の周囲のマンドレルは、缶(81)を、その周角速度が印刷版(11)の角速度に正確に一致するように回転させる。
【0054】
これらの速度が一致しているので、印刷される缶(82)に印刷版(11)が圧力をかけ始めるときの相対速度はゼロであり、これによって、缶の周面へのインクの転移が達成される。適切に設定されたデコレータでは、印刷用ブランケットのポリエステル体は、約0.007インチ~0.010インチ撓むか又は圧縮される。マシンのメーカ及びマシン設計によって、この圧力は、様々な方法で調整される。しかし、概念的には、メイン印刷用ホイール(10)とすべてのインカー(20~25)からなるユニットが一体となって、より大きい圧力でより多く侵入する方向14Aに、又はより小さい圧力でより少なく侵入する方向14Bに、動かされる。この調整は、どんな場合でも、最終的にブランケットホイール(10)を位置移動させる何らかの形の機械的調整である。この1つのみの調整によって、すべての印刷用ブランケットの作動位置が調整されるので、大域的又は全体的なマシン調整として知られる。広く使用されているマシンの多くは、マンドレルの位置(35Bもしくは35A)又は印刷用ブランケットの位置のいずれかのための個別調整を備えるものではない。
【0055】
そのような個別調整は、任意の印刷用ブランケットの性能を、他のいずれかに対して相対的に、又はそれらとは独立に、微調整又は最適化するために、非常に望ましいことがあり得る。例外として、よく知られているマシンの1つに、各マンドレルが自身の偏心機構に取り付けられて、緊急の危険な詰まり状態を解放するために常道を外れて回転するようなものがある。このようなマシンの設定は、通常、ダイヤルインジケータを用いて各位置をゼロに再設定する必要があり、このとき、印刷用ブランケットは、すべて同じ量で侵入するように位置付けられる。通常、それらは、どの方向にどの程度調整する必要があるのかを示すフィードバックがあれば、個別に手動で調整することが可能である。これらを、マシンが作動しているときに調整することができないことは確かである。
【0056】
印刷された缶(83)は、マンドレルホイール(30)のそれぞれのマンドレル上で回転を続けながら、オーバーバニッシュ・ホイール(18)に、一致した周速度で接触する。ワニスの塗布の後に、ワニス塗布及び印刷が完了した缶(84)は、マンドレルホイール(30)上の回転経路に沿って進み、ピンチェーン移載ホイール(40)に渡される。ピンチェーン移載ホイール(40)上の缶(85)は、それぞれピンチェーン(63)のピンとかみ合って、ピンチェーン搬送システム(60)で、図1に示していないピンチェーン・オーブンでの硬化に向けて運び出される。」
(オ)「【図1】
[図:0001397644000001.jpg]
」
(カ)デコレータの技術常識からすると、デコレータを構成する複数の回転要素はすべてその回転を同期制御する必要があるところ、上記(エ)【0051】の記載からすれば、マンドレルホイール、ブランケットホイール、ピンチェーン移載ホイール、及びピンチェーン搬送システムはいずれも、サーボモータにより駆動されるものであるから、マンドレルホイール、ブランケットホイール、ピンチェーン移載ホイール、及びピンチェーン搬送システムとは、サーボモータ、すなわち、エンコーダを有するモータで回転同期するものと認められる。
(キ)上記(オ)図1より、8色缶デコレータであって、該8色缶デコレータは、缶を受け取り、各缶を支持する複数のマンドレルが設けられ、回転されるマンドレルホイールと、ブランケットホイールであって、インカーホイールから印刷用ブランケット上にインクを受け入れ、缶を印刷するために、ブランケットホイール上でマンドレルホイールを回転させるように、回転されるブランケットホイールと、前記ブランケットホイールによって印刷された後に前記マンドレルホイールから缶を受け取るようになっており、回転されるピンチェーン移載ホイールと、前記ピンチェーン移載ホイールから缶を受け取り、ピンチェーン・オーブンでの硬化に向けてピンチェーン上で缶を運び出すように回転されるピンチェーン搬送システムと、を有する、8色缶デコレータ。
(ク)上記(イ)より、引用例に記載の「缶」には、「飲料缶」も包含される。
そうすると、上記記載事項(ア)乃至(オ)及び認定事項(カ)及至(ク)より、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「8色飲料缶デコレータであって、該8色飲料缶デコレータは、缶を受け取り、各缶を支持する複数のマンドレルが設けられ、エンコーダを有するモータで回転されるマンドレルホイールと、ブランケットホイールであって、インカーホイールから印刷用ブランケット上にインクを受け入れ、缶を印刷するために、ブランケットホイール上でマンドレルホイールを回転させるように、エンコーダを有するモータで回転されるブランケットホイールと、前記ブランケットホイールによって印刷された後に前記マンドレルホイールから缶を受け取るようになっており、エンコーダを有するモータで回転されるピンチェーン移載ホイールと、前記ピンチェーン移載ホイールから缶を受け取り、ピンチェーン・オーブンでの硬化に向けてピンチェーン上で缶を運び出すように、エンコーダを有するモータで回転されるピンチェーン搬送システムと、を有し、マンドレルホイール、ブランケットホイール、ピンチェーン移載ホイール、及びピンチェーン搬送システムは、回転同期する、8色飲料缶デコレータ。」
