特許拒絶査定不服審判
2023-007828
カード処理機及び料金収受システム
- 審判番号
- 2023-007828
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-026707
- 請求日
- 2023年05月15日
- 審決日
- 2024年06月10日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三菱重工機械システム株式会社
- 【請求人代理人】松沼 泰史
- 【請求人代理人】伊藤 英輔
- 【請求人代理人】橋本 宏之
- 【請求人代理人】古都 智
- 【請求人代理人】鎌田 康一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 野崎 大進
- 審判官 村松 貴士
- 分類
- P18 .113-WY (G07B) / P18 .121-WY (G07B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 26707「カード処理機及び料金収受システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-135303、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月18日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 9月 2日付け:拒絶理由通知
令和4年11月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 2月 6日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年 5月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
1.(新規性)この出願の請求項1、3、4および6に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1ないし4および6に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基いて、この出願の請求項5に係る発明は、下記の引用文献1および2に記載された発明に基いて、この出願の請求項7に係る発明は、下記の引用文献1および3に記載された発明に基いて、この出願の請求項8および9に係る発明は、下記の引用文献1および4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開平7-57061号公報
2.特開2004-354983号公報
3.実願平3-30971号(実開平4-125261号)の
マイクロフィルム
4.特開2011-154725号公報
第3 本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和5年5月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。
「【請求項1】
カードの所持者による操作を受付可能とされるユーザパネルと、
前記ユーザパネルに設けられたカード挿入口と、
前記カード挿入口から挿入された前記カードを内部に引き込むオートローディング機構と、
前記オートローディング機構を駆動制御する制御部と、
内部に引き込まれた前記カードを強制排出可能とする強制排出機構と、
を備え、
前記強制排出機構は、前記ユーザパネルに設けられた操作機構に基づいて駆動され、
前記オートローディング機構が、モータの駆動力を用いて、前記カードを内部に引き込むことが可能であり、
カード詰まりが検知された場合又は電断された場合に、前記制御部は前記モータの入力端子間を電気的に開放するカード処理機。
【請求項2】
前記ユーザパネルは、前記オートローディング機構へのアクセスを制限している請求項1記載のカード処理機。
【請求項3】
前記ユーザパネルは、前記カード処理機の外部と前記オートローディング機構との間に設けられ、
前記操作機構は、前記ユーザパネルから前記カード処理機の外部へ突出している請求項1又は2に記載のカード処理機。
【請求項4】
前記制御部は、カード詰まりが検知された場合に前記オートローディング機構をフリー状態とする請求項1から3のいずれか一項に記載のカード処理機。
【請求項5】
前記操作機構を覆うカバーをさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載のカード処理機。
【請求項6】
前記ユーザパネルに設けられ、前記操作機構の操作を案内可能な案内部をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載のカード処理機。
【請求項7】
前記ユーザパネルに設けられた呼出部をさらに備える請求項1から6のいずれか一項に記載のカード処理機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のカード処理機を備える料金収受システム。」
第4 引用文献
