2021-701261
ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート
- 審判番号
- 2021-701261
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-047126外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6900632
- 請求日
- 2021年12月28日
- 審決日
- 2023年02月27日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】重野 剛
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 分類
- P1652.113-YAA(C08G) / P1652.121-YAA(C08G) / P1652.537-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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1 本件特許異議の申立てまでの経緯
特許第6900632号(請求項の数3。以下、「本件特許」という。)は、平成28年3月10日を出願日とする特許出願(特願2016-47126号)に係るものであって、令和3年6月21日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年7月7日である。)。
その後、令和3年12月28日に、本件特許の請求項1,2に係る特許に対して、特許異議申立人である特許業務法人 朝日奈特許事務所(名称変更があり、現在は弁理士法人 朝日奈特許事務所という。以下では「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」という。)
2 申立て以降の経緯
令和4年 5月 9日付け 取消理由通知
同年 7月 4日受理 意見書・訂正請求書
同年 7月28日付け 通知書(申立人宛)
同年10月20日付け 訂正拒絶理由通知
同年11月24日受理 意見書(特許権者)
なお、申立人は、令和4年7月28日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。
第2 令和4年7月4日受理の訂正請求について
1 請求の趣旨
令和4年7月4日受理の訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第6900632号の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3からなる請求項について訂正することを求める。」というものであり、すなわち、本件特許に係る願書に添付した明細書および特許請求の範囲を下記「2 訂正の内容」の訂正事項のとおりに訂正することを求めるというものである(当審注:下線は訂正箇所を示し、当審が付与した。)。
2 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、」と記載されているのを『ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、チタン原子及び周期表第2A族金属の原子を含み、』と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0059】の第4行及び第5行に「245℃」とあるのをそれぞれ『250℃』に訂正する。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~3について、請求項2~3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、明細書に係る訂正事項3は、上記一群の請求項について請求されたものである。
したがって、訂正事項1~3による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否に関する判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1における「ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート」の組成を、訂正前の請求項3及び明細書の【0050】を基に「チタン原子及び周期表第2A族金属の原子」を含むものに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、訂正事項2の訂正は、特許異議の申立てがされていない請求項3に係る訂正であり、訂正後の請求項3に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項で規定する、いわゆる独立特許要件を満たすものでなければならないが、請求項3はその記載が削除され、独立特許要件の判断の対象となる請求項は存在しなくなったため、検討しない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、明細書の段落【0059】の第4行及び第5行に「245℃」とあるのをそれぞれ『250℃』に訂正するものである。
以下、訂正事項3による訂正について、訂正の要件を満たすか否かを検討する。
ア 目的要件(明瞭でない記載の釈明)の判断
訂正事項3は、訂正請求書の「a 訂正の目的について」(第5頁)によれば、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものとされている。
「明瞭でない記載の釈明」とは、(ア)それ自体意味が不明瞭であるか又は他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載があり、(イ)当該記載について本来の意を明らかにすることである。
上記に基づき、訂正事項3が「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえるのか、下記のとおり検討する。
(ア)訂正前の記載が、それ自体意味が不明瞭であるか又は他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載であるかについて
MVRの温度条件に関して、訂正前の明細書段落【0043】には「250℃」とあり、同【0059】には「245℃」とあるところ、訂正前の明細書段落【0059】における「245℃」なる記載は、訂正前の明細書段落【0043】の「250℃」なる記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載であるといえる。
(イ)訂正が不明瞭となっている記載を本来の意を明らかにするものであるかについて