(3)当審の判断
ア 本件補正発明1と引用発明との対比
(ア)後者の「8色飲料缶デコレータ」、「飲料缶」、「『マンドレルホイール』を回転させる『エンコーダを有するモータ』」、「マンドレルホイール」、「ブランケットホイール」、「インカーホイール」、「印刷用ブランケット」、「インク」、「印刷する」、「『ブランケットホイール』を回転させる『エンコーダを有するモータ』」、「『ピンチェーン移載ホイール』を回転させる『エンコーダを有するモータ』」、「ピンチェーン移載ホイール」、「ピンチェーン・オーブン」、「ピンチェーン」、「『ピンチェーン搬送システム』を回転させる『エンコーダを有するモータ』」、及び「ピンチェーン搬送システム」は、それぞれ、前者の「缶デコレータ」、「飲料缶」、「エンコーダを有するスピンドルディスクモータ」、「スピンドルディスク」、「ブラケットドラム」、「印刷胴」、「印刷ブラケット」、「インク」、「装飾する」、「エンコーダを有するブラケットドラムモータ」、「エンコーダを有する移送ホイールモータ」、「移送ホイール」、「オーブン」、「チェーン」、「エンコーダを有するピンチェーンドライブモータ」、及び「ピンチェーンドライブ」に相当する。
(イ)後者の「8色飲料缶デコレータ」の「マンドレルホイール」は、飲料缶を受け取り、各缶を支持する複数のマンドレルが設けられたものであるから、当然、8色飲料缶デコレータを含むシステム内から受け取っているものと推認できる。そして、上記のとおり、引用発明の「マンドレルホイール」は、本件補正発明1の「スピンドルディスク」に相当するところ、各缶を支持する複数のマンドレルが設けられ、当該複数のマンドレルも回転しているのであるから、引用発明の「マンドレルホイール」には、実質的に本件補正発明1の「スピンドル」を備えているといえる。そうすると、前者の「缶デコレータ」と後者の「8色飲料缶デコレータ」とは、「インフィールドから缶を受け取」り、「スピンドル」上で各缶本体を支持する「スピンドルディスク」を備えるものとの概念で一致する。
イ 本件補正発明1と引用発明の一致点と相違点について
上記アの対比を踏まえると、本件補正発明1と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、相違点において相違する。
[一致点]
「缶デコレータであって、該缶デコレータは、
(i)インフィードから飲料缶を受け取り、(ii)対応するスピンドル上で各缶本体を支持し、回転させるようになっており、エンコーダを有するスピンドルディスクモータによって回転されるスピンドルディスクと、
ブラケットドラムであって、(i)印刷胴から印刷ブラケット上にインクを受け入れ、(ii)缶を装飾するために、飲料缶と見当合わせして該ブラケットドラム上で印刷胴を回転させるようになっており、エンコーダを有するブラケットドラムモータによって回転されるブラケットドラムと、
前記ブラケットドラムによって装飾された後に前記スピンドルディスクから飲料缶を受け取るようになっており、エンコーダを有する移送ホイールモータによって回転される移送ホイールと、
前記移送ホイールから缶を受け取り、オーブンを通してチェーン上で缶を搬送するようになっており、エンコーダを有するピンチェーンドライブモータによって駆動されるピンチェーンドライブと、
を含む、缶デコレータ。」
[相違点]
本件補正発明1は、エンコーダ情報を受け取り、「個々に」、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンドライブモータの速度を合わせまたは調節するようになっている制御器と、を含み、前記モータは、「互いに対して独立に」駆動可能であるのに対し、引用発明は、各モータが個々に独立に駆動可能であるのか否か定かでない点。
ウ 上記相違点についての検討
引用発明において、「マンドレルホイール」、「ブランケットホイール」、「ピンチェーン移載ホイール」、及び「ピンチェーン搬送システム」(以下、総称して「引用発明回転部材」という。)はいずれも、サーボ系からなるもの、すなわち、エンコーダを有するモータで回転されるものであること、及び、引用発明回転部材の各回転半径が異なり、当接する回転部材同士の当接点での周速度が同じとなることは、(エ)【図1】を参酌するまでもなく、技術常識であること、からすると、各エンコーダからの回転信号に基づく各引用発明回転部材の回転制御を、個々に、独立に行い得ることは、容易に理解できることである。
そして、上記のとおり、引用発明回転部材の各回転半径が異なることからすれば、各引用発明回転部材の回転制御を、個々に、独立に行うようにする動機付けがあるといえる。
そうすると、引用発明の引用発明回転部材を、個々に、互いに独立に駆動することは、当業者が容易になし得るものである。
そして、本件補正発明1の効果も、引用発明から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