1 引用文献1および引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開平7-57061号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。以下同様。)。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば、ATMやCD等のような自動取引機に内蔵される取引媒体処理装置に関し、より詳しくは、電源電圧降下や停電等の電源異常によって装置が不測に停止した時に、装置内の媒体を操作者が取出せるような取引媒体処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上述したような不測の電源断時に、装置内にあるカードや通帳、帳票などの媒体を取出せるように、従来は、バッテリやコンデンサを備え、これらに蓄えられた電力を利用してモータを回転するようにしていた。
【0003】しかし、上述の取出し作業は係員が行なわなければならないため、時間が掛かって大変不便である。また、バッテリやコンデンサは、モータを駆動するためかなり大型のものが必要となり、装置の大型化を免れない。さらに、大型のバッテリやコンデンサは高くつくとともに、電源断後、電気エネルギが長時間蓄えられているので、係員によるメンテナンス時には感電事故や短絡による故障を起こしやすい欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこでこの発明は、不測の電源断時に、顧客が操作するこで装置内にある媒体を速やかに取出すことができ、装置の小型化やコストダウンも図れるような取引媒体処理装置の提供を目的とする。」
イ 図1
[図:0001411990000001.jpg]
ウ 「【0009】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
(第1実施例)図1は、ATMやCDなどのような自動取引機に内蔵するカード処理装置1を示す概略構成図であって、カード挿入口2より投入されるカード3を搬入し搬出するカード搬送機構4と、このカード搬送機構4をカード3の放出方向へ駆動するカード排出機構5とを設け、これらカード搬送機構4とカード排出機構5とは、通常の電源ON状態では動力伝達を切り、電源OFF状態では動力伝達を行なう電磁クラッチ6を介して接続している。」
エ 図2
[図:0001411990000002.jpg]
オ 「【0010】上述のカード搬送機構4は、ベルト7とローラ8…とで構成し、図2のブロック図に示すように、カード搬送モータ9によって正逆回転する。このカード搬送モータ9はカード3をカードリーダ(図示せず)へ搬送すべくカードリーダ制御部10により制御されている。またこのカードリータ制御部10は、入力信号に基づいて前述した電磁クラッチ6をON・OFF制御する。
【0011】前述のカード排出機構5は、このカード排出機構5を手動で駆動するカード排出つまみ11を装置本体の接客面12に露出して設け、このカード排出つまみ11の回転に伴って回転するベルト13とローラ14とで構成している。
【0012】そして、これらカード搬送機構4とカード排出機構5とを接続する電磁クラッチ6は、カード搬送機構4の端部に接続したプーリ4aと、カード排出機構5の端部に接続したプーリ5aとをコイルへの通電で駆動伝達可能または不可能にする。すなわち、コイルに通電され、クラッチ板が離れた状態のときにはプーリ4a,5a間の接続は断たれ、カード排出つまみ11をいくら回転してもカード搬送機構4を駆動することはできない状態となる。また、コイルへの通電が切れ、電磁クラッチ6内のばねの付勢力でクラッチ板が接触した状態のときは、プーリ4a,5a間の接続がなされ(図3参照)、カード排出つまみ11を回転させればカード搬送機構4を駆動することができる状態となる。」
カ 図3
[図:0001411990000003.jpg]
キ 「【0013】また、この電磁クラッチ6は、電源断検知部15により電源断が検知されたときに、CPU16がこの検知信号を入力し、カードリーダ制御部10を駆動することでON・OFF切換えされる。なお、上述のCPU16はROM18に格納したプログラムにしたがって各部を駆動制御し、RAM17は必要なデータを記憶し、また、伝送制御部19は、上位のコンピュータとの交信を行なう。また、図2に破線で示したように、音声・表示用バックアップ電源20、音声制御部21、スピーカ22、表示制御部23、表示器24を組み込むもよい。このようにすれば、電源断検知部15により電源断が検知された時に、スピーカ22や表示器24によって、操作者による所定の手動操作でカード3の取出しが行なえる旨の案内がきる。また、上述のような場合に使用するバックアップ電源20は、モータ駆動用のものよりも小型でよく、装置の大型化を回避することが可能である。
【0014】このように構成したカード処理装置1の作用および効果をつぎにを説明する。
【0015】例えば、取引中に不測の電源断が起こった場合、電源断検知部15がそれを検知し、CPU16がその検知信号に基づいてカードリーダ制御部10を駆動して電磁クラッチ6をOFF状態にし、図3に示した状態にし、カード排出機構5の駆動がカード搬送機構4に伝達できるようにする。このため、操作者は接客面12に設けられたカード排出つまみ11を手動で操作してカード搬送機構4を駆動し、カード3の取出しを行なえばよい。