特許権者が令和4年11月24日付けの意見書と共に提出した乙第1号証である「INTERNATIONAL STANDARD ISO 1133-1 Plastics -Determination of the melt mass-flow rate (MFR) and melt volume-flow rate (MVR) of thermoplastics- Part 1: Standard method, Second edition(2022年発行)」には、以下の記載がある。
(乙1a)
「ForewordISO (the International Organization for Standardization) is a worldwide federation of national standards bodies (ISO member bodies). The work of preparing International Standards is normally carried out through ISO technical committees. Each member body interested in a subject for which a technical committee has been established has the right to be represented on that committee. International organizations, governmental and non-governmental, in liaison with ISO, also take part in the work. ISO collaborates closely with the International Electrotechnical Commission(IEC) on all matters of electrotechnical standardization.・・・This document was prepared by Technical Committee ISO/TC 61, Plastics, Subcommittee SC 5, Physical chemical properties, in collaboration with the European Committee for Standardization (CEN) Technical Committee CEN/TC 249, Plastics, in accordance with the Agreement on technical cooperation between ISO and CEN (Vienna Agreement).This second edition cancels and replaces the first edition (ISO 1133-1:2011), of which it constitutes a minor revision. The changes are as follows:- references to withdrawn standards in Annex B(informative), Annex D(informative) and Bibliography have been updated;- editorial corrections.」(第V頁)
(当審訳:「序文
ISO(国際標準化機構)は、各国の標準化団体(ISOメンバー団体)の世界的な連合です。国際規格の作成作業は、通常、ISO技術委員会を通じて行われます。技術委員会が設立された議題に関心のある各メンバー団体は、その委員会に代表される権利を有します。政府および非政府の国際機関も、ISOと連携して、この作業に参加しています。ISOは、電気技術の標準化に関する全ての問題について、国際電気標準会議(IEC)と緊密に協力しています。
・・・
この文書は、ISOと欧州標準化委員会(CEN)との間の技術協力に関する協定(ウィーン協定)に従い、CEN技術委員会CEN/TC249-プラスチック-と協力して、技術委員会ISO/TC61-プラスチック-の小委員会SC5-物理化学的特性-によって作成されました。
この第2版は、第1版(ISO1133-1:2011)を取り消して置き換えるものであり、軽微な変更を有します。変更点は次のとおりです。
-附属書B(参考)、附属書D(参考)内の廃止された標準への参照および書誌事項が更新されました。
-編集上の修正」)
(乙1b)
「[図:0001398230000001.jpg]」(第19頁参照。なお、下線及び矢印は当審が付した。)
(当審部分訳:「別紙A(規定)
MFR及びMVR測定の試験条件
使用される条件は、適切な材料仕様規格に示されているとおりでなければなりません。
表A.1は、有用であることがわかっている試験温度と荷重を示しています。ここに記載されていない他の試験条件は、必要に応じて、特定の材料に使用される場合があります。
表A.1 MFR及びMVR測定の試験条件
(以下、表は省略)」)
上記(乙1b)を参照すると、ISO 1133-1では、MFR及びMVR測定の試験方法において有用であるとされている温度条件として「245℃」の記載はなく「250℃」の記載があるところ、本件明細書の【0043】及び【0059】の「ISO 1133の試験法準拠」又は「ISO 1133記載の試験法に準拠し」という記載に基づきMVRを測定しているのであれば、「245℃」ではなく「250℃」で測定することが本来の意図であると解することができる。
なお、上記乙第1号証は2022年発行の第2版であるが、(乙1a)の記載から、第1版から第2版への変更部分に(乙1b)のAnnex Aは含まれず、第1版のAnnex Aにおいても有用な温度条件として「245℃」ではなく「250℃」が記載されていたと解するところ、本件特許に係る特許出願がされた2016年においてMVR測定時に準拠したと考えられるISO 1133の第1版を参照しても、第2版と同様に「250℃」で測定したと解することができるといえる。
そうすると、訂正前の明細書段落【0059】の「245℃」を「250℃」に訂正することは、「不明瞭となっている記載を本来の意を明らかにする場合」に該当するものといえる。
(ウ)小括
以上のとおり、訂正事項3は、(ア)それ自体意味が不明瞭であるか又は他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載があり、(イ)当該記載について本来の意を明らかにすることを目的としているものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
イ その他の訂正要件の判断