エ 小括
上記で検討したとおり、本件補正発明1は、引用発明により、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)独立特許要件についての検討のまとめ
以上検討したように、本件補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件補正発明1は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、本件補正発明1は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年8月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
缶デコレータであって、該缶デコレータは、
(i)インフィードから飲料缶を受け取り、(ii)対応するスピンドル上で各缶本体を支持し、回転させるようになっており、エンコーダを有するスピンドルディスクモータによって駆動されるスピンドルディスクと、
ブラケットドラムであって、(i)印刷胴から印刷ブラケット上にインクを受け入れ、(ii)缶を装飾するために、飲料缶と見当合わせして該ブラケットドラム上で印刷胴を回転させるようになっており、エンコーダを有するブラケットドラムモータによって駆動されるブラケットドラムと、
前記ブラケットドラムによって装飾された後に前記スピンドルディスクから飲料缶を受け取るようになっており、エンコーダを有する移送ホイールモータによって駆動される移送ホイールと、
前記移送ホイールから缶を受け取り、オーブンを通してチェーン上で缶を搬送するようになっており、エンコーダを有するピンチェーンドライブモータによって駆動されるピンチェーンドライブと、
エンコーダ情報を受け取り、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンドライブモータの速度を合わせまたは調節するようになっている制御器と、を含み、前記モータは、互いに対して独立に駆動可能である、缶デコレータ。」(以下「本願発明」という。)
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、令和3年2月25日付けの拒絶理由通知書により通知された次に示すものを含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特表2013-544675号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用例
令和3年2月25日付けの拒絶理由通知書で引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3(2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、実質的に、本件補正発明1の「前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンドライブモータの速度を合わせまたは調節するようになっている制御器」について「個々に」との限定を削除し、「回転される」との事項を「駆動される」とするものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3(3)ア 本件補正発明1と引用発明との対比」での検討を勘案すると、両者は、
「缶デコレータであって、該缶デコレータは、
(i)インフィードから飲料缶を受け取り、(ii)対応するスピンドル上で各缶本体を支持し、回転させるようになっており、エンコーダを有するスピンドルディスクモータによって駆動されるスピンドルディスクと、
ブラケットドラムであって、(i)印刷胴から印刷ブラケット上にインクを受け入れ、(ii)缶を装飾するために、飲料缶と見当合わせして該ブラケットドラム上で印刷胴を回転させるようになっており、エンコーダを有するブラケットドラムモータによって駆動されるブラケットドラムと、
前記ブラケットドラムによって装飾された後に前記スピンドルディスクから飲料缶を受け取るようになっており、エンコーダを有する移送ホイールモータによって駆動される移送ホイールと、
前記移送ホイールから缶を受け取り、オーブンを通してチェーン上で缶を搬送するようになっており、エンコーダを有するピンチェーンドライブモータによって駆動されるピンチェーンドライブと、
を含む、缶デコレータ。」
の点で一致し、下記[相違点]’で相違する。
[相違点]’
本願発明は、エンコーダ情報を受け取り、前記スピンドルディスクモータ、前記ブラケットドラムモータ、前記移送ホイールモータ、および、前記ピンチェーンドライブモータの速度を合わせまたは調節するようになっている制御器と、を含み、前記モータは、「互いに対して独立に」駆動可能であるのに対し、引用発明は、各モータが個々に独立に駆動可能であるのか否か定かでない点。
そうすると、上記「第2 3(3)ウ」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-017990