【0016】したがって、操作者は投入したカード3のように自分自身が保管したい媒体の取出しを行なうことが、係員なくしてできる。このため、係員が待機していないような規模の小さい設置場所にある自動取引機でも円滑な処理が行なえ、都合がよい。」
(2)引用発明
上記(1)の、特に下線を付加した記載に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電源電圧降下や停電等の電源異常によって装置が不測に停止した時に、装置内の媒体を操作者が取出せるような取引媒体処理装置に関し、
ATMやCDなどのような自動取引機に内蔵するカード処理装置であって、カード挿入口2より投入されるカード3を搬入し搬出するカード搬送機構4と、このカード搬送機構4をカード3の放出方向へ駆動するカード排出機構5とを設け、これらカード搬送機構4とカード排出機構5とは、通常の電源ON状態では動力伝達を切り、電源OFF状態では動力伝達を行なう電磁クラッチ6を介して接続しており、
カード搬送機構4は、ベルト7とローラ8とで構成し、カード搬送モータ9によって正逆回転するものであり、このカード搬送モータ9はカード3をカードリーダへ搬送すべくカードリーダ制御部10により制御されており、
カード排出機構5は、このカード排出機構5を手動で駆動するカード排出つまみ11を装置本体の接客面12に露出して設け、このカード排出つまみ11の回転に伴って回転するベルト13とローラ14とで構成しており、
電源断検知部15により電源断が検知された時に、スピーカ22や表示器24によって、操作者による所定の手動操作でカード3の取出しが行なえる旨の案内ができ、
取引中に不測の電源断が起こった場合、電源断検知部15がそれを検知し、CPU16がその検知信号に基づいてカードリーダ制御部10を駆動して電磁クラッチ6をOFF状態にし、カード排出機構5の駆動がカード搬送機構4に伝達できるようにして、操作者は接客面12に設けられたカード排出つまみ11を手動で操作してカード搬送機構4を駆動し、カード3の取出しを行なえ、
操作者は投入したカード3のように自分自身が保管したい媒体の取出しを行なうことが、係員なくしてできる
カード処理装置。」
2 引用文献2
原査定の拒絶理由において、引用された引用文献2(特開2004-354983号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、樹脂、磁性体、着色料等からなるトナーからなる像を担持する記録材を、互いに圧接・回転する定着手段(ローラ、エンドレスベルト体等)と加圧手段(ローラ、エンドレスベルト体等)の圧接部(ニップ部)に挟持搬送させて熱と圧力を加えることで、像を加熱する加熱装置を有している。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザビームプリンタ、あるいはファクシミリ等の画像形成装置において、記録材上に転写された未定着トナー像を加熱定着する定着装置としては、ハロゲンランプ等の加熱源が内蔵された定着ローラと、同じく加熱源が内蔵され、この加熱ローラに圧接する加圧ローラを備え、加熱ローラと加圧ローラにより形成されるニップ部に記録材を挟持搬送することによって、熱により未定着トナー像を記録材に定着する構成がある。
【0003】
定着ローラ及び、加圧ローラの加熱源のハロゲンランプは、定着ローラ、加熱ローラの各々の表面に取り付けられた温度センサーからの信号に基づいて、ON/OFFの制御がされ、表面が所定の温度に制御されるようになっている。
【0004】
このような構成において、定着時に定着ローラの表面と溶融状態のトナー像とが接触することになるので、記録材がこれに巻きつく可能性がある。
【0005】
そこで、従来からこのような巻きつきを防止する手法としては、図3のように、定着ローラ212のニップ部以外の位置に爪250を接触させておき、記録材の先端が巻きつきかけたら、この爪250によって強制的に記録材の先端を剥離させる方式が有効であることは一般的に公知の技術である。また、図3のように定着ローラ212のクリーニング部材を設けることによって、定着ローラ212の残留トナーを除去し、定着ローラ212に対する記録材上のトナーに対する離型性を高め、記録材の定着ローラへの分離能力を高めている。ここで、235は不織布にシリコンオイルを含浸させた清掃ウェブ、237は送りロール、238は巻取りロール、236は発砲ローラである。このような対策を設けていても、分離爪の磨耗による分離能力の低下や記録材の搬送速度の高速化に伴うオイル塗布量の減少等により記録材の定着ローラへの巻きつきを完全に防止する難しい。これを改善する為に従来は、定着装置の入口と出口にそれぞれ記録材の検知センサーを設け、記録材の巻き付きを装置が検知できるようにしている(特許文献1、特許文献2)。その簡単な実施例を図4に示す。定着装置の前後の用紙搬送路に設けた紙の有無を検知する定着入口センサ239と、定着出口センサ240との距離をc、定着ローラ212の外周長をd、定着ニップ部から定着出口センサ240までの距離をa、最小サイズの記録材Pの長さをeとすると、a、c、d、eの関係が、e>c>d>aとなるように装置を構成する。このように構成した装置において、記録材Pが、定着入口センサ239を通過した後、所定時間の以内に定着出口センサ240に到達しない場合には、記録材の先端が定着ローラ対に巻き付いた可能性があるものと判断して、定着ローラ212と加圧ローラ213を停止させて、記録材が定着部材にそれ以上進入してしまう事を防止することができる。