MVRの温度条件に関して、訂正前の明細書段落【0043】には「250℃」とあるところ、当該記載に基づき本来の意を明らかにしたといえる訂正事項3は新規事項の追加には該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 訂正の適否についての判断のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正により訂正された請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらをまとめて「本件発明」という。また、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4-ブタンジオール及びポリテトラメチレングリコールとを含むジオール成分を含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、チタン原子及び周期表第2A族金属の原子を含み、下記(1)から(4)を満足することを特徴とするポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。(1)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中のポリテトラメチレングリコールの数平均分子量が650~2000である(2)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに対してポリテトラメチレングリコールの含有量が8~35質量%である(3)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中に含まれる環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量が2500質量ppm以下である(ただし、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量は、環状2量体と環状3量体の合計量である。)(4)ジオール成分中の1,4-ブタンジオールに由来する構成単位及びポリテトラメチレングリコールに由来する構成単位が70モル%以上である【請求項2】MVRが50cm3/10分以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。【請求項3】(削除)」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審が通知した取消理由について
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1 特許異議申立書に記載した申立ての理由
本件特許の請求項1~2に係る特許は、下記(1)~(2)のとおり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記(3)の甲第1号証~甲第2号証(以下、「甲1」、「甲2」という。)を提出する。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1~2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)証拠方法
2 当審が通知した取消理由
当審が令和4年5月9日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由A(新規性)
本件訂正前の請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)取消理由B(進歩性)
本件訂正前の請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)取消理由C(明確性)
本件訂正前の請求項2に係る発明は、本件特許の下記の請求項に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、特許法第113条第4号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
請求項2の「MVR」について、ポリマーのMVRは測定温度によって異なることが技術常識であるところ、該MVRの測定温度として、本件明細書には「250℃」(段落【0043】)及び「245℃」(段落【0059】)という異なる温度が記載されているため、請求項2のMVRがどちらの測定温度におけるものであると解するべきかが明らかでない。
第5 当審の判断
当審は、特許異議申立書に記載された申立て理由及び当審が通知した取消理由によっては、本件発明1,2に係る特許を取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)について
取消理由A(新規性)、B(進歩性)と申立理由1(新規性)、2(進歩性)は、いずれも同じ甲1を主引用文献とする理由であるから、併せて検討する。
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には,以下の事項が記載されている。
(甲1a)
「【請求項1】 主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)100重量部に、フッ素ゴム(B)0.01~30重量部を配合してなるポリエステルエラストマ組成物。【請求項2】 ポリエステルブロック共重合体(A)100重量部に、さらに、粉末状無機質充填剤(C)1種以上および/またはポリオレフィン樹脂(D)0.001~15重量部を配合してなる請求項1記載のポリエステルエラストマ組成物。【請求項3】 高融点結晶性重合体セグメント(a)がポリブチレンテレフタレート単位で構成される請求項1および請求項2記載のポリエステルエラストマ組成物。【請求項4】 低融点重合体セグメント(b)がポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位で構成される請求項1および請求項2記載のポリエステルエラストマ組成物。【請求項5】 ポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(b)の共重合量が10~80重量%である請求項1および請求項2記載のポリエステルエラストマ組成物。【請求項6】 フッ素ゴム(B)がフッ化ビニリデンと6-フッ化プロピレンとの共重合体である請求項1および請求項2記載のポリエステルエラストマ組成物。【請求項7】 粉末状無機質充填剤(C)がタルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれた1種以上である請求項2記載のポリエステルエラストマ組成物。【請求項8】 ポリオレフィン樹脂(D)がポリエチレンである請求項2記載のポリエステルエラストマ組成物。」(【特許請求の範囲】)
(甲1b)
「本発明者らは、ポリエステルエラストマ成形品に対し、長期間使用時においても安定した摺動性を付与するべく検討した結果、ポリエステルエラストマ成形品の摩擦係数を下げるだけでなく、微小時間での摩擦係数変動を低減し、その経時変化を小さくし摺動性を長時間持続させ得る摺動性改良剤を見い出し本発明に到達した。」(段落【0007】)
(甲1c)