【特許文献1】 特開平06-175524号公報
【特許文献2】 特開2000-344395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成ではモータの回転を停止する信号を出しても、定着ローラ212および加圧ローラ213の回転抵抗などにより自然に減速しながら停止する。そのため、記録材が定着ローラに巻きついた可能性があると判断してモータの回転停止信号を出しても、定着ローラ212および加圧ローラ213の慣性力が大きいとその分停止するまでの時間が長くなる。これにより、記録材の先端が定着ローラ212および加圧ローラ213に巻きつきを検知して、定着ローラ212および加圧ローラ213を停止させようとしても、慣性力で回転しつづけようとするので、完全に停止するまでの時間内に記録材の後端までもが定着ローラ212あるいは加圧ローラ213に完全に巻きついてしまう恐れがあった。特に近年の装置の高速化においては、記録材がニップに突入する際の定着ローラの回転むらをできるだけ小さくするために、定着ローラの慣性力を大きくして、速度変動を小さくする構成であるため、定着ローラや加圧ローラが完全に停止する時間はますます長くなり、上述のような問題が顕著になる。記録材Pが定着ローラ212あるいは加圧ローラ213に完全に巻き付いた場合の記録材除去作業性はユーザーにとっては非常に困難であり、サービスマンコールに及ぶまでに至れば、画像形成装置の稼動効率低下を余儀なくされ、生産性が低下する。
【0007】
そこで、本発明の目的は、記録材が定着回転体への巻き付きつくジャム時の巻き付き量を少なくするものである。」
イ 「【0070】
また次に(c)のは定着部の巻き付きジャム発生時のシーケンスについて説明する。(a),(b)と同様にして、装置の状態がスタンバイ状態にある場合は、回転//停止信号は停止の論理:Lに設定され。装置がプリント動作に入ると、回転//停止信号は回転の論理:Hに設定され、定着モータ260は回転を始める。このプリント動作中において、定着部の巻き付きジャムが発生すると、回転/停止信号はHのままに設定されるとともに、ノーブレーキ/ブレーキ信号はブレーキの論理:Lに設定されて、定着モータ260は強制的に急停止される状態となる。
【0071】
よって慣性力で回転し続けようとしていた定着ローラ212および加圧ローラ213も急停止され、定着ローラ212または加圧ローラ213へ巻き付いたジャム紙の後端を、定着ニップ部より手前の位置で停止させることができる。
【0072】
またジャム処理時において、システムコントローラ101は、不図示の装置の前ドアが開いたことを検知した後に、まず回転/停止信号を停止の論理:Lに設定し、続いてノーブレーキ/ブレーキ信号を再びノーブレーキの論理:Hに設定して、定着モータ260の駆動軸をフリーで停止させた状態にする。そして、定着ローラ212または加圧ローラ213を手動回転可能となり、巻きついたジャム紙を取り除くことができる。」
3 引用文献3
原査定の拒絶理由において、引用された引用文献3(実願平3-30971号(実開平4-125261号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、カードに記録された情報を処理する処理装置に関するものである。」
イ 「【0019】
さて、上述のようにカード処理装置20が動作している最中に、停電あるいはそのほかの理由により電源が切れると、駆動モータ25が停止し、それにより第一送りローラ5及び第二送りローラ9が停止してしまうため,カード1がカード通路3上にとどまってしまう。このとき、カード処理装置20の筐体14を持ち上げて、底面15の開口部18から突出している回転ツマミ11を図1の矢印B方向に同転させる。すると、回転ツマミ11と一体に形成されたギア11aと噛合しているアイドルギア12が回転し、さらに第一歯車23及び第二歯車24を介して第一送りローラ5及び第二送りローラ9が回転するため、それによりカード1が搬送され、挿入口2よりカード1を取り出すことができる。
【0020】
また、回転ツマミ11は筐体14の底面15より操作するため、通常の処理中に誤って操作することによりカード1の搬送速度を変化させてしまうことがないため、操作ミスによるカード1の読み取りエラーが生じることもない。
【0021】
なお、筐体14の底面15あるいは側面19に回転ツマミ11の回転方向を示すことにより、さらに操作性を向上させることができる。」
4 引用文献4
原査定の拒絶理由において、引用された引用文献4(特開2011-154725号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、有料道路の料金所に設置される料金自動収受機に関する。」
イ 図2
[図:0001411990000004.jpg]
ウ 「【0030】
図2は、走行レーンの側から見た料金自動収受機1の前面パネル部2を示す。料金自動収受機1の鉛直方向下側(図のz軸負方向)を図面の下側として見たとき、図面に向かって右側が走行レーンの上流側(進入側)であり、左側が下流側(発進側)である。すなわち、車両は図面に向かって右側から左側に走行する。