「本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a)は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルであり、好ましくはテレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートであるが、この他に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニルなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであっても良い。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。」(段落【0010】、【0011】)
(甲1d)
「本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(b)の共重合量は、好ましくは10~80重量%、更に好ましくは15~75重量%である。」(段落【0012】)
(甲1e)
「【実施例】以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではないのは勿論である。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、参考例中に示される物性は次のように測定した。・融点:差動走査熱量計(Du Pont 社製DSC-910 型)を使用して、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温速度で加熱した時の融解ピークの頂上温度を測定した。・溶融粘度指数(MFR値):ASTM D-1238に従って、温度240℃、荷重2160gで測定した。・・・[参考例]ポリエステルブロック共重合体(A-1)の製造テレフタル酸362部、1,4-ブタンジオール392部および数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール134部を、チタンテトラブトキシド0.15部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物に”イルガノックス”1010(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.75部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間30分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。これを攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、190℃で72時間加熱して固相重合を行った。・・・。表1にA-1、A-2の組成と物性を示す。」(段落【0020】)
(甲1f)
「【表1】[図:0001398230000002.jpg]」(段落【0021】)
イ 甲1に記載された発明
甲1の上記摘記(甲1e)には、参考例として、「テレフタル酸362部、1,4-ブタンジオール392部および数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール134部を、チタンテトラブトキシド0.15部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物に“イルガノックス”1010(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.75部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間30分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。これを攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、190℃で72時間加熱して固相重合を行った」ことで得られたポリエステルブロック共重合体(A-1)が記載されている。
このポリエステルブロック共重合体(A-1)について、甲第1号証の上記摘記(甲1e)をみると、「ASTM D-1238に従って、温度240℃、荷重2160gで測定したMFRが、15g/10分」であり、また上記摘記(甲1f)をみると、ポリエステルブロック共重合体(A-1)中の「低融点重合体セグメント」の種類は「PTMG-1000」(ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(末尾につけた数字は数平均分子量を表す。))であり、「低融点重合体セグメント」の共重合量は「25重量%」であるといえる。
また、同(甲1f)をみると、ポリエステルブロック共重合体(A-1)中の「高融点結晶性重合体セグメント」は、使用したグリコールとして「1,4-BG」(1,4-ブタンジオール)、使用したジカルボン酸として「TPA」(テレフタル酸)とあるところ、「高融点結晶性重合体セグメント」は1,4-ブタンジオールとテレフタル酸からなるポリブチレンテレフタレート単位を有するものであるといえる。
そうすると、甲第1号証には、
「テレフタル酸362部、1,4-ブタンジオール392部および数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール134部を、チタンテトラブトキシド0.15部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった反応混合物に”イルガノックス”1010(チバガイギー社製ヒンダ-ドフェノ-ル系酸化防止剤)0.75部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間30分重合を行わせ、得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとし、これを攪拌翼を備えた反応容器に仕込み、系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、190℃で72時間加熱して固相重合を行うことで得られた、ASTM D-1238に従って、温度240℃、 荷重2160gで測定したMFRが、15g/10分であり、低融点重合体セグメントの種類はPTMG-1000(ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(末尾につけた数字は数平均分子量を表す。))であり、低融点重合体セグメントの共重合量は25重量%であって、高融点重合体セグメントとしてポリブチレンテレフタレート単位を有する、ポリエステルブロック共重合体(A-1)」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)甲2及び引用文献1に記載された事項
ア 甲2に記載された事項
甲2には、次の記載がある。
(甲2a)
「[図:0001398230000003.jpg][図:0001398230000004.jpg]」(第66~69頁参照。なお、項目「比重」における太囲み線は、当審にて追加。)
イ 引用文献1に記載された事項
当審が職権により調査し発見した、令和4年5月9日付け取消理由通知にて提示した証拠方法である引用文献1(“ポリエステル系熱可塑性エラストマー”、昭和59年、日本ゴム協会誌 第57巻、第11号、第78-87頁)には,以下の事項が記載されている。
(引1a)
「2.ポリエステル系TPEの構造1)ポリエステル系TPEは,化学構造的にはハードセグメントがポリエステル成分からなる(AB)n型マルチブロック共重合体であるといえる.一般的にはハードセグメントに芳香族系結晶性ポリエステルを用い,ソフトセグメントにTgの低いポリマーを用いている.原理的には,ハードセグメントのポリエステルの種類を変えたり,またソフトセグメントに用いるポリマーの種類を変えることにより,種々のタイプのポリエステル系TPEを設計することができるが,現在市販されているものを分類すると,ハードセグメントに芳香族ポリエステル,ソフトセグメントにポリエーテルを用いたいわゆるポリエステル・ポリエーテル型TPEと,ハードセグメントに芳香族ポリエステル,ソフトセグメントに脂肪族ポリエステルを用いたいわゆるポリエステル・ポリエステル型TPEの2種類になる.表3にポリエステル系TPEの種類と商品名を示す.2.1 ポリエステル・ポリエーテル型TPE現在市販されているポリエステル系TPEのほとんどはこのタイプのものであり,基本的にはハードセグメントのポリエステルにポリブチレンテレフタレート(以下PBTという)を用い,ソフトセグメントのポリエーテルにポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下PTMGという)を用いており,下記の化学構造をしたものである.[図:0001398230000005.jpg]耐熱性があり結晶化速度の大きいPBTをハードセグメントに用い,Tgとの低いTMGをソフトセグメントに用いることによって,優れた成形性をもち,耐熱性と低温可撓性を同時に兼ね備えたバランスのとれた性質をもつエラストマーである.」(第78頁右欄-第79頁左欄の「2.ポリエステル系TPEの構造1)」および「2.1 ポリエステル・ポリエーテル型TPE」欄)
(引1b)
「[図:0001398230000006.jpg]」(第79頁表3を参照)
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「テレフタル酸362部、1,4-ブタンジオール392部および数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール134部を、チタンテトラブトキシド0.15部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、
190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった反応混合物に・・・、
系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、190℃で72時間加熱して固相重合を行うことで得られた、
・・・ポリエステルブロック共重合体(A-1)」は、単量体成分として、「テレフタル酸」、「1,4-ブタンジオール」、「ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール」由来の成分を含む「ポリエステルブロック共重合体(A-1)」であるといえる。
そして、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールとポリテトラメチレングリコールは、文言は異なるものの同じ化合物を示すものであることは自明であるから、甲1発明の「ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール」は本件発明1の「ポリテトラメチレングリコール」であるといえる。
そうすると、甲1発明の「ポリエステルブロック共重合体(A-1)」は、本件発明1の「テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4-ブタンジオール及びポリテトラメチレングリコールとを含むジオール成分を含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート」に相当するといえる。
また、甲1発明の「ポリエステルブロック共重合体(A-1)」におけるジオール成分は1,4-ブタンジオールおよびポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの2成分しか存在しないことが自明であるから、甲1発明の「ポリエステルブロック共重合体(A-1)」は本件発明1の「(4)ジオール成分中の1,4-ブタンジオールに由来する構成単位及びポリテトラメチレングリコールに由来する構成単位が70モル%以上である」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4-ブタンジオール及びポリテトラメチレングリコールとを含むジオール成分を含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、下記(4)を満足することを特徴とするポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。(4)ジオール成分中の1,4-ブタンジオールに由来する構成単位及びポリテトラメチレングリコールに由来する構成単位が70モル%以上である」点で一致し、以下の4点で相違する。
相違点4:「ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート中に含まれる環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量」について、本件発明1では「2500質量ppm以下である(ただし、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量は、環状2量体と環状3量体の合計量である。)」であるのに対し、甲1発明では「環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー量」が不明である点
イ 新規性に関する検討
相違点1について検討する。
まず、本件発明1における「チタン原子及び周期表第2A族金属の原子」は、本件明細書の下記【0023】及び【0050】の記載を参照すると、エステル化反応又はエステル交換反応触媒として用いられた触媒に由来するものであると解される。