【0031】
前面パネル部2は、車高の高い車両の乗員が操作するための上側操作面2bと、車高の低い車両の乗員が操作するための下側操作面2aとを備える。上側操作面2bと下側操作面2aとはほぼ同様の構成を備えている。以下、下側操作面2aについて詳しく説明する。
(中略)
【0043】
下側操作面2aはさらに、係員呼出ボタン6b、マイク8、身障者用レバー6a及び証明書投入口20aを備える。身障者用レバー6aは、身体障害者に対して適用される料金の割引を求める車両の乗員により操作される。身障者用レバー6aには、走行レーンにいる利用者に対して身体障害者用の入力装置であることを示す表示が添付される。係員呼出ボタン6bは、身障者用レバー6aと同じ機能を有する。マイク8は、車両の乗員が料金所の事務員に対して話をするために用いられる。証明書投入口20aは、身体障害者に対する割引が適用される資格を有することを示す証明書を投入するために設けられる。」
第5 対比・判断
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことが認められる。
ア 引用発明は、「ATMやCDなどのような自動取引機に内蔵するカード処理装置であって、」「操作者は接客面12に設けられたカード排出つまみ11を手動で操作してカード搬送機構4を駆動し、カード3の取出しを行なえ、操作者は投入したカード3のように自分自身が保管したい媒体の取出しを行なうことが、係員なくしてできる」とされている。
ここで、引用発明の「操作者」は「カード3」を「カード処理装置」に「投入し」ているから、本願発明1の「カードの所持者」に相当するといえる。
また、引用発明の「カード処理装置」は、「接客面12」に、「操作者」が「手動で操作してカード搬送機構4を駆動し、カード3の取出しを行なえ」る「カード排出つまみ11」を「設け」ているから、引用発明の「カード処理装置」の「接客面12」は、本願発明1の「カードの所持者による操作を受付可能とされるユーザパネル」に相当するといえる。
さらに、引用発明の「カード処理装置」は、本願発明1の「カード処理機」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「カードの所持者による操作を受付可能とされるユーザパネル」「を備え」た「カード処理機」である点で共通しているといえる。
イ 引用発明において、「ATMやCDなどのような自動取引機に内蔵するカード処理装置であって、カード挿入口2より投入されるカード3を搬入し搬出するカード搬送機構4と、このカード搬送機構4をカード3の放出方向へ駆動するカード排出機構5とを設け、」「カード搬送機構4は、ベルト7とローラ8とで構成し、カード搬送モータ9によって正逆回転するものであり、このカード搬送モータ9はカード3をカードリーダへ搬送すべくカードリーダ制御部10により制御されており、」「操作者は接客面12に設けられたカード排出つまみ11を手動で操作してカード搬送機構4を駆動し、カード3の取出しを行なえ」るとされている。
ここで、引用発明の「カード挿入口2」が「接客面12に設け」られていることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明の「カード挿入口2」は、本願発明1の「前記ユーザパネルに設けられたカード挿入口」に相当するといえる。
また、引用発明の「カード挿入口2より投入されるカード3を搬入し搬出するカード搬送機構4」は、本願発明1の「前記カード挿入口から挿入された前記カードを内部に引き込むオートローディング機構」に相当するといえる。
さらに、引用発明の「カード搬送機構4」の「カード搬送モータ9」は、「カードリーダ制御部10により制御されて」いるから、引用発明の「カードリーダ制御部10」は、本願発明1の「前記オートローディング機構を駆動制御する制御部」に相当するといえ、引用発明の「カード搬送機構4」は、本願発明1と同様に、「前記オートローディング機構が、モータの駆動力を用いて、前記カードを内部に引き込むことが可能であ」るといえる。
そして、引用発明の「カード搬送機構4」は、「操作者」が「接客面12に設けられたカード排出つまみ11を手動で操作してカード搬送機構4を駆動し、カード3の取出しを行なえ」るものであるから、本願発明1の「内部に引き込まれた前記カードを強制排出可能とする強制排出機構」に相当するといえ、本願発明1と同様に、「前記強制排出機構は、前記ユーザパネルに設けられた操作機構に基づいて駆動され」ているといえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記ユーザパネルに設けられたカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入された前記カードを内部に引き込むオートローディング機構と、前記オートローディング機構を駆動制御する制御部と、内部に引き込まれた前記カードを強制排出可能とする強制排出機構と、を備え、前記強制排出機構は、前記ユーザパネルに設けられた操作機構に基づいて駆動され、前記オートローディング機構が、モータの駆動力を用いて、前記カードを内部に引き込むことが可能であ」る点で共通しているといえる。
(2)一致点・相違点
本願発明1と、引用発明とは、以下アの点で一致し、以下イの点で相違する。
ア 一致点
「カードの所持者による操作を受付可能とされるユーザパネルと、
前記ユーザパネルに設けられたカード挿入口と、
前記カード挿入口から挿入された前記カードを内部に引き込むオートローディング機構と、
前記オートローディング機構を駆動制御する制御部と、
内部に引き込まれた前記カードを強制排出可能とする強制排出機構と、
を備え、
前記強制排出機構は、前記ユーザパネルに設けられた操作機構に基づいて駆動され、
前記オートローディング機構が、モータの駆動力を用いて、前記カードを内部に引き込むことが可能である、
カード処理機。」
イ 相違点
本願発明1では、「カード詰まりが検知された場合又は電断された場合に、前記制御部は前記モータの入力端子間を電気的に開放」しているのに対し、引用発明では、そのような制御をしていない点。
(3)相違点についての判断
本願発明1の上記相違点に関して、本願明細書には、以下の記載がある(下線は当審が付加した。)。
「【0045】
オートローディング機構13は、モータ132の駆動力を用いて、カードTをカード処理機1の内部に引き込んだり、カード処理機1の外部へ排出したりする。
モータ132は、軸芯132aを有する。
モータ132の入力端子間に印加される電気エネルギーにより、モータ132の軸芯132aは、第一回転軸AX1を中心に回転駆動する。
例えば、モータ132は、パルスモータである。
本実施形態では、制御部14が、「順搬送指令」として、モータ132の入力端子間にDCパルスを印加する。これにより、軸芯132aは+X側からみて反時計回りCCWに回転駆動する。
制御部14は、「逆搬送指令」として、モータ132の入力端子間に逆DCパルスを印加する。これにより、軸芯132aは+X側からみて時計回りCWに第一回転軸AX1を中心に回転駆動する。
また、制御部14は、「搬送停止指令」として、モータ132の入力端子間を、例えば半導体スイッチにより短絡する。これにより、軸芯132aの回転はロックされる。
さらに、制御部14は、「フリー指令」として、モータ132の入力端子間を、電気的に開放する。
例えば、制御部14は、モータ132の入力端子間を半導体スイッチにより、電気的に開放する。
これにより、軸芯132aはフリー状態となる。
ここで「フリー状態」とは、モータ132内の磁界により制動されることなく、手で自由に回転できる状態をいう。
また、モータ132の「入力端子間の開放」とは、モータ132の入力端子間をハイインピーダンスとすることをいう。
【0046】
なお、カード処理機1は、電断された場合に、オートローディング機構13をフリー状態とする。」
上記記載の特に下線部の記載に着目すると、本願発明1において、「前記制御部は前記モータの入力端子間を電気的に開放する」ことの技術的意義は、「モータ132内の磁界により制動されることなく、手で自由に回転できる状態」とすることであるといえる。
よって、上記相違点は、実質的なものであるから、本願発明1は、引用発明と同一であるとはいえない。
さらに、引用文献1ないし4には、いずれも、上記相違点に係る構成の内「前記制御部は前記モータの入力端子間を電気的に開放する」ことにより、モータを手で自由に回転できる状態とすることについての開示も示唆もない。
また、当該技術が本願の出願前に周知であったとも認められない。
したがって、引用発明および引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者は本願発明1の相違点に係る構成を容易に想到することができない。
2 本願発明2ないし7
本願発明2ないし7は、いずれも、本願発明1を減縮したものであって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、上記1で述べた本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし7は、いずれも、引用発明と同一ではなく、また、引用発明および引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
3 本願発明8
本願発明8は、本願発明1の発明のカテゴリを、単に、「カード処理機」の発明から、「カード処理機を備える料金収受システム」の発明へと変更したものであるから、本願発明8は、本願発明1と同様に、上記相違点と同様の構成を備えるものであるから、上記1で述べた本願発明1と同様の理由により、引用発明と同一ではなく、また、引用発明および引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 原査定について
上記第5の1(3)、2および3で述べたように、本願発明1ないし8は、いずれも、引用発明と同一ではなく、また、引用発明および引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえないから、原査定の拒絶の理由(新規性)および(進歩性)は、いずれも、解消している。
よって、原査定の理由は、維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-007828