「【0023】・・・本発明において、PTMG共重合PBTを製造する際に用いられるエステル化反応又はエステル交換反応触媒としては、例えば、・・・;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;・・・;酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物や、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等の周期表第2族金属の化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等が挙げられる。・・・中でも、チタン原子及び周期表第2族金属化合物が好ましく、特に、チタン化合物、スズ化合物が好ましく、テトラブチルチタネートが特に好ましい。」
「【0050】・・・本発明のPTMG共重合PBTは、上述の触媒に由来する金属成分を含有し、好ましくはチタン原子及び周期表第2A族金属の原子を含有する。」
また、本件明細書の下記【0069】~【0070】を参照すると、本件の実施例で製造した共重合体について記載があり、共重合体の製造時に、まず原料に対しテトラブチルチタネートを金属チタン換算で生成するポリマー(PTMG共重合PBT)に対して33質量ppmとなるように添加後エステル交換反応を行い、該エステル交換反応終了の15分前に酢酸マグネシウム・四水塩をマグネシウム金属として生成するポリマーに対して48質量ppmとなるように添加し、その後テトラブチルチタネートを生成するポリマーに対してチタン金属として25質量ppmとなる量を添加して重縮合反応を行っているところ、該実施例にて得られた共重合体は、マグネシウム金属を48質量ppm含有し、またチタン金属としてテトラブチルチタネートを2回添加した分、つまり33質量ppmと25質量ppmとの合計で、58質量ppm含有するものと解される。
「【0069】 攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管を備えたエステル交換反応槽に、ジメチルテレフタレートを80.0質量部、1,4-BGを44.2質量部、数平均分子量1000のPTMGを10.2質量部、触媒としてテトラブチルチタネートを金属チタン換算で、生成するポリマー(PTMG共重合PBT)に対して33質量ppmとなるように1,4-BG溶液として添加した。ついで槽内液温を150℃に60分保持した後90分かけて210度まで昇温し210℃で30分保持した。この間、生成するメタノールを留出させつつ、トータル180分エステル交換反応を行った。」
「【0070】 エステル交換反応終了の15分前に、酢酸マグネシウム・四水塩をマグネシウム金属として生成するポリマーに対して48質量ppmとなるように、1,4-BGに溶解して添加し、さらに生成するポリマーに対して0.15質量部となる、ヒンダードフェノール系酸化防止剤〔チバ・ガイギー(株)製,Irganox1010:テトラキス〔メチレン-3(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロオキシ-フェニル)プロピオネート〕メタンを1,4-BGのスラリー状態で加え、引き続き、テトラブチルチタネートを生成するポリマーに対してチタン金属として25質量ppmとなる量を1,4-BGの溶液として添加した後、攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた重縮合反応槽に移送し減圧を付加して、重縮合反応を行った。」
一方、甲1発明は上記(1)イの甲1発明に関する記載のとおりに製造されたものであり、該製造方法を参照してもそこで添加される含金属成分はチタンテトラブトキシドのみであるところ、甲1発明である共重合体が含有する金属原子は「チタン原子」のみであり、本件発明1が含有する「チタン原子」及び「周期表第2A族金属の原子」の両方を含有するものとはいえないから、相違点1は実質的な相違点であるといえる。
そうすると、甲1発明と本件発明1とは、その製造方法を検討しても、上記相違点1に関して実質的に相違するものであり、相違点2~4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。
ウ 進歩性に関する検討
次に、上記イにて実質的な相違点であるとした相違点1について、甲1~2及び引用文献1の記載から容易に発明をすることができたか否かを検討する。
甲1の記載を参照しても、甲1発明である共重合体に「周期表第2A族金属の原子」を添加することは記載も示唆もされていない。
また、甲2及び引用文献1の記載を参照しても、ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに「周期表第2A族金属の原子」を添加することは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1~2及び引用文献1の記載を参照しても、甲1発明に「周期表第2A族金属の原子」を含有させることは動機づけられず、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
エ 小括
よって、本件発明1は、相違点2~4を検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明並びに甲2及び引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(3)で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明並びに甲2及び引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)まとめ
したがって、本件発明1~2は甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明並びに甲2及び引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 取消理由C(明確性)について
上記取消理由Cは、上記第4の2(3)にて示したとおり、「請求項2の「MVR」について、ポリマーのMVRは測定温度によって異なることが技術常識であるところ、該MVRの測定温度として、本件明細書には「250℃」(段落【0043】)及び「245℃」(段落【0059】)という異なる温度が記載されているため、請求項2のMVRがどちらの測定温度におけるものであると解するべきかが明らかでない。」というものである。
しかしながら、上記第2に示したように、本件明細書は、段落【0059】の第4行及び第5行に「245℃」とあるのをそれぞれ「250℃」とする訂正がなされ、請求項2の「MVR」の測定温度が「250℃」であることが当業者に明らかであるものとなった。
よって、当該取消理由は解消された。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